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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】巻線ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20230915BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20230915BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20230915BHJP
   H01F 27/22 20060101ALI20230915BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H01F30/10 T
H01F30/10 S
H01F27/06
H01F27/02 150
H01F27/22
H01F27/30 160
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019081845
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020181838
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】双木 俊行
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 保
(72)【発明者】
【氏名】河辺 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】植木 清隆
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-025358(JP,U)
【文献】実開昭53-128814(JP,U)
【文献】実開平05-082093(JP,U)
【文献】特開2009-223881(JP,A)
【文献】特開2019-057644(JP,A)
【文献】特開2013-232476(JP,A)
【文献】特開2020-068367(JP,A)
【文献】実開昭54-119616(JP,U)
【文献】実開昭49-105813(JP,U)
【文献】国際公開第2020/085099(WO,A1)
【文献】特開2015-012272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/06
H01F 27/02
H01F 27/22
H01F 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線部を有する磁性部品と、
前記磁性部品を収容する収容部品と、
前記収容部品に収容された前記磁性部品の側面と当該側面に対向する前記収容部品の第一内側面との間に挿入されることで、前記磁性部品を前記第一内側面に対向する前記収容部品の第二内側面との間に挟む挟持部材と、を備え、
前記第一内側面は、前記収容部品に収容された前記磁性部品の側面に沿う一方向に進むにしたがって前記側面から離れるように前記磁性部品の側面に対して傾斜し、
前記挟持部材は、前記一方向に延びて前記磁性部品の側面に対向する第一対向面と、前記第一対向面に対して傾斜し、前記収容部品の第一内側面に対向かつ平行する第二対向面とを有するくさび形状に形成され
前記収容部品に収容された前記磁性部品と前記収容部品の第二内側面との間に挟まれる介在ブロックを備え、
前記磁性部品を複数備え、
複数の前記磁性部品は、前記一方向、及び、当該一方向に直交して前記第一内側面及び前記第二内側面が互いに対向する第一直交方向に直交する第二直交方向に並び、
前記収容部品は、前記第一内側面及び前記第二内側面を前記磁性部品と同じ数の組を含み、
複数組の前記第一内側面及び前記第二内側面は、前記第二直交方向に並び、
前記第二直交方向に隣り合う二組の前記第一内側面及び前記第二内側面は、前記第一直交方向において互いに逆向きに配列され、
各組の前記磁性部品と前記第二内側面との間に挟まれる前記介在ブロックの熱伝導率が、前記挟持部材の熱伝導率よりも高い巻線ユニット。
【請求項2】
前記挟持部材が前記磁性部品の側面と前記収容部品の第一内側面との間に挿入される方向に、前記挟持部材を押し付ける押付部を備える請求項1に記載の巻線ユニット。
【請求項3】
前記挟持部材及び前記介在ブロックの少なくとも一方が、金属材料、又は、金属材料と同等の熱伝導率を有する材料からなる請求項1又は請求項2に記載の巻線ユニット。
【請求項4】
弾性を有し、前記磁性部品と前記収容部品の第一内側面との間、及び、前記磁性部品と前記収容部品の第二内側面との間のうち少なくとも一方に挟まれるシート部材を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の巻線ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、巻線ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器には、トランスやチョークコイル等を構成する巻線部をケースに収容した巻線ユニットを備えたものがある。
特許文献1には、ケースに収容した磁性部品とケースの内側面との間にばねを挿入し、ばねの弾性力によって磁性部品をケースの内側面に押し付ける構成が開示されている。この構成では、磁性部品がばねの弾性力によってケースの内側面に押し付けられることで、磁性部品の巻線部の熱をケースに効率よく伝えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-51320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁性部品を構成する巻線部のサイズは、巻線の巻き方に応じて変わる。このため、磁性部品とケースの内側面との隙間の大きさは、巻線部のサイズに応じて変化する。このことから、ばねによって磁性部品をケースの内側面に押し付ける特許文献1の構成では、磁性部品とケースの内側面との隙間の大きさに応じて、ばねによる磁性部品の押付力が変化してしまう。その結果として、磁性部品の放熱性能にバラツキが生じてしまう。例えば、磁性部品とケースの内側面との隙間が大きくなると、ばねによる磁性部品の押付力が低下する。その結果として、磁性部品の放熱性能が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、磁性部品の放熱性能のバラツキを抑制できる巻線ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、巻線部を有する磁性部品と、前記磁性部品を収容する収容部品と、前記収容部品に収容された前記磁性部品の側面と当該側面に対向する前記収容部品の第一内側面との間に挿入されることで、前記磁性部品を前記第一内側面に対向する前記収容部品の第二内側面との間に挟む挟持部材と、を備え、前記第一内側面は、前記収容部品に収容された前記磁性部品の側面に沿う一方向に進むにしたがって前記側面から離れるように前記磁性部品の側面に対して傾斜し、前記挟持部材は、前記一方向に延びて前記磁性部品の側面に対向する第一対向面と、前記第一対向面に対して傾斜し、前記収容部品の第一内側面に対向かつ平行する第二対向面とを有するくさび形状に形成され、前記収容部品に収容された前記磁性部品と前記収容部品の第二内側面との間に挟まれる介在ブロックを備え、前記磁性部品を複数備え、複数の前記磁性部品は、前記一方向、及び、当該一方向に直交して前記第一内側面及び前記第二内側面が互いに対向する第一直交方向に直交する第二直交方向に並び、前記収容部品は、前記第一内側面及び前記第二内側面を前記磁性部品と同じ数の組を含み、複数組の前記第一内側面及び前記第二内側面は、前記第二直交方向に並び、前記第二直交方向に隣り合う二組の前記第一内側面及び前記第二内側面は、前記第一直交方向において互いに逆向きに配列され、各組の前記磁性部品と前記第二内側面との間に挟まれる前記介在ブロックの熱伝導率が、前記挟持部材の熱伝導率よりも高い巻線ユニットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る巻線ユニットによれば、くさび形状の挟持部材によって磁性部品が安定に収容部品の第二内側面に押し付けられるため、磁性部品の放熱性能にバラツキが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態に係る巻線ユニットを示す概略平面図である。
図2図1のII-II矢視断面図である。
図3図1,2の巻線ユニットにおける磁性部品を示す図である。
図4図1,2の巻線ユニットを分解した状態を示す断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る巻線ユニットを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
以下、図1~4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、本実施形態に係る巻線ユニット1は、磁性部品2と、収容部品3と、挟持部材4と、を備える。
【0010】
図1,3に示すように、磁性部品2は、巻線部11を有する。巻線部11は、導電性を有する線材を巻き回すことで構成されている。
磁性部品2の具体的な構成は任意であってよい。本実施形態の磁性部品2は、巻線部11及びコア12を備えるトランスである。本実施形態の磁性部品2では、O字状のコア12に対して二つの巻線部11が取り付けられている。各巻線部11は円筒状に形成されている。二つの巻線部11は、その軸A1が互いに平行するように、巻線部11の径方向(Y軸方向)に並ぶ。コア12の一部は、巻線部11の軸方向における二つの巻線部11の両端から突出している。
【0011】
図1,2,4に示すように、収容部品3は、磁性部品2を収容する。すなわち、収容部品3は磁性部品2を収容する収容空間21を有する。収容空間21は、収容部品3の外面3aから一方向(Z軸方向)に窪む有底の穴(窪み)である。収容空間21は、底面22と、底面22の周縁から開口24(外面3a)に向けて延びる内側面23と、を有する。
【0012】
収容部品3の内側面23は、一方向に直交する第一直交方向(X軸方向)において互いに対向する第一内側面23A及び第二内側面23Bを含む。収容空間21に収容された磁性部品2は、これら第一、第二内側面23A,23Bの間に位置する。
第二内側面23Bは、一方向(Z軸方向)に平行して延びる、すなわち、底面22に対して直交する。第二内側面23Bは、平坦な面に形成されている。
【0013】
第一内側面23Aは、傾斜面25を含む。傾斜面25は、平坦に形成され、所定の方向(一方向)に進むにしたがって第二内側面23Bから離れるように第二内側面23Bに対して傾斜する。本実施形態の傾斜面25は、一方向(Z軸方向)において収容空間21の底面22から開口24(外面3a)に向かうにしたがって第二内側面23Bから離れるように第二内側面23Bに対して傾斜する。すなわち、第一直交方向における第一内側面23Aの傾斜面25と第二内側面23Bとの間隔が、一方向において収容空間21の底面22から開口24に向かうにしたがって大きくなる。
【0014】
収容部品3は、熱伝導率の高い材料で構成されるとよい。収容部品3は、例えば電気的な絶縁性を有する材料によって構成されてもよいが、本実施形態ではアルミニウム等の非磁性材料によって構成されている。
【0015】
収容部品3の外面3a(開口24)から見た収容空間21の平面視形状は、例えば円形状など任意でよいが、本実施形態では、矩形状に形成されている。すなわち、収容空間21の内側面23は、磁性部品2を囲む矩形状に形成されている。
本実施形態の収容部品3は、壁の肉厚が小さい箱状に形成されている。このため、収容空間21を囲む収容部品3の外側面の形状が、収容空間21の底面22や内側面23の形状に対応している。
【0016】
収容部品3に収容される磁性部品2は、収容空間21の第一内側面23Aと第二内側面23Bとの間に配される。この状態では、磁性部品2の側面2aが、第一内側面23Aの傾斜面25及び第二内側面23Bに対向する。磁性部品2の側面2aは、第二内側面23Bと同様に一方向(Z軸方向)に延びる。このため、第一内側面23Aの傾斜面25は、これに対向する磁性部品2の側面2aに対して傾斜する。具体的に、傾斜面25は、一方向(Z軸方向)において収容空間21の底面22から開口24に進むにしたがって磁性部品2の側面2aから離れるように磁性部品2の側面2aに対して傾斜する。
【0017】
本実施形態において、磁性部品2は、巻線部11の軸A1が収容空間21の開口方向(Z軸方向)に向くように、収容部品3に収容される。また、磁性部品2が収容部品3に収容された状態では、磁性部品2の二つの巻線部11が、一方向及び第一直交方向に直交する第二直交方向(Y軸方向)に配列される。本実施形態において、傾斜面25及び第二内側面23Bに対向する磁性部品2の側面2aは、磁性部品2の二つの巻線部11の外周面である。
【0018】
図1,2に示すように、挟持部材4は、磁性部品2の側面2aとこれに対向する収容部品3の傾斜面25との間に挿入される。これにより、挟持部材4は、磁性部品2を傾斜面25に対向する収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟む。本実施形態において、磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25との間に挟持部材4を挿入する方向は、収容空間21の開口24から底面22に向かう方向(Z軸負方向)である。
【0019】
挟持部材4は、第一対向面31と第一対向面31に対して傾斜する第二対向面32とを有するくさび形状に形成されている。第一対向面31は、磁性部品2の側面2aに対向する。また、第一対向面31は、磁性部品2の側面2aと同様に一方向(Z軸方向)に延びる。第二対向面32は、第一対向面31に対して傾斜する。また、第二対向面32は、収容部品3の傾斜面25に対向かつ平行する。
【0020】
図4に示すように、第一対向面31に対する第二対向面32の傾斜角度θ1は、磁性部品2の側面2aに対する収容部品3の傾斜面25の傾斜角度θ2と同等である。第二対向面32の傾斜角度θ1は、傾斜面25の傾斜角度θ2と等しくてよいが、例えば傾斜面25の傾斜角度θ2に対して微小に異なってもよい。
本実施形態において、第一対向面31及び第二対向面32は、いずれも平坦な面に形成されている。
【0021】
本実施形態において、挟持部材4は、金属材料よりも熱伝導率が低い材料によって構成されている。挟持部材4は、例えば電気的な絶縁性を有する材料で構成されてよい。挟持部材4は、例えば樹脂やセラミックによって構成されてよい。
【0022】
図1,2,4に示すように、本実施形態の巻線ユニット1は、スペーサ5をさらに備える。スペーサ5は、磁性部品2の側面2aと挟持部材4の第一対向面31との間に配される。スペーサ5は、第一直交方向(X軸方向)を厚さ方向とする板状に形成されている。
スペーサ5の第一面41は、これに対向する磁性部品2の側面2aに対応する形状に形成されている。具体的に、スペーサ5の第一面41は、湾曲した巻線部11の外周面に面接触できるように凹状に湾曲した面を含む(特に図1参照)。第一面41と反対側に向くスペーサ5の第二面42は、これに対向する挟持部材4の第一対向面31に対応する形状に形成されている。具体的に、スペーサ5の第二面42は、挟持部材4の第一対向面31に面接触できるように平坦な面に形成されている。
【0023】
本実施形態において、スペーサ5は、金属材料よりも熱伝導率が低い材料によって構成されている。スペーサ5は、例えば電気的な絶縁性を有する材料で構成されてよい。スペーサ5は、例えば樹脂やセラミックによって構成されてよい。
【0024】
本実施形態の巻線ユニット1は、介在ブロック6をさらに備える。介在ブロック6は、収容部品3に収容された磁性部品2と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれる。介在ブロック6は、スペーサ5と同様に、第一直交方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
介在ブロック6の第一面51は、スペーサ5の第一面41と同様に、これに対向する磁性部品2の側面2aに対応する形状に形成されている。第一面51と反対側に向く介在ブロック6の第二面52は、これに対向する収容部品3の第二内側面23Bに対応する形状に形成されている。具体的に、介在ブロック6の第二面52は、収容部品3の第二内側面23Bに面接触できるように平坦な面に形成されている。
【0025】
本実施形態において、介在ブロック6は、金属材料、又は、金属材料と同等の熱伝導率を有する材料によって構成されている。金属材料と同等の熱伝導率を有する材料は、例えば樹脂やセラミックであってよい。介在ブロック6の熱伝導率は、前述した挟持部材4やスペーサ5よりも高い。
【0026】
本実施形態の巻線ユニット1は、シート部材7をさらに備える。シート部材7は、弾性を有する。本実施形態の巻線ユニット1は、シート部材7を二つ有する。
第一シート部材7Aは、磁性部品2と収容部品3の傾斜面25(第一内側面23A)との間に挟まれる。本実施形態において、第一シート部材7Aは、磁性部品2を構成する二つの巻線部11の外周面とスペーサ5との間に挟まれる。なお、第一シート部材7Aは、例えばスペーサ5と挟持部材4の第一対向面31との間に挟まれてもよい。また、第一シート部材7Aは、例えば挟持部材4の第二対向面32と収容部品3の傾斜面25(第一内側面23A)との間に挟まれてもよい。
【0027】
一方、第二シート部材7Bは、磁性部品2と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれる。本実施形態において、第二シート部材7Bは、磁性部品2を構成する二つの巻線部11の外周面と介在ブロック6との間に挟まれる。なお、第二シート部材7Bは、例えば介在ブロック6と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれてもよい。
【0028】
本実施形態では、第一シート部材7Aが、巻線部11の外周面とスペーサ5との間において弾性的に圧縮されることで、巻線部11とスペーサ5との密着性を向上して、巻線部11の熱を効率よくスペーサ5に伝えることができる。同様に、第二シート部材7Bが、巻線部11と介在ブロック6との密着性を向上して、巻線部11の熱を効率よく介在ブロック6に伝えることができる。すなわち、シート部材7は、巻線部11の熱を効率よく伝える放熱シートとして機能する。シート部材7は、熱伝導率の高い材料で構成されるとよい。また、シート部材7は、例えば電気的な絶縁性を有する材料で構成されてよい。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の巻線ユニット1は、充填樹脂8をさらに備える。
充填樹脂8は、収容部品3の収容空間21に充填され、収容空間21に収容された磁性部品2や挟持部材4を封止する。本実施形態において、充填樹脂8は、スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7も封止する。
充填樹脂8は、収容部品3における磁性部品2や挟持部材4などの位置を固定する。充填樹脂8は、少なくとも収容部品3に収容された磁性部品2の巻線部11が収容部品3の外側に露出しないように巻線部11を埋めればよい。図2においては、磁性部品2のコア12の一部や挟持部材4の一部が充填樹脂8の外側に露出し、スペーサ5や介在ブロック6が充填樹脂8内に埋められているが、これに限ることはない。
【0030】
図1,2,4に示すように、本実施形態の巻線ユニット1は、押付部9をさらに備える。押付部9は、挟持部材4が磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25との間に挿入される方向(Z軸負方向)に、挟持部材4を押し付ける。押付部9の具体的な構成は任意であってよい。本実施形態の押付部9は、支持部81と、調整ねじ82と、を備える。
【0031】
支持部81は、板状に形成され、収容空間21が開口する収容部品3の外面3aに重ねて配される。支持部81は、ねじ等によって収容部品3の外面3aに固定される。支持部81は、図示例のように収容部品3に対して着脱可能であってよい。支持部81を収容部品3に固定した状態では、支持部81の一部が、一方向(Z軸方向)において収容部品3に収容された挟持部材4と重なる。挟持部材4と重なる支持部81の部位には、支持部81の板厚方向(Z軸方向)に貫通する雌ねじ孔83が形成されている。
【0032】
調整ねじ82は、その雄ねじが支持部81の雌ねじ孔83に噛み合うように、支持部81に取り付けられる。調整ねじ82は、支持部81から挟持部材4に向けて延びている。調整ねじ82を支持部81に対して回転させることで、調整ねじ82は一方向(Z軸方向)において挟持部材4に対して近づいたり離れたりする。
調整ねじ82の先端が挟持部材4に接触した状態で、調整ねじ82を回転させて挟持部材4の挿入方向(Z軸負方向)に移動させることで、挟持部材4をその挿入方向(Z軸方向)に押すことができる。
【0033】
以上のように構成される本実施形態の巻線ユニット1は、例えば以下の手順で製造することができる。
巻線ユニット1を製造する際には、はじめに、磁性部品2、収容部品3及び挟持部材4を用意する(準備工程)。本実施形態の準備工程では、スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7も用意する。
次いで、巻線部11を有する磁性部品2を収容部品3(収容空間21)に収容する(収容工程)。本実施形態の収容工程では、スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7も収容部品3に収容する。スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7は、例えば磁性部品2(特に巻線部11)に一体に固定された状態で、収容部品3に収容されてよい。この場合、磁性部品2に対するスペーサ5、介在ブロック6、シート部材7の位置ずれを防止できる。
【0034】
その後、くさび形状の挟持部材4を磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25(第一内側面23A)との間に挿入する(挿入工程)。挿入工程では、挟持部材4を挿入することで、磁性部品2が挟持部材4と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれる。また、挟持部材4と収容部品3の第二内側面23Bとの間には、磁性部品2の他に、スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7も挟まれる。
挿入工程の後には、押付部9によって挟持部材4をその挿入方向に押し付ける(押付工程)。これにより、挟持部材4を磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25との間に保持できる。
【0035】
押付工程の後には、流動性を有する充填樹脂8を収容部品3の収容空間21に注入し、その後硬化させることで、充填樹脂8によって磁性部品2、挟持部材4を封止する(封止工程)。本実施形態の樹脂注入工程では、スペーサ5、介在ブロック6、シート部材7も封止する。
なお、封止工程後には、例えば押付部9による挟持部材4の押し付けを解除する押付解除工程を実施してもよい。この場合、押付解除工程では、例えば押付部9の支持部81を収容部品3から取り外せばよい。
以上により、本実施形態に係る巻線ユニット1の製造方法が完了する。
【0036】
本実施形態の巻線ユニット1では、介在ブロック6の熱伝導率が高いため、磁性部品2(特に巻線部11)の熱を、シート部材7、介在ブロック6を介して収容部品3の第二内側面23Bに積極的に伝えることができる。特に、巻線部11の外周面に対向する介在ブロック6の第一面51が、巻線部11の外周面に対応する形状に形成されているため、巻線部11と介在ブロック6との接続面積を大きく確保できる。また、介在ブロック6の第二面52が、収容部品3の第二内側面23Bに対応する形状に形成されているため、介在ブロック6と収容部品3との接続面積を大きく確保できる。これにより、巻線部11の熱を効率よく収容部品3に伝えることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の巻線ユニット1によれば、くさび形状の挟持部材4が磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25(第一内側面23A)との間に挿入されることで、磁性部品2が収容部品3の第二内側面23Bに向けて押し付けられる。これにより、磁性部品2を収容部品3の第二内側面23Bに対して密着できる。具体的には、巻線部11と介在ブロック6との密着性、及び、介在ブロック6と収容部品3の第二内側面23Bとの密着性を向上できる。したがって、磁性部品2(特に巻線部11)の熱を効率よく収容部品3に伝えることができる。
【0038】
そして、本実施形態の巻線ユニット1によれば、挟持部材4がくさび形状に形成されていることで、挟持部材4がゴムやばねなどのように弾性変形可能に形成されなくても、磁性部品2を収容部品3に押し付けることができる。これにより、磁性部品2をばねで収容部品3の第二内側面23Bに押し付ける場合と比較して、磁性部品2を安定に収容部品3の第二内側面23Bに押し付けることができる。したがって、巻線ユニット1における磁性部品2の放熱性能にバラツキが生じることを抑制できる。
【0039】
また、本実施形態の巻線ユニット1は、挟持部材4が磁性部品2の側面2aと収容部品3の傾斜面25との間に挿入される方向(Z軸負方向)に、挟持部材4を押し付ける押付部9を備える。挟持部材4が押付部9によって押し付けられることで、挟持部材4を確実に収容部品3の第一内側面23Aと磁性部品2との間に保持できる。特に、充填樹脂8によって磁性部品2や挟持部材4などを収容部品3に対して固定するまでの間に、挟持部材4、及び、挟持部材4によって収容部品3に押し付けられる磁性部品2の位置を効果的に保持できる。
【0040】
また、本実施形態の巻線ユニット1によれば、押付部9が、支持部81とこれに取り付けられた調整ねじ82とによって構成されている。このため、調整ねじ82の回転に要するトルクに基づいて、挟持部材4によって磁性部品2を収容部品3の第二内側面23Bに押し付ける力を簡単かつ正確に調整することができる。
【0041】
また、本実施形態の巻線ユニット1は、磁性部品2と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれる介在ブロック6を備える。このため、収容部品3に収容された磁性部品2(特に巻線部11)を、収容部品3の第二内側面23Bに対して間隔をあけて配することができる。
【0042】
また、本実施形態の巻線ユニット1では、介在ブロック6が金属材料、又は、金属材料と同等の熱伝導率を有する材料によって構成されている。これにより、磁性部品2(特に巻線部11)の熱を、介在ブロック6を通して収容部品3に効率よく伝えることができる。したがって、磁性部品2の放熱効率を向上できる。
【0043】
また、本実施形態の巻線ユニット1では、弾性を有するシート部材7が、磁性部品2と挟持部材4との間、及び、磁性部品2と収容部品3の第二内側面23Bとの間に挟まれる。このため、巻線ユニット1が振動などの外力を受けて磁性部品2が収容部品3に対して動こうとしても、磁性部品2と収容部品3との間に挟まれたシート部材7が弾性的に変形することで、振動などの外力を吸収できる。また、充填樹脂8を収容部品3の収容空間21に注入する際に、充填樹脂8の流れに基づく外力が磁性部品2に作用しても、シート部材7が弾性的に変形して当該外力を吸収できる。したがって、磁性部品2が収容部品3内において位置ずれする(例えば磁性部品2が収容部品3内において傾く)ことを効果的に抑制できる。
【0044】
第一実施形態の巻線ユニット1において、挟持部材4やスペーサ5は、例えば金属材料、又は、金属材料と同等の熱伝導率を有する材料(例えば樹脂やセラミック)で構成されてもよい。この場合には、磁性部品2(特に巻線部11)の熱を、スペーサ5及び挟持部材4を通して収容部品3に効率よく伝えることができる。したがって、磁性部品2の放熱効率を向上できる。
このような構成では、介在ブロック6の熱伝導率は、例えば上記実施形態と同様に高くてもよいが、例えば挟持部材4やスペーサ5よりも低くてもよい。また、介在ブロック6は、例えば電気的な絶縁性を有する材料で構成されてもよい。
【0045】
〔第二実施形態〕
次に、図5を参照して本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の巻線ユニット1Cは、第一実施形態と同様に、磁性部品2と、収容部品3Cと、挟持部材4と、を備える。また、巻線ユニット1Cは、第一実施形態と同様のスペーサ5、介在ブロック6、シート部材7、押付部9を備える。また、巻線ユニット1Cは、第一実施形態と同様の充填樹脂(不図示)を備えてよい。
ただし、本実施形態の巻線ユニット1Cは、磁性部品2を複数(図示例では二つ)備える。複数の磁性部品2は、第二直交方向(Y軸方向)に並ぶように収容部品3Cの収容空間21に収容される。
【0047】
収容部品3Cは、第一実施形態と同様の収容空間21を有する。収容空間21の内側面23は、第一実施形態と同様に、第一直交方向(X軸方向)において互いに対向する第一内側面23A及び第二内側面23Bを含む。第一内側面23Aは第一実施形態と同様の傾斜面25を有する。
ただし、本実施形態では、収容部品3Cの内側面23が第一、第二内側面23A,23Bを複数組含む。第一、第二内側面23A,23Bの組数は、磁性部品2の数と同じである。複数組の第一、第二内側面23A,23Bは、第二直交方向(複数の磁性部品2の配列方向)に並ぶ。
【0048】
本実施形態では、第二直交方向に隣り合う二組の第一、第二内側面23A,23Bが、第一直交方向において互いに逆向きに配列されている。図5においては、Y軸正方向側に位置する第一組の第一内側面23A及び第二内側面23Bが、X軸負方向に順番に配列されている。一方、Y軸負方向側に位置する第二組の第一内側面23A及び第二内側面23Bは、X軸正方向に順番に配列されている。
また、第一組の第一内側面23A及び第二組の第二内側面23Bは、収容部品3Cの第一部位27に形成されている。一方、第一組の第二内側面23B及び第二組の第一内側面23Aは、第二直交方向において第一部位27に対向する収容部品3Cの第二部位28に形成されている。
【0049】
磁性部品2、挟持部材4、スペーサ5、介在ブロック6及びシート部材7は、第一実施形態と同様に、各組の第一、第二内側面23A,23Bの間に配される。また、介在ブロック6の熱伝導率は、第一実施形態と同様に、挟持部材4やスペーサ5の熱伝導率よりも高い。
ただし、第一組の第一、第二内側面23A,23Bの間においては、挟持部材4及びスペーサ5が磁性部品2と収容部品3Cの第一部位27との間に配され、介在ブロック6が磁性部品2と収容部品3Cの第二部位28との間に配される。一方、第二組の第一、第二内側面23A,23Bの間においては、介在ブロック6が磁性部品2と収容部品3Cの第一部位27との間に配され、挟持部材4及びスペーサ5が磁性部品2と収容部品3Cの第二部位28との間に配される。すなわち、熱伝導率が高く、二つの磁性部品2にそれぞれ接続された二つの介在ブロック6が、収容部品3Cの互いに異なる部位(第一部位27、第二部位28)に接続されている。
【0050】
第二実施形態に係る巻線ユニット1Cでは、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態に係る巻線ユニット1Cによれば、収容部品3C内において隣り合う二つの磁性部品2の熱を収容部品3Cの互いに異なる部位(第一部位27、第二部位28)に積極的に伝えることができる。これにより、二つの磁性部品2の熱を収容部品3Cの同一の部位(例えば第一部位27)に伝える場合と比較して、磁性部品2の放熱性能を向上できる。
【0051】
第二実施形態において、第二直交方向(Y軸方向)に隣り合う二組の第一、第二内側面23A,23Bは、例えば第一直交方向(X軸方向)において互いに同じ向きに配列されてよい。すなわち、第二直交方向に隣り合う二つの磁性部品2のいずれに対しても、第一直交方向の一方側に挟持部材4及びスペーサ5が配され、他方側に介在ブロック6が配されてもよい。
このような構成においては、例えば、隣り合う二つの磁性部品2のうち、一方の磁性部品2に対応する挟持部材4及びスペーサ5の熱伝導率を、一方の磁性部品2に対応する介在ブロック6の熱伝導率よりも高くするとよい。また、他方の磁性部品2に対応する挟持部材4及びスペーサ5の熱伝導率を、一方の磁性部品2に対応する介在ブロック6の熱伝導率よりも低くするとよい。このような構成では、上記した第二実施形態の場合と同様に、二つの磁性部品2の熱を収容部品3Cの互いに異なる部位(第一部位27、第二部位28)に積極的に伝えることができる。
【0052】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0053】
本発明の巻線ユニットは、例えばスペーサを備えなくてもよい。すなわち、本発明の巻線ユニットでは、例えば挟持部材の第一対向面が磁性部品の側面に接触してもよい。この場合、挟持部材の第一対向面は、例えば磁性部品の側面に面接触するように形成されるとよい。スペーサを備えない構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
本発明の巻線ユニットは、例えば介在ブロックを備えなくてもよい。すなわち、本発明の巻線ユニットでは、例えば磁性部品の側面が収容部品の第二内側面に接触してもよい。この場合、収容部品の第二内側面は、磁性部品の側面に面接触するように形成されるとよい。介在ブロックを備えない構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
本発明の巻線ユニットにおいて、弾性を有するシート部材は、例えば磁性部品と収容部品の第一内側面(傾斜面)との間のみに挟まれてもよいし、磁性部品と収容部品の第二内側面との間のみに挟まれてもよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
本発明の巻線ユニットにおいて、収容部品は、壁の肉厚が小さい箱状に形成されることに限らず、例えば壁の肉厚が大きい形状に形成されてもよい。すなわち、収容部品の収容空間を囲む収容部品の外側面の形状が、収容空間の内面(底面、内側面)に対応しなくてもよい。すなわち、収容部品は、例えばダイキャストであってもよい。
【0057】
本発明の巻線ユニットにおいて、磁性部品は、トランスに限らず、チョークコイルなどであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1C 巻線ユニット
2 磁性部品
2a 側面
3,3C 収容部品
4 挟持部材
5 スペーサ
6 介在ブロック
7 シート部材
8 充填樹脂
9 押付部
11 巻線部
23A 第一内側面
23B 第二内側面
25 傾斜面
31 第一対向面
32 第二対向面
81 支持部
82 調整ねじ
図1
図2
図3
図4
図5