(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/22 20060101AFI20230915BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20230915BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230915BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20230915BHJP
F28F 9/16 20060101ALI20230915BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F9/02 G
F28D7/16 A
F28D1/053 A
F28F9/02 301B
F28F9/16
F28F1/02 A
(21)【出願番号】P 2019107977
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】前多 亮輔
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-514513(JP,A)
【文献】特開2014-055711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28F 9/02
F28D 7/16
F28D 1/053
F28F 9/16
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の偏平孔(1)の長軸方向がヘッダープレート(3)の短手方向に沿って配置されるとともに、各偏平孔(1)がヘッダープレート(3)の長手方向に定間隔に離間して並列され、前記各偏平孔(1)に偏平チューブ(2)の開口端部(2a)がその長手方向をヘッダープレート(3)の短手方向に位置して挿通され、その挿通部がろう付されるヘッダープレート(3)と、ヘッダープレート(3)の周縁が接続されるタンク本体(4)とを有し、タンク本体(4)から各偏平チューブ(2)内に高温流体(6)が供給される熱交換器において、
前記ヘッダープレート(3)の長手方向
の端部に位置する複数の偏平チューブ(2)
のみで且つ、それら複数の偏平チューブ(2)の開口端部(2a)の長手方向(L)の少なくとも一方の端部に位置して、前記タンク本体(4)に一体にそれら複数の偏平チューブ(2)の前記開口端部(2a)の長手方向(L)の少なくとも一方の端部を被蔽し前記タンク本体(4)内において前記高温流体(6)の前記複数の偏平チューブ(2)の前記開口端部(2a)の長手方向(L)の少なくとも一方の端部への流通を抑制する端部被蔽体(5)が構成された熱交換器。
【請求項2】
一対の溝形に形成されたプレートが、その溝底部を対向して、偏平チューブ(15)を構成し、偏平チューブ(15)は開口端部において溝底部の垂直方向への膨出部(15a)を有し、複数の前記偏平チューブ(15)が前記膨出部(15a)で積層されてコア(13)を形成し、コア(13)の外周がケーシング(9)で被嵌され、ケーシング(9)の端部にヘッダ(14)が設けられ、前記ヘッダ(14)から各偏平チューブ(15)内に高温流体(6)が供給されると共に、偏平チューブ(15)の外周に冷却水(10)が導かれる熱交換器において、
前記ヘッダ(14)の前記コア(13)側の端部で且つ、前記複数の偏平チューブ(15)が積層された方向
の端部
のみで前記複数の偏平チューブ(15)の開口端部(15b)の長手方向(L)の少なくとも一方の端部位置に、前記ヘッダ(14)に一体に前記コア(13)側の端部で且つ、それら複数の偏平チューブ(15)の開口端部(15b)の長手方向(L)の端部を被蔽し前記ヘッダ(14)内において前記高温流体(6)の前記複数の偏平チューブ(15)の前記開口端部(15b)の長手方向(L)の少なくとも一方の端部への流通を抑制する端部被蔽体(5)が構成された熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水冷却用ラジエータやチャージエアクーラ、EGRクーラ等の熱交換器の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン冷却水冷却用熱交換器は、並列された多数の偏平チューブと熱交換器の端部のサイドプレート間で温度差が生じ、熱交換器のヘッダープレートの長手方向の端部に位置するチューブ挿通孔と偏平チューブのろう付部近傍において亀裂が生じる場合がある。
同様に高温の排気ガスを冷却するEGRクーラにおいても、特に、偏平チューブの開口端部の長手方向の端部に亀裂が生じやすい欠点がある。
【0003】
従来、その対策として下記特許文献1に記載の熱交換器の補強構造が知られている。
これは、補強部材として偏平チューブの開口の端部に平面T字状部を形成し、そのT字の各先端に断面L字状の2つの挿入部を設ける。そして補強部材の板厚を偏平チューブの短手方向の開口長さに整合させ、挿入部を偏平チューブの開口縁に挿入してろう付したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱交換器の補強構造は、新たな補強部材を必要とすると共に、そのろう付工程を必要とし、面倒であった。
そこで、本発明は新たな補強部材を不要としつつ、熱交換器の組立ての容易なものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、多数の偏平孔1の長軸方向がヘッダープレート3の短手方向に沿って配置されるとともに、各偏平孔1がヘッダープレート3の長手方向に定間隔に離間して並列され、前記各偏平孔1に偏平チューブ2の開口端部2aがその長手方向をヘッダープレート3の短手方向に位置して挿通され、その挿通部がろう付されるヘッダープレート3と、ヘッダープレート3の周縁が接続されるタンク本体4とを有し、タンク本体4から各偏平チューブ2内に高温流体6が供給される熱交換器において、
前記ヘッダープレート3の長手方向の少なくとも一方の端部で且つ、前記偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの少なくとも一方の端部に位置して、前記タンク本体4に一体に前記開口端部2aの長手方向Lの少なくとも一方の端部を被蔽する端部被蔽体5が構成された熱交換器である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、一対の溝形に形成されたプレートが、その溝底部を対向して、偏平チューブ15を構成し、偏平チューブ15は開口端部において溝底部の垂直方向への膨出部15aを有し、複数の前記偏平チューブ15が前記膨出部15aで積層されてコア13を形成し、コア13の外周がケーシング9で被嵌され、ケーシング9の端部にヘッダ14が設けられ、前記ヘッダ14から各偏平チューブ15内に高温流体6が供給されると共に、偏平チューブ15の外周に冷却水10が導かれる熱交換器において、
前記ヘッダ14の前記コア13側の端部で且つ、偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの少なくとも一方の端部位置に、前記ヘッダ14に一体に前記コア13側の端部で且つ、前記偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの端部を被蔽する端部被蔽体5が構成された熱交換器である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の熱交換器は、ヘッダープレート3の長手方向の少なくとも一方の端部で且つ、偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの少なくとも一方の端部に位置して、前記タンク本体4に一体に偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの少なくとも一方の端部を被蔽する端部被蔽体5を形成したものである。
この端部被蔽体5が、前記偏平チューブ2の開口端部2aの少なくとも一方の端部を被蔽して、そこには高温流体6が流通することを抑制する。そのため、熱歪みにより亀裂が生じ易い偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部を保護し、熱交換器の耐久性を向上する効果がある。即ち、熱交換器の稼働および停止の冷熱サイクルに基づく、熱歪みを効果的に軽減できる。
【0009】
請求項2に記載の熱交換器は、対象となるコア13が、偏平チューブ15の開口端部に膨出部15aを有する積層体からなり、ヘッダ14のコア13側の少なくとも一方の端部に端部被蔽体5を設けたものである。
この場合も、請求項1と同様に、偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの少なくとも一方の端部が、ヘッダ14のコア13側の端部の端部被蔽体5により被蔽されて、そこには高温流体6が流通することを抑制する。そのため、熱交換器の稼働および停止の冷熱サイクルに基づく、熱歪みを効果的に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の熱交換器の(A)は要部縦断面図であって(B)のA-A矢視断面図、(B)はその横断面平面図で(A)のB-B矢視断面図。
【
図3】本発明の第2実施例の(A)は要部縦断面図、(B)はそのコア13の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1及び
図2は本発明の第1実施例の熱交換器であって、一例としてエンジン冷却水冷却用のラジエータとして用いるものである。
図1はその縦断面図及び(A)のB-B矢視断面図であり、
図2は同熱交換器の要部分解図である。
この熱交換器は、エンジン冷却水を冷却するラジエータとして用いることができるものであり、偏平チューブ2とコルゲートフィン8とを交互に並列してコアを形成し、そのコアのヘッダープレートの長手方向の端部にサイドプレートを配置している。
各偏平チューブ2は横断面が偏平に形成され、その横断面の長手方向Lが熱交換器のヘッダープレートの短手方向に配置されている。そして、各偏平チューブ2の両端部(下側を省略)がヘッダープレート3の各偏平孔1に挿通され、その挿通部がろう付固定される。
【0013】
ヘッダープレート3は、
図1(A)、
図2に示す如く、周縁に環状溝3aが形成され、その周縁に定間隔に係止爪3bが突設されている。このヘッダープレート3の環状溝3aには、タンク本体4の小フランジ部4aがシール7を介して嵌着される。
タンク本体4は、この例では樹脂製からなり外周に小フランジ部4aを突設すると共に、タンク本体4の長手方向の端部内面に、一体に端部被蔽体5が突設されている。この端部被蔽体5の厚みは、
図1(A)に示す如く、偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部を同図(B)の如く被蔽するに十分な厚みである。
なお、この例では端部被蔽体5の偏平チューブ2側の端縁と、偏平チューブ2の開口端部2aとの間に、僅かな隙間が存在する。さらに、同図(B)の如く、端部被蔽体5はヘッダープレート3の長手方向の端部で且つ、偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部に形成されている。
【0014】
図1(B)では、ヘッダープレート3の長手方向の一方の端部のみが表されているが、他方の端部も同様に形成することができる。
そしてヘッダープレート3の環状溝3aにタンク本体4の小フランジ部4aがシール7を介して嵌着され、ヘッダープレート3の係止爪3bがタンク本体4の外面側にカシメられて液密構造を形成する。
【0015】
〔作用〕
このようにしてなる熱交換器は、タンク本体4の図示しない入口から高温流体6がタンク本体4内に導かれる。そして、その高温流体6は各偏平チューブ2に供給され、偏平チューブ2の外面及びコルゲートフィン8を流通する空気流と熱交換し、図示しない下端側のタンクよりエンジンブロックに戻される。
コアのへッダープレート3の長手方向の端部に配置されたサイドプレートは、そのサイドプレートに接合しているコルゲートフィン8を介して偏平チューブ2より熱が伝わるが、偏平チューブ2の温度上昇に対し、サイドプレートの上昇温度は低く、上がり方も遅い。
サイドプレートと偏平チューブ2との温度の違いによる熱膨張差でヘッダープレート3に熱歪みが発生するが、サイドプレートとヘッダープレート3の板厚に対し偏平チューブ2の板厚は薄いため、ヘッダープレート3とヘッダープレートの長手方向の端部に位置する偏平チューブ2とのろう付部の偏平チューブ2の開口端部の長手方向Lの端部に熱応力が集中し亀裂が発生し易くなる。
このとき、入口側のタンク本体4には、偏平チューブ2の開口端部の長手方向Lの端部の位置で端部被蔽体5が存在するため、
図1(B)において、この例では、端部の3つの偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部が被蔽され、その端部には比較的高温の冷却水が流入し難く、他の位置の偏平チューブ2に比べ高温の冷却水の流量も低下する。そのため、前記へッダープレート3の長手方向の端部に位置する偏平チューブ2の温度上昇が少なく、偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部に生じがちな熱歪みによる亀裂を効果的に防止できる。
【0016】
即ち、熱交換器はその可動及び停止のサイクルに基づき、チューブに熱歪みが生じるが特に偏平チューブ2の開口端部2aの長手方向Lの端部において、著しくそれが生じる。それは、タンク内ではへッダープレート3の長手方向の端部により強く生じる。
本発明は、その部分を端部被蔽体5によって被蔽するため、熱歪みに基づく亀裂を可及的に小さくすることができる。
しかも、この例ではタンク本体4と一体の端部被蔽体5によって亀裂を防止するため、熱交換器の組立てが容易で部品点数が少なく量産性の高いものとなる。
【実施例2】
【0017】
次に、
図3は本発明の第2実施例であり、(A)はその縦断面図、(B)はその内部に収納されるコア13の斜視略図である。
この例は、高温の排気ガスを冷却するEGRクーラとして用いることができるものである。
この例では、プレートを溝形に形成すると共に、その溝底部平面の両端部に膨出部15aを溝底部の垂直方向に形成した一対のプレートが用いられ、各プレートの溝底部を対向させて嵌着し偏平チューブ15を形成する。そして、各偏平チューブ15を膨出部15aにおいて積層しコア13を形成する。また、コア13の外周には、ケーシング9を被嵌すると共に、その一端にヘッダ14、他端にタンク部16を配置する。
【0018】
ケーシング9の偏平チューブ15の2つの開口端部15bを結ぶ方向の両端部には一対のパイプ12が突設され、各偏平チューブ15の外周に冷却水10を供給する。それと共に、ヘッダ14から高温流体6を各偏平チューブ15内に供給し、冷却水10と高温流体6との間に熱交換を行う。
この例では、ヘッダ14に一体に端部被蔽体5が突設され、それによって偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの端部を被蔽する。
即ち、高温流体6が各偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの端部には導かれないようにする。それにより、偏平チューブ15の開口端部15bの長手方向Lの端部の温度上昇を抑制し、ケーシング9との間に生じがちな冷熱サイクルに伴う亀裂を可及的に防止する。
【0019】
この例においても
図1(B)の如く、タンク(ヘッダ)のチューブ積層方向の端部のみに端部被蔽体5を配置してもよい。或いは、ヘッダのチューブ積層方向全域において端部被蔽体5を配置しても良い。
なお、この例では各偏平チューブ15の開口端部15bの先端縁はタンク部16側に僅かに湾曲し、それによって熱歪みを吸収する。
また、各偏平チューブ15内にはインナーフィン11が収納されている。
【符号の説明】
【0020】
1 偏平孔
2 偏平チューブ
2a 開口端部
3 ヘッダープレート
3a 環状溝
3b 係止爪
4 タンク本体
4a 小フランジ部
5 端部被蔽体
6 高温流体
7 シール
8 コルゲートフィン
【0021】
9 ケーシング
10 冷却水
11 インナーフィン
12 パイプ
13 コア
14 ヘッダ
15 偏平チューブ
15a 膨出部
15b 開口端部
16 タンク部
L 偏平チューブの開口端部の長手方向