(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】封止部材
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20230915BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20230915BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230915BHJP
H05K 7/12 20060101ALN20230915BHJP
H05K 5/06 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
G06F1/16 312L
H04M1/02 C
C09J7/10
H05K7/12 V
H05K5/06 A
(21)【出願番号】P 2019190376
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】FCNT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】情野 哲史
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188488(JP,A)
【文献】特開2015-142965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16 - 1/18
C09J 7/00 - 7/50
H05K 5/00 - 5/06
H05K 7/12
H04M 1/02 - 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器の筐体に設けられた開口と、前記開口を覆う被覆部材との間の隙間を封止する封止部材であって、
前記開口を囲む縁面であって、前記開口の開口方向に対して直角方向に所定の幅を有する縁面の角に設けられた段差部分に、
前記携帯機器を形成する部品同士を接着する長方形状の枠の形状となる両面テープであって、前記枠の夫々の辺を形成する直線状の辺部と、近接する夫々の前記辺部の端同士を前記枠の内側で繋ぐ接続部と、を備え、前記辺部は、前記枠の長辺を形成する二つの長辺部と、前記枠の短辺を形成する二つの短辺部と、からなり、前記接続部には、前記枠の角から前記枠の内側方向へ向かう切り欠きが設けられ、前記接続部の幅は、前記辺部の幅よりも狭く、前記切り欠きが重なるように前記縁面に貼り付けられる携帯機器用の両面テープと、
前記長辺部と前記短辺部の最も近接する部分と、前記段差部分の前記切り欠きが重なる部分と、前記両面テープを介して前記縁面に接着させられる前記被覆部材の、前記切り欠きが位置することになる部分と、にかかるように配置される接着剤と、を備える、
封止部材。
【請求項2】
前記接着剤は、前記接続部の少なくとも一部にもかかるように配置される、
請求項
1に記載の封止部材。
【請求項3】
前記携帯機器用の両面テープは、剥離される台紙に対し、
前記二つの長辺部のうち何れか一方の長辺部と前記二つの短辺部のうち何れか一方の短辺部とを組み合わせた第一のペアが一本の第一直線を形成し、前記二つの長辺部のうち何れか他方の長辺部と前記二つの短辺部のうち何れか他方の短辺部とを組み合わせた第二のペアが前記第一直線の隣で前記第一直線と平行な一本の第二直線を形成し、
前記第一のペアにおける前記一方の長辺部及び前記一方の短辺部の並び順と逆になった状態の前記他方の長辺部及び前記他方の短辺部の並び順で前記第二のペアが並んだ状態で前記台紙に剥離可能に貼着されている、
請求項1又は2に記載の封止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器用の両面テープ及び封止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器において装置サイズの小型化及びデザイン性の向上の為、表示部の側方が表示部の背面方向へ湾曲した曲面型表示パネルの使用が多くなってきている。また、表示パネルを携帯機器に搭載する場合に、両面テープ及び接着剤を使用して表示パネルと筐体とを接着させる技術が開示されている(例えば特許文献1,2)。特許文献1では、ディスプレイ収容部の矩形枠状の周縁部に、四枚の矩形状の両面テープが貼り付けられることが開示されている。また、特許文献1では、上記の両面テープが繋ぎ合わせられる端部に矩形状の切欠部が設けられ、当該切欠部に対応する周縁部に、接着剤が塗布されることが開示されている。また、特許文献2では、表示部が嵌まる略矩形の開口を形成した枠状のシャーシに、透光性パネルが両面テープおよび接着剤によって取り付けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-258653号公報
【文献】特開2015-142021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯機器の筐体に表示パネルを固定するために、筐体あるいは表示パネルの所定の場所に複数の矩形状の両面テープが貼り付けられる場合、一枚一枚の両面テープを歪みなく位置合わせして貼る作業は困難となることが想定される。また、両面テープを台紙からピックアップする回数も一度で済まず、組み立て作業が煩雑になることが考えられる。また、ばらばらの両面テープの場合、組み立て現場において両面テープを紛失し、組み立てが困難となる可能性も考えられる。
【0005】
一つの側面では、本件は、携帯機器の筐体に表示パネルを固定して組み立てる場合に、組み立てが容易となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、携帯機器を形成する部品同士を接着する枠状に繋がった両面テープであって、前記枠の夫々の辺を形成する短冊形の短冊部と、近接する夫々の前記短冊部の内側の端同士を繋ぐ接続部と、を備え、前記短冊部は、前記枠の長辺を形成する二つの長辺部と、前記枠の短辺を形成する二つの短辺部と、からなり、前記接続部には、前記枠の角から前記枠の中央へ向かう切り欠きが設けられ、前記接続部の幅は、前記短冊部の幅よりも狭い、携帯機器用の両面テープである。
【発明の効果】
【0007】
上記の携帯機器用の両面テープによれば、枠状とした時の角部分に中央へ向かう切り欠きが設けられている。換言すれば、両面テープは、台紙からピックアップされた時に枠状とは異なる形状であっても、携帯機器の筐体の縁に貼り付け可能な枠状へと変形させることができる。つまり、上記の携帯機器用の両面テープを使用して、筐体に対して接着パネルを固定することができる。ここで、接続部の幅は、短冊部の幅よりも狭いため、接続部の変形は容易である。つまり、両面テープの枠状への変形は容易く、携帯機器の組み立て
は容易となる。また、上記の携帯機器用の両面テープによれば、短冊部の幅は広いため、枠状へ変形させる場合に短冊部が歪むことは抑制される。また、接続部の幅は狭いため、変形後の枠が歪んでいる場合に、歪みによる影響により短冊部ではなく接続部が変形することになる。つまり、両面テープが枠状に変形させられた場合に、短冊部の形状の歪みは抑制されるため、枠の四辺の位置精度の低下は抑制される。つまり、上記の携帯機器用の両面テープによれば、歪みなく所定の貼り付け場所へ貼り付けることができ、携帯機器の組み立ては容易となる。また、上記の携帯機器用の両面テープは、一枚の繋がったテープであるため、携帯機器の組み立て工程において、ばらばらな状態の両面テープよりもテープの紛失は抑制される。また、台紙からピックアップする回数は一度で済む。これらのようなことからも携帯機器の組み立ては容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスマートフォンの概要を例示している。
【
図4】
図4は、表示アセンブリを筐体に固定する工程のフロー図を例示している。
【
図5】
図5は、台紙に貼られた両面テープの一例を示している。
【
図6】
図6は、台紙から剥離された両面テープが枠状に変形させられる概要を例示する。
【
図7】
図7は、表示アセンブリが両面テープ及び接着剤に接着している状態の概要の一例を示している。
【
図8】
図8は、比較例に係るスマートフォンの構造の概要の一例を示している。
【
図10】
図10は、第二比較例に係るスマートフォンの構造の概要の一例を示している。
【
図12】
図12は、変形例に係るスマートフォンの段差部付近の部分拡大図である。
【
図13】
図13は、第二変形例に係るスマートフォンの段差部付近の部分拡大図である。
【
図14】
図14は、第三変形例に係るスマートフォンの段差部付近の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0010】
図1及び
図2に、本実施形態に係るスマートフォン3の概要を例示する。
図1(A)は、スマートフォン3の分解斜視図の一例を示している。
図1(B)は、
図1(A)における点線で囲まれた部分の拡大図を示している。一方、
図2は、
図1(B)におけるE-E矢印断面図である。ただし、
図2は、接着剤が非表示とされている。なお、本実施形態では、曲面型表示パネル31の表示方向を上方向(正面方向)とする。また、スマートフォン3は、本発明の「携帯機器」の一例である。
【0011】
スマートフォン3は、曲面型表示パネル31と、曲面型表示パネル31を覆うカバーガラス32と、曲面型表示パネル31を収容する筐体33と、を備える。なお、
図1(A)には、曲面型表示パネル31とカバーガラス32とが一体となった状態(表示アセンブリ30)が示されている。そして、曲面型表示パネル31とカバーガラス32とは、枠状の両面テープ34を介して筐体33の開口39の外周に位置する外周部35の上面へ固定される。ここで、外周部35は、
図1(B)に示されるようにその角に段差部36を備える
。段差部36は、曲面型表示パネル31とカバーガラス32とによって形成される段差に対応するように設けられる。また、
図2に示されるように、段差部36には筐体33の背面側から正面方向に貫通する孔40が設けられている。そして、孔40には、接着剤38が流入する。ここで、表示アセンブリ30は、本発明の「被覆部材」の一例である。また、両面テープ34及び接着剤38は、本発明の「封止部材」の一例である。また、段差部36は、本発明の「段差部分」の一例である。
【0012】
図3は、両面テープ34の詳細を例示する。
図3に示されるように、両面テープ34は、直線状の短辺と長辺とが交互に連なった枠状のテープである。また、以降では、直線状の短辺及び長辺をループ部34Aとし、短辺のループ部34Aと長辺のループ部34Aの内側部分であって、隣接する端を接続する部分をギャップ部34Bとする。ここで、ギャップ部34Bには、両面テープ34の外形の角から中央方向へ向かうU字状の切り欠きが設けられている。このような切り欠きが設けられていると、両面テープ34を外周部35に貼り付ける時に、当該切り欠きを段差部36の上に重ねることで、両面テープ34の貼り付け時の位置ずれが抑制される。ここで、ギャップ部34Bの厚みは、ループ部34Aの厚みと略等しい。また、ギャップ部34Bの幅は、ループ部34Aの幅よりも狭い。ここで、長辺のループ部34Aは、本発明の「長辺部」の一例であり、短辺のループ部34Aは、本発明の「短辺部」の一例である。また、ギャップ部34Bは、本発明の「接続部」の一例である。
【0013】
次に、表示アセンブリ30を筐体33に固定するフローを説明する。
図4は、表示アセンブリ30を筐体33に固定する工程のフロー図を例示している。まずステップS101では、両面テープ34を台紙29から剥がす。ここで、
図5は、台紙29に貼られた両面テープ34の一例を示している。
図5(A)は、比較例に係るテープ製造方法により台紙29に貼られた両面テープ34を示している。一方、
図5(B)は、本実施形態のテープ製造方法により台紙29に貼られた状態の両面テープ34を示している。
【0014】
図5(A)に示されるように、比較例に係るテープ製造方法では、両面テープが、枠状のまま台紙29に設けられていた。よって、
図5(A)に示されるような状態では、台紙29の両面テープ34が設けられていない領域が無駄となる。一方、本実施形態では、
図5(B)に示されるように、製造された両面テープ34は、短辺のループ部34Aと長辺のループ部34Aとが長手方向に一つのペアとして並び、台紙に直線状に貼り付けられている。そして該ペアの短手方向の隣には、長辺のループ部34Aと短辺のループ部34Aとが、該ペアの並び順とは逆の順に、長手方向に別のペアとして並んで貼り付けられている。そして、このような二つのペアは、該ペアの短手方向に向かって交互に並んで台紙に貼り付けられている。このように両面テープ34が台紙に設けられることで、両面テープ34が貼り付けられる台紙の領域は削減可能となる。ステップS101では、
図5(B)に示される状態の両面テープ34を台紙29から剥がす(ステップS101)。
【0015】
(ステップS102)
ステップS102では、ステップS101において台紙29から剥離された両面テープ34が枠状に変形させられ、外周部35の上面に貼り付けられる。
図6は、台紙29から剥離された両面テープ34が枠状に変形させられる概要を例示する。
図6に示されるように、台紙29から剥離された両面テープ34のギャップ部34Bは、直線状に並んだループ部34Aを接続する場合と、対向して並んだループ部34Aを接続する場合とで形状が異なっている。そこで、それら形状の異なるギャップ部34Bを略同一のU字形状に変形させることにより、両面テープ34が枠状となる。このように変形させられた両面テープ34は、
図1(B)に示されるように外周部35の上面に貼り付けられる。なお、両面テープ34を外周部35の上面に貼り付ける場合には、まず段差部36にギャップ部34BのU字状の切り欠き50を合わせるようにギャップ部34Bを貼り付ける。その後、ルー
プ部34Aを段差部36以外の部分に貼り付ける。ここで、切り欠き50は、本発明の「切り欠き」の一例である。
【0016】
ステップS103では、接着剤38を塗布する。具体的には、接着剤38の塗布は、段差部36の上面及び段差部36の近傍に貼り付けられたループ部34Aの上面の一部に被り、ギャップ部34Bの上面に被らないように実行される。このように接着剤が塗布された場合、
図1(B)に示されるような状態となる。
【0017】
ステップS104では、両面テープ34及び接着剤38に表示アセンブリ30を接着させる。
図7は、表示アセンブリ30が両面テープ34及び接着剤38に接着している状態の概要の一例を示している。
図7(A)は、スマートフォン3の段差部36を斜め上方から拡大して見た部分拡大図である。
図7(B)は、
図7(A)におけるA-A矢印断面図である。ただし、
図7(A)では、表示アセンブリ30のカバーガラス32を非表示としている。
図7に示されるように、接着剤38は、表示アセンブリ30によって押しつぶされることで、ループ部34A及びギャップ部34Bのいずれの上面の一部にも被さることになる。ここで、押しつぶされた接着剤38が被さるループ部34Aの範囲は、最も近接する長辺のループ部34Aの部分と短辺のループ部34Aの部分とを含む。
【0018】
<比較例1>
図8及び
図9は、比較例に係るスマートフォン5の構造の概要の一例を示している。
図8(A)は、スマートフォン5の正面図の一例を示している。
図8(B)は、スマートフォン5の筐体に両面テープが貼り付けられている状態を例示している。
図8(C)は、
図8(B)における点線で囲まれた部分の部分拡大図を示している。また、
図9は、
図8(A)における断面図を例示している。
図9(A)は、
図8(A)におけるA―A矢印断面図である。
図9(B)は、
図8(A)におけるB―B矢印断面図である。
図9(C)は、
図8(A)におけるC―C矢印断面図である。
【0019】
スマートフォン5の構造は、スマートフォン3の構造と同様である。しかし、スマートフォン5が備える両面テープ64は、両面テープ34とは異なり1枚のテープとして繋がっていない。両面テープ64は、
図8(B)に示されるように、64A-64Dまでの4枚に分割された短冊状のテープである。このようなスマートフォン5の場合、外周部55の長手部分55A、及び短手部分55Bには、両面テープ64が独立して貼り付けられることになる。しかしながら、このような構造の場合、独立した其々の両面テープ64を外周部55に対して歪なく位置合わせして貼り付けることが難しく、スマートフォン5の組み立てが困難と考えられる。また、スマートフォン5を組み立てる場合に、両面テープ64を貼り付ける向きを誤って逆さまにしてしまい、組み立て不良を引き起こす可能性もあった。
【0020】
<比較例2>
図10は、曲面型表示パネル11を搭載した別の比較例に係るスマートフォン1の構造の概要の一例を示している。
図10(A)は、スマートフォン1の分解斜視図の一例を示している。
図10(B)は、
図10(A)における点線で囲まれた部分の拡大図を示している。
図10に示されるように、スマートフォン1は、曲面型表示パネル11と、曲面型表示パネル11を覆うカバーガラス12と、曲面型表示パネル11を収容する筐体13と、を備える。なお、
図10(A)には、曲面型表示パネル11とカバーガラス12とが一体となった状態(表示アセンブリ10)が示されている。また、筐体13には開口19が設けられている。そして、表示アセンブリ10の背面の縁が開口の外周部15の上面に固定されることにより、開口19はカバーガラス12によって蓋をされた状態となり、曲面型表示パネル11は筐体13の内部へ収容された状態となる。ここで、外周部15には、
図10(B)に示されるように周方向に段差部16が設けられている。そして、段差部1
6により形成された外周部15の長手部分15Aには、曲面型表示パネル11の背面方向へ湾曲した縁が両面テープ14を介して固定される。一方で、外周部の短手部分15Bには、曲面型表示パネル11と重なっていないカバーガラス12の縁が両面テープ14を介して固定される。
【0021】
図11は、
図10(B)におけるD―D矢印断面図を示している。(A)は接着剤18が注入される前の断面図である。一方(B)は、接着剤18が注入された後の断面図である。ここで、曲面型表示パネル11の公差と筐体13の公差とが十分に管理されず、曲面型表示パネル11と筐体13とが貼り合わされる面の位置精度を確保することが困難となることが考えられる。よって、
図11(A)に示されるように、両面テープ14は、曲面型表示パネル11及びカバーガラス12によって形成される段差には追従しないことが考えられる。よって、
図11(A)に示されるように両面テープ14と曲面型表示パネル11及びカバーガラス12との間には空隙17が生じるものと考えられる。そこで、空隙17を接着剤18で埋めるために、
図11に示されるスマートフォン1では、段差部分の背面側に接着剤18を注入するための孔20を作成し、筐体13の背面側から孔20へ接着剤18を注入する。しかしながら、注入された接着剤18が、両面テープ14に妨げられて空隙17へ流入することは困難である。よって、外部から空隙17を介して筐体13の内部へ水が流入する可能性が考えられる。
【0022】
(作用効果)
上記のようなスマートフォン3によれば、
図1に示されるように両面テープ34のギャップ部34Bが段差部16において孔40を迂回するように設けられている。よって、接着剤38を筐体33の背面側から孔40へ注入した場合に、比較例に係るスマートフォン1と異なり、空隙37への接着剤38の流入が両面テープ34によって妨げられることは抑制される。よって、接着剤38で曲面型表示パネル31と筐体33の段差部36との間に生じる空隙37を埋めることができ、防水性の向上が担保できる。
【0023】
また、上記のようなスマートフォン3によれば、段差部36に配置される両面テープ34のギャップ部34Bが曲面型表示パネル31及びカバーガラス32によって形成される段差に追従せず、ギャップ部34Bのエッジが空隙37に露出する可能性が考えられる。しかし、このような場合、空隙37に露出するギャップ部34Bのエッジには接着剤38がより集まることになる。つまり、ギャップ部34Bが曲面型表示パネル31及びカバーガラス32によって形成される段差に追従しない場合であっても、空隙37を介して水が筐体33の内部へ流入することは抑制される。
【0024】
また、上記のようなスマートフォン3によれば、両面テープ34は、1枚の繋がった状態のテープであるため、組み立て作業は容易となる。より詳細には、両面テープ34は、外周部35の上面に貼ることが容易となる。また、このような1枚の繋がった状態の両面テープ34は、管理が容易になり、複数枚の短冊状のテープである両面テープ64よりもテープの紛失は抑制される。また、貼り付ける時のピックアップも一度で済み、また貼り付け時の位置決めが容易で、作業スピードも向上する。また、治具を使用して外周部35の上面に貼り付ける場合であっても、両面テープ34は1枚の繋がった状態のテープあるため、作業が容易である。
【0025】
一方、
図8及び
図9に示されるようなスマートフォン5の場合、両面テープ64は、複数枚の短冊状である。よって、本実施形態よりも貼り付ける時のピックアップの回数が多くなる。また、貼り付ける度に外周部55の上面に対する位置決めを行う必要があるため作業時間を要する。
【0026】
また、上記のようなスマートフォン3によれば、
図5(B)に示されるように、両面テ
ープ34は畳まれた状態で台紙29に貼り付けられている。よって、台紙29の領域は削減され、部品コストは低減される。また、本実施形態によれば、両面テープ34はそのギャップ部34Bが段差部16において孔40を迂回するような形状である。よって、ギャップ部34Bを容易に変形させることができ、
図5(B)に示されるような畳まれた形状から枠状へと容易に変形させることができる。また、ギャップ部34Bの幅がループ部34Aの幅よりも狭いことも折り畳まれた状態の両面テープ34を枠状へと変形させることを容易にしている。つまり、上記のような両面テープ34の形状は、台紙29に貼られている時には部品コストを低減させ、外周部35の上面に貼り付けられた場合には接着剤38の空隙37への流入を可能とすることで防水性を向上させる形状である。
【0027】
また、上記の両面テープ34によれば、ループ部34Aの幅が広いため、台紙29から剥離されて枠状へ変形させる場合にループ部34Aが歪むことは抑制される。また、ギャップ部34Bの幅は狭いため、台紙29から剥離された両面テープ34の形状が歪んでいる場合に、歪みによる影響によりループ部34Aではなくギャップ部34Bが変形することになる。つまり、両面テープ34が台紙29から剥離されて枠状に変形させられた場合に、ループ部34Aの形状の歪みは抑制されるため、枠の四辺を形成するループ部34Aの位置精度の低下は抑制される。つまり、上記の両面テープ34によれば、歪みなく外周部35の上面へ貼り付けることができ、スマートフォン3の組み立ては容易となる。
【0028】
また、両面テープ34は、段差部36の段差に合わせてその一部の厚みを変更することなく、段差部36における防水性を向上させている。つまり、厚みの異なる複数の両面テープ34を貼り合わせる必要はなく、部品点数は削減される。
【0029】
(変形例1)
図12は、スマートフォン3Aの段差部36付近の部分拡大図である。
図12は、接着剤38が塗布され、表示アセンブリ30が固定される前の状態を例示している。スマートフォン3Aでは、
図12に示されるように、接着剤38がループ部34Aの上面にかからず、ギャップ部34Bの上面の一部にかかるように塗布される。このように接着剤38が塗布された場合であっても、接着剤38は、表示アセンブリ30によって押しつぶされることで、ループ部34A及びギャップ部34Bのいずれの上面の一部にも被さることになる。ここで、押しつぶされた接着剤38が被さるループ部34Aの範囲は、最も近接する長辺のループ部34Aの部分と短辺のループ部34Aの部分とを含む。よって、このようなスマートフォン3Aによっても、上記のスマートフォン3と同様の効果を奏することができる。加えて、表示アセンブリ30が貼り付けられた場合に、ループ部34Aと比較して幅の狭いギャップ部34Bの上面に確実に接着剤38が重なるようにすることができる。よって、ギャップ部34Bにおける防水性の確度は向上する。
【0030】
(変形例2)
図13は、スマートフォン3Bの段差部36付近の部分拡大図である。
図13は、接着剤38が塗布され、表示アセンブリ30が固定される前の概要を例示している。スマートフォン3Bでは、
図13に示されるように、接着剤38が段差部36の近傍のループ部34Aの上面、及びギャップ部34Bの上面にかかるように塗布される。このように接着剤38が塗布された場合であっても、接着剤38は、表示アセンブリ30によって押しつぶされることで、ループ部34A及びギャップ部34Bのいずれの上面の一部にも被さることになる。ここで、押しつぶされた接着剤38が被さるループ部34Aの範囲は、最も近接する長辺のループ部34Aの部分と短辺のループ部34Aの部分とを含む。よって、このようなスマートフォン3Bによっても、上記のスマートフォン3と同様の効果を奏することができる。加えて、表示アセンブリ30が貼り付けられた場合に、段差部36の近傍のループ部34Aの上面及びギャップ部34Bの上面に接着剤38が重なる確度は向上する。よって、防水性の確度はさらに向上する。
【0031】
(変形例3)
図14は、スマートフォン3Cの段差部36付近の部分拡大図である。スマートフォン3Cでは、両面テープ34Cを備え、両面テープ34Cは、両面テープ34と同様にループ部34Aを有する。しかしながら、両面テープ34Cは、ギャップ部34Bの替わりに切り欠き48を有するギャップ部34Dを備える。このようなスマートフォン3Cによってもスマートフォン3と同様の効果を奏することができる。加えて、このような両面テープ34Cは、切り欠き48によりギャップ部34Dの幅が狭められている。よって、両面テープ34Cは、折り畳まれた状態で台紙29から剥離され、枠状に変形させられる場合に変形が容易となる。よって、両面テープ34Cを外周部35の上面に貼り付ける場合の作業スピードは向上する。
【0032】
(その他変形例)
また、上記のようなスマートフォン3に使用される両面テープ34には、筐体33を形成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する物質が含有されていてもよい。このような両面テープ34によれば、筐体33の内部に収容されるチップや基板等から発せられる熱の放熱が促進される。よって、筐体33に収容されるチップや基板において熱暴走が発生することは抑制される。また、スマートフォン3では、両面テープ34が1枚の繋がった状態で外周部35の上面に貼り付けられている。よって、比較例に係るスマートフォン5のように複数の短冊状の両面テープ64が外周部55の上面に貼り付けられている場合と比較して熱伝導性は高まることになり、放熱性は向上する。
【0033】
上記の実施形態では、段差部36に筐体33の背面側から正面方向に貫通する孔40が設けられている。しかしながら、孔40は設けられていなくともよく、接着剤38は、両面テープ34が外周部35に貼り付けられた後に外周部35の上方から外周部35に塗布されてもよい。また、上記の実施形態に係る両面テープ34は、ゴムなどの密閉性が高い部材、又は密閉性が高い部材の両面の少なくともいずれか一方の面に両面テープが貼り付けられたもので代替されてもよい。また、両面テープ34の形状は、正方形の枠状であってもよく、また枠状に限定されず例えば輪状であってもよい。また、両面テープ34は、
図5(B)のような形態で台紙に貼り付けられていなくともよい。また、ループ部34Aの厚み及びギャップ部34Bの厚みは等しくなくともよい。また、ギャップ部34Bの幅はループ部34Aの幅よりも狭くなくともよい。また、ギャップ部34Bは、ループ部34Aの内側の端以外の部分を繋いでもよく、ギャップ部34Bに設けられる切り欠き50の形状、又は切り欠き50が設けられる部分は、上記の実施形態に記載される例に限定されない。また、上記の実施形態では、本発明の「携帯機器」の一例としてスマートフォン3を例示したが、携帯機器は、例えばタブレット端末やスマートウォッチなどの携帯可能な機器であってもよい。
【0034】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0035】
1、5・・比較例に係るスマートフォン:3、3A、3B、3C・・本実施形態に係るスマートフォン:10・・表示アセンブリ:11・・曲面型表示パネル:12・・カバーガラス:13・・筐体:14・・両面テープ:15・・外周部:15A・・長手部分:15B・・短手部分:16・・段差部:17・・空隙:18・・接着剤:19・・開口:20・・孔:29・・台紙:30・・表示アセンブリ:31・・曲面型表示パネル:32・・カバーガラス:33・・筐体:34・・両面テープ:34A・・ループ部:34B・・ギャップ部:34C・・両面テープ:34D・・ギャップ部:35・・外周部:36・・段差部:37・・空隙:38・・接着剤:39・・開口:40・・孔:48・・切り欠き:50・・切り欠き:55・・外周部:55A・・長手部分:55B・・短手部分:64・
・両面テープ