(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ドア操作補助装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20230915BHJP
B60J 5/04 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
E05B85/16 B
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2020203110
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】中西 菜月
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-84457(JP,A)
【文献】特開2019-78160(JP,A)
【文献】特開2001-349104(JP,A)
【文献】米国特許第5231731(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0303716(US,A1)
【文献】特開2019-157425(JP,A)
【文献】特開2017-198037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
E05B 77/00-85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの外側に、長さ方向の一端部を支点にして回動可能に設けられ、前記車両用ドアの開閉時にユーザにより操作されるドアノブと、
前記ドアノブの延在する方向に沿って前記ドアノブを長さ方向の他端部から延長させるように前記ドアノブに固定された延長部材と、を備えることを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドア操作補助装置において、
前記車両用ドアは、上下方向に延在する回動軸を支点にして回動可能に設けられ、
前記延長部材は、前記回動軸の反対方向に延設されることを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドア操作補助装置において、
前記ドアノブは、前記一端部から前記他端部にかけて前後方向に延設されるとともに、前記一端部と前記他端部との間に、ユーザによって上下方向に把持される把持部を有することを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドア操作補助装置において、
前記ドアノブは、ユーザの操作によるドアロックの解錠指令を検出する解錠指令検出器を有し、
前記車両用ドアは、前記解錠指令検出器により前記ドアロックの解錠指令が検出されると、ユーザが携帯するキーと車載装置とが通信することにより前記ドアロックを解錠するロック解錠機構を有し、
前記延長部材は、前記ドアロックを解錠するときにユーザにより操作される操作部と、前記操作部の操作を前記解錠指令検出器に伝達する操作伝達部と、を有することを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドア操作補助装置において、
前記解錠指令検出器は、静電容量の変化を検出するように構成され、
前記延長部材は、前記ドアノブを覆うように樹脂材により構成されたカバー部と、前記解
錠指令検出器に接続された第1金属板とを有し、
前記操作部は、前記カバー部の裏側に装着された導電性を有する第2金属板により構成され、
前記操作伝達部は、前記第1金属板と前記第2金属板とを接続するハーネスにより構成されることを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドア操作補助装置において、
前記ドアノブは、ユーザの操作によるドアロックの指令を検出するロック指令検出器を有し、
前記車両用ドアは、前記ロック指令検出器により前記ドアロックの指令が検出されると、ユーザが携帯するキーと車載装置とが通信することにより前記車両用ドアをロックするロック機構を有し、
前記延長部材は、少なくとも前記ロック指令検出器に対応する操作部が露出するように設けられることを特徴とするドア操作補助装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のドア操作補助装置において、
前記延長部材は、前記ドアノブの外側に配置され、
前記ドアノブの内側に配置され、前記ドアノブを挟んで前記延長部材に固定される固定部材をさらに備えることを特徴とするドア操作補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの開閉操作を補助するドア操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、ハンドル本体が使用時に格納位置から車外方向かつ車両後方のポップアップ位置に移動するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、第1リンクと第2リンクとを有するリンク機構を有し、リンク機構を介してハンドル本体が格納位置からポップアップ位置に移動するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、ドアにリンク機構を設ける必要があるため、ドアの構成が複雑となり、コストの上昇を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるドア操作補助装置は、車両用ドアの外側に、長さ方向の一端部を支点にして回動可能に設けられ、車両用ドアの開閉時にユーザにより操作されるドアノブと、ドアノブの延在する方向に沿ってドアノブを長さ方向の他端部から延長させるようにドアノブに固定された延長部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ドアの構成を複雑にすることなく、ドア操作補助装置を安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置が適用される車両の一例を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置が想定する課題の一例を説明する図。
【
図3】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置の要部構成を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置の取付動作の一例を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置を構成するカバーを透過した状態を示す斜視図。
【
図6】
図3のVI-VI線に沿ったドア操作補助装置の要部断面図。
【
図7】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置の使用例を示す図。
【
図8】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置の変形例の要部構成を示す断面図。
【
図9A】
図8の変形例におけるカバーの構成を示す図。
【
図10】本発明の実施形態に係るドア操作補助装置の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図10を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るドア操作補助装置が適用される車両1の一例を示す斜視図である。
図1には、車両1の前後方向(長さ方向)、左右方向(車幅方向)および上下方向(高さ方向)をそれぞれ矢印で示す。
図1に示すように、車両1は、車体フレームの前後左右にそれぞれ乗降用のドア2を有する。なお、
図1では、車両1の右側(運転席側)のドア2のみを示す。以下では、特に運転席のドア2の構成を説明する。
【0009】
ドア2は、前端部の軸部2aを支点にして回動可能に支持されるヒンジ式ドアであり、その後端部には車体フレームと係合する周知の係合機構2bが設けられる。ドア2は係合機構2bを介して車体フレームに係合し、閉鎖状態に維持される。ドア2の外側のアウタパネル3には、ドア2の後端部近傍にドアノブ10が設けられる。ドアノブ10は、上下方向の長さ(幅)がほぼ一定のまま、略水平に前後方向に延在し、その前後方向中央部にユーザにより把持される把持部11が設けられる。
【0010】
アウタパネル3には、把持部11に対向する部位に、左右方向内側に凹んだ凹部3aが設けられる。これによりドアノブ10とアウタパネル3との隙間SP0が大きくなる。このため、ユーザはこの隙間SP0に上方または下方から手(指先)を容易に挿入することができ、ドアノブ10を容易に把持することができる。なお、ドアノブ10を左右方向外側に向けて略曲面状に突設するように形成し、これによりドアノブ10とアウタパネル3との間に隙間SP0を設けるようにしてもよい。
【0011】
ドアノブ10は、その前端部12が、上下方向に延在する軸部13を支点にしてドア2に回動可能に支持される。ドアノブ10の後端部14は、ドア2の後端部よりも前方に位置する。ユーザが把持部11をユーザ側(車両右側)に回動操作(引動操作)すると、ドアノブ10は軸部13を支点にして左右方向外側(右方)に回動するとともに、後端部14がアウタパネル3から離間する方向に移動する。このドアノブ10の回動操作に伴い、係合機構2bの係合が外れ、ドア2を開放することができる。
【0012】
詳細な図示は省略するが、ドア2の後端部には、ドア2を閉鎖状態のまま施錠(ロック)するロック機構4と、ドア2を解錠(アンロック)するアンロック機構5とが設けられる。ドアノブ10の把持部11の内側には、ユーザがドア2を開放しようとするときの把持部11の操作を検出する静電容量式のアンロックセンサ15が設けられる。ドアノブ10の外側には、ドア2を施錠しようとするユーザの操作を検出する静電容量式のロックセンサ16が設けられる。
【0013】
ドア2のロックおよびアンロックは、ユーザが携帯する車両用キーを介して指令される。この車両用キーは、車両1に搭載された電子制御ユニット(車載装置と呼ぶ)と通信可能に構成された無線キー(いわゆるFOBキー)である。ドア2がロックされた状態で、アンロックセンサ15によりユーザによるアンロック指令の操作が検出されると、車載装置は無線キーのIDと車両1のIDとを照合する。そして、各IDが一致していると判定すると、アンロック機構5にアンロック指令を出力する。これにより、アンロック機構5が作動し、ドア2がアンロックされる。
【0014】
一方、ドア2がアンロックされた状態で、ロックセンサ16によりユーザによるロック指令の操作が検出されると、車載装置は無線キーのIDと車両1のIDとを照合する。そして、各IDが一致していると判定すると、ロック機構4にロック指令を出力する。これにより、ロック機構4が作動し、ドア2がロックされる。
【0015】
ところで、ユーザは車両1に乗車するとき、一般に、ドア2(運転席ドア)の右方においてドアノブ10の把持部11を把持してドア2を開放した後、ドア2の後端部の外側を迂回してドア2の後方に移動してドア2をさらに大きく右方に回動し、この状態で乗車する。しかしながら、ユーザが例えば車椅子を利用しているとき、ドア2と車椅子とが干渉し、ドア2を十分に開放できないおそれがある。
【0016】
図2は、この点を説明する図である。
図2に示すように、車椅子Wを利用しているユーザPSがドアノブ10を操作するとき、車椅子WまたはユーザPSの足がドア2と干渉し、ドア2を十分に開放することができない。このため、ドア2と干渉しない位置まで車椅子Wを後方(矢印A方向)に移動し、その状態でドアノブ10を操作する必要がある。しかし、この場合にはユーザPSからドアノブ10までの距離が長いため、ドアノブ10に手が届きにくく、ドアノブ10の操作が容易でない。ユーザPSが車椅子Wを利用する場合だけでなく、車両1の右側に他の車両が駐車している等、ドア2(運転席ドア)の右方に、ドア2の後端部の外側を迂回するための十分なスペースがない場合にも同様に、ユーザPSがドアノブ10を操作してドア2を開放することは容易でない。
【0017】
そこで、本実施形態では、車椅子Wを利用するユーザがドア2を開放するときや、ドア2の側方に十分なスペースがない状態でドア2を開放するときに、ドア2を容易に開放可能となるように、以下のようにドア操作補助装置を構成する。
【0018】
図3は、本実施形態に係るドア操作補助装置100の要部構成を示す図であり、運転席のドア2のドアノブ10の近傍を示す斜視図、すなわち右斜め前方から見た図である。
図3に示すように、ドア操作補助装置100は、ドアノブ10を包囲する樹脂を構成材としたカバー20を有し、カバー20によりドアノブ10全体が覆われる。
【0019】
カバー20は、ドアノブ10の前端部12から把持部11にかけてドアノブ10の右面に沿って略曲面状に構成された前カバー部21と、前カバー部21に連なり、ドアノブ10の後端部14を超えて後方に延在する後カバー部22とを有する。カバー20は、全体がほぼ上下方向対称に構成され、カバー20の上面および底面にそれぞれ上カバー部23および下カバー部24が設けられる。ドアノブ10の上面と底面とは、それぞれ上カバー部23と下カバー部24とにより覆われる。
【0020】
後カバー部22は、前カバー部21よりも上下方向に長く、すなわち幅広に形成される。後カバー部22は、上カバー部23および下カバー部24よりも後方に突出している。このため、ドアノブ10の後方において、後カバー部22の後端部とアウタパネル3との間には、上方から後方および下方にかけて隙間SP1が形成される。すなわち、上方、後方および下方の三方が開放された隙間SP1が形成される。これにより、ドア2の後方からユーザPSが隙間SP1に手を挿入し、カバー20の後端部を操作することができる。
【0021】
図4は、ドアノブ10にカバー20を取り付けるときの動作の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、カバー20を取り付ける際には、予めドアノブ10に金属板25(例えばアルミ板)が取り付けられる。金属板25は、略矩形の平板を断面略コ字状に折り曲げて形成され、ドアノブ10の把持部11に上方から引っ掛けて係止される。ドアノブ10の把持部11の内側表面(左面)には、アンロックセンサ15に対向する操作部10aが設けられる。金属板25は、その左端部が操作部10aに接触した状態で配置され、アンロックセンサ15により操作部10aの操作、すなわちユーザPSの手が操作部10aに触れたことが検出される。金属板25の後端部には、把持部11の外側に、周囲が絶縁体で被覆されたハーネス26の前端部が導通状態で接続される。
【0022】
図5は、カバー20の取付状態における内部構成を示す斜視図(カバー20を透過した状態で示す斜視図)である。
図4,5に示すように、後カバー部22の内側の表面、すなわちカバー20の取付状態における左面(裏面)には、金属板27(例えばアルミ板)が貼り付けられる。
図5に示すように、ドアノブ10の把持部11の後方には、ロックセンサ16に対向する操作部10bが設けられ、ロックセンサ16により操作部10bの操作、すなわちユーザPSの手が操作部10bに触れたことが検出される。
【0023】
金属板25はロックセンサ16の前方に、金属板27はロックセンサ16の後方にそれぞれ配置される。すなわち、金属板25,27は、ロックセンサ16と非導通状態となるように、それぞれロックセンサ16から離間して配置される。ハーネス26の後端部は金属板27の前端部に導通状態で接続される。これにより金属板25と金属板27とがハーネス26を介して導通状態となる。
図3に示すように、カバー20には、操作部10bに対応する位置にカバー20を貫通する開口部28が設けられ、操作部10bは開口部28を介して露出する。
【0024】
図6は、
図3のVI-VI線に沿ったドア操作補助装置100の要部断面図である。
図5,6に示すように、ドアノブ10の把持部11とアウタパネル3の凹部3aとの間には、カバー20を固定するための固定具30が配置される。固定具30は、全体が略ボックス形状を呈し、内部に複数の補強用リブ31が設けられる。
図6に示すように、固定具30の高さ(上下方向長さ)は、カバー20の上カバー部23から下カバー部24までの長さとほぼ等しい。固定具30の厚さ(左右方向長さ)は、把持部11と凹部3aとの間の隙間SP0の左右方向長さよりも短い。
図5に示すように、固定具30の長さ(前後方向長さ)は、把持部11の前後方向長さとほぼ等しく、固定具30の右面は把持部11の左面に沿って曲面状に形成される。
【0025】
固定具30の上面および底面には、それぞれ前後一対のねじ孔32が設けられる。
図4に示すように、カバー20の上カバー部23と下カバー部24とには、それぞれねじ孔32に対応して前後一対の貫通孔29が穿設される。
図5,6に示すように、把持部11と固定具30との間で金属板25を挟むように固定具30を金属板25に当接した状態で、貫通孔29を貫通したボルト33をねじ孔32に螺合すると、固定具30の上面および底面がカバー20に固定され、固定具30がカバー20の内側に保持される。なお、
図3に示すように、ボルト33の頭部はキャップ34で覆われる。
【0026】
以上のように構成されたドア操作補助装置100の取付手順について説明する。ドア操作補助装置100を取り付ける場合には、まず、後カバー部22の内側に貼付された金属板27にハーネス26を介して接続された金属板25を、
図4に示すように、ドアノブ10の把持部11に引っ掛ける。次いで、把持部11と凹部3aの隙間SP0に固定具30(
図5)を挿入し、その状態でドアノブ10に車両右方からカバー20を被せ、上カバー部23と下カバー部24との間に固定具30を嵌合する。最後に、上カバー部23の上方および下カバー部24の下方から、それぞれ上カバー部23および下カバー部24にボルト33(
図5)を挿通し、固定具30のねじ孔32に螺合する。これによりカバー20と固定具30とが、金属板25と把持部11とを挟んだ状態で固定される。
【0027】
以上のドア操作補助装置100の取付では、金属板25を単にドアノブ10の把持部11に引っ掛けた後、カバー20と固定具30とを固定するだけなので、取付作業が容易である。また、カバー20と固定具30とをボルト33を介して締結するので、カバー20と固定具30とを強固に固定することができ、走行時の振動等によってドア操作補助装置100にがたつきが生じることを防止できる。
【0028】
図7は、ドア操作補助装置100の使用例を示す図である。
図7に示すように、車両右側のドア2(例えば運転席ドア)にドア操作補助装置100が取り付けられた状態では、ドアノブ10の把持部11の後方の後カバー部22の内側(左側)に、後方および上方、下方が開放された隙間SP1が形成される。ドア2を開放するときには、ユーザは例えば車両後方から隙間SP1に手を挿入し、後カバー部22の内側の金属板27に手を触れる。この操作は、ハーネス26および金属板25を介してアンロックセンサ15(
図1)により検出される。これにより、アンロック機構5(
図1)が作動し、ドア2がアンロックされる。
【0029】
その後、ユーザが後カバー部22を右方に回動操作すると、それに伴いカバー20と一体のドアノブ10も右方に回動される。これにより、ドア2の後端部の係合機構2b(
図1)の係合が外れ、ドア2を開放することができる。後カバー部22はドアノブ10の把持部11よりも幅広であるため、カバー20の回動操作が容易である。このように本実施形態では、ドア2の後方からの操作によりドア2を開放することができる。このため、車椅子Wを利用するユーザPS(
図2)等によるドア2の開放操作が容易である。
【0030】
ドア2を閉鎖後にロックするときには、ユーザはカバー20上面の開口部28を介してドアノブ10の表面の操作部10bを操作する。この操作はロックセンサ16(
図1)により検出される。これにより、ロック機構6(
図1)が作動し、ドア2がロックされる。
【0031】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)ドア操作補助装置100は、車両用ドア2の外側に、長さ方向の一端部である前端部12の軸部13を支点にして回動可能に設けられ、ドア2の開閉時にユーザにより操作されるドアノブ10と、ドアノブ10の延在する前後方向に沿ってドアノブ10を長さ方向の他端部である後端部14から延長させるように、ドアノブ10に固定されたカバー20と、を備える(
図1,3)。
【0032】
これによりカバー20を介してドアノブ10の後方からドアノブ10を回動操作することができる。このため、車椅子Wを利用するユーザPSがドア2を開放するときや、ドア2の側方に十分なスペースがない状態でドア2を開放するときに、ドア2を容易に開放することができる。ドア操作補助装置100は、既存のドアノブ10にカバー20を取り付けるだけなので、ドア2の構成を複雑にすることなく、安価に構成できる。
【0033】
(2)ドア2は、上下方向に延在する軸部2a(回動軸)を支点にして回動可能に設けられる(
図1)。カバー20は、軸部2aの反対方向、すなわち後方に延設される(
図7)。これにより、回動軸から力の作用点までの距離が長くなり、回動操作による開放されるヒンジ式ドア2を、小さい力で容易に開放することができる。
【0034】
(3)ドアノブ10は、前端部12から後端部にかけて前後方向に延設されるとともに、前端部12と後端部14との間に、ユーザによって上下方向に把持される把持部11を有する(
図1)。このようなドアノブ10にカバー20を取り付けることで、把持部11を操作することなく、ドア2を容易に開放することができる。
【0035】
(4)ドアノブ10は、ユーザの操作によるドアロックの解錠指令を検出するアンロックセンサ15を有する(
図1)。ドア2は、アンロックセンサ15によりドアロックの解錠指令が検出されると、ユーザが携帯する無線キー(FOBキー)と車載装置とが通信することによりドアロックを解錠するアンロック機構5を有する(
図1)。カバー20は、ドアロックを解錠するときにユーザにより操作される後カバー部22の内側の金属板27と、金属板27の操作をアンロックセンサ15に伝達するハーネス26および金属板25と、を有する(
図5)。これによりドアノブ10の全体がカバー20により覆われる場合に、既存のアンロックセンサ15を用いてドア2をアンロックすることができる。
【0036】
(5)アンロックセンサ15とロックセンサ16とは、静電容量の変化を検出するように構成される。カバー20は、ドアノブ10を覆うように樹脂材により構成された後カバー部22を有する(
図3)。後カバー部22の裏側には、導電性を有する金属板27が装着され、金属板27に接続されるハーネス26と、ハーネス26に接続された金属板25とを介してアンロックセンサ15により金属板27の操作が検出される。これにより金属板27をアンロックセンサ15とロックセンサ16とから離間して配置することができる。このため、センサ15,16がロック操作とアンロック操作とを誤って検出することを防止することができ、ロック機構4およびアンロック機構5の誤作動を防止することができる。
【0037】
(6)ドアノブ10は、ユーザの操作によるドアロックの指令を検出するロックセンサ16を有する(
図1)。ドア2は、ロックセンサ16によりドアロックの指令が検出されると、ユーザが携帯する無線キー(FOBキー)と車載装置とが通信することによりドア2をロックするロック機構5を有する(
図1)。カバー20には、ロックセンサ16に対応する操作部10b、すなわちドアロックを作動するときにユーザにより操作される操作部10bが露出するように、開口部28が設けられる(
図7)。これによりドア2をロックするとき、ユーザは既存のロックセンサ16を操作するので、ロック操作が精度よく検出され、ロック機構5を安定的に作動することができる。
【0038】
(7)カバー20は、ドアノブ10の外側に配置される(
図3)。ドア操作補助装置100は、ドアノブ10の把持部11の内側に配置され、ドアノブ10を挟んでカバー20に固定される固定具30をさらに備える(
図4)。これによりドアノブ10に何ら加工を施すことなく、カバー20をドアノブ10に強固に固定することができる。
【0039】
上記実施形態は種々の形態に変形可能である。以下、いくつかの変形例について説明する。上記実施形態では、金属板25をドアノブ10の把持部11に引っ掛けるようにしたが、そのような金属板25を省略してもよい。
図8は、その一例であるドア操作補助装置100Aの要部構成を示す断面図である。
図8に示すように、固定具30には、導電性を有する金属板40(例えばアルミ板)が装着される。金属板40は、固定具30とドアノブ10との間に介装される略上下方向に延在する縦板部41と、固定具30の上面とカバー20の上カバー部23との間に配置される略水平方向に延在する横板部42とを有し、断面略L字状を呈する。
【0040】
横板部42と上カバー部23との間には、導電性を有する金属板43(例えばアルミ板)が介装される。カバー20と固定具30とは、カバー20と金属板43,40とを貫通し、固定具30のねじ孔32(
図5)に螺合するボルト33(
図5)により固定される。
図9Aは、カバー20の内側の構成を示す正面図である。
図9Aに示すように、金属板43は、ハーネス26を介して後カバー部22の内側(裏側)の金属板27に接続される。これにより、金属板27の操作が、ハーネス26、金属板43、金属板40を介してドアノブ10の把持部11の内側に伝達され、アンロックセンサ15(
図1)によりアンロック指令を検出することができる。
【0041】
図9Bは、
図9Aの変形例を示す図である。
図9Bでは、カバー20の内側に金属板44が装着される。金属板44は、
図9Aの金属板27,43とそれぞれ同一位置に設けられた板部44a,44cと、板部44aと板部44cとを接続する板部44bとを有する。板部44bは、ドアノブ10と接触しないようにドアノブ10よりも左方に配置される。
図9Bの構成によっても
図9Aと同様、板部44aの操作が板部44bおよび板部44cを介して金属板43に伝達され、アンロックセンサ15(
図1)によりアンロック指令を検出することができる。以上の変形例の構成によれば、金属板25をドアノブ10に引っ掛ける作業が不要となるため、ドア操作補助装置100Aの取付が容易である。
【0042】
上記実施形態では、固定具30を介してドアノブ10にカバー20を取り付けるようにしたが、固定具30を省略してもよい。
図10は、その一例であるドア操作補助装置100Bを示す図である。
図10に示すように、ドア操作補助装置100Bは、ドアノブ10に取り付けられる樹脂製のカバー200を有する。カバー200は、把持部11の表面(右面)に沿って前後方向に延在する前カバー部210と、前カバー部210の後端部から後方に延在する後カバー部220とを有する。
【0043】
後カバー部220は上述した後カバー部22と同様に構成され、後カバー部220の内側に金属板27が装着される。金属板27の前端部には、帯状の金属板270の後端部が接続される。金属板270は、前カバー部210の内側にかけて前方に延在する。なお、金属板27と金属板270とを例えばプレス加工により一体に成型することもできる。前カバー部210には、前後一対の貫通孔211が穿設される。後側の貫通孔211は金属板270を貫通して設けられる。ドアノブ10の把持部11の表面には、貫通孔211の位置に対応してねじ孔111が設けられる。
【0044】
カバー200は、貫通孔211を貫通するボルト212をねじ孔111に螺合することで取り付けられる。ボルト212は導電性を有する金属により構成される。カバー200が取り付けられた状態では、金属板27とアンロックセンサ15とが、金属板270とボルト212とを介して導通する。したがって、
図8に示すようにユーザにより金属板27が操作されると、その操作がアンロックセンサ15により検出され、ドア2をアンロックすることができる。なお、
図7の実施形態と同様に、ドア2を閉鎖後にロックするときには、ユーザはカバー200の上面に設けられた開口部280を介してドアノブ10の表面の操作部10bを操作する。
【0045】
このように
図10の例では、固定具30を省略してドア操作補助装置100Bが構成されるので、把持部11とアウタパネル3の凹部3aとの間の隙間SP0がそのまま維持される。これにより、ユーザは上方または下方から隙間SP0に手を挿入することができ、ドアノブ10の操作によりドア2のアンロックおよびドア2の開放が可能である。また、
図10の例では、ドアノブ10に引っ掛けるような金属板25を設ける必要がないため、部品点数の増加が抑えられ、構成を簡素化できる。
【0046】
上記実施形態では、上下方向に延在する前後方向一端部の軸部13(回動軸)を支点にしてドアノブ10を回動可能に設けたが、ドアノブの構成はこれに限らない。すなわち、車両用ドアの外側に、長さ方向の一端部を支点にして回動可能に設けられ、ドアの開閉時にユーザにより操作されるのであれば、ドアノブはいかなる構成でもよい。上記実施形態では、ドアノブ10をドア2の後端部に向けて延長させるようにドアノブ10にカバーを固定したが、ドアノブの延在する方向に沿ってドアノブを長さ方向の他端部(回動支点と反対側)から延長させるようにドアノブに固定されるのであれば、延長部材の構成はいかなるものでもよい。
【0047】
上記実施形態では、ドアノブ10に、ユーザの操作によるドアロックの解錠指令を検出する静電容量式のアンロックセンサ15を設けたが、解錠指令検出器の構成は上述したものに限らない。例えばボタンの操作を検出する解錠指令検出器として構成してもよい。上記実施形態では、ドアノブ10に、ユーザの操作によるドアロックの指令を検出する静電容量式のロックセンサ16を設けたが、ロック指令検出器の構成は上述したものに限らない。例えばボタンの操作を検出するロック指令検出器として構成してもよい。上記実施形態では、アンロックセンサ15によりドアロック解錠指令が検出されると、ユーザが携帯する無線キーと車載装置とが通信することによりドアロックを解錠するようにしたが、ロック解錠機構の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、ロックセンサ16によりドアロック指令が検出されると、ユーザが携帯する無線キーと車載装置とが通信することによりドア2をロックするようにしたが、ロック機構の構成は上述したものに限らない。
【0048】
上記実施形態では、カバー20の後端部の金属板27(第2金属板)の操作を、ハーネス26と金属板25(第1金属l板)とを介してアンロックセンサ15に伝達するようにしたが、操作伝達部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、ロックセンサ16に面する操作部16bを除いてドアノブ10を覆うようにカバー20を設けた。すなわち、操作部16bを露出するようにカバー20を設けたが、少なくともロック指令検出器に対応する操作部16bが露出するようにカバー(延長部材)を設ければよい。上記実施形態では、固定具30を用いてカバー20をドアノブ10に固定するようにしたが、固定部材の構成はこれに限らない。
【0049】
上記実施形態では、前側の回動軸を支点にして回動可能に設けられたヒンジ式ドア2に適用する例を説明したが、本発明のドア操作補助装置は、スライド式ドアにも同様に適用することできる。
【0050】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両、2 ドア、2a 回動軸、4 ロック機構、5 アンロック機構、10 ドアノブ、11 把持部、15 アンロックセンサ、16 ロックセンサ、20 カバー、25 金属板、26 ハーネス、27 金属板、30 固定具、100,100A,100B ドア操作補助装置