(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】制御盤消火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20230915BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20230915BHJP
A62C 37/38 20060101ALI20230915BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A62C3/00 E
A62C3/16 C
A62C37/38
G08B17/00 J
(21)【出願番号】P 2019222607
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】増沢 一浩
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-087851(JP,U)
【文献】特公昭54-036797(JP,B2)
【文献】特開平11-076445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/00,27/00-99/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象とする制御盤における盤内の火災を検知して消火する制御盤消火システムに於いて、
空調装置から供給される冷却空気を盤内に導入する盤下部の空調導入口と盤内の空気を外部に排出する盤上部の空調排出口の各々に設けられて開閉駆動される空調開閉装置と、
盤上部に配置され、盤内から吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知して火災検知信号を発信する高感度煙検知器と、
前記高感度煙検知器から排出された空気を盤下部から盤内に戻して還流させる還流配管と、
盤下部に配置され、盤内に消火ガスを放出して消火する消火装置と、
前記高感度煙検知器からの火災検知信号を受信した場合に、前記空調開閉装置を閉鎖駆動して盤内を密閉状態とし、前記消火装置から消火ガスを盤内に放出させ消火する制御装置と、
を設けたことを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御盤消火システムに於いて、
前記制御装置は、消火ガスを盤内に放出させると共に、消火ガスを含む空気を前記高感度煙検知器から前記還流配管を経由して盤内に戻して循環させることを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御盤消火システムに於いて、
前記制御装置は、前記空調導入口の空調開閉装置を閉鎖駆動した状態で前記消火装置を起動し、前記消火装置の起動から所定時間を経過した後に、前記空調排出口の空調開閉装置を閉鎖駆動させることを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の制御盤消火システムに於いて、
前記消火装置は、
前記消火ガスを充填したガスボンベと、
開放駆動により前記ガスボンベに充填されている消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁と、
を備えたことを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の制御盤消火システムに於いて、
前記消火装置は、
外部から盤内に引き込まれた消火ガス供給配管と、
開放駆動により前記消火ガス供給配管を介して消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁と、
を備えたことを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の制御盤消火システムに於いて、
前記制御装置は、外部に設けた監視盤に、前記高感度煙検知器による火災検知を示す火災
検知通報信号を送信して火災発生を報知させる
ことを特徴とする制御盤消火システム。
【請求項7】
請求項4又は5記載の制御盤消火システムに於いて、
前記制御装置は、外部に設けた監視盤に、前記消火ガス放出弁の開放駆動による消火起動を示す消火起動通報信号を送信して消火起動を報知させることを特徴とする制御盤消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセンター等に設置されるサーバーラック等の制御盤内で発生する火災を検知して消火する制御盤消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバーラック等のような複数配置された制御盤内で発生する電気機器の異常通電等による発熱、発煙、発火などにより室内で発生した火災を消火する制御盤消火システムが設けられている。
【0003】
従来の制御盤消火システムは、複数の制御盤にサンプリングチューブを配管し、ポンプで吸引したエアーの中の煙粒子を超高感度煙検知器で検知し、発煙を捉えて火災検知信号を発信し、部屋全体に二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを放出して火災を消火するようにしている。
【0004】
しかしながら、このような従来の制御盤消火システムにあっては、火災検知により部屋全体に消火ガスを放出するが、空調装置からの冷却空気を床下からサーバーラック内に通して天井側に通過させている冷却方式の場合、火災が発生したラック内に消火に必要な量の消火ガスが入ることを保証できず、また室内全体に消火ガスを放出するため、放出後に室内に人が入ることができず、その後の適切な対応が行えないといった問題がある。
【0005】
この問題を解決するため、複数の制御盤に配管したサンプリングチューブにより吸引したエアーの中の煙粒子を検知した超高感度煙検知器が火災検知信号を発信したときに、全てのサーバーラックの換気を停止してラック内を密閉状態とし、この密封状態でサーバーラック内に設けている火災感知器から出力された火災発報信号に基づいて火災が発生したサーバーラックを特定し、特定したサーバーラック内に配置している消火装置を起動して消火させる制御盤消火システムが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-078807号公報
【文献】特開2011-078468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の制御盤消火システムにあっては、サーバーラック内の空気をサンプリングチューブで超高感度煙検知器で吸引して全体的な火災を監視しており、超高感度煙検知器で火災を検知した場合に全てのサーバーラックの換気装置を閉鎖して密閉状態とし、この状態でサーバーラックの各々に設けている火災感知器の何れかの火災発報信号から火災が発生しているサーバーラックを特定して消火装置を起動しており、超高感度煙検知器で火災を検知してからサーバーラックを特定して消火装置を起動するまでの時間遅れが大きくなり、初期消火に問題を残している。
【0008】
また、超高感度煙検知器で火災を検知した場合に全てのサーバーラックの換気を停止して密閉状態とするため、正常に動作しているサーバーラックの冷却機能が失われる。特に、空調装置からの冷却空気を床下からラック内に導入して天井側に排出している冷却構造を備えたサーバーラックにあっては、導入口と排出口を閉鎖すると冷却機能が完全に停止し、サーバーラック内の温度が急激に上昇して二次的なトラブルを引き起こす可能性がある。
【0009】
本発明は、サーバーラック等の制御盤単位に火災を監視し、他の制御盤に影響を及ぼすことなく、迅速、確実に消火を行うことを可能とする制御盤消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(制御盤消火システム)
本発明は、監視対象とする制御盤における盤内の火災を検知して消火する制御盤消火システムに於いて、
空調装置から供給される冷却空気を盤内に導入する盤下部の空調導入口と盤内の空気を外部に排出する盤上部の空調排出口の各々に設けられて開閉駆動される空調開閉装置と、
盤上部に配置され、盤内から吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知して火災検知信号を発信する高感度煙検知器と、
高感度煙検知器から排出された空気を盤下部から盤内に戻して還流させる還流配管と、
盤下部に配置され、盤内に消火ガスを放出して消火する消火装置と、
高感度煙検知器からの火災検知信号を受信した場合に、空調開閉装置を閉鎖駆動して盤内を密閉状態とし、消火装置から消火ガスを盤内に放出させて消火する制御装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(消火ガスの還流)
制御装置は、消火ガスを盤内に放出させると共に、消火ガスを含む空気を高感度煙検知器から還流配管を経由して盤内に戻して循環させる。
【0012】
(空調開閉装置と消火装置の連携制御)
制御装置は、空調導入口の空調開閉装置を閉鎖駆動した状態で消火装置を起動し、消火装置の起動から所定時間を経過した後に、空調排出口の空調開閉装置を閉鎖駆動させる。
【0013】
(ボンベ式の消火装置)
消火装置は、
消火ガスを充填したガスボンベと、
開放駆動によりガスボンベに充填されている消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁と、
を備える。
【0014】
(配管式の消火装置)
消火装置は、
外部から盤内に引き込まれて消火ガスを供給する消火ガス供給配管と、
開放駆動により消火ガス供給配管を介して消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁と、
を備える。
【0015】
(火災検知と消火起動の報知)
制御装置は、外部に設けた監視盤に、高感度煙検知器による火災検知を示す火災検知通報信号を送信して火災発生を報知させると共に、消火ガス放出弁の開放駆動による消火起動を示す消火起動通報信号を送信して消火起動を報知させる。
【発明の効果】
【0016】
(制御盤消火システムの効果)
本発明は、監視対象とする制御盤における盤内の火災を検知して消火する制御盤消火システムに於いて、空調装置から供給される冷却空気を盤内に導入する盤底部の空調導入口と盤内の空気を外部に排出する盤天井部の空調排出口の各々に設けられて開閉駆動される空調開閉装置と、盤上部に配置され、盤内から吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知して火災検知信号を発信する高感度煙検知器と、高感度煙検知器から排出された空気を盤下部から盤内に戻して還流させる還流配管と、盤下部に配置され、盤内に消火ガスを放出して消火する消火装置と、高感度煙検知器からの火災検知信号を受信した場合に、空調開閉装置を閉鎖駆動して盤内を密閉状態とし、消火装置から消火ガスを盤内に放出させると共に消火ガスを含む空気を高感度煙検知器から還流配管を経由して盤内に戻して循環させながら消火する制御装置とを設けるようにしたため、データセンタ―等のサーバー室に設置された多数のサーバーラック等の制御盤内で発生する火災を高感度煙検知器により早期に検知して火災を起こした制御盤を特定し、CO2ガス等の消火ガスをラック内に放出して、迅速且つ確実に消火を行うことを可能とする。
【0017】
また、火災を検知したサーバーラック内を冷却している空調導入口と空調排出口を空調開閉装置により閉鎖した状態で消火ガスを放出し、確実に消火することを可能とする。
【0018】
(消火ガスの還流による効果)
また、制御装置は、消火ガスを盤内に放出させると共に、消火ガスを含む空気を高感度煙検知器から還流配管を経由して盤内に戻して循環させるようにしたため、消火ガスが盤内に均一になるように分布し、より確実に消火することを可能とする。
【0019】
(空調開閉装置と消火装置の連携制御による効果)
また、制御装置は、空調導入口の空調開閉装置を閉鎖駆動した状態で消火装置を起動し、消火装置の起動から所定時間を経過した後に、空調排出口の空調開閉装置を閉鎖駆動させるようにしたため、火災を検知した場合に、盤底部の空調導入口を閉鎖して床下からの冷却空気の導入を遮断した状態で消火ガスを盤下部から盤内に放出することで、盤天井部の開いている空調排出口から盤内の空気を押し出す形で消火ガスを短時間で効率良く盤内に拡散して充満させ、所定時間後に盤天井部の空調排出口を閉鎖して盤内を密閉状態とし、盤内に放出した消火ガスを効率良く充満させることにより、迅速且つ確実に消火することを可能とする。
【0020】
(ボンベ式の消火装置による効果)
また、消火装置は、消火ガスを充填したガスボンベと、開放駆動によりガスボンベに充填されている消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁とを備えるようにしたため、外部から消火ガスを供給する配管を設ける必要がなく、また、ガスボンベはサーバーラック等の盤内容積に対応した消火ガスの放出力をもつ小型のボンベで済み、消火ガスを放出した場合のボンベ交換も簡単で低コストで済む。
【0021】
(配管式の消火装置による効果)
また、消火装置は、外部から盤内に引き込まれて消火ガスを供給する消火ガス供給配管と、開放駆動により消火ガス供給配管を介して消火ガスを盤内に放出させる消火ガス放出弁とを備えるようにしたため、外部から消火ガス供給配管を設ける必要はあるが、設置するボンベはサーバーラック等の盤内容積に対応した消火ガスの放出力をもつ小型のガスボンベで済み、また、制御盤内には電磁弁等の消火ガス放出弁を設けるだけで済むことから、制御盤内に設けるシステム機器を少なくして設置スペースを低減可能とする。
【0022】
(火災検知と消火起動の報知)
また、制御装置は、外部に設けた監視盤に、高感度煙検知器による火災検知を示す火災検知通報信号を送信して火災発生を報知させると共に、消火ガス放出弁の開放駆動による消火起動を示す消火起動通報信号を送信して消火起動を報知させるようにしたため、サーバーラック等の制御盤単位に設けた消火システムによる火災検知と消火起動の状況を外部に設置した監視盤で確認可能となり、制御盤での火災発生に対し適切に対処可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による制御盤消火システムを備えたサーバーラックを配置した部屋の立面を示した説明図
【
図3】サーバーラックに設置した制御盤消火システムの実施形態を示した説明図
【
図4】サーバーラックに設置した超高感度煙検知器の概略を示した説明図
【
図5】制御盤消火システムに設けた制御装置の機能構成を示したブロック図
【
図6】制御盤消火システムの制御動作を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
[サーバー室の概要]
図1は本発明による制御盤消火システムを備えたサーバーラックを配置した部屋の立面を示した説明図、
図2は
図1の部屋の平面を示した説明図である。
【0025】
図1及び
図2に示すように、データセンター等の建物のサーバー室12は、フリーアクセス支柱15で支持されたフロアユニット14と天井ユニット18で仕切られており、サーバー室12の内部には複数のサーバーラック10が配置され、サーバーラック10にはデータセンタ―で使用する複数のサーバーが収納され、各種の通信サービスを提供している。
【0026】
サーバー室12に隣接して空調装置22が設置され、空調装置22は冷却空気をフロアユニット14の床下空間となるフリーアクセス空間16に吹出し、サーバーラック10の底部からラック内に冷却空気を導入し、ラック内を通った空気はラック天井から排出されて天井ユニット18の裏側の空調ダクト空間20に入り、空調ダクト空間20から空調装置22に吸引され、再び冷却空気としてフリーアクセス空間16に吹出すことにより、サーバーラック10の内部を冷却する構造を実現している。
【0027】
サーバーラック10の各々には、本実施形態による制御盤消火システムのシステム構成機器が配置されており、サーバーラック10単位に火災を検知して消火することができる。
【0028】
サーバー室12に隣接した部屋には監視盤24が設置され、サーバーラック10の各々に設けた制御盤消火システムの制御装置と信号線26により接続し、サーバーラック10単位に火災検知と消火起動の報知を可能としている。また、信号線28により監視センター等に設置した管理装置にLAN回線を介して接続することで、サーバーラック10単位に火災検知と消火起動の報知を可能としている。
【0029】
[制御盤消火システム]
図3はサーバーラックに設置した制御盤消火システムの実施形態を示した説明図であり、
図3(A)に正面から見た内部構造を示し、
図3(B)に側面から見た内部構造を示している。
【0030】
(空調開閉装置)
図3に示すように、サーバーラック10は、盤底部に空調装置から供給される冷却空気を盤内に導入する空調導入口34が設けられ、また、盤天井部にラック内の空気を外部に排出する空調排出口36が設けられ、空調導入口34に空調開閉装置として機能する導入口空調シャッター38が設けられ、また、空調排出口36に空調開閉装置として機能する排出口空調シャッター40を設けている。
【0031】
導入口空調シャッター38及び排出口空調シャッター40としては例えばモータダンパを設置する。モータダンパはモータにより回転する羽根板を備えており、羽根板の回転で開口部を閉鎖することができる。
【0032】
導入口空調シャッター38及び排出口空調シャッター40は常時開いており、
図1及び
図2に示した空調装置22から床下のフリーアクセス空間16に吹出した冷却空気を、開いている導入口空調シャッター38から盤内に導入し、ラック内に収納しているサーバー52やハードディスクドライブ54を冷却し、温度が上昇した空気を、開いている排出口空調シャッター40から排出している。
【0033】
また、導入口空調シャッター38及び排出口空調シャッター40は、火災を検知した場合には閉鎖駆動され、サーバーラック10を密閉状態に保つ。
【0034】
(超高感度煙検知器)
サーバーラック10のラック内上部には超高感度煙検知器30を配置している。超高感度煙検知器30は、空調排出口36から開放している排出口空調シャッター40を介して外部に排出される空気の一部を吸込口32から吸引し、吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知し、吸入した空気は排出口33から排出させる。
【0035】
超高感度煙検知器30の排出口33は還流配管45の上部に連結され、還流配管45はラック裏面側を通って下側の排出口45aをラック内に開口しており、超高感度煙検知器30から排出された空気をラック下部からラック内に戻して還流させている。
【0036】
図4はサーバーラックに設置した超高感度煙検知器の概略を示した説明図であり、
図4(A)は平面から見た内部構造を示し、
図4(B)は側面から見た内部構造を示す。
【0037】
図4に示すように、超高感度煙検知器30は、吸引ポンプ62により吸込口32からサーバーラック10内の空気を吸入し、レーザーダイオード(LD)56とフォトダイオード(PD)58を配置した空間を通過させ、信号処理部60でレーザー光による煙粒子のパルスカウント又は積分などを求めて火災を判断して火災検知信号を発信することにより、火災を高感度に検知している。
【0038】
超高感度煙検知器30の検出感度は、一般的な煙感知器で火災を検出する減光濃度10%/mに対し、例えば0.005%/mの減光濃度で火災を検出することができ、一般の煙感知器に対し約2000倍程度の感度を持ち、非常に薄い煙であっても検知することができる。
【0039】
また、超高感度煙検知器30に設けた吸引ポンプ62の排出口33には還流配管45が連結され、排出口33から排出した空気を還流配管45によりラック下部に導いてラック内に放出させている。
【0040】
(消火装置)
図3に示すように、サーバーラック10の下部には消火装置42を配置している。本実施形態の消火装置42は、装置ボックス内に消火ガスを充填した例えば2本のガスボンベ(消火ガス容器)44を収納しており、ガスボンベ44からヘッド48を結ぶ配管の途中に消火ガス放出弁46として例えば電磁弁を配置している。ガスボンベ44内には、消火ガスとしてCO
2、N
2、ハロンガス、FM-200などを封入し、消火起動信号により消火ガス放出弁46を開き、ヘッド48からラック内の上方に向けて消火ガスを放出し、消火ガスをラック内に均一に充満させて消火する。
【0041】
(制御装置)
図3に示すように、サーバーラック10の上部には制御装置50を配置している。
【0042】
図5は制御盤消火システムに設けた制御装置の機能構成を示したブロック図である。
図5に示すように、制御装置50は、制御部64、入力部66、出力部68、移報部70及び伝送部72を備える。制御部64は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の消火制御を行う。
【0043】
入力部66には超高感度煙検知器30が接続され、火災検知信号を入力する。出力部68には、導入口空調シャッター38、排出口空調シャッター40及び消火ガス放出弁46が接続され、シャッター開放又は閉鎖信号、消火起動信号が出力される。移報部70には監視盤24が接続され、サーバーラック10を特定した火災検知通報信号と消火起動通報信号が出力される。
【0044】
伝送部72には、LAN回線を介して信号線28により、監視センター等に設置した管理装置76が接続される。管理装置76は例えばSNMP( Simple Network Management Protocol)の機能を備え、信号線28を介して制御装置50の監視と制御が可能であり、少なくとも制御装置50からサーバーラック10を特定した火災検知通報信号と消火起動通報信号を受信して報知する。
【0045】
制御部64は、超高感度煙検知器30からの火災検知信号を受信した場合に、導入口空調シャッター38及び排出口空調シャッター40にシャッター閉鎖信号を出力して空調導入口34及び空調排出口36を閉鎖してラック内を密閉状態とし、続いて消火装置42に消火起動信号を出力して消火ガス放出弁46を開放して消火ガスを放出させる制御を行う。
【0046】
また、制御部64は、導入口空調シャッター38と排出口空調シャッター40を順番に閉鎖制御し、その間に、消火装置42に消火起動信号を出力して消火ガス放出弁46を開放して消火ガスを放出させる制御を行う。即ち、制御部64は、超高感度煙検知器30からの火災検知信号の受信を検出した場合、まず、導入口空調シャッター38にシャッター閉鎖信号を出力して空調導入口34を閉鎖し、続いて、消火装置42に消火起動信号を出力して消火ガス放出弁46を開放して消火ガスを放出させ、消火ガスの放出から所定時間を経過した後に、排出口空調シャッター40にシャッター閉鎖信号を出力して空調排出口36を閉鎖させる制御を行う。
【0047】
[制御盤消火システムの制御動作]
図6は制御盤消火システムの制御動作を示したフローチャートであり、
図5に示した制御装置50の制御部64による制御動作となる。
【0048】
図6に示すように、制御装置50はステップS1で超高感度煙検知器30からの火災検知信号の受信による火災検知の有無を判別しており、ステップS1で火災検知を判別するとステップS2に進み、外部の監視盤24及び管理装置76にサーバーラック10の識別情報を含む火災検知通報信号を送信して火災検知を報知させる。
【0049】
続いて、ステップS3に進み、導入口空調シャッター38にシャッター閉鎖信号を出力して空調導入口34を閉鎖し、ラック底部からの冷却空気の導入を停止する。続いてステップS4に進み、消火装置42に消火起動信号を出力して消火ガス放出弁46を開放することで起動して消火ガスを放出させ、ステップS5で外部の監視盤24及び管理装置76にサーバーラック10の識別情報を含む消火起動通報信号を送信して消火起動を報知させる。
【0050】
これによりサーバーラック10の底部に配置した消火装置42のヘッド48から上向きに消火ガスが放出され、このとき排出口空調シャッター40は開放状態にあることから、下部からの消火ガスの放出で押し上げられた空気は空調排出口36から外部に抜け、消火ガスの放出でサーバーラック10内の内圧を上昇させることなく消火ガスが放出でき、このため放出した消火ガスはサーバーラック10内に効率良く広がって充満する。
【0051】
続いて、ステップS6で所定時間の経過を待ち、所定時間の経過を判別するとステップS7に進み、排出口空調シャッター40にシャッター閉鎖信号を出力して空調排出口36を閉鎖させる。ステップS6の所定時間は、消火装置42から消火ガスを放出してからサーバーラック10内に消火ガスが充満するに十分な時間とする。
【0052】
このようにステップS7で排出口空調シャッター40にシャッター閉鎖信号を出力して空調排出口36を閉鎖させると、サーバーラック10は消火ガスが充満した密封状態となる。また、このときラック上部に配置している
図4に示した超高感度煙検知器30に設けている吸引ポンプ62により吸引された消火ガスを含むラック内の空気は還流配管45に排出され、還流配管45を通ってサーバーラック10の下部に位置する吹出口45aからラック内に放出され、サーバーラック10内で空気を循環する動きを作り出しており、これによって放出された消火ガスはサーバーラック10内に均一に分布し、火災を確実に消火可能とする。
【0053】
続いてステップS8で管理責任者の操作等による火災復旧を判別するとステップS9に進み、閉鎖状態にある導入口空調シャッター38と排出口空調シャッター40を開放制御し、底部の空調導入口34から冷却空気を導入し、内部に充満している消火ガスを天井部の空調排出口36から排出し、サーバーラック10に収納している機器の修復作業等が安全にできるようし、一連の消火制御を終了する。
【0054】
[本発明の変形例]
(制御盤)
上記の実施形態は、底部から冷却空気を導入して天井側に排出させる冷却構造を持つサーバーラックの消火システムを例にとっているが、同様な冷却構造を持つ適宜の制御盤につき、同様に適用できる。
【0055】
(配管方式の消火装置)
また、上記の実施形態は、サーバーラック内にガスボンベ44を収納した消火装置42を配置しているが、外部に設置したガスボンベからサーバーラック内に引き込んだ消火ガス供給配管に消火ガス放出弁を設け、消火ガス放出弁の開放駆動により消火ガス供給配管を介して消火ガスをヘッドから盤内に放出させるようにしても良い。
【0056】
この場合には、外部から消火ガス供給配管を設ける必要はあるが、設置するガスボンベはサーバーラック等の盤内容積に対応した消火ガスの放出力をもつ小型のガスボンベで済み、また、制御盤内には電磁弁等の消火ガス放出弁を設けるだけで済むことから、制御盤内に設けるシステム機器を少なくして設置スペースを低減可能とする。
【0057】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0058】
10:サーバーラック
12:サーバー室
14:フロアユニット
16:フリーアクセス空間
18:天井ユニット
20:空調ダクト空間
22:空調装置
24:監視盤
30:超高感度煙検知器
32:吸込口
33:排出口
34:空調導入口
36:空調排出口
38:導入口空調シャッター
40:排出口空調シャッター
42:消火装置
44:ガスボンベ
45:還流配管
46:消火ガス放出弁
48:ヘッド
50:制御装置
62:吸引ポンプ
76:管理装置