(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】撓み噛合い式歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
F16H1/32 B
(21)【出願番号】P 2020036325
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正幸
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/091522(WO,A1)
【文献】実開昭49-036380(JP,U)
【文献】特開2015-175388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起振体を有する起振体軸と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であって、
前記起振体軸を支持する軸受と、前記軸受の外輪を支持する支持部材と、前記支持部材と前記外輪との間に配置されるスペーサ及びシムと、を有し、
前記支持部材は、前記外輪の外周と対向する外輪配置面と、前記外輪の軸方向端面と対向する軸方向規制面と、を有し、
前記スペーサは、前記シムよりも前記軸方向規制面側に配置され、前記シムよりも軸方向幅が大きく、軸方向から見て前記シムと重なる面積が前記軸方向規制面よりも大きい、
撓み噛合い式歯車装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記外輪配置面のうち前記軸方向規制面側の端部に凹部を有し、
前記スペーサは、前記凹部よりも軸方向幅が大きい、
請求項1に記載の撓み噛合い式歯車装置。
【請求項3】
前記シムの内径は、前記スペーサの内径よりも小さい、
請求項1又は請求項2に記載の撓み噛合い式歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撓み噛合い式歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撓み変形する外歯歯車を備えた撓み噛合い式歯車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。外歯歯車は、起振体軸受を介して起振体軸が内嵌され、起振体軸が内側で回転することで撓み変形する。起振体軸は、外歯歯車の軸方向両側に配置された軸受を介して軸受ハウジングに支持される。
【0003】
このような撓み噛合い式歯車装置においては、外歯歯車を回転自在とするための軸方向隙間(遊び)を確保するために、軸受間の軸方向距離を調整する必要がある。そこで、軸受と軸受ハウジングの間に調整用のシムを挟む場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単純に軸受と軸受ハウジングの間にシムを配置した場合、軸受からのアキシャル荷重等によりシムが変形(摩耗、損傷、破断を含む)するおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、シムの変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、起振体を有する起振体軸と、前記起振体により撓み変形する外歯歯車と、前記外歯歯車と噛合う内歯歯車と、を備えた撓み噛合い式歯車装置であって、
前記起振体軸を支持する軸受と、前記軸受の外輪を支持する支持部材と、前記支持部材と前記外輪との間に配置されるスペーサ及びシムと、を有し、
前記支持部材は、前記外輪の外周と対向する外輪配置面と、前記外輪の軸方向端面と対向する軸方向規制面と、を有し、
前記スペーサは、前記シムよりも前記軸方向規制面側に配置され、前記シムよりも軸方向幅が大きく、軸方向から見て前記シムと重なる面積が前記軸方向規制面よりも大きい構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シムの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る撓み噛合い式歯車装置を示す断面図である。
【
図3】シム及びスペーサを入力側軸受に配置した変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[撓み噛合い式歯車装置の構成]
図1は、本発明に係る撓み噛合い式歯車装置1を示す断面図である。
この図に示すように、撓み噛合い式歯車装置1は、筒型の撓み噛合い式歯車装置であり、起振体軸10、外歯歯車11、第1内歯歯車31G及び第2内歯歯車32G、起振体軸受12、ケーシング33、第1軸受ハウジング34、第2軸受ハウジング35を備える。
【0011】
起振体軸10は、回転軸O1を中心に回転する中空筒状の軸であり、回転軸O1に垂直な断面の外形が非円形(例えば楕円状)の起振体10Aと、起振体10Aの軸方向の両側に設けられた軸部10B、10Cとを有する。楕円状は、幾何学的に厳密な楕円に限定されるものではなく、略楕円を含む。軸部10B、10Cは、回転軸O1に垂直な断面の外形が円形の軸である。
なお、以下の説明では、回転軸O1に沿った方向を「軸方向」、回転軸O1に垂直な方向を「径方向」、回転軸O1を中心とする回転方向を「周方向」という。また、軸方向のうち、外部の被駆動部材と連結されて減速された運動を当該被駆動部材に出力する側(図中の左側)を「出力側」といい、出力側とは反対側であって回転運動が入力される側(図中の右側)を「入力側」という。
【0012】
外歯歯車11は、可撓性を有するとともに回転軸O1を中心とする円筒状の部材であり、外周に歯が設けられている。
【0013】
第1内歯歯車31Gと第2内歯歯車32Gは、回転軸O1を中心として起振体軸10の周囲で回転を行う。これら第1内歯歯車31Gと第2内歯歯車32Gは、軸方向に並んで設けられ、外歯歯車11と噛合している。具体的には、第1内歯歯車31G及び第2内歯歯車32Gの一方が、外歯歯車11の軸方向の中央より片側の歯部に噛合し、他方が、外歯歯車11の軸方向の中央よりもう一方の片側の歯部に噛合する。
このうち、第1内歯歯車31Gは、第1内歯歯車部材31の内周部の該当箇所に内歯が設けられて構成される。一方、第2内歯歯車32Gは、第2内歯歯車部材32の内周部の該当箇所に内歯が設けられて構成される。
【0014】
起振体軸受12は、例えばコロ軸受であり、起振体10Aと外歯歯車11との間に配置される。起振体10Aと外歯歯車11とは、起振体軸受12を介して相対回転可能となっている。
起振体軸受12は、外歯歯車11の内側に嵌入される外輪12aと、複数の転動体(コロ)12bと、複数の転動体12bを保持する保持器12cとを有する。
複数の転動体12bは、第1内歯歯車31Gの径方向内方に配置され、周方向に並ぶ第1群の転動体12bと、第2内歯歯車32Gの径方向内方に配置され、周方向に並ぶ第2群の転動体12bとを有する。これらの転動体12bは、起振体10Aの外周面と外輪12aの内周面とを転走面として転動する。外輪12aは、複数の転動体12bの配列に対応して同形状のものが軸方向に二つ並んで設けられている。なお、起振体軸受12は、起振体10Aとは別体の内輪を有してもよい。
【0015】
起振体軸受12及び外歯歯車11の軸方向の両側には、これらに当接して、これらの軸方向の移動を規制する規制部材としてのスペーサリング41、42が設けられている。
【0016】
ケーシング33は、ボルト51により第1内歯歯車部材31と連結され、第2内歯歯車32Gの外径側を覆う。ケーシング33は、内周部に形成された主軸受38(例えばクロスローラ軸受)の外輪部を有しており、当該主軸受38を介して第2内歯歯車部材32を回転自在に支持している。撓み噛合い式歯車装置1が外部の相手装置と接続される際、ケーシング33と第1内歯歯車部材31は相手装置(被駆動部材とは異なる固定部材)に共締めにより連結される。
【0017】
第1軸受ハウジング34は、ボルト52により第1内歯歯車部材31と連結され、外歯歯車11と第1内歯歯車31Gとの噛合い箇所を軸方向の入力側から覆う。第1軸受ハウジング34は、起振体軸10の軸部10Bとの間に配置された入力側軸受36(例えば玉軸受)の外輪36aを支持している。つまり、第1軸受ハウジング34は、入力側軸受36を介して起振体軸10を回転自在に支持している。入力側軸受36の外輪36aは、第1軸受ハウジング34(の後述の外輪配置面34a)に締まり嵌めにより嵌合されている。
また、第1軸受ハウジング34は、特に限定はされないが、軽量化等の目的で、アルミニウムや樹脂等で構成されている。これらの素材は、鉄鋼系素材からなる入力側軸受36の外輪36aよりも線膨張係数が大きい。
【0018】
第2軸受ハウジング35は、ボルト53により第2内歯歯車部材32と連結され、外歯歯車11と第2内歯歯車32Gとの噛合い箇所を軸方向の出力側から覆う。第2軸受ハウジング35は、起振体軸10の軸部10Cとの間に配置された出力側軸受37(例えば玉軸受)の外輪37aを支持している。つまり、第2軸受ハウジング35は、出力側軸受37を介して起振体軸10を回転自在に支持している。出力側軸受37の外輪37aは、第2軸受ハウジング35(の後述の外輪配置面35a)に締まり嵌めにより嵌合されている。撓み噛合い式歯車装置1が外部の相手装置と接続される際、第2軸受ハウジング35と第2内歯歯車部材32は、相手装置の被駆動部材に共締めにより連結され、減速された回転を当該被駆動部材に出力する。
また。第2軸受ハウジング35は、特に限定はされないが、軽量化等の目的で、アルミニウムや樹脂等で構成されている。これらの素材は、鉄鋼系素材からなる出力側軸受37の外輪37aよりも線膨張係数が大きい。
【0019】
さらに、撓み噛合い式歯車装置1は、シール用のオイルシール43,44,45及びOリング46,47,48を備える。
オイルシール43は、軸方向の入力側の端部で、起振体軸10の軸部10Bと第1軸受ハウジング34との間に配置され、入力側への潤滑剤の流出を抑制する。オイルシール44は、軸方向の出力側の端部で、起振体軸10の軸部10Cと第2軸受ハウジング35との間に配置され、出力側への潤滑剤の流出を抑制する。オイルシール45は、ケーシング33と第2内歯歯車部材32との間に配置され、この部分からの潤滑剤の流出を抑制する。
Oリング46,47,48は、第1内歯歯車部材31と第1軸受ハウジング34との間、第1内歯歯車部材31とケーシング33との間、第2内歯歯車部材32と第2軸受ハウジング35との間にそれぞれ設けられ、これらの間で潤滑剤が移動することを抑制する。
【0020】
[調整シム]
図2は、
図1のA部の拡大図である。
この図に示すように、第2軸受ハウジング35の内周部であって当該第2軸受ハウジング35と出力側軸受37の間には、入力側軸受36と出力側軸受37の間の軸方向距離を調整するためのシム61及びスペーサ62が配置されている。
具体的には、第2軸受ハウジング35の内周部は、出力側軸受37の外輪37aの外周と対向する外輪配置面35aと、外輪配置面35aよりも出力側かつ小径であってオイルシール44の外周と対向するシール配置面35bと、外輪配置面35a及びシール配置面35bの間を連結する段付き面35cとを有している。
段付き面35cは、軸方向に垂直な円環状の平面であり、外輪37aの出力側の軸方向端面と対向して、当該外輪37a(出力側軸受37)の軸方向の移動を規制する軸方向規制面となっている。
また、外輪配置面35aのうち出力側の端部(段付き面35cとの連結部)には、ヌスミ(凹部)35dが形成されている。なお、ヌスミ35dに代えて、段付き面35cにまで及ぶ逃げ加工やR加工等を施してもよい。ただし、ヌスミ35dの方が、段付き面35cの面積(スペーサ62との接触面積)を大きく確保しやすい点で、より好ましい。
【0021】
シム61及びスペーサ62は、第2軸受ハウジング35の段付き面35cと、出力側軸受37の外輪37aとの間に、軸方向に重ねて配置される。
このうち、シム61は、例えばステンレス鋼(SUS材)や炭素工具鋼(SK材)などで構成され、薄い円環板状に形成されている。シム61は、スペーサ62と略同一の外径と、スペーサ62よりも小さい内径とを有しており、スペーサ62の略全面と接触している。
一方、スペーサ62は、例えばシム61と同様にステンレス鋼や炭素工具鋼などで構成されて円環板状に形成され、シム61よりも段付き面35c側(出力側)に配置されて当該段付き面35cと当接する。スペーサ62は、外輪配置面35aよりもやや小さい外径と、シール配置面35bよりも小さい内径とを有しており、段付き面35cの略全面と接触している。また、スペーサ62は、外周側のヌスミ35d内に脱落することのないよう、ヌスミ35dよりも大きい所定の軸方向幅(厚さ)に形成されている。
【0022】
なお、スペーサ62の軸方向幅は、少なくともシム61の軸方向幅よりも大きければよい。つまり、スペーサ62はシム61よりも変形しにくいものであればよい。
また、スペーサ62の径方向の形状・大きさは、軸方向から見てシム61と重なる面積が段付き面35cよりも大きくなるものであればよい。すなわち、軸方向から見てスペーサ62とシム61との重なる面積が、軸方向から見て段付き面35cとシム61との重なる面積よりも大きければよい。これにより、シム61がスペーサ62を介さずに段付き面35cと直接接触する場合に比べ、シム61の接触面積を増やしてシム61の面圧を低減できる。さらに、スペーサ62は、このような形状であれば円環状に限定されない。
【0023】
シム61は、上述したように、入力側軸受36と出力側軸受37の間の軸方向距離を調整する。より詳しくは、シム61は、起振体軸10を支持するハウジング側における入力側軸受36と出力側軸受37との間の軸受間距離L1を調整する(
図1参照)。ハウジング側の軸受間距離L1は、入力側軸受36の外輪36aと軸方向に当接して入力側軸受36の入力側の軸方向位置を規定する第1軸受ハウジング34の段付き面34sから、出力側軸受37の出力側の軸方向位置を規定するスペーサ62の入力側の端面までの距離である。
実際のシム61の厚さは、組立時において、軸受間距離L1が所定の長さとなるように、各部の軸方向寸法を実際に計測して決定される。
これにより、入力側軸受36と出力側軸受37の間の軸受間距離L1を適切な値に調整できる。ひいては、外歯歯車11を回転自在とするための軸方向隙間(遊び)を適切に確保できるとともに、起振体軸10の軸方向の移動を好適に抑制できる。
【0024】
[撓み噛合い式歯車装置の減速動作]
続いて、撓み噛合い式歯車装置1の減速動作について説明する。
モータ等の駆動源により起振体軸10の回転駆動が行われると、起振体10Aの運動が外歯歯車11に伝わる。このとき、外歯歯車11は、起振体10Aの外周面に沿った形状に規制され、軸方向から見て、長軸部分と短軸部分とを有する楕円形状に撓んでいる。さらに、外歯歯車11は、固定された第1内歯歯車31Gと長軸部分で噛合っている。このため、外歯歯車11は起振体10Aと同じ回転速度で回転することはなく、外歯歯車11の内側で起振体10Aが相対的に回転する。そして、この相対的な回転に伴って、外歯歯車11は長軸位置と短軸位置とが周方向に移動するように撓み変形する。この変形の周期は、起振体軸10の回転周期に比例する。
【0025】
外歯歯車11が撓み変形する際、その長軸位置が移動することで、外歯歯車11と第1内歯歯車31Gとの噛合う位置が回転方向に変化する。ここで、例えば、外歯歯車11の歯数が100で、第1内歯歯車31Gの歯数が102だとすると、噛合う位置が一周するごとに、外歯歯車11と第1内歯歯車31Gとの噛合う歯がずれていき、これにより外歯歯車11が回転(自転)する。上記の歯数であれば、起振体軸10の回転運動は減速比100:2で減速されて外歯歯車11に伝達される。
【0026】
一方、外歯歯車11は第2内歯歯車32Gとも噛合っているため、起振体軸10の回転によって外歯歯車11と第2内歯歯車32Gとの噛合う位置も回転方向に変化する。ここで、第2内歯歯車32Gの歯数と外歯歯車11の歯数とが同数であるとすると、外歯歯車11と第2内歯歯車32Gとは相対的に回転せず、外歯歯車11の回転運動が減速比1:1で第2内歯歯車32Gへ伝達される。これらによって、起振体軸10の回転運動が減速比100:2で減速されて、第2内歯歯車部材32及び第2軸受ハウジング35へ伝達され、この回転運動が被駆動部材に出力される。
【0027】
ここで、撓み噛合い式歯車装置1では、入力側軸受36と出力側軸受37との間の軸受間距離L1を調整するシム61が、第2軸受ハウジング35の段付き面35cとの間にスペーサ62を介在させている。そして、このスペーサ62は、シム61よりも厚く、かつ、軸方向から見てシム61と重なる面積が段付き面35cよりも大きい。
これにより、シム61を段付き面35cに直接接触させる場合に比べ、シム61よりも変形しにくいスペーサ62を用いてシム61の面圧を低減できる。したがって、シム61にアキシャル荷重(例えば、主軸受38のミスアライメントや外歯歯車11のトルクによる捩れ変形などに起因する誘起アキシャル荷重)が作用した場合であっても、シム61の変形(摩耗、損傷、破断を含む)を抑制し、シム61での調整による適切な軸受間距離L1を好適に維持できる。
【0028】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、第2軸受ハウジング35と出力側軸受37の外輪37aとの間にスペーサ62とシム61が配置されている。スペーサ62は、シム61よりも第2軸受ハウジング35の段付き面35c側に配置され、シム61よりも軸方向幅が大きく、軸方向から見てシム61と重なる面積が段付き面35cよりも大きい。
これにより、シム61を段付き面35cに直接接触させる場合に比べ、シム61よりも変形しにくいスペーサ62を用いてシム61の面圧を低減できる。したがって、シム61にアキシャル荷重が作用した場合であっても、シム61の変形を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、スペーサ62の軸方向幅が、外輪配置面35aの出力側の端部に形成されたヌスミ(凹部)35dよりも大きいので、スペーサ62がヌスミ35d内に脱落することがない。
【0030】
また、本実施形態によれば、第2軸受ハウジング35が、減速された回転を出力する出力部材であり、第2軸受ハウジング35の外周側には当該第2軸受ハウジング35を支持する主軸受38が配置され、外輪37aが締まり嵌めにより第2軸受ハウジング35に嵌合されている。
そのため、出力部材である第2軸受ハウジング35にラジアル荷重が作用することで、主軸受38にミスアライメントが生じ、起振体軸10を支持している出力側軸受37にもラジアル荷重が作用してクリープ(軸受ハウジングに対して外輪が相対回転する現象)が発生するおそれがあるところ、本実施形態では外輪37aが第2軸受ハウジング35に締まり嵌めされているため、クリープの発生を抑制できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、第2軸受ハウジング35が、出力側軸受37の外輪37aよりも線膨張係数が大きい素材で構成されている。そのため、外輪37aのクリープが生じやすく、シム61が損傷しやすいところ、このような構成であっても、スペーサ62の適用によりシム61の変形を好適に抑制できる。
【0032】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、スペーサ62及びシム61を出力側軸受37に対して配置したが、スペーサ62及びシム61は、入力側軸受36及び出力側軸受37のいずれか一方のみに配置されればよい。つまり、スペーサ62及びシム61は、出力側軸受37と第2軸受ハウジング35との間に代えて、入力側軸受36とこれを支持する第1軸受ハウジング34との間に配置してもよい。
この場合には、各部の形状を軸方向に反転させつつ、出力側軸受37に配置する場合と同様に構成すればよい。具体的には、
図3に示すように、第1軸受ハウジング34の内周部を、入力側軸受36の外輪36aの外周と対向する外輪配置面34aと、外輪配置面34aよりも入力側かつ小径であってオイルシール43の外周と対向するシール配置面34bと、外輪配置面34a及びシール配置面34bの間を連結する段付き面34cとを有する形状とする。外輪配置面34aのうち入力側の端部(段付き面34cとの連結部)には、ヌスミ(凹部)34dを形成する。そして、スペーサ62及びシム61を、第1軸受ハウジング34の段付き面34cと、入力側軸受36の外輪36aとの間に、入力側からこの順に重ねて配置すればよい。その他の構成は、上記実施形態の出力側軸受37に配置する場合と同様に構成すればよい。
このように、スペーサ62及びシム61を入力側軸受36に配置する場合でも、上記実施形態の出力側軸受37に配置した場合と同様の効果が得られる。また、スペーサ62及びシム61は、入力側軸受36及び出力側軸受37の両方に配置されてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、相手装置の被駆動部材が第2軸受ハウジング35及び第2内歯歯車部材32に連結され、相手装置のうち被駆動部材とは異なる固定部材がケーシング33及び第1内歯歯車部材31に連結されることとした。しかし、相手装置の被駆動部材がケーシング33、第1内歯歯車部材31及び第1軸受ハウジング34に連結され、相手装置の固定部材が第2軸受ハウジング35及び第2内歯歯車部材32に連結されることとしてもよい。つまり、第2軸受ハウジング35及び第2内歯歯車部材32を相手装置に固定し、ケーシング33、第1内歯歯車部材31及び第1軸受ハウジング34から出力を取り出すこととしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、撓み噛合い式歯車装置1として筒型の噛合い式歯車装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、例えばカップ型又はシルクハット型の撓み噛合い式歯車装置などにも好適に適用できる。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 撓み噛合い式歯車装置
10 起振体軸
10A 起振体
11 外歯歯車
31 第1内歯歯車部材
31G 第1内歯歯車
32 第2内歯歯車部材
32G 第2内歯歯車
34 第1軸受ハウジング(支持部材)
34a 外輪配置面
34c 段付き面(軸方向規制面)
34d ヌスミ(凹部)
35 第2軸受ハウジング(支持部材)
35a 外輪配置面
35c 段付き面(軸方向規制面)
35d ヌスミ(凹部)
36 入力側軸受
36a 外輪
37 出力側軸受
37a 外輪
38 主軸受
61 シム
62 スペーサ
L1 軸受間距離
O1 回転軸