(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】錠剤搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20230915BHJP
B65G 27/32 20060101ALI20230915BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20230915BHJP
B65G 47/28 20060101ALI20230915BHJP
B65G 47/68 20060101ALI20230915BHJP
B65G 47/14 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B65G43/08 D
B65G27/32
A61J3/06 Q
A61J3/06 R
B65G47/28 L
B65G47/68 A
B65G47/14 A
(21)【出願番号】P 2019033727
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 友太
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 安澄
(72)【発明者】
【氏名】足立 凌
(72)【発明者】
【氏名】若林 大翔
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013711(JP,A)
【文献】特開平06-072532(JP,A)
【文献】特開2017-176646(JP,A)
【文献】特開2004-352395(JP,A)
【文献】特開平06-219529(JP,A)
【文献】特開平10-324418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0015402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/08
B65G 27/32
A61J 3/06
B65G 47/28
B65G 47/68
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の錠剤に対して印刷および/または検査を行うために錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、
複数の錠剤を振動により所定の方向に搬送する振動搬送部と、
前記振動搬送部より下流側において錠剤を搬送する過程において、錠剤の搬送方向の間隔を計測する計測部と、
前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔に基づいて、前記振動搬送部における振動の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔が所定の下限値を下回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数(但し、1個を除く)存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を下げることを特徴とする錠剤搬送装置。
【請求項2】
複数の錠剤に対して印刷および/または検査を行うために錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、
複数の錠剤を振動により所定の方向に搬送する振動搬送部と、
前記振動搬送部より下流側において錠剤を搬送する過程において、錠剤の搬送方向の間隔を計測する計測部と、
前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔に基づいて、前記振動搬送部における振動の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔が所定の上限値を上回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数(但し、1個を除く)存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を上げることを特徴とする錠剤搬送装置。
【請求項3】
複数の錠剤に対して印刷および/または検査を行うために錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、
複数の錠剤を振動により所定の方向に搬送する振動搬送部と、
前記振動搬送部より下流側において錠剤を搬送する過程において、錠剤の搬送方向の間隔を計測する計測部と、
前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔に基づいて、前記振動搬送部における振動の出力を制御する制御部とを備え、
前記振動搬送部は、錠剤を複数列に振り分けて搬送する搬送トラフと、前記搬送トラフを振動させる振動フィーダとを備え、
前記計測部は、前記搬送トラフ上で複数列に振り分けられた錠剤について、各列ごとに錠剤の搬送方向の間隔を計測することを特徴とする錠剤搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記錠剤搬送装置の運転を開始してから所定時間経過後において、錠剤の搬送方向の間隔が所定の下限値または上限値を下回ったまたは上回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数
(但し、1個を除く)存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を下げるまたは上げる請求項1または請求項2に記載の錠剤搬送装置。
【請求項5】
前記振動搬送部の搬送方向の下流側に設けられ、前記振動搬送部から受け渡された錠剤を所定の方向に搬送する錠剤搬送部を備え、
前記計測部は、前記振動搬送部と前記錠剤搬送部の錠剤の受け渡し部分に設けられている請求項3に記載の錠剤搬送装置。
【請求項6】
請求項3または請求項5に記載の錠剤搬送装置に用いられる振動搬送部であって、
錠剤を複数列に振り分けて搬送する搬送トラフと、前記搬送トラフを振動させる振動フィーダとを備えることを特徴とする振動搬送部。
【請求項7】
請求項3または請求項5に記載の錠剤搬送装置が設けられ、複数の錠剤に対して印刷を行うことを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項8】
請求項3または請求項5に記載の錠剤搬送装置が設けられ、複数の錠剤に対して検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の錠剤に対して印刷および/または検査を行うために錠剤を搬送する錠剤搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品や食品などの錠剤に対して、製造メーカや製品区分などに関する識別情報がインクジェット等により非接触で印刷される場合が多くなってきている。この識別情報は、アルファベット、数字、あるいは記号などから構成されており、これにより調剤薬局、患者あるいは消費者が錠剤の種類を把握することができる。
【0003】
一般に、このような錠剤の印刷に用いられる錠剤印刷装置は、複数の錠剤を供給する錠剤供給部と、錠剤供給部から供給された錠剤を振動により搬送する振動搬送部と、振動搬送部から受け渡された複数の錠剤を搬送する錠剤搬送部と、錠剤搬送部により搬送される複数の錠剤に印刷を行う錠剤印刷部とを備えている。このうち振動搬送部は、錠剤供給部により供給された複数の錠剤を複数列に振り分ける金属製または樹脂製等の搬送トラフが設けられており、該搬送トラフにおいて複数の錠剤を振動により搬送したあと、下流側に設けられた錠剤搬送部に受け渡して搬送していくことが行われる(特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、このような錠剤印刷装置では、錠剤を搬送する過程において、撮像手段などにより錠剤の表面や側面における割れ、欠け、インクの付着の有無などの検査が行われる。このとき、錠剤の間隔が必要以上に狭かったり、さらには錠剤が互いに接触したりすると、撮像手段により錠剤を個別に認識することが難しくなったり、不良品の錠剤を排出するときに隣り合う良品の錠剤までも排出したりする虞があったため、錠剤の間隔を適正に保つことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-013711号公報
【文献】特開2012-254864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置の運転開始前に錠剤の供給能力を適切に設定するものの、錠剤のコーティング成分や粉塵が搬送トラフの搬送面に付着することによって、錠剤が搬送トラフの搬送面で滑りやすくなって、下流側の錠剤搬送部に対する錠剤の供給量が増加する場合があった。そうなると、下流側の錠剤搬送部において、錠剤の搬送方向の間隔が必要以上に狭くなったり、さらに錠剤が互いに接触したりして、撮像手段により錠剤を個別に認識することが難しくなる。このため、過剰な錠剤を装置外に排出しなければならず、装置の歩留まりが低下するという問題があった。
【0007】
一方、錠剤によっては、錠剤のコーティング成分や粉塵が搬送トラフの搬送面に付着することによって、逆に錠剤が搬送トラフの搬送面で滑りにくくなって、下流側の錠剤搬送部に対する錠剤の供給量が低下する場合があった。そうなると、錠剤の搬送方向の間隔が必要以上に広がり、単位時間当たりの錠剤の印刷個数が少なくなって、同じく装置の歩留まりが低下するという問題があった。
【0008】
もとより、一定時間が経過すると、錠剤のコーティング成分や粉塵が搬送トラフに付着することによる錠剤の滑り度合いも次第に安定するが、安定するまで早いものでも十数分はかかり、遅いものになると一時間以上かかるものが存在するため、装置の歩留まりが低下することに変わりはなかった。しかも、医薬品や食品は人が口にするものである関係上、装置の運転を開始する前には搬送トラフを洗浄等により清掃する必要があるが、その度に搬送トラフの搬送面からコーティング成分や粉塵が取り除かれるため、装置の運転の都度、運転開始直後の搬送トラフにおける錠剤の搬送が不安定になっていた。なお、このような問題は、複数の錠剤に対して検査を行う錠剤検査装置にも同様に生じるものであった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、錠剤印刷装置や錠剤検査装置に用いられ、錠剤を振動により搬送する振動搬送部において錠剤の搬送方向の間隔を適切に制御することができ、ひいては装置の歩留まりを向上させることが可能な錠剤搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、複数の錠剤に対して印刷および/または検査を行うために錠剤を搬送する錠剤搬送装置であって、複数の錠剤を振動により所定の方向に搬送する振動搬送部と、前記振動搬送部により錠剤を搬送する過程または前記振動搬送部より下流側において錠剤を搬送する過程において、錠剤の搬送方向の間隔を計測する計測部と、前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔に基づいて、前記振動搬送部における振動の出力を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、制御部が錠剤の搬送方向の間隔に基づいて振動搬送部における振動の出力を制御することによって、錠剤の搬送方向の間隔を適正に調整することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔が所定の下限値を下回った場合、前記振動搬送部における振動の出力を下げてもよい。これによれば、例えば錠剤がコーティング成分や粉塵で振動搬送部の搬送面で滑りやすくなる場合、制御部が錠剤の搬送方向の間隔に基づいて振動搬送部における振動の出力を下げることによって、錠剤の搬送方向の間隔を適正な間隔まで小さくすることができる。
【0013】
また、前記制御部は、錠剤の搬送方向の間隔が所定の下限値を下回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を下げてもよい。これによれば、錠剤の搬送方向の間隔が偶発的に所定の下限値を下回ったとしても、制御部は直ちに振動搬送部における振動の出力を下げることがなく、錠剤の搬送方向の間隔が真に所定の下限値を下回るようになった場合に、制御部は振動搬送部における振動の出力を適正に下げることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記計測部により計測された錠剤の搬送方向の間隔が所定の上限値を上回った場合、前記振動搬送部における振動の出力を上げてもよい。これによれば、例えば錠剤がコーティング成分や粉塵で振動搬送部の搬送面で滑りにくくなる場合、制御部が錠剤の搬送方向の間隔に基づいて振動搬送部における振動の出力を上げることによって、錠剤の搬送方向の間隔を適正な間隔まで大きくすることができる。
【0015】
また、前記制御部は、錠剤の搬送方向の間隔が所定の上限値を上回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を上げてもよい。これによれば、錠剤の搬送方向の間隔が偶発的に所定の上限値を上回ったとしても、制御部は直ちに振動搬送部における振動の出力を上げることがなく、錠剤の搬送方向の間隔が真に所定の上限値を上回るようになった場合に、制御部は振動搬送部における振動の出力を適正に上げることができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記錠剤搬送装置の運転を開始してから所定時間経過後において、錠剤の搬送方向の間隔が所定の下限値または上限値を下回ったまたは上回った錠剤が所定単位時間当たり少なくとも所定個数存在する場合、前記振動搬送部における振動の出力を下げるまたは上げてもよい。これによれば、錠剤がコーティング成分や粉塵で振動搬送部の搬送面が滑りやすくなったり、あるいは滑りにくくなった段階において、錠剤の間隔を適正に制御することができる。
【0017】
また、前記振動搬送部は、錠剤を複数列に振り分けて搬送する搬送トラフと、前記搬送トラフを振動させる振動フィーダとを備えてもよい。これによれば、搬送トラフと振動フィーダからなる構成によって、振動搬送部における振動の出力を確実に制御することができる。
【0018】
また、前記計測部は、前記搬送トラフ上で複数列に振り分けられた錠剤について、各列ごとに錠剤の搬送方向の間隔を計測してもよい。これによれば、搬送トラフを搬送される各列の錠剤について、計測部により錠剤の搬送方向の間隔を確実に計測することができる。
【0019】
また、前記振動搬送部の搬送方向の下流側に設けられ、前記振動搬送部から受け渡された錠剤を所定の方向に搬送する錠剤搬送部を備え、前記計測部は、前記振動搬送部と前記錠剤搬送部の錠剤の受け渡し部分に設けられてもよい。これによれば、錠剤の搬送方向の間隔を搬送の早い段階で安定して計測することができる。
【0020】
また、本発明に係る振動搬送部は、前記錠剤搬送装置に用いられる振動搬送部であって、錠剤を複数列に振り分けて搬送する搬送トラフと、前記搬送トラフを振動させる振動フィーダとを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る錠剤印刷装置は、上述の錠剤搬送装置が設けられ、複数の錠剤に対して印刷を行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る錠剤検査装置は、上述の錠剤搬送装置が設けられ、複数の錠剤に対して検査を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、制御部が錠剤の搬送方向の間隔に基づいて振動搬送部における振動の出力を制御することによって、錠剤の搬送方向の間隔を適正に調整することができる。このため、本装置における処理能力を安定に保つことができ、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る錠剤印刷装置の構成概略図である。
【
図2】
図1の錠剤印刷装置の振動搬送部の拡大図である。
【
図3】
図1の錠剤印刷装置の振動搬送部の搬送トラフの平面図である。
【
図4】
図1の錠剤印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】錠剤の搬送方向の間隔に基づいて振動搬送部における振動の出力を制御することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る錠剤搬送装置を錠剤印刷装置に適用した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<搬送関連装置の構成>
まず、本装置の搬送関連装置の構成について、
図1~
図3を参照しつつ、具体的に説明する。
【0027】
本装置は、
図1に示すように、基台1と、基台1の上部に設けられた錠剤供給部2と、錠剤供給部2の下方に設けられた振動搬送部3と、振動搬送部3の搬送方向の下流側に設けられた上流側の錠剤搬送部4と、上流側の錠剤搬送部4の下方に設けられた下流側の錠剤搬送部5と、下流側の錠剤搬送部5の下方に設けられた錠剤乾燥部6と、各部を制御する制御部7とを備える。
【0028】
前記錠剤供給部2は、上部に投入口21aが設けられ、かつ下部に供給口21bが設けられたホッパー21を備えており、投入口21aからホッパー21に複数の錠剤Tが投入されると、供給口21bから振動搬送部3に錠剤が供給される。
【0029】
前記振動搬送部3は、錠剤供給部2のホッパー21の直下に設けられた第1の振動搬送部31と、第1の振動搬送部31の搬送方向の下流側に設けられた第2の振動搬送部32とを備える。
【0030】
前記第1の振動搬送部31は、金属製または樹脂製等からなる平板状の搬送トラフ311と、該搬送トラフ311の下面に設けられた振動フィーダ312とを備える。この搬送トラフ311は、上面側の搬送面311aが搬送方向に沿って下流側に緩やかに傾斜する平坦面に形成されている。而して、錠剤供給部2のホッパー21から搬送トラフ311に錠剤Tが供給されると、搬送トラフ311の搬送面311aの上に錠剤Tが塊状に堆積する。そして、振動フィーダ312により搬送トラフ311が振動すると、塊状に堆積した錠剤Tは、振動により下流側部分から次第に崩れながら搬送方向に搬送されたあと、第2の振動搬送部32に受け渡される。
【0031】
前記第2の振動搬送部32は、金属製または樹脂製等からなる平板状の搬送トラフ321と、該搬送トラフ321の下面に設けられた振動フィーダ322とを備える。この搬送トラフ321は、上面側の搬送面321aが搬送方向に沿って下流側に緩やかに傾斜するように下流側に傾斜して配置されるとともに、
図3に示すように、搬送面321aには搬送方向に延びる搬送溝321bが幅方向に7列形成されている。而して、振動フィーダ322により搬送トラフ321が振動すると、それに伴って第1の振動搬送部31から受け渡された複数の錠剤Tは、振動ごとに搬送トラフ321の搬送面321aを跳ねながら所定の方向に滑るように搬送され、搬送溝321bに沿って幅方向に7列に整列する。
【0032】
前記上流側の錠剤搬送部4は、錠剤供給部2から投入された複数の錠剤Tを所定の方向(
図1の右方向)に搬送するものであり、搬送方向の下流側に配置された反転ドラム41と、搬送方向の上流側に配置された従動軸42と、反転ドラム41と従動軸42の間において無端状態に巻架されたタイミングベルト43とからなる搬送コンベアであって、図示略の駆動モータにより反転ドラム41が自軸回転することによりタイミングベルト43が
図1の右回りに回転する。
【0033】
また、前記タイミングベルト43は、複数の細長いタイミングベルト片から構成されており、各タイミングベルト片が幅方向に錠剤Tの幅より狭い隙間を空けて配置されている。そして、反転ドラム41において、図示略の負圧チャンバにより、タイミングベルト43の隙間から空気を吸引することによって錠剤Tを吸着するようになっている。
【0034】
なお、前記反転ドラム41の左上方位置には中間ローラ44が設けられており、反転ドラム41から送出されたタイミングベルト43を反転ドラム41の左上方まで持ち上げることによって、下方に後述する第2の撮像部102、第2の錠剤印刷部202、第2の検査用撮像部302などの各部材を配置する空間を形成している。
【0035】
而して、前記振動搬送部3から搬送されてきた複数の錠剤Tは、上流側の錠剤搬送部4に到達した際、タイミングベルト43に載置される態様で同一平面上で受け渡されたあと、その載置状態を維持しながらタイミングベルト43の回転に従って搬送方向に搬送されていく。そして、反転ドラム41に到達した錠剤Tは、図示略の負圧チャンバによりタイミングベルト43に吸着され、反転ドラム41の回転に従って表裏反転する状態で下方に搬送されていく。
【0036】
前記下流側の錠剤搬送部5は、上流側の錠剤搬送部4から複数の錠剤Tを表裏反転させた状態で受け取って、所定の方向(
図1の左方向)に搬送するものであり、搬送方向の下流側に配置された反転ドラム51と、搬送方向の上流側に配置された従動軸52と、反転ドラム51と従動軸52の間において無端状態に巻架されたタイミングベルト53とを備え、図示略の駆動モータにより反転ドラム51が自軸回転することによりタイミングベルト53が
図1の左回りに回転する。
【0037】
この前記タイミングベルト53も、複数の細長いタイミングベルト片から構成されており、各タイミングベルト片が幅方向に錠剤Tの幅より狭い隙間を空けて配置されている。そして、反転ドラム51において、図示略の負圧チャンバにより、タイミングベルト53の隙間から空気を吸引することによって錠剤Tを吸着するようになっている。
【0038】
而して、上流側の錠剤搬送部4から表裏反転しながら搬送されてきた錠剤Tは、下流側の錠剤搬送部5に到達した際、タイミングベルト53に載置される態様で受け渡されたあと、その載置状態を維持しながらタイミングベルト53の回転に従って搬送方向の下流側に搬送されていく。そして、反転ドラム51に到達した錠剤Tは、負圧チャンバによりタイミングベルト53に吸着され、反転ドラム51の回転に従って表裏反転する状態で下方に搬送されたあと、そのまま天吊り状態で錠剤乾燥部6まで搬送されて同一平面上で受け渡される。
【0039】
なお、下流側の錠剤搬送部5の下流側端部の下方には、不良品排出ボックス54が設けられている。これにより、制御部7により不良品と判断された錠剤Tについては、天吊り状態で搬送される過程において、タイミングベルト53による吸着が解除されることにより下方に落下して、不良品排出ボックス54に排出される。
【0040】
前記錠剤乾燥部6は、下流側の錠剤搬送部5から複数の錠剤Tを表裏反転させた状態で受け取って、複数の錠剤Tを所定の方向(
図1の右方向)に搬送しながら乾燥するものであり、搬送方向の下流側に配置された駆動軸61と、搬送方向の上流側に配置された従動軸62と、駆動軸61と従動軸62の間において無端状態に巻架されたメッシュベルト63とを備え、図示略の駆動モータにより駆動軸61が自軸回転することによりメッシュベルト63が
図1の右回りに回転する。
【0041】
而して、下流側の錠剤搬送部5から天吊り状態で搬送されてきた複数の錠剤Tは、錠剤乾燥部6に到達した際、メッシュベルト63上に載置される態様で同一平面上で受け渡され、その載置状態を維持しながらメッシュベルト63の回転に従って搬送方向の下流側に搬送される。このとき、錠剤Tは、図示略のヒータにより温風を吹き付けられることにより、表面および裏面における識別情報の印刷部分が乾燥させられる。
【0042】
なお、前記錠剤乾燥部6の下流側には排出部64が設けられており、錠剤乾燥部6により乾燥されながら搬送されてきた良品の錠剤Tは排出部64から装置外に排出される。
【0043】
<撮像・印刷関連装置の構成>
次に、本装置の撮像・印刷関連装置の構成について、
図1を参照しつつ、具体的に説明する。
【0044】
前記上流側の錠剤搬送部4は、上流側の上方に配置された第1の撮像部101と、中間部の上方に配置された第1の錠剤印刷部201と、下流側の上方に配置された第1の検査用撮像部301とがそれぞれ設けられている。
【0045】
前記第1の撮像部101は、上流側の錠剤搬送部4により載置状態で搬送される錠剤Tについて、錠剤Tの一方面を撮像する。また、第1の撮像部101により撮像された錠剤Tの撮像データは、制御部7に送信されたあと、錠剤Tの位置の認識に使用される。
【0046】
前記第1の錠剤印刷部201は、制御部7による指令により錠剤Tの一方面に対して所定の識別情報を印刷するものである。本実施形態では、第1の錠剤印刷部201の下方において複数の錠剤Tが幅方向に列をなした状態で順次通過するため、第1の錠剤印刷部201により錠剤Tの一方面に対して所定の識別情報を列ごとに順次印刷する。
【0047】
前記第1の検査用撮像部301は、第1の錠剤印刷部201により所定の識別情報が印刷された錠剤Tについて、錠剤Tの一方面を撮像する。本実施形態では、第1の検査用撮像部301の下方において複数の錠剤Tが幅方向に列をなした状態で順次通過するため、第1の検査用撮像部301は錠剤Tの一方面を列ごとに撮像する。この第1の検査用撮像部301により撮像された錠剤Tの一方面の画像データは、制御部7に送信されたあと、錠剤Tの一方面における識別情報の印刷状態の検査に使用される。
【0048】
一方、前記下流側の錠剤搬送部5は、上流側の上方に配置された第2の撮像部102と、中間部の上方に配置された第2の錠剤印刷部202と、下流側の上方に配置された第2の検査用撮像部302とがそれぞれ設けられている。
【0049】
前記第2の撮像部102は、タイミングベルト53により載置状態で搬送される錠剤Tについて、錠剤Tの他方面を撮像する。本実施形態では、第2の撮像部102の下方において複数の錠剤Tが幅方向に列をなした状態で順次通過するため、第2の撮像部102は錠剤Tの他方面を列ごとに撮像する。第2の撮像部102により撮像された錠剤Tの他方面の画像データは、制御部7に送信されたあと、反転後の錠剤Tの平面方向のずれや傾きの調整に使用される。
【0050】
前記第2の錠剤印刷部202は、制御部7による指令により錠剤Tの他方面に対して所定の識別情報を印刷するものである。本実施形態では、第2の錠剤印刷部202の下方において複数の錠剤Tが幅方向に列をなした状態で順次通過するため、第2の錠剤印刷部202により錠剤Tの他方面に対して所定の識別情報を列ごとに順次印刷する。
【0051】
前記第2の検査用撮像部302は、第2の錠剤印刷部202により所定の識別情報が印刷された錠剤Tについて、錠剤Tの他方面を撮像する。本実施形態では、第2の検査用撮像部302の下方において複数の錠剤Tが幅方向に列をなした状態で順次通過するため、第2の検査用撮像部302は錠剤Tの他方面を列ごとに撮像する。第2の検査用撮像部302により撮像された錠剤Tの他方面の画像データは、制御部7に送信されたあと、錠剤Tの他方面における識別情報の印刷状態の検査に使用される。
【0052】
なお、本発明では、上流側の錠剤搬送部4における錠剤Tの受け渡し部分の上方に計測センサ300が設けられている。この計測センサ300は、振動搬送部3から錠剤搬送部4に錠剤Tが受け渡された際、各列ごとに隣り合う各錠剤Tの搬送方向の間隔を計測するものである。この計測センサ300により計測された錠剤Tの搬送方向の間隔は、後述するように制御部7に送信されたあと、第2の振動搬送部32における振動の出力の制御に使用される。
【0053】
<本装置の電気的構成>
本装置の電気的構成について、
図4~
図5を参照しつつ、具体的に説明する。
【0054】
本装置は、
図4に示すように、制御部7が、搬送関連装置としての錠剤供給部2、振動搬送部3、上流側の錠剤搬送部4、下流側の錠剤搬送部5、錠剤乾燥部6をそれぞれ制御するとともに、撮像・印刷関連装置としての第1の撮像部101、第2の撮像部102、第1の錠剤印刷部201、第2の錠剤印刷部202、第1の検査用撮像部301、第2の検査用撮像部302、計測センサ300をそれぞれ制御する。
【0055】
また、前記制御部7は、計測センサ300により計測された錠剤Tの搬送方向の間隔に基づいて、振動搬送部3の第2の振動搬送部32における振動の出力を制御する。特に本実施形態では、第2の振動搬送部32の搬送トラフ321の搬送面321aに錠剤Tのコーティング成分や粉塵が付着することにより錠剤Tが滑りやすくなる事例として、錠剤Tの搬送方向の間隔が所定の下限値を下回った錠剤Tが所定単位時間に少なくとも所定個数(但し、1個を除く)存在する場合、第2の振動搬送部32における振動の出力を下げるものとする。
【0056】
例えば、所定時間の30秒間当たりに錠剤Tの搬送方向の間隔が所定の閾値(13mm)を下回った錠剤Tの個数が所定個数(4個)より多くなった場合、制御部7は錠剤Tの搬送速度が適正な速度よりも速いと判断し、第2の振動搬送部32における振動の出力を下げる。以下、具体的に説明する。
【0057】
図5(a)は、第2の振動搬送部32(振動フィーダ322)における振動数の出力現在値の時系列、
図5(b)は、計測センサ300により計測された錠剤Tの搬送方向の間隔の最小値の時系列、
図5(c)は、計測センサ300により計測された錠剤Tの搬送方向の間隔が30秒以内に閾値(13mm)を下回った錠剤Tの個数、
図5(d)は本装置における処理能力(1時間当たりに処理する錠剤Tの個数)の時系列を示す。以下、
図5(a)における区間1~4に分けて説明する。
【0058】
<区間1>
装置の運転開始直後の区間1では、
図5(b)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔の最小値が上限値(15mm)より大きいため、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が遅いと判断し、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力を上げていく。その後、
図5(b)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔の最小値が上限値(15mm)を下回ったとき、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が適正であると判断し、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力(200×0.1%)を維持し始める。
【0059】
<区間2>
区間2では、
図5(b)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔の最小値が上限値(15mm)より小さく、また
図5(c)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔が下限値(13mm)を下回る錠剤Tが所定個数(4個)より少ないため、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が適正であると判断し、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力(200×0.1%)を維持する。
【0060】
<区間3>
区間3では、
図5(c)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔が下限値(13mm)を下回る錠剤Tが所定個数(4個)よりも多いため、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が速いと判断し(つまり、錠剤Tが搬送トラフ321の上面で滑りやすくなっていると判断し)、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力を下げていく。その後、
図5(c)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔が下限値(13mm)を下回る錠剤Tが所定個数(4個)よりも少なくなったとき、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が適正であると判断し、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力(150×0.1%付近)を維持し始める。
【0061】
<区間4>
区間4では、
図5(b)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔の最小値が上限値(15mm)より小さく、また
図5(c)に示すように、錠剤Tの搬送方向の間隔が下限値(13mm)を下回る錠剤Tが所定個数(4個)より少ないため、制御部7は、錠剤Tの搬送速度が適正であると判断し、
図5(a)に示すように、第2の振動搬送部32における振動の出力(150×0.1%付近)を維持する。
【0062】
なお、振動フィーダ322の振動数の出力値は、本装置の運転を終了したときや、搬送トラフ321を洗浄後に再度取り付け直したとき、初期設定値に自動的にリセットされる。あるいは錠剤供給部2に投入する錠剤Tのロットが切り替わるタイミングなど、任意のタイミングで作業者によりリセットされてもよい。
【0063】
而して、制御部7が錠剤Tの搬送方向の間隔に基づいて第2の振動搬送部32の振動数の出力を制御することによって、錠剤Tの搬送方向の間隔を適正に調整することができる。このため、
図5(d)に示すように、本装置における処理能力(1時間当たりに処理する錠剤数)を安定に保つことができ、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態では、前記第2の振動搬送部32の搬送トラフ321の搬送面321aに錠剤Tのコーティング成分が付着することにより錠剤Tが滑りやすくなる事例について説明したが、逆に第2の振動搬送部32の搬送トラフ321の搬送面321aに錠剤Tのコーティング成分や粉塵が付着することにより錠剤Tが滑りにくくなる事例では、錠剤Tの搬送方向の間隔が所定の上限値を上回った錠剤Tが所定単位時間に少なくとも所定個数(但し、1個を除く)存在する場合、第2の振動搬送部32における振動の出力を上げるとよい。
【0065】
また、前記計測センサ300は、第2の振動搬送部32の搬送トラフ321上で複数列に振り分けて搬送された錠剤Tについて、各列ごとに錠剤Tの搬送方向の間隔を計測するものとしたが、いずれかの一ないし複数の列のみで錠剤Tの搬送方向の間隔を計測してもよい。
【0066】
また、前記計測センサ300は、上流側の錠剤搬送部4における錠剤Tの受け渡し部分の上方に設けたが、振動搬送部3における錠剤Tの受け渡し部分の上方や、上流側の錠剤搬送部4のその他の箇所の上方などに設けてもよい。あるいは、計測部(計測センサ300)としての機能を第1の撮像部101に設けてもよい。
【0067】
また、前記振動搬送部3は、第1の振動搬送部31と第2の振動搬送部32からなるものとしたが、第2の振動搬送部32からなるものとしてもよいし、あるいは第1の振動搬送部31を振動しない単なる錠剤受け部に代えてもよい。
【0068】
また、前記第2の振動搬送部32の搬送トラフ321は、複数の搬送溝321bが形成されるものとしたが、搬送溝を有しない平坦面であってもよい。
【0069】
また、本装置は、上述の搬送関連装置と撮像・印刷関連装置の構成からなるものとしたが、その他の構成からなるものであってもよい。
【0070】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…基台
2…錠剤供給部
3…振動搬送部
31…第1の振動搬送部
32…第2の振動搬送部
4…上流側の錠剤搬送部
5…下流側の錠剤搬送部
6…錠剤乾燥部
7…制御部
101…第1の撮像部
102…第2の撮像部
201…第1の錠剤印刷部
202…第2の錠剤印刷部
300…計測センサ
301…第1の検査用撮像部
302…第2の検査用撮像部