(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ドライブディスク
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20230915BHJP
F16H 13/08 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B60B19/00 H
F16H13/08 J
(21)【出願番号】P 2020098235
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢田 渉
(72)【発明者】
【氏名】五味 洋
(72)【発明者】
【氏名】出口 徳生
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063214(JP,A)
【文献】特開2017-043218(JP,A)
【文献】国際公開第2008/132779(WO,A1)
【文献】特開2010-260501(JP,A)
【文献】特開2020-026266(JP,A)
【文献】国際公開第2010/052890(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
F16H 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の主輪の両側にそれぞれ配置され、前記主輪に摩擦力を与えて前記主輪を中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転させるドライブディスクであって、
フレームに回転可能に支持される円盤状のベースと、
前記ベースの外周部に互いに傾斜して回転可能に支持され、前記主輪に接触する複数のローラとを有し、
前記ベースは、第1板金部材及び第2板金部材を有し、
前記第1板金部材は、第1中央部と、前記第1中央部から径方向外方に延びる複数の第1アーム部とを有し、
前記第2板金部材は、第2中央部と、前記第2中央部から径方向外方に延びる複数の第2アーム部とを有し、
前記第1中央部と前記第2中央部とは互いに同軸に配置され、
前記ローラのそれぞれは、それぞれの回転軸方向において第1端と第2端とを有し、
前記第1アーム部のそれぞれは、第1支持部と、前記第1アーム部において前記第1支持部よりも前記ベースの径方向内方に配置された第2支持部とを有し、
前記第2アーム部のそれぞれは、第3支持部と、前記第2アーム部において前記第3支持部よりも前記ベースの径方向外方に配置された第4支持部とを有し、
隣り合う2つの前記ローラの一方は、前記第1端において前記第1支持部に支持されると共に前記第2端において前記第3支持部に支持され、
隣り合う2つの前記ローラの他方は、前記第1端において前記第4支持部に支持されると共に前記第2端において前記第2支持部に支持され、
前記第1支持部と前記第2支持部とは、第1屈曲部を介して互いに傾斜し、
前記第3支持部と前記第4支持部とは、第2屈曲部を介して互いに傾斜しているドライブディスク。
【請求項2】
前記第1支持部と前記第3支持部とは、互いに平行に配置され、
前記第2支持部と前記第4支持部とは、互いに平行に配置されている請求項1に記載のドライブディスク。
【請求項3】
前記第1板金部材及び前記第2板金部材の周方向において、隣り合う2つの前記第1アーム部の先端部の間に前記第2アーム部の1つの先端部が配置されている請求項2に記載のドライブディスク。
【請求項4】
前記第1アーム部の前記先端部のそれぞれと、前記第2アーム部の前記先端部のそれぞれとは、前記ベースの回転軸線に直交する仮想平面上に配置されている請求項3に記載のドライブディスク。
【請求項5】
前記第1アーム部の前記先端部は前記ベースの径方向外方に延び、
前記第2アーム部の前記先端部は前記ベースの径方向内方に延びている請求項4に記載のドライブディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦式駆動装置において使用されるドライブディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
倒立振子型車両の駆動装置として使用される摩擦式駆動装置が公知である(例えば、特許文献1)。摩擦式駆動装置は、フレームと、フレームに回転可能に支持された一対のドライブディスクと、一対のドライブディスクの間に配置された環状の主輪と、ドライブディスクのそれぞれを独立して駆動する一対のアクチュエータとを有する。ドライブディスクは、フレームに対して回転可能な円盤状のベースと、ベースの外周部に回転可能に支持され、主輪に接触する複数のドライブローラとを有する。複数のドライブローラは、ベースの回転軸線を中心として回転対称に配置されている。主輪は、中心軸線回り、及び環状の軸線回りに回転することができる。摩擦式駆動装置は、一対のドライブディスクの回転方向及び回転量を制御することによって、主輪の中心軸線回り、及び環状の軸線回りに回転を制御し、前後左右を含む全方向に移動することができる。
【0003】
特許文献1に係るドライブディスクは、ドライブローラを受容するためのスロットと、各スロットを画定する側壁部に形成された軸受孔と、軸受孔に軸線方向から挿入され、ドライブローラを回転可能に支持するローラ軸とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るドライブディスクは、ベースに複数のドライブローラを回転可能に支持するための複数の軸受壁及び軸受壁の間に形成されるスロットを有する。複数の軸受壁及びスロットはそれぞれ向きが異なるため、加工が困難であり、費用が増大するという問題がある。複数の軸受壁を別部材として用意し、ベースに組み付けるという製造方法も考えられるが、ベースに組み付けるべき軸受壁の数が多く、作業工数が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、製造が容易なドライブディスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、環状の主輪(5)の両側にそれぞれ配置され、前記主輪に摩擦力を与えて前記主輪を中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転させるドライブディスク(4)であって、フレーム(3)に回転可能に支持される円盤状のベース(20)と、前記ベースの外周部に互いに傾斜して回転可能に支持され、前記主輪に接触する複数のローラ(21)とを有し、前記ベースは、第1板金部材(47)及び第2板金部材(48)を有し、前記第1板金部材は、第1中央部(51)と、前記第1中央部から径方向外方に延びる複数の第1アーム部(52)とを有し、前記第2板金部材は、第2中央部(61)と、前記第2中央部から径方向外方に延びる複数の第2アーム部(67)とを有し、前記第1中央部と前記第2中央部とは互いに同軸に配置され、前記ローラのそれぞれは、それぞれの回転軸方向において第1端(43A)と第2端(43B)とを有し、前記第1アーム部のそれぞれは、第1支持部(71)と、前記第1アーム部において前記第1支持部よりも前記ベースの径方向内方に配置された第2支持部(72)とを有し、前記第2アーム部のそれぞれは、第3支持部(73)と、前記第2アーム部において前記第3支持部よりも前記ベースの径方向外方に配置された第4支持部(74)とを有し、隣り合う2つの前記ローラの一方は、前記第1端において前記第1支持部に支持されると共に前記第2端において前記第3支持部に支持され、隣り合う2つの前記ローラの他方は、前記第1端において前記第4支持部に支持されると共に前記第2端において前記第2支持部に支持され、前記第1支持部と前記第2支持部とは、第1屈曲部(54E)を介して互いに傾斜し、前記第3支持部と前記第4支持部とは、第2屈曲部(67E)を介して互いに傾斜している。
【0008】
この態様によれば、複数のローラを回転可能に支持するベースを2つの板金部材によって形成することができるため、ドライブディスクの製造を容易にすることができる。
【0009】
上記の態様において、前記第1支持部と前記第3支持部とは、互いに平行に配置され、前記第2支持部と前記第4支持部とは、互いに平行に配置されているとよい。
【0010】
この態様によれば、各ローラを第1アーム部及び第2アーム部に安定性良く支持させることができる。
【0011】
上記の態様において、前記第1板金部材及び前記第2板金部材の周方向において、隣り合う2つの前記第1アーム部の先端部の間に前記第2アーム部の1つの先端部が配置されているとよい。
【0012】
この態様によれば、ドライブローラの周方向において第1アーム部と第2アーム部とが交互に配置される。そして、第1アーム部と第2アーム部との間のそれぞれに、ローラが配置される。
【0013】
上記の態様において、前記第1アーム部の前記先端部のそれぞれと、前記第2アーム部の前記先端部のそれぞれとは、前記ベースの回転軸線に直交する仮想平面上に配置されているとよい。
【0014】
この態様によれば、ドライブローラの周方向において第1アーム部と第2アーム部とが交互に配置される。
【0015】
上記の態様において、前記第1アーム部の前記先端部は前記ベースの径方向外方に延び、前記第2アーム部の前記先端部は前記ベースの径方向内方に延びているとよい。
【0016】
この態様によれば、第1アーム部と第2アーム部との干渉を避けつつ、ドライブローラの周方向において第1アーム部と第2アーム部とを交互に配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の構成によれば、製造が容易なドライブディスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るドライブディスクを備えた倒立振子型車両の斜視図
【
図4】ドライブディスク及びドライブローラの斜視図
【
図7】ドライブローラを省略した状態におけるドライブディスクのローラ受容部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るドライブディスクの実施形態について説明する。ドライブディスクは摩擦式駆動装置に使用される。摩擦式駆動装置は、例えば倒立振子型車両に使用される。
【0020】
図1~
図3に示すように、倒立振子型車両1は、摩擦式駆動装置2を有する。摩擦式駆動装置2は、フレーム3と、フレーム3に回転可能に支持された一対のドライブディスク4と、左右のドライブディスク4の間に配置された環状の主輪5と、一対のドライブディスク4をそれぞれ独立して回転させる一対のアクチュエータ6とを有する。
【0021】
図1に示すように、フレーム3は、略直方体の上部フレーム11と、上部フレーム11の左右の下端からそれぞれ下方に延びた左右の下部フレーム12と、下部フレーム12のそれぞれに結合された左右の下部プレート13と、左右の下部フレーム12間に掛け渡された支持軸14とを有する。上部フレーム11の上部には乗員の臀部を支持するサドル16が取り付けられる。下部プレート13の下端には、乗員の足裏を支持する左右のフットレスト17が取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、支持軸14は、左右に延び、左右の下部フレーム12に結合している。支持軸14の左端は左側の下部フレーム12を通過し、支持軸14の右端は右側の下部フレーム12を通過している。支持軸14は基端にボルト頭部14Aを有し、ボルト頭部14Aにおいて下部フレーム12に当接する。支持軸14の先端にはナット18が装着されることによって、支持軸14は下部フレーム12に固定される。
【0023】
ドライブディスク4は、環状の主輪5の両側にそれぞれ配置され、主輪5に摩擦力を与えて主輪5を中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転させる。ドライブディスク4は、フレーム3に回転可能に支持される円盤状のベース20と、ベース20の外周部に互いに傾斜して回転可能に支持され、主輪5に接触する複数のドライブローラ21(ローラ)とを有する。
【0024】
本実施形態では、左右のドライブディスク4は、支持軸14に回転可能に支持され、左右の下部フレーム12の間に配置されている。左右のドライブディスク4は、円板状に形成され、中心部に貫通孔である軸受孔23を有する。支持軸14は、左右のドライブディスク4の軸受孔23のそれぞれを通過している。左右のドライブディスク4は、軸線X1を中心として回転可能に支持軸14に支持されている。各軸受孔23にはボールベアリング等の軸受24が装着され、軸受24を介して支持軸14に左右のドライブディスク4が支持されている。
【0025】
左右のドライブディスク4の互いに相反する面にはドリブンプーリ31がそれぞれ設けられている。ドリブンプーリ31はドライブディスク4と同軸に設けられている。上部フレーム11には、右側のドライブディスク4を駆動させるための右側のアクチュエータ6と、左側のドライブディスク4を駆動させるための左側のアクチュエータ6とが設けられている。アクチュエータ6は、例えば電動モータである。各アクチュエータ6の出力軸にはドライブプーリ32が設けられている。左右において対応するドライブプーリ32とドリブンプーリ31とはベルト33によって連結されている。左右のアクチュエータ6は互いに独立して回転可能であり、左右のドライブディスク4を独立して回転させる。
【0026】
図1~
図3に示すように、主輪5は、環状をなし、一対のドライブディスク4の間にドライブディスク4と同軸に配置され、複数のドライブローラ21に接触し、中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転可能となっている。本実施形態では、主輪5は、円環状の芯体35と、芯体35に回転可能に支持された複数のドリブンローラ36とを有する。複数のドリブンローラ36は、芯体35の円周方向に等間隔で配列されている。各ドリブンローラ36は、環状の芯体35の軸線X3(環状の軸線)を中心として回転可能に芯体35に支持されている。詳細には、各ドリブンローラ36は、芯体35に対するそれぞれの位置において、芯体35の接線を中心として回転することができる。各ドリブンローラ36は、外力を受けて芯体35に対して回転する。
【0027】
主輪5は、左右のドライブディスク4の外周部に沿って配置され、左右のドライブディスク4に設けられた複数のドライブローラ21と接触している。左右のドライブディスク4のドライブローラ21は、主輪5の内周部に接触し、左右両側から主輪5を挟持する。また、左右のドライブディスク4のドライブローラ21は、主輪5の内周部に接触することによって、ドライブディスク4の軸線X1を中心とした径方向への変位を規制する。これにより、主輪5は左右のドライブディスク4に支持され、主輪5(芯体35)の中心軸線は左右のドライブディスク4の軸線X1と同軸に配置される。主輪5は、複数のドリブンローラ36において、左右のドライブディスク4の複数のドライブローラ21に接触する。
【0028】
図1に示すように、左右の下部プレート13には尾輪アーム38の左右の前端が左右に延びる軸線を中心として回動可能に支持されている。尾輪アーム38の回転軸線は、ドライブディスク4の軸線X1と一致していてもよい。尾輪アーム38は、前端から後方に向けて延び、前端が二股に分岐している。尾輪アーム38の後端には、尾輪39が設けられている。尾輪39は、例えばオムニホイールであり、前後に延びる軸線を中心として回転可能に尾輪アーム38の後端に支持されている。尾輪39は尾輪アーム38の後端に設けられた電動モータである尾輪モータ40によって回転される。
【0029】
左右のドライブディスク4が同一方向に同一の回転速度で回転する場合には、主輪5は左右のドライブディスク4と共に回転する。すなわち、主輪5は軸線X1と一致する自身の回転軸線を中心として回転し、倒立振子型車両1は前進あるいは後進する。このとき、ドライブディスク4のドライブローラ21及び主輪5のドリブンローラ36は芯体35に対して回転しない。
【0030】
左右のドライブディスク4間に回転速度差が生じる場合には、左右のドライブディスク4の回転に起因する円周(接線)方向の力に対し、この力に直交する向きの分力が左右のドライブローラ21から主輪5のドリブンローラ36に作用する。ドライブローラ21の軸線がドライブローラ21の周方向に対して傾斜しているため、ドライブディスク4間に回転速度差に起因して分力が生じる。この分力によって、ドライブローラ21がベース20に対して回転すると共に、ドリブンローラ36が芯体35に対して回転する。これにより、主輪5は、回転軸線に沿った方向、すなわち倒立振子型車両1の左右方向に駆動力を発生させる。これにより、倒立振子型車両1は尾輪39を中心として左右に回転する。
【0031】
以下、
図4~
図8を参照してドライブディスク4について詳細に説明する。ドライブディスク4の軸線X1に沿った方向において、主輪5側を向く方向を第1方向、相反する方向を第2方向とする。
【0032】
図8に示すように、各ドライブローラ21は、軸部43と、軸部43の中央に回転可能に設けられ、軸部43に対して直径が大きいローラ本体部44とを有する。各ドライブローラ21は、ドライブディスク4において、ドライブディスク4の軸線X1を中心として回転対称に配置される。各ドライブローラ21は、ドライブディスク4の外周部に、周方向に等間隔に配置される。各ドライブローラ21の軸部43は、ドライブディスク4の周方向(接線方向)に対して傾斜し、かつドライブディスク4の軸線X1と直交する面に対して傾斜するように配置される。各ドライブローラ21の一部は、ベース20に対して第1方向に突出している。ドライブディスク4の周方向における一方側に配置される軸部43の端部を第1端43Aとし、相反する側の端部を第2端43Bとする。
【0033】
図4に示すように、各ドライブディスク4のベース20は、第1板金部材47及び第2板金部材48を有する。第1板金部材47及び第2板金部材48のそれぞれは、1枚の平板状の板金を切断加工、穴あけ加工、及び曲げ加工することによって形成されている。第1板金部材47及び第2板金部材48は、例えばステンレス等の合金鋼や炭素鋼、アルミニウム等の非鉄鋼材から形成されているとよい。
【0034】
図5に示すように、第1板金部材47は、第1中央部51と、第1中央部51から径方向外方に延びる複数の第1アーム部52とを有する。第1中央部51は、円板形に形成されている。第1中央部51は、第1方向を向く第1面51Aと、第2方向を向く第2面51Bとを有する。第1中央部51の軸線は、ドライブディスク4の軸線X1及びベース20の軸線と一致する。
【0035】
第1中央部51の中心には、第1面51Aから第2面51Bに貫通する円形の第1孔51Cが形成されている。また、第1中央部51において、第1孔51Cの周囲には複数の第1ボルト孔51Dが形成されている。第1孔51Cは、ドライブディスク4の軸線X1と同軸に配置されている。
【0036】
複数の第1アーム部52は、ドライブディスク4の軸線X1を中心として互いに回転対称に形成されている。複数の第1アーム部52は、ドライブディスク4の軸線X1を中心として互いに等間隔に配置されている。各第1アーム部52は、第1中央部51から径方向外方に延びる第1アーム基端部53と、第1アーム基端部53の先端から第1アーム基端部53と異なる方向に延びる第1アーム先端部54とを有する。
【0037】
第1アーム基端部53は、第1中央部51と同一の平面上に配置されている。ドライブディスク4の軸線X1に沿った方向から見て、第1アーム基端部53の延在方向は、第1中央部51の径方向に対して角度を有してもよい。第1アーム基端部53は、平板状に形成されている。第1アーム基端部53は、第1中央部51の第1面51Aと同一の平面上に配置された第1面53Aと、第1中央部51の第2面51Bと同一の平面上に配置された第2面53Bとを有する。
【0038】
第1アーム先端部54と第1アーム基端部53との境界には、直線状に延びる第1屈曲部56が形成されている。第1屈曲部56において、第1アーム先端部54は第1アーム基端部53に対して第2方向に屈曲されている。第1屈曲部56において第1アーム基端部53と第1アーム先端部54とは鋭角をなすように屈曲されている。
【0039】
第1アーム先端部54は第1アーム基端部53の先端からドライブディスク4の径方向外方に延びている。また、ドライブディスク4の軸線X1に沿った方向から見て、第1アーム先端部54は第1アーム基端部53に対して直交する方向に延びている。また、第1中央部51の第1面51A側から見て、第1アーム先端部54は、第1アーム基端部53からドライブディスク4の軸線X1を中心とした右回り方向に延びている。
【0040】
第1アーム先端部54は、平板状に形成されている。第1アーム先端部54の第1面54Aは、第2方向かつドライブディスク4の軸線X1を中心とした周方向における一方側を向いている。第1アーム先端部54の第2面54Bは、第1方向かつドライブディスク4の軸線X1を中心とした周方向における他方側を向いている。
【0041】
第1アーム先端部54の第1面54Aは、第1屈曲部56における曲面を介して第1アーム基端部53の第1面53Aに連続している。同様に、第1アーム先端部54の第2面54Bは、第1屈曲部56における曲面を介して第1アーム基端部53の第2面53Bに連続している。第1アーム先端部54は、第1アーム先端部54の長手方向に延びる第1側縁54Cと第2側縁54Dを有する。第1側縁54Cは、第2側縁54Dに対して第1方向に配置されている。
【0042】
図3及び
図4に示すように、第2板金部材48は、第1板金部材47に対して第2方向に配置されている。
図6に示すように、第2板金部材48は、第2中央部61と、第2中央部61から径方向外方に延びる複数の第2アーム部62とを有する。第2中央部61は、円板形に形成されている。第2中央部61は、第1方向を向く第1面61Aと、第2方向を向く第2面61Bとを有する。第2中央部61の軸線は、ドライブディスク4の軸線X1と同軸に配置されている。第1中央部51と第2中央部61とは、互いに同軸に配置されている。第2中央部61の半径は、第1中央部51の半径よりも大きく形成されている。
【0043】
第2中央部61の中心には、第1面61Aから第2面61Bに貫通する円形の第2孔61Cが形成されている。また、第2中央部61において、第2孔61Cの周囲には複数の第2ボルト孔61Dが形成されている。第2孔61Cは、ドライブディスク4の軸線X1と同軸に配置されている。
【0044】
図3に示すように、第1中央部51と第2中央部61とは、スペーサ26を介して複数のボルト64及びナット65によって締結されている。各ボルト64は、第1ボルト孔51D、スペーサ26に形成されたボルト孔(不図示)、第2ボルト孔61Dを通過している。軸受孔23は、スペーサ26の中央部にドライブディスク4の軸線X1と同軸に形成されている。
【0045】
図6に示すように、複数の第2アーム部62は、ドライブディスク4の軸線X1を中心として互いに回転対称に形成されている。複数の第2アーム部62は、ドライブディスク4の軸線X1を中心として互いに等間隔に配置されている。各第2アーム部62は、第2中央部61から径方向外方に延びる第2アーム基端部66と、第2アーム基端部66の先端から第2アーム基端部66と異なる方向に延びる第2アーム先端部67とを有する。
【0046】
第2アーム基端部66は、第2中央部61と同一の平面上に配置されている。ドライブディスク4の軸線X1に沿った方向から見て、第2アーム基端部66の延在方向は、第1中央部51の径方向に対して角度を有してもよい。第2アーム基端部66は、平板状に形成されている。第2アーム基端部66は、第2中央部61の第1面61Aと同一の平面上に配置された第1面66Aと、第2中央部61の第2面61Bと同一の平面上に配置された第2面66Bとを有する。
【0047】
第2アーム先端部67と第2アーム基端部66との境界には、直線状に延びる第2屈曲部68が形成されている。第2屈曲部68において、第2アーム先端部67は第2アーム基端部66に対して第1方向に屈曲されている。第2屈曲部68において第2アーム基端部66と第2アーム先端部67とは鈍角をなすように屈曲されている。
【0048】
第2アーム先端部67は第2アーム基端部66の先端からドライブディスク4の径方向内方に延びている。また、第2中央部61の第1面61A側から見て、第2アーム先端部67は、第2アーム基端部66からドライブディスク4の軸線X1を中心とした左回り方向に延びている。
【0049】
第2アーム先端部67は、平板状に形成されている。第2アーム先端部67の第1面67Aは、第1方向かつドライブディスク4の軸線X1を中心とした周方向における一方側を向いている。第2アーム先端部67の第2面67Bは、第2方向かつドライブディスク4の軸線X1を中心とした周方向における他方側を向いている。
【0050】
第2アーム先端部67の第1面67Aは、第2屈曲部68における曲面を介して第2アーム基端部66の第1面66Aに連続している。同様に、第2アーム先端部67の第2面67Bは、第2屈曲部68における曲面を介して第2アーム基端部66の第2面66Bに連続している。第2アーム先端部67は、第2アーム先端部67の長手方向に延びる第3側縁67Cと第4側縁67Dを有する。第3側縁67Cは、第4側縁67Dに対して第1方向に配置されている。
【0051】
図4、
図7、及び
図8に示すように、ベース20の周方向において、隣り合う2つの第1アーム先端部54の間に複数の第2アーム先端部67の1つが配置されている。同様に、ベース20の周方向において、隣り合う2つの第2アーム先端部67の間に複数の第1アーム先端部54の1つが配置されている。すなわち、ベース20の軸線X1を中心とした周方向において、第1アーム先端部54と第2アーム先端部67とは交互に配置されている。第1アーム先端部54のそれぞれと第2アーム先端部67のそれぞれとは、ベース20の回転軸線に直交する1つの仮想平面上に配置されている。
【0052】
隣り合う第1アーム先端部54と第2アーム先端部67は、ドライブローラ21のローラ本体部44を受容するローラ受容部69を画定する。ローラ受容部69は、第1アーム先端部54の第2面54Bと第2アーム先端部67の第2面67Bとによって画定される第1ローラ受容部69Aと、第1アーム先端部54の第1面54Aと第2アーム先端部67の第1面67Aとによって画定される第2ローラ受容部69Bとを含む。第1ローラ受容部69Aと第2ローラ受容部69Bとは、ベース20の周方向に交互に配置されている。各ローラ受容部69は、第1方向に向けて開口している。
【0053】
図4及び
図5に示すように、第1アーム部52のそれぞれは、第1支持部71と、第1アーム部52において第1支持部71よりベース20の径方向内方に配置された第2支持部72とを有する。第1支持部71と第2支持部72とは第1アーム先端部54に設けられ、第2支持部72は第1支持部71よりも第1アーム先端部54の基端側に配置されている。
【0054】
図4及び
図6に示すように、第2アーム部62のそれぞれは、第3支持部73と、第2アーム部62において第3支持部73よりベース20の径方向外方に配置された第4支持部74とを有する。第3支持部73と第4支持部74とは第2アーム先端部67に設けられ、第4支持部74は第3支持部73よりも第2アーム先端部67の基端側に配置されている。
【0055】
図4及び
図13に示すように、隣り合う2つのドライブローラ21の一方は、第1端43Aにおいて第1支持部71に支持されると共に第2端43Bにおいて第3支持部73に支持される。また、隣り合う2つのローラの他方は、第1端43Aにおいて第4支持部74に支持されると共に第2端43Bにおいて第2支持部72に支持される。これにより、第1アーム部52及び第2アーム部62のそれぞれは、隣り合う2つのドライブローラ21の一方の第1端43Aと、隣り合う2つのドライブローラ21の他方の第2端43Bとを支持する。
【0056】
図5~
図7に示すように、第1~第4支持部71~74は、ドライブローラ21の軸部43を受容する貫通孔であり、第1アーム先端部54及び第2アーム先端部67を厚み方向に貫通している。
【0057】
図8に示すように、第1アーム先端部54は、第1支持部71と第2支持部72との間に第1屈曲部54Eを有する。これにより、第1アーム先端部54は、第1屈曲部54Eによって、第1支持部71が形成された第1部分54Fと第2支持部72が形成された第2部分54Gとに区画されている。第1部分54Fと第2部分54Gとは、第1屈曲部54Eを介して互いに傾斜している。また、第1支持部71の軸線と第2支持部72の軸線とは、互いに傾斜している。
【0058】
同様に、第2アーム先端部67は、第3支持部73と第4支持部74との間に第2屈曲部67Eを有する。これにより、第2アーム先端部67は、第2屈曲部67Eによって、第3支持部73が形成された第3部分67Fと第4支持部74が形成された第4部分67Gとに区画されている。第3部分67Fと第4部分67Gとは、第2屈曲部67Eを介して互いに傾斜している。また、第3支持部73の軸線と第4支持部74の軸線とは、互いに傾斜している。
【0059】
第1ローラ受容部69Aの両側に配置される第1部分54Fと第3部分67Fとは互いに平行に配置される。また、第1支持部71と第3支持部73の軸線は、共通の軸線X4と同軸に配置される。第2ローラ受容部69Bの両側に配置される第4部分67Gと第2部分54Gとは互いに平行に配置される。また、第4支持部74と第2支持部72の軸線は、共通の軸線X5と同軸に配置される。
【0060】
ドライブローラ21をベース20に装着する方法について説明する。第1ローラ受容部69Aにドライブローラ21を配置する場合、作業者は、ローラ本体部44を第1ローラ受容部69Aに第1支持部71及び第3支持部73と同軸になるように配置する。そして、作業者は、軸部43を第1支持部71、ローラ本体部44、第3支持部73の順で挿入する。軸部43の第2端43Bは第3支持部73に圧入されて固定され、第1端43Aは第1支持部71に圧入されて固定される。軸部43を第1支持部71及び第3支持部73に圧入するときには、例えば第1支持部71及び第3支持部73に係合し、第1支持部71及び第3支持部73の相対を固定する取付台を使用するとよい。
【0061】
同様に、第2ローラ受容部69Bにドライブローラ21を配置する場合、作業者は、ローラ本体部44を第2ローラ受容部69Bに第4支持部74及び第2支持部72と同軸になるように配置する。そして、作業者は、軸部43を第4支持部74、ローラ本体部44、第2支持部72の順で挿入する。軸部43の第2端43Bは第2支持部72に圧入されて固定され、第1端43Aは第4支持部74に圧入されて固定される。軸部43を第4支持部74及び第2支持部72に圧入するときには、例えば第4支持部74及び第2支持部72に係合し、第4支持部74及び第2支持部72の相対を固定する取付台を使用するとよい。
【0062】
本実施形態に係るドライブディスク4では、複数のドライブローラ21を回転可能に支持するベース20の主要部を第1板金部材47及び第2板金部材48によって形成することができるため、ドライブディスク4の製造を容易にすることができる。第1アーム部52及び第2アーム部62のそれぞれは、隣り合う2つのドライブローラ21の一方の第1端43Aと、隣り合う2つのドライブローラ21の他方の第2端43Bとを支持するため、ドライブローラ21をスペース効率良く配置することができる。具体的には、複数の第1アーム部52と複数の第2アーム部62とがドライブディスク4の周方向に交互に配置され、1つの第1アーム部52が第1支持部71及び第2支持部72を有し、1つの第2アーム部62が第3支持部73及び第4支持部74を有するため、ドライブローラ21をスペース効率良く配置することができる。
【0063】
第1アーム先端部54に第1屈曲部54Eが設けられ、第1支持部71と第2支持部72との軸線は互いに傾斜している。また、第2アーム先端部67に第2屈曲部67Eが設けられ、第3支持部73と第4支持部74との軸線は互いに傾斜している。これにより、隣り合うドライブローラ21は、軸線の延在方向が相違する。これにより、各ドライブローラ21を回転対称に配置することが可能になる。
【0064】
軸部43が第1~第4支持部71~74に圧入されることによって、第1アーム部52と第2アーム部62とは軸部43によって連結される。これにより、第1アーム部52及び第2アーム部62の変位が抑制され、ドライブディスク4の剛性が向上する。
【0065】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1~第4支持部71~74は、貫通孔に代えて、第1方向に開口した溝に形成されてもよい。この場合、軸部43を溝の開口方向から第1~第4支持部71~74に挿入することができ、ドライブローラ21の取付作業が容易になる。
【0066】
上記の実施形態では、ドライブローラ21は、軸部43と、軸部43に対して回転可能に設けられたローラ本体部44とを有するが、他の実施形態ではドライブローラ21は、軸部43と、軸部43に対して回転不能に設けられたローラ本体部44とを有してもよい。例えば、軸部43がローラ本体部44に圧入され、軸部43とローラ本体部44とが一体に結合されていてもよい。この場合、軸部43の第1端43Aは第1支持部71又は第3支持部73に回転可能に支持され、第2端43Bは第4支持部74又は第2支持部72に回転可能に支持されているとよい。
【0067】
第1ローラ受容部69Aにドライブローラ21を配置する場合、作業者は、ローラ本体部44を第1ローラ受容部69Aに第1支持部71及び第3支持部73と同軸になるように配置する。そして、作業者は、軸部43を第1支持部71、ローラ本体部44、第3支持部73の順で挿入する。このとき、軸部43の中央部がローラ本体部44に圧入されて固定される。ローラ本体部44は第1支持部71及び第3支持部73を通過することができないため、軸部43の軸線方向においてドライブローラ21の第1アーム先端部54及び第2アーム先端部67に対する位置が定まる。軸部43は第1支持部71及び第3支持部73に回転可能に支持されるため、ドライブローラ21の回転が可能になる。第2ローラ受容部69Bにドライブローラ21を配置する方法は、第1ローラ受容部69Aにドライブローラ21を配置する方法を援用するとよい。
【符号の説明】
【0068】
1 :倒立振子型車両
2 :摩擦式駆動装置
4 :ドライブディスク
5 :主輪
21 :ドライブローラ
26 :スペーサ
43A :第1端
43B :第2端
44 :ローラ本体部
47 :第1板金部材
48 :第2板金部材
51 :第1中央部
52 :第1アーム部
53 :第1アーム基端部
54 :第1アーム先端部
54E :第1屈曲部
54F :第1部分
54G :第2部分
61 :第2中央部
62 :第2アーム部
66 :第2アーム基端部
67 :第2アーム先端部
67E :第2屈曲部
67F :第3部分
67G :第4部分
68 :第2屈曲部
69 :ローラ受容部
69A :第1ローラ受容部
69B :第2ローラ受容部
71 :第1支持部
72 :第2支持部
73 :第3支持部
74 :第4支持部