(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】高ビリルビン血症の処置
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230915BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230915BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230915BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230915BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230915BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230915BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230915BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20230915BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230915BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230915BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
A61K31/7088 ZNA
A61K35/12
A61K35/76
A61K48/00
A61P3/00
A61P7/00
C12N5/077
C12N5/10
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020028031
(22)【出願日】2020-02-21
(62)【分割の表示】P 2016564025の分割
【原出願日】2015-04-27
【審査請求日】2020-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2014-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(73)【特許権者】
【識別番号】500092114
【氏名又は名称】インターナショナル センター フォー ジェネティック エンジニアリング アンド バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジッティ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】コラウド,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】ムーロ,アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ボルトルッシ,ジュリア
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】加々美 一恵
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-501614(JP,A)
【文献】特表2008-539698(JP,A)
【文献】特表2004-511229(JP,A)
【文献】国際公開第2013/063383(WO,A2)
【文献】国際公開第2007/120533(WO,A2)
【文献】JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY、2003、278(20)、p18037-18044
【文献】NUCLEIC ACIDS RESERARCH、2006、34(12) p3421-3433
【文献】MOLECULAR THERAPY、2008、16(2)、p280-289
【文献】JOURNAL OF CELLULAR BIOCHEMISTRY、2007、102、p280-290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12N1/00-7/08
CAPLUS/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580
GENBANK/EMBL/DDBJ/GENESEQ/UNIPLOT
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減少した数の代替オープンリーディングフレーム(ARF)を有するか又はARFを全く有さない改変されたイントロンであり、配列番号5のHBB2イントロンに比べて改変されたHBB2イントロンである、イントロン。
【請求項2】
配列番号6の改変されたHBB2イントロンである、請求項1のイントロン。
【請求項3】
請求項
1又は2記載のイントロンを含む、核酸構築物。
【請求項4】
関心対象の遺伝子及び1つ以上の追加の発現制御配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーをさらに含む、請求項
3の核酸構築物。
【請求項5】
プロモーターが、遍在的な又は組織特異的なプロモーター、特に肝臓特異的プロモーターである、請求項
4の核酸構築物。
【請求項6】
請求項
1又は2記載のイントロン又は請求項
3~5のいずれか一項記載の核酸構築物を含む、ベクター。
【請求項7】
ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、特にレンチウイルスベクター、又はAAVベクターである、請求項
6記載のベクター。
【請求項8】
一本鎖又は二本鎖自己相補性AAVベクターである、請求項
6又は7記載のベクター。
【請求項9】
AAVベクターが、AAV由来キャプシド、例えばAAV-1、-2、-5、-6、-7、-8、-9、-rh10、-rh74、-djキャプシドを有するか、又はキメラキャプシドを有する、請求項
7又は8記載のベクター。
【請求項10】
AAVベクターがAAV8キャプシドを有する、請求項
7~9のいずれか一項記載のベクター。
【請求項11】
シュードタイプ化AAVベクターである、請求項
7~10のいずれか一項記載のベクター。
【請求項12】
請求項
3~5のいずれか一項記載の核酸構築物又は請求項
6~11のいずれか一項のベクターを用いて形質転換された単離細胞。
【請求項13】
肝細胞又は筋肉細胞である、請求項
12記載の細胞。
【請求項14】
関心対象の遺伝子が、遺伝子療法又は細胞療法の方法に使用するための治療用遺伝子である、請求項
3~5のいずれか一項の核酸構築物、請求項
6~11のいずれか一項のベクター、又は請求項
12~13のいずれか一項記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高ビリルビン血症の処置、特にクリグラー・ナジャー症候群の処置において有用である核酸配列に関する。より特定すると、本発明の核酸配列は、コドンの最適化されたヒトUGT1A1コード配列である。
【0002】
発明の背景
クリグラー・ナジャー症候群(CN)は、UGT1A1遺伝子(OMIM218800番)によってコードされるビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素アイソザイム1A1(UGT1A1)の欠損に起因する重度の非抱合型高ビリルビン血症を有する常染色体劣性疾患である。CNの罹患率は、出生時に約1000000人につき1人の個体であり、これによりCNは極めて稀な疾病となっている。CNの現在の療法は、血清ビリルビン値の上昇を防ぐための光線療法に依拠する。CNII型としても知られる、軽度の病型では、フェノバルビタールを使用してビリルビン血症を低減させることができる。それにも関わらず、患者は、血中ビリルビンの生命を脅かす高値のリスクに潜在的に曝され、肝移植が依然として唯一の治癒的な処置である。その最も重度の病型では、光線療法を出生時から適用しなければ、該疾病は、ビリルビンにより誘発される神経障害に因り致命的である。療法が利用可能であるにも関わらず、CNは依然として、成長中の光線療法の効力の低下、光線療法それ自体の限界に起因する悪いコンプライアンス(毎日10~12時間行なわれる必要がある)、及び経時的な病的な肝臓の変化の発生(これは肝移植を必要とする場合もある)をはじめとする多くの理由のために医療ニーズが充足されていない。
【0003】
天然に存在するGunnラット、及び、Gunnラットに存在するのと同じ突然変異を有するイタリア、トリエステのICGEBのMuro博士によって開発されたより近年の該疾病のノックインマウスモデル(Bortolussi et al., 2012)をはじめとする、該疾病の様々な動物モデルが存在する。Gunnラットは血清中に高いビリルビン値を呈し、それらは小脳低形成を有し;CNのマウスははるかにより重度な表現型を有し、光線療法又は遺伝子療法で迅速に処置しなければ出生後すぐに死亡する(Bortolussi et al., 2012)。
【0004】
CNに対する遺伝子に基づいた療法を開発することを目指した以前の研究は、治療効力を、肝臓に送達されるAAVベクターを使用して達成することができることを示した(Bortolussi et al., 2012; Seppen et al., 2006)。しかしながら、より効果的な治療戦略の必要性が依然として存在する。
【0005】
ジルベール症候群(すなわちGS;OMIM218800番)は遺伝性肝疾患であり、遺伝性のビリルビン増多の最も一般的な要因である。それは人口の3~12%以下に見られる。GSはまた、UGT1A1遺伝子の突然変異によっても引き起こされる。それ故、高ビリルビン血症を低減することを目指した治療戦略は、GSの処置においても有利に実施されるだろう。
【0006】
発明の概要
本発明は、ヒトUGT1A1 cDNAに由来するコドンの最適化されたUGT1A1コード配列に関する。より特定すると、コドンの最適化されたUGT1A1コード配列は、配列番号1の野生型ヒトコード配列と比較して増加したGC含量を有し、かつ/又は、減少した数の代替オープンリーディングフレームを有する。例えば、本発明の核酸配列は、野生型ヒトUGT1A1配列の配列と比較して、UGT1A1配列のGC含量は少なくとも2、3、4、5、又は10%増加している。特定の実施態様では、本発明の核酸配列は、野生型ヒトUGT1A1配列の配列と比較して、UGT1A1配列のGC含量は2、3、4、又はより好ましくは、5%又は10%(好ましくは5%)増加している。特定の実施態様では、コドンの最適化されたヒトUGT1A1タンパク質をコードしている本発明の核酸配列は「実質的に同一」であり、すなわち、配列番号2又は配列番号3の配列に対して、約70%同一、より好ましくは約80%同一、さらにより好ましくは約90%同一、さらにより好ましくは約95%同一、さらにより好ましくは約97%、98%、又はさらには99%同一である。特定の実施態様では、本発明は、コドンの最適化されたヒトUGT1A1タンパク質をコードしている核酸配列に関し、該核酸配列は、配列番号2又は配列番号3に示された配列を含む。
【0007】
有利には、本発明のコドンの最適化された核酸は、ビリルビン値の改善された低下、及び/又は低減した免疫原性を提供する。
【0008】
本発明は、本発明の核酸配列を含む核酸構築物にも関する。核酸構築物は、1つ以上の発現制御配列、又は導入遺伝子の発現を向上させる他の配列に作動可能に連結された、本発明の核酸配列を含む発現カセットに対応し得る。このような配列、例えばプロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリAシグナルなどは、当技術分野において公知である。特に、発現カセットはプロモーターを含み得る。プロモーターは、遍在的又は組織特異的プロモーター、特に肝特異的プロモーターであり得る。より特定すると、プロモーターは、肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)(配列番号4)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターなどである。他の有用な肝特異的プロモーター、例えば、コールドスプリングハーバー研究所の編集した肝特異的遺伝子プロモーターデータベース(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に列挙されたプロモーターなどは当技術分野において公知である。代表的な遍在的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、SV40初期プロモーターなどが挙げられる。特定の実施態様では、プロモーターは、ApoE制御領域、例えばヒトApoE制御領域(又はヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1-Genbankアクセッション番号U32510、配列番号11に示されている)などのエンハンサー配列に結合している。特定の実施態様では、エンハンサー配列、例えばApoE配列は、上記に列挙されたプロモーター、特にhAATプロモーターなどの肝特異的プロモーターに結合している。
【0009】
特定の実施態様では、核酸構築物は、イントロン、特に、プロモーターとコード配列との間に配置されたイントロンを含む。イントロンが、mRNAの安定性及びタンパク質の産生を高めるために導入されてもよい。特定の実施態様では、核酸構築物は、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン、又はニワトリβ-グロビンイントロンを含む。特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、該イントロンに見られる代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるように又はさらには完全に除去するように設計された、改変されたイントロン(特に改変されたHBB2又はFIXイントロン)を含有している。好ましくは、その長さが50bp以上にわたり、かつ開始コドンを有するフレーム内に終止コドンを有する、ARFは除去される。ARFは、イントロンの配列を改変することによって除去され得る。例えば、改変は、ヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失によって、好ましくはヌクレオチドの置換によって行なわれ得る。一例として、関心対象のイントロンの配列に存在するATG又はGTGの開始コドン中の、1つ以上のヌクレオチド、特に1つのヌクレオチドを置換することにより、開始コドンではないコドンがもたらされ得る。例えば、関心対象のイントロン配列内の、ATG又はGTGを、開始コドンではないCTGによって置換し得る。
【0010】
核酸構築物に使用される古典的なHBB2イントロンは配列番号5に示されている。例えば、このHBB2イントロンを、該イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって改変させ得る。特定の実施態様では、該構築物に含まれる改変されたHBB2イントロンは、配列番号6に示された配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なFIXイントロンは、ヒトFIXの第一イントロンに由来し、これは配列番号7に示されている。FIXイントロンを、該イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって改変させ得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたFIXイントロンは、配列番号8に示された配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なニワトリβグロビンイントロンは配列番号9に示されている。ニワトリ-βグロビンイントロンを、該イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって改変させ得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号10に示された配列を有する。
【0011】
本発明者らは、このような改変されたイントロン、特に改変されたHBB2又はFIXイントロンが有利な特性を有し、導入遺伝子の発現を有意に改善させることができることを示した。さらに、本発明の構築物内に含まれるイントロン内のARFの数を減少させることによって、構築物の免疫原性も低減すると考えられている。
【0012】
したがって、本発明はまた、発現カセットに使用されることを目的とし、かつ該カセットに配置された導入遺伝子の発現効率を高めるように改変された、イントロンに関する。特に、本発明は、公知のイントロンから導かれた改変されたイントロンに関するが、ここではARFの数は減少しているか、又はARFは完全に除去されている。特定の実施態様では、本発明は、減少した数のARFを有するか又はARFを全く有さない、改変されたHBB2イントロンに関する。さらに特定の実施態様では、改変されたHBB2イントロンは、配列番号6に示されたイントロンである。別の実施態様では、本発明は、減少した数のARFを有するか又はARFを全く有さない、改変されたFIXイントロンに関する。さらに特定の実施態様では、改変されたFIXイントロンは、配列番号8に示されたイントロンである。別の実施態様では、本発明は、減少した数のARFを有するか又はARFを全く有さない、改変されたニワトリβ-グロビンイントロンに関する。さらに特定の実施態様では、改変されたニワトリβ-グロビンイントロンは、配列番号10に示されたイントロンである。本発明のさらなる態様は、本発明の改変されたイントロンを含む核酸構築物、ベクター、例えばウイルスベクター、特にAAVベクター、及び、細胞に関する。核酸構築物は、追加の発現制御配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば本明細書に記載されたものなどを含み得る。本明細書に開示されたような改変されたイントロンは、核酸構築物に配置された導入遺伝子、例えば治療用遺伝子のような関心対象の遺伝子の発現効率を高める。本発明のこの態様の文脈において、「治療用遺伝子」は、一般的に、病状の処置に有用である治療用タンパク質をコードする遺伝子をいう。治療用遺伝子は、発現されると、それが存在する細胞若しくは組織に対して、又は、該遺伝子が発現された患者に対して、有益な効果を付与する。有益な効果の例としては、容態若しくは疾病の兆候若しくは症状の寛解、容態若しくは疾病の予防若しくは抑制、又は、所望の特徴の付与が挙げられる。治療用遺伝子としては、患者の遺伝子欠損を部分的に又は完全に修正する遺伝子が挙げられる。特に、治療用遺伝子は、被験者の細胞又は組織中の欠損しているか、不完全であるか、又は最適未満である該タンパク質レベルによって引き起こされる欠損症を軽減するための、遺伝子療法において有用であるタンパク質をコードしている核酸配列であり得るがこれに限定されない。それ故、本発明は、本発明の改変されたイントロンを含み、かつさらには遺伝子療法に使用するための関心対象の治療用遺伝子を含む核酸構築物、ベクター、例えばウイルスベクター、特にAAVベクター、及び、細胞に関する。本発明は、一般的に、被験者の細胞又は組織中の治療用遺伝子の発現によって処置され得る、あらゆる疾病の治療に適用され得る。これらとしては、例えば、増殖性疾患(癌、腫瘍、異形成など)、感染症;ウイルス性疾患(例えばB型又はC型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペス、レトロウイルスなどによって誘発された);遺伝性疾患(嚢胞性線維症、ジストログリカノパチー、ミオパチー、例えばデュシェンヌ型筋ミオパチー;筋細管ミオパチー;血友病;鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球症、ファンコニー貧血;糖尿病;筋萎縮性側索硬化症、モノニューロン病(mononeurones disease)、例えば脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、又はシャルコー・マリー・トゥース病;関節炎;重症複合免疫不全症(例えばRS-SCID、ADA-SCID、又はX-SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖血小板減少症、X連鎖先天性好中球減少症、慢性肉芽腫症など)、心臓血管疾患(再狭窄、虚血、脂質異常症、ホモ接合性家族性高コレステロール血症など)、又は神経疾患(精神病、神経変性疾患、例えばパーキンソン病又はアルツハイマー病、ハンチントン病、耽溺(例えばタバコ、アルコール、又は薬物に対して)、癲癇、カナバン病、副腎白質ジストロフィーなど)、眼病、例えば網膜色素変性症、レーバー先天黒内障、レーバー遺伝性視神経症、シュタルガルト病;リソソーム蓄積症、例えばサンフィリポ症候群;高ビリルビン血症、例えばCNI型若しくはII型、又はジルベール症候群、ポンペ病などが挙げられる。上記のように及び以下の開示にさらに展開しているように、レシピエント宿主細胞において治療用遺伝子などの導入遺伝子の発現を奏功するためには、それは好ましくはプロモーターに、それ自身のプロモーター又は異種のプロモーターのいずれかに作動可能に連結されている。多くの適切なプロモーターが当技術分野において公知であり、その選択は、治療用遺伝子によってコードされる産物の所望の発現レベル;構成的発現、細胞特異的発現、又は組織特異的発現を所望するかどうかなどに依存する。改変されたイントロンを含む核酸構築物、該核酸構築物を含むベクター、又は、該構築物若しくは該ベクターを含む細胞はさらに、関心対象の遺伝子が上記に定義されているような治療用遺伝子である場合には、遺伝子療法又は細胞療法に使用され得る。
【0013】
特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、エンハンサーの前に場合により配置されたプロモーター、本発明のコドンの最適化されたUGT1A1コード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、エンハンサー(例えばApoE制御領域)の前に場合により配置されたプロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコドンの最適化されたUGT1A1コード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。さらに特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、エンハンサー、例えばApoE制御領域、プロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコドンの最適化されたUGT1A1コード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。
【0014】
本発明はまた、本明細書に開示されているような核酸配列を含むベクターに関する。特に、本発明のベクターは、遺伝子療法に使用するのに適したベクターである。例えば、ベクターはプラスミドベクターであり得る。より特定すると、ベクターは、肝組織又は肝細胞を標的化する遺伝子療法に適したウイルスベクターである。この場合、本発明の核酸構築物はまた、当技術分野において周知であるように、効果的なウイルスベクターを産生するのに適した配列を含有している。さらに特定の実施態様では、ウイルスベクターはAAVベクター、例えば肝組織又は肝細胞を形質導入するのに適したAAVベクター、より特定すると、AAV-1、-2、-5、-6、-7、-8、-9、-rh10、-rh74、-djなどのベクター又はレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。さらなる実施態様では、AAVベクターは、一本鎖又は自己相補性二本鎖のいずれかであるゲノムを含む。好ましくは、本発明の実施のために、AAVゲノムは一本鎖である。当技術分野において公知であるように、用途のために考えられる具体的なウイルスベクターに応じて、機能的なウイルスベクターを得るために、適切な配列が本発明の核酸構築物に導入されるだろう。適切な配列としては、AAVベクターではAAV ITR、又はレンチウイルスベクターではLTRが挙げられる。したがって、本発明はまた、各々の側のITR又はLTRによってフランキングされる、上記のような発現カセットに関する。
【0015】
特に好ましい実施態様では、本発明は、一本鎖又は二本鎖の自己相補性ゲノム(例えば一本鎖ゲノム)に本発明の核酸構築物を含む、AAVベクターに関する。特定の実施態様では、核酸構築物は、配列番号2又は配列番号3に示された配列を含む。1つの実施態様では、AAVベクターはAAV8ベクターである。さらに特定の実施態様では、該核酸は、プロモーター、特に遍在的又は肝特異的プロモーターに作動可能に連結されている。特定の変形の実施態様によると、プロモーターは遍在的プロモーター、例えばサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、及びSV40初期プロモーターである。特定の変形では、遍在的プロモーターはCAGプロモーターである。別の変形によると、プロモーターは、肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターである。特定の変形では、肝特異的プロモーターは、配列番号4のhAAT肝特異的プロモーターである。さらに特定の実施態様では、本発明のAAVベクターのゲノムに含められた核酸構築物はさらに、上記したようなイントロン、例えばプロモーターとUGT1A1タンパク質をコードしている核酸配列との間に配置されたイントロンを含む。AAVベクターゲノム内に導入された核酸構築物内に含まれ得る代表的なイントロンとしては、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、及びニワトリβ-グロビンイントロンが挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターのゲノム内の該イントロンは、古典的な(すなわち未改変の)イントロンであっても、又は、該イントロン内の代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるように若しくはさらには完全に除去するように設計された改変されたイントロンであってもよい。本発明の核酸がAAVベクター内に導入されているこの実施態様の実践に使用され得る、改変されたイントロン及び未改変のイントロンは、上記に完全に記載されている。特定の実施態様では、本発明のAAVベクター、特にAAV8ベクターは、そのゲノム内に、改変された(すなわち最適化された)イントロン、例えば配列番号7の改変されたHBB2イントロン、配列番号8の改変されたFIXイントロン、及び配列番号10の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンを含む。
【0016】
本発明はまた、本発明の核酸配列を用いて形質転換された、細胞、例えば肝細胞に関する。本発明の細胞を、それを必要とする被験者に、注射を介して、該被験者の肝臓又は血流に送達し得る。特定の実施態様では、本発明は、本発明の核酸配列を肝細胞に、特に、処置しようとする被験者の肝細胞に導入し、そして核酸が導入された該肝細胞を、被験者に投与することを含む。
【0017】
本発明はまた、本発明の核酸、本発明のベクター、又は本発明の細胞から選択された活性物質を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物も提供する。
【0018】
本発明はまた、本発明の核酸、ベクター、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む、UGT1A1遺伝子の突然変異によって引き起こされた高ビリルビン血症の処置法に関する。特定の実施態様では、高ビリルビン血症は、CNI型若しくはII型、又はジルベール症候群である。
【0019】
本発明はまた、医薬品として使用するための、本発明の核酸、ベクター、医薬組成物、又は細胞にも関する。
【0020】
本発明はまた、UGT1A1遺伝子の突然変異によって引き起こされた高ビリルビン血症の処置法、特に、CNI型若しくはII型、又はジルベール症候群の処置法に使用するための、本発明の核酸、ベクター、医薬組成物、又は細胞にも関する。
【0021】
本発明はさらに、UGT1A1遺伝子の突然変異によって引き起こされた高ビリルビン血症の処置に、特にCNI型若しくはII型、又はジルベール症候群の処置に有用な医薬品の製造における、本発明の核酸、ベクター、医薬組成物、又は細胞の使用にも関する。
【0022】
発明の詳細な説明
「UGT1A1」という用語は、配列番号1に示される野生型ホモサピエンスUDP-グルクロン酸転移酵素1ファミリー1、ポリペプチドA、(UGT1A1)cCDNAをいう(アクセッション番号NM_000463.2、これはUGT1A1ヒトのmRNAのCDSについてのリファレンス配列である;OMIMにおける参照番号191740)。
【0023】
「コドンの最適化された」という用語は、ヒトへの偏りを表現するコドン(すなわち、ヒト遺伝子においては一般的であるが、他の哺乳動物遺伝子又は哺乳動物以外の遺伝子においては一般的ではない)が、ヒトへの偏りを表現しない同義のコドン(同じアミノ酸をコードするコドン)へと変化していることを意味する。したがって、コドンの変化によって、コードされたタンパク質においてアミノ酸の変化は全く生じない。
【0024】
配列番号2又は配列番号3に示された配列、特に配列番号2に示された配列は、本発明のコドンの最適化された核酸配列の好ましい実施態様である。
【0025】
配列番号2及び配列番号3におけるコドン最適化から派生したDNA配列の変化は、UGT1A1配列のGC含量のそれぞれ約5%及び約10%の増加をもたらす。
【0026】
また、「実質的に同一」である、すなわち、配列番号2又は配列番号3の配列に対して約70%同一、より好ましくは約80%同一、さらにより好ましくは約90%同一、さらにより好ましくは約95%同一、さらにより好ましくは約97%、98%、又はさらには99%同一である、コドンの最適化されたヒトUGT1A1タンパク質をコードしている本発明の核酸配列も本発明によって包含される。
【0027】
「同一」は、2つの核酸分子間の配列同一性をいう。2つの比較される両方の配列における位置が、同じ塩基によって占有されている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占有されている場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一率は、2つの配列によって共有される一致した位置の数を、比較される位置の数で割り、それに100を乗じた関数である。例えば、2つの配列において10個の位置のなかの6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大の同一率が得られるように2つの配列を整列させて比較が行なわれる。当業者に公知である様々な生物情報学ツール、例えばBLAST又はFASTAを使用して、核酸配列を整列させ得る。
【0028】
コドンの最適化されたUGT1A1コード配列又は本発明の改変されたイントロンに適用されているような「低減した免疫原性」という用語は、このコドンの最適化された遺伝子又は改変されたイントロンが、イントロン内、又はコード配列内、又はその両方において、減少した数の潜在的な代替オープンリーディングフレーム(すなわちARF)を含み、これにより、野生型cDNA又は他のUGT1A1 cDNA変異体と比較して、特にコードされているmRNAからの潜在的な翻訳タンパク質副産物の数が制限することを意味する。特に、その長さが50bp以上にわたり、かつ開始コドンを有するフレーム内に終止コドンを有するARFが減少している。
【0029】
本発明の文脈において、「遺伝子療法」という用語は、疾病を処置する目的での個々の細胞への遺伝子/核酸の送達を含んだ、被験者の処置をいう。遺伝子の送達は、一般的に、ベクターとしても知られる、送達ビヒクルを使用して達成される。ウイルス性及び非ウイルス性ベクターが、患者の細胞に遺伝子を送達するために使用され得る。特に好ましいのはAAVベクター、特にAAV8ベクターである。
【0030】
本発明の核酸は、典型的には分子の3'末端に位置する、1つ以上のポリアデニル化シグナルを含み得ることが理解されるだろう。
【0031】
本発明の核酸を送達するのに好ましいベクターは、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又は非病原性のパルボウイルス、より好ましくはAAVベクターである。ヒトパルボウイルスのアデノ随伴ウイルス(AAV)は、感染した細胞のゲノムに組み込んで潜伏感染を確立することのできる、天然的に複製欠損である、ディペンドウイルスである。最後の特性は、哺乳動物のウイルス間では独特であるようである。なぜなら、組み込みは、第19番染色体(19q13.3-qter)に位置するAAVS1と呼ばれるヒトゲノムの特定の部位で起こるからである。
【0032】
それ故、AAVは、ヒト遺伝子療法のための潜在的なベクターとしてかなりの関心を集めている。ウイルスの好ましい特性には、ヒトの疾病を全く伴わないこと、分裂中及び分裂中ではない細胞の両方に感染できること、並びに、様々な組織に由来する多様な細胞系列に感染できることである。
【0033】
ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離され十分に特徴付けられたAAVの血清型の中で、ヒト血清型2が、遺伝子導入ベクターとして開発された最初のAAVである。他の現在使用されているAAV血清型としては、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74、及びAAVdjなどが挙げられる。さらに、天然ではない工学操作された変異体及びキメラAAVも有用であり得る。
【0034】
AAVウイルスは、従来の分子生物学的技術を使用して工学操作され得、これらの粒子を、細胞特異的に核酸配列を送達するために、免疫原性を最小限とするために、安定性及び粒子の寿命を調整するために、効果的な分解のために、核への正確な送達のために、最適化させることが可能となる。
【0035】
ベクターへの構築のための望ましいAAV断片は、キャップタンパク質(vp1、vp2、vp3及び超可変領域を含む)、repタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40を含む)、及びこれらのタンパク質をコードする配列を含む。これらの断片は、様々なベクター系及び宿主細胞に容易に利用され得る。
【0036】
Repタンパク質を欠失したAAV系の組換えベクターは、低い効率で宿主のゲノムに組み込み、標的細胞内で数年間持続することのできる安定な環状エピソームとして主に存在する。
【0037】
天然のAAV血清型を使用する代わりに、人工的なAAV血清型(例えば、非天然のキャプシドタンパク質を有するAAVを含むがこれに限定されない)を、本発明の文脈において使用し得る。このような人工的なキャプシドは、任意の適切な技術によって、異なる選択されたAAV血清型から、同じAAV血清型の非連続的な部分から、AAVではないウイルス源から、又は非ウイルス源から得ることのできる異種配列と組み合わせて、選択されたAAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質の断片)を使用して作製され得る。人工的なAAV血清型は、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、又は「ヒト化」AAVキャプシドであり得るがこれらに限定されない。
【0038】
したがって、本発明は、コドンの最適化されたUGT1A1コード配列である、本発明の核酸を含む、AAVベクターに関する。本発明の文脈において、AAVベクターは、関心対象の標的細胞、特に肝細胞を形質導入することのできるAAVキャプシドを含む。特定の実施態様によると、AAVベクターは、AAV-1、-2、-5、-6、-7、-8、-9、-rh10、-rh74、-djなどの血清型である。さらに特定の実施態様では、AAVベクターは、シュードタイプ化ベクターであり、すなわちそのゲノム及びキャプシドは、血清型の異なるAAVに由来する。例えば、シュードタイプ化AAVベクターは、そのゲノムがAAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、rh10、rh74、又はdj血清型に由来し、そのキャプシドが別の血清型に由来するベクターであり得る。例えば、シュードタイプ化ベクターのゲノムは、AAV1、2、3、4、5、6、7、10、rh10、rh74、又はdj血清型に由来し得、そのキャプシドはAAV8又はAAV9血清型に由来し、特にAAV8血清型に由来する。
【0039】
別の実施態様では、キャプシドは改変されたキャプシドである。本発明の文脈において、「改変されたキャプシド」は、キメラキャプシドであり得るか、又は、1つ以上の野生型AAV VPキャプシドタンパク質に由来する1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質を含むキャプシドであり得る。特定の実施態様では、AAVベクターはキメラベクターであり、すなわち、そのキャプシドは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVPキャプシドタンパク質を含むか、又は、少なくとも2つのAAV血清型に由来するVPタンパク質領域若しくはドメインを合体させた少なくとも1つのキメラVPタンパク質を含む。肝細胞を形質導入するのに有用であるこのようなキメラAAVベクターの例は、Shen et al., Molecular Therapy, 2007及びTenney et al., Virology, 2014に記載されている。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8キャプシド配列と、AAV1、2、3、4、5、6、7、9、10、rh10、rh74、又はdj血清型の配列との組合せから得ることができる。別の実施態様では、AAVベクターのキャプシドは、肝臓への高い指向性を呈する、1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質、例えば国際公開公報第2015013313号に記載のもの、特にRHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6キャプシド変異体を含む。
【0040】
別の実施態様では、改変されたキャプシドは、間違いを起こしがちなPCR及び/又はペプチド挿入(例えばBartel et al., 2011に記載)によって挿入されたキャプシドの改変からも得られる。さらに、キャプシド変異体は、チロシン突然変異体などの単一アミノ酸変化を含み得る(例えば、Zhong et al., 2008に記載)。
【0041】
さらに、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補性二本鎖ゲノムのいずれかであり得る(McCarty et al., Gene Therapy, 2003)。自己相補性二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復配列の1つから、末端分離部位(terminal resolution site)(trs)を欠失させることによって作製される。これらの改変されたベクター(その複製ゲノムは、野生型AAVゲノムの長さの半分である)は、DNA二量体をパッケージングする傾向を有する。好ましい実施態様では、本発明の実践で実行されるAAVベクターは、一本鎖ゲノムを有し、さらに好ましくはAAV8、AAV2、又はAAV5キャプシド、より好ましくはAAV8キャプシドを含む。
【0042】
実施例で以下に具現された具体的な送達システムとは別に、様々な送達システムが公知であり、これを使用して本発明の核酸を投与することができ、例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル、コドンの最適化されたUGT1A1コード配列を発現することのできる組換え細胞中への封入、レセプター媒介エンドサイトーシス、レトロウイルス又は他のベクターの一部としての治療用核酸の構築などがある。核酸の投与法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の核酸配列は、ベクター化されていようがいまいが、任意の慣用的な経路によって、例えば、注入又はボーラス注射によって、上皮裏打ち又は皮膚粘膜裏打ち(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸粘膜など)を通しての吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な物質と一緒に投与され得る。投与は全身性又は局所性であり得る。さらに、本発明の医薬組成物を被験者の肝臓に任意の適切な経路によって導入することが望ましくあり得る。さらに、裸DNA、例えばミニサークル及びトランスポゾンを、送達又はレンチウイルスベクターのために使用することができる。さらに、遺伝子編集技術、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPRも、本発明のコード配列を送達するのに使用することができる。
【0043】
特定の実施態様では、本発明の医薬組成物を、処置の必要な領域、すなわち肝臓に局所投与することが望ましくあり得る。これは、例えば、埋込剤を用いて達成され得、該埋込剤は、多孔性、非多孔性、又はゲル性材料、例えば膜、例えばシリコン製の膜、又は繊維である。
【0044】
別の実施態様では、本発明の核酸は、小胞、特にリポソームで送達され得る。
【0045】
さらに別の実施態様では、本発明の核酸は、放出制御システムで送達され得る。
【0046】
本発明はまた、本発明の核酸、又は本発明のベクター、又は本発明の細胞を含む、医薬組成物も提供する。このような組成物は、治療有効量の治療剤(本発明の核酸、ベクター、又は細胞)及び薬学的に許容される担体を含む。特定の実施態様では、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって認可されていること、又は、米国薬局方若しくは欧州薬局方、又は動物及びヒトにおける使用のための他の一般的に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルをいい、これと共に治療剤が投与される。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油、例えば原油、動物、植物、又は合成を起源とする油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物を静脈内投与する場合には水が好ましい担体である。食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射液のために使用することができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0047】
該組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝化剤も含有することができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの剤形をとることができる。経口用製剤は、標準的な担体、例えば医薬等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、被験者への適切な投与のための剤形を提供するように、適切な量の担体と一緒に、好ましくは精製形態の、治療有効量の治療剤を含有するだろう。特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター、又は細胞は、リン酸緩衝化食塩水を含みかつ0.25%のヒト血清アルブミンの補充された、組成物中に製剤化される。別の特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター、又は細胞は、全組成物の重量に対して0.01~0.0001重量%の最終濃度、例えば0.001重量%の濃度の乳酸リンゲル液及び非イオン性界面活性剤、例えばプルロニックF68を含む、組成物中に製剤化される。該製剤はさらに、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン、例えば0.25%のヒト血清アルブミンを含み得る。保存又は投与のいずれかのための他の適切な製剤は、特に国際公開公報第2005/118792号又はAllay et al., 2011から当技術分野において公知である。
【0048】
好ましい実施態様では、該組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物と同じ慣用的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要であれば、該組成物はまた、可溶化剤と、注射部位における疼痛を和らげるための局所麻酔剤、例えばリグノカインとを含み得る。
【0049】
CNの処置に効果的であろう本発明の治療剤(すなわち核酸、ベクター、又は細胞)の量は、標準的な臨床的技術によって決定され得る。さらに、インビボ及び/又はインビトロアッセイを場合により使用して、最適な投与量範囲を予測するのを助けることができる。製剤中に使用される正確な用量はまた、投与経路及び疾病の重度にも依存し、施術者の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。必要とする被験者へ投与される核酸、ベクター、又は細胞の用量は、投与経路、処置される具体的な疾病、被験者の年齢、又は必要とされる治療効果にとって必要な発現レベルを含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に基づいて変更されるだろう。当業者は、当技術分野におけるその知識に基づいて、これらの因子及び他の因子に基づいて必要とされる投与量の範囲を容易に決定することができる。ウイルスベクター、例えばAAVベクターを被験者に投与することを含む処置の場合、典型的なベクターの投与量は、体重1kgあたり少なくとも1×108個のベクターゲノム(vg/kg)、例えば少なくとも1×109vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg、少なくとも1×1013vg/kg、又は少なくとも1×1014vg/kgである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、野生型UGT1A1又は2つのコドンの最適化されたUGT1A1配列を発現しているプラスミドを用いてトランスフェクトされたHuh-7細胞において観察されたメッセンジャーRNAのレベル(パネルA)、及び、同じ試料中のUGT1A1タンパク質のウェスタンブロットによる定量(パネルB)を示したグラフを含む。
【
図2】
図2は、ルシフェラーゼの発現における様々なイントロンの最適化の効果(パネルA)、並びに、UGT1A1のRNA及びタンパク質発現レベルに対するHBB2最適化の効果(パネルB)を示したグラフを含む。
【
図3】
図3は、コドンの最適化されたUGT1A1コード配列を含有し、かつ、野生型(UGT1A1 2.0)又は最適化(UGT1A1 2.1)HBB2イントロンのいずれかを含有している、2つのベクターからのUGT1A1タンパク質の発現を示した、ウェスタンブロットゲルの写真である。
【
図4】
図4は、野生型UGT1A1ベクター(A)及びコドンの最適化されたUGT1A1 v2.1ベクター(B)内の代替リーディングフレーム(ARF)のコンピューターを用いての分析の図解である。
【
図5】
図5は、コドンの最適化されたUGT1A1ベクター又はPBSを様々なラット株へと注射した後に毎週測定された総ビリルビン(TB)のレベルを示したグラフである。
【
図6】
図6は、低用量のコドンの最適化されたUGT1A1ベクター又はPBSを様々なラット株へと注射した後に毎週測定された総ビリルビン(TB)のレベル(
図5に報告されたデータと比較して)を示したグラフである。
【
図7】
図7は、(A)3つのUGT1A1ベクターを注射した後に毎週測定された総ビリルビン(TB)のレベル(
図8に報告されたデータと比較して)を示したグラフ;(B)3つのベクターを用いて処置されたラットから得られた肝抽出物のウェスタンブロットの写真及びその相対的定量;及び(C)雄及び雌の動物の両方への注射から4か月後のAAV8-v2.1 UGT1A1の効力の長期評価を提示したグラフを含む。
【
図8】
図8は、クリグラー・ナジャー症候群のマウスモデルにおいて重度の高ビリルビン血症(総ビリルビン、mg/dlとして表現)を修正する様々な構築物の能力を示したグラフである。非処置動物(UNTR)が報告されている。
【0051】
範囲:この開示全体を通して、本発明の様々な態様を、範囲の形式で提示することができる。範囲の形式での記載は単に簡便性及び簡潔性のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として捉えられるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲、並びに、その範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、並びに、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6などを有すると考えられるべきである。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0052】
本明細書に引用された各々及びそれぞれの特許、特許出願、及び刊行物の開示は、これによって、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
さらに記載することなく、当業者は、上の記載及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造及び使用し、特許請求された方法を実践することができると考えられる。
【0054】
実施例
本発明は、以下の実験例及び添付の図面への参照によってさらに詳述されている。これらの実施例は、単に説明のためだけに提供され、制限するためではない。
【0055】
材料及び方法
コドン最適化及びAAVベクター構築物:
UGT1A1は、いくつかの異なるアルゴリズムに従ってコドン最適化を受けた。さらに、隠れた転写開始部位の除去を、構築物全体を対して実施した。得られた構築物を、発現プラスミドに導入するか、又は、AAV血清型8ベクターにパッケージングするかのいずれかを行ない、そして効力についてインビトロ及びインビボ(ラット及びマウス)で試験した。
【0056】
これらの構築物のために以下の略称を、この実験部全体を通して使用する:
-WT.0:野生型UGT1A1導入遺伝子及び野生型HBB2イントロン(配列番号5);
-WT:野生型UGT1A1導入遺伝子及びいくつかのARFが除去された最適化されたバージョンのHBB2イントロン(配列番号6);
-v2(又はv2.0):コドンの最適化されたUGT1A1導入遺伝子バージョン2.0(配列番号2)及び野生型HBB2イントロン(配列番号5)を含む;
-v2.1:コドンの最適化されたUGT1A1導入遺伝子バージョン2.0(配列番号2)及びいくつかのARFが除去された最適化されたバージョンのHBB2イントロン(配列番号6)を含む;
-v3:コドンの最適化されたUGT1A1導入遺伝子バージョン3(配列番号3)を、いくつかのARFが除去された最適化されたバージョンのHBB2イントロン(配列番号6)と共に含む;
-AAV8-hAAT-wtUGT1A1:hAATプロモーター野生型UGT1A1導入遺伝子の制御下で野生型構築物を含有しているAAV8ベクター;
-AAV8-hAAT-coUGT1A1v2:hAATプロモーターの制御下でv2構築物を含有しているAAV8プロモーター;
-AAV8-hAAT-coUGT1A1v2.1:hAATプロモーターの制御下でv2.1構築物を含有しているAAV8ベクター;
-AAV8-hAAT-coUGT1A1v3:hAATプロモーター野生型の制御下でv3構築物を含有しているAAV8ベクター。
【0057】
インビトロでのアッセイ:
ヒト肝細胞の細胞株Huh7を、0、5000(5)、10000(10)、若しくは25000(25)の漸増する感染多重度(MOI)で形質導入したか、又は、指定されたプラスミド及びリポフェクタミンを用いてトランスフェクトした。形質導入から48時間後、細胞を収集し、溶解し、ミクロソーム抽出物を調製し、ウェスタンブロット上にのせ、そこでヒトUGT1に対するポリクローナル抗体を使用してタンパク質を検出した。構成的に発現されているタンパク質のカルネキシンをローディング対照として使用した。
【0058】
ミクロソーム調製のために使用された細胞の部分を、トリゾールを用いてのmRNAの抽出のために使用した。抽出されたmRNAをDNAseを用いて処理し、逆転写し、UGT1A1配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてRT-PCRによって分析した。ヒト血清アルカリホスファターゼに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを標準化のために使用した。
【0059】
コンピューターを用いての分析:
代替リーディングフレーム(ARF)分析を、VectorNTIソフトウェア(Life Technologies)Classic startに存在するORF分析ツールを用いて2つのUGT1A1配列のコード鎖に対して実施し、真核細胞のための終止部位を利用した(それぞれ開始部位としてATG、終止部位としてTAA TGA TAG)。その長さが50bp以上にわたり、開始コドンを有するフレーム内に終止コドンを有する場合に、ARFが考慮された。
【0060】
動物:
UGT1A1遺伝子に欠損を呈する6~8週令のGunnラットに、ベクターを注射した。ベクターを、0.5mlの容量で尾静脈を介して送達した。血清試料を1週間に1回、回収し、総ビリルビン(TB)値をモニタリングした。処置されていない罹患動物及び野生型又は健康な同腹仔を対照として使用した。
【0061】
C57Bl/6バックグラウンドのUgt1突然変異マウスは以前に作製されている(Bortolussi et al., 2012)。野生型同腹仔を対照として使用した。マウスを、施設ガイドライン、並びに地域倫理委員会及び関連する規制当局によって承認された実験手順に従って、動物実験のためのEU指令2010/63/EUを十分に尊重して、飼育し取り扱った。Ugt1a遺伝子の遺伝子突然変異を、FVB/NJマウス株に導入した。この研究に使用された動物は、それぞれC57Bl/6マウス及びFVB/NJと9回を超える戻し交配後に得られた、少なくとも99.8%のC57Bl/6マウス又はFVB/NJ遺伝的バックグラウンドであった。マウスを、12/12時間の明暗サイクルを有する温度制御された環境で保った。該マウスは標準的な固形飼料及び水を自由に受け取った。ベクターを出生後2日目(P2)に腹腔内に注射し、ビリルビン値を、ベクターの注射から4週間後にアッセイした。
【0062】
AAVの用量:
投与されたベクターの用量を、図の説明文に示した。
【0063】
ラットの血清の調製:
血液試料を、後眼窩静脈叢への穿刺によって1週間に1回乾燥シリンジへ回収した。血液を4℃で8000rpmで遠心分離にかけ、分注し、-20℃で凍結させた。
【0064】
マウスの血漿の調製:
血液試料を、突然変異型及び野生型の同腹仔への注射から4週間後に、心臓穿刺によってEDTA入りの回収用シリンジに回収した。血液を2500rpmで遠心分離にかけ、血漿を回収し、分注し、-80℃で凍結させた。全ての手順を薄暗い所で実施して、ビリルビンの分解を回避した。
【0065】
ラットのビリルビンの測定:
血清中の総ビリルビンの測定を、ビリルビンアッセイキット(Abnova、参照番号KA1614)を使用して製造業者によって記載されているように行なった。本発明者らは、50μLの容量の血清を使用して、分析を実施した。530nmでの吸光値を、マルチプレートリーダー(PerkinElmer EnSpire)を使用することによって得た。
【0066】
マウスのビリルビンの測定:
血漿中の総ビリルビンの測定を、Direct and Total Bilirubin Reagentキット(BQ Kits, San Diego, CA)を使用して、製造業者によって記載されているように、小さな改変を加えて実施した:反応の規模を小さくし、それを最終容量300μl(6000μlの代わりに)で、僅か10μlの血漿を用いて実施した。3つの市販のビリルビン参照標準物質(対照血清I、対照血清II、及びビリルビン検量用試料、Diazyme Laboratories, Poway, CA, USA)を、品質対照として各セットの分析に含めた。560nmでの吸光値を、マルチプレートリーダー(Perkin Elmer Envision Plate Reader, Walthman, MA, USA)を使用することによって得た。
【0067】
肝臓抽出物に対するウェスタンブロット:
3つのベクターの中のいずれか1つを注射した動物から得られた瞬間凍結させた肝臓を迅速にホモジナイズした。ホモジネートを、ミクロソームの調製のために使用した。その後、ミクロソーム抽出物をウェスタンブロットにのせ、そこで、ヒトUGT1に対するポリクローナル抗体を使用してタンパク質を検出した。タンパク質のバンドを定量した。
【0068】
結果
ヒトUGT1A1コード配列のコドンの最適化されたバージョンを作製し、発現プラスミドに導入した。2つの最適化されたUGT1A1コード配列(v2及びv3配列)、及び野生型配列を、Huh-7細胞にトランスフェクトした。得られた結果を
図1に報告する。この実験は、2つのコドン最適化配列が、インビトロでヒト細胞内で野生型配列よりも効率的に翻訳されることを示す。
【0069】
図2のパネルAでは、hAATプロモーターの転写制御下でルシフェラーゼを発現しているプラスミドを用いてのトランスフェクションによって、Huh-7細胞において産生されたルシフェラーゼレベルが示されている。様々なイントロン配列が、ルシフェラーゼコード配列の5’にクローニングされている。そのなかの2つ、すなわちHBB2及びFIXイントロンが、野生型の該イントロンの配列において同定されたATGコドン内の1つのヌクレオチドを置換することによって行なわれた配列内のARFの除去によって最適化された。肝細胞株における最適化構築物の発現は、イントロン配列からのARFの除去が、インビトロでどちらの場合においてもルシフェラーゼの発現を増加させ、最適化されたHBB2イントロンが特に強力であることを示す。パネルBでは2つのプラスミドを比較し、どちらもhAATプロモーターの転写制御下でUGT1A1を発現している。V2.0は野生型HBB2イントロンを含有し、一方、v2.1は、最適化バージョンを含有している。示されたデータは、v2.1プラスミドが、v2.0よりも50%多くUGT1A1を発現し、mRNAレベルは全く増加していないことを示す。
【0070】
コドンの最適化されたUGT1A1バージョン2.0及び2.1 AAV8ベクター(それぞれ、UGT1A1 2.0及びUGT1A1 2.1)をインビトロで試験した。UGT1A1 2.0ベクター及びUGT1A1 2.1ベクターは、それらが野生型HBB2イントロン(配列番号5)又は改変されたHBB2イントロン(ここではARFが除去されている)(配列番号6)をそれぞれ含有しているという事実によってのみ異なる。得られた結果を
図3に報告する。この実験は、コドンの最適化されたUGT1A1ベクターバージョン2.1が、インビトロでヒト細胞内で2.0バージョンよりも強力であることを示す。
【0071】
図4は、野生型UGT1A1ベクター(A)及びコドンの最適化されたUGT1A1v2.1ベクター(B)内の代替リーディングフレーム(ARF)のコンピューターを用いての分析の結果を示す。v2.1ベクターは、野生型配列と比較して少数のARFしか有さず、ほとんどがプロモーターに対して逆方向である。さらに、本発明者らは、
図4で、HBB2イントロン(Aに提示された野生型UGT1A1構築物に使用される)に通常存在するARF9及び10が、UGT1A1v2.1最適化ベクターに導入された配列番号6の改変されたHBB2イントロンから除去されていることが分かる。
【0072】
次いで、コドンの最適化されたAAV8-hAAT-coUGT1A1v2.1ベクターを、5×10
12vg/kgの用量で投与した。尾静脈へのベクターの注射を、6週令のホモ接合型Gunnラット(UGT1A1-/-)で実施した。
図5のグラフには、PBSの注射された野生型Gunnラット(WT、灰色の線)、ヘテロ接合型Gunnラット(UGT1A1+/-、点線)、及びホモ接合型Gunnラット(黒線)への注射後、毎週測定された総ビリルビン(TB)レベルが示されている。全てのデータは、平均値±標準誤差として表現されている。コドンの最適化されたベクターの注射により、疾病の表現型は完全に修正された。
【0073】
AAV8-hAAT-UGT1A1v2.1ベクターは、5×10
11vg/kgの用量でも投与された。ベクターが、6週令のホモ接合型Gunnラット(UGT1A1-/-)への尾静脈への注射によって投与された。
図6のグラフには、PBSの注射された野生型Gunnラット(WT、灰色の線)、ヘテロ接合型Gunnラット(UGT1A1+/-、点線)、及びホモ接合型Gunnラット(黒線)への注射後、毎週測定された総ビリルビン(TB)レベルが示されている。全てのデータは、平均値±標準誤差として表現されている。コドンの最適化されたベクターの注射により、疾病の表現型は完全に修正された。
【0074】
2つのコドンの最適化された(v2.1及びv3)及び野生型AAV8-hAAT-UGT1A1ベクターをさらに、5×10
11vg/kgの用量で投与した。尾静脈へのベクターの注射を、6週令のホモ接合型Gunnラット(UGT1A1-/-)で実施した。
図7Aのグラフには、注射後、毎週測定された総ビリルビン(TB)のレベルが示されている。全てのデータは平均値±標準誤差として表現されている。
図7のパネルAに示されているように、3つのベクターの注射により、疾病の表現型は完全に修正された。注射から2か月後、動物を屠殺し、UGT1A1タンパク質レベルを、肝臓ホモジネートのウェスタンブロットによって定量した。パネルBには、UGT1A1タンパク質に対して特異的である抗体を用いてのウェスタンブロットの写真が示されている。バンドの定量は、たとえ差異が、様々な動物で観察された発現レベルの大きなばらつきに因り有意ではなくても、AAV8-hAAT-coUGT1A1v2.1で処置されたラットにおけるUGT1A1タンパク質の量の増加を示した。
【0075】
5×1012vg/kgのAAV8-v2.1 UGT1A1ベクターを注射した2カ月令のGunnラットにおいて長期の効力を評価した。注射から4か月後、血液中の平均ビリルビンレベルは、雄ラットにおいて1.75mg/dL(0日目における初期レベル:7.49、77%の減少)、雌ラットにおいて0.85mg/dL(0日目における初期レベル:6.15mg/dL、86%の減少)である。表現型の長期修正を示すこの結果は、様々な構築物を使用して雌ラットにおいてビリルビン基線レベルの僅か50%の減少を報告した、Pastore et al.の以前の研究と比較して特に顕著である。まとめると、示されたデータは、AAV8-hAAT-coUGT1A1v2.1に適用された本発明のプロセスにより、CNを治癒するために開発された他のベクターと比較してより良好なインビボでの効力を有するベクターがもたらされたことを示した。
【0076】
本発明者らはまた、クリグラー・ナジャー症候群のマウスモデルにおける総ビリルビンの修正効力を試験した。
図8は、注射から1か月後の総ビリルビン(TB)レベルを示したグラフである。動物に、出生後2日目(P2)に3×10
10vg/マウスの用量を注射した。
【0077】
15日間の光線療法を用いて生存を維持していた非処置の罹患動物を、対照として使用した(UNTR(PT))。
【0078】
この実験は、バージョン2.1ベクターが、全てのベクターの中で最も高いレベルの総ビリルビン修正をもたらすことを示す。全てのデータは、平均値±標準偏差として表現される。各々の点は、一匹の動物を示す。
【0079】
【配列表】