(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/667 20220101AFI20230915BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20230915BHJP
【FI】
G01F1/667 A
G01F1/66 101
(21)【出願番号】P 2019190742
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太郎
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-111690(JP,A)
【文献】特開2008-227658(JP,A)
【文献】特開2011-099692(JP,A)
【文献】特開2014-071058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の配管の端部同士を同一直線上に並んだ状態に接続するハウジングと、
前記ハウジングの内部に形成されて前記1対の配管に連通しかつ、前記同一直線と平行な第1基準方向に延びる流路と、
前記流路の長手方向の2箇所を側方に拡張してなる1対の拡張部と、
前記1対の拡張部に収容され、前記流路に対して傾斜する方向に対向配置される
複数対の超音波センサと、
前記1対の拡張部に形成されて、前記第1基準方向で相反する向きに開口しかつ1対の蓋部にて閉塞される1対の端部開口と、
前記1対の拡張部のうち前記第1基準方向で前記1対の端部開口と対向する部分に配置されて、各前記超音波センサ
を螺子止めするための複数の螺子孔と、を備え
、
各前記螺子孔は前記第1基準方向に延びている超音波流量計。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記第1基準方向に延びる外部スリーブと、
前記外部スリーブの中心部を貫通する内部スリーブと、
前記外部スリーブに形成され、前記外部スリーブと前記内部スリーブとの間の筒状空間を前記第1基準方向の一端側と他端側とに仕切る中間壁部と、
前記第1基準方向に対して傾斜する方向で前記内部スリーブを貫通し、前記筒状空間の前記一端側と前記他端側とに連通する
複数対の超音波伝播用貫通孔と、
を有し、
前記筒状空間の前記一端側と前記他端側とが、前記内部スリーブの内側の前記流路から拡張された前記1対の拡張部をなし、
前記中間壁部に、
前記複数の螺子孔が配置されている請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記中間壁部は、前記筒状空間を周方向で仕切る板状をなして、前記内部スリーブの回りに放射状に配置される複数の放射リブと、隣り合う前記放射リブ同士の間を前記第1基準方向の一端側と他端側とで交互に連絡する複数の扇形リブとを備えてなり、
各前記超音波伝播用貫通孔は、前記中間壁部のうち隣り合う前記扇形リブの間の扇形開口部に臨んで開口し、
各前記
螺子孔は、前記扇形開口部の両側の開口縁に配置されている請求項2に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記内部スリーブから側方に張り出して前記中間壁部に重ねて固定される複数のスリーブ取付突部が設けられている請求項2又は3に記載の超音波流量計。
【請求項5】
前記蓋部の内縁部から延長されたパイプ部の先端部にフランジ部を一体に備える請求項2乃至4の何れか1の請求項に記載の超音波流量計。
【請求項6】
各前記超音波センサは、前記外部スリーブを周方向で複数分割する位置に配置されている請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計。
【請求項7】
前記超音波センサは、超音波の送受波面を有するセンサ本体と、前記センサ本体を保持するセンサホルダとを備えてなり、
前記センサホルダには、前記センサ本体が嵌合した状態に固定され、前記第1基準方向に対して傾斜した中心軸を有するリング部と、
前記リング部から側方に張り出し、前記第1基準方向に貫通
して前記螺子孔と連通させる取付孔を有するセンサ取付突部と、が備えられている請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1対又は複数対の超音波センサが流路に対して傾斜する方向に対向配置される超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波流量計として、流路を内側に有する直管部分から1対又は複数対の分枝管が斜め側方に延び、各分枝管の端部に超音波センサが取付けられるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-219863号公報(段落[0024]、[0025]及び
図1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の超音波流量計では、超音波センサを流路に対して傾斜する方向から取り付けるという困難な作業を強いられ、特に、複数対の超音波センサを備えるものでは、超音波センサ毎にハウジングの向きを変更して取り付ける作業を多数回(例えば、
図15に示すように3対の超音波センサが取り付けられるハウジングであれば6回)行う必要があり、手間もかかっていた。このため、超音波センサの取り付け作業を容易に行うことが可能な超音波流量計の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、1対の配管の端部同士を同一直線上に並んだ状態に接続するハウジングと、前記ハウジングの内部に形成されて前記1対の配管に連通しかつ、前記同一直線と平行な第1基準方向に延びる流路と、前記流路の長手方向の2箇所を側方に拡張してなる1対の拡張部と、前記1対の拡張部に収容され、前記流路に対して傾斜する方向に対向配置される複数対の超音波センサと、前記1対の拡張部に形成されて、前記第1基準方向で相反する向きに開口しかつ1対の蓋部にて閉塞される1対の端部開口と、前記1対の拡張部のうち前記第1基準方向で前記1対の端部開口と対向する部分に配置されて、各前記超音波センサを螺子止めするための複数の螺子孔と、を備え、各前記螺子孔は前記第1基準方向に延びている超音波流量計である。
【0006】
請求項2の発明は、前記ハウジングは、前記第1基準方向に延びる外部スリーブと、前記外部スリーブの中心部を貫通する内部スリーブと、前記外部スリーブに形成され、前記外部スリーブと前記内部スリーブとの間の筒状空間を前記第1基準方向の一端側と他端側とに仕切る中間壁部と、前記第1基準方向に対して傾斜する方向で前記内部スリーブを貫通し、前記筒状空間の前記一端側と前記他端側とに連通する複数対の超音波伝播用貫通孔と、を有し、前記筒状空間の前記一端側と前記他端側とが、前記内部スリーブの内側の前記流路から拡張された前記1対の拡張部をなし、前記中間壁部に、前記複数の螺子孔が配置されている請求項1に記載の超音波流量計である。
【0007】
請求項3の発明は、前記中間壁部は、前記筒状空間を周方向で仕切る板状をなして、前記内部スリーブの回りに放射状に配置される複数の放射リブと、隣り合う前記放射リブ同士の間を前記第1基準方向の一端側と他端側とで交互に連絡する複数の扇形リブとを備えてなり、各前記超音波伝播用貫通孔は、前記中間壁部のうち隣り合う前記扇形リブの間の扇形開口部に臨んで開口し、各前記螺子孔は、前記扇形開口部の両側の開口縁に配置されている請求項2に記載の超音波流量計である。
【0008】
請求項4の発明は、前記内部スリーブから側方に張り出して前記中間壁部に重ねて固定される複数のスリーブ取付突部が設けられている請求項2又は3に記載の超音波流量計である。
【0009】
請求項5の発明は、前記蓋部の内縁部から延長されたパイプ部の先端部にフランジ部を一体に備える請求項2乃至4の何れか1の請求項に記載の超音波流量計である。
【0010】
請求項6の発明は、各前記超音波センサは、前記外部スリーブを周方向で複数分割する位置に配置されている請求項2乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計である。
【0011】
請求項7の発明は、前記超音波センサは、超音波の送受波面を有するセンサ本体と、前記センサ本体を保持するセンサホルダとを備えてなり、前記センサホルダには、前記センサ本体が嵌合した状態に固定され、前記第1基準方向に対して傾斜した中心軸を有するリング部と、前記リング部から側方に張り出し、前記第1基準方向に貫通して前記螺子孔と連通させる取付孔を有するセンサ取付突部と、が備えられている請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の超音波流量計である。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の超音波流量計では、流路の2箇所を側方に拡張してなる1対の拡張部に、その流路の長手方向である第1基準方向に向かって開口する端部開口が設けられて蓋部で閉じられ、それら1対の拡張部に第1基準方向から超音波センサが固定されるセンサ固定部が設けられている。これにより、超音波センサを、流路の軸方向(第1基準方向)から取り付けられることができ、流路に対して傾斜する方向から超音波センサが取り付けられていた従来に比べて、超音波センサの取付作業が容易になる。また、超音波流量計に複数対の超音波センサが備えられていても、それら複数対の超音波センサのうちの半分の複数の超音波センサはハウジング11に対して流路の一端側から取り付けられ、残り半分の複数の超音波センサはハウジング11に対して流路の他端側から取り付けられるので、ハウジング11の向きを変更する手間が低減される。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の超音波流量計では、ハウジングが外部スリーブと内部スリーブとを有し、それらの間の筒状空間が中間壁部によって一端側と他端側とに仕切られると共に、内部スリーブには筒状空間の一端側と他端側とに連通する複数対の超音波伝播用貫通孔が形成されているので、筒状空間の一端側と他端側とが、内部スリーブの内側の流路から拡張された1対の拡張部になる。また、この構成では、流路と1対の拡張部とが内部スリーブにて仕切られるので、1対の拡張部による乱流の発生が防がれる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の構成では、中間壁部が、複数の放射リブと複数の扇形リブとを接続してなり、外部スリーブの周方向で蛇行した形状に形成されるので、外部スリーブを樹脂成形品やダイキャスト成形品として製造する場合に、外部スリーブの軸方向の両側に成形金型の型抜きを行うことができ、金型制作費を抑えることができる。また、各超音波伝播用貫通孔が、中間壁部のうち隣り合う扇形リブの間の扇形開口部に臨んで開口し、各センサ固定部は、扇形開口部の両側の開口縁に配置されているので、放射リブが超音波センサ同士の間を仕切る壁として利用することができる。
【0015】
[請求項4の発明]
請求項4の構成では、内部スリーブが外部スリーブに固定されるので、蓋部の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0016】
[請求項5の発明]
請求項5の構成では、配管に取り付けられるフランジ部が蓋部と一体に備えられているので、部品点数の削減が図られる。
【0017】
[請求項6の発明]
超音波センサが複数対備えられている場合には、それら超音波センサを請求項7の構成のように外部スリーブを周方向で複数分割する位置に配置することで、超音波流量計をコンパクトにすることができる。
【0018】
[請求項7の発明]
請求項7の構成では、超音波センサが、センサ本体とセンサホルダとに分かれているので、ハウジングの形状に応じてセンサホルダの形状を変更して対応することができる。
【0019】
なお、超音波センサは、螺子にてハウジングに固定されてもよいし、ピンの圧入により固定されていてもよいし、接着剤や震動溶着にて固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施形態に係る超音波流量計の斜視図
【
図3】蓋体が外された超音波流量計の一端側の斜視図
【
図4】蓋体が外された超音波流量計の他端側の斜視図
【
図5】超音波センサとセンサ固定部とを拡大した斜視図
【
図9】1対の配管の間の取り付けられた超音波流量計の側面図
【
図14】超音波流量計の(A)変形例4の側断面図,(B)変形例5の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図9を参照して本開示の超音波流量計10の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の超音波流量計10のハウジング11は、外部スリーブ30と内部スリーブ20と1対の中継部材40とを含む複数の部品に分割されている。
【0022】
図3に示すように、外部スリーブ30は、円筒状をなして、その両端部からは1対のフランジ部32が側方に張り出している。以下、外部スリーブ30の中心軸J1(
図2参照)が延びる方向を第1基準方向H1という。
【0023】
外部スリーブ30の外面を周方向に複数等分(例えば、6等分)する位置には、1対のフランジ部32の間を連絡するよう延びる複数の外面突部31が形成されている。そして、各フランジ部32から各外面突部31の両端寄り位置に亘って螺子孔31Nが形成されている。なお、外部スリーブ30の外面には、流体を流す方向を示す矢印形状のマーク30Mが付されている。
【0024】
1対のフランジ部32は、
図3における上部に位置する1対の外面突部31の間と、下部に位置する1対の外面突部31の間が平坦にカットされている。また、上部の1対の外面突部31と1対のフランジ部32とに四方を包囲された部屋は、配線収容部屋39になっている。その配線収容部屋39内には、外部スリーブ30を内外に貫通する1対のケーブル挿通孔39Aが形成されている。また、配線収容部屋39の開口縁からは四角形の枠形突壁39Tが突出し、図示しない回路ユニットが枠形突壁39Tに嵌合した状態に取り付けられて配線収容部屋39が閉塞される。
【0025】
外部スリーブ30の両端部には、内面を段付き状に拡径して蓋嵌合部30Kが形成されている。また、外部スリーブ30の中間部には、外部スリーブ30の中心部に向かって中間壁部33が突出している。中間壁部33は、外部スリーブ30の内面から中心寄り位置まで張り出す複数(例えば、6つ)の放射リブ33Aと、隣り合う放射リブ33A同士の間を第1基準方向H1の一端側と他端側とで交互に連絡する複数の扇形リブ33Bとを備えてなり、隣り合う扇形リブ33Bの間が、扇形開口部33Cになっている。
【0026】
図4に示すように、各扇形リブ33Bには、外部スリーブ30の近い側の端部開口を向いた面にセンサ固定部34が設けられている。センサ固定部34は、扇形リブ33Bのうち先端側(外部スリーブ30の中心側)の両角部から第1基準方向H1に突出する円筒状をなしている。また、
図4に示すように、扇形リブ33Bのうち、マーク30Mの矢印が示す下流側の外部スリーブ30の端部開口を向く面に配置された各センサ固定部34の隣には、それぞれスリーブ固定部35が設けられ、スリーブ固定部35も、中間壁部33から第1基準方向H1に突出する円筒状をなしている。また、
図5に拡大して示すように、センサ固定部34及びスリーブ固定部35の先端面は、第1基準方向H1に対して直交する平坦面になっている。さらに、センサ固定部34及びスリーブ固定部35の内側には、螺子孔34A,35Aが形成されている。詳細には、センサ固定部34には、螺子孔34Aの手前に、螺子孔34Aより内径が大きな嵌合孔34Bが備えられている。また、スリーブ固定部35には、螺子孔35Aの手前に嵌合孔は備えられていない。
【0027】
なお、本実施形態の外部スリーブ30は、円筒形であるが、それに限定されるものではなく、楕円筒状や、断面多角形の角筒状であってもよい。また、外部スリーブ30は、樹脂や金属の成形品(例えば、ダ
イキャスト成形品や鋳造品)でもよいし、金属加工品でもよい。また、外部スリーブ30を、樹脂の成形品とする場合には螺子孔31N,34
A,35
Aが金属ナットによって構成されるように外部スリーブ30をインサート成形品としてもよいし、螺子孔31Nを単なる孔にして、先細り状の螺子(所謂、木ねじ)がねじ込まれるようにしてもよい。さらに、
図3及び
図4等では、放射リブ33A及び扇形リブ33Bは、簡略化されて平板状に示されているが一部が屈曲したり切り欠かれたりしている。そして、外部スリーブ30を成形品とした場合に容易に第1基準方向H1
に型抜きができるようになっている。
【0028】
図2に示すように、内部スリーブ20は、外部スリーブ30より長い円筒状をなしている。また、
図5に示すように、内部スリーブ20の一端寄り位置(例えば、下流側端部寄り位置)を周方向で複数等分(例えば、3等分)する位置からは、スリーブ取付突部22が側方に張り出している。各スリーブ取付突部22は、三角形の突片状をなし、先端部に貫通孔22Aを有する。そして、貫通孔22Aに通された螺子B4が、スリーブ固定部35の螺子孔35Aに螺合されて内部スリーブ20が外部スリーブ30に固定されている。また、内部スリーブ20及び外部スリーブ30は、同心軸状に配置されて前述の中心軸J1(
図2参照)を共有している。
【0029】
図2に示すように、内部スリーブ20の両端部には、外径を段付き状に縮径して嵌合部29が形成されている。また、嵌合部29の周方向を複数等分する位置には、第1基準方向H1に延びかつ嵌合部29の周面から僅かに突出する突条29L(
図5参照)が形成され、嵌合部29が中継部材40の後述する嵌合部43Kに嵌合されるときに、それら突条29Lが押し潰される。また、内部スリーブ20の内面は、スリーブ取付突部22が配置されている部分に向かって徐々に縮径している。
【0030】
なお、内部スリーブ20は、円筒形に限定されるものではなく、楕円筒状や、断面多角形の角筒状であってもよい。また、本実施形態の内部スリーブ20は、樹脂の成形品であるが、金属の成形品や加工品であってもよい。
【0031】
図2に示すように、内部スリーブ20には、複数対(例えば、3対)の超音波伝播用貫通孔21が形成されている。各対の超音波伝播用貫通孔21は、内部スリーブ20の中心軸J1に対して斜めに交差する中心軸J2を有する丸孔になっていて、それ故に、内部スリーブ20の径方向から見ると超音波伝播用貫通孔21は楕円形状をなしている。詳細には、複数の中心軸J2は、中心軸J1における長手方向の略中央の点P1で交差し、中心軸J1の軸方向から見ると複数の中心軸J2が中心軸J1回りを複数等分する方向に延びている。また、各中心軸J2のうち内部スリーブ20から外側に延びる部分は、外部スリーブ30の隣り合う扇形リブ33Bの間の中央に配置されて、各超音波伝播用貫通孔21が外部スリーブ30の扇形開口部33Cに臨んで開口している。
【0032】
図1に示すように、1対の中継部材40は、ハウジング11の端部開口を閉塞する蓋部41と、その蓋部41に対向する円板状のフランジ部45とをパイプ部40Pで接続してなる。
【0033】
蓋部41は、外部スリーブ30のフランジ部32と同様に、円板の周方向の2箇所を平坦にカットした形状をなしている。また、
図2に示すように、蓋部41の外縁部からは、外部スリーブ30側に向かって土手部41Dが突出し、その土手部41Dの先端面の内縁部から嵌合筒部42が延設されている。そして、外部スリーブ30の蓋嵌合部30Kに嵌合筒部42が嵌合され、土手部41Dの先端面が外部スリーブ30の先端面に重ねられる。また、土手部41Dを含む蓋部41の外縁部には、外部スリーブ30の複数の螺子孔31Nに対応して複数の貫通孔41Aが形成されている。そして、貫通孔41Aに通した螺子B1を外部スリーブ30の螺子孔31Nに締め付けて外部スリーブ30に中継部材40が固定される。
【0034】
図1に示すように、フランジ部45は、円板状をなし、フランジ部45の外周面のうち配線収容部屋39と反対側部分は平坦にカットされて載置面45Bになっている。また、フランジ部45を周方向で複数等分する位置には、貫通孔45Aが形成されている。そして、
図9に示すように、配管90のフランジ部91にフランジ部45が重ねられ、フランジ部91に設けられた図示しない複数の貫通孔とフランジ部45の複数の貫通孔45Aとに図示しないボルトが通されてナットと螺合されることで、1対の配管90の間に超音波流量計10のハウジング11が固定される。
【0035】
図2に示すように、中継部材40の中心部を貫通する中心孔43の内面には、蓋部41側の端部を段付き状に拡径して嵌合部43Kが形成されている。そして、嵌合部43Kに内部スリーブ20の嵌合部29が嵌合されて、中心孔43の内面と超音波伝播用貫通孔21の内面とが面一に配置されている。また、中心孔43は、嵌合部43Kからフランジ部45寄り位置まで僅かに拡径し、そこからフランジ部45側の開口までの間が均一径になっている。なお、本実施形態の中継部材40は、金属製であるが樹脂製でもよい。
【0036】
ハウジング11の構造に関しては以上である。このハウジング11は、上述したように外部スリーブ30と内部スリーブ20とを有し、それらの間の筒状空間70が中間壁部33によって一端側と他端側とに仕切られる共に、内部スリーブ20には筒状空間70の一端側と他端側とに連通する複数対の超音波伝播用貫通孔21が形成されているので、筒状空間70の一端側と他端側とが、内部スリーブ20の内側の流路10Rから拡張された1対の拡張部71になる。そして、それら各拡張部71に複数ずつ(例えば、3つずつ)の超音波センサ50が取り付けられ、各拡張部71の端部開口71Aが、蓋部41にて閉塞される。
【0037】
以下、超音波センサ50の構造及び超音波センサ50の拡張部71への取り付け方法について説明する。
図6(B)に示すように、超音波センサ50は、センサ本体51と中継リング52とセンサホルダ60とを備えてなる。また、センサ本体51は、円柱状をなして、その一端面にドーム状に膨出した超音波送受波面53を有する。以下、センサ本体51、中継リング52及びセンサホルダ60においては、センサ本体51の軸方向を前後方向、超音波送受波面53を有する側を前側、その反対側を後側ということとする。
【0038】
センサ本体51の側面には、前後方向の中間部分に段付き状に拡径した大径部54が備えられている。また、センサ本体51の後面は、平坦になっていて、その中心部から図示しないケーブルが延びている。
【0039】
中継リング52は、例えば、センサ本体51及びセンサホルダ60より弾性が高く、超音波が伝播し難い部材で構成されている。また、中継リング52の内面には、周方向の全体に亘って角溝部52Mが形成され、そこにセンサ本体51の大径部54が嵌合することでセンサ本体51と中継リング52とが一体に固定されている。また、中継リング52の後端部から側方にフランジ部52Fが張り出している。
【0040】
図7(A)に示すように、センサホルダ60は、リング部61の周方向の2箇所から1対のセンサ取付突部62が側方に張り出した構造をなしている。
図6(B)に示すように、リング部61は、第1基準方向H1に対して傾斜した中心軸J3を有する円環状をなしている。リング部61の内面には、前側から小径部61Aと大径部61Bとが備えられ、大径部61Bに中継リング52のフランジ部52Fが嵌合し、小径部61Aと大径部61Bとの段差面にフランジ部52Fの前面が重ねられている。また、フランジ部52Fの後面は、リング部61の後面より僅かに後方に位置している。
【0041】
図7に示すように、1対のセンサ取付突部62は、リング部61を挟んで左右対称に形成されている。
図6(A)には、センサ取付突部62を、1対のセンサ取付突部62
の並び方向から見た形状が示されている。同図に示すようにセンサ取付突部62は、第1基準方向H1と直交する第1平面62Aと、リング部61の後面と面一になった第2平面62Bと、第1基準方向H1と平行な第3平面62Cとを有する。第3平面62Cは、リング部61にも形成されて、その平面形状は円弧状になっている(
図7(B)参照)。また、センサ取付突部62には、第2平面62Bと直交するように螺子孔62Nが形成されている。さらに、螺子孔62Nに螺合した螺子B2にて押え板63が各センサ取付突部62の各第2平面62Bに重ねられてそれぞれ固定されている。そして、それら押え板63の一部が中継リング52のフランジ部52Fの後面に重ねられ、これによりセンサ本体51及び中継リング52がリング部61に固定されている。
【0042】
各センサ取付突部62は、リング部61から離れる側に張り出す側突部64を有する。側突部64は、センサ取付突部62のうち第2平面62Bから離れた側に配置され、第1平面62Aとそれに平行な面とを表裏に備える。また、側突部64には、第1基準方向H1に貫通する貫通孔62Uが備えられ、側突部64のうち第1平面62A側の貫通孔62Uの開口縁からは、貫通孔62Uと中心軸J4を共有する円筒状の係合突部62Tが突出している。また、1対のセンサ取付突部62の係合突部62T同士の間隔は、外部スリーブ30の扇形開口部33Cの両側のセンサ固定部34同士の間隔と同じになっている。
【0043】
複数の超音波センサ50は、内部スリーブ20及び1対の中継部材40が組み付けられる前の状態の外部スリーブ30に組み付けられる。具体的には、例えば、水平な載置面に対し、外部スリーブ30が、マーク30Mの矢印を下に向けた状態にして載置される。この状態で、
図8に示すように、上方を向いて開放した一方の拡張部71内に複数(例えば、3つ)の超音波センサ50が組み付けられる。
【0044】
具体的には、各扇形開口部33Cに超音波センサ50がそれぞれ配置され、それら扇形開口部33Cの両側のセンサ固定部34の嵌合孔34Bに各超音波センサ50の1対の係合突部62Tが嵌合される。そして、各超音波センサ50の各貫通孔62Uに、螺子B3が挿入され、この状態で、例えば電動ドライバーにて各螺子B3が順次締め付け操作されて、複数の超音波センサ50が外部スリーブ30に固定される。
【0045】
次いで、複数の超音波センサ50の図示しないケーブルが、拡張部71内に取り回されて配線収容部屋39寄りの扇形開口部33Cに通され、一方のケーブル挿通孔39A(
図3参照)から配線収容部屋39内に引き出される。
【0046】
次いで、一方の中継部材40の蓋部41が、外部スリーブ30の上面に重ねられて複数の螺子B1によって固定されることで、一方の拡張部71の端部開口71Aが閉塞される。
【0047】
次いで、一方の中継部材40と共に外部スリーブ30の上下が反転され、マーク30Mの矢印が上方を向いた状態にされる。この状態で、上方を向いて開放している他方の拡張部71内に、一方の拡張部71の場合と同様に複数の超音波センサ50が組み付けられる。これにより、
図2に示すように、各中心軸J2上に1対ずつの超音波センサ50のセンサ本体51が配置されて対向する。
【0048】
次いで、内部スリーブ20が外部スリーブ30の中心部に挿入され、
図5に示すように、内部スリーブ20の複数のスリーブ取付突部22が外部スリーブ30の複数のスリーブ固定部35に重ねられて螺子B4にて固定される。
【0049】
次いで、超音波センサ50のケーブルが他方のケーブル挿通孔39Aから配線収容部屋39内に引き出される。また、他方の中継部材40の蓋部41が、外部スリーブ30の上面に重ねられて固定され、他方の拡張部71の端部開口71Aが閉塞される。そして、図示しない回路ユニットに対して、配線収容部屋39内の超音波センサ50のケーブルが接続されてから、回路ユニットが配線収容部屋39に重ねて固定される。これにより、超音波流量計10の組み付けが完了する。
【0050】
超音波流量計10を使用する際は、前述の如く
図9に示すように1対の配管90の間に超音波流量計10が接続され、マーク30Mの矢印の方向に流体(気体)が流される。そして、互いに対向する各対の超音波センサ50の間で、一方から他方の超音波センサ50への超音波の伝播時間と、他方から一方の超音波センサ50への超音波の伝播時間との差分が求められる。そして、複数対の超音波センサ50にて求めた複数の差分データの平均に基づいて流量が演算されたり、差分データ同士の大小関係によって、渦流や乱流の発生が検出される。
【0051】
本実施形態の超音波流量計10によれば、以下の効果を奏する。即ち、本実施形態の超音波流量計10では、流路10Rの2箇所を側方に拡張してなる1対の拡張部71に、その流路10Rの長手方向である第1基準方向H1に向かって開口する端部開口71Aが設けられて蓋部41で閉じられ、それら1対の拡張部71に第1基準方向H1から超音波センサ50が固定されるセンサ固定部34が設けられている。これにより、超音波センサ50を、流路10Rの軸方向(第1基準方向H1)から取り付けられることができ、流路に対して傾斜する方向から超音波センサが取り付けられていた従来に比べて、超音波センサ50の取付作業が容易になる。また、本実施形態の超音波流量計10のように複数対の超音波センサ50が備えられていても、それら複数対の超音波センサ50のうちの半分の複数の超音波センサ50はハウジング11に対して流路10Rの一端側から取り付けられ、残り半分の複数の超音波センサ50はハウジング11に対して流路10Rの他端側から取り付けられるので、ハウジング11の向きを変更する手間が低減される。
【0052】
具体的には、
図15に示すように3対の超音波センサ(図示せず)が取り付けられる従来構造の超音波流量計1では、6方向から超音波センサを組み付ける必要があるため、少なくとも6回はハウジングの向きを変更する必要があるが、本実施形態の超音波流量計10によれば、前述の如く、2回のハウジング11(詳細には、外部スリーブ30)の向きの変更で済むので、超音波センサ50を組み付ける手間が大幅に低減される。
【0053】
また、本実施形態の超音波流量計10では、外部スリーブ30と内部スリーブ20との間の筒状空間70が中間壁部33によって一端側と他端側とに仕切り、内部スリーブ20に筒状空間70の一端側と他端側とに連通する複数対の超音波伝播用貫通孔21を形成したことで、筒状空間70の一端側と他端側とが、内部スリーブ20の内側の流路10Rから拡張された1対の拡張部71になっている。この構成により、流路10Rと1対の拡張部71とが内部スリーブ20にて仕切られ、1対の拡張部71による乱流の発生が防がれる。
【0054】
また、内部スリーブ20は外部スリーブ30に固定されるので、外部スリーブ30に対する中継部材40の取り付け作業を容易に行うことができる。さらに、超音波センサ50が、センサ本体51とセンサホルダ60とに分かれているので、ハウジング11の形状に応じてセンサホルダ60の形状を変更して対応することができる。また、配管90に取り付けられるフランジ部45と蓋部41とが一体に備えられているので部品点数の削減が図られる。
【0055】
さらに、筒状空間70を一端側と他端側とに仕切る中間壁部33は、複数の放射リブ33Aと複数の扇形リブ33Bとを接続してなり、外部スリーブ30の周方向で蛇行した形状に形成されるので、外部スリーブ30をダイキャスト成形品として製造する場合に、外部スリーブ30の軸方向の両側に成形金型の型抜きを行うことができ、金型制作費を抑えることができる。また、各超音波伝播用貫通孔21が、中間壁部33のうち隣り合う扇形リブ33Bの間の扇形開口部33Cに臨んで開口し、各センサ固定部34は、扇形開口部33Cの両側の開口縁に配置されているので、放射リブ33Aが超音波センサ50同士の間を仕切る壁として利用することができる。
【0056】
[他の実施形態]
【0057】
(1)
図10に示した超音波流量計10Aのように、パイプ部40Pとフランジ部45を有さず、蓋部41Vのみを備えた構造にしてもよい。この場合、1対の配管90のフランジ部91(
図9参照)の間に超音波流量計10Aを挟み、1対の配管90のフランジ部91に複数のボルトを差し渡して固定すればよい。
【0058】
(2)また、
図11に示した超音波流量計10Bのように、各蓋部41Wの中心部から角柱状の突部49を突出させて、それら突部49の中心部に内部スリーブ20内に連通する貫通孔を備え、その貫通孔に螺子孔部49Nを形成して、配管90の端部の雄螺子部と螺合結合されるようにしてもよい。
【0059】
(3)前記実施形態の超音波流量計10は、3対計6個の超音波センサ50を備えていたが、例えば、
図12及び
図13に示した超音波流量計10Cのように6対計12個の超音波センサ50を備えた構成としてもよいし、それ以外の任意複数対の超音波センサを備えた構成としてもよいし、さらには超音波センサの数が1対にしてもよい。
【0060】
(4)
図14(A)に概念的に示した超音波流量計10Dのハウジング11Dは、1対の配管に接続される直管部80の一端寄り位置と他端寄り位置とに、相反する側方に張り出す1対のフード部81を備える。それら1対のフード部81の内側は、直管部80内の流路10Rから側方に拡張された1対の拡張部71をなし、1対の拡張部71のうち第1基準方向H1を向いた端部開口71Aは蓋体82にて閉じられている。また、1対の拡張部71のうち端部開口71Aに対向する部分にはセンサ固定部81Vがそれぞれ設けられ、両センサ固定部81Vに取り付けられた1対の超音波センサ50が第1基準方向H1に対して傾斜する方向で対向している。この超音波流量計10Dでも、流路10Rの長手方向(即ち、第1基準方向H1)から超音波センサ50をハウジング11Dに組み付けることができ、前
記実施形態の超音波流量計10と一部同様に効果を奏する。
【0061】
(5)
図14(B)に概念的に示した超音波流量計10Eのハウジング11Eは、小径管部83の両側に1対の大径管部84を備えたベース管
部を有する。また、ベース管
部内の小径管部83と1対の大径管部84との段差面には、1対の延長管部85が固定されて、大径管部84より外側まで延びている。そして、小径管部83と1対の延長管部85の内側が流路10Rをなしている。また、1対の延長管部85は、大径管部84と延長管部85の間の空間に連通する1つ又は複数の超音波伝播用貫通孔21を有する。そして、大径管部84と延長管部85の間の空間が流路10Rから側方に拡張された1対の拡張部71をなし、それら1対の拡張部71のうち第1基準方向H1を向いた端部開口71Aが蓋体41で閉じられている。また、1対の拡張部71のうち端部開口71Aに対向する部分にはセンサ固定部84Vがそれぞれ設けられ、両センサ固定部84Vに取り付けられた1対又は複数の超音波センサ50が第1基準方向H1に対して傾斜する方向で対向している。このような超音波流量計10
Eでも、流路10Rが延びる方向(即ち、第1基準方向H1)から超音波センサ50をハウジング11Eに組み付けることができ、前
記実施形態の超音波流量計10と一部同様に効果を奏する。
【0062】
(6)前記実施形態の超音波流量計10では、超音波センサ50は螺子B3にてハウジング11に固定されていたが、ピンの圧入により固定されていてもよいし、接着剤や震動溶着にて固定されていてもよい。
【0063】
(7)前記実施形態の超音波流量計10では、1対の配管90の間を直線状に連絡する流路10Rに対して拡張部71が内部スリーブ20にて仕切られていたが、拡張部71と流路10Rとが仕切られていなくてもよい。
【0064】
(8)前記実施形態の超音波流量計10では、複数の超音波センサ50が外部スリーブ30を周方向で複数等分する位置に配置され、周方向で隣合う超音波センサ50同士の間隔が均一になっていたが、超音波センサ50同士の間隔は均一でなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10~10E 超音波流量計
10R 流路
11 ハウジング
20 内部スリーブ
21 超音波伝播用貫通孔
22 スリーブ取付突部
30 外部スリーブ
33 中間壁部
33A 放射リブ
33B 扇形リブ
33C 扇形開口部
34 センサ固定部
35 スリーブ固定部
40 中継部材
40P パイプ部
41 蓋部
45 フランジ部
50 超音波センサ
51 センサ本体
52 中継リング
53 超音波送受波面
60 センサホルダ
61 リング部
62 センサ取付突部
70 筒状空間
71 拡張部
71A 端部開口
90 配管
H1 第1基準方向