(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】薬剤容器
(51)【国際特許分類】
E03D 9/02 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
E03D9/02
(21)【出願番号】P 2019097393
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】江口 諒
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒子
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/137922(WO,A1)
【文献】国際公開第1996/038637(WO,A1)
【文献】米国意匠特許発明第00502530(US,S)
【文献】実開昭56-116483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器の便器本体を構成する周壁の上端のリムに吊り掛けられる吊り掛け具に支持され、前記周壁の内周面に対向して配置される薬剤容器であって、
薬剤を収容する収容部を有する容器本体と、前記容器本体に設けられ前記吊り掛け具に結合される結合部とを備え、
前記容器本体は
前記吊り掛け具により前記リムに吊り掛けられた状態で、上下方向に延在する高さと、
前記周壁の内周面に対向して水平方向に延在する幅と、前記高さおよび前記幅よりも大きい寸法を有
し水平方向に延在する長さとを有し、
前記容器本体の幅は、前記長さ方向の中央から前記長さ方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成され、
前記容器本体の長さ方向から見た高さは、前記容器本体の幅方向の一端から他端に向かうにつれて小さくなる寸法で形成され、
前記吊り掛け具により前記リムに吊り掛けられた状態で、前記容器本体の幅方向の前記一端は前記周壁の内周面に対向し、
前記容器本体の幅方向の前記一端に、前記長さ方向および前記高さ方向の全域にわたって前記収容部を開放する開口部が設けられ、
前記容器本体に、前記収容部を複数の収容室に分割しそれら収容室に収容された薬剤どうしの前記収容部内での接触を阻止する仕切り壁が設けら
れ、
前記容器本体の幅方向の前記一端において、前記仕切り壁の端部と前記容器本体の端部とは、前記長さ方向の全長にわたって前記幅方向と直交する単一の仮想平面状に位置し、 前記容器本体を前記幅方向から見ると少なくとも前記長さ方向の半部は前記長さ方向の端部が凸状の細長の流線形を呈して
いる、
ことを特徴とする薬剤容器。
【請求項2】
前記容器本体を前記幅方向から見ると前記長さ方向の両端が凸状で前記長さ方向の全長にわたり細長の流線形を呈している、
ことを特徴とする請求項1記載の薬剤容器。
【請求項3】
前記幅と前記高さの寸法割合は1:1である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の薬剤容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記高さ方向において互いに対向しそれらの内側に前記収容部が形成される上面壁部と下面壁部とを含んで構成され、
前記高さは、前記幅方向と直交する方向または前記長さ方向と直交する方向における前記上面壁部の表面と前記下面壁部の表面間の寸法であ
り、
前記容器本体の前記幅方向から見た高さは、前記長さ方向の中央から前記長さ方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成され
ている、
ことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3記載の薬剤容器。
【請求項5】
前記上面壁部と下面壁部は、前記高さ方向に直交し前記高さの中心を通る仮想平面に対して面対称な曲面形状で形成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の薬剤容器。
【請求項6】
前記容器本体の幅と前記幅方向から見た前記容器本体の高さは、前記容器本体の長さ方向の中央から前記長さのほぼ1/3程度までは、中央から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、前記長さ方向の中央から前記長さのほぼ1/3程度よりも離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成され、
前記容器本体の長さ方向から見た高さは、前記容器本体の幅方向の一端から前記幅方向の中央までは、前記容器本体の幅方向の一端から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、前記中央から更に離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項4
または5記載の薬剤容器。
【請求項7】
前記結合部は、前記上面壁部または前記下面壁部の少なくとも一方に設けられている、
ことを特徴とする請求項4~
6の何れか1項記載の薬剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器の便器本体の内側で使用される薬剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗大便器では、便器本体の周壁の内周面に水吐出口から水を吐出させ、周壁の内周面に沿って旋回する水の旋回流を形成し、この旋回流により周壁やボウル部を洗浄するようにしている。
水洗大便器の便器本体の内側で使用される薬剤容器は、便器本体を構成する周壁の上端のリムに吊り掛けられる吊り掛け具で支持され、便器本体の周壁の内周面に対向して配置される(特許文献1)。
そして、周壁の内周面に水吐出口から水が吐出されると、旋回流の一部が薬剤容器に当たり、薬剤容器に収容された薬剤がその表面から少しずつ溶解し水と共に旋回流となり、薬剤を含む水の旋回流により周壁やボウル部が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の薬剤容器は、平面や凸状の曲面で形成されていることから、旋回流の一部が薬剤容器に当たると、水が跳ね上がる不具合があり、また、旋回流の勢いが弱められて旋回流の速度が減速され、周壁やボウル部を効率良く洗浄する上で不利があった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、旋回流の一部が薬剤容器に当たる際の水の跳ね上がりを抑制する上で有利で、また、旋回流の速度の減速を抑制し周壁やボウル部を効率良く洗浄する上で有利な薬剤容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は、水洗大便器の便器本体を構成する周壁の上端のリムに吊り掛けられる吊り掛け具に支持され、前記周壁の内周面に対向して配置される薬剤容器であって、薬剤を収容する収容部を有する容器本体と、前記容器本体に設けられ前記吊り掛け具に結合される結合部とを備え、前記容器本体は、高さと、幅と、前記高さおよび前記幅よりも大きい寸法の長さとを有し、前記容器本体を前記幅方向から見ると少なくとも前記長さ方向の半部は前記長さ方向の端部が凸状の細長の流線形を呈していることを特徴とする。
また、本発明は、前記容器本体を前記幅方向から見ると前記長さ方向の両端が凸状で前記長さ方向の全長にわたり細長の流線形を呈していることを特徴とする。
また、本発明は、前記幅と前記高さの寸法割合は1:1であることを特徴とする。
また、本発明は、前記容器本体は、前記高さ方向において互いに対向しそれらの内側に前記収容部が形成される上面壁部と下面壁部とを含んで構成され、前記高さは、前記幅方向と直交する方向または前記長さ方向と直交する方向における前記上面壁部の表面と前記下面壁部の表面間の寸法であり、前記容器本体の幅方向の一端は、前記長さ方向の全長にわたって前記幅方向と直交する単一の仮想平面状に位置し、前記容器本体の幅は、前記長さ方向の中央から前記長さ方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成され、前記容器本体の長さ方向から見た高さは、前記容器本体の幅方向の一端から他端に向かうにつれて小さくなる寸法で形成され、前記容器本体の前記幅方向から見た高さは、前記長さ方向の中央から前記長さ方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成され、前記容器本体の幅方向の一端に水の前記収容部への流入と流出を可能とした開口部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記上面壁部と下面壁部は、前記高さ方向に直交し前記高さの中心を通る仮想平面に対して面対称な曲面形状で形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記開口部は、前記容器本体の幅方向の一端において、前記長さ方向および高さ方向の全域にわたって前記収容部を開放していることを特徴とする。
また、本発明は、前記容器本体の幅と前記幅方向から見た前記容器本体の高さは、前記容器本体の長さ方向の中央から前記長さのほぼ1/3程度までは、中央から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、前記長さ方向の中央から前記長さのほぼ1/3程度よりも離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成され、前記容器本体の長さ方向から見た高さは、前記容器本体の幅方向の一端から前記幅方向の中央までは、前記容器本体の幅方向の一端から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、前記中央から更に離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記容器本体に、前記収容部を複数に分割する仕切り壁が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記結合部は、前記上面壁部または前記下面壁部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、旋回流の一部は容器本体に衝突するが、容器本体の長手方向の半部は細長の流線形を呈しているため、旋回流に対する容器本体の抵抗は少なく、薬剤容器の箇所での水の跳ね上がりを抑制する上で有利となる。
また、旋回流の減速が抑制され、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上で有利となる。
また、旋回流に対する容器本体の抵抗が少ないため、便器本体の周壁の内周面に対する薬剤容器の位置、姿勢を維持する上で有利となり、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上で有利となる。
また、容器本体がその長さ方向の全長にわたり流線形を呈していると、旋回流に対する容器本体の抵抗はより少なく、薬剤容器の箇所での水の跳ね上がりを抑制する上でより有利となる。
その結果、旋回流は薬剤容器の箇所において速やかに上下に2分されて流れ、旋回流の流れの薬剤容器の下流箇所では、2分された流れは統合され便器本体の周壁の内周面に再び沿って流れる。
したがって、旋回流の減速が最小限に抑制され、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、旋回流に対する容器本体の抵抗が少ないため、便器本体の周壁の内周面に対する薬剤容器の位置、姿勢を長期にわたって維持する上でより有利となり、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、幅と高さの寸法割合を1:1で形成すると、旋回流に対する容器本体の抵抗を少なくし、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上で有利となる。
また、容器本体の高さ、幅、長さが流線形を形成すべき範囲に設定されていると、旋回流の減速が最小限に抑制され、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、上面壁部と下面壁部は、高さ方向に直交し高さ中心を通る仮想平面に対して面対称な曲面形状で形成されていると、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、開口部が、容器本体の幅方向の一端において、長さ方向および高さ方向の全域にわたって収容部を開放するように形成されていると、薬剤を旋回流に対して適切な割合で水に溶解させることができ、薬剤を含む旋回流により便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、仕切り壁を設けると、薬剤を旋回流に対して適切な割合で水に溶解させる上で有利となり、便器本体の周壁の内周面やボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、結合部は、上面壁部や下面壁部に簡単に設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】薬剤容器の説明図で、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は側面図、(D)は斜視図、(E)は収容部に薬剤が充填された状態の(A)のE―E線断面図である。
【
図2】吊り掛け具を介して薬剤容器が便器本体の周壁の内周面に配置された状態の説明図である。
【
図3】旋回流が薬剤容器により2分される説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施の形態について
図1~
図3を参照して説明する。
図1に示すように、薬剤容器10は、薬剤18を収容し支持するものである。
薬剤容器10に収容される薬剤18は、洗浄用、除菌用、汚れ付着防止用、臭気消臭用、芳香用のものが使用され、水との接触により表面から少しずつ溶解するものである。
薬剤容器10には、合成樹脂や金属など従来公知の様々な材料が採用可能である。
薬剤容器10は、薬剤18を収容し支持する収容部12Aを有する容器本体12と、容器本体12に設けられ吊り掛け具16に結合される結合部14とを備え、それらは一体に設けられ、
図2に示すように、薬剤容器10は、吊り掛け具16を介して水洗大便器の便器本体20の内側で使用される
【0009】
容器本体12は、高さHと、幅Wと、高さHおよび幅Wよりも大きい寸法の長さLとを有し、薄い肉厚で均一の厚さの壁部で形成され、容器本体12を幅W方向から見ると、長さL方向の両端が凸状で長さL方向の全長にわたり細長の流線形を呈している。
なお、容器本体12の高さHと幅Wの寸法は、幅Wが高さHよりも小さい寸法で形成されていてもよく、幅Wが高さHよりも大きい寸法で形成されていてもよく、高さHと幅Wの寸法割合は、水洗大便器メーカー毎に設定される旋回流の流量や流速に応じて適宜決定されるが、本実施の形態のように、幅Wと高さHの寸法割合を1:1にすると、旋回流の流量や流速の如何に拘らず旋回流に対する容器本体12の抵抗を低減する上で有利となる。
なお、容器本体12の高さH、幅W、長さLは後述するように容器本体12の箇所により異なるため、上述の高さH、幅W、長さLの寸法割合は、高さHの最大値、幅Wの最大値、長さLの最大値の寸法割合である。
図2に示すように、容器本体12は、高さH方向をほぼ上下方向に向けて、また、後述する開口部12Bが設けられた幅W方向の端部を便器本体20の周壁22の内周面2202に対向させ、長さL方向をほぼ水平方向に向けて使用される。
容器本体12は、高さH方向において互いに対向しそれらの内側に収容部12Aが形成される上面壁部1202と下面壁部1204とを含んで構成されている。
上面壁部1202と下面壁部1204は、互いに向かい合う内面1202A、1204Aと、内面1202A、1204Aと反対に位置する表面1202B、1204Bを有している。
図1(A)に示すように、高さHは、幅W方向と直交する方向または長さL方向と直交する方向における上面壁部1202の表面1202Bと下面壁部1204の表面1204B間の寸法である。
上面壁部1202と下面壁部1204とは高さH方向に直交し高さHの中心を通る仮想平面に対して面対称な曲面形状で形成されている。
収容部12Aは、上面壁部1202と下面壁部1204の内側で形成され、すなわち、上面壁部1202の内面1202Aと下面壁部1204の内面1204A間に形成され、容器本体12の高さH方向、幅W方向、長さL方向の全域にわたって設けられている。
図1(E)に示すように、この収容部12Aに薬剤18が充填され、言い換えると、薬剤18が収容され支持されている。
【0010】
図1(B)、(C)に示すように、容器本体12の幅W方向の一端は、長さL方向の全長にわたって幅W方向と直交する単一の仮想平面状に位置し、容器本体12を便器本体20の周壁22の内周面2202に近づけて配置できるように図られている。
図1(B)に示すように、容器本体12の幅Wは、長さL方向の中央から長さL方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成されている。
より詳細には、容器本体12の幅Wは、容器本体12の長さL方向の中央から長さLのほぼ1/3程度までは、中央から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、長さL方向の中央から長さLのほぼ1/3程度よりも離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成されている。
【0011】
図1(A)に示すように、容器本体12の幅W方向から見た高さHは、長さL方向の中央から長さL方向に沿って離れるにつれて小さくなるように形成されている。
より詳細には、容器本体12の幅W方向から見た高さHは、容器本体12の長さL方向の中央から長さLのほぼ1/3程度までは、中央から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、長さL方向の中央から長さLのほぼ1/3程度よりも離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成されている。
図1(C)に示すように、容器本体12の長さL方向から見た高さHは、容器本体12の幅W方向の一端から他端に向かうにつれて小さくなる寸法で形成されている。
より詳細には、容器本体12の長さL方向から見た高さHは、容器本体12の幅W方向の一端から幅W方向の中央までは、容器本体12の幅W方向の一端から離れるにつれて次第に小さくなる寸法で形成され、中央から更に離れると、離れるにつれて急激に小さくなる寸法で形成されている。
【0012】
図1(A)、(D)に示すように、容器本体12の幅W方向の一端に、収容部12Aへの水の流入と流出を可能とした開口部12Bが設けられている。
本実施の形態では、開口部12Bは、容器本体12の幅W方向の一端において、長さL方向および高さH方向の全域にわたって収容部12Aを開放している。
容器本体12の幅W方向の他端は、上面壁部1202の先端と下面壁部1204の先端とが長さL方向の全長にわたり接合され、
図1(C)、
図3において符号1206は、上面壁部1202の先端と下面壁部1204との先端が接合されて形成された稜線を示している。
また、容器本体12の内部、すなわち収容部12Aを複数に分割する仕切り壁1208が設けられている。
本実施の形態では、容器本体12の長さL方向の中央に、幅W方向および高さH方向の全長にわたって収容部12A内を延在し収容部12Aを2分する仕切り壁1208が設けられている。したがって、
図1(A)、(D)に示すように、薬剤18も仕切り壁1208により2分された収容部
(収容室)12Aに収容され、旋回流を形成する水の一部により徐々に薬剤18が溶解するように図られている。
収容部12A内に仕切り壁1208を設けることで、効果の異なる薬剤を収容することが可能となり、例えば、洗浄成分と除菌成分を分けて収容することで、高い効力を持ちながら混合すると互いの成分によって効力が落ちてしまう薬剤を選択することが可能となり、洗浄と除菌に関して高い効果を得ることができる。
また、効果の異なる薬剤を着色し、分けて収容することで、それぞれの薬剤によって効果が発揮されるという効果感や使用感を、見た目にも上げることが可能となる。
なお、仕切り壁1208の個数や延在方向は任意であり、要するに、使用時に、水との接触により徐々に薬剤18が溶解するように設けられれば良い。
【0013】
結合部14は、上面壁部1202の長さL方向の中央で、幅W方向の中間部に設けられ、詳細には幅W方向の中心よりも開口部12B側に変位した箇所に設けられている。
結合部14は、吊り掛け具16が結合される箇所である。
図2に示すように、本実施の形態の吊り掛け具16は、リム24の上端面に載置される載置部1601と、載置部1601の両端から突出しリム24を跨いで周壁22の上部を挟持する一対の脚部1602A、1602Bと、周壁22の内周面2202に配置される一方の脚部1602Aの下端に設けられた吊り掛け具側結合部1604と、周壁22の外周面2204に配置される他方の脚部1602Bの下端に設けられたつまみ部1606とを有している。
したがって、吊り掛け具16は、便器掃除などの取り外しの際に、便器本体20の内側に手を入れることなく、また、薬剤容器14を便器本体20の内側に落下させることなく、便器本体20の外側に位置するつまみ部1606を摘まんで引き上げることにより、衛生的に薬剤供給具10を取り外すことができるように図られている。
吊り掛け具側結合部1604は断面が矩形の係止片1604Aと、係止片1604Aの先部に設けられた突起1604Bとを含んで構成されている。
【0014】
結合部14は、
図1(A)、(D)に示すように、上面壁部1202から膨出した膨出部1402と、膨出部1402に容器本体12の幅W方向に貫通形成された断面が矩形状の孔1404とで構成されている。
膨出部1402は、平面視した場合、
図1(A)、(B)、(D)に示すように、容器本体12の長さL方向に細長形状を呈し、膨出部1402の表面は、長さL方向の中央部が最も高く、中央部から離れるにつれて次第に低くなり上面壁部1202の表面1202Bに連続状に接続される流線形で形成され、結合部14の箇所での水の跳ね上がりの防止が図られている。
図2に示すように、結合部14の孔1404に、吊り掛け具16の脚部1602Aの下端の係止片1604Aが押し込まれ、係止片1604Aの先部の突起1604Bが孔1404の周辺の膨出部1402の面に係止することにより、薬剤容器10は周壁22の内周面2202に対向した姿勢で吊り掛け具16により安定した状態で保持される。
本実施の形態では、容器本体12が吊り掛け具16により保持された状態で、容器本体12の上面壁部1202の長さL方向の中央で幅W方向の一端側の端部が周壁22の内周面2202に当接される。
なお、結合部14は、下面壁部1204に設けてもよく、あるいは、上面壁部1202と下面壁部1204の双方に設けてもよく、吊り掛け具16の構造により適宜決定され、また、吊り掛け具16と係脱する結合部14の構造には、ねじやクリップを用いてもよく、実施の形態の構造に限定されず、従来公知の様々な係脱構造が適用可能である。
【0015】
次に、本実施の形態の薬剤容器10の使用方法、作用、効果について説明する。
図2に示すように、収容部12Aに薬剤18が充填された薬剤容器10は、吊り掛け具16により便器本体20の内側で開口部12Bを周壁22(リム24)の内周面に対向させ、容器本体12の高さH方向を上下方向に向け、幅W方向を水平方向に向け、長さL方向を水平方向に向けて配置される。
周壁22の内周面2202に水吐出口から水が吐出されると、この水は周壁22の内周面2202に沿って旋回する旋回流を形成する。
そして、旋回流を構成する水の一部が薬剤18に接触し、薬剤18がその表面から少しずつ溶解し、薬剤18を含む水は旋回流に戻され水と共に旋回流となり、薬剤18を含む水の旋回流により周壁22やボウル部が洗浄される。
【0016】
水吐出口から水が吐出されることにより形成された旋回流は、周壁22の内周面2202に沿って旋回し、この旋回流は容器本体12に衝突するが、容器本体12は、旋回流に向けて凸状の球面や平面を有しておらず長さL方向に細長の流線形を呈し、言い換えると、容器本体12は旋回流の流れの方向に長さL方向を向けた細長の流線形を呈している。
そのため、旋回流に対する容器本体12の抵抗は少なく、旋回流の一部が薬剤容器10の箇所で跳ね上がることもない。
その結果、
図3に示すように、薬剤容器10の箇所において、旋回流は上面壁部1202の表面1202Bと下面壁部1204の表面1204Bにより速やかに上下に2分されて流れ、旋回流の流れの薬剤容器10の下流箇所では、2分された流れは統合され周壁22の内周面2202に沿って再び流れる。
したがって、本実施の形態の薬剤容器10によれば、旋回流に対する容器本体12の抵抗は少なく、旋回流の減速が最小限に抑制され、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上で有利となる。
また、旋回流に対する容器本体12の抵抗が少ないため、周壁22の内周面2202に対する薬剤容器10の当初の位置、姿勢を長期にわたって維持する上で有利となり、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上で有利となる。
【0017】
また、容器本体12の高さH、幅W、長さLが上述のように設定されているため、旋回流の減速が最小限に抑制され、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、上面壁部1202と下面壁部1204は、高さH方向に直交し高さHの中心を通る仮想平面に対して面対称な曲面形状で形成されているため、旋回流の減速が最小限に抑制され、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、旋回流を構成する水の一部を薬剤18に接触させ、薬剤18を含む水を旋回流に戻す開口部12Bの形状には、従来公知の様々な構成が採用可能であるが、実施の形態のように、開口部12Bを、容器本体12の幅W方向の一端において、長さL方向および高さH方向の全域にわたって収容部12Aを開放するように形成すると、薬剤を旋回流に対して適切な割合で水に溶解させることができ、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
また、仕切り壁1208は省略可能であるが、本実施の形態のように仕切り壁1208を設けると、薬剤18を旋回流に対して適切な割合で水に溶解させる上で有利となり、便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上でより有利となる。
【0018】
なお、幅W方向から見て少なくとも容器本体10の長さL方向の半部が、その端部が凸状の細長の流線形を呈している場合であっても、旋回流に対する容器本体10の抵抗は少なくなるため、薬剤容器10の箇所で水の跳ね上がりを抑制する上で有利となり、また、旋回流の減速が抑制され、薬剤18を含む旋回流により便器本体20の周壁22の内周面2202、ボウル部を効果的に洗浄する上で有利となり、周壁22の内周面2202に対する薬剤容器10の当初の位置、姿勢を維持する上で有利となる。ただし実施の形態のように、幅W方向から見て容器本体10が、長さL方向の両端が凸状で長さL方向の全長にわたり細長の流線形を呈している場合には水の跳ね上がりを抑制する上で、また、ボウル部を効果的に洗浄する上で、また、周壁22の内周面2202に対する薬剤容器10の当初の位置、姿勢を長期にわたって維持する上でより有利となる。
幅W方向から見て少なくとも容器本体10の長さL方向の半部が、その端部が凸状の細長の流線形を呈している場合には、
図1(C)に示すように、容器本体10の長さL方向で流線形に形成された容器本体10の端部から容器本体10を見たときに、残りの容器本体10の長さL方向の半部は、流線形に形成された容器本体10の長さL方向の半部の輪郭内に収まる形状で形成されていると水の跳ね上がりを抑制する上で好ましい。
また、薬剤容器10が配置される水洗大便器の周壁22の上部のリム24の構造は、本実施の形態の構造のものに限定されず、従来公知の様々な構造に広く適用される。
また、薬剤容器10を水洗大便器の周壁22の内周面に配置する吊り掛け具16は、本実施の形態の構造のものに限定されず任意であり、吊り掛け具16の構造は、リム24の構造によって変化する。
【符号の説明】
【0019】
10 薬剤容器
12 容器本体
12A 収容部
12B 開口部
1202 上面壁部
1202A 内面
1202B 表面
1204 下面壁部
1204A 内面
1204B 表面
1208 仕切り壁
14 結合部
16 吊り掛け具
18 薬剤
20 便器本体
22 周壁
2202 内周面
H 容器本体の高さ
W 容器本体の幅
L 容器本体の長さ