(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2019051448
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】リウ・ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】中島 将
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000191(JP,A)
【文献】特開2004-129674(JP,A)
【文献】特開2017-074115(JP,A)
【文献】特開2012-148003(JP,A)
【文献】特開2018-117692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/12
3/13-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光スキャナーを含み、前記光スキャナーにより偏向された光を被検眼に照射する光学系と、
前記被検眼にアライメント光束を投射するアライメント光学系と、
被検眼の前眼部像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記前眼部像
において前記アライメント光束に基づいて形成された像に基づいて前記被検眼の角膜において前記光が入射する角膜入射位置を特定し、
前記角膜入射位置に入射する前記光に対して前記被検眼又は所定の模型眼の光学特性を表す眼球パラメータを用いた光線追跡処理を施すことにより前記角膜入射位置に入射する光が前記被検眼の網膜において入射する網膜入射位置を特定する解析部と、
前記被検眼と前記光学系とを相対的に移動する移動機構と、
前記前眼部像において前記アライメント光束に基づいて形成された像に基づいて前記移動機構を制御した後、前記網膜における基準位置に対する前記網膜入射位置の変位に基づいて前記光スキャナーを制御する
ことによりトラッキング制御を行う制御部と、
を含む眼科装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する2以上の撮影部を含み、
前記制御部は、前記2以上の撮影部の位置と、前記2以上の撮影部により取得された2以上の撮影画像を解析することにより得られた前記像の位置とに基づいて前記移動機構を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記角膜入射位置における前記光の入射角の所定の変化量に対して、前記網膜における基準位置に対する前記網膜入射位置の変位の変化量が所定の閾値以内になるように光線追跡処理を繰り返すことにより制御情報を特定し、前記制御情報に基づいて前記光スキャナーを制御する
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記被検眼又は所定の模型眼の光学特性に対応したテーブル情報又は関数を用いて前記角膜入射位置における前記光の入射角の変化量を特定し、特定された変化量に基づいて制御情報を特定し、前記制御情報に基づいて前記光スキャナーを制御する
ことを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記光学特性は、前記被検眼の角膜形状情報を含む
ことを特徴とする請求項
1~請求項4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記光学系は、前記被検眼に測定パターンを投射し、その戻り光を検出する角膜形状測定光学系を含み、
前記角膜形状測定光学系により得られた前記戻り光の検出結果に基づいて前記被検眼の前記角膜形状情報を算出する角膜形状算出部を含む
ことを特徴とする請求項
5に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記光学特性は、前記被検眼の屈折力値を含む
ことを特徴とする請求項
1~請求項6のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記光学系は、前記被検眼に光を投射し、その戻り光を検出する屈折力測定光学系を含み、
前記屈折力測定光学系により得られた前記戻り光の検出結果に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する屈折力値算出部を含む
ことを特徴とする請求項
7に記載の眼科装置。
【請求項9】
前記光学特性は、前記被検眼の眼内距離を含む
ことを特徴とする請求項
1~請求項8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記光学系は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナーにより偏向された前記測定光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出するOCT光学系を含み、
前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記被検眼の眼内距離を算出する眼内距離算出部を含む
ことを特徴とする請求項
9に記載の眼科装置。
【請求項11】
前記解析部は、前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記基準位置を特定する
ことを特徴とする請求項
10に記載の眼科装置。
【請求項12】
前記光学系は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナーにより偏向された前記測定光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出するOCT光学系を含み、
前記解析部は、前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記基準位置を特定する
ことを特徴とする請求項1~請求項
11のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る実施形態は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置には、被検眼の画像を得るための眼科撮影装置と、被検眼の特性を測定するための眼科測定装置と、被検眼を治療するための眼科治療装置とが含まれる。
【0003】
眼科撮影装置の例として、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いて断層像を得る光干渉断層計、眼底を写真撮影する眼底カメラ、共焦点光学系を用いたレーザー走査により眼底像を得る走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)、スリットランプ顕微鏡、手術用顕微鏡などがある。
【0004】
眼科測定装置の例として、被検眼の屈折特性を測定する眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ)や、眼圧計や、角膜の特性(角膜厚、細胞分布等)を得るスペキュラーマイクロスコープや、ハルトマン-シャックセンサを用いて被検眼の収差情報を得るウェーブフロントアナライザや、視野状態を測定する視野計・マイクロペリメータなどがある。
【0005】
眼科治療装置の例として、疾患部等の治療対象部位にレーザー光を投射するレーザー治療装置や、特定の目的(白内障手術、角膜屈折矯正手術等)のための手術装置、手術用顕微鏡などがある。
【0006】
眼科装置では、検査の精度や確度の観点から、検査の開始前だけではなく検査中における装置光学系と被検眼との間の位置合わせ(アライメント、トラッキング)が極めて重要である。
【0007】
例えば、特許文献1には、角膜に光束を投射し、その反射像(プルキンエ像)を検出してアライメントを行う手法が開示されている。
【0008】
例えば、特許文献2には、定期的に取得される眼底観察画像から眼底の移動量を求め、求められた移動量に応じて光スキャナーを制御することで測定光が常に眼底の同一領域に照射されるように走査位置を補正する手法が開示されている。
【0009】
例えば、特許文献3には、前眼部を異なる方向から撮影して得られた2以上の撮影画像から被検眼の3次元位置を特定し、この3次元位置に基づいてアライメントを行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平8-275921号公報
【文献】特開2013-153793号公報
【文献】特開2013-248376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の手法では、網膜(眼底)を観察するための照明系が必要になる。それにより、光学系の構成が複雑になり、光学系の大型化及びコスト高を招く。特に、複数の光学系の光路が光学的に結合される場合、各光学系において用いられる光の波長分離が難しくなり、光学設計が複雑化し、光学系の追加が困難になる場合がある。このような光学系の追加は、光を合成又は分離するための光学素子が必要になるため、各光学系における計測に必要な光量の低下を招き、計測精度が低くなる。
【0012】
また、特許文献2に開示されているような眼底の移動量を求めるための処理にはパターンマッチング処理が含まれるため、処理負荷が重くなる。
【0013】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば被検眼の眼底と装置光学系との位置合わせを簡素な構成及び処理で実現するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの実施形態の第1態様は、光スキャナーを含み、前記光スキャナーにより偏向された光を被検眼に照射する光学系と、被検眼の前眼部像を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記前眼部像を解析することにより前記被検眼の角膜において前記光が入射する角膜入射位置を特定し、前記角膜入射位置に入射する光が前記被検眼の網膜において入射する網膜入射位置を特定する解析部と、前記網膜における基準位置に対する前記網膜入射位置の変位に基づいて前記光スキャナーを制御する制御部と、を含む眼科装置である。
【0015】
いくつかの実施形態の第2態様は、第1態様において、前記被検眼にアライメント光束を投射するアライメント光学系を含み、前記解析部は、前記前眼部像において前記アライメント光束に基づいて形成された像に基づいて前記角膜入射位置を特定する。
【0016】
いくつかの実施形態の第3態様は、第2態様において、前記被検眼と前記光学系とを相対的に移動する移動機構を含み、前記制御部は、前記前眼部像において前記アライメント光束に基づいて形成された像に基づいて前記移動機構を制御した後、前記変位に基づいて前記光スキャナーを制御する。
【0017】
いくつかの実施形態の第4態様では、第3態様において、前記取得部は、前記前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する2以上の撮影部を含み、前記制御部は、前記2以上の撮影部の位置と、前記2以上の撮影部により取得された2以上の撮影画像を解析することにより得られた前記像の位置とに基づいて前記移動機構を制御する。
【0018】
いくつかの実施形態の第5態様では、第1態様~第4態様のいずれかにおいて、前記解析部は、前記角膜入射位置に入射する前記光に対して前記被検眼又は所定の模型眼の光学特性を表す眼球パラメータを用いた光線追跡処理を施すことにより前記網膜入射位置を特定する。
【0019】
いくつかの実施形態の第6態様では、第1態様~第5態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記角膜入射位置における前記光の入射角の所定の変化量に対して、前記網膜における基準位置に対する前記網膜入射位置の変位の変化量が所定の閾値以内になるように光線追跡処理を繰り返すことにより制御情報を特定し、前記制御情報に基づいて前記光スキャナーを制御する。
【0020】
いくつかの実施形態の第7態様では、第1態様~第5態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記被検眼又は所定の模型眼の光学特性に対応したテーブル情報又は関数を用いて前記角膜入射位置における前記光の入射角の変化量を特定し、特定された変化量に基づいて制御情報を特定し、前記制御情報に基づいて前記光スキャナーを制御する。
【0021】
いくつかの実施形態の第8態様では、第5態様又は第7態様において、前記光学特性は、前記被検眼の角膜形状情報を含む。
【0022】
いくつかの実施形態の第9態様では、第8態様において、前記光学系は、前記被検眼に測定パターンを投射し、その戻り光を検出する角膜形状測定光学系を含み、前記角膜形状測定光学系により得られた前記戻り光の検出結果に基づいて前記被検眼の前記角膜形状情報を算出する角膜形状算出部を含む。
【0023】
いくつかの実施形態の第10態様では、第5態様、第7態様~第9態様のいずれかにおいて、前記光学特性は、前記被検眼の屈折力値を含む。
【0024】
いくつかの実施形態の第11態様では、第10態様において、前記光学系は、前記被検眼に光を投射し、その戻り光を検出する屈折力測定光学系を含み、前記屈折力測定光学系により得られた前記戻り光の検出結果に基づいて前記被検眼の屈折力値を算出する屈折力値算出部を含む。
【0025】
いくつかの実施形態の第12態様では、第5態様、第7態様~第11態様のいずれかにおいて、前記光学特性は、前記被検眼の眼内距離を含む。
【0026】
いくつかの実施形態の第13態様では、第12態様において、前記光学系は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナーにより偏向された前記測定光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出するOCT光学系を含み、前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記被検眼の眼内距離を算出する眼内距離算出部を含む。
【0027】
いくつかの実施形態の第14態様では、第13態様において、前記解析部は、前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記基準位置を特定する。
【0028】
いくつかの実施形態の第15態様では、第1態様~第12態様のいずれかにおいて、前記光学系は、光源からの光を参照光と測定光とに分割し、前記光スキャナーにより偏向された前記測定光を前記被検眼に投射し、前記被検眼からの戻り光と前記参照光との干渉光を検出するOCT光学系を含み、前記解析部は、前記OCT光学系により得られた前記干渉光の検出結果に基づいて前記基準位置を特定する。
【0029】
なお、上記した複数の態様に係る構成を任意に組み合わせることが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば被検眼の眼底と装置光学系との位置合わせを簡素な処理及び処理で実現するための新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の光学系の構成の一例を表す概略図である。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
【
図5】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
【
図6】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
【
図7】実施形態に係る眼科装置の処理系の構成の一例を表す概略図である。
【
図8】実施形態に係る眼科装置が実行する処理を説明するための概略図である。
【
図9】実施形態に係る眼科装置が実行する処理を説明するための概略図である。
【
図10】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【
図11】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【
図12】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【
図13】実施形態に係る眼科装置が実行する処理を説明するための概略図である。
【
図14】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【
図15】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【
図16】実施形態に係る眼科装置が実行する処理を説明するための概略図である。
【
図17】実施形態に係る眼科装置の動作例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明に係る眼科装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
【0033】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼の前眼部像を取得する取得部と、光スキャナーを含み、光スキャナーにより偏向された光を被検眼(例えば、眼底、網膜)に照射する光学系とを備える。いくつかの実施形態に係る光学系は、光スキャナーにより偏向された光を被検眼に照射し、その戻り光を検出するように構成される。実施形態に係る光学系の例として、屈折力測定光学系、角膜形状測定光学系、OCT光学系、SLO光学系、レーザー照射光学系などがある。
【0034】
眼科装置は、網膜(眼底)において光学系からの光が入射する網膜入射位置を被検眼の前眼部像から特定(推定)し、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位に基づいて光スキャナーを制御する。いくつかの実施形態では、角膜において光学系からの光が入射する角膜入射位置が被検眼の前眼部像から特定され、特定された角膜入射位置に基づいて網膜入射位置が特定される。網膜における基準位置は、他の光学系により得られた検出結果(例えば、断層像)から特定されてもよいし、操作部を用いてユーザにより指定されてもよい。それにより、網膜を観察することなく、網膜上の所望の位置を中心に光スキャナーを制御することが可能になるため、当該位置に対して光学系を高精度に位置合わせすることが可能になる。このような制御は、被検眼と光学系とのアライメントやトラッキングに用いることが可能である。
【0035】
以下、実施形態に係る眼科装置が、上記の手法を用いて、主にトラッキングを行う場合について説明する。
【0036】
実施形態に係る眼科装置は、OCTを用いた計測や撮影を実行可能である。いくつかの実施形態に係る眼科装置は、OCT計測等に加えて、角膜形状測定(ケラト測定)及び屈折力測定(レフ測定)の少なくとも一方を実行可能である。
【0037】
以下、実施形態では、OCTを用いた計測等においてスウェプトソースタイプのOCTの手法を用いる場合について特に詳しく説明するが、他のタイプ(例えば、スペクトラルドメインタイプ)のOCTを用いる眼科装置に対して、実施形態に係る構成を適用することも可能である。
【0038】
いくつかの実施形態に係る眼科装置は、更に、自覚検査を行うための自覚検査光学系や、その他の他覚測定を行うための他覚測定系を含む。
【0039】
自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0040】
他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。他覚測定には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。その他の他覚測定には、眼圧測定、眼底撮影等がある。
【0041】
以下、眼底共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の眼底と光学的に略共役な位置であり、被検眼の眼底と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。同様に、瞳孔共役位置は、アライメントが完了した状態での被検眼の瞳孔と光学的に略共役な位置であり、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置又はその近傍を意味するものとする。
【0042】
<光学系の構成>
図1に、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。実施形態に係る眼科装置1000は、被検眼Eを観察するための光学系と、被検眼Eを検査するための光学系と、これらの光学系の光路を波長分離するダイクロイックミラーとを含む。被検眼Eを観察するための光学系として、前眼部観察(撮影)系5が設けられている。被検眼Eを検査するための光学系としてOCT光学系やレフ測定光学系(屈折力測定光学系)などが設けられている。
【0043】
眼科装置1000は、アライメント光投射系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7、及びOCT光学系8を含む。以下では、例えば、前眼部観察系5が主に940nm~1000nmの光を用い、レフ測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)が830nm~880nmの光を用い、固視投影系4が400nm~700nmの光を用い、OCT光学系8が1000nm~1100nmの光を用いるものとする。
【0044】
(前眼部観察系5)
前眼部観察系5は、被検眼Eの前眼部を動画撮影する。前眼部観察系5を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は瞳孔共役位置に配置されている。前眼部照明光源50は、被検眼Eの前眼部に照明光(例えば、赤外光)を照射する。被検眼Eの前眼部により反射された光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、絞り(テレセン絞り)53に形成された孔部を通過し、ハーフミラー23を透過し、リレーレンズ55及び56を通過し、ダイクロイックミラー76を透過する。ダイクロイックミラー52は、レフ測定光学系の光路と前眼部観察系5の光路とを合成(分離)する。ダイクロイックミラー52は、これらの光路を合成する光路合成面が対物レンズ51の光軸に対して傾斜して配置される。ダイクロイックミラー76を透過した光は、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサー)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。撮像素子59の出力(映像信号)は、後述の処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を後述の表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。前眼部像E´は、後述の前眼部カメラ300を用いて取得されてもよい。
【0045】
(アライメント光投射系2)
アライメント光投射系2は、前眼部観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)及び光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。アライメント光投射系2は、ハーフミラー23により前眼部観察系5の光路から分岐された光路に設けられたアライメント光源21とコリメータレンズ22とを含む。アライメント光源21から出力された光は、コリメータレンズ22を通過し、ハーフミラー23により反射され、前眼部観察系5を通じて被検眼Eに投射される。被検眼Eの角膜Crによる反射光は、前眼部観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0046】
この反射光に基づく像(輝点像)Brは前眼部像E´に含まれる。処理部9は、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示部の表示画面に表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行うことができる。手動でZアライメントを行う場合、ユーザは、表示部の表示画面に表示された前眼部像E´を参照しながら光学系の移動操作を行うことができる。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、後述するように被検眼Eの所定部位(例えば、瞳孔中心位置)の位置と輝点像Brの位置とに基づいて、所定のアライメント完了条件を満たすように光学系を移動させる機構を制御する。
【0047】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、被検眼Eの角膜Crの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Crに投射する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、被検眼Eの角膜Crにリング状得光束(円弧状又は円周状の測定パターン)が投射される。被検眼Eの角膜Crからの反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´とともに検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで、角膜Crの形状を表す角膜形状パラメータを算出する。
【0048】
(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)
レフ測定光学系は、眼屈折力測定に用いられるレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を含む。レフ測定投射系6は、眼屈折力測定用の光束(例えば、リング状光束)(赤外光)を眼底Efに投射する。レフ測定受光系7は、この光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。レフ測定投射系6は、レフ測定受光系7の光路に設けられた孔開きプリズム65によって分岐された光路に設けられる。孔開きプリズム65に形成されている孔部は、瞳孔共役位置に配置される。レフ測定受光系7を経由する光学系において、撮像素子59の撮像面は眼底共役位置に配置される。
【0049】
いくつかの実施形態では、レフ測定光源61は、高輝度光源であるSLD(Superluminescent Diode)光源である。レフ測定光源61は、光軸方向に移動可能である。レフ測定光源61は、眼底共役位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、リレーレンズ62を通過し、円錐プリズム63の円錐面に入射する。円錐面に入射した光は偏向され、円錐プリズム63の底面から出射する。円錐プリズム63の底面から出射した光は、リング絞り64にリング状に形成された透光部を通過する。リング絞り64の透光部を通過した光(リング状光束)は、孔開きプリズム65の孔部の周囲に形成された反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、ダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された光は、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51を通過し、被検眼Eに投射される。ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化や光源に起因するスペックルノイズの低減のために用いられる。
【0050】
眼底Efに投射されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びダイクロイックミラー67により反射される。ダイクロイックミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、孔開きプリズム65の孔部を通過し、リレーレンズ71を通過し、反射ミラー72により反射され、リレーレンズ73及び合焦レンズ74を通過する。合焦レンズ74は、レフ測定受光系7の光軸に沿って移動可能である。合焦レンズ74を通過した光は、反射ミラー75により反射され、ダイクロイックミラー76により反射され、結像レンズ58により撮像素子59の撮像面に結像される。処理部9は、撮像素子59からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの眼屈折度数(眼屈折力値)を算出する。例えば、眼屈折度数は、球面度数、乱視度数及び乱視軸角度、又は等価球面度数を含む。
【0051】
(固視投影系4)
ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に、後述のOCT光学系8が設けられる。ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路から分岐された光路に固視投影系4が設けられる。
【0052】
固視投影系4は、固視標を被検眼Eに呈示する。固視投影系4の光路には、固視ユニット40が配置されている。固視ユニット40は、後述の処理部9からの制御を受け、固視投影系4の光路に沿って移動可能である。固視ユニット40は、液晶パネル41を含む。
【0053】
処理部9による制御を受けた液晶パネル41は、固視標を表すパターンを表示する。液晶パネル41の画面上におけるパターンの表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。固視標を表すパターンの表示位置を任意に変更することが可能である。
【0054】
液晶パネル41からの光は、リレーレンズ42を通過し、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射される。ダイクロイックミラー52により反射された光は、対物レンズ51を通過して眼底Efに投射される。いくつかの実施形態では、液晶パネル41及びリレーレンズ42のそれぞれは、独立に光軸方向に移動可能である。
【0055】
なお、液晶パネル41に代えて、フィルム等に視標等が印刷された透過型のレフ測定用の視標チャートと、視標チャートを照明する照明用光源と、OCT計測用の点光源とが設けられていてもよい。
【0056】
図2に、実施形態に係る固視投影系4の他の構成例を示す。
図2において、
図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0057】
本例に係る固視投影系4に設けられた固視ユニット40には、液晶パネル41に代えて、照明用光源45aと、視標チャート46aと、固視光源47aとが設けられている。照明用光源45aからダイクロイックミラー83に向けて、固視光源47a、視標チャート46a、及びリレーレンズ42の順序で配置される。視標チャート46aは、照明用光源45aと被検眼Eとの間に配置され、風景チャートが表された透過型の視標チャートである。いくつかの実施形態において、視標チャート46aは、風景チャートが印刷された透過性のフィルムである。いくつかの実施形態において、固視光源47aは、所定の発光サイズを有する点光源である。
【0058】
後述のレフ測定を行うとき照明用光源45aが点灯され、照明用光源45aからの光で視標チャート46aを照明することにより風景チャートが被検眼Eに投影される。後述のOCT計測を行うとき固視光源47aが点灯され、風景チャートより視角が狭い輝点(ドット視標)(第2固視標)が被検眼Eに投影される。いくつかの実施形態では、レフ測定を行うとき固視光源47aが消灯され、OCT計測を行うとき照明用光源45aが消灯される。それにより、レフ測定を行うときに風景チャートが被検眼Eに呈示され、OCT計測を行うときに輝点が被検眼Eに呈示される。
【0059】
いくつかの実施形態では、OCT計測を行うとき固視光源47aが点滅するように制御される。いくつかの実施形態では、複数の固視光源47aが設けられ、複数の固視光源47aを選択的に点灯させることにより、輝点の投影位置を変更したり、移動させたりする。
【0060】
図1に示す眼科装置1000には、被検眼Eの前眼部を異なる方向から撮影する2以上の前眼部カメラ300が設けられている。この実施形態では、眼科装置1000の被検者に対向する面に2台の前眼部カメラが設けられているが、実施形態に係る前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数である。2台の前眼部カメラのそれぞれは、
図1に示すように、対物レンズ51の光軸(前眼部観察系5の光路(光軸)、OCT光学系8の光路(光軸))から外れた位置に設けられている。以下、2台のカメラをまとめて符号300で表すことがある。
【0061】
この実施形態では、前眼部観察系5とは別個に前眼部カメラ300を設けているが、少なくとも前眼部観察系5を用いて同様の前眼部観察を行うことができる。いくつかの実施形態では、2以上の前眼部カメラのうちの1つは、前眼部観察系5(撮像素子59)を含む。実施形態に係る眼科装置1000は、異なる2以上の方向から前眼部を撮影可能に構成されていればよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、2以上の前眼部カメラのそれぞれの近傍に少なくとも1つの前眼部照明光源50(赤外光源等)を設けることができる。例えば、前眼部カメラ300の一方の上方近傍に設けられた前眼部照明光源及び下方近傍に設けられた前眼部照明光源と、前眼部カメラ300の他方の上方近傍に設けられた前眼部照明光源及び下方近傍に設けられた前眼部照明光源とが設けられる。
【0063】
2以上の前眼部カメラは、異なる2以上の方向から実質的に同時に前眼部を撮影することができる。「実質的に同時」とは、例えば、2以上の前眼部カメラによる撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。それにより、被検眼Eが実質的に同じ位置(向き)にあるときの画像を2以上の前眼部カメラによって取得することができる。
【0064】
また、2以上の前眼部カメラによる撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよい。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記のような実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、これを実現することができる。
【0065】
(OCT光学系8)
図1に示すOCT光学系8は、OCT計測を行うための光学系である。例えば、OCT計測よりも前に実施されたレフ測定結果に基づいて、光ファイバーf1の端面が撮影部位(眼底Ef又は前眼部)と光学系に共役となるように合焦レンズ87の位置が調整される。或いは、例えば、OCT計測により得られる干渉信号の強度が最大になるように合焦レンズ87の位置が調整される。
【0066】
OCT光学系8は、ダイクロイックミラー67によりレフ測定光学系の光路から波長分離された光路に設けられる。上記の固視投影系4の光路は、ダイクロイックミラー83によりOCT光学系8の光路に結合される。それにより、OCT光学系8及び固視投影系4のそれぞれの光軸を同軸で結合することができる。
【0067】
OCT光学系8は、OCTユニット100を含む。
図2に示すように、OCTユニット100において、OCT光源101は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源を含んで構成される。波長掃引型光源は、共振器を含むレーザー光源を含んで構成される。OCT光源101は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0068】
図3に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割する機能と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能と、この干渉光を検出する機能とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号、干渉信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、処理部9に送られる。
【0069】
OCT光源101は、例えば、出射光の波長(1000nm~1100nmの波長範囲)を高速で変化させる近赤外波長可変レーザーを含む。OCT光源101から出力された光L0は、光ファイバー102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、光ファイバー104によりファイバーカプラー105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0070】
参照光LRは、光ファイバー110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
【0071】
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバー117に入射する。光ファイバー117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバー119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバー121によりファイバーカプラー122に導かれる。
【0072】
一方、ファイバーカプラー105により生成された測定光LSは、光ファイバーf1により導かれてコリメータレンズユニット89により平行光束に変換され、光スキャナー88、合焦レンズ87、リレーレンズ85、及び反射ミラー84を経由し、ダイクロイックミラー83により反射される。
【0073】
光スキャナー88は、測定光LSを1次元的又は2次元的に偏向する。光スキャナー88は、例えば、第1ガルバノミラーと、第2ガルバノミラーとを含む。第1ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する水平方向に撮影部位(眼底Ef又は前眼部)をスキャンするように測定光LSを偏向する。第2ガルバノミラーは、OCT光学系8の光軸に直交する垂直方向に撮影部位をスキャンするように、第1ガルバノミラーにより偏向された測定光LSを偏向する。このような光スキャナー88による測定光LSの走査態様としては、例えば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋スキャンなどがある。
【0074】
ダイクロイックミラー83により反射された測定光LSは、リレーレンズ82を通過し、反射ミラー81により反射され、ダイクロイックミラー67を透過し、ダイクロイックミラー52により反射され、対物レンズ51により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラー105に導かれ、光ファイバー128を経由してファイバーカプラー122に到達する。
【0075】
ファイバーカプラー122は、光ファイバー128を介して入射された測定光LSと、光ファイバー121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラー122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバー123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0076】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器125は、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
【0077】
DAQ130には、OCT光源101からクロックKCが供給される。クロックKCは、OCT光源101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。OCT光源101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を処理部9の演算処理部220に送られる。演算処理部220は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、サンプリングデータに基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算処理部220は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
【0078】
本例では、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114が設けられているが、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
【0079】
処理部9は、レフ測定光学系を用いて得られた測定結果から眼屈折度数を算出し、算出された眼屈折度数に基づいて、眼底Efとレフ測定光源61と撮像素子59とが共役となる位置に、レフ測定光源61及び合焦レンズ74それぞれを光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、合焦レンズ74の移動に連動してOCT光学系8の合焦レンズ87をその光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、処理部9は、レフ測定光源61及び合焦レンズ74の移動に連動して液晶パネル41(固視ユニット40)をその光軸方向に移動させる。
【0080】
<処理系の構成>
眼科装置1000の処理系の構成について説明する。眼科装置1000の処理系の機能的構成の例を
図4~
図7に示す。
図4は、眼科装置1000の処理系の機能ブロック図の一例を表す。
図5は、データ処理部225の機能ブロック図の一例を表す。
図6は、
図5のアライメント処理部350の機能ブロック図の一例を表す。
図7は、
図5のトラッキング処理部360の機能ブロック図の一例を表す。
【0081】
処理部9は、眼科装置1000の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9は、プロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0082】
処理部9は、実施形態に係る「眼科情報処理装置」の一例である。処理部9の機能を実現するためのプログラムは、実施形態に係る「眼科情報処理プログラム」の一例である。
【0083】
処理部9は、制御部210と、演算処理部220とを含む。また、眼科装置1000は、移動機構200と、表示部270と、操作部280と、通信部290とを含む。
【0084】
移動機構200は、アライメント光投射系2、ケラト測定系3、固視投影系4、前眼部観察系5、レフ測定投射系6、レフ測定受光系7及びOCT光学系8等の光学系(装置光学系)が収納されたヘッド部を前後左右方向に移動させるための機構である。例えば、移動機構200には、ヘッド部を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。制御部210(主制御部211)は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構200に対する制御を行う。
【0085】
移動機構200に対する制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカス調整が実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントとピントが合った好適な位置関係を維持する機能である。
【0086】
(制御部210)
制御部210は、プロセッサを含み、眼科装置1000の各部を制御する。制御部210は、主制御部211と、記憶部212と、光学系位置取得部213とを含む。光学系位置取得部213の機能は、主制御部211により実現されてもよい。記憶部212には、眼科装置1000を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。コンピュータプログラムには、光源制御用プログラム、検出器制御用プログラム、光スキャナー制御用プログラム、光学系制御用プログラム、アライメント制御用プログラム、トラッキング制御用プログラム、演算処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部211が動作することにより、制御部210は制御処理を実行する。
【0087】
主制御部211は、測定制御部として眼科装置の各種制御を行う。
【0088】
アライメント光投射系2に対する制御には、アライメント光源21の制御などがある。アライメント光源21の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、アライメント光源21の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。
【0089】
ケラト測定系3に対する制御には、ケラトリング光源32の制御などがある。ケラトリング光源32の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、ケラトリング光源32の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。主制御部211は、撮像素子59により検出されたケラトリング像に対する公知の演算を演算処理部220に実行させる。それにより、被検眼Eの角膜形状パラメータが求められる。
【0090】
固視投影系4に対する制御には、液晶パネル41の制御や固視ユニット40の移動制御などがある。液晶パネル41の制御には、固視標の表示のオン・オフや、固視標の表示位置の切り替えなどがある。
【0091】
例えば、固視投影系4には、液晶パネル41(又は固視ユニット40)を光軸方向に移動する移動機構が設けられる。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、少なくとも液晶パネル41を光軸方向に移動させる。それにより、液晶パネル41と眼底Efとが光学的に共役となるように液晶パネル41の位置が調整される。
【0092】
固視投影系4が
図2に示すように構成されている場合、固視投影系4に対する制御には、上記の固視ユニット40の移動制御、照明用光源45aの制御、固視光源47aの制御などがある。照明用光源45aの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整などがある。固視光源47aの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整などがある。
【0093】
前眼部観察系5に対する制御には、前眼部照明光源50の制御、撮像素子59の制御などがある。前眼部照明光源50の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、前眼部照明光源50の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。撮像素子59の制御には、撮像素子59の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。主制御部211は、撮像素子59により検出された信号を取り込み、取り込まれた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220に実行させる。
【0094】
前眼部カメラ300に対する制御には、2以上の前眼部カメラの撮影開始タイミングや各フレームの撮影タイミングの同期制御や、各前眼部カメラの露光調整やゲイン調整やフレームレート調整などがある。それにより、被検眼Eの前眼部が実質的に同時に撮影される。
【0095】
レフ測定投射系6に対する制御には、レフ測定光源61の制御、ロータリープリズム66の制御などがある。レフ測定光源61の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。それにより、レフ測定光源61の点灯と非点灯とが切り替えられたり、光量が変更されたりする。例えば、レフ測定投射系6は、レフ測定光源61を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、レフ測定光源61を光軸方向に移動させる。ロータリープリズム66の制御には、ロータリープリズム66の回転制御などがある。例えば、ロータリープリズム66を回転させる回転機構が設けられており、主制御部211は、この回転機構を制御することによりロータリープリズム66を回転させる。
【0096】
レフ測定受光系7に対する制御には、合焦レンズ74の制御などがある。合焦レンズ74の制御には、合焦レンズ74の光軸方向への移動制御などがある。例えば、レフ測定受光系7は、合焦レンズ74を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ74を光軸方向に移動させる。主制御部211は、レフ測定光源61と眼底Efと撮像素子59とが光学的に共役となるように、例えば被検眼Eの屈折力に応じてレフ測定光源61及び合焦レンズ74をそれぞれ光軸方向に移動させることが可能である。
【0097】
OCT光学系8に対する制御には、OCT光源101の制御、光スキャナー88の制御、合焦レンズ87の制御、コーナーキューブ114の制御、検出器125の制御、DAQ130の制御などがある。OCT光源101の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナー88の制御には、第1ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御、第2ガルバノミラーによる走査位置や走査範囲や走査速度の制御などがある。
【0098】
合焦レンズ87の制御には、合焦レンズ87の光軸方向への移動制御、撮影部位に対応した合焦基準位置への合焦レンズ87の移動制御、撮影部位に対応した移動範囲(合焦範囲)内での移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、合焦レンズ87を光軸方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、合焦レンズ87を光軸方向に移動させる。いくつかの実施形態では、眼科装置1000には、合焦レンズ74及び87を保持する保持部材と、保持部材を駆動する駆動部が設けられる。主制御部211は、駆動部を制御することにより合焦レンズ74及び87の移動制御を行う。主制御部211は、例えば、合焦レンズ74の移動に連動して合焦レンズ87を移動させた後、干渉信号の強度に基づいて合焦レンズ87だけを移動させるようにしてもよい。
【0099】
コーナーキューブ114の制御には、コーナーキューブ114の光路に沿った移動制御などがある。例えば、OCT光学系8は、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動する移動機構を含む。この移動機構には、移動機構200と同様に、当該移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。主制御部211は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより移動機構に対する制御を行い、コーナーキューブ114を光路に沿った方向に移動させる。検出器125の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整や検出信号のデータ転送制御などがある。主制御部211は、検出器125により検出された信号をDAQ130によりサンプリングし、サンプリングされた信号に基づく画像の形成等の処理を演算処理部220(画像形成部224)に実行させる。
【0100】
主制御部211は、OCT計測を行う前に複数の予備的な動作を実行可能である。予備的な動作としては、フォーカス調整、偏光調整などがある。例えば、フォーカス調整は、OCT計測の干渉感度に基づいて行われる。例えば、上記のように、干渉強度が最大となるような合焦レンズ87の位置を求め、その位置に合焦レンズ87を移動させることにより、フォーカス調整を実行することができる。偏光調整においては、測定光LSと参照光LRとの干渉効率を最適化するために参照光LRの偏光状態が調整される。
【0101】
また、主制御部211は、表示制御部として、眼屈折度数算出部221により算出された眼屈折度数の測定値、角膜形状算出部222により算出された角膜形状を表すパラメータ、後述の眼内パラメータ、画像形成部224により形成された断層像、後述のデータ処理部225の処理結果に対応した情報を表示部270に表示させる。
【0102】
更に、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
【0103】
(記憶部212)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば他覚測定の測定結果、OCT計測の計測結果、断層像の画像データ、前眼部像の画像データ、被検眼情報、後述の収差情報、後述の模型眼データ(標準値データ)などがある。被検眼情報は、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。
【0104】
収差情報は、各前眼部カメラ300に対応して、光学系の影響により撮影画像に発生する歪曲収差を定量化したパラメータを含む。光学系が撮影画像に与える歪曲収差に関連するパラメータとして、主点距離、主点位置(縦方向、横方向)、レンズのディストーション(放射方向、接線方向)などがある。例えば、収差情報は、各前眼部カメラ300の識別情報と、これに対応する補正係数とを関連付けた情報(例えばテーブル情報)として構成される。
【0105】
また、記憶部212には、眼球の光学特性を表す眼内パラメータ212Aが記憶されている。いくつかの実施形態に係る眼内パラメータ212Aは、公知の模型眼等の眼球モデルのパラメータを含む。公知の模型眼として、Gullstrand模型眼、Helmholtz模型眼などがある。このようなパラメータには、サイズパラメータ、形状パラメータ及び光学的パラメータがある。サイズパラメータは、眼の一部又は全体のサイズを表す。形状パラメータは、眼の部位の形状を表す。光学的パラメータは、眼の部位の光学的機能を表す。
【0106】
パラメータの例として、眼軸長データ、前房深度データ、水晶体の形状を表す水晶体形状データ(水晶体曲率、水晶体厚など)、角膜の形状を表す角膜形状データ(角膜曲率半径、角膜厚など)などがある。眼内パラメータ212Aの少なくとも一部は、被検眼Eの実測値(又は実測値から得られた値)に置き換えられてもよい。被検眼Eの実測値(例えば、眼屈折度数、角膜形状パラメータ、眼軸長)は、眼科装置1000又は外部の装置により取得される。いくつかの実施形態では、上記のパラメータは、電子カルテシステム、医用画像アーカイビングシステム、又は外部装置等から取得される。
【0107】
また、記憶部212には、眼科装置を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
【0108】
(光学系位置取得部213)
光学系位置取得部213は、眼科装置1000に搭載され、被検眼Eのデータを光学的に取得するための上記の装置光学系の現在位置を取得する。
【0109】
例えば、光学系位置取得部213は、移動機構200の移動制御の内容を表す情報を主制御部211から受けて、
図1に示す装置光学系の現在位置を取得する。この場合、主制御部211は、所定のタイミング(装置起動時、患者情報入力時など)で移動機構200を制御して、装置光学系を所定の初期位置に移動させる。それ以降、主制御部211は、移動機構200を制御する度に、その制御内容を記録する。それにより、制御内容の履歴が得られる。光学系位置取得部213は、この履歴を参照して現在までの制御内容を取得し、この制御内容に基づいて装置光学系の現在位置を求める。
【0110】
いくつかの実施形態では、主制御部211が移動機構200を制御する度にその制御内容を光学系位置取得部213に送信する。光学系位置取得部213は、当該制御内容を受ける度に装置光学系の現在位置を逐次求める。
【0111】
いくつかの実施形態では、光学系位置取得部213は、装置光学系の位置を検知する位置センサーを含む。
【0112】
主制御部211は、光学系位置取得部213により取得された現在位置と、後述のデータ処理部225により決定された移動目標位置とに基づいて、移動機構200を制御することができる。それにより、装置光学系を移動目標位置に移動させることができる。例えば、主制御部211は、現在位置と移動目標位置との差分を求める。この差分値は、例えば、現在位置を始点とし、移動目標位置を終点とするベクトル値である。このベクトル値は、例えば、XYZ座標系で表現される3次元ベクトル値である。
【0113】
(演算処理部220)
演算処理部220は、眼屈折度数算出部221と、角膜形状算出部222と、画像形成部224と、データ処理部225とを含む。
【0114】
演算処理部220の機能は、1以上のプロセッサにより実現される。この場合、演算処理部220の機能を実現するプログラムが記憶装置等(記憶部212)記憶され、1以上のプロセッサが、対応するプログラムに従って処理を実行する。
【0115】
(眼屈折度数算出部221)
眼屈折度数算出部221は、レフ測定投射系6により眼底Efに投影されたリング状光束(リング状の測定パターン)の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたリング像(パターン像)を解析する。例えば、眼屈折度数算出部221は、得られたリング像が描出された画像における輝度分布からリング像の重心位置を求め、この重心位置から放射状に延びる複数の走査方向に沿った輝度分布を求め、この輝度分布からリング像を特定する。続いて、眼屈折度数算出部221は、特定されたリング像の近似楕円を求め、この近似楕円の長径及び短径を公知の式に代入することによって球面度数、乱視度数及び乱視軸角度(眼屈折度数)を求める。或いは、眼屈折度数算出部221は、基準パターンに対するリング像の変形及び変位に基づいて眼屈折度数のパラメータを求めることができる。
【0116】
(角膜形状算出部222)
角膜形状算出部222は、ケラト測定系3により被検眼Eの角膜Crに投影されたリング状光束の戻り光を撮像素子59が受光することにより得られたケラトリング像を解析することにより被検眼Eの角膜形状情報を算出する。
【0117】
角膜形状情報は、例えば、公知の眼科装置を用いて測定可能な、角膜の形状を表す任意のパラメータ値を含む。典型的には、角膜形状情報は、曲率半径(曲率)、強主経線の向き、強主経線に沿う曲率半径(度数)、弱主経線の向き、弱主経線に沿う曲率半径(度数)、楕円率、離心率、扁平率、不正乱視も含むトポグラフ、ゼルニケ多項式を用いた収差情報などのいずれかを含んでよい。
【0118】
例えば、角膜形状算出部222は、得られたケラトリング像を解析することにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、角膜曲率半径に基づいて角膜の形状を表すパラメータを算出する。角膜形状算出部222は、得られたケラトリング像に対して演算処理を施すことにより角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出することができる。
【0119】
(画像形成部224)
画像形成部224は、検出器125により検出された信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。すなわち、画像形成部224は、干渉光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eの画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプのOCTと同様に、フィルター処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。このようにして取得される画像データは、複数のAライン(被検眼E内における各測定光LSの経路)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データを含むデータセットである。
【0120】
画質を向上させるために、同じパターンでのスキャンを複数回繰り返して収集された複数のデータセットを重ね合わせる(加算平均する)ことができる。
【0121】
例えば、画像形成部224の機能は、画像形成プロセッサにより実現される。この場合、画像形成部224の機能を実現するプログラムが記憶装置等(記憶部212)記憶され、画像形成プロセッサが、対応するプログラムに従って処理を実行する。
【0122】
(データ処理部225)
データ処理部225は、画像形成部224により形成された断層像に対して各種のデータ処理(画像処理)や解析処理を施す。例えば、データ処理部225は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部225は、前眼部観察系5を用い得られた画像(前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
【0123】
例えば、データ処理部225は、OCT計測により得られた干渉光の検出結果、又は当該検出結果に基づいて形成されたOCT画像に対して所定の解析処理を行う。所定の解析処理には、被検眼Eにおける所定の部位(組織、病変部)の特定;指定された部位間の距離(層間距離)、面積、角度、比率、密度の算出;指定された計算式による演算;所定の部位の形状の特定;これらの統計値の算出;計測値、統計値の分布の算出;これら解析処理結果に基づく画像処理などがある。所定の組織には、血管、視神経乳頭、網膜、中心窩、黄斑などがある。所定の病変部には、白斑、出血などがある。
【0124】
データ処理部225は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行することにより、被検眼Eのボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することができる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部225は、このボリュームデータに対してレンダリング処理を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像を形成する。
【0125】
図5に示すように、データ処理部225は、アライメント処理部350と、トラッキング処理部360とを含む。
【0126】
アライメント処理部350は、前眼部カメラ300により得られた2以上の撮影画像に基づいて前眼部における特徴部位(例えば瞳孔中心)を基準として装置光学系の位置合わせを実行するためのデータ処理を行う。トラッキング処理部360は、アライメント処理部350の処理結果に基づく位置合わせが完了した後、光スキャナー88の偏向制御により被検眼Eに対して装置光学系の位置合わせが行われた状態を継続する(広義の位置合わせを行う)ためのデータ処理を行う。トラッキング処理部360は、測定光LSが入射する網膜入射位置を前眼部像から特定し、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位に基づいて光スキャナー88を制御するためのデータ処理を行う。網膜入射位置は、網膜(眼底Ef)における所定の層領域(例えば、内境界膜から網膜色素上皮層までのいずれかの層)に測定光LSが入射する位置である。網膜入射位置は、脈絡膜において測定光LSが入射する位置であってよい。
【0127】
(アライメント処理部350)
図6に示すように、アライメント処理部350は、画像補正部351と、プルキンエ像特定部352と、プルキンエ像位置特定部353と、瞳孔中心特定部354と、瞳孔中心位置特定部355と、移動目標位置決定部356とを含む。
【0128】
(画像補正部351)
画像補正部351は、前眼部カメラ300により得られた撮影画像の歪みを補正する。画像補正部351は、記憶部212に記憶されている収差情報に基づいて撮影画像の歪みを補正することができる。この処理は、例えば、歪曲収差を補正するための補正係数に基づく公知の画像処理技術によって実行される。なお、前眼部カメラ300の光学系が撮影画像に与える歪曲収差が十分に小さい場合などには、収差情報及び画像補正部351が設けられていなくてよい。
【0129】
(プルキンエ像特定部352)
主制御部211は、例えば、アライメント光源21を点灯させる。それにより、前眼部にアライメント光束が投射され、プルキンエ像が形成される。プルキンエ像は、角膜曲率半径の2分の1の距離だけ角膜頂点から軸方向(Z方向)に偏位した位置に形成される。
【0130】
アライメント光束が投射されている前眼部は、2つの前眼部カメラ300によって実質的に同時に撮影される。2つの前眼部カメラ300により実質的に同時に取得された2つの撮影画像は、必要に応じて画像補正部351による補正を受け、プルキンエ像特定部352に入力される。
【0131】
プルキンエ像特定部352は、2つの撮影画像のそれぞれを解析することでプルキンエ像(プルキンエ像に相当する画像領域)を特定する。この特定処理は、例えば従来と同様に、プルキンエ像に相当する輝点(高輝度の画素)を探索するための、画素値に関する閾値処理を含む。それにより、プルキンエ像に相当する撮影画像中の画像領域が特定される。
【0132】
プルキンエ像特定部352は、プルキンエ像に相当する画像領域における代表点の位置を求めることができる。代表点は、例えば、当該画像領域の中心点又は重心点であってよい。この場合、プルキンエ像特定部352は、例えば、当該画像領域の周縁の近似円又は近似楕円を求め、近似円又は近似楕円の中心又は重心を求めることができる。
【0133】
(プルキンエ像位置特定部353)
プルキンエ像位置特定部353は、プルキンエ像特定部352から入力された情報に基づいて、プルキンエ像特定部352により特定されたプルキンエ像の位置を特定する。プルキンエ像の位置は、少なくともX方向の位置(X座標値)及びY方向の位置(Y座標値)を含んでよく、更にZ方向の位置(Z座標値)を含んでもよい。
【0134】
すなわち、プルキンエ像特定部352は、2つの前眼部カメラ300を用いて取得された2つの撮影画像(第1撮影画像、第2撮影画像)それぞれについてプルキンエ像を特定する。ここで、2つの撮影画像は、対物レンズ51の光軸と異なる方向からの撮影により取得された画像である。XYアライメントが実質的に合っているとき、2つの撮影画像に描出されたプルキンエ像は対物レンズ51の光軸上に形成される。
【0135】
2つの前眼部カメラ300の見込角(対物レンズ51の光軸に対する角度)が既知であり、撮影倍率も既知であるから、第1撮影画像内のプルキンエ像の位置と第2撮影画像内のプルキンエ像の位置とに基づいて、眼科装置1000(前眼部カメラ300)に対する前眼部に形成されたプルキンエ像の相対位置(実空間における3次元位置)を求めることができる。
【0136】
また、第1撮影画像内における瞳孔領域とプルキンエ像との相対位置(ズレ量)と、第2撮影画像内における瞳孔領域とプルキンエ像との相対位置(ズレ量)とに基づいて、被検眼Eの瞳孔と前眼部に形成されたプルキンエ像との間の相対位置を求めることができる。
【0137】
(瞳孔中心特定部354)
瞳孔中心特定部354は、前眼部カメラ300により得られた各撮影画像、又は画像補正部351により歪曲収差が補正された画像を解析することで、前眼部の所定の特徴点に相当する当該撮影画像中の位置を特定する。この実施形態では、被検眼Eの瞳孔中心が特定される。なお、瞳孔中心として、瞳孔の重心を求めてもよい。また、瞳孔中心(瞳孔重心)以外の特徴点を特定するように構成することもできる。
【0138】
瞳孔中心特定部354は、撮影画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で表現されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
【0139】
次に、瞳孔中心特定部354は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭の近似楕円の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。
【0140】
なお、他の特徴点が適用される場合であっても、上記と同様に撮影画像の画素値の分布に基づいて当該特徴点の位置を特定することが可能である。
【0141】
(瞳孔中心位置特定部355)
瞳孔中心位置特定部355は、2つの前眼部カメラ300の位置(及び撮影倍率)と、瞳孔中心特定部354により特定された2つの撮影画像中の瞳孔中心の位置とに基づいて、被検眼Eの瞳孔中心の3次元位置を特定する。
【0142】
例えば、特許文献1(特開2013-248376号公報)に開示されているように、2つの前眼部カメラ300の間の距離(基線長)を「B」とし、2つの前眼部カメラ300の基線と被検眼Eの瞳孔中心との間の距離(撮影距離)を「H」とし、各前眼部カメラ300と、その画面平面との間の距離(画面距離)を「f」とする。、画素分解能をΔpとすると、前眼部カメラ300による撮影画像の分解能は次式で表される。
【0143】
xy方向の分解能(平面分解能):Δxy=H×Δp/f
z方向の分解能(奥行き分解能):Δz=H×H×Δp/(B×f)
【0144】
瞳孔中心位置特定部355は、2つの前眼部カメラ300の位置(既知である)と、2つの撮影画像において瞳孔中心に相当する位置とに対して、配置関係を考慮した公知の三角法を適用することにより、特徴部位としての瞳孔中心の3次元位置を算出する。
【0145】
(移動目標位置決定部356)
移動目標位置決定部356は、プルキンエ像位置特定部353により特定されたプルキンエ像の位置と、瞳孔中心位置特定部355により特定された瞳孔中心位置とに基づいて、装置光学系の移動目標位置を決定する。例えば、移動目標位置決定部356は、特定されたプルキンエ像の位置と、特定された瞳孔中心位置との差分を求め、求められた差分が既定のアライメント完了条件を満たすように移動目標位置を決定する。
【0146】
主制御部211は、移動目標位置決定部356により決定された移動目標位置に基づいて移動機構200を制御する。
【0147】
(トラッキング処理部360)
図7に示すように、トラッキング処理部360は、眼球モデル生成部361と、解析部362とを含む。眼球モデル生成部361は、パラメータ算出部361Aと、モデル生成部361Bとを含む。解析部362は、角膜入射位置特定部362Aと、網膜入射位置特定部362Cと、スキャン処理部362Dとを含む。
【0148】
(眼球モデル生成部361)
眼球モデル生成部361は、眼内パラメータ212Aに基づいて被検眼Eの3次元眼球モデルを作成する。眼球モデル生成部361は、上記の眼内パラメータ212Aに含まれるパラメータのうち、ケラト測定、眼屈折力測定(レフ測定)、又はOCT計測の結果に基づいて算出可能なパラメータを求めることが可能である。
【0149】
眼球モデル生成部361は、上記のサイズパラメータ、形状パラメータ、及び光学的パラメータを求めることが可能である。
【0150】
上記のように、サイズパラメータは、眼の一部又は全体のサイズを表す。眼の一部を表すサイズパラメータとしては、角膜厚、水晶体厚、前房深度(角膜後面と水晶体前面との間の距離)、網膜厚、瞳孔径などがある。眼の全体を表すサイズパラメータとして、例えば眼軸長がある。
【0151】
上記のように、形状パラメータは、眼の部位の形状を表す。眼の部位は、例えば、角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面、網膜表面、網膜の所定層、脈絡膜、瞳孔(虹彩)などであってよい。また、形状を表すパラメータには、所定の一点における曲率や、所定の範囲における曲率分布や、傾斜角度などがある。
【0152】
上記のように、光学的パラメータは、眼の部位の光学的機能を表す。光学的パラメータとしては、角膜(前面、後面)の屈折力(球面度、乱視度、乱視軸等)や、水晶体(前面、後面)の屈折力などがある。また、光学的パラメータは、色収差、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲など、収差に関する任意のパラメータを含んでいてもよい。また、光学的パラメータは、眼の部位の屈折率や反射率や分散特性や偏光特性など、眼の部位の光学特性に関する任意のパラメータを含んでいてもよい。
【0153】
なお、ケラト測定、眼屈折力測定、又はOCT計測により得られたデータに基づいて、眼内パラメータ212Aに含まれるパラメータを補正して、眼球モデルを構成する新たなパラメータとして適用されてもよい。
【0154】
(パラメータ算出部361A)
パラメータ算出部361Aは、OCT光学系8により得られたOCTデータ(データセット)を解析することにより被検眼Eに関するパラメータを求める。OCTデータセットは、角膜前面から網膜表面にわたる範囲を含む被検眼Eの3次元領域の形態を表す。すなわち、この3次元領域がOCTによる計測領域に相当し、OCTデータセットとして得られる画像はこの3次元領域における被検眼Eの各部の形態を描出している。
【0155】
例えば、パラメータ算出部361Aは、眼内距離算出部として、OCT光学系8により得られた干渉光LCの検出結果に基づいて被検眼Eにおける1以上の眼内距離を求める。1以上の眼内距離は、眼軸長(角膜頂点から内境界膜までの距離)、角膜厚、前房深度、水晶体厚、硝子体腔長、網膜厚、脈絡膜厚などを含む。
【0156】
図8に、実施形態に係るパラメータの説明図を示す。
図8は、眼球の断面構造を模式的に表す。
【0157】
例えば、
図8に示すように、パラメータは、眼内の各部位の屈折率、サイズパラメータとしての眼内距離、形状パラメータとしての曲率半径を含む。屈折率には、角膜(Cornea)の屈折率n1、房水(Aqueos humour)の屈折率n2、水晶体(Crystalline lens)の屈折率n3、硝子体(Vitreous humour)の屈折率n4などがある。眼内距離には、中心角膜厚(Center Cornea Thickness)CCT、角膜裏面から水晶体前面までの距離に相当する前房深度(Anterior Chamber Depth)ACD、水晶体厚(Lens Thickness)LT、硝子体厚(Vitreous Chamber Depth)VCDなどがある。曲率半径には、角膜前面曲率半径(Radius of curvature of the anterior surface of cornea)R1、角膜後面曲率半径(Radius of curvature of the posterior surface of cornea)R2、水晶体前面曲率半径(Radius of curvature of the anterior surface of lens)R3、水晶体後面曲率半径(Radius of curvature of the posterior surface of lens)R4などがある。
【0158】
上記の屈折率として、公知の模型眼等の眼球モデルのパラメータ(眼内パラメータ212A)を用いることができる。パラメータ算出部361Aは、上記のサイズパラメータ及び形状パラメータの少なくとも1つを算出することが可能である。
【0159】
OCTデータセットからサイズパラメータを算出する処理の例を説明する。まず、パラメータ算出部361Aは、対象となる被検眼Eの部位を特定する。この処理は、OCTデータセットの画素値を解析することによって実行され、例えば、フィルター処理、閾値処理、エッジ検出等の公知の画像処理を含む。典型的な例として、角膜厚を求める場合には角膜前面と角膜後面とが特定され、水晶体厚を求める場合には水晶体前面と水晶体後面とが特定され、前房深度を求める場合には角膜後面と水晶体前面とが特定され、網膜厚が求められる場合には網膜表面と網膜裏面とが特定され、瞳孔径を求める場合には虹彩のエッジ(瞳孔の境界)が特定される。OCTデータセットから眼軸長を求める場合には角膜前面と網膜表面(網膜における所定の層組織)とが特定される。
【0160】
次に、パラメータ算出部361Aは、特定された部位のうち、サイズの計測位置となる2以上の特徴点を特定する。この処理は、特定された部位の画素位置及び/又は画素値を解析することにより実行され、例えば、パターンマッチング、微分演算(曲率演算)、フィルター処理、閾値処理、エッジ検出等の公知の画像処理を含む。角膜厚を求める場合、角膜前面の頂点(角膜頂点)と角膜後面の頂点とが特定される。角膜前面の頂点は、例えば、角膜前面の形状解析により特定され、或いは、角膜前面の画素のZ座標値により特定される。角膜後面の頂点は、例えば、角膜頂点を通過しZ方向に延びる直線と角膜後面との交点として特定され、角膜後面の形状解析により特定され、或いは、角膜後面の画素のZ座標値により特定される。他のパラメータについても同様の処理が実行される。
【0161】
更に、パラメータ算出部361Aは、特定された2以上の特徴点に基づいてサイズを求める。角膜厚を求める場合、特定された角膜前面の頂点と角膜後面の頂点との間の距離を求める。この距離は、例えば、2つの頂点の間の画素数で表現されてもよいし、この画素数を撮影倍率に基づき実空間距離に換算した値でもよい。このような実空間距離への換算処理は、例えば、特開2016-43155号公報に開示された手法で行うことができる。
【0162】
OCTデータセットから形状パラメータを算出する処理の例を説明する。まず、パラメータ算出部361Aは、対象となる被検眼Eの部位を特定する。この処理は、サイズパラメータの場合と同様であってよい。次に、パラメータ算出部361Aは、特定された部位に基づいて形状パラメータを算出する。例えば、特徴点における曲率を求める場合、サイズパラメータと同様にして特徴点を特定し、この特徴点の近傍の形状に基づいてこの特徴点における曲率を算出することができる。所定の範囲における曲率分布を求める場合には、当該範囲内の各点について同様の処理を実行すればよい。傾斜角度を求める場合、当該位置(点)及びその近傍の形状に基づく微分処理を実行することができる。
【0163】
OCTデータセットから光学的パラメータを算出する処理の例を説明する。OCTデータセットは、被検眼Eの部位の形態(形状、サイズ等)を表すものである。部位の形態のみから算出可能な光学的パラメータについては、部位の形状やサイズと光学的パラメータとを関連付ける公知の数式を利用して光学的パラメータを算出することが可能である。また、部位の形態のみから算出することができない光学的パラメータについては、必要な他の値(測定値、又は模型眼データ等の標準値)を参照しつつ公知の数式を利用することが可能である。例えば、水晶体の屈折力を求める場合、水晶体の屈折率と、それに隣接する部位の屈折率とを参照することができる。また、近軸近似を仮定して光線追跡を行うことによって屈折力を求めることも可能である。
【0164】
また、パラメータ算出部361Aにより算出されるパラメータ又は眼内パラメータ212Aには、眼(又は被検眼E)の回旋の中心位置、角膜GRIN(Gradient Index)構造(屈折率分布構造)、水晶体GRIN構造(屈折率分布構造)、眼底(網膜)の曲率、屈折率波長分散などが含まれてもよい。屈折率波長分散は、角膜、房水、水晶体、及び硝子体のそれぞれの屈折率波長分散を含んでよい。
【0165】
(モデル生成部361B)
モデル生成部361Bは、パラメータ算出部361Aにより算出されたパラメータを用いて被検眼Eの3次元の眼球モデルを作成する。モデル生成部361Bは、眼内パラメータ212A、眼屈折度数、角膜形状情報、及び眼内距離の少なくとも1つを用いて被検眼Eの3次元の眼球モデルを作成することが可能である。
【0166】
モデル生成部361Bは、上記の各部で算出されたパラメータのそれぞれを、眼球モデルにおける対応部位に関連付ける。この処理は、例えば、パラメータと、それを算出する処理において特定された部位や特徴点とを関連付けることにより実行される。例えば、角膜前面の形状を表すパラメータ(曲率、曲率分布等)と、眼球モデルにおける角膜前面とが関連付けられる。また、眼軸長を表すパラメータと、眼球モデルにおける角膜前面(角膜頂点等)及び網膜表面(中心窩等)とが関連付けられる。他のパラメータについても同様である。
【0167】
(解析部362)
解析部362は、上記の解析処理の他に、眼内の部位(例えば、角膜、網膜)における測定光LSの入射位置を特定(推定)するための処理を行う。
【0168】
図9に、実施形態に係る解析部362の動作説明図を示す。
図9は、被検眼Eの断面構造を模式的に表す。
【0169】
上記のアライメント処理において、主制御部211は、移動目標位置決定部356により決定された移動目標位置に基づいて移動機構200を制御する。それにより、被検眼Eの前眼部像から、測定光軸(スキャン中心)と角膜Crとの交点を測定光LSの角膜入射位置Pcとして特定することが可能になる。角膜入射位置Pcは、角膜前面(いくつかの実施形態では、角膜後面)において測定光LSが入射する位置である。更に、角膜入射位置Pcに入射した測定光LSに対して、眼球モデル生成部361により生成された眼球モデルを用いた光線追跡処理を施すことにより、測定光LSが網膜に入射する網膜入射位置Prを特定することが可能である。
【0170】
すなわち、解析部362は、角膜Crにおいて測定光LSが入射する角膜入射位置を被検眼Eの前眼部像から特定し、特定された角膜入射位置に対応して、網膜において測定光LSが入射する網膜入射位置を特定する。解析部362は、角膜入射位置に入射した測定光LSに対して公知の光線追跡処理を施すことにより網膜入射位置を特定することができる。
【0171】
(角膜入射位置特定部362A)
角膜入射位置特定部362Aは、被検眼Eの前眼部像から、角膜Crにおける測定光LSの入射位置を特定する。前眼部像に基づいて被検眼Eに対する光学系のアライメントが行われる場合、角膜入射位置特定部362Aは、アライメント情報を用いて角膜入射位置を特定することが可能である。例えば、角膜入射位置特定部362Aは、装置光学系の光軸と被検眼Eの角膜Crとの交点を角膜入射位置として特定することができる。前眼部像は、前眼部カメラ300によって取得される2以上の撮影画像のいずれか1つであってよい。
【0172】
この実施形態では、角膜入射位置特定部362Aは、前眼部カメラ300によって取得される2以上の撮影画像からプルキンエ像位置特定部353により特定されたプルキンエ像の3次元位置から、測定光LSの角膜入射位置を特定する。
【0173】
(網膜入射位置特定部362C)
網膜入射位置特定部362Cは、角膜入射位置特定部362Aにより特定された角膜入射位置に入射した測定光LSが網膜に入射する入射位置を特定する。例えば、網膜入射位置特定部362Cは、角膜入射位置に入射した測定光LSに対して公知の光線追跡処理を施すことにより網膜入射位置を特定する。光線追跡処理では、眼球モデル生成部361により生成された眼球モデルを用いて、網膜入射位置から角膜前面、角膜後面、水晶体前面、及び水晶体後面にスネルの法則から導かれる公知の関係式を順次に適用することで網膜における光線の入射位置が特定される。
【0174】
(スキャン処理部362D)
スキャン処理部362Dは、網膜入射位置特定部362Cにより特定された網膜入射位置に基づいて、網膜の所定の位置がスキャン中心となるように光スキャナー88に対してフィードバックする制御情報を生成する。制御情報は、光スキャナー88を構成するガルバノスキャナーのスキャン幅、スキャン速度、及びスキャン中心のオフセット値の少なくとも1つを含む。網膜の所定の位置として、基準位置、網膜入射位置、又は基準位置と網膜入射位置との間の位置、病変部位、特徴部位、血管、ユーザにより指定された位置などがある。
【0175】
主制御部211は、フィードバックされた制御情報に基づいて光スキャナー88を制御することにより、光スキャナー88の偏向動作を制御する。1又は複数のOCTスキャン毎に上記のフィードバック制御を繰り返すことにより、トラッキング制御が可能になる。例えば、主制御部211は、所定の観察部位(例えば、中心窩)を観察できるように、1又は複数のラインスキャン(Bスキャン)毎に、スキャンの開始トリガーに同期させてスキャンの開始位置をフィードバック制御により更新する。或いは、例えば、主制御部211は、3Dスキャン中のCスキャン画像の中心が同じ位置になるように、Bスキャンの開始トリガーに同期させてスキャンの開始位置をフィードバック制御により更新する。
【0176】
例えば、スキャン処理部362Dは、角膜Crにおける測定光LSの入射角を微小角度だけ変更しつつ上記の網膜入射位置が網膜の所定の位置に収束するまで光線追跡シミュレーション(光線追跡処理)を繰り返す。スキャン処理部362Dは、網膜入射位置が網膜の所定の位置に収束したときの入射角がスキャン中心角度になるように、光スキャナー88に対する制御情報を生成する。いくつかの実施形態では、光線追跡シミュレーションにおいて、被検眼Eの光学特性を表すパラメータが適用された眼球モデルが用いられる。
【0177】
例えば、スキャン処理部362Dは、網膜における基準位置にする網膜入射位置の変位に基づいて、テーブル情報又は所定の関数から角膜Crにおける測定光LSの入射角の変化量を特定し、特定された変化量に基づいて光スキャナー88に対する制御情報を生成する。いくつかの実施形態では、被検眼Eの光学特性を表すパラメータを変数とするテーブル情報又は関数に従って測定光LSの入射角の変化分が特定される。
【0178】
以上のような構成を有するデータ処理部225は、例えば、プロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記した処理をプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
【0179】
(表示部270、操作部280)
表示部270は、ユーザインターフェイス部として、制御部210による制御を受けて情報を表示する。表示部270は、
図1などに示す表示部10を含む。
【0180】
操作部280は、ユーザインターフェイス部として、眼科装置を操作するために使用される。操作部280は、眼科装置に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部280は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでもよい。
【0181】
表示部270及び操作部280の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
【0182】
(通信部290)
通信部290は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置の例として、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置がある。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1000に入力する。また、外部装置は、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)などでもよい。更に、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなどでもよい。通信部290は、例えば処理部9に設けられていてもよい。
【0183】
OCT光学系8は、実施形態に係る「光学系」の一例である。前眼部カメラ300は、実施形態に係る「取得部」、「撮影部」の一例である。アライメント光投射系2は、実施形態に係る「アライメント光学系」の一例である。ケラト測定系3は、実施形態に係る「角膜形状測定光学系」の一例である。レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7は、実施形態に係る「屈折力測定光学系」の一例である。眼屈折度数算出部221は、実施形態に係る「屈折力値算出部」の一例である。ケラト測定系3は、実施形態に係る「角膜形状測定光学系」の一例である。レフ測定光学系(レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7)は、実施形態に係る「屈折力測定光学系」の一例である。眼屈折度数算出部221は、実施形態に係る「屈折力値算出部」の一例である。パラメータ算出部361Aは、実施形態に係る「眼内距離算出部」の一例である。
【0184】
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作について説明する。
【0185】
(第1動作例)
図10に、眼科装置1000の第1動作例を示す。
図10は、眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。記憶部212には、
図10に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図10に示す処理を実行する。
【0186】
(S1:角膜形状パラメータ、眼屈折度数、眼軸長を取得)
まず、眼科装置1000は、被検眼Eの角膜形状パラメータ、被検眼Eの眼屈折度数、及び眼軸長を取得する。角膜形状パラメータ等は、外部の眼科装置、又は電子カルテシステム等の外部装置から取得される。
【0187】
いくつかの実施形態では、被検眼Eに対する光学系のアライメントが完了した後に、被検眼Eに対する測定により角膜形状パラメータ等が取得される。角膜形状パラメータは、被検眼Eに対してケラト測定を実行することにより取得される。眼屈折度数は、被検眼Eに対してレフ測定を実行することにより取得される。眼軸長は、例えば被検眼Eに対してOCT計測を実行することにより取得される。以下では、眼内パラメータとして眼軸長を取得する場合について説明するが、眼軸長以外の眼内パラメータを取得してもよい。
【0188】
ケラト測定を行う場合、主制御部211は、所望の固視位置に対応した表示位置に固視標を示すパターンを液晶パネル41に表示させる。それにより、所望の固視位置に被検眼Eを注視させる。その後、主制御部211は、ケラトリング光源32を点灯させる。ケラトリング光源32から光が出力されると、被検眼Eの角膜Crに角膜形状測定用のリング状光束が投射される。角膜形状算出部222は、撮像素子59によって取得された像に対して演算処理を施すことにより、角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。制御部210では、算出された角膜屈折力などが記憶部212に記憶される。
【0189】
レフ測定を行う場合、主制御部211は、前述のように屈折力測定のためのリング状の測定パターン光束を被検眼Eに投射させる。被検眼Eからの測定パターン光束の戻り光に基づくリング像が撮像素子59の撮像面に結像される。主制御部211は、撮像素子59により検出された眼底Efからの戻り光に基づくリング像を取得できたか否かを判定する。例えば、主制御部211は、撮像素子59により検出された戻り光に基づく像のエッジの位置(画素)を検出し、像の幅(外径と内径との差)が所定値以上であるか否かを判定する。或いは、主制御部211は、所定の高さ(リング径)以上の点(像)に基づいてリングを形成できるか否かを判定することにより、リング像を取得できたか否かを判定してもよい。
【0190】
リング像を取得できたと判定されたとき、眼屈折度数算出部221は、被検眼Eに投射された測定パターン光束の戻り光に基づくリング像を公知の手法で解析し、仮の球面度数S及び仮の乱視度数Cを求める。主制御部211は、求められた仮の球面度数S及び乱視度数Cに基づき、レフ測定光源61、合焦レンズ74、及び固視ユニット40(液晶パネル41)を等価球面度数(S+C/2)の位置(仮の遠点に相当する位置)へ移動させる。主制御部211は、その位置から固視ユニット40(液晶パネル41)を更に雲霧位置に移動させた後、本測定としてレフ測定投射系6及びレフ測定受光系7を制御することによりリング像を再び取得させる。主制御部211は、前述と同様に得られたリング像の解析結果と合焦レンズ74の移動量から球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を眼屈折度数算出部221に算出させる。
【0191】
また、眼屈折度数算出部221は、求められた球面度数及び乱視度数から被検眼Eの遠点に相当する位置(本測定により得られた遠点に相当する位置)を求める。主制御部211は、求められた遠点に相当する位置に液晶パネル41を移動させる。制御部210では、合焦レンズ74の位置や算出された球面度数などが記憶部212に記憶される。
【0192】
リング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、強度屈折異常眼である可能性を考慮して、レフ測定光源61及び合焦レンズ74をあらかじめ設定したステップでマイナス度数側(例えば-10D)、プラス度数側(例えば+10D)へ移動させる。主制御部211は、レフ測定受光系7を制御することにより各位置でリング像を検出させる。それでもリング像を取得できないと判定されたとき、主制御部211は、所定の測定エラー処理を実行する。このとき、眼科装置1000の動作は次のステップに移行してもよい。制御部210では、レフ測定結果が得られなかったことを示す情報が記憶部212に記憶される。
【0193】
OCT計測を行う場合、主制御部211は、固視ユニット40(液晶パネル41)を雲霧位置から合焦位置に移動させる。いくつかの実施形態では、合焦位置は、ステップS3で特定された等価球面度数(S+C/2)の位置、又は等価球面度数(S+C/2)の位置から干渉信号の強度等が最大になるようにフォーカス調整された位置である。
【0194】
続いて、主制御部211は、OCT光源101を点灯させ、光スキャナー88を制御することにより眼底Efの所定の部位(例えば、黄斑部を含む部位)を測定光LSでスキャンさせる。
【0195】
主制御部211は、被検眼Eの眼軸長をパラメータ算出部361Aに算出させる。パラメータ算出部361Aは、取得された干渉光LCの検出信号のピーク位置から角膜頂点に相当する位置と眼底に相当する位置とを特定し、特定された位置から眼軸長を算出する。パラメータ算出部361Aは、眼軸長以外の上記のパラメータを算出してもよい。
【0196】
(S2:眼球モデルを生成)
続いて、主制御部211は、ステップS1において取得された角膜形状パラメータ、眼屈折度数、及びパラメータ算出部361Aにより算出された眼軸長を用いて被検眼Eの3次元の眼球モデルをモデル生成部361Bに生成させる。
【0197】
(S3:OCT計測?)
主制御部211は、OCT計測を実行するか否かを判定する。例えば、主制御部211は、ユーザによる操作部280に対する操作内容、又は事前に設定された動作モードに基づいて、OCT計測を実行するか否かを判定する。
【0198】
OCT計測を実行すると判定されたとき(S3:Y)、眼科装置1000の動作はステップS4に移行する。OCT計測を実行しないと判定されたとき(S3:N)、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
【0199】
(S4:既定の範囲内?)
ステップS3において、OCT計測を実行すると判定されたとき(S3:Y)、主制御部211は、上記のアライメント処理を実行する。
【0200】
アライメント処理において、主制御部211は、アライメント光源21を点灯させる。また、主制御部211は、前眼部カメラ300を制御することにより、アライメント光源21から出力されたアライメント光が照射された被検眼Eの前眼部を実質的に同時に撮影させる。主制御部211は、上記のように光学系位置取得部213により取得された装置光学系の位置とアライメント処理部350により求められた移動目標位置との変位が既定の範囲内であるか否かを判定する。
【0201】
装置光学系の位置と移動目標位置との変位が既定の範囲内であると判定されたとき(S4:Y)、眼科装置1000の動作はステップS6に移動する。装置光学系の位置と移動目標位置との変位が既定の範囲内ではないと判定されたとき(S4:N)、眼科装置1000の動作はステップS5に移動する。
【0202】
(S5:相対移動)
ステップS4において装置光学系の位置と移動目標位置との変位が既定の範囲内ではないと判定されたとき(S4:N)、主制御部211は、移動機構200を制御することにより、被検眼Eに対して装置光学系を所定のステップだけ相対移動する。その後、眼科装置1000の動作はステップS4に移行する。
【0203】
(S6:光スキャナーによるトラッキング開始)
ステップS4において装置光学系の位置と移動目標位置との変位が既定の範囲内であると判定されたとき(S4:Y)、主制御部211は、
図1に示す光学系が被検眼Eの検査位置に移動されたと判断し、レフ測定光源61と、合焦レンズ74と、固視ユニット40(液晶パネル41)をそれぞれの光軸に沿って原点の位置(例えば、0Dに相当する位置)に移動させる。ここで、検査位置とは、被検眼Eの検査を十分な精度内で行うことが可能な位置である。
【0204】
続いて、主制御部211は、光スキャナー88によるトラッキング処理を開始させる。ステップS6の詳細は後述する。
【0205】
(S7:OCT計測)
主制御部211は、固視ユニット40(液晶パネル41)を雲霧位置から合焦位置に移動させる。いくつかの実施形態では、合焦位置は、ステップS1において取得された等価球面度数(S+C/2)に相当する位置、又は等価球面度数(S+C/2)の位置から干渉信号の強度等が最大になるようにフォーカス調整された位置である。
【0206】
続いて、主制御部211は、OCT光源101を点灯させ、光スキャナー88を制御することにより眼底Efの所定の部位(例えば、黄斑部を含む部位)を測定光LSでスキャンさせる。
【0207】
主制御部211は、測定光LSのスキャンにより得られた検出信号は画像形成部224に送り、得られた検出信号から眼底Efの断層像を画像形成部224に形成させることが可能である。また、主制御部211は、形成された断層像を表示部270に表示させることができる。以上で、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
【0208】
図11に、
図10のステップS6の動作例のフロー図を示す。記憶部212には、
図11に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図11に示す処理を実行する。
【0209】
(S11:角膜入射位置を特定)
主制御部211は、前眼部カメラ300により取得された撮影画像に基づいてプルキンエ像位置特定部353により特定されたプルキンエ像の3次元位置から、測定光LSの角膜入射位置を角膜入射位置特定部362Aに特定させる。
【0210】
(S12:網膜入射位置を特定)
主制御部211は、ステップS11において特定された角膜入射位置に入射した測定光LSに対して、眼球モデル生成部361により生成された眼球モデルを用いた光線追跡処理を施すことにより網膜入射位置を網膜入射位置特定部362Cに特定させる。
【0211】
(S13:変位を算出)
解析部362は、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位を求める。解析部362は、水平面内の変位及び鉛直面内の変位の少なくとも一方を求める。解析部362は、互いに交差する2つの平面内の変位を求めてもよい。基準位置は、OCT光学系8を用いて取得された被検眼Eの断層像を解析することにより特定されてもよいし、操作部280を用いてユーザにより指定されてもよい。基準位置としては、中心窩、黄斑部、病変部、視神経乳頭、血管などがある。
【0212】
(S14:光スキャナー処理)
主制御部211は、ステップS13において特定された網膜における基準位置と網膜入射位置との変位から、光スキャナー88にフィードバックする制御情報をスキャン処理部362Dに生成させる。ステップS14の詳細については後述する。
【0213】
(S15:光スキャナーを制御)
主制御部211は、ステップS14における光スキャナー処理において生成された制御情報に基づいて光スキャナー88の偏向動作を制御する。
【0214】
以上で、
図10のステップS6の処理は終了である(エンド)。例えば、主制御部211は、1又は複数のOCTスキャン毎に
図11に示す処理を実行することができる。すなわち、1又は複数のOCTスキャン毎に上記のフィードバック制御を繰り返すことにより、トラッキング制御が可能になる。
【0215】
図12に、
図11のステップS14の動作例のフロー図を示す。記憶部212には、
図12に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図12に示す処理を実行する。
【0216】
(S21:眼球モデルを取得)
主制御部211は、例えば、記憶部212にあらかじめ記憶された眼球モデル(公知の模型眼等の眼球モデル)を網膜入射位置特定部362Cに取得させる。
【0217】
(S22:網膜入射位置を特定)
続いて、主制御部211は、ステップS12と同様に、光スキャナー88により偏向された測定光LSの網膜入射位置を網膜入射位置特定部362Cに特定させる。すなわち、まず、角膜入射位置特定部362Aは、ステップS11と同様に、前眼部カメラ300により取得された2つの撮影画像に基づいてプルキンエ像位置特定部353により特定されたプルキンエ像の3次元位置から、測定光LSの角膜入射位置を特定する。続いて、網膜入射位置特定部362Cは、角膜入射位置特定部362Aにより特定された角膜入射位置に入射した測定光LSに対して、ステップS21において取得された眼球モデルを用いた光線追跡処理を施すことにより網膜入射位置を特定する。
【0218】
(S23:変位ΔX、ΔYを算出)
次に、主制御部211は、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX(X軸方向の変位)、鉛直面内の変位ΔY(Y軸方向の変位))を解析部362に算出させる。
図13では、光スキャナー88と光学的に共役な位置であるピボット点Pvを中心に偏向された測定光LSによる水平面内の変位ΔXが図示されているが、鉛直面内の変位ΔYも同様である。基準位置は、例えば、OCT光学系8により取得された被検眼Eの断層像から特定された中心窩に相当する位置である。例えば、断層像における各部位の位置と眼球モデルにおける各部位の位置とをあらかじめ対応付けておくことにより、断層像において特定された部位に対応する眼球モデルにおける位置を特定することが可能である。それにより、解析部362は、基準位置に対する網膜入射位置の変位(X軸方向の変位、Y軸方向の変位)を特定することが可能である。
【0219】
(S24:入射角を変更)
微小領域では、入射角の変化量と網膜上の位置の変位とは線形関係があると考えられるため、網膜上の位置の変位から入射角の変化量を推定することが可能である。そこで、主制御部211は、光スキャナー88により偏向された測定光LSの角膜Crにおける入射角が既定の微小角度だけ変更するように光線追跡処理における入射角条件を変更する。
【0220】
(S25:網膜入射位置を特定)
網膜入射位置特定部362Cは、ステップS24において角膜Crにおいて入射角が変更された測定光LSに対して、ステップS22と同様に光線追跡処理を施すことにより新たな網膜入射位置を特定する。
【0221】
(S26:変位ΔX´、ΔY´を算出)
主制御部211は、ステップS23と同様に、ステップS25において特定された網膜入射位置に対して、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX´、鉛直面内の変位ΔY´)を解析部362に算出させる。
図13では、水平面内の変位ΔX´が図示されているが、鉛直面内の変位ΔY´も同様である。基準位置は、ステップS23における基準位置と同じである。
【0222】
(S27:閾値以内?)
主制御部211は、ステップS26において算出された変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であるか否かを判定する。変位ΔX´に対する閾値と、ΔY´に対する閾値は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0223】
ステップS27において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であると判定されたとき(S27:Y)、眼科装置1000の動作はステップS28に移行する。ステップS27において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内ではないと判定されたとき(S27:N)、眼科装置1000の動作はステップS24に移行する。すなわち、変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが許容範囲内に収束するまで、ステップS24~ステップS26が繰り返される。
【0224】
(S28:光スキャナーの制御情報を生成)
ステップS27において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であると判定されたとき(S27:Y)、主制御部211は、収束したときの測定光LSの入射角がスキャン中心角度になるように、光スキャナー88のスキャン幅、スキャン速度、スキャン中心のオフセット値の少なくとも1つを変更するための制御情報をスキャン処理部362Dに生成させる。主制御部211は、スキャン処理部362Dにより生成された制御情報に基づいて光スキャナー88を制御する。これにより、OCT画像の中心が所定の位置になるようにトラッキング制御を行うことが可能になる。
【0225】
以上で、
図11のステップS14の処理は終了である(エンド)。
【0226】
図12の処理では、記憶部212にあらかじめ記憶された眼球モデルを用いて網膜入射位置が特定されていたが、実施形態に係る処理はこれに限定されない。例えば、被検眼Eの光学特性を表す眼内パラメータを含む眼球モデルを用いて網膜入射位置が特定されてもよい。
【0227】
図14に、第1動作例の変形例に係るステップS14の動作例のフロー図を示す。記憶部212には、
図14に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図14に示す処理を実行する。
【0228】
(S31:測定値を取得)
主制御部211は、ステップS1と同様に、被検眼Eの角膜形状パラメータ、被検眼Eの眼屈折度数、及び眼軸長を眼球モデル生成部361に取得させる。角膜形状パラメータ等は、上記のように、被検眼Eに対する測定により取得される。角膜形状パラメータは、被検眼Eに対してケラト測定を実行することにより取得される。眼屈折度数は、被検眼Eに対してレフ測定を実行することにより取得される。眼軸長は、例えば被検眼Eに対してOCT計測を実行することにより取得される。眼内パラメータとして眼軸長以外の眼内パラメータを取得してもよい。
【0229】
(S32:眼球モデルを生成)
次に、主制御部211は、ステップS31において取得された角膜形状パラメータ、眼屈折度数、及びパラメータ算出部361Aにより算出された眼軸長を用いて被検眼Eの3次元の眼球モデルをモデル生成部361Bに生成させる。
【0230】
(S33:網膜入射位置を特定)
続いて、主制御部211は、ステップS22と同様に、光スキャナー88により偏向された測定光LSの網膜入射位置を網膜入射位置特定部362Cに特定させる。
【0231】
(S34:変位ΔX、ΔYを算出)
次に、主制御部211は、ステップS23と同様に、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX、鉛直面内の変位ΔY)を解析部362に算出させる。
【0232】
(S35:入射角を変更)
次に、主制御部211は、ステップS24と同様に、光スキャナー88により偏向された測定光LSの角膜Crにおける入射角が既定の微小角度だけ変更するように光線追跡処理における入射角条件を変更する。
【0233】
(S36:網膜入射位置を特定)
次に、網膜入射位置特定部362Cは、ステップS25と同様に、ステップS35において角膜Crにおいて入射角が変更された測定光LSに対して光線追跡処理を施すことにより新たな網膜入射位置を特定する。
【0234】
(S37:変位ΔX´、ΔY´を算出)
主制御部211は、ステップS26と同様に、ステップS36において特定された網膜入射位置に対して、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX´、鉛直面内の変位ΔY´)を解析部362に算出させる。
【0235】
(S38:閾値以内?)
主制御部211は、ステップS27と同様に、ステップS37において算出された変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であるか否かを判定する。
【0236】
ステップS38において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であると判定されたとき(S38:Y)、眼科装置1000の動作はステップS39に移行する。ステップS38において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内ではないと判定されたとき(S38:N)、眼科装置1000の動作はステップS35に移行する。
【0237】
(S39:光スキャナーの制御情報を生成)
ステップS38において変位ΔX´、ΔY´のそれぞれが所定の閾値以内であると判定されたとき(S38:Y)、主制御部211は、ステップS28と同様に、収束したときの測定光LSの入射角がスキャン中心角度になるように、光スキャナー88のスキャン幅、スキャン速度、スキャン中心のオフセット値の少なくとも1つを変更するための制御情報をスキャン処理部362Dに生成させる。主制御部211は、スキャン処理部362Dにより生成された制御情報に基づいて光スキャナー88を制御する。
【0238】
以上で、第1動作例の変形例に係るステップS14の処理は終了である(エンド)。
【0239】
(第2動作例)
次に、実施形態に係る眼科装置1000の第2動作例について説明する。第2動作例が第1動作例と異なる点は、主に、上記の変位が収束するまで光線追跡処理を繰り返すことなく、テーブル情報又は所定の関数に従って、光スキャナー88を制御するための制御情報を生成する点である。
【0240】
第2動作例においても、
図10及び
図11に示す処理と同様の処理が実行される。
【0241】
図15に、第2動作例に係る
図11のステップS14の動作例のフロー図を示す。記憶部212には、
図15に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図15に示す処理を実行する。
【0242】
(S41:眼球モデルを取得)
主制御部211は、ステップS21と同様に、記憶部212にあらかじめ記憶された眼球モデル(公知の模型眼等の眼球モデル)を網膜入射位置特定部362Cに取得させる。
【0243】
(S42:網膜入射位置を特定)
続いて、主制御部211は、ステップS22と同様に、光スキャナー88により偏向された測定光LSの網膜入射位置を網膜入射位置特定部362Cに特定させる。
【0244】
(S43:変位ΔX、ΔYを算出)
次に、主制御部211は、ステップS23と同様に、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX、鉛直面内の変位ΔY)を解析部362に算出させる。
図16では、光スキャナー88と光学的に共役な位置であるピボット点Pvを中心に偏向された測定光LSによる水平面内の変位ΔXが図示されているが、鉛直面内の変位ΔYも同様である。基準位置は、例えば、OCT光学系8により取得された被検眼Eの断層像から特定された中心窩に相当する位置である。例えば、断層像における各部位の位置と眼球モデルにおける各部位の位置とをあらかじめ対応付けておくことにより、断層像において特定された部位に対応する眼球モデルにおける位置を特定することが可能である。それにより、解析部362は、基準位置に対する網膜入射位置の変位(X軸方向の変位、Y軸方向の変位)を特定することが可能である。
【0245】
(S44:入射角の変化量を特定)
本例では、記憶部212には、テーブル情報があらかじめ記憶されている。テーブル情報には、上記の変位ΔX、ΔYに対応して測定光LSの入射角の変化量(光スキャナー88の偏向角度の変化量)が関連付けられている。このようなテーブル情報は、上記の眼球モデルを用いた計算により事前に求められている。主制御部211は、テーブル情報を参照してステップS43において算出された変位ΔX、ΔYに対応した測定光LSの入射角の変化量をスキャン処理部362Dに特定させる。
【0246】
なお、ステップS44では、テーブル情報を参照して入射角の変化量が特定されているが、所定の関数に従って入射角の変化量が特定されてもよい。所定の関数は、例えば、変位ΔX、ΔYを変数とする1次又は2次の多項式(3次以上の多項式であってもよい)で表される。
【0247】
(S45:光スキャナーの制御情報を生成)
主制御部211は、ステップS44において特定された入射角の変化量に基づいて、所定の位置がスキャン中心になるように、光スキャナー88のスキャン幅、スキャン速度、スキャン中心のオフセット値の少なくとも1つを変更するための制御情報をスキャン処理部362Dに生成させる。例えば、主制御部211は、特定された入射角の変化量を反映した入射角がスキャン中心角度になるように、制御情報を生成する。主制御部211は、生成された制御情報に基づいて光スキャナー88を制御する。
【0248】
以上で、
図11のステップS14の処理は終了である(エンド)。
【0249】
本例では、OCTスキャンの度に実行されるため、基準位置に対する網膜中心位置の変位の変化は段階的に収束していく。
【0250】
図15の処理では、記憶部212にあらかじめ記憶された眼球モデルを用いて網膜入射位置が特定されていたが、実施形態に係る処理はこれに限定されない。例えば、被検眼Eの光学特性を表す眼内パラメータを含む眼球モデルを用いて網膜入射位置が特定されてもよい。
【0251】
図17に、第2動作例の変形例に係るステップS14の動作例のフロー図を示す。記憶部212には、
図17に示す処理を実現するためのコンピュータプログラムが記憶されている。主制御部211は、このコンピュータプログラムに従って動作することにより、
図17に示す処理を実行する。
【0252】
(S51:測定値を取得)
主制御部211は、ステップS31と同様に、被検眼Eの角膜形状パラメータ、被検眼Eの眼屈折度数、及び眼軸長を眼球モデル生成部361に取得させる。角膜形状パラメータ等は、上記のように、被検眼Eに対する測定により取得される。角膜形状パラメータは、被検眼Eに対してケラト測定を実行することにより取得される。眼屈折度数は、被検眼Eに対してレフ測定を実行することにより取得される。眼軸長は、例えば被検眼Eに対してOCT計測を実行することにより取得される。眼内パラメータとして眼軸長以外の眼内パラメータを取得してもよい。
【0253】
(S52:眼球モデルを生成)
次に、主制御部211は、ステップS32と同様に、ステップS31において取得された角膜形状パラメータ、眼屈折度数、及びパラメータ算出部361Aにより算出された眼軸長を用いて被検眼Eの3次元の眼球モデルをモデル生成部361Bに生成させる。
【0254】
(S53:網膜入射位置を特定)
続いて、主制御部211は、ステップS42と同様に、光スキャナー88により偏向された測定光LSの網膜入射位置を網膜入射位置特定部362Cに特定させる。
【0255】
(S54:変位ΔX、ΔYを算出)
次に、主制御部211は、ステップS43と同様に、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位(水平面内の変位ΔX、鉛直面内の変位ΔY)を解析部362に算出させる。
【0256】
(S55:入射角の変化量を特定)
主制御部211は、ステップS44と同様に、テーブル情報を参照してステップS53において算出された変位ΔX、ΔYに対応した測定光LSの入射角の変化量をスキャン処理部362Dに特定させる。
【0257】
(S56:光スキャナーの制御情報を生成)
主制御部211は、ステップS45と同様に、ステップS55において特定された入射角の変化量に基づいて、所定の位置がスキャン中心になるように、光スキャナー88のスキャン幅、スキャン速度、スキャン中心のオフセット値の少なくとも1つを変更するための制御情報をスキャン処理部362Dに生成させる。主制御部211は、生成された制御情報に基づいて光スキャナー88を制御する。
【0258】
以上で、第2動作例の変形例に係るステップS14の処理は終了である(エンド)。
【0259】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0260】
いくつかの実施形態に係る眼科装置(1000)は、光学系(OCT光学系8)と、取得部(前眼部カメラ300)と、解析部(362)と、制御部(210、主制御部211)とを含む。光学系は、光スキャナー(88)を含み、光スキャナーにより偏向された光(測定光LS)を被検眼(E)に照射する。取得部は、被検眼の前眼部像を取得する。解析部は、取得部により取得された前眼部像を解析することにより被検眼の角膜(Cr)において上記の光が入射する角膜入射位置を特定し、角膜入射位置に入射する光が被検眼の網膜において入射する網膜入射位置を特定する。制御部は、網膜における基準位置(中心窩)に対する網膜入射位置の変位に基づいて光スキャナーを制御する。
【0261】
このような構成によれば、前眼部像から網膜入射位置を特定し、基準位置に対する網膜入射位置の変位に基づいて光スキャナーを制御することができるため、前眼部像から網膜における所定位置に光が入射するように位置合わせを行うことができる。これにより、前眼部像から網膜に対するトラッキング制御が可能になる。この場合、網膜を直接的に観察する必要がなくなり、眼底(網膜)に照明光を照射する眼底照明系を不要にすることができる。
【0262】
いくつかの実施形態は、被検眼にアライメント光束を投射するアライメント光学系(アライメント光投射系2)を含み、解析部は、前眼部像においてアライメント光束に基づいて形成された像(プルキンエ像)に基づいて角膜入射位置を特定する。
【0263】
このような構成によれば、前眼部像におけるプルキンエ像の位置に基づいて角膜の入射位置を特定するようにしたので、角膜入射位置を高精度に特定することが可能になる。その結果、網膜入射位置を高精度に特定することが可能になり、前眼部像から高精度な位置合わせを行うことができるようになる。
【0264】
いくつかの実施形態は、被検眼と光学系とを相対的に移動する移動機構(200)を含み、制御部は、前眼部像においてアライメント光束に基づいて形成された像に基づいて移動機構を制御した後、上記の変位に基づいて光スキャナーを制御する。
【0265】
このような構成によれば、アライメント光束に基づく像を基準に被検眼と光学系とのアライメントが完了した後に、特定された網膜入射位置に基づく位置合わせが可能になる。それにより、網膜における高精度なトラッキング制御を早期に実行することができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、取得部は、前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影する2以上の撮影部(前眼部カメラ300)を含み、制御部は、2以上の撮影部の位置と、2以上の撮影部により取得された2以上の撮影画像を解析することにより得られた上記の像の位置とに基づいて移動機構を制御する。
【0267】
このような構成によれば、広いダイナミックレンジで被検眼と光学系とのアライメントを行うことができるようになる。
【0268】
いくつかの実施形態では、解析部は、角膜入射位置に入射する光に対して被検眼又は所定の模型眼の光学特性を表す眼球パラメータを用いた光線追跡処理を施すことにより網膜入射位置を特定する。
【0269】
このような構成によれば、前眼部像から、簡素な処理で網膜入射位置を特定することが可能になる。
【0270】
いくつかの実施形態では、制御部は、角膜入射位置における光の入射角の所定の変化量に対して、網膜における基準位置に対する網膜入射位置の変位の変化量が所定の閾値以内になるように光線追跡処理を繰り返すことにより制御情報を特定し、制御情報に基づいて光スキャナーを制御する。
【0271】
このような構成によれば、光線追跡処理を繰り返すことにより所望の位置をスキャンできるように光スキャナーを制御することができるようになる。
【0272】
いくつかの実施形態では、制御部は、被検眼又は所定の模型眼の光学特性に対応したテーブル情報又は関数を用いて角膜入射位置における光の入射角の変化量を特定し、特定された変化量に基づいて制御情報を特定し、制御情報に基づいて光スキャナーを制御する。
【0273】
このような構成によれば、テーブル情報又は関数を用いることにより所望の位置をスキャンできるように光スキャナーを制御することができるため、前眼部像から網膜の所望の位置への位置合わせの処理を簡素化することが可能になる。
【0274】
いくつかの実施形態では、光学特性は、被検眼の角膜形状情報を含む。
【0275】
このような構成によれば、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能になる。
【0276】
いくつかの実施形態では、光学系は、被検眼に測定パターンを投射し、その戻り光を検出する角膜形状測定光学系(ケラト測定系3)を含み、角膜形状測定光学系により得られた戻り光の検出結果に基づいて被検眼の角膜形状情報を算出する角膜形状算出部(222)を含む。
【0277】
このような構成によれば、簡素な構成で、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能な眼科装置を提供することが可能になる。
【0278】
いくつかの実施形態では、光学特性は、被検眼の屈折力値(眼屈折度数)を含む。
【0279】
このような構成によれば、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能になる。
【0280】
いくつかの実施形態では、光学系は、被検眼に光を投射し、その戻り光を検出する屈折力測定光学系(レフ測定投射系6、レフ測定受光系7)を含み、屈折力測定光学系により得られた戻り光の検出結果に基づいて被検眼の屈折力値を算出する屈折力値算出部(眼屈折度数算出部221)を含む。
【0281】
このような構成によれば、簡素な構成で、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能な眼科装置を提供することが可能になる。
【0282】
いくつかの実施形態では、光学特性は、被検眼の眼内距離を含む。
【0283】
このような構成によれば、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能になる。
【0284】
いくつかの実施形態では、光学系は、光源(OCT光源101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナーにより偏向された測定光を被検眼に投射し、被検眼からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出するOCT光学系(8)を含み、OCT光学系により得られた干渉光の検出結果に基づいて被検眼の眼内距離を算出する眼内距離算出部(パラメータ算出部361A)を含む。
【0285】
このような構成によれば、簡素な構成で、被検眼の光学特性を考慮して、より正確な位置合わせ(トラッキング)を行うことが可能な眼科装置を提供することが可能になる。
【0286】
いくつかの実施形態では、解析部は、OCT光学系により得られた干渉光の検出結果に基づいて基準位置を特定する。
【0287】
このような構成によれば、基準位置に対する網膜入射位置を被検眼に合わせて高精度に特定することが可能になる。
【0288】
いくつかの実施形態では、光学系は、光源(OCT光源101)からの光(L0)を参照光(LR)と測定光(LS)とに分割し、光スキャナーにより偏向された測定光を被検眼に投射し、被検眼からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出するOCT光学系(8)を含み、解析部は、OCT光学系により得られた干渉光の検出結果に基づいて基準位置を特定する。
【0289】
このような構成によれば、基準位置に対する網膜入射位置を被検眼に合わせて高精度に特定することが可能になる。
【0290】
<その他>
上記の実施形態では、被検眼に光を投射することにより眼屈折度数を取得する場合について説明したが、実施形態に係る眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。実施形態に係る眼科装置は、公知の波面センサーを用いて取得された波面収差に基づいて眼屈折度数を取得してもよい。
【0291】
上記の実施形態に係るトラッキング処理を、装置光学系と被検眼とのアライメント処理に適用することが可能である。
【0292】
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0293】
2 アライメント光投射系
3 ケラト測定系
4 固視投影系
5 前眼部観察系
6 レフ測定投射系
7 レフ測定受光系
8 OCT光学系
9 処理部
210 制御部
211 主制御部
212 記憶部
212A 眼内パラメータ
220 演算処理部
221 眼屈折度数算出部
222 角膜形状算出部
224 画像形成部
225 データ処理部
300 前眼部カメラ
350 アライメント処理部
360 トラッキング処理部
361 眼球モデル生成部
362 解析部
1000 眼科装置
Cr 角膜
E 被検眼
Ef 眼底