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特許7349955気密端子および電動圧縮機およびその気密端子の配線部封止方法
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  • 特許-気密端子および電動圧縮機およびその気密端子の配線部封止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】気密端子および電動圧縮機およびその気密端子の配線部封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20230915BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20230915BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H01R9/16 101
H01R43/20 Z
F04B39/00 106A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020072013
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021170428
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩喜
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-100689(JP,A)
【文献】特表2016-513223(JP,A)
【文献】特開平05-321840(JP,A)
【文献】特開2002-369439(JP,A)
【文献】特開2004-103272(JP,A)
【文献】特開2012-184752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
H01R 43/20
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料により形成された複数のリード部材と、前記複数のリード部材を保持する外環ベースと、
前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と
少なくとも前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え
前記カバー部材は、前記複数のリード部材の露出部を取り囲むとともに、その内周壁面が該各リード部材の露出部の側周面に対向する周壁部を有していることを特徴とする気密端子。
【請求項2】
前記カバー部材は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなる請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記外環ベースの少なくとも片面に硬化性樹脂で固着した請求項1または請求項2に記載の気密端子。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記露出部の周囲を枡状に取り囲んだ周壁部を有する請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項5】
前記カバー部材の前記周壁部は、周壁部を脱着できるようにした請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項6】
気密端子のリード部材と車載電動圧縮機の電動モータの配線コードまたはコネクタとを接続し、その接続点を含むリード部材の全周を絶縁封止する方法であり、先ず前記気密端子の周壁部に囲まれた前記リード部材の前記電動モータ側の露出部に電動モータの電極部を接続させる電気接続工程、次いで前記周壁部内に封止樹脂を満たし前記電動モータ側の露出部を前記接続部の接続点ごと封止樹脂中に封入する樹脂充填工程、そして前記封止樹脂を硬化させる樹脂硬化工程からなる気密端子の配線部封止方法。
【請求項7】
前記樹脂硬化工程の後、前記気密端子を含むモータの各部品は、モータ組立工程において電動圧縮機として組み立てられる請求項6に記載の気密端子の配線部封止方法。
【請求項8】
前記電気接続工程において上記気密端子は、前記周壁部の一部または全部を脱着できるようにして、前記周壁部に邪魔されることなく前記露出金属部に対して電動モータへの配線作業が容易にし、配線コードまたはコネクタへの接続作業が完了した後、再び取り外した周壁部を取り付け、前記樹脂充填工程で前記周壁部内に封止樹脂を充填して露出金属部や電動モータの配線コードまたはコネクタの接続部分を全て樹脂封止する請求項6または7に記載の気密端子の配線部封止方法。
【請求項9】
圧縮機構と、前記圧縮機構を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ装置と、前記電動モータおよび前記圧縮機構を収納する密閉容器と、前記密閉容器に接合され前記インバータ装置を収容するインバータハウジングと、前記密閉容器に設けられ前記インバータ装置と前記電動モータとを電気的に接続するための気密端子とを有する電動圧縮機において、
前記気密端子は、導電性材料により形成されたリード部材と、前記リード部材を保持する外環ベースと、前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、前記外環ベースの前記電動モータ側の面に固着したカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記リード部材の前記電動モータ側の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部と、前記露出部に接続された前記電動モータの配線コードまたはコネクタからなる接続部とを有し、前記周壁部の内部は、封止樹脂が充填されており前記露出部を前記接続部の接続点ごと封止樹脂中に封入した電動圧縮機。
【請求項10】
前記カバー部材は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなる請求項9に記載の電動圧縮機。
【請求項11】
前記カバー部材は、前記外環ベースの少なくとも片面に硬化性樹脂で固着した請求項9または請求項10に記載の電動圧縮機。
【請求項12】
前記カバー部材は、前記露出部の周囲を枡状に取り囲んだ周壁部を有する請求項9ないし請求項11の何れか1つに記載の電動圧縮機。
【請求項13】
前記カバー部材の前記周壁部は、周壁部を脱着できるように構成された請求項9ないし請求項12の何れか1つに記載の電動圧縮機。
【請求項14】
導電性材料により形成されたリード部材と、
前記リード部材を保持する外環ベースと、
前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、
少なくとも前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記リード部材の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部とを有し、
前記カバー部材の前記周壁部は、周壁部を脱着できるようにした気密端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密端子に関し、より詳細には、車載用電動圧縮機に用いる気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
気密端子は、アイレットまたは金属ベースの挿通孔にガラス絶縁材を介してリードを気密に封着したもので、気密容器内に収容された電気機器や素子に電流を供給したり、電気機器や素子から信号を外部に導出したりする場合に用いられる。例えば、冷蔵庫やエアコンの圧縮機に用いられる気密端子は、国際公開WO2010/117000号公報(特許文献1)に示されるように、天板部、この天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、この筒状部の下端から斜め外方に広がったフランジ部、及び天板部から内方側に向かって延びるリード封着孔を形成する3個の小筒部を備えた金属ベースが用いられている。そして、この金属ベースのリード封着孔にそれぞれ封着用のガラス絶縁材を介して封着されたリードが気密封着される。
【0003】
ところで、ハイブリッド自動車では、エンジンによる環境への影響を軽減するという本来の目的から、自動車が信号などで一時停止する場合にはエンジンが停止する構成となっているものがある。このような場合、エンジンで駆動する圧縮機を用いていると、車が停止する度に空調が止まることになり、夏季や冬季、極寒や極暑の地では特に問題になる。そこで、ハイブリッド自動車や電気自動車では、エンジンで駆動する圧縮機ではなく電動モータで駆動する圧縮機、すなわち屋内用エアコンと同様に圧縮機構を電動モータとともに気密容器に内蔵した電動モータ内蔵の圧縮機が採用されている。これらの車載用電動圧縮機は、狭隘なエンジンルームへの設置を考慮して、出来るだけ省スペースかつ小型軽量のものが好ましい。電動モータは気密容器の端子取付孔に取付けた気密端子を通じて駆動されるので、用いられる気密端子も、例えば、中国実用新案登録CN206098769U号公報(特許文献2)に示されるように、省スペースに有利なように直列一線状にピン配置されたものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2010/117000号公報
【文献】中国実用新案登録CN206098769U号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載電動圧縮機は、冷媒および潤滑油と電動モータを収容した密閉容器の端子取付孔に気密端子を取付け、電源から気密端子を通して電動モータに電気を供給して冷媒を圧縮、循環させて車内外の熱交換に利用している。車載電動圧縮機には、潤滑油にPAG(ポリアルキレングリコール)系合成オイルを用いたものがある。PAG系合成オイルは電気絶縁性が低く通電性を有しており、従来の気密端子は、リード部材間に冷媒/オイルが侵入することを許容する構成であったため電気絶縁上好ましくなかった。従来、車載電動圧縮機の気密端子において、電気絶縁性を向上させる目的で密閉容器外側の外環ベース表面およびアウタリードにシリコーンゴム製の絶縁被覆を設けることがあるが、シリコーンゴムは、耐冷媒性、耐油性を備えておらず密閉容器内側に適用することが難しい。また、気密端子のインナリードにゴム被覆を施したとしても、その気密端子を挿入する配線ソケットが水密構造で無いためソケット内に冷媒/オイルが浸潤してくるのを防止できない。
【0006】
本発明は、車載電動圧縮機用の気密端子において電極表面に冷媒/オイルが接触しない気密端子およびその気密端子の配線部封止方法ならびに車載電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、導電性材料により形成されたリード部材と、前記リード部材を保持する外環ベースと、前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、少なくとも前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記リード部材の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部とを有する気密端子が提供される。前記カバー部材は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。このカバー部材は、必要に応じて周壁部の一部を脱着できるようにしても良く、少なくとも外環ベースおよびインナ側のリードの一部を覆うようにして固着されており、前記周壁部の内側にインナ側のリードまたは前記リードに接続された電極を露出するように取り付けられている。前記リードの露出部または前記リードに接続された電極の露出部の周囲に設けた周壁部は、この周壁内にさらに耐冷媒性および耐油性を有する絶縁封止材を充填し硬化させることにより、リードに接続する電動モータの配線コードの接続点を含むインナ側の通電部を全て絶縁被覆するために設けられている。すなわち、先ず気密端子の前記露出部に電動モータの配線コードを接続させ、次いで前記周壁部に封止樹脂を内壁の上端まで満たし、これを硬化して前記配線コードの接続点ごと前記露出部を全て封止してしまえば、電気絶縁性が低いオイルのリードへの侵入を完全に遮断でき、気密端子の通電部が冷媒/オイルと接触しないようになる。
【0008】
本発明の気密端子の配線部封止方法は、先ず気密端子の前記露出部と電動モータの配線コードを接続させ、次いで前記周壁部に封止樹脂を満たし、これを硬化して前記配線コードの接続点ごと前記露出部を全て封止する。上記気密端子は、周壁部の一部または全部を脱着できるようにしても良く、これにより前記露出部の側面に対向する周壁部の一部または全部を取り外すことができるので、周壁部に邪魔されることなく前記露出部に対して電動モータの配線コードを取り付けることができ、配線コードの接続作業が容易になる。配線コードの接続作業が完了した後、再び取り外した周壁部を取り付け、前記手順で周壁部内に封止樹脂を充填して前記露出部および前記配線コードの接続部分を全て樹脂封止する。
【0009】
本発明の車載電動圧縮機は、圧縮機構と、前記圧縮機構を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記電動モータ及び圧縮機構を収納する密閉容器と、前記密閉容器に接合され前記インバータを収容するインバータハウジングと、前記密閉容器に設けられ前記インバータと前記電動モータとを電気的に接続するための気密端子とを有する電動圧縮機において、
前記気密端子は、導電性材料により形成されたリード部材と、前記リード部材を保持する外環ベースと、前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、少なくとも前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記リード部材の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部とを有する。前記カバー部材は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本開示の一実施形態によれば、気密端子の電気絶縁性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る気密端子10を示し、(a)はインナ側平面図を、(b)は(a)のD-D線に沿って切断した正面部分断面図を、(c)はアウタ側下面図を、(d)は側面図を示す。
図2】本発明に係る気密端子20を示し、(a)はインナ側平面図を、(b)は(a)のD-D線に沿って切断した正面部分断面図を、(c)はアウタ側下面図を、(d)は側面図を示す。なお、(a)のインナ側平面図は、カバー部材24に隠れたリード部材21を薄線で透視させている。
図3】本発明に係る気密端子の配線部封止方法30の工程フロー図を示す。
図4】本発明に係る車載電動圧縮機40の断面図を示す。
図5】本発明に係る気密端子50の取付け状態を示し、(a)は電動モータの密閉容器のインナ側から見た部分平面図を、(b)は(a)のD-D線に沿って切断した部分断面図を示す。なお、(a)のインナ側の部分平面図は、カバー部材54に隠れたリード部材51およびリード部材51と接続したコネクタの電極部512を薄線で透視させている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る気密端子は、少なくとも、導電性材料により形成されたリード部材と、前記リード部材を保持する外環ベースと、前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記リード部材の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部とを有する。カバー部材は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、周壁部は、必要に応じて一部または全部を脱着できるようにしても良い。カバー部材は、電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。このカバー部材は少なくとも外環ベースおよびインナ側のリードの一部を覆うようにして固着されており、前記周壁部の内側にインナ側のリードまたは前記リードに接続された電極を露出するように取り付けられている。前記リードの露出部または前記リードに接続された電極の露出部の周囲に設けた周壁部は、この周壁内にさらに耐冷媒性および耐油性を有する絶縁封止材を充填し硬化させることにより、リードに接続する電動モータの配線コードの接続点を含むインナ側の通電部を全て絶縁被覆するために設けられている。すなわち、先ず気密端子の前記露出部に電動モータの配線コードを接続させ、次いで前記周壁部に封止樹脂を内壁の上端まで満たし、これを硬化して前記配線コードの接続点ごと前記露出部を全て封止してしまえば、電気絶縁性が低いオイルのリードへの侵入を完全に遮断でき、気密端子の通電部が冷媒/オイルと接触しないようになる。
【0013】
本発明の気密端子の配線部封止方法は、前記周壁部の内側に設けたインナ側のリード露出部またはこれに接続された電極板などを含むリード部材の露出部に、車載電動圧縮機の圧縮機構を駆動する電動モータの配線コードを接続させる方法である。
【0014】
すなわち、本発明の気密端子の配線部封止方法は、先ず気密端子の周壁部に囲まれた前記リードまたはリード部材の露出部に電動モータの配線コードを接続させ、次いで前記周壁部内部に封止樹脂を満たし、これを硬化して前記露出部を配線コードの接続点ごと全て封止樹脂の中に封入する。上記気密端子は、周壁部の一部または全部を脱着できるようにしても良く、これにより前記露出金属部の側面に対向する周壁部の一部を取り外すことができるので、周壁部に邪魔されることなく前記露出金属部に対して電動モータの配線コードを取り付けることができ、配線コードの接続作業が容易になる。配線コードの接続作業が完了した後、再び取り外した周壁部を取り付け、前記手順で周壁部内に封止樹脂を充填して前記露出金属部および前記配線コードの接続部分を全て樹脂封止する。
【0015】
本発明の車載電動圧縮機は、圧縮機構と、前記圧縮機構を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記電動モータ及び圧縮機構を収納する密閉容器と、前記密閉容器に接合され前記インバータを収容するインバータハウジングと、前記密閉容器に設けられ前記インバータと前記電動モータとを電気的に接続するための気密端子とを有する電動圧縮機において、
前記気密端子は、導電性材料により形成されたリード部材と、前記リード部材を保持する外環ベースと、前記リード部材と前記外環ベースとの間を絶縁する絶縁材と、少なくとも前記外環ベースの片面に固着したカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記リード部材の露出部と、この露出部の周囲を取り囲んだ周壁部と、前記露出部に接続された前記電動モータの配線コードとを有し、周壁部の内部は、封止樹脂が充填されており前記露出部を配線コードの接続点ごと封止樹脂の中に封入されている。
【0016】
本発明の気密端子10は、図1に示すように、導電性材料により形成されたリード部材11と、リード部材11を保持する外環ベース12と、リード部材11と外環ベース12との間を絶縁する絶縁材13と、外環ベース12の片面に硬化性樹脂で固着したカバー部材14aとを備え、カバー部材14aは、少なくともリード部材11の露出部15と、露出部15の周囲を取り囲んだ周壁部14bとを有する。カバー部材14は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、周壁部14bは、必要に応じて一部を脱着できるようにしても良い。カバー部材14は、その後電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。カバー部材14は少なくとも外環ベース12およびインナ側のリード部材11の一部を覆うようにして固着されており、周壁部14bの内側にインナ側のリード部材11を露出するように取り付けられている。リード部材11には図示しない電極板を有してもよい。カバー部材14aは、リード部材11の露出部15またはリード部材11に接続された前記電極板の露出部の周囲を、周壁部14bが囲むように設けている。カバー部材14aは、リード部材11に電気接続された電動モータの配線コードまたはコネクタの接続点を含むインナ側の通電部分を全て絶縁被覆するために設けられる。すなわち、リード部材11に電動モータの配線部を接続した後、周壁部14bの中に耐冷媒性および耐油性を有する絶縁封止材を充填し硬化させることで、リード部材11に電気接続された電動モータの配線コードまたはコネクタの接続点を含むインナ側の通電部分を全て絶縁被覆する。
【0017】
本発明の気密端子20は、図2示すように、導電性材料の電極板21aとリード21bとを含むリード部材21と、リード部材21を保持する外環ベース22と、リード部材21と外環ベース22との間を絶縁する絶縁材23と、外環ベース22の片面に硬化性樹脂で固着したカバー部材24とを備え、カバー部材24は、少なくともリード部材21の露出部25と、露出部25の周囲を取り囲んだ周壁部24b,24dとを有する。図2の24a,24b,24c,24b,24dからなるカバー部材24は、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁材からなり、周壁部24b,24dは、必要に応じて周壁部24dを脱着できるようにしても良い。カバー部材24は、その後電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。カバー部材24は、外環ベース22および露出部25を除いたインナ側のリード部材21を覆うようにして固着されており、周壁部24b,24dで囲まれた内側にインナ側のリード21bまたはリード21bに接続された電極板21aを露出するように取り付けられている。リード21bの露出部またはリード21bに接続された電極板21aの露出部25の周囲に設けた周壁部24b,24dは、周壁部24b,24dの中にさらに耐冷媒性および耐油性を有する絶縁封止材を充填し硬化させることにより、リード部材21に電気接続する電動モータの配線コードまたはコネクタの接続点を含むインナ側の通電部分を全て絶縁被覆するために設けられる。
【0018】
本発明の気密端子の配線部封止方法30は、本発明に係る気密端子のリード部材と車載電動圧縮機の電動モータの配線コードまたはコネクタとを接続し、その接続点を含むリード部材の全周を絶縁封止する方法であり、図3の工程フロー図に示すように、先ず気密端子の周壁部に囲まれた前記リードまたはリード部材の露出部に電動モータの電極部を接続させる電気接続工程31、次いで前記周壁部内に封止樹脂を満たす樹脂充填工程32、そして前記封止樹脂を硬化させる樹脂硬化工程33からなる。その後、前記気密端子を含む固定子、回転子、などのモータの各部品は、モータ組立工程34において電動圧縮機として組み立てられる。配線被覆方法30により、電動モータの密閉容器の内側に配置された前記気密端子のインナ側の通電部分(露出した金属部分など)を配線コードまたはコネクタの接続点ごと全て封止樹脂の中に封入する。上記気密端子は、周壁部の一部を脱着できるようにしても良く、これにより前記露出金属部の側面に対向する周壁部の一部を取り外すことができるので、周壁部に邪魔されることなく前記露出金属部に対して電動モータへの配線作業が容易になる。こうして配線コードまたはコネクタへの接続作業が完了した後、再び取り外した周壁部を取り付け、前記手順で周壁部内に封止樹脂を充填して露出金属部や電動モータの配線コードまたはコネクタの接続部分を全て樹脂封止する。
【0019】
車載電動圧縮機の一例として、スクロール式の電動圧縮機の概要について図4を参照しながら説明する。車載電動圧縮機40は、フロント側の密閉容器41とリア側の密閉容器42とを、ボルト締結などにより気密性を保って一体に固定した密閉容器を有する。密閉容器41,42は、通常アルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属性材料により形成されている。密閉容器42に冷媒およびオイルの吸入口43と、密閉容器41に吐出口44とを有する。吸入口43および吐出口44はそれぞれ図示しない外部冷媒/循環回路に接続されている。
【0020】
密閉容器41,42の内側42aには、スクロール式の圧縮機構45および圧縮機構45を駆動する電動モータ46が収納されている。電動モータ46は、密閉容器42に軸受を介して回転可能に保持した回転軸47と回転軸47に固定された回転子48と回転子48の外周に配置され、密閉容器42の内壁に固定された固定子49とにより構成されている。回転子48は複数の永久磁石401を有し、固定子49は三相に巻線されたコイル402を有する。
【0021】
圧縮機構45は、主要部として密閉容器41,42の内壁に固定された固定スクロール403と、これと対向配置された可動スクロール404とにより構成されている。固定スクロール403と可動スクロール404との間には、冷媒を圧縮するための容積可変の圧縮室405を備える。可動スクロール404は、軸受および偏心ブッシュ406を介して回転軸47の偏心ピン407に連結されることで回転軸47の回転に応じて揺動され、圧縮室405の容積を変化させて冷媒を圧縮できるように構成されている。
【0022】
一方、密閉容器42の外周壁の一部には、インバータ装置408を収容するインバータハウジング409が設けられている。インバータハウジング409内には、密閉容器42の挿着孔に外部電源となるインバータ装置408および気密端子410が取り付けられている。気密端子410は、インバータハウジング409内で、インバータ側のコネクタ411を介してインバータ装置408と電気的に接続され、かつ、密閉容器42の内側42aで電動モータ46の配線コードまたはコネクタからなる接続部412を介して固定子49のコイル402と電気的に接続されている。すなわち、インバータ装置408から気密端子410を介して電動モータ46のコイル402に通電すると、回転子48が回転され、回転軸47によって圧縮機構45が作動する。
【0023】
本発明の車載電動圧縮機40は、図4に示したように、圧縮機構45と、圧縮機構45を駆動する電動モータ46と、電動モータ46を駆動するインバータ装置408と、電動モータ46および圧縮機構45を収納する密閉容器41,42と、この密閉容器に接合されインバータ装置408を収容するインバータハウジング409と、前記密閉容器に設けられインバータ装置408と電動モータ46とを電気的に接続するための気密端子410とを有する電動圧縮機において、
気密端子410は、図1または図2に示したように、少なくとも、導電性材料により形成されたリード部材11または21と、リード部材11または21を保持する外環ベース12または22と、リード部材11または21と外環ベース12または22との間を絶縁する絶縁材13または23と、外環ベース12または22の片面に固着したカバー部材14または24とを備え、カバー部材14または24は、リード部材11または21の露出部15または25と、露出部15または25の周囲を取り囲んだ周壁部14bまたは24b,24dと、露出部15または25に接続された電動モータ46の配線コードまたはコネクタからなる接続部412とを有し、前記周壁部の内部は、耐冷媒性および耐油性の封止樹脂が充填されており露出部15または25を接続部412の接続点ごと封止樹脂中に封入して、冷媒および潤滑油に触れないように被覆した車載電動圧縮機が提供される。
【0024】
本発明に係る気密端子50は、図5に示すように、気密端子50を取り付ける密閉容器502の内部に納められた電動モータの配線コードまたはモールド型コネクタからなる接続部512に気密端子50のリード部材51を電気接続させた後、周壁部54の内部に、耐冷媒性および耐油性の封止樹脂54cを充填して通電部分を接続部412の接続点ごと封止樹脂中に封入して硬化させたことで、冷媒および潤滑油に触れないように被覆して密閉容器502の挿着孔510に挿着されて、螺旋500等で締結されている。
【実施例
【0025】
本発明に係る実施例1の気密端子10は、図1に示すように、Fe-Cr合金のリード部材11と、リード部材11を保持する鉄製の外環ベース12と、リード部材11と外環ベース12との間を絶縁したソーダバリウムガラスの絶縁材13と、外環ベース12の片面に熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂で固着した絶縁性プラスチックのカバー部材14aとを備え、カバー部材14aは、リード部材11の露出部15と、露出部15の周囲を枡状に取り囲んだ周壁部14bとを有する。カバー部材14aは、耐冷媒性および耐油性を有する電気絶縁性のプラスチック材からなる。カバー部材14aは、その後電動モータを収容した密閉容器の内側に配置される。カバー部材14aはインナ側のリード部材11を貫通させて外環ベース12の一部を覆うようにして固着されており、周壁部14bの内側にインナ側のリード部材11を露出するように取り付けられている。カバー部材14aは、リード部材11に電気接続された電動モータの配線コードまたはコネクタの接続点を含むインナ側の通電金属部分を全て絶縁被覆するために設けられている。外環ベース12には締結用の通孔100を有する。
【0026】
本発明に係る実施例2の気密端子20は、図2に示すように、Fe-Cr合金のリード21bとリード21bの片側に接続された電極板21aとからなる3つのリード部材21と、リード21bを貫通させて保持する鉄製の外環ベース22と、リード21bと外環ベース22との間を絶縁するソーダバリウムガラスの絶縁材23と、外環ベース22上に設けられリード21bおよび絶縁材23を覆って外環ベース22との内部空間を硬化性樹脂24cで充填して固着したプラスチック製のカバー部材24とを備え、カバー部材24は、電極板21aの露出部25と、露出部25の周囲を枡状に取り囲んだ周壁部24b,24dとを有する。周壁部24dは、周壁部24bからスライド式に取り外すことができる。これにより、電気接続工程において、周壁部24bは周壁部24dを外した状態でリード部材21への接続作業ができ、周壁部24dに邪魔されることが無いので作業が容易となる。リード21bに接続された電極板21aの露出部25の周囲に設けた周壁部24b,24dは、周壁部24b,24dの中にさらに耐冷媒性および耐油性を有する絶縁封止材を充填し硬化させることにより、リード部材21に電気接続する電動モータの配線コードまたはコネクタの接続点を含むインナ側の通電部分を全て絶縁被覆するために設けられている。外環ベース22には締結用の通孔200を有する。
【0027】
本発明に係る実施例3の気密端子の配線部封止方法30は、図3に示すように、先ず気密端子の周壁部で枡状に囲まれた前記リードまたはリード部材の露出部に電動モータの配線コードまたはバスバーなど電気接続部を接続させる電気接続工程31、次いで前記枡状内部にエポキシ封止樹脂を満たす樹脂充填工程32、前記エポキシ封止樹脂を硬化させる樹脂硬化工程33からなり、その後、前記気密端子を含む固定子などのモータの各部品は、モータ組立工程34において車載電動圧縮機を駆動する電動モータに組み立てられる。
【0028】
本発明に係る実施例4の車載電動圧縮機40は、図4に示すように、圧縮機構45と、圧縮機構45を駆動する電動モータ46と、電動モータ46を駆動するインバータ装置408と、電動モータ46および圧縮機構45を収納する密閉容器41,42と、この密閉容器に接合されインバータ装置408を収容するインバータハウジング409と、前記密閉容器に設けられインバータ装置408と電動モータ46とを電気的に接続するための気密端子410とを有する電動圧縮機において、
気密端子410は、図2に示したように、少なくとも、導電性材料により形成されたリード部材21と、リード部材21を保持する外環ベース22と、リード部材21と外環ベース22との間を絶縁する絶縁材23と、外環ベース22の片面に固着したカバー部材24とを備え、カバー部材24は、リード部材21の露出部25と、露出部25の周囲を枡状に取り囲んだ周壁部24b,24dと、露出部25に接続された電動モータ46のモールド型コネクタからなる接続部412とを有し、周壁部24b,24dの内部は、耐冷媒性および耐油性の封止樹脂が充填されており露出部25を接続部412の接続点ごと封止樹脂中に封入して、冷媒および潤滑油に触れないように被覆した車載電動圧縮機が提供される。
【0029】
実施例4の気密端子410の挿着部周辺は、図5に示すように、これを取り付ける密閉容器502の内部に納められた電動モータのモールド型コネクタ511にリード部材を電気接続させた後、枡状の周壁部54の内部に、耐冷媒性および耐油性の封止樹脂54cを充填して通電部分を接続部512の接続点ごと封止樹脂中に封入して硬化させたことで、冷媒および潤滑油に触れないように被覆して密閉容器502の挿着孔510に挿着されて、螺旋500で締結されて取付けられている。
【0030】
本発明に係る気密端子のリード部材は、その表面に所望のめっき被覆を施すことができる。また、リード部材および外環ベースは、気密端子に利用可能な金属材であれば何れの材料を用いてもよい、例えばFe-Cr合金に限らず、Fe-Ni合金、炭素鋼、銅合金、アルミニウム合金等に変更してもよい。同様に実施例に記載の絶縁材は、リードと金属ベースとを電気絶縁および気密封止できればよく、実施例のソーダバリウムガラスに限らず任意のガラス材または樹脂封止材やセラミクス材を用いることができる。例えば、絶縁材は、必要ならば絶縁材の一部を互いに異なるガラス材で形成してもよく、また、さらに必要ならばガラス材の一部または全部をエポキシ樹脂等の樹脂材に替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、気密端子に利用でき、特に車載用の気密端子に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
気密端子10、リード部材11、外環ベース12、リード部材11、絶縁材13、カバー部材14a、周壁部14b、露出部15、通孔100、気密端子20、リード部材21、電極板21a、リード21b、外環ベース22、絶縁材23、カバー部材24、周壁部24b,24d、硬化性樹脂24c、露出部25、通孔200、配線部封止方法30、電気接続工程31、樹脂充填工程32、樹脂硬化工程33、モータ組立工程34、車載電動圧縮機40、密閉容器41,42、密閉容器の内側42a、吸入口43、吐出口44、圧縮機構45、電動モータ46、回転軸47、回転子48、固定子49、永久磁石401、コイル402、固定スクロール403、可動スクロール404、圧縮室405、偏心ブッシュ406、偏心ピン407、インバータ装置408、インバータハウジング409、気密端子410、コネクタ411、接続部412、リード部材51、周壁部54、封止樹脂54c、螺旋500、密閉容器502、挿着孔510、コネクタ511、接続部512。
図1
図2
図3
図4
図5