(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】トナー用外添剤、トナーおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230915BHJP
G03G 5/04 20060101ALI20230915BHJP
G03G 5/08 20060101ALI20230915BHJP
G03G 5/147 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 371
G03G9/097 375
G03G9/097 365
G03G9/097 351
G03G5/04
G03G5/08 105
G03G5/08 301
G03G5/147
(21)【出願番号】P 2019210672
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000237075
【氏名又は名称】富士チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 篤士
(72)【発明者】
【氏名】澤木 颯太
(72)【発明者】
【氏名】福田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】向井 暁
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-001621(JP,A)
【文献】特開平10-123746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
G03G 5/04-5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均一次粒子径が10~300nmのメタチタン酸微粒子の表面に、アミノ系シランカップリング剤
とアミノ変性シリコンオイルを含む疎水化剤
で疎水化処理されてなる疎水化物を有してなる、トナー用外添剤。
【請求項2】
前記アミノ系シランカップリング剤と前記
アミノ変性シリコンオイルの質量比は、20:1~1:1である、請求項
1に記載のトナー用外添剤。
【請求項3】
前記疎水化剤の割合は、外添剤に占めるメタチタン酸微粒子の含有量の1~40質量%である、請求項1
または2に記載のトナー用外添剤。
【請求項4】
プラスに帯電している、請求項1~
3のいずれかに記載のトナー用外添剤。
【請求項5】
疎水化度が5~60%である、請求項1~
4のいずれかに記載のトナー用外添剤。
【請求項6】
少なくとも着色剤と樹脂を含む着色樹脂粒子と、請求項1~
5のいずれかに記載のトナー用外添剤とを含む、トナー。
【請求項7】
前記トナー用外添剤の割合は、トナーに占める着色樹脂粒子の含有量の0.05~2.0質量%である、請求項
6に記載のトナー。
【請求項8】
前記着色樹脂粒子は、更に、離型剤と荷電制御剤を含む、請求項
6または
7に記載のトナー。
【請求項9】
更に、数平均一次粒子径が5~20nmの小粒径無機微粒子を、追加の外添剤として含む、請求項
6~
8のいずれかに記載のトナー。
【請求項10】
更に、数平均一次粒子径が25~1000nmの大粒径無機微粒子を、追加の外添剤として含む、請求項
6~
9のいずれかに記載のトナー。
【請求項11】
正帯電性感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像手段として、請求項
6~
10のいずれかに記載のトナーが少なくとも備わった、画像形成装置。
【請求項12】
前記正帯電性感光体がアモルファスシリコン感光体である、請求項
11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記正帯電性感光体が正帯電性有機感光体である、請求項
11に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記正帯電性感光体が、保護層を表面に有してなる積層型の正帯電性有機感光体である、請求項
11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用外添剤、トナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法では、感光体表面に均一電荷を与え、その後、画像に応じた露光をすることで画像に対応した静電潜像を形成する。この静電潜像に所定の電荷を有するトナーを付着させて顕像化(現像)し、感光体上に形成されたトナー像を、必要に応じて中間転写体などを経由して、紙等の画像形成支持体へ転写し、熱などを利用して画像形成支持体上に定着させることで画像が形成される。上記画像形成方法を用いた画像形成装置として、複写機やプリンター等が挙げられる。
【0003】
上記画像形成装置に装着されて使用される上記感光体は、表面に与える均一電荷の特性の観点から、負帯電性感光体と正帯電性感光体に分類される。また、上記感光体を構成する材料の観点から、セレンやアモルファスシリコン等を用いた無機感光体と、有機材料で構成された有機感光体に分類される。
【0004】
負帯電性の有機感光体は、例えばアルミニウム製の基体上に、接着性付与や電荷の移動制御を目的とした下引き層が、必要に応じて形成され、その上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層が形成され、さらに、その上に電荷輸送層が形成された積層構造であることが一般的である。
【0005】
正帯電性の有機感光体は、高画質化を実現でき、またオゾンの生成を抑止できるため有効である。この正帯電性の有機感光体では、電荷発生層を表層に形成する必要があるため、例えばアルミニウム製の基体上に、電荷輸送層、電荷発生層の順番に積層される。また、電荷発生物質と電荷輸送物質とを混合し、基体上に単層を形成する方式もある。
【0006】
無機感光体として、セレン等の材料を使用した感光体から、アモルファスシリコンを使用した感光体が主流となっている。アモルファスシリコンは硬度が非常に高く、長寿命を達成できるため好適である。
【0007】
近年、デジタルデータが簡便に利用できることから、可変情報を多量に印刷することが求められている。単なる複写ではなく、可変情報を印刷することで価値のある印刷物を提供する、いわゆる産業用プリンターが使用されている。この場合、印字物が価値を持つため、画質が長期に亘って安定であることが必要となる。
【0008】
例えば特許文献1では、架橋重合体を含有する保護層を有する感光体を使用した場合の、高湿環境での画像流れが抑制された画像形成装置が提案されている。該画像形成装置では、潤滑剤を供給することでクリーニング効果を発揮させ、さらに滑剤除去手段を設けることで潤滑剤の残留を抑止している。
【0009】
特許文献2は、アモルファスシリコン感光体での画像流れ問題を、特定の凝集径を有する外添剤を用いることで解決した技術である。具体的には、トナー母粒子と、外添剤として導電性微粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、前記導電性微粒子は、平均一次粒子径が90nm以下であり、かつ前記トナー母粒子の表面にて平均凝集粒子径が0.5~2.0μm、BET比表面積が15m2/g以上である凝集体を形成することが記載されている。前記導電性微粒子として酸化チタンが開示されている。
【0010】
特許文献3には、非磁性一成分現像用トナーに外添させる外添剤として、結晶子径が12.0~16.0nmであり、かつ疎水化処理され、真比重が2.5~3.3g/cm3であるメタチタン酸粒子を用いることで、かぶりの発生を抑制でき、優れた色再現性を実現できる技術が示されている。また特許文献4には、トナーに外添させる外添剤として、体積平均粒子径が5nm以上30nm以下のシリカ粒子、及び、体積平均粒子径が50nm以上120nm以下で、アスペクト比が3以上10未満のシラン化合物処理されたメタチタン酸粒子の少なくとも2種類を含み、かつ前記シリカ粒子とメタチタン酸粒子それぞれの、トナー粒子に対する被覆率を設定することで、トナー画像中の白筋の発生を防止する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-114647号公報
【文献】特開2009-180890号公報
【文献】特開2016-062082号公報
【文献】特開2011-154278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1および2では、クリーニング効果を高める等により画像流れを抑制しているが、長期間にわたって良好なクリーニング効果を発揮させることは難しいと思われる。また特許文献3では、長期間にわたり画像形成装置を繰り返し使用した場合にも、優れた画像を実現できることまでは示されていない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、長期間にわたり種々の環境変動の中で画像形成装置を繰り返し使用した場合にも、優れた画質の画像を安定して形成することのできる画像形成装置の、トナーに用いられる外添剤、該外添剤を用いたトナー、および、該トナーを用いた上記画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様1は、数平均一次粒子径が10~300nmのメタチタン酸微粒子の表面に、アミノ系シランカップリング剤を含む疎水化剤を用いて作成された疎水化物を有してなる、トナー用外添剤である。
【0015】
本発明の態様2は、前記疎水化剤が、更に変性シリコンオイルを含む、態様1に記載のトナー用外添剤である。
【0016】
本発明の態様3は、前記変性シリコンオイルが、アミノ変性シリコンオイルである、態様2に記載のトナー用外添剤である。
【0017】
本発明の態様4は、前記アミノ系シランカップリング剤と前記変性シリコンオイルの質量比は、20:1~1:1である、態様2または3に記載のトナー用外添剤である。
【0018】
本発明の態様5は、前記疎水化剤の割合が、外添剤に占めるメタチタン酸微粒子の含有量の1~40質量%である、態様1~4のいずれかに記載のトナー用外添剤である。
【0019】
本発明の態様6は、プラスに帯電している、態様1~5のいずれかに記載のトナー用外添剤である。
【0020】
本発明の態様7は、疎水化度が5~60%である、態様1~6のいずれかに記載のトナー用外添剤である。
【0021】
本発明の態様8は、少なくとも着色剤と樹脂を含む着色樹脂粒子と、態様1~7のいずれかに記載のトナー用外添剤とを含む、トナーである。
【0022】
本発明の態様9は、前記トナー用外添剤の割合が、トナーに占める着色樹脂粒子の含有量の0.05~2.0質量%である、態様8に記載のトナーである。
【0023】
本発明の態様10は、前記着色樹脂粒子が、更に、離型剤と荷電制御剤を含む、態様8または9に記載のトナーである。
【0024】
本発明の態様11は、更に、数平均一次粒子径が5~20nmの小粒径無機微粒子を、追加の外添剤として含む、態様8~10のいずれかに記載のトナーである。
【0025】
本発明の態様12は、更に、数平均一次粒子径が25~1000nmの大粒径無機微粒子を、追加の外添剤として含む、態様8~11のいずれかに記載のトナーである。
【0026】
本発明の態様13は、正帯電性感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記現像手段として、態様8~12のいずれかに記載のトナーが少なくとも備わった、画像形成装置である。
【0027】
本発明の態様14は、前記正帯電性感光体がアモルファスシリコン感光体である、態様13に記載の画像形成装置である。
【0028】
本発明の態様15は、前記正帯電性感光体が正帯電性有機感光体である、態様13に記載の画像形成装置である。
【0029】
本発明の態様16は、前記正帯電性感光体が、保護層を表面に有してなる積層型の正帯電性有機感光体である、態様13に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、種々の環境変動の中で長期間にわたり画像形成装置を繰り返し使用した場合にも、優れた画質の画像を安定して形成することのできる画像形成装置の、トナーに用いられる外添剤、該外添剤を用いたトナー、および、該トナーを用いた上記画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施例における、本発明の外添剤およびトナーの一例を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
画像形成装置では、画像形成処理後、すなわち感光体上に形成されたトナー像を転写した後に、残留するトナーや紙粉等の残留物を除去し、次の画像を形成するため、感光体表面を、ウレタンブレードやファーブラシ等でクリーニングすることが行われている。画像形成装置には、該クリーニングで、上記残留物を十分に除去することが求められる。しかし画像形成時に、感光体表面に均一電荷を与えることを目的に、コロナ放電やローラー帯電装置等による帯電が行われるが、この放電時の水の存在により、感光体の表面には、前記残留物として、極微少な酸化物が形成されやすいといった問題がある。
【0033】
ところで、例えばオフィスでは、プリンター等のランニングコスト低減が求められる。該コストの低減には、部品交換等のメンテナンスのサイクルを極力長くすることが効果的である。そのためには、感光体の劣化抑制、特にはその最大要因である感光体膜摩耗の抑止が最も効果的である。摩耗を抑止するため、例えば、表面に硬度の高い保護層を形成した積層型感光体や、アモルファスシリコン感光体が用いられている。
【0034】
しかし上記の通り、感光体の表面の硬度が高い場合、上記酸化物をクリーニングで十分除去できず、感光体表面が導電性化してしまい、表面電荷が表層に拡散する、いわゆる「画像流れ」という問題がある。この問題は、画像形成装置を長期間使用し、繰り返し画像形成を行うことによって、より顕著となる。また、正帯電性有機感光体を使用した場合にも、同様に電荷の拡散問題が発生してしまう。
【0035】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて、クリーニング段階で、上記酸化物を含む残留物を十分に除去でき(以下、この効果を「高いクリーニング性」ということがある)、該残留物を起因とする画像流れを抑制すること、この高いクリーニング性を、長期間にわたり種々の環境変動の中で画像形成装置を繰り返し使用した場合であっても維持でき、その結果、優れた画質の画像を安定して形成することのできる画像形成装置を得るべく、該画像形成装置に用いられるトナー、および該トナーに用いられる外添剤について鋭意研究を行った。
【0036】
その結果、上記トナーに用いられる外添剤を、数平均一次粒子径が10~300nmのメタチタン酸微粒子の表面に、少なくともアミノ系シランカップリング剤を含む疎水化剤を用いて作成された疎水化物を有するものとすれば、感光体表面の酸化物生成が抑えられて、上述した効果を奏することを見出した。特に感光体として、長寿命化に対応した、アモルファスシリコン感光体または硬質の保護層を有する有機感光体等を使用した画像形成装置において、長期間にわたり種々の環境変動の中で画像形成装置を繰り返し使用した場合であっても、高いクリーニング性を維持でき、長期間にわたり優れた画質の画像を形成できることをまず見出した。
【0037】
以下、本発明のトナー用外添剤、トナーおよび画像形成装置について、順に説明する。
【0038】
(本発明の外添剤)
〔メタチタン酸微粒子〕
まず、本発明のトナー用外添剤は、母粒子として、数平均一次粒子径が10~300nmのメタチタン酸微粒子を用いる。本発明では、母粒子としてメタチタン酸微粒子を用いることで、感光体表面に形成される酸化物の生成を抑制することができ、画像不良の発生を抑制できると考えられる。その理由として、明確ではないが次のように考えられる。
【0039】
すなわち、一般的に酸化チタンは環境変動による影響を抑えて状態を安定化させる機能があるといわれている。いわゆる酸化チタンに存在する空軌道により、電子の授受が容易となり、その結果、電荷の空気中放散等を抑制、あるいはトラップ機能が発揮され、環境変動による影響を抑えて状態を安定化することができるものと推察される。
【0040】
しかしながら、以下に説明する通り、酸化チタンは、より厳しい環境変動ではその効果を十分に発揮することができないと考えられる。特に、正帯電性有機感光体を使用する場合、表面近傍に電荷発生層が存在し、電子が発生している。そのため、電荷のリークがより起こりやすい状況となっており、このような状況において、酸化チタンではその変動を抑制する機能が不十分であると推察される。これに対してメタチタン酸は、結晶性が若干ひずんだ結晶構造となっており、その結果、電子の授受機能が十分作用すると推察される。
【0041】
さらに、歪んだ結晶構造により、帯電時に生成するオゾン等の過酸化物を容易にトラップすることができ、その結果、例えば有機感光体の表面において、酸化物生成の抑制効果が十分発揮されると考えられる。
【0042】
本発明のメタチタン酸微粒子は、数平均一次粒子径が10~300nmである。数平均一次粒子径は、好ましくは25nm以上、より好ましくは50nm以上であり、好ましくは175nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは120nm未満である。数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡により観察された粒子100個のフェレ水平方向粒子径の平均値を示す。フェレ水平方向粒子径とは、x-y平面上にある粒子において、当該粒子に外接する長方形を考えた場合、x軸に対して平行な辺の長さを指す。
【0043】
〔メタチタン酸微粒子の製造〕
本発明では、前記メタチタン酸微粒子の製造方法まで特に限定されない。例えば硫酸チタニルを加水分解する方法で製造することができる。また、メタチタン酸微粒子の数平均一次粒子径を10~300nmの範囲内に制御する手段として気流式粉砕が挙げられる。
【0044】
〔疎水化剤〕
本発明の外添剤は、上記メタチタン酸微粒子の表面に、少なくともアミノ系シランカップリング剤を含む疎水化剤を用いて作成された疎水化物を有する。上記メタチタン酸微粒子がアミノ系シランカップリング剤で処理されていることにより、酸化物の形成が十分に抑制されると考えられる。また、アミノ系シランカップリング剤を用いることによって、優れた画質の画像を形成することのできる正帯電性感光体に適合した、プラス(正)帯電の外添剤とトナーを実現できる。
【0045】
前記アミノ系シランカップリング剤として、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのうちの1種あるいは2種以上を用いることができる。
【0046】
前記疎水化剤は、更に変性シリコンオイルを含んでいてもよい。該変性シリコンオイルを併せて用いることによって、帯電立ち上がり性の向上効果を発揮させることができる。前記変性シリコンオイルとして、アミノ変性シリコンオイルを用いることが好ましい。該アミノ変性シリコンオイルを、前記アミノ系シランカップリング剤と共に用いることにより、外添剤およびトナーをプラスに十分帯電させることができる。アミノ変性シリコンオイルとして、例えばアミノ変性オルガノポリシロキサン等の汎用品、例えばジメチル(アミノエチルアミノプロピル)メチルシロキサン、ジメチル(アミノエチルアミノプロピル)エチルシロキサン、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサン、ジメチル(アミノエチルアミノプロピル)メチルシクロシロキサン等の重合体や共重合体等が挙げられる。
【0047】
前記疎水化剤の割合は、本発明の外添剤に占めるメタチタン酸微粒子の含有量に対して1~40質量%であることが好ましい。前記疎水化剤の割合を、メタチタン酸微粒子の含有量に対して1質量%以上とすることで、上述した効果をより高めることができる。前記疎水化剤の割合は、メタチタン酸微粒子の含有量に対して、5質量%以上とすることがより好ましく、さらに好ましくは8質量%以上である。一方、前記疎水化剤の割合は、メタチタン酸微粒子の含有量に対して、40質量%以下に抑えることで過剰な被覆を防止することができる。前記疎水化剤の割合は、メタチタン酸微粒子の含有量に対して、15質量%以下とすることがより好ましい。複数種類の疎水化剤を用いる場合、上記割合は、複数種類の疎水化剤の合計量を用いて求められる。
【0048】
前記アミノ系シランカップリング剤と前記変性シリコンオイルを併せて用いる場合、前記アミノ系シランカップリング剤と前記変性シリコンオイルの質量比は20:1~1:1であることが好ましい。アミノ系シランカップリング剤を、質量比で、変性シリコンオイルの1倍以上とすることによって、前述したアミノ系シランカップリング剤の効果を十分に発揮させることができる。好ましくはアミノ系シランカップリング剤を、質量比で、変性シリコンオイルの1.5倍以上とするのがよい。一方、前述した変性シリコンオイルの効果を発揮させる観点から、アミノ系シランカップリング剤を、質量比で、変性シリコンオイルの20倍以下とすることが好ましく、より好ましくは10倍以下、更に好ましくは5倍以下、より更に好ましくは3倍以下である。
【0049】
本発明の外添剤は、好ましくはプラスに帯電している。また本発明の外添剤は、好ましくは疎水化度が5~60%である。
【0050】
〔本発明の外添剤の製造〕
本発明では、本発明の外添剤の製造方法まで限定されない。例えば、メタチタン酸微粒子を含む溶液を撹拌しながら、疎水化剤を滴下または噴霧して、メタチタン酸微粒子の表面処理を行う方法、疎水化剤を有機溶媒に溶解して当該有機溶媒を攪拌しながら、メタチタン酸微粒子を加えて表面処理を行う方法等が挙げられる。なお、前者の方法では、疎水化剤を有機溶媒等で希釈して用いてもよい。前記疎水化剤を添加後は、60~100℃で0.5~2.0時間保持することがあげられる。その後、ろ過により固液分離し、乾燥することによって、疎水化剤を用いて作製された疎水化物を有してなるメタチタン酸微粒子、すなわち本発明の外添剤を得ることができる。
【0051】
(トナー)
(1)本発明の外添剤
本発明のトナーは、本発明の外添剤が、少なくとも着色剤と樹脂とを含む着色樹脂粒子(以下、単に「着色樹脂粒子」ということがある)に、外添されたものとする。これによって、本発明のトナーは、上述した通り、感光体のクリーニング時に除去されやすく、長期間にわたり良好なクリーニング性を維持でき、画質に優れた画像を安定して得ることができる。
【0052】
トナーにおける本発明の外添剤の割合は、着色樹脂粒子の含有量に対して0.05~2.0質量%であることが好ましい。前記外添剤の割合を、0.05質量%以上とすることで、上述した外添剤の効果を十分に発揮できるため好ましい。前記外添剤の割合は、より好ましくは0.1質量%以上である。一方、前記外添剤が過剰に含まれていても効果が飽和するため、その上限を2.0質量%とすることが好ましい。前記外添剤の割合は、より好ましくは1.5質量%以下である。
【0053】
(2)着色樹脂粒子
着色樹脂粒子は、少なくとも着色剤と樹脂とを含み、必要に応じて更に、内添剤として、離型剤(ワックス)や荷電制御剤を含みうる。以下、各成分について説明する。
【0054】
〔樹脂〕
本発明のトナーを構成するトナー粒子に含有される樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の樹脂が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いるかまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、スチレン-アクリル樹脂とポリエステル樹脂のうちの1以上が、低温定着性に優れたトナーが得られるため好ましい。樹脂は、ガラス転移点が35~70℃であることが好ましく、より好ましくは45~60℃である。また、高化式フローテスターによる軟化点(T1/2)が80~140℃であることが好ましく、より好ましくは90~135℃である。
【0055】
スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂及びこれらの共重合樹脂を結着樹脂として使用する場合、質量平均分子量Mwが20,000以上100,000以下、数平均分子量Mnが2,000以上30,000以下の範囲のものを使用することが好ましい。他方、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用する場合は、質量平均分子量Mwが5,000以上40,000以下、数平均分子量Mnが2,000以上10,000以下の範囲のものを使用することが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度は、40℃以上80℃以下の範囲にあることが好ましい。ガラス転移温度が上記範囲であることにより、最低定着温度が維持され易くなる。また、樹脂の軟化点(高化式フローテスターによるT1/2)は105~160℃、好ましくは110℃~140℃である。
【0056】
〔着色剤〕
本発明に係るトナー粒子に含まれる着色剤は、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
【0057】
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができる。具体的には、有機顔料としては例えばC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15;3、同60、同76などを挙げることができ、染料としては例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種を単独で用いるかまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
着色剤の含有量は、上記樹脂の含有量に対して1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは2~8質量%である。
【0059】
前記着色樹脂粒子は、内添剤として、離型剤(ワックス)や荷電制御剤が更に含まれていてもよい。
【0060】
〔離型剤〕
離型剤として、公知のワックスを用いることができる。例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックスなどを用いることができる。これらのうち1種を単独で用いるかまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。離型剤の含有量は、上記樹脂に対して2~20質量%であることが好ましく、より好ましくは3~10質量%である。
【0061】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤として、公知の荷電制御剤を用いることができる。例えば、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体、カリックスアレーン化合物などを用いることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。荷電制御剤の含有量は、上記樹脂に対して0.1~3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0062】
さらに、樹脂自体に置換基を保有させ、帯電付与能を持たせた樹脂型電荷制御剤(荷電制御樹脂)を使用してもよい。
【0063】
(着色樹脂粒子の製造方法)
当該樹脂粒子を製造する方法としては、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、エステル伸長重合法、分散重合法などが挙げられる。さらには、着色剤と樹脂などを混錬粉砕した樹脂粒子を核とし、その表面に耐熱性などの機能を有する被覆層を形成したものや、懸濁重合で形成した樹脂粒子に被覆材のモノマーを添加し被覆層を形成したものや、さらには重合体微粒子を凝集させた粒子を核としその周囲にさらに別な樹脂粒子で被覆層を形成させたものなど、いわゆるマイクロカプセル型トナーでもよい。
【0064】
本発明の外添剤等を外添した着色樹脂粒子(トナー粒子)のサイズは、体積平均粒子径が3~15μmであることが好ましく、より好ましくは5~10μmである。このサイズは、外添剤を添加前の着色樹脂粒子(トナー母粒子)とほぼ同じである。
【0065】
(3)追加の外添剤
本発明のトナーは、外添剤が、本発明の外添剤のみの場合の他、本発明の外添剤に加えて更に、下記の様な追加の外添剤を用いることができる。
【0066】
(小粒径無機微粒子)
本発明のトナーには、帯電性や流動性の付与の観点から、本発明の外添剤と共に、数平均一次粒子径が5~20nmの小粒径無機微粒子が、追加の外添剤として外添されていることが好ましい。
【0067】
上記小粒径無機微粒子として、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタムなどの各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウムなどの各種窒化物、ホウ化ジルコニウムなどのホウ化物、酸化鉄、酸化クロム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカなどの各種酸化物、シリカ-チタニア-アルミナ、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムなどの複合酸化物、二硫化モリブデンなどの硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素などのフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの各種金属石鹸、滑石、ベントナイトなどの各種の非磁性無機物などからなる微粒子が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
これらの中でも特に、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア-アルミナの複合酸化物で形成された小粒径無機微粒子のうちの、1種または2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0069】
また、これらの小粒径無機微粒子は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコンオイル、シリコンワニスなどの従来から使用されている疎水化剤、フッ素系シランカップリング剤またはフッ素系シリコンオイル、アミノ基/第4級アンモニウム塩含有カップリング剤、変性シリコンオイルなどの処理剤で公知の方法により表面処理されていることが好ましい。
【0070】
疎水化剤として例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びビニルトリアセトキシシラン等のシランカップリング剤;ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシリコンオイル等のシリコンオイル;等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。さらにアミン系の疎水化剤として、本発明の外添剤の製造に用いられる前述のアミノ系シランカップリング剤、アミノ変性シリコンオイルを用いることができる。
【0071】
トナーに小粒径無機微粒子を外添させる場合、小粒径無機微粒子の割合は、着色樹脂粒子の含有量に対して0.1~2.0質量%とすることが好ましい。上述した小粒径無機微粒子の効果である、流動性等の付与効果を十分発揮させる観点から、0.1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。一方、小粒径無機微粒子が過剰に存在することで、感光体等への付着による画像欠陥等を抑制する観点から、2.0質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。複数種類の小粒径無機微粒子を用いる場合、上記割合は、複数種類の小粒径無機微粒子の合計量を用いて求められる。
【0072】
(大粒径無機微粒子)
さらに、少なくとも着色剤と樹脂とからなる樹脂微粒子に、数平均一次粒子径が25~1000nmの大粒径無機微粒子を添加することによって、小粒径無機微粒子の着色樹脂粒子表面への埋没を抑制できる。この大粒径無機微粒子としては、前述の小粒径無機微粒子と同様の材料を使用することができる。
【0073】
また、この大粒径無機微粒子として、100nmを超える微粒子は、研磨性があり、感光体表面を研磨し、感光体をクリーニングする効果を期待することもできる。
【0074】
なお、この大粒径無機微粒子を外添させる場合、その割合は、着色樹脂粒子の含有量に対して0.1~2.0質量%とすることが好ましい。さらに好ましくは0.2~1.0質量%である。大粒径無機微粒子の割合を0.1質量%以上とすることで、該粒子の効果を発揮させることができる。また、大粒径無機微粒子の割合を2.0質量%以下とすることで、過剰な大粒径無機微粒子による感光体の損傷、その結果生じうる画像欠陥を抑制することができる。
【0075】
本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダ樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリアなど用いてもよい。前記被覆剤を形成する樹脂やバインダ樹脂として、従来から用いられている樹脂を使用することができる。キャリアの体積平均粒子径は20~100μmであることが好ましく、さらに好ましくは25~80μmである。
【0076】
(トナーの製造方法)
本発明のトナーは、上記着色樹脂粒子に対し、本発明の外添剤、必要に応じてさらに追加の外添剤として、上述した小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子等を添加してトナーを得ることができる。これらを混合させる方法として、ヘンシェルミキサー、V型混合機などの公知の混合装置を使用することができる。
【0077】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、正帯電性感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段を少なくとも有し、前記現像手段として、前述した本発明の外添剤が外添されたトナーが少なくとも備わっている。
【0078】
本発明の画像形成装置は、正帯電性感光体を有する。正帯電性感光体として、アモルファスシリコン感光体、正帯電性有機感光体、少なくとも保護層を表面に有してなる積層型の正帯電性有機感光体が好ましく用いられる。これらの感光体について、以下説明する。
【0079】
(アモルファスシリコン感光体)
アモルファスシリコン(a-Si)感光体としては、例えばドラム状などの所定の形状に形成された導電性基体の表面に、アモルファスシリコン感光層(a-Si感光層)が形成されたものが挙げられる。特に、厚さが30μm以下である薄膜型のa-Si感光層を有するものが、生産性に優れる上、解像度の高い画像を形成できるため好ましい。a-Si感光層は、実際に感光層として機能する、単層もしくは2層以上の層に加えて、下記に詳述するキャリア阻止層や表面保護層などを有していてもよい。ただし、複数の層を有する場合は、そのトータルの層の厚さが30μm以下であることが好ましい。また、a-Si感光層として、Hやハロゲン元素を含有させたものや、C、N、O等の元素を含有させたものを、導電性基体の表面に形成させてもよい。すなわちa-Si感光層を構成する材料として、a-Siの他、a-SiC、a-SiO、a-SiONなどが挙げられる。
【0080】
〔キャリア阻止層〕
a-Si感光層と導電性基体との間にキャリア阻止層を介在させてもよい。このようなキャリア阻止層としては、a-SiC等の無機絶縁層や、ポリエチレンテレフタレート等の有機絶縁層等を用いることができ、その厚さは、0.01~5μmの範囲内とすることができる。
【0081】
〔表面保護層〕
表面保護層は、従来使用されている材料で構成されていればよく、有機または無機の絶縁材料等があげられ、例えばa-SiにC、O、N等が添加された無機絶縁層が好ましく用いられる。
【0082】
(正帯電性有機感光体)
正帯電性有機感光体は、導電性基体表面に、必要に応じて下引き層が形成され、さらにその上に、電荷輸送層と電荷発生層を順に積層してなる感光層が形成されている。または、導電性基体表面に、必要に応じて下引き層が形成され、さらにその上に、電荷発生物質と電荷輸送物質が同一層中に混在した感光層が形成されたものであってもよい。
【0083】
導電性基体としては、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属板、紙やプラスチックフィルム等の可撓性を有する支持体表面にアルミニウム、パラジウム、金等の金属層をラミネートあるいは蒸着によって設けたもの、紙やプラスチックフィルム等の可撓性を有する支持体表面に導電性ポリマー、酸化インジウム、酸化錫等の導電性化合物を含有する層を塗布もしくは蒸着で設けたもの等を使用できる。
【0084】
必要に応じて形成される下引き層は、導電性基体と感光層の接着性を補う必要がある場合に使用される。下引き層は従来使用されている材料で構成されていればよく、その膜厚は0.05~20μmとすることができる。
【0085】
電荷輸送層は、電荷発生層で発生した電荷を輸送する電荷輸送物質を含有する層である。電荷輸送物質としては特に限定されるものではなく、従来使用されているものを用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、5~50μm、好ましくは10~30μmとすることができる。
【0086】
電荷発生層は、電荷発生物質を含有する層である。電荷発生物質は特に限定されず、従来使用されているものを用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.5~15μm、好ましくは0.7~10μmとすることができる。
【0087】
電荷発生物質と電荷輸送物質が混在した感光層を形成する場合は、前記の電荷発生物質及び電荷輸送物質を樹脂に分散あるいは溶解させて形成される。ここで使用される樹脂として、従来使用されているものを用いることができる。なお、電荷発生物質と電荷輸送物質が混在した感光層の膜厚は、5~60μm、好ましくは10~40μmとすることができる。
【0088】
(保護層)
正帯電性有機感光体として、少なくとも保護層を表面に有してなる積層型の正帯電性有機感光体を用いることもできる。上記保護層を有することで感光体の耐久性がより高まる。前述のとおり、耐久性の高い感光体はクリーニング性が低下しやすいが、本発明の外添剤を含むトナーを用いることにより、研磨効果が発揮されてフィルミングの発生が防止され、結果として、従来よりも長期間にわたって安定的に画像を出力することができる。
【0089】
前記保護層は、従来用いられているものであればよく、例えば、バインダ樹脂として熱または光硬化性樹脂、必要に応じて、金属酸化物微粒子、滑剤粒子、酸化防止剤、前記バインダ樹脂以外の樹脂等を含むものを用いることができる。保護層の層厚は、0.2~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~5μmである。
【0090】
(金属酸化物微粒子)
前記保護層には、より高い耐久性を付与する目的で、例えば数平均一次粒子径が1~300nmの、アルミナ(Al2O3)、酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)等の金属酸化物微粒子が含有されていてもよい。
【0091】
本発明の画像形成装置は、前記正帯電性感光体の他、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、およびクリーニング手段を少なくとも有し、現像手段として、本発明のトナーが少なくとも備わっている。前記帯電手段、露光手段、本発明のトナー以外の、マグロールやトナー供給等の現像手段、転写手段、およびクリーニング手段は、従来から知られている手段を用いることができる。
【0092】
上記画像形成装置を用いた画像形成方法として、例えば前記感光体の表面に均一電荷を与え、その後、画像に応じた露光をすることで画像に対応した静電潜像を形成する。この静電潜像に所定の電荷を有するトナーを付着させて顕像化(現像)し、感光体上に形成されたトナー像を、必要に応じて中間転写体などを経由して、紙等の画像形成支持体へ転写し、熱などを利用し画像形成支持体上に定着させることができる。本発明のトナーは、この様な静電潜像現像用に好ましく用いられ、また、正帯電性感光体とともに用いられるプラス帯電の、すなわち正帯電性のトナーとして好ましく用いられる。
【0093】
前記転写後は、感光体表面の、転写されなかったトナーを除電し、クリーニングにより除去する。本発明によれば、このクリーニング時に、本発明の外添剤を添加したトナーは、感光体から除去されやすく、よって酸化物等の残存物が形成されにくく、その結果、雰囲気中の水分量が変化する等の種々の環境変動の中においても、長期に渡って、優れた画質の画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0095】
本実施例において、評価項目である、メタチタン酸微粒子の数平均一次粒子径、外添剤の疎水化度、帯電量は、次の通り測定した。
【0096】
(数平均一次粒子径)
メタチタン酸粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)にて10000倍の拡大率で撮影し、その写真上で100個の粒子を対象に画像解析することによって、フェレ水平方向粒子径の平均値、すなわちフェレ水平方向平均粒子径を求め、これを数平均一次粒子径とした。
【0097】
(疎水化度)
エタノール/水の体積比を0/100~100/0の間において5刻みで変化させた、複数のエタノール-水混合液を夫々50mL準備した。マグネティックスターラーで撹拌しながら、疎水化処理されたメタチタン酸微粒子を0.20g加え、5分間で全量湿潤したときの混合液のエタノール体積比率を、その試料の疎水化度とした。なお、環境安定性を勘案すれば、疎水化度は5%以上とすることが好ましい。疎水化度を5%以上とすることによって、特に高温高湿下での長期保存において、トナーの電荷のリークを抑えて帯電量の低下を抑制することができる。前記疎水化度の上限は、例えば60%とすることができる。
【0098】
(帯電量)
20mLのガラス容器に鉄粉キャリア19.5gと外添剤0.5gを入れ、20℃で50%RHの常温常湿環境に24時間保存した。ガラス容器を取出した後に蓋をし、ペイントシェーカーにて30分間振とうした。振とう後、混合サンプル1gを採取し、ブローオフ帯電量測定装置(トレック・ジャパン株式会社製 MODEL 230TO)で10秒間窒素ブローした後に測定して得られた値を、帯電量とした。
【0099】
[第1の画像形成装置を用いた評価]
(メタチタン酸微粒子の作製)
硫酸チタニル水溶液(硫酸チタニル濃度10質量%)を130℃に加熱し、熱加水分解させ、メタチタン酸の硫酸水溶液スラリーを得た。得られたメタチタン酸の硫酸水溶液スラリーをろ過により固液分離した。そして、水洗して得られたろ過ケーキを120℃の温度で40時間乾燥させた。得られた乾燥品をハンマーミルで粉砕して、メタチタン酸微粒子を得た。ここで上記加熱条件等を調整し、種々の数平均一次粒子径のメタチタン酸微粒子を得た。得られたメタチタン酸微粒子を表1に示す。
【0100】
比較例微粒子として、酸化チタン微粒子を次の通り調整した。すなわち硫酸チタニル水溶液(硫酸チタニル濃度10質量%)を130℃に加熱し、熱加水分解させ、メタチタン酸の硫酸水溶液スラリーを得た。得られたメタチタン酸の硫酸水溶液スラリーをろ過により固液分離した。そして、水洗して得られたろ過ケーキを120℃の温度で40時間乾燥させ、更に500℃の温度で4時間乾燥させた。得られた乾燥品をハンマーミルで粉砕し、数平均一次粒子径が30nmの酸化チタン微粒子を得た。前記数平均一次粒子径は、前述の方法で測定した。
【0101】
【0102】
(本発明の外添剤の製造)
上記各種のメタチタン酸微粒子に対し、表2に示す各種の疎水化剤で処理(疎水化処理)した。詳細には次の通りである。
【0103】
まず表2の本発明外添剤1~12は次のようにして得た。すなわち、前記メタチタン酸微粒子を水中に固形分濃度10質量%で分散したスラリーに、疎水化剤として、表2に示すアミノ系シランカップリング剤を、メタチタン酸微粒子の含有量に対し、表2に示す割合となるように添加し、80℃に加熱した。80℃に達してから該温度で1時間保持した後、ろ過により固液分離し、乾燥して、疎水化剤を用いて作成された疎水化物を有してなるメタチタン酸微粒子、すなわち本発明の外添剤(本発明外添剤1~12)を得た。
【0104】
表2において、3-アミノプロピルトリエトキシシランとして、信越化学工業株式会社製アミノ系シランカップリング剤KBE-903を使用し、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとして、KBM-603を使用した。
【0105】
また、表2の本発明外添剤13~15は次のようにして得た。すなわち、前記メタチタン酸微粒子を水中に固形分濃度10質量%で分散したスラリーに、疎水化剤として、前記アミノ系シランカップリング剤と共に、アミノ変性シリコンオイルを添加した。この場合、前記アミノ系シランカップリング剤は、前述の通りスラリーに添加し、固液分離した後、乾燥前のろ過ケーキに、アミノ変性シリコンオイルをニーダーで練り込んだ。詳細には、アミノ変性シリコンオイルとして、信越化学工業株式会社製アミノ変性シリコンオイルKF-862(主成分;アミノ変性オルガノポリシロキサン)を、メタチタン酸微粒子の含有量に対し、表2に示す割合となるように添加し、加圧ニーダーを使用し、常温下1時間撹拌し、表面処理を行って得た。
【0106】
(比較例の外添剤の製造)
前記酸化チタン微粒子に対し、本発明外添剤1と同様に、疎水化剤としてアミノ系シランカップリング剤で表面処理を行い、比較1の外添剤を得た。また、前記酸化チタン微粒子に表面処理を施さず、そのまま使用したものを、比較2の外添剤とした。
【0107】
得られた外添剤の疎水化度および帯電量を、前述の通り測定した。その結果を表2に併記する。
【0108】
【0109】
(着色樹脂粒子の製造)
トナーに用いる着色樹脂粒子を製造した。樹脂、着色剤、離型剤および荷電制御剤として、それぞれ表3に示す種類のものを、表3に示す量となるよう秤量し、乾式予備混合した後、二軸押し出し機にて溶融混錬し、ついで機械式粉砕機にて粉砕、寄留式分級機にて分級し、体積平均粒子径が表3に示すサイズの着色樹脂粒子(着色樹脂粒子No.1~5)を得た。
【0110】
表3において、スチレン-アクリル樹脂は、Tg=56℃、軟化点=126℃、ポリエステル樹脂は、Tg=55℃、軟化点=120℃である。カーボンブラックとして、キャボット製のRaven330を用いた。表3のパラフィンワックスは融点98℃である。また、4級アミン系荷電制御剤として、保土谷化学製のTP-415を用い、アゾ系鉄錯体として、保土谷化学製のT-77を用いた。
【0111】
【0112】
(トナーの製造)
上記の通り得られた着色樹脂粒子と、表2の本発明外添剤1~15、比較外添剤1、2と、表4に示す追加の外添剤(小粒径無機微粒子、大粒径無機微粒子)とを、表4に示す割合(いずれも着色樹脂粒子に対する割合)で、ヘンシェルミキサーにて混合し、トナー(本発明トナー1~18、ならびに比較トナー1~10)を得た。小粒径無機微粒子として、日本アエロジル社製の疎水性シリカRA-200H(数平均一次粒子径が12nm)、日本アエロジル社製のRX200(数平均一次粒子径が12nm)を用いた。また、大粒径無機微粒子として、日本アエロジル社製のNA-50H(数平均一次粒子径が30nm)、日本アエロジル社製のNAX-50(数平均一次粒子径が30nm)を用いた。
得られた本発明トナーの一例として、走査型電子顕微鏡で観察した顕微鏡写真(倍率5,000倍)を
図1に示す。
図1において、トナー母粒子の表面に、本発明の外添剤が均一に分散していることがわかる。
【0113】
【0114】
(トナーの特性評価)
本発明トナー1~15及び比較トナー1、2を、第1の画像形成装置として、アモルファスシリコン感光体を具備する複合機(京セラドキュメントソリューションズ製、TASKalfa 620(62枚機))に用い、高温高湿環境(温度:35℃、相対湿度80%RH)下、5%の画素率にて間欠モードにて30万枚印字し、30万枚目の印刷物の画像濃度とカブリを評価した。前記画像濃度は、べた黒画像を10か所、反射濃度を測定し、紙の反射濃度を差し引いた画像濃度の平均値であり、この画像濃度が1.20を下回った場合、実用性がないとして不合格、上記濃度が1.20以上の場合を実用性があるとして合格と判断した。前記カブリは、白紙部分の10か所の反射濃度を測定し、紙の反射濃度を差し引いた画像濃度の平均値である。このカブリ濃度が0.005未満であれば実用レベルであるとして合格、カブリ濃度が、0.005以上であれば実用レベルでないとして不合格と判断した。
【0115】
また、30万枚印字後さらに1昼夜放置後に印刷した1枚目の印刷物の、画像濃度、カブリ、および画質として画像流れの有無を評価した。前記画像流れの評価は、30%ハーフトーン画像を印字し、そのハーフトーンの再現性を目視で判定。ハーフトーン上にムラが発生した場合を画像流れ有りと判定し、ハーフトーン上にムラが生じなかった場合を画像流れ無しと判定した。これらの結果を表5に示す。
【0116】
なお、前記「一昼夜放置」は、画像流れ(画像欠陥)の有無を評価するにあたり、必要な操作である。前述の通り、硬度の高い感光体は研磨性が低く、繰り返し使用により、感光体表面に酸化物被膜が形成され易い。酸化物被膜が空気中の水分を吸湿し、絶縁性を有していた感光体の表面が導電性を有し、感光体表面に形成された電荷が拡散してしまうことが原因で、画像流れ(画像欠陥)が発生しやすい。本評価では、この画像流れの有無を評価するため、「一昼夜放置」の操作を行って吸湿を促す。
【0117】
【0118】
表5の結果から、本発明のトナーは長期に渡る使用であっても、画像濃度、カブリがなく、また、画像流れの発生がなく、良好な画像が長期に渡って安定して得られることがわかる。
【0119】
[第2の画像形成装置を用いた評価]
第2の画像形成装置として、保護層として多官能反応性を有する電荷輸送物質を用い、架橋構造にて表面層を形成した積層型有機感光体を使用する富士ゼロックス製Color 1000 Press(100枚機)を使用した。この画像形成装置において、表6に示すトナーを用いて、高温高湿環境(温度:35℃、相対湿度80%RH)下、5%の画素率にて間欠モードにて80万枚印字し、80万枚目の印刷物の画像濃度とカブリを評価した。また、80万枚印字後さらに1昼夜放置後に印刷した1枚目の印刷物の、画像濃度、カブリ、および画質(画像流れの有無)を評価した。その結果を表6に示す。
【0120】
【0121】
表6の結果から、本発明のトナーは、積層型有機感光体を用いた画像形成装置においても、長期に渡る使用において、画像濃度、カブリがなく、また、画像流れの発生もなく、良好な画像を長期に渡り安定して得ることができた。これに対して、比較例のトナーは、積層型有機感光体を用いた画像形成装置の長期に渡る使用において、画像濃度、カブリ、および画像流れが発生し、良好な画像を長期に渡って得ることができなかった。
【0122】
[第3の画像形成装置を用いた評価]
第3の画像形成装置として、正帯電性有機感光体を使用するブラザー工業社製フルカラープリンターHL-L9310CDW(31枚機)を使用した。この画像形成装置において、本発明トナー1(黒)、本発明トナー22(シアン)、本発明トナー23(マゼンタ)および本発明トナー24(イエロー)を組み合わせて使用した。また、比較トナー1と比較トナー5~7の組み合わせ、比較トナー1と比較トナー8~10の組み合わせについても使用した。フルカラーでイエロー、マゼンタ、シアン、黒をそれぞれが5%画素となるような評価パターンを使用し、33℃、80%RHの高温高湿条件にて1枚間欠印字を30,000枚実施し、初期と3万枚後の画像濃度、カブリを評価した。また、3万枚印字後さらに1昼夜放置後に印刷した1枚目の印刷物の、画像濃度、カブリ、画質(画像流れの有無)を評価した。その結果を表7に示す。なお、画像濃度はベタ黒画像の濃度を測定した。
【0123】
【0124】
表7の結果から、本発明のトナーは複数のトナーを併せて使用する場合であっても、長期に渡る使用において、画像濃度、カブリがなく、また、画像流れの発生がなく、良好な画像を長期に渡って得ることができた。また、本発明のトナーを使用した実験の結果では、初期から3万枚後の間で、カラー画像の色域の変化がほとんどない結果となった。これに対して比較トナーを使用した場合は、いずれも、色域の変化があり、フルカラー画像の品質が大きく低下した。