(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
F16H 41/30 20060101AFI20230915BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20230915BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20230915BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
F16H41/30 C
F16H57/04 G
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/663
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/633
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2020013423
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-140630(JP,A)
【文献】特開2009-236132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 41/30
F16H 57/04
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/663
H01M 10/6556
H01M 10/6568
H01M 10/633
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータと、
前記電気モータからのトルクが入力されるインペラ、及び作動流体を介して前記インペラからトルクが伝達されるタービン、を有するトルクコンバータと、
前記タービンを固定した状態で前記インペラを回転させる加熱モードを実行するように構成された制御部と、
を備える、駆動ユニット。
【請求項2】
前記電気モータは、前記制御部が加熱モードを実行するとき、外部電源によって駆動する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記トルクコンバータの外殻は、断熱性を有する、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記外殻は、外殻本体と、前記外殻本体を覆う断熱層と、を有する、
請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記外殻は、断熱性を有する材料によって構成される、
請求項3に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記トルクコンバータから加熱対象まで延び、前記作動流体が内部を流れるように構成された加熱用流路をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記作動流体の熱を蓄熱するように構成される蓄熱材をさらに備える、
請求項1から6のいずれかに記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、電気モータを駆動源として走行する。この電気自動車では、寒冷地などではバッテリの温度が低下してバッテリの性能が低下するため、航続距離が短くなる等の問題が生じる。そこで、例えば、特許文献1に記載の車両では、バッテリを加熱するためのヒータを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の電気自動車では、バッテリなどの加熱対象をヒータによって加熱しているが、ヒータ以外の方法でバッテリなどの加熱対象を加熱することが要望されている。そこで、本発明の課題は、ヒータ以外の方法で加熱対象を加熱することができる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係る駆動ユニットは、電気モータと、トルクコンバータと、制御部とを備える。トルクコンバータはインペラ及びタービンを有する。インペラは、電気モータからのトルクが入力される。タービンは、作動流体を介してインペラからトルクが伝達される。制御部は、加熱モードを実行するように構成されている。制御部は、加熱モードにおいて、タービンを固定した状態でインペラを回転させる。
【0006】
この構成によれば、例えば寒冷地などでバッテリなどの加熱対象の温度が低下しているとき、制御部が加熱モードを実行する。すなわち、制御部は、タービンを固定した状態でインペラを回転させる。この結果、タービンとインペラとの間のスリップロスにより作動流体が加熱される。このスリップロスによって加熱された作動流体によってバッテリなどの加熱対象を加熱することができる。すなわち、ヒータ以外の方法で加熱対象を加熱することができる。なお、この構成によればヒータの設置を省略することができるが、予備的にヒータを設けていてもよい。また、このように制御部が処理を実行する際、例えば、車両は停止していることが好ましい。
【0007】
また、上記構成によれば、電気モータからのトルクをトルクコンバータによって増幅させることができる。
【0008】
電気モータは、前記制御部が加熱モードを実行するとき、外部電源によって駆動してもよい。
【0009】
トルクコンバータの外殻は、断熱性を有していてもよい。
【0010】
外殻は、外殻本体と、外殻本体を覆う断熱層と、を有していてもよい。
【0011】
外殻は、断熱性を有する材料によって構成されていてもよい。なお、例えば、外殻は、タービンよりも熱伝導率が低い材料によって構成してもよい。
【0012】
駆動ユニットは、作動流体が内部を流れるように構成された加熱用流路をさらに備えていてもよい。この流路は、トルクコンバータから加熱対象まで延びる。なお、加熱対象は、例えば、バッテリ、又は車室などである。
【0013】
駆動ユニットは、蓄熱材をさらに備えていてもよい。蓄熱材は、作動流体の熱を蓄熱するように構成される。この蓄熱材に蓄熱された熱を利用して、走行中に加熱対象を加熱することができる。また、この蓄熱材に蓄熱された熱を利用して、停止中に加熱対象を加熱してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒータ以外の方法で加熱対象を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】制御部の制御方法を説明するためのフローチャート。
【
図7】変形例に係る制御方法を説明するためのフローチャート。
【
図8】変形例に係る制御方法を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る駆動ユニットの概略図である。なお、以下の説明において、軸方向とは電気モータ2及びトルクコンバータ3の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、正回転とは、車両が前進するときの回転であり、逆回転とは、車両が後進するときの回転である。
【0017】
[駆動ユニット100]
図1に示すように、駆動ユニット100は、電気モータ2、トルクコンバータ3、制御部4、入力軸5、出力軸6、バッテリ7、加熱用流路8、及び温度センサ41を備えている。また、駆動ユニット100は、減速機9、及びトルクコンバータケース11を備えている。この駆動ユニット100は、例えば、電気自動車に搭載される。駆動ユニット100は、駆動輪101を駆動するように構成されている。なお、本実施形態では、バッテリ7が加熱対象である。
【0018】
<電気モータ2>
電気モータ2は、モータケース21、ステータ22、及びロータ23を有している。本実施形態における電気モータ2は、いわゆるインナーロータ型のモータである。モータケース21は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0019】
ステータ22は、モータケース21の内周面に固定されている。ステータ22は回転不能である。ロータ23は、回転軸O周りに回転する。ロータ23は、径方向において、ステータ22の内側に配置される。
【0020】
<トルクコンバータ3>
トルクコンバータ3は、軸方向において、電気モータ2と間隔をあけて配置されている。このトルクコンバータ3と電気モータ2との間に、減速機9が配置されている。軸方向において、電気モータ2、減速機9、トルクコンバータ3の順で配列している。
【0021】
トルクコンバータ3の回転軸Oは、電気モータ2の回転軸Oと実質的に一致している。トルクコンバータ3は、電気モータ2からのトルクが伝達される。トルクコンバータ3は、電気モータ2からのトルクを増幅して減速機9へと出力する。
【0022】
図2に示すように、トルクコンバータ3は、カバー31、インペラ32、タービン33、ステータ34、第1ワンウェイクラッチ35、及び第2ワンウェイクラッチ36を有している。また、トルクコンバータ3は、遠心クラッチ37をさらに有している。本実施形態において、トルクコンバータ3の外殻は、カバー31、及び後述するインペラシェル321によって構成されている。
【0023】
トルクコンバータ3は、インペラ32が電気モータ2側(
図2の左側)に配置され、カバー31が電気モータ2と反対側(
図2の右側)に配置されている。このトルクコンバータ3は、トルクコンバータケース11内に収容されている。トルクコンバータ3内には作動流体が供給されている。作動流体は、例えば作動油である。
【0024】
カバー31は、電気モータ2からのトルクが入力される。カバー31は、電気モータ2からのトルクによって回転する。カバー31は、入力軸5に固定されている。例えば、カバー31は、スプライン孔を有しており、入力軸5がカバー31のスプライン孔にスプライン嵌合する。このため、カバー31は、入力軸5と一体的に回転する。カバー31は、タービン33を覆うように配置されている。
【0025】
カバー31は、円板部311、円筒部312、及びカバーハブ313を有している。円板部311は、中央に開口を有する。円筒部312は、円板部311の外周端部から電気モータ2側に延びている。円板部311と円筒部312とは1つの部材によって構成されている。
【0026】
カバーハブ313は、円板部311の内周端部に固定されている。本実施形態では、カバーハブ313は、円板部311と別部材によって構成されているが、円板部311と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0027】
カバーハブ313は、第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cを有している。第1ボス部313a、第1フランジ部313b、及び突出部313cは、一つの部材によって構成されている。
【0028】
第1ボス部313aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第1ボス部313aに、入力軸5がスプライン嵌合する。第1ボス部313aは、トルクコンバータケース11に軸受部材(図示省略)を介して回転可能に支持されている。第1ボス部313aは、軸方向において、第1フランジ部313bから電気モータ2と反対側に延びている。
【0029】
第1フランジ部313bは、第1ボス部313aから径方向外側に延びている。詳細には、第1フランジ部313bは、第1ボス部313aの電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第1フランジ部313bの外周端部に、円板部311が固定されている。
【0030】
突出部313cは、第1フランジ部313bから軸方向に延びている。突出部313cは、電気モータ2に向かって延びている。突出部313cは、第1フランジ部313bの外周端部から延びている。突出部313cは、円筒状である。
【0031】
インペラ32は、カバー31と一体的に回転する。インペラ32は、カバー31を介して電気モータ2からのトルクが入力される。インペラ32は、カバー31に固定されている。インペラ32は、インペラシェル321、複数のインペラブレード322、及びインペラハブ323を有している。また、インペラ32は複数の供給流路324を有している。
【0032】
インペラシェル321は、カバー31に固定されている。複数のインペラブレード322はインペラシェル321の内側面に取り付けられている。
【0033】
インペラハブ323は、インペラシェル321の内周端部に取り付けられている。なお、本実施形態では、インペラハブ323は、インペラシェル321と一つの部材によって構成されているが、インペラシェル321と別部材によって構成されていてもよい。
【0034】
インペラハブ323は、第2ボス部323aと、第2フランジ部323bとを有する。第2フランジ部323bは、第2ボス部323aから径方向外側に延びている。第2ボス部323aは、円筒状であって、軸方向に延びている。第2ボス部323aは、軸受部材(図示省略)を介してトルクコンバータケース11に回転可能に支持されている。第2ボス部323a内を、固定軸104が軸方向に延びている。なお、この固定軸104は円筒状であり、この固定軸104内を出力軸6が軸方向に延びている。また、固定軸104は、例えば、変速機ケース92又はトルクコンバータケース11から延びている。固定軸104は、回転不能である。
【0035】
供給流路324は、インペラハブ323に形成されている。詳細には、供給流路324は、第2フランジ部323bに形成されている。供給流路324は、インペラハブ323の内周面から径方向外側に延びている。そして、供給流路324は、トーラスT内に開口している。なお、トーラスTは、インペラ32とタービン33とによって囲まれた空間である。
【0036】
供給流路324は、軸方向において閉じられている。すなわち、供給流路324は、インペラハブ323内を径方向に延びる貫通孔である。
図3に示すように、供給流路324は、放射状に延びている。供給流路324は、径方向外側に向かって、正回転方向と反対側に傾斜している。すなわち、供給流路324は、径方向外側に向かって、逆回転方向(
図3の反時計回り)に傾斜している。なお、供給流路324は直線状に延びているものに限らず、例えば、
図4に示すように、供給流路324は曲線状に延びていてもよい。
【0037】
図2に示すように、タービン33は、インペラ32と対向して配置されている。詳細には、タービン33は、軸方向においてインペラ32と対向している。タービン33は、作動流体を介してインペラ32からトルクが伝達される。
【0038】
タービン33は、タービンシェル331、複数のタービンブレード332、及びタービンハブ333を有している。タービンブレード332は、タービンシェル331の内側面に固定されている。
【0039】
タービンハブ333は、タービンシェル331の内周端部に固定されている。例えば、タービンハブ333は、リベットによって、タービンシェル331に固定されている。本実施形態では、タービンハブ333は、タービンシェル331と別部材によって構成されているが、タービンシェル331と一つの部材によって構成されていてもよい。
【0040】
タービンハブ333には、出力軸6が取り付けられている。詳細には、出力軸6が、タービンハブ333にスプライン嵌合している。タービンハブ333は、出力軸6と一体的に回転する。
【0041】
タービンハブ333は、第3ボス部333a及び第3フランジ部333bを有している。第3ボス部333a及び第3フランジ部333bは、一つの部材によって構成されている。
【0042】
第3ボス部333aは、円筒状であって、スプライン孔を有している。この第3ボス部333aに、出力軸6がスプライン嵌合する。第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bから電気モータ2と反対側に延びている。すなわち、第3ボス部333aは、軸方向において、第3フランジ部333bからカバーハブ313に向かって延びている。
【0043】
第3ボス部333aは、径方向において、突出部313cと間隔をあけて配置されている。すなわち、径方向において、第3ボス部333aの外側に突出部313cが配置されている。第3ボス部333aと突出部313cとの間に、第1ワンウェイクラッチ35が配置されている。なお、第1ワンウェイクラッチ35が無い状態では、第3ボス部333aの外周面と、突出部313cの内周面とが対向する。
【0044】
第3フランジ部333bは、第3ボス部333aから径方向外側に延びている。詳細には、第3フランジ部333bは、第3ボス部333aの電気モータ2側の端部から径方向外側に延びている。この第3フランジ部333bの外周端部に、タービンシェル331がリベットなどによって固定されている。
【0045】
ステータ34は、タービン33からインペラ32へと戻る作動油を整流するように構成されている。ステータ34は、回転軸O周りに回転可能である。例えば、ステータ34は、固定軸104に、第2ワンウェイクラッチ36を介して支持されている。このステータ34は、軸方向において、インペラ32とタービン33との間に配置される。
【0046】
ステータ34は、円板状のステータキャリア341と、その外周面に取り付けられる複数のステータブレード342と、を有している。
【0047】
第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31とタービン33との間に配置されている。第1ワンウェイクラッチ35は、正回転方向において、カバー31をタービン33に対して相対回転可能とする。すなわち、車両が前進するように電気モータ2が正回転したとき、カバー31がタービン33と相対回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の前進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達しない。
【0048】
一方、第1ワンウェイクラッチ35は、逆回転方向において、カバー31をタービン33と一体回転させる。すなわち、車両が後進するように電気モータ2が逆回転したとき、カバー31がタービン33と一体回転するように第1ワンウェイクラッチ35は構成されている。このため、車両の後進時は、第1ワンウェイクラッチ35は、カバー31からタービン33へとトルクを伝達する。
【0049】
第2ワンウェイクラッチ36は、固定軸104とステータ34との間に配置されている。第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を正回転方向に回転可能とするように構成されている。一方、第2ワンウェイクラッチ36は、ステータ34を逆回転方向に回転不能とする。このステータ34によって、トルクが増幅されて、インペラ32からタービン33へと伝達される。
【0050】
遠心クラッチ37は、タービン33に取り付けられている。遠心クラッチ37は、タービン33と一体的に回転する。遠心クラッチ37は、タービン33の回転によって生じる遠心力によって、カバー31とタービン33とを連結するように構成されている。詳細には、遠心クラッチ37は、タービン33が所定の回転速度以上になると、カバー31からタービン33にトルクを伝達するように構成されている。
【0051】
遠心クラッチ37は、複数の遠心子371と、摩擦材372とを有している。摩擦材372は、遠心子371の外周面に取り付けられている。遠心子371は、径方向に移動可能に配置されている。なお、遠心子371は、周方向に移動不能に配置されている。このため、遠心子371は、タービン33とともに回転し、遠心力によって径方向外側に移動する。
【0052】
この遠心クラッチ37は、タービン33の回転速度が所定の回転速度以上になると、遠心子371が径方向外側に移動し、摩擦材372がカバー31の円筒部312の内周面と摩擦係合する。この結果、遠心クラッチ37はオン状態となり、カバー31からのトルクが遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達される。
【0053】
タービン33の回転速度が所定の回転速度未満になると、遠心子371が径方向内側に移動し、摩擦材372とカバー31の円筒部312の内周面との摩擦係合が解除される。この結果、遠心クラッチ37はオフ状態となり、カバー31からのトルクは遠心クラッチ37を介してタービン33へと伝達されない。すなわち、カバー31からのトルクは、インペラ32に伝達された後、作動流体を介してタービン33へと伝達される。
【0054】
<減速機9>
図1に示すように、減速機9は、軸方向において電気モータ2とトルクコンバータ3との間に配置されている。減速機9は、トルクコンバータ3からのトルクを駆動輪101側へと伝達する。詳細には、減速機9は、トルクコンバータ3からのトルクを増幅して、デファレンシャルギア109を介して、駆動輪101側へと伝達する。なお、減速機9は、複数の歯車91を有している。減速機9は、変速機ケース92内に収容される。なお、複数の歯車91のうちの一つは、出力軸6に固定されている。歯車91は出力軸6と一体的に回転する。
【0055】
<入力軸5>
入力軸5は、電気モータ2から延びている。詳細には、入力軸5は、電気モータ2のロータ23から延びている。なお、電気モータ2が出力軸を有している場合、入力軸5は、電気モータ2の出力軸に取り付けられる。入力軸5の回転軸は、電気モータ2の回転軸、及びトルクコンバータ3の回転軸と実質的に同一線上にある。
【0056】
入力軸5は、電気モータ2からのトルクをトルクコンバータ3に入力する。入力軸5は、トルクコンバータ3のインペラ32に接続されている。詳細には、入力軸5は、カバー31を介してインペラ32に接続されている。入力軸5の先端部は、トルクコンバータ3のカバーハブ313に取り付けられている。
【0057】
入力軸5は、出力軸6内を延びている。入力軸5は、中実状である。
【0058】
<出力軸6>
出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3からのトルクを減速機9へと出力する。出力軸6は、トルクコンバータ3から電気モータ2に向かって延びている。
【0059】
図2に示すように、出力軸6は、円筒状である。入力軸5は、この出力軸6内を延びている。出力軸6の一方の端部(
図2の右端部)は、トルクコンバータ3のタービン33に取り付けられている。また、出力軸6の他方の端部には、減速機9の歯車91が取り付けられている。出力軸6は、例えば、変速機ケース92に軸受部材などを介して回転可能に支持されている。
【0060】
<トルクコンバータケース11>
図1に示すように、トルクコンバータケース11は、トルクコンバータ3を収容している。トルクコンバータケース11は、変速機ケース92と一つの部材によって構成されていてもよいし、別部材によって構成されていてもよい。トルクコンバータケース11とトルクコンバータ3の外殻とは、互いに間隔をあけて配置されている。このため、トルクコンバータケース11とトルクコンバータ3の外殻との間に空気層が形成されている。
【0061】
<加熱用流路8>
加熱用流路8は、トルクコンバータ3からバッテリ7まで延びている。加熱用流路8内には、トルクコンバータ3に用いられる作動流体が流れている。例えば、加熱用流路8は、往路81と復路82とを有している。
【0062】
往路81は、トルクコンバータ3から排出された作動流体をバッテリ7まで送るための流路である。往路81内には、ステータ34とタービン33との間から排出された作動流体が流れる。
【0063】
復路82は、バッテリ7を加熱した後の作動流体をトルクコンバータ3へ送るための流路である。復路82内を流れる作動流体は、供給流路324を介してトーラスT内へと供給される。
【0064】
<バッテリ>
バッテリ7は、電気モータ2との間で電力の授受を行うように構成されている。すなわち、バッテリ7は、電気モータ2と電気的に接続されており、電気モータ2に電力を供給したり、電気モータ2の回転によって発生した電力を蓄電したりする。詳細には、バッテリ7は、制御部4のインバータ回路及びコンバータ回路を介して電気モータ2と接続されている。そして、バッテリ7は、コンバータ回路によって直流電力に変換された電力を蓄電する。
【0065】
また、バッテリ7に蓄電された電力は、電気モータ2に供給されて電気モータ2を回転させることもできる。詳細には、バッテリ7に蓄電された直流電力が、制御部4のインバータ回路によって交流電力に変換されて電気モータ2へと供給される。
【0066】
<温度センサ>
温度センサ41は、バッテリ7の温度を検出する。そして、温度センサ41は、検出したバッテリ7の温度に関する温度信号を制御部4に出力する。
【0067】
<制御部>
制御部4は、タービン33を固定した状態でインペラ32を回転させる加熱モードを実行するように構成されている。例えば、制御部4は、ECU(Electronic Control Unit)、及びPCU(Power Control Unit)などを含んでいる。
【0068】
制御部4は、温度センサ41によって検出されたバッテリ7の温度Tbに基づいて、加熱モードを実行する。詳細には、制御部4は、バッテリ7の温度Tbが閾値Th以下であると判断すると加熱モードを実行する。
【0069】
加熱モードにおいて、制御部4は、まず、タービン33が回転しないように制御する。例えば、制御部4は、タービン33又はタービン33と一体的に回転する部材(出力軸6など)の回転を制動するための制動装置43を制御する。加熱モードにおいて、制御部4は、制動装置43をオン状態にする。なお、本実施形態では、制動装置43は、出力軸6を制動しているが、駆動輪101を制動してもよい。すなわち、制動装置43は、パーキングブレーキであってもよい。制御部4は、車両の停車中に加熱モードを実行する。例えば、始動時に制御部4は加熱モードを実行する。
【0070】
次に、制御部4は、インペラ32を回転させる。詳細には、制御部4は、インペラ32が回転するように、電気モータ2を回転させる。この時の電気モータ2の出力は、最大出力の2割程度とすることができる。
【0071】
上述した加熱モードにおいて、電気モータ2は、バッテリ7からの電力を使用せず、外部電源を用いて駆動する。すなわち、電気モータ2は、この駆動ユニット100に設けられていない電源によって駆動する。例えば、電気モータ2は、家庭用電源などからの電力を用いて駆動することができる。なお、電気モータ2は、バッテリ7からの電力を使用してもよい。
【0072】
<制御方法>
次に、制御部4による制御方法について説明する。
【0073】
図5に示すように、制御部4は、温度センサ41からの温度信号を取得する(ステップS1)。例えば、制御部4は、車両の始動時において、温度センサ41からの温度信号を取得する。
【0074】
次に、制御部4は、取得した温度信号に基づき、バッテリ7の温度Tbが閾値Th以下であるか否か判断する(ステップS2)。
【0075】
制御部4は、バッテリ7の温度Tbが閾値Th以下であると判断すると(ステップS2のYes)、加熱モードを実行する(ステップS3)。すなわち、制御部4は、タービン33を固定した状態でインペラ32を回転させる。
【0076】
この結果、タービン33とインペラ32との間のスリップロスによって作動流体が加熱される。こののスリップロスによって加熱された作動流体が、加熱用流路8を介してバッテリ7へと送られ、バッテリ7が加熱される。
【0077】
制御部4は、バッテリ7の温度Tbが閾値Th以下ではない(ステップS2のNo)、すなわち、バッテリ7の温度Tbが閾値Thよりも大きいと判断すると、加熱モードを停止する(ステップS4)。なお、ステップS2を実行する前に制御部4が加熱モードを実行しておらず、且つ、バッテリ7の温度Tbが閾値Th以下ではない場合は、制御部4は、そのまま加熱モードを実行しない。
【0078】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0079】
変形例1
上記実施形態では、制御部4は、温度センサ41からの温度信号に基づき自動で加熱モードを実行したり停止したりしているが、駆動ユニット100の構成はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、駆動ユニット100は、温度センサ41の代わりに加熱スイッチ42を備えていてもよい。
【0080】
加熱スイッチ42は、運転者によって操作される。加熱スイッチ42は、運転者に操作されることによって、オン状態又はオフ状態のいずれかの状態になる。例えば、寒冷地などにおいてバッテリ7の温度が低下しているとき、運転者は加熱スイッチ42を操作してオン状態とする。加熱スイッチ42は、オン状態又はオフ状態を示す操作信号を制御部4に出力する。
【0081】
制御部4は、加熱スイッチ42からオン状態である旨の操作信号を取得すると、加熱モードを実行する。また、加熱スイッチ42からオフ状態である旨の操作信号を取得すると、加熱モードを停止する。
【0082】
図7に示すように、制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態であるか否か判断する(ステップS11)。制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態であると判断すると(ステップS11のYes)、加熱モードを実行する(ステップS12)。
【0083】
一方、制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態ではない(ステップS11のNo)、すなわち、加熱スイッチ42がオフ状態であると判断すると、加熱モードを停止する(ステップS13)。
【0084】
変形例2
駆動ユニット100は、温度センサ41と加熱スイッチ42との両方を備えていてもよい。この場合、
図8に示すように、まず、制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態であるか否か判断する(ステップS21)。ここで、制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態ではない(ステップS21のNo)、すなわち、加熱スイッチ42がオフ状態であると判断すると、加熱モードを停止する(ステップS25)。
【0085】
一方、制御部4は、加熱スイッチ42がオン状態であると判断すると(ステップS21のYes)、次に温度センサ41からの温度信号を取得する(ステップS22)。これ以降のステップS23~S24は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0086】
変形例3
上記実施形態では、制御部4はタービン33を固定するように制動装置43を制御したが、制御部4の構成はこれに限定されない。例えば、制御部4は、上述したような制動装置43を制御しなくてもよい。この場合、制御部4は、タービン33が回転可能な状態か回転不能な状態かを判断する。そして、例えば、パーキングブレーキなどが操作されていてタービン33が回転不能な状態であると判断したときに、制御部4は、加熱モードを実行する。
【0087】
変形例4
トルクコンバータ3の外殻は、断熱性を有していてもよい。
図9に示すように、トルクコンバータ3の外殻は、外殻本体と、外殻本体を覆う断熱層38を有していてもよい。この場合、外殻本体は、カバー31及びインペラシェル321によって構成されている。そして断熱層38は、カバー31及びインペラシェル321を覆っている。なお、断熱層3は、カバー31及びインペラシェル321の全面を覆う必要はなく、少なくとも一部を覆っていればよい。断熱層38は、外殻本体よりも熱伝導率が低い材料によって構成されている。断熱層38は、例えば、ゴム、又はその他の樹脂などによって構成することができる。一方、カバー31及びインペラシェル321は、金属などによって構成されている。
【0088】
変形例5
トルクコンバータ3の外殻は、断熱性を有する材料によって構成されていてもよい。例えば、トルクコンバータ3の外殻は、タービン33のタービンシェル331より熱伝導率が低い材料によって構成することができる。
【0089】
変形例6
図10に示すように、駆動ユニット100は、蓄熱材12をさらに備えていてもよい。蓄熱材12は、作動流体の熱を蓄熱するように構成されている。蓄熱材12は、例えば、水などによって構成することができる。蓄熱材12は、加熱用流路8内に配置されている。蓄熱材12は、制御部4が加熱モードを実行するときに、作動流体の熱を受けて蓄熱する。このように蓄熱材12に蓄えられた熱は、走行中において、車内又はバッテリ7などを温めることに用いられる。
【符号の説明】
【0090】
100 駆動ユニット
2 電気モータ
3 トルクコンバータ
32 インペラ
33 タービン
4 制御部
8 加熱用流路
12 蓄熱材