(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】エスカレーターのトラス清掃装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
B66B31/00 F
(21)【出願番号】P 2019181784
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 智也
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-059168(JP,A)
【文献】特開2004-168467(JP,A)
【文献】特開2008-297077(JP,A)
【文献】特開2008-201537(JP,A)
【文献】特開2012-062167(JP,A)
【文献】中国実用新案第208898356(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0202048(US,A1)
【文献】中国実用新案第206317907(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B60B 1/00-39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有し、トラスの傾斜部を移動する移動部と、
前記移動部に設けられ、前記移動部が前記傾斜部を移動する場合に、前記傾斜部を清掃する清掃部と
を備え、
前記車輪は、
車輪本体と、
前記車輪本体に設けられた磁石部と
を含み、
前記車輪は、前記磁石部と前記傾斜部との間に作用する磁力を用いて前記傾斜部を転がり、
前記移動部は、前記車輪が前記傾斜部を転がることによって、前記傾斜部を移動するエスカレーターのトラス清掃装置。
【請求項2】
前記移動部についての移動方向前方を撮影する前方カメラをさらに備えた請求項1に記載のエスカレーターのトラス清掃装置。
【請求項3】
前記移動部についての移動方向後方を撮影する後方カメラをさらに備えた請求項1または請求項2に記載のエスカレーターのトラス清掃装置。
【請求項4】
前記清掃部は、前記移動部が移動することによって前記傾斜部から異物を削り取るスクレーパ、または、前記傾斜部から異物を吸引する吸引装置を有している請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエスカレーターのトラス清掃装置。
【請求項5】
前記清掃部は、前記移動部が移動することによって前記傾斜部を拭く拭取り部材を有している請求項1から請求項4までの何れか一項に記載のエスカレーターのトラス清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラスを清掃するエスカレーターのトラス清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏段が取り外された踏段軸に取り付けられる筐体と、筐体に設けられ、トラスを清掃する清掃部とを備えたエスカレーターのトラス清掃装置が知られている。踏段軸がトラスに沿って移動することによって、筐体および清掃部がトラスの傾斜部に沿って移動する。清掃部がトラスの傾斜部に沿って移動することによって、清掃部がトラスの傾斜部を清掃する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トラス清掃装置がトラスの傾斜部に設置される前に、踏段を踏段軸から取り外す作業が行われる必要がある。その結果、トラスの清掃効率が悪いという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、トラスの清掃効率を向上させることができるエスカレーターのトラス清掃装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエスカレーターのトラス清掃装置は、車輪を有し、トラスの傾斜部を移動する移動部と、移動部に設けられ、移動部が傾斜部を移動する場合に、傾斜部を清掃する清掃部とを備え、車輪は、車輪本体と、車輪本体に設けられた磁石部とを含み、車輪は、磁石部と傾斜部との間に作用する磁力を用いて傾斜部を転がり、移動部は、車輪が傾斜部を転がることによって、傾斜部を移動する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエスカレーターのトラス清掃装置によれば、トラスの清掃効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレーターのトラス清掃装置によって清掃されるエスカレーターを示す側面図である。
【
図2】
図1のトラスを清掃するトラス清掃装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエスカレーターのトラス清掃装置によって清掃されるエスカレーターを示す側面図である。エスカレーターは、下階側階床と上階側階床とに渡って設けられたトラス1と、トラス1に設けられ、下階側階床と上階側階床とに渡って循環移動する複数の踏段2とを備えている。
【0010】
また、エスカレーターは、トラス1に支持された欄干3と、欄干3に設けられ、下階側階床と上階側階床とに渡って循環移動する移動手摺4とを備えている。複数の踏段2および移動手摺4は、互いに同期して循環移動する。
【0011】
トラス1は、下階側階床に設けられた下階部11と、上階側階床に設けられた上階部12と、下階部11と上階部12とに渡って設けられた傾斜部13とを有している。傾斜部13は、水平面に対して傾斜するように配置されている。トラス1は、図示しないオイルパンを有している。オイルパンは、鉄から構成されている。この例では、トラス1の清掃として、オイルパンの清掃について説明する。
【0012】
エスカレーターが長期間に渡って運転することによって、オイルパンには、異物が堆積する。異物には、踏段2および移動手摺4を駆動させるためのチェーンから落下した油、綿埃などが含まれる。
【0013】
下階部11および上階部12のそれぞれには、作業者が出入する出入口が形成されている。下階部11および上階部12のそれぞれに形成された出入口から下階部11および上階部12に進入した作業者は、下階部11および上階部12に堆積した異物を除去する。これにより、下階部11および上階部12が清掃される。
【0014】
踏段2が踏段軸から取り外されない場合には、傾斜部13には、作業者が進入することができるスペースがない。実施の形態1に係るエスカレーターのトラス清掃装置は、傾斜部13のオイルパンと踏段2との間に進入して、傾斜部13に堆積した異物を除去する。これにより、傾斜部13が清掃される。
【0015】
図2は、
図1のトラス1を清掃するトラス清掃装置を示す斜視図である。
図3は、
図2のトラス清掃装置を示す側面図である。トラス清掃装置5は、移動部51と、移動部51に設けられた清掃部52と、移動部51に設けられた前方カメラ53とを備えている。
【0016】
移動部51は、移動部筐体511と、移動部筐体511に設けられ、トラス1を転がる複数の車輪512とを有している。また、移動部51は、移動部筐体511の内部に設けられた図示しない駆動装置を有している。駆動装置が駆動することによって、車輪512が回転する。車輪512が回転することによって、車輪512がトラス1を転がる。車輪512がトラス1を転がることによって、移動部51がトラス1に対して移動する。
【0017】
図4は、
図3の車輪512を示す拡大図である。車輪512は、車輪本体513と、車輪本体513に設けられた複数の磁石部514とを含んでいる。複数の磁石部514は、車輪本体513の周縁部に配置されている。また、複数の磁石部514は、車輪本体513の周方向に等間隔に並べて配置されている。この例では、複数の磁石部514の数は、4となっている。磁石部514は、永久磁石から構成されている。
【0018】
磁石部514に発生する磁力の大きさは、磁石部514と傾斜部13との間に作用する磁力によって、移動部51が傾斜部13に沿って落下することが防止される大きさとなっている。したがって、車輪512が停止している場合には、移動部51は傾斜部13に対して停止する。一方、車輪512が回転する場合には、移動部51は傾斜部13に対して移動する。言い換えれば、移動部51は、車輪512が傾斜部13を転がることによって、傾斜部13を移動する。
【0019】
なお、磁石部514は、電磁石から構成されてもよい。磁石部514が電磁石から構成される場合には、移動部51は、磁石部514に電流を供給する電流供給部を有する。磁石部514に供給される電流量が調整されることによって、磁石部514に発生する磁力の大きさが調整される。
【0020】
図2および
図3に示すように、清掃部52は、車輪512がトラス1に接触する場合に、トラス1に接触するように配置されている。清掃部52は、移動部51の幅方向に延びるように配置されている。
【0021】
清掃部52は、スクレーパから構成されている。移動部51が傾斜部13に沿って移動することによって、清掃部52は、傾斜部13から異物を削り取る。この例では、移動部51は、傾斜部13の上部から下部に向かって移動する。なお、移動部51は、傾斜部13の下部から上部に向かって移動してもよい。
【0022】
なお、清掃部52は、吸引装置から構成されてもよい。この場合に、清掃部52は、傾斜部13から異物を吸引する。
【0023】
前方カメラ53は、移動部51についての移動方向前方を撮影するように配置されている。前方カメラ53が移動部51についての移動方向前方を撮影することによって、移動部51よりも移動方向前方にある異物などが撮影される。前方カメラ53によって撮影された画像は、例えば、作業者が所持する携帯端末装置に送信される。この場合に、作業者は、作業者が所持する携帯端末装置を目視することによって、トラス1にある異物などを確認することができる。
【0024】
なお、トラス清掃装置5は、移動部51についての移動方向後方を撮影する後方カメラをさらに備えてもよい。この場合に、後方カメラが移動部51についての移動方向後方を撮影することによって、トラス清掃装置5によって清掃されたトラス1が撮影される。後方カメラによって撮影された画像は、例えば、作業者が所持する携帯端末装置に送信される。この場合に、作業者は、作業者が所持する携帯端末装置を目視することによって、トラス清掃装置5によって清掃されたトラス1を確認することができる。
【0025】
また、トラス清掃装置5は、安全装置54をさらに備えている。安全装置54は、安全ロープを有している。安全ロープの一端部は、移動部51に接続されている。安全ロープの他端部は、上階部12に接続される。安全ロープの他端部がこれにより、傾斜部13に対する車輪512の滑りが発生した場合に、移動部51が傾斜部13に沿って落下することが防止される。
【0026】
なお、安全装置54は、安全ロープを巻き取る巻取装置を有してもよい。巻取装置は、移動部51または上階部12に取り付けられる。巻取装置は、傾斜部13に対する移動部51の位置に対応して、安全ロープを巻き取ったり、安全ロープを送り出したりする。
【0027】
次に、トラス清掃装置5を用いてトラス1を清掃する手順について説明する。まず、作業者は、トラス清掃装置5を持って上階部12に進入する。その後、作業者は、傾斜部13における上部に移動部51を設置する。また、作業者は、安全装置54における安全ロープの他端部を上階部12に接続する。
【0028】
その後、作業者は、作業者が所持する携帯端末装置を目視しながら、移動部51を傾斜部13に沿って下方へ移動させる。移動部51の移動速度は、設定された速度となっている。移動部51が傾斜部13に沿って下方へ移動することによって、清掃部52が傾斜部13から異物を削り取る。傾斜部13から削り取られた異物は、清掃部52とともに下階部11に移動する。
【0029】
傾斜部13の幅方向の寸法が清掃部52の幅方向の寸法よりも大きい場合には、作業者は、移動部51を下階部11から上階部12に移動させて、再び、移動部51を傾斜部13に沿って下方へ移動させる。傾斜部13の全領域が清掃されるまで、移動部51が傾斜部13に沿って下方へ移動する。傾斜部13の全領域が清掃された場合に、作業者は、トラス清掃装置5を持ってトラス1の内部から外部に出る。以上により、トラス清掃装置5を用いたトラス1の清掃が終了する。
【0030】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエスカレーターのトラス清掃装置5によれば、車輪512を有し、傾斜部13を移動する移動部51と、移動部51に設けられ、移動部51が傾斜部13を移動する場合に、傾斜部13を清掃する清掃部52とを備えている。車輪512は、車輪本体513と、車輪本体513に設けられた磁石部514とを含んでいる。車輪512は、磁石部514と傾斜部13との間に作用する磁力を用いて傾斜部13を転がる。車輪512が傾斜部13を転がることによって、移動部51が傾斜部13を移動する。これにより、踏段2を踏段軸から取り外すことなく、傾斜部13を清掃することができる。その結果、トラス1の清掃効率を向上させることができる。
【0031】
また、トラス清掃装置5は、移動部51についての移動方向前方を撮影する前方カメラ53を備えている。これにより、移動部51よりも移動方向前方にある異物などを撮影することができる。その結果、前方カメラの画像を用いて、トラス1をよりきれいに清掃することができる。
【0032】
また、清掃部52は、移動部51が移動することによって傾斜部13から異物を削り取るスクレーパを有している。これにより、簡単な構成で、傾斜部13を清掃することができる。
【0033】
なお、実施の形態1では、清掃部52がスクレーパである構成について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば、清掃部52が拭取り部材を有している構成であってもよい。この場合に、拭取り部材は、移動部51が移動することによって傾斜部13を拭く。スクレーパによって傾斜部13の異物が削り取られた後に、拭取り部材が傾斜部13を拭くことによって、傾斜部13をよりきれいに清掃することができる。
【0034】
また、実施の形態1では、磁石部514が車輪本体513に設けられた構成について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば、磁石部514が移動部筐体511に設けられた構成であってもよい。この場合に、磁石部514に発生する磁力の大きさを調整することによって、傾斜部13に対して移動部51が下降する速度が調整される。
【0035】
また、実施の形態1では、清掃部52がスクレーパである構成について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば、清掃部52が油供給装置をさらに有している構成であってもよい。この場合に、油供給装置は傾斜部13に油を供給する。傾斜部13に油が供給されることによって、傾斜部13に堆積した異物が傾斜部13から剥がれ易くなる。これにより、傾斜部13をよりきれいに清掃することができる。
【0036】
また、実施の形態1では、トラス清掃装置5が前方カメラ53を備えた構成について説明した。これに加えて、トラス清掃装置5が、移動部51についての移動方向前方を照らす照明装置をさらに備えた構成であってもよい。これにより、前方カメラ53による撮影をより鮮明に行うことができる。なお、トラス清掃装置5が後方カメラを備えた場合には、トラス清掃装置5が、移動部51についての移動方向後方を照らす照明装置をさらに備えた構成であってもよい。これにより、後方カメラによる撮影をより鮮明に行うことができる。
【0037】
また、実施の形態1では、トラス1を清掃する度に、作業者がトラス清掃装置5をトラス1に対して出し入れする構成について説明した。しかしながら、トラス清掃装置5がトラス1に常備された構成であってもよい。この場合に、トラス清掃装置5は、定期的にトラス1を清掃してもよい。
【0038】
また、実施の形態1では、作業者が所持する携帯端末装置を作業者が目視しながら、移動部51が傾斜部13に沿って下方に移動する構成について説明した。しかしながら、作業者が所持する携帯端末装置を用いて、移動部51の移動が制御されてもよい。この場合に、作業者が所持する携帯端末装置と移動部51との間で通信が行われる。
【0039】
また、実施の形態1では、1つの移動部51を備えたトラス清掃装置5について説明した。しかしながら、複数の移動部51を備えたトラス清掃装置5であってもよい。この場合、複数の移動部51は、トラス1の幅方向に互いに連結される場合と、トラス1の長手方向に互いに連結される場合がある。
【0040】
また、実施の形態1では、1つの清掃部52を備えたトラス清掃装置5について説明した。しかしながら、複数の清掃部52を備えたトラス清掃装置5であってもよい。この場合に、複数の清掃部52には、複数の種類の清掃部52が含まれてもよい。具体的には、複数の清掃部52には、スクレーパから構成された清掃部52、油を供給してトラスを清掃する清掃部52、トラス1を拭取る拭取り装置から構成された清掃部52が含まれてもよい。また、この場合に、複数の種類の清掃部52のうちから1つの清掃部52が選択されて、移動部51に取り付けられる構成であってもよい。作業者は、清掃する目的に対応させて、複数の種類の清掃部52のうちから1つの清掃部52を選択することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 トラス、2 踏段、3 欄干、4 移動手摺、5 トラス清掃装置、11 下階部、12 上階部、13 傾斜部、51 移動部、52 清掃部、53 前方カメラ、54 安全装置、511 移動部筐体、512 車輪、513 車輪本体、514 磁石部。