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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】CMP研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20230915BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20230915BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20230915BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230915BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20230915BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20230915BHJP
   B24B 37/26 20120101ALI20230915BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20230915BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20230915BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
B24B37/00 K
B24B37/005 A
B24B37/24 B
B24B37/26
B24B49/12
B24B49/18
H01L21/304 621D
H01L21/304 622F
H01L21/304 622R
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020207506
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094554
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋祐
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-337992(JP,A)
【文献】特開2019-040918(JP,A)
【文献】特開2005-347568(JP,A)
【文献】特開2000-223448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
B24B41/00-51/00
B24B53/00
B24B53/007
B24B53/013
B24B53/017
B24B53/095
B24B53/10
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物が固定されたキャリヤと、前記被研磨物と対面するように研磨パッドが固定された定盤と、前記被研磨物と前記研磨パッドとの間に荷重を付加しつつ、前記キャリヤと前記定盤とを相対的な速度で移動させる駆動装置と、前記被研磨物と前記研磨パッドとの間に研磨液を介在させる研磨液供給装置と、少なくとも前記駆動装置及び前記研磨液供給装置を制御する制御装置とを備え、CMP法によって前記被研磨物を研磨するCMP研磨装置において、
前記研磨パッドは、前記被研磨物と接触する研磨面と、前記研磨面から凹設された研磨溝とを有し、
前記研磨溝の底面を基準として前記研磨面の摩耗深さを非接触で測定する摩耗深さ測定手段と、前記研磨面をドレッシングするドレッサとをさらに備え、
前記研磨パッドは、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、前記母材内又は前記気泡内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨液は液体のみであり、
前記制御装置は、前記摩耗深さが第1閾値を超えれば前記駆動装置及び/又は前記研磨液供給装置に制御信号を送信することにより、前記荷重、前記速度、研磨時間及び前記研磨液の供給量の少なくとも一つを変更し、前記摩耗深さが前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えれば前記被研磨物の研磨を中断して前記ドレッサを稼働させ、前記ドレッシングが行われた後に前記被研磨物の研磨を再開することを特徴とするCMP研磨装置。
【請求項2】
前記摩耗深さ測定手段は、レーザビームを用いた寸法測定装置である請求項記載のCMP研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCMP研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に従来のCMP研磨装置が開示されている。これらのCMP研磨装置は、キャリヤと、定盤と、駆動装置と、研磨液供給装置と、制御装置とを備えている。
【0003】
キャリヤには被研磨物が固定される。被研磨物は、Si、SiC等のウェハ、これらのウェハ上に絶縁膜、配線金属膜、露光用レジスト、保護膜等の膜を形成した膜付きウェハ等である。定盤は、被研磨物と対面するように研磨パッドが固定される。これらのCMP研磨装置では、不織布、発泡ポリウレタン等からなる研磨パッドを採用している。この研磨パッドは、被研磨物と接触する研磨面と、研磨面から凹設された同心円状又は格子状の研磨溝とを有している。
【0004】
駆動装置は、被研磨物と研磨パッドとの間に荷重を付加しつつ、キャリヤと定盤とを相対的な速度で移動させる。研磨液供給装置は、被研磨物と研磨パッドとの間に研磨液を介在させる。これらのCMP研磨装置では、研磨液は、NaOH等の薬剤と、コロイダルシリカ等の研磨粒子とを含む。制御装置は、少なくとも駆動装置及び研磨液供給装置を制御する。
【0005】
また、これらのCMP研磨装置は、研磨パッドの厚みを検知したり、研磨パッドが有するインジケータをオペレータが目視したりすることにより、研磨面の摩耗深さを検知しようとしている。
【0006】
これらのCMP研磨装置では、研磨粒子による機械的研磨と同時に薬剤による化学的研磨を行うCMP(chemical mechanical polishing:化学的機械的研磨)法によって被研磨物を研磨可能である。この際、研磨溝を有する研磨パッドを採用し、研磨溝内に十分な量の研磨粒子を確保し、被研磨物の研磨効果を有効化している。また、これらのCMP研磨装置では、研磨面の摩耗深さを検知することにより、次回の研磨時間の最適化を行ったり、研磨パッドの寿命を予測したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-347568号公報
【文献】特開2019-145779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来のCMP研磨装置は、被研磨物の研磨の際に研磨粒子を含む研磨液を用いているため、研磨面や研磨溝に多くの研磨粒子が存在し、研磨面の摩耗の検出精度が不十分である。特に、これらのCMP研磨装置では、研磨パッドの厚みや目視によって研磨面の摩耗深さを検知しようとしているため、定盤と研磨パッドとの接着層の厚みの相違や個人差によって検出値がばらつくこととなり、その検出精度の信頼性に欠ける。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、被研磨物の研磨効果を有効化しつつ、研磨面の摩耗の検出精度が高いCMP研磨装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のCMP研磨装置は、被研磨物が固定されたキャリヤと、前記被研磨物と対面するように研磨パッドが固定された定盤と、前記被研磨物と前記研磨パッドとの間に荷重を付加しつつ、前記キャリヤと前記定盤とを相対的な速度で移動させる駆動装置と、前記被研磨物と前記研磨パッドとの間に研磨液を介在させる研磨液供給装置と、少なくとも前記駆動装置及び前記研磨液供給装置を制御する制御装置とを備え、CMP法によって前記被研磨物を研磨するCMP研磨装置において、
前記研磨パッドは、前記被研磨物と接触する研磨面と、前記研磨面から凹設された研磨溝とを有し、
前記研磨溝の底面を基準として前記研磨面の摩耗深さを非接触で測定する摩耗深さ測定手段と、前記研磨面をドレッシングするドレッサとをさらに備え、
前記研磨パッドは、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、前記母材内又は前記気泡内に保持された研磨粒子とを有し、
前記研磨液は液体のみであり、
前記制御装置は、前記摩耗深さが第1閾値を超えれば前記駆動装置及び/又は前記研磨液供給装置に制御信号を送信することにより、前記荷重、前記速度、研磨時間及び前記研磨液の供給量の少なくとも一つを変更し、前記摩耗深さが前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えれば前記被研磨物の研磨を中断して前記ドレッサを稼働させ、前記ドレッシングが行われた後に前記被研磨物の研磨を再開することを特徴とする。
【0011】
本発明のCMP研磨装置では、樹脂からなり、複数の気泡が形成された母材と、母材内又は気泡内に保持された研磨粒子とを有する研磨パッドを採用しており、研磨液が液体のみである。このため、研磨面や研磨溝には研磨粒子が存在難い。
【0012】
また、このCMP研磨装置では、摩耗深さ測定手段が研磨溝の底面を基準として研磨面の摩耗深さを測定するため、例え定盤と研磨パッドとの接着層の厚みが異なっても、研磨面の摩耗深さを幾何的に測定することができる。その際に非接触で研磨面の摩耗深さを測定するため、接触による押圧力による誤差も生じない。
【0013】
さらに、このCMP研磨装置では、研磨溝を有する研磨パッドを採用しているため、研磨溝と対面する研磨面が保持する研磨粒子が被研磨物の研磨効果を有効化する。
【0014】
したがって、本発明のCMP研磨装置では、被研磨物の研磨効果を有効化しつつ、研磨面の摩耗の高い検出精度を発揮することができる。
【0015】
制御装置は、摩耗深さが第1閾値を超えれば制御信号を駆動装置及び/又は研磨液供給装置に送信する。このため、摩耗深さに応じて、研磨パッドの交換時期を知ることができる他、研磨条件を変更して被研磨物の品質を高めることができる。
【0016】
制御装置は、制御信号に応じて荷重、速度、研磨時間及び研磨液の供給量の少なくとも一つを変更するこのため、摩耗深さに応じて、研磨条件を変更して被研磨物の品質を高めることができる。
【0017】
CMP研磨装置は、研磨面をドレッシングするドレッサをさらに備えているそして、制御装置は、摩耗深さが第1閾値よりも大きい第2閾値を超えれば被研磨物の研磨を中断してドレッサを稼働させ、ドレッシングが行われた後に被研磨物の研磨を再開する。このため、摩耗深さに応じて、研磨パッドを再生することができる。
【0018】
摩耗深さ測定手段は、超音波や光によって研磨面の摩耗深さを非接触で測定することが可能であるが、レーザビームを用いた寸法測定装置であることが好ましい。発明者の確認によれば、この場合に±0.2~0.3μmで精度よく摩耗深さを測定できる。例えば、株式会社キーエンス製三次元測定機「XM-2000」、株式会社リンクス製三次元センサ「Gocator(登録商標)」、株式会社ミツトヨ製非接触・高精度レーザ測長システム「レーザスキャンマイクロメータLSM」等を採用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のCMP研磨装置では、被研磨物の研磨効果を有効化しつつ、研磨面の摩耗の高い検出精度を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例のCMP研磨装置の主要部を示す模式断面図である。
図2図2は、実施例のCMP研磨装置の制御装置等のブロック構成図である。
図3図3は、実施例のCMP研磨装置に係り、研磨パッドの模式拡大断面図である。
図4図4は、実施例のCMP研磨装置に係り、制御装置が実行するプログラムのフローチャートである。
図5図5は、実施例のCMP研磨装置に係り、制御装置が実行するプログラムのフローチャートである。
図6図6は、比較例のCMP研磨装置に係り、研磨パッドの模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例のCMP研磨装置は、図1に示すように、複数のキャリヤ1と、定盤3と、駆動装置5と、研磨液供給装置7と、ドレッサ9と、寸法測定装置11と、図2に示すように、制御装置13とを備えている。
【0022】
図1には単一のキャリヤ1だけを図示しているが、CMP研磨装置は複数のキャリヤ1を有している。各キャリヤ1は水平な円板状をなしている。各キャリヤ1の下面には複数の凹部1aが凹設されており、各凹部1aにはそれぞれ被研磨物Wが固定されるようになっている。被研磨物Wは、Si、SiC等のウェハ、これらのウェハ上に絶縁膜、配線金属膜、露光用レジスト、保護膜等の膜を形成した膜付きウェハ等である。各キャリヤ1の上面にはキャリヤ回転軸1bが垂直に突設されている。被研磨物Wの被研磨面W1は下方を向いている。
【0023】
定盤3は、全てのキャリヤ1を内包する水平な円板状をなしている。定盤3の下面には定盤回転軸3aが垂直に突設されている。定盤3の上面には、各被研磨物Wと対面するように円板状の研磨パッド15が接着剤によって固定されている。研磨パッド15は、図3に示すように、被研磨物Wと接触する研磨面15aと、研磨面15aから下方に凹設された同心円状又は格子状の研磨溝15bとを有している。研磨溝15bの形状、ピッチ、幅等は、被研磨物W等によってユーザ毎に選択されている。
【0024】
また、この研磨パッド15は、樹脂からなり、複数の気泡151aが形成された母材151と、母材151内又は気泡151a内に保持された研磨粒子152とを有している。
【0025】
母材151は、ポリエーテル、硬質発泡ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂の他、ポリフッ化ビニル、フッ化ビニル・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系合成樹脂や、ポリエチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等から、被研磨物W等によってユーザ毎に選択されている。
【0026】
研磨粒子152は、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、B4C(炭化ホウ素)、CeO2、炭化ケイ素、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、酸化鉄等から、被研磨物W等によってユーザ毎に選択されている。
【0027】
図1に示すように、駆動装置5は、主駆動装置5aと、副駆動装置5bと、加圧装置5cとを有している。主駆動装置5aは定盤回転軸3aを第1軸心O1周りで所定速度で回転駆動する。副駆動装置5bは各キャリヤ回転軸1bを第2軸心O2周りで所定速度で回転駆動する。加圧装置5cは各キャリヤ回転軸1b及び副駆動装置5bを定盤3に向けて所定荷重で加圧する。
【0028】
研磨液供給装置7は定盤3の上方に設けられている。研磨液供給装置7は被研磨物Wと研磨パッド15との間に研磨液7aを介在させる。研磨液7aは、NaOH水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液、アミン系水溶液等から、被研磨物W等によってユーザ毎に選択されている。研磨液7aは、研磨粒子152を含んでおらず、液体である。
【0029】
ドレッサ9は定盤3の上方で第1軸心O1近くから研磨パッド15の外周部分まで移動可能に設けられている。ドレッサ9は、研磨パッド15の研磨面15aと当接し、研磨面15aをドレッシングする。
【0030】
寸法測定装置11は定盤3の上方に設けられている。寸法測定装置11はレーザビーム11aを用い研磨溝15bの底面を基準として研磨面11aの摩耗深さを非接触で測定する。
【0031】
図2に示すように、制御装置13は、マイコン、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されており、寸法測定装置11、主駆動装置5a、副駆動装置5b、加圧装置5c及び研磨液供給装置7と接続されている。制御装置13のメモリにはこれらを制御するプログラムが格納されている。
【0032】
このCMP研磨装置において、CMP法によって被研磨物Wを研磨する場合、各キャリヤ1の凹部1aに被研磨物Wを固定した後、作動を開始する。これにより、制御装置13は、図4及び図5に示すフローチャートに示す処理を行う。
【0033】
まず、図4に示すように、ステップS1では、加圧装置5cが各キャリヤ回転軸1b及び副駆動装置5bを定盤3に向けて加圧する荷重Fと、主駆動装置5aが定盤回転軸3aを回転する第1速度V1と、副駆動装置5bが各キャリヤ回転軸1bを回転する第2速度V2と、研磨時間Tと、研磨液供給装置7が供給する研磨液7aの供給量Qとが入力される。
【0034】
このため、被研磨物Wと研磨パッド15との間に荷重Fを付加しつつ、各キャリヤ1と定盤3とが相対的な速度で研磨時間Tだけ移動する。この間、研磨液供給装置7が供給量Qの研磨液7aを供給する。こうして、研磨が開始される。この際、研磨溝15bを有する研磨パッド15を採用しているため、研磨溝15bと対面する研磨面15aが保持する研磨粒子152が被研磨物Wの研磨効果を有効化する。
【0035】
この後、ステップS2において、寸法測定装置11によって研磨溝15bまでの距離L1を測定し、ステップS3において、寸法測定装置11によって研磨面15aまでの距離L2を測する。そして、ステップS4において、距離L1と距離L2との差を算出し、これを研磨面15aの摩耗深さLxとする。研磨の継続によって摩耗深さLxは徐々に増加する。
【0036】
ステップS5では、研磨時間T内であっても、摩耗深さLxが第1閾値Laを超えるか否かを判断する。ステップS5において、摩耗深さLxが第1閾値Laを超えれば、ステップS6に進み、摩耗深さLxが第1閾値Laを超えなければ、ステップS3に戻る。
【0037】
ステップS6では、制御信号を主駆動装置5a、副駆動装置5b及び/又は加圧装置5cに送信し、荷重F、第1速度V1、第2速度V2、研磨時間T及び研磨液7aの供給量Qの少なくとも一つを変更する。これらのいずれを変更するかは、被研磨物W等によってユーザによって選択されている。こうして、このCMP研磨装置では、研磨条件を変更して被研磨物Wの品質を高めることができる。
【0038】
この後、ステップS7では、摩耗深さLxが第2閾値Lbを超えるか否かを判断する。ステップS7において、摩耗深さLxが第2閾値Lbを超えれば、ステップS8に進み、摩耗深さLxが第2閾値Lbを超えなければ、ステップS7に戻る。こうして、摩耗深さLxが第1閾値Laを超え、第2閾値Lbになるまで、研磨条件を変更して被研磨物Wの品質を高める。
【0039】
ステップS8では、摩耗深さLxが第2閾値Lbを超え、研磨パッド15を再生すべきであることから、研磨が中断される。この際、第2速度V2が0とされるとともに各キャリヤ1が研磨パッド15から離隔する。そして、続くステップS9において、ドレッサ9が稼働する。この際、第1速度V1は一定速度とされ、ドレッサ9は定盤3の上方で第1軸心O1近くから研磨パッド15の外周部分まで移動する。これにより、研磨パッド15は研磨面15aがドレッシングされる。
【0040】
この後、図5に示すように、ステップS10に進み、研磨が再開される。そして、ステップS11では、摩耗深さLxが第3閾値Lcを超えるか否かを判断する。ステップS11において、摩耗深さLxが第3閾値Lcを超えれば、ステップS12に進み、摩耗深さLxが第3閾値Lcを超えなければ、ステップS3に戻る。
【0041】
ステップS12では、摩耗深さLxが第3閾値Lcを超え、研磨パッド15の寿命が近いことが報知される。具体的には、制御装置13に設けられた表示ランプが点灯する。こうして、このCMP研磨装置では、摩耗深さLxに応じて、研磨パッド15の交換時期を知ることができる。
【0042】
続くステップS13では、摩耗深さLxが第4閾値Ldを超えるか否かを判断する。摩耗深さLxが第4閾値Ldを超えるまで、ステップS13が繰り返される。ステップS13において、摩耗深さLxが第4閾値Ldを超えれば、ステップS14に進んで研磨が中止となる。
【0043】
こうして、このCMP研磨装置では、樹脂からなり、複数の気泡151aが形成された母材151と、母材151内又は気泡151a内に保持された研磨粒子152とを有する研磨パッド15を採用しており、研磨液7aが液体のみである。このため、図3に示すように、研磨面15aや研磨溝15bには研磨粒子152が存在難い。
【0044】
また、このCMP研磨装置では、寸法測定装置11が研磨溝15bの底面を基準として研磨面15aの摩耗深さLxを測定するため、例え定盤3と研磨パッド15との接着層の厚みが異なっても、研磨面15aの摩耗深さLxを幾何的に測定することができる。その際に非接触で研磨面15aの摩耗深さLxを測定するため、接触による押圧力による誤差も生じない。
【0045】
したがって、このCMP研磨装置では、被研磨物Wの研磨効果を有効化しつつ、研磨面15aの摩耗の高い検出精度を発揮することができる。
【0046】
他方、CMP研磨装置において、図6に示すように、研磨粒子152を保持していない不織布等からなる研磨パッド16を採用し、研磨粒子152を有する研磨液を採用している場合には、研磨面15aや研磨溝15bには多くの研磨粒子152が存在する。このため、この場合には、たとえレーザビームを用いた寸法測定装置11を用いた場合でも、研磨面15aの摩耗を低い精度でしか検出することができない。
【0047】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0048】
例えば、本発明のCMP研磨装置は、被研磨物の上面及び下面を露出させるキャリヤと、キャリヤの下方に位置する第1定盤と、キャリヤの上方に位置する第2定盤とを有し、被研磨物の上面及び下面を同時に研磨するものであってもよい。
【0049】
また、寸法測定装置11を定盤3の上方で第1軸心O1近くから研磨パッド15の外周部分まで移動可能に設けてもよい。この場合、第1軸心O1近くから研磨パッド15の外周部分まで存在する複数の研磨面15aの摩耗深さを非接触で測定できるため、制御装置13において、摩耗深さの平均値を算出し、この平均値によって駆動装置5等を制御することができる。
【0050】
研磨深さLxの基準となる研磨溝15bは、被研磨物Wを研磨する際に用いられない基準となるだけのものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は半導体製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
W…被研磨物
1…キャリヤ
15…研磨パッド
3…定盤
5…駆動装置(5a…主駆動装置、5b…副駆動装置、5c…加圧装置)
7a…研磨液
7…研磨液供給装置
13…制御装置
15a…研磨面
15b…研磨溝
Lx…摩耗深さ
11…摩耗深さ測定手段(寸法測定装置)
151a…気泡
151…母材
152…研磨粒子
F…荷重
V1、V2…速度(V1…第1速度、V2…第2速度)
T…研磨時間
Q…供給量
9…ドレッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6