(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】製品を洗浄するまたはすすぐための、第一の界面活性剤および第二の界面活性剤を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/83 20060101AFI20230915BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20230915BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230915BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C11D1/83
G03F7/32 501
H01L21/30 570
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020529388
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018082551
(87)【国際公開番号】W WO2019105889
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,イー チェン
(72)【発明者】
【氏名】クリップ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ファーストル,ベルトールド
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-297158(JP,A)
【文献】特開2005-105045(JP,A)
【文献】特表2018-529989(JP,A)
【文献】特表2016-508287(JP,A)
【文献】特表2012-530732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
G03F 7/00- 7/42
G03F 9/00- 9/02
H01L21/30-21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を洗浄するまたはすすぐための組成物であって、
(A)第一の界面活性剤として、式(I)
【化1】
(式中、
Xは、カチオンであり、
Y1およびY2のうちの一方はアニオン性極性基であり、もう一方は水素であり、
各基Z1、Z2、およびZ3は、互いに独立して、
- 構造R
i-{A[-C(R
1)(R
2)-]
c[-C(R
3)(R
4)-]
d}
e-の基(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
R
iは、分岐または非分岐のC
1~10-フルオロアルキル基であり、
Aは、酸素、硫黄および/または-N(H)-であり、
cは、0~10の範囲の整数であり、
dは、0~10の範囲の整数であり、
eは、1~5の範囲の整数であり、
cおよびdが同時に0ではないことが条件である)であり、および、
(B)第二の界面活性剤として、以下からなる群から選択される、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物、
(B1)式(II)
R
5-[O-R
6]
l-OR
18 (II)
(式中、
R
5は、分岐または非分岐のC
6~12-フルオロアルキル基、または1または2個の二重結合を含有する分岐または非分岐のC
6~12-フルオロアルケニル基であり、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
および
lは、5~30の範囲の整数である)の化合物、
(B2)式(III)
H
3C-(CH
2)
m-CH
2-[O-R
7]
n-OR
19 (III)
(式中、
R
7は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
R
19は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
mは、5~30の範囲の整数であり、
および
nは、5~30の範囲の整数である)の化合物、
(B3)式(IV)
【化2】
(式中、
R
17は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
および
oは、5~30の範囲の整数である)の化合物、
(B4)式(V)
【化3】
(式中、
R
8、R
13およびR
14は、それぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、
R
9、R
11およびR
12は、それぞれ互いに独立して、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
R
10は、分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
および
p、qおよびrは、それぞれ互いに独立して、2~25の範囲の整数である)の化合物、
および
(B5)式(VI)
(H
3C)
3Si-O-R
15-O-Si(CH
3)
3 (VI)
(式中、
R
15は、
1~100個の範囲の数の、式(VII)
-[Si(CH
3)
2-O]- (VII)
の繰り返し単位、
および
1~100個の範囲の数の、式(VIII)
-[Si(CH
3)(R
16)-O]- (VIII)
(式中、R
16は、1個以上のエチレングリコール基および/または1個以上のプロピレングリコール基を含む基である)
の繰り返し単位からなり、
式(VII)の繰り返し単位および式(VIII)の繰り返し単位が、
- 無作為に、または
- 各場合ともブロックごとに2個以上の式(VII)または式(VIII)の繰り返し単位を含むブロックが無作為に交互に、配置されている)の化合物
を含む
、組成物。
【請求項2】
(B1)第二の界面活性剤として、式(II)の少なくとも1種の非イオン性化合物
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物において、
Xが、金属を含まない一価カチオンであり、
- プロトン
および
- 基NR
4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC
1~6-アルキル基からなる群から独立して選択される)からなる群から選択され、
Y1およびY2のうちの1つが、-COO
-、-SO
3
-、-(O)SO
3
-、-PO
3
2-および-(O)PO
3
2-からなる群から選択されるアニオン性極性基であり、もう一方は水素であり、
および
各基Z1、Z2、およびZ3が、互いに独立して、
- 構造R
i-{A[-C(R
1)(R
2)-]
c[-C(R
3)(R
4)-]
d}
e-の基(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
R
iは、分岐または非分岐のC
1~10-フルオロアルキル基であり、
cは、1~10の範囲の整数であり、
dは、1~10の範囲の整数であり、
および
eは、1~5の範囲の整数である)である、
請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物において、
Xが、
- プロトン
および
- 基NR
4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基である)からなる群から選択され、
Y1およびY2のうちの1つがスルホネート-SO
3
-であり、もう一方は水素であり、
各基Z1、Z2およびZ3が、互いに独立して、
- 構造R
i-{A[-C(R
1)(R
2)-]
c[-C(R
3)(R
4)-]
d}
e-の基(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
aは0~2の範囲の整数であり、
bは1または2であり、
cは1または2であり、
dは1または2であり、
および
eは1である)であり、
および基Z1、Z2およびZ3のすべては、同じ構造を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(II)の化合物が、
- 式(IIa)
【化4】
(式中、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
および
lは、5~30の範囲の整数である)の化合物、
- 式(IIb)
【化5】
(式中、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、
および
lは、5~30の範囲の整数である)の化合物、
および
- それらの混合物
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
さらなる成分として、
(C)水
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(II)の化合物が前記組成物中に存在し、
- 前記組成物中に存在する式(II)の化合物に対する式(I)の化合物の質量比が、1:4~1:1の範囲にあり、
および/または
- 前記組成物中に存在する、
- 式(I)の化合物の総量、および
- 式(II)の化合物の総量
の合計が、前記組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~0.5質量%の範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
- 前記組成物の平衡表面張力が、標準DIN53914:1997-07に従って、プレート法によりKruess張力計K100を用いて25℃で測定して、35mN/m未満であり、
および/または
- 前記組成物のpHが、7.0~11.0の範囲にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
基板およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を含む製品を洗浄するまたはすすぐための、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物の使用方法。
【請求項10】
- 前記洗浄またはすすぎが、集積回路デバイス、光学デバイス、マイクロマシン、または機械的精密デバイスを作るプロセスの一部であり、
および/または
- 前記基板が半導体基板である、
請求項9に記載の使用方法。
【請求項11】
- パターン崩壊を予防または低減し、
- ラインエッジラフネスを低減し、
- ウォーターマーク欠陥を予防または除去し、
- フォトレジスト膨張を予防または低減し、
- Blob欠陥を予防または低減し、
および/または
- 粒子を除去する
ために、前記組成物を洗浄またはすすぎに使用する、請求項9または10に記載の使用方法。
【請求項12】
- ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有する前記パターン化材
料が、現像されたパターン化フォトレジスト層、パターン化バリア材料層、パターン化多積層材料層およびパターン化誘電体材料層からなる群から選択され、
および/または
- フォトレジスト構造および/またはパターン化多積層ライン/スペース構造の場合、前記パターン化材料層のアスペクト比が2より大きく、
および/または
- 前記パターン化材料が、32nm以下のライン幅のライン-スペース構造を有する、
請求項9から11のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項13】
基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む洗浄した、またはすすいだ製品を作る方法であって、
以下の工程、
- 基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品を用意する、または提供する工程、
- 請求項1から8のいずれか一項に定義されている組成物を用意する、または提供する工程、
および
- 前記洗浄した、またはすすいだ製品を得るために、前記組成物を用いて前記製品を洗浄する、またはすすぐ工程
を含む方法。
【請求項14】
- 液浸フォトレジスト層、EUVフォトレジスト層または電子ビームフォトレジスト層を有する基板を提供する工程、
- 浸漬液の有無に関わらず、マスクを通してフォトレジスト層を化学線に曝露する工程、
- 基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品が得られるように、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターンを得るため、前記曝露したフォトレジスト層を現像液で現像する工程、
- 前記洗浄した、またはすすいだ製品を得るために、前記組成物を用いて前記製品を洗浄する、またはすすぐ工程
および任意に
- 前記洗浄した、またはすすいだ製品を乾燥させる工程
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の界面活性剤として、1個以上のフルオロアルキル基を含むイオン性化合物と、第二の界面活性剤として、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物とを含む組成物であって、製品、好ましくは半導体産業で使用される製品を、洗浄するまたはすすぐための組成物に関するものであり、前記組成物の使用方法それぞれに関するものである。本発明はまた、洗浄したまたはすすいだ、製品、好ましくは、基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む、半導体産業で使用される製品を作るための方法であって、前記製品を本発明の組成物で洗浄またはすすぐ工程を含む方法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)と、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(very-large-scale integration)(VLSI)および超々大規模集積回路(ultra-large-scale integration)(ULSI)を製作するプロセスにおいて、パターン化フォトレジスト層、窒化チタン、タンタルまたは窒化タンタルを含有する、またはそれらからなるパターン化バリア材料層、例えば変性ポリシリコンおよび二酸化ケイ素層の積層を含有する、またはそれからなるパターン化多積層材料層、ならびに、二酸化ケイ素または低kまたは超低k誘電体材料を含有する、またはそれからなるパターン化誘電体材料層のような、パターン化材料層は、フォトリソグラフィ技術により生成される。今日では、そのようなパターン化材料層は、22nmをさらに下回る寸法の、高アスペクト比を有する構造を含む。これらの説明は、本明細書において定義する本発明にも適用される。
【0003】
本明細書で言及するパターン化材料層に含まれる構造のアスペクト比「H:W」は、当技術分野における通常の意味と一致して、パターン化材料層の機構(features)の高さ(H)とパターン化材料層の機構の幅(ライン幅、W)の比によって特徴付けられる。従って、アスペクト比の高い構造は、その高さを拡張した値が幅を拡張した値よりも高い構造である。
【0004】
フォトリソグラフィは、マスクに切り込んだパターンが基板、特に半導体基板、例えば半導体ウエハに投影される方法である。半導体フォトリソグラフィは、典型的には、フォトレジストの層を半導体基板の上面に適用し、フォトレジストを、化学線、詳細には、例えば波長193nmのUV照射にマスクを通して曝露する工程を含む。こうした原理は、本明細書に記載する本発明にも適用される。193nmのフォトリソグラフィを22nmおよび15nmの技術ノードに拡大するために、浸漬フォトリソグラフィは、高解像度化技術として開発された。この技術では、光学系の最終レンズとフォトレジスト表面の間におけるエアギャップは、1を超える屈折率を有する液体媒体、例えば、波長193nmに対して屈折率が1.44の超純水により置き換えられる。この技術は、本発明によるプロセスにも適用される、または、本明細書で記載する本発明の組成物と共に使用される。しかし、浸出、吸水およびパターン分解を避けるために、バリアコーティングまたは水耐性フォトレジストが使用されなければならない。
【0005】
193nmでの浸漬リソグラフィに加えて、波長が顕著に短い他の照明技術は、20nmノード以下のプリントされるフィーチャサイズをさらにダウンスケーリングする必要性を満たすと考えられている。電子ビーム(eビーム)曝露および波長がおよそ13.5nmの極端紫外線リソグラフィ(EUV)は、将来に浸漬リソグラフィと置き換わる有望な候補とみられている。化学線への曝露後、後続のプロセスフローは、使用されるフォトリソグラフィの方法(例えばUVリソグラフィ、浸漬フォトリソグラフィまたは上記のEUVリソグラフィ)と無関係であり、従って、本発明による方法またはプロセスで使用することができる。
【0006】
典型的には、および当業者に知られているように、高アスペクト比を有する構造、および50nm以下のライン幅を有する構造は、強力な光ビームを、光学的マスクを通してフォトレジスト(すなわち、基板上の化学堆積層)に向けることにより生成される。フォトリソグラフィプロセスの基本的な手順は、典型的には、および例えば、いくつかのプロセス工程に分けられ、例えば多くのケースおよび状況では、以下のプロセス工程が区別される:
1)ウエハの洗浄、2)製造、3)フォトレジスト適用、4)曝露および曝露後のベーク、5)現像およびすすぎ、6)ハードベーク、および7)追加プロセス、例えばプラズマエッチング。
【0007】
典型的には、デバイスを製作するための後続のプロセス工程が続く。当業者には明確であるように、フォトリソグラフィプロセスを実際の製作ニーズに適合させるために、上記のプロセス工程の一部を省略、修正、または上記に列挙したプロセス工程に加えて他のプロセス工程を挿入することができる。
【0008】
本発明による方法および使用方法は、好ましくは、基板およびそれに支持されている上で論じたプロセス工程の1つ、またはすべてを含む、パターン化材料層を含む洗浄した、またはすすいだ製品を作るプロセスの一部である。上記のフォトリソグラフィプロセスの基本的なプロセスに関して、本発明(の使用方法、方法および組成物)は、好ましくはプロセス工程5)に関する。
【0009】
プロセス工程1(ウエハの洗浄)では、ウエハの表面に吸収された物質(汚染物)が除去されるように、ウエハの表面に様々な化学処理を適用する。
【0010】
プロセス工程2(製造)では、表面に吸収された湿気を除去するために、ウエハを少なくとも150℃に加熱し、続いて任意に、表面を不動態化する(「疎水化する)」)ために、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理する(残留OH-基をメチル-基でキャッピングする)。不動態化された表面は、フォトリソグラフィプロセスの後段階で、ウエハ表面とフォトレジスト層の間において水の拡散を予防する目的を果たす。
【0011】
プロセス工程3(フォトレジストの適用)では、フォトレジスト層を、スピンコーティングによりウエハに堆積させる。このプロセス工程の詳細な説明および論考は、US4267212Aで開示されている。この層の厚さは、EUVレジストの約10nmから深紫外レジスト(DUVレジスト)の約100nmまで変化させることができ、古いレジストの数マイクロメートルまで、およびマイクロマシンニング利用に達させることができる。溶媒の蒸発後、堆積させたフォトレジスト層は、任意に、典型的にはおよそ100℃の温度で事前にベークされる。
【0012】
プロセス工程4では、強力な光ビームを光学的マスクを通して、フォトレジスト層の特定の箇所のみが光に曝露されるように向ける。フォトレジストの性質(ポジティブまたはネガティブ)に応じて、次のプロセス工程(現像)で、フォトレジストの曝露した、または曝露していない領域を除去する。曝露後のベークは、レジストの化学増幅に役立てるために行われることが多い。
【0013】
プロセス工程5(現像およびすすぎ)では、および本発明により、現像液をフォトレジストと接触させて、フォトレジスト層の曝露した(ポジティブレジスト)または曝露していない(ネガティブレジスト)領域を除去する。パターン化フォトレジスト層は、光学的マスク(ネガティブまたはポジティブ)のパターンに応じ、それに従って、ウエハ(基板)上に留まる。典型的な現像液は、ポジティブトーンレジスト用では水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を含有する、および/またはネガティブトーンレジスト用では有機溶媒を含有する。
【0014】
レジストを現像液で適した時間で処理した後に、すすぎ組成物を適用して(ウェットツーウェット(wet-to-wet))、特定の欠陥(例えばウォーターマーク欠陥、現像液の残留残渣、パターン崩壊)を予防する、除去する、または緩和する。任意に、現像液とすすぎ配合物の間に、追加の水ですすぐ工程を設けることも可能である。すすぎ組成物の適用は、ライン幅が小さく高アスペクト比のライン-スペース構造を有する製品に対して特にいっそう適切である。次いで、基板は、典型的には脱水機にかけ、その後基板を次のプロセス工程に移す。
【0015】
プロセス工程6(ハードベーク)では、パターン化フォトレジスト層を支持するウエハは、典型的には120~180℃の温度で、任意に「ハードベークして」よい。ハードベーク後、残ったフォトレジスト層は固化するので、化学処理および/または物理的応力に対する耐性が増す。
【0016】
追加のプロセス工程7(例えばプラズマエッチング)は、フォトレジストの標的のアーキテクチャをウエハ基板内に移す。エッチング工程は、典型的には、誘電体および/またはハードマスク層(フォトレジスト層とウエハの間における酸化ケイ素または低k層(例えばシリコーン酸化物、窒化チタン、低k層(炭素ドープ酸化ケイ素))を除去する。
【0017】
曝露技術に関わりなく、上記に論じた小さいパターンの湿式化学処理は、複数の問題を伴う。技術が進歩し、寸法要件がますます厳しくなるにつれて、フォトレジストパターンは、比較的薄く、長いフォトレジストの構造または機構、すなわち、基板において高アスペクト比を有する機構を含むことが必要となる。これらの構造は、例えば隣接したフォトレジスト機構の間における洗浄またはすすぎ液からの残った液体または溶液の過剰な毛管力のため、特に洗浄するまたはすすぐプロセス中に、また、特に脱水プロセス中に、たわみおよび/または崩壊をきたす恐れがある。毛管力によって引き起こされる、小さい機構の間における最大応力σは、Namatsuら、Appl.Phys.Lett.66(20)、1995年に従って、以下のように説明できる:
【数1】
【0018】
式中、γは、流体の平衡表面張力であり、θは、自らでパターン化材料層を支持している基板上での流体の接触角、すなわち、例えばフォトレジストの構造との流体の接触角(文献中「流体内の接触角」とも呼ばれる)であり、Dは、パターン化材料層の機構の間の距離(「スペース」とも呼ばれる)であり、Wは、パターン化材料層の機構の幅(ライン幅)であり、Hは、パターン化材料層の機構の高さである(パラメーターHおよびWは、アスペクト比を決定する)。
【0019】
洗浄する、およびすすぐ工程に対して、最大応力σを低下させるアプローチの1つには、より疎水性にするために、修飾したポリマーを有するフォトレジストを使用することが含まれる。しかし、このアプローチは、すすぎおよび洗浄溶液により、フォトレジストパターンの濡れ性を低下させる恐れがあり、好ましくない。
【0020】
最大応力σを低下させる別のアプローチでは、流体の表面張力γ(動的および平衡表面張力の両方)を低下させなければならない。流体の表面張力を低下させるために、あるいは、液体界面活性剤は、通常、前記流体または液体に添加される。
【0021】
最大応力σを低下させるさらに別のアプローチは、接触角θの値をそれに応じて調整することによって、cosθの値を低減することである。
【0022】
従来のフォトリソグラフィプロセスの別の問題は、レジストおよび光学解像度が限定されることによる、ラインエッジラフネス(LER)およびラインワイズラフネス(LWR)である。LERは、機構の理想的形態からの、水平方向および垂直方向の逸脱を含む。詳細には、限界寸法が収縮するので、LERは、より問題になり、悪影響、例えばトランジスタリーク電流の増加が生じ、よって集積回路(IC)デバイスの性能が低下する。
【0023】
寸法が収縮することで、粒子の除去は、欠陥の低減を達成するために決定的な要因になる。後者は、光学デバイス、マイクロマシンおよび機械的精密デバイスの製作中に生成されるフォトレジストパターン、ならびに他のパターン化材料層にも適用される。
【0024】
従来のフォトリソグラフィプロセスのさらなる問題は、ウォーターマーク欠陥が存在することである。ウォーターマークは、脱イオン水または欠陥すすぎ液(defect rinse solution)がフォトレジストの疎水性表面から取り除くことができないときに、フォトレジスト上に形成されることがある。ウォーターマークは、収率およびICデバイス性能に対して有害な影響を有する。
【0025】
さらに別の問題は、いわゆる「Blob欠陥」の発生である。こうした欠陥はUV曝露および/またはフォトレジスト現像中に生じ、フォトレジスト上の1つ以上の上部層、例えばポリマー層および感光層において、丸い「クレーター状」開口部の形態をしばしば有する。小粒子または他の不溶性物質はその開口部に閉じ込められ、粒子の除去が非効率的になる、または開口部が遮られる可能性がある。詳細には、疎水性分子の疎水性断片または凝集物は、こうした欠陥面中に、またはその上で吸収されることがある。こうした残留粒子、断片または凝集物は、プロセスの後段階で問題を引き起こす。
【0026】
従来のフォトリソグラフィプロセスの別の問題は、フォトレジスト層またはパターン化材料層による溶媒の吸収であり、これら層の膨張がこの吸収により生じる。ごく近接したパターン、詳細にはライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターンは、よって、膨張後に互いに直接接触するようになる。さらに、互いに直接接触して膨張したパターンは、現像し、製品、詳細には本発明による製品を洗浄またはすすいだ後でさえも、結果として互いにくっつく。フォトレジスト膨張は、製品の、詳細には本発明で定義する製品の、達成可能な最小限のライン-スペース寸法をこのようにして限定する。
【0027】
本明細書において、また、本発明に関連して、「パターン化材料層」という用語は、基板上に支持されている層を指す。支持されている層は、好ましくはライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有する特定のパターンを有し、支持している基板は、典型的には半導体基板、例えば半導体ウエハである。「ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層」という用語は、パターン化材料がライン幅50nmのラインスペース構造を含むが、ライン幅が50nmよりも小さい(狭い)ラインスペース構造、詳細には、ライン幅が32nm以下のラインスペース構造またはライン幅が22nm以下のラインスペース構造も含むことを意味する。基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品(すなわち、本発明による製造方法、使用方法および/または処理が施される製品)において、2つの隣接したラインの間におけるスペース幅に対するライン幅の比は、好ましくは1:1より低く、より好ましくは1:2より低い。そのような「ライン幅対スペース幅」の低い比を有するパターン化材料層は、生成中にきわめて慎重な取扱いを必要とすることが、当業者に知られている。
【0028】
パターン化材料層のライン-スペース構造のライン幅は、走査型電子顕微鏡法により、例えば、Hitachi CG 4000走査電子顕微鏡を用いる走査型電子顕微鏡法により、容易に測定できる。
【0029】
典型的には、本発明に従って処理が施されるパターン化材料層は、ポリマー性フォトレジストを支持体上に堆積させること、および後続して、マスクを通して、支持されているフォトレジスト層に化学線を曝露することにより形成される。曝露したフォトレジスト層を現像液を用いて現像した後、パターン化材料層が生じる。一部の場合では、現像液を用いて現像する前に、曝露後のベーク(PEB)を実施する。典型的な現像液は、例えば、TMAHを含む水溶液である(例えば、WO2014/091363、第23頁、第10行目参照)。
【0030】
従来技術の複数の例示的な刊行物には、イオン性または非イオン性界面活性剤および/または製品を洗浄するまたはすすぐための組成物が記載されている。
【0031】
文献WO2010/149262A1(US2012/111233A1に対応)は、フルオロ界面活性剤に関する。
【0032】
文献WO2012/084118A1は、界面活性化界面活性剤としてのペルフルオロアルコキシスルホスクシネートの誘導体に関する。
【0033】
文献WO2012/101545A1は、50nm未満のライン-スペース寸法を有するパターンを有する集積回路を製作するための少なくとも3つの短鎖ペルフルオロ化基を有する界面活性剤の使用に関する。
【0034】
文献WO2013/022673A2は、フォトレジストすすぎ溶液用のペルフルオロアルキルスルホンアミド界面活性剤に関する。
【0035】
文献WO2015/004596A1は、フォトマスク洗浄用の配合物における少なくとも3個の短鎖ペルフルオロ化基を有する界面活性剤の使用に関する。
【0036】
文献WO2017/009068A1は、スルホエステルのアンモニウム塩を含有する欠陥低減すすぎ溶液に関する。
【0037】
文献GB1573208Aは、半導体デバイスの中間製品に適合させた表面処理剤について論じている。
【0038】
文献JPS5064208Aは、フッ素化合物の製造に関する。
【0039】
文献JPS50101306AおよびJPS50101307Aはどちらも、フッ素含有化合物に関する。
【0040】
文献JPS5952520Aは、ポリヒドロキシ化合物をペルフルオロアルケン三量体化合物と反応させることにより調製されるフッ素含有界面活性剤に関する。
【0041】
従来技術を鑑みて、半導体産業で使用される基板を含んだ製品、例えば、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を支持している製品の洗浄またはすすぎを改善するのに有用な組成物と、そのような製品を作るそれぞれの方法とが、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【文献】US4267212A
【文献】WO2014/091363、第23頁、第10行目
【文献】WO2010/149262A1
【文献】US2012/111233A1
【文献】WO2012/084118A1
【文献】WO2012/101545A1
【文献】WO2013/022673A2
【文献】WO2015/004596A1
【文献】WO2017/009068A1
【文献】GB1573208A
【文献】JPS5064208A
【文献】JPS50101306A
【文献】JPS50101307A
【文献】JPS5952520A
【非特許文献】
【0043】
【文献】Namatsuら、Appl.Phys.Lett.66(20)、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
これに対応して、本発明の主な目的は、半導体産業で使用される基板を含んだ製品、例えば、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を支持している製品の洗浄またはすすぎの改善に使用することができる組成物を提供することである。前記組成物の使用によって、パターン崩壊の予防、ラインエッジラフネスの低減、ウォーターマーク欠陥の予防または低減、フォトレジスト膨張の予防または低減、Blob欠陥の予防または低減、および/または粒子の除去が可能となり、先行技術からの既知の組成物と比較すると、前述した洗浄またはすすぎの結果の1つ以上、好ましくはすべてにおいて、効果の改善が理想的に可能となるはずである。
【0045】
本発明のさらなる目的は、基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む、洗浄したまたはすすいだ製品を作る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明の主な目的および他の目的は、製品、好ましくは半導体産業で使用される製品を洗浄するまたはすすぐための組成物であって、
(A)第一の界面活性剤として、式(I)
【化1】
(式中、
Xは、カチオンであり、好ましくは金属を含まない一価カチオンであり、より好ましくは、
プロトン、
および
基NR
4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐(すなわち、直鎖)のC
1~6-アルキル基(すなわち、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基)からなる群から独立して選択される)
からなる群から選択され、
Y1およびY2のうちの一方はアニオン性極性基であり、もう一方は水素であり、
各基Z1、Z2、およびZ3は、互いに独立して、
- 分岐または非分岐のC
1~10-アルキル基(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有するアルキル基)、
または(好ましくは)
- 構造R
i-{A[-C(R
1)(R
2)-]
c[-C(R
3)(R
4)-]
d}
eの基(式中、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基(すなわち、1、2、3または4個の炭素原子を有するアルキル基)であり、
R
iは、分岐または非分岐のC
1~10-フルオロアルキル基(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を有し、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換されているアルキル基)であり、
Aは、酸素、硫黄および/または(好ましくは、または)-N(H)-、より好ましくは酸素(1個を超えるAが存在する場合、各Aの意味はいずれの他のAの意味からも独立している)であり、
cは、0~10の範囲の整数であり、
dは、0~10の範囲の整数であり、
eは、1~5の範囲の整数であり、
且つ、cおよびdが同時に0ではない(すなわち、c+d>0)ことが条件である)であり、
基Z1、Z2またはZ3のうちの少なくとも1つは、構造R
i-{A[-C(R
1)(R
2)-]
c[-C(R
3)(R
4)-]
d}
eの基である)のイオン性化合物、
および、
(B)第二の界面活性剤として、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物、
を含む組成物によって、達成されることが見出された。
【0047】
本発明と、好ましい実施形態と、そのパラメータ、特性および要素の好ましい組み合わせとは、添付の特許請求の範囲で定義される。本発明の好ましい態様、詳細、修正、および利点は、以下の記述および以下に述べる実施例でも、定義され説明される。
【0048】
本発明による組成物は、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を支持している基板において、優れた洗浄および/またはすすぎの結果を示すと同時に、優れたパターン崩壊の予防、ラインエッジラフネスの低減、ウォーターマーク欠陥の予防または低減、フォトレジスト膨張の予防または低減、Blob欠陥の予防または低減、および/または優れた粒子の除去を示すことが見出された。特に、本発明の組成物を用いた洗浄またはすすぎは、パターン崩壊を大きく低減し、パターン崩壊を理想的に予防することが見出された。
【0049】
パターン崩壊の予防、ラインエッジラフネスの低減、ウォーターマークの欠陥の予防または低減、フォトレジスト膨張の予防または低減、Blobの欠陥の予防または低減、および/または優れた粒子の除去は、本文において、まとめて「欠陥低減」とも称する。
【0050】
従って、本発明による組成物は、半導体基板用の欠陥低減すすぎ溶液として、特に適している。
【0051】
よって、1個以上のフルオロアルキル基を含む第一のイオン性界面活性剤(A)と、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の第二の非イオン性界面活性剤(B)との本発明による組み合わせは、基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む、半導体産業で使用される製品において、洗浄および欠陥低減すすぎ結果の改善に、相乗効果をもたらすと考えられる。理論に束縛されるものではないが、現在、第一のイオン性界面活性剤(A)は、表面張力の低減、高い動的表面張力、良好な濡れ性、詳細にはライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層の良好な濡れ性、および優れた欠陥低減を、組成物にもたらすと考えられる。一方で、第二の非イオン性界面活性剤(B)は、第一のイオン性界面活性剤(A)とライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層、詳細にはフォトレジストとの間の相互作用の程度を有利に仲介し、第二の非イオン性界面活性剤(B)は、キャリア溶媒(通常は水)における第一のイオン性界面活性剤(A)の溶解性および/またはコロイド安定性を改善し、第二の非イオン性界面活性剤(B)は、パターン化材料層表面への粒子の付着を最小限にし、および/または前記表面へのそのような粒子の再堆積を低減すると、現在考えられている。
【0052】
さらに、毛管力によって引き起こされる、小さい機構の(例えば半導体基板(上記参照)上のフォトレジスト、すなわち高いアスペクト比を有する機構の)間における最大応力σ、すなわち、流体の平衡表面張力γ、および自らでパターン化材料層を支持している基板上での流体の接触角(すなわち、例えばフォトレジストの構造との流体の接触角、上記参照)のcosθに影響する2つの要因が、本発明の組成物により低減され、これによって、本発明の組成物はパターン崩壊現象を低減するまたは避けるのに特に効果的であると、現在考えられている。
【0053】
本発明の組成物で使用される非イオン構造の第二の界面活性剤は、組成物中に望ましくない粒子が(もしあっても)わずかしか形成されず、且つ組成物中の結晶形成が低減されるまたは避けられるという利点を有することが、さらに見出された。組成物中に形成される粒子または結晶は、例えば、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を支持している基板の洗浄またはすすぎに、悪影響を及ぼすであろう。それは、前記ラインスペース構造上に、組成物からの粒子および/または結晶が堆積する可能性があるからである。
【0054】
さらに、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む非イオン性の第二の界面活性剤は、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層、詳細にはフォトレジストとの相互作用に、洗浄、すすぎ、または欠陥低減の目的で、特によく適していることが見出された。本明細書で定義するポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基の構造および長さ(好ましくは1~100個の範囲、より好ましくは1~50個の範囲、およびさらにより好ましくは5~30個の範囲のアルキレンオキシ繰り返し単位の長さ)は、組成物の本発明による使用方法に有益な効果を有することも見出された。
【0055】
本発明の別の利点は、本発明の組成物中の式(I)の第一の界面活性剤が、潜在的な生物蓄積性を有する長鎖ペルフルオロアルキルカルボン酸および/またはペルフルオロアルキルスルホン酸に分解しないと考えられるので、改善された環境安全性を示すことである。これにより、潜在的に環境に有害なペルフルオロアルキル界面活性剤の含有量が少なくとも低減される、製品を洗浄するまたはすすぐための組成物を製造することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明によれば、式(I)の化合物において、各基Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-は、その右端を介して(該当する場合、最後の基[-C(R1)(R2)-]または[-C(R3)(R4)-]の炭素原子を介して)、添え字「e」の横の結合線で示されるように、好ましくは式(I)の化合物のカルボキシル基の酸素原子に結合している。
【0057】
本発明によれば、式(I)の化合物において、好ましくは、各基Z1、Z2およびZ3は、互いに独立して、構造Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-の基である。各基Z1、Z2およびZ3が、互いに独立して、構造Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-の基である場合、基Z1、Z2およびZ3は、互いに等しいまたは異なる基でもよい。本発明の好ましい変形では、基Z1、Z2およびZ3は等しい構造「Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-」を有する。
【0058】
本発明によれば、式(I)の化合物(または本明細書で定義する好ましい式(I)の化合物)において、分岐または非分岐のC1~10-フルオロアルキル基Riは、好ましくは、総数2~15個の、より好ましくは総数3~10個のフッ素原子を含み、および/または好ましくは非分岐(直鎖)である。この基のより好ましいおよびより具体的な定義を、以下でさらに定義する。
【0059】
式(I)の化合物において、Xは、好ましくは金属を含まない一価カチオンであり、より好ましくは、プロトンおよび基NR4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC1~4-アルキル基である)からなる群から選択される。より好ましくは、Xは、プロトンまたはアンモニウム(NH4
+)である。
【0060】
式(I)の化合物において、アニオン性極性基Y1および/またはY2は、COO-、-SO3-、-(O)SO3
-、-PO3
2-および-(O)PO3
2-からなる群から選択されることが好ましい。特に好ましくは、アニオン性極性基Y1および/またはY2は、スルホネート(-SO3-)である。式(I)の化合物の特に好ましい変形において、Y1はスルホネートであり、Y2は水素である。
【0061】
本発明による組成物において、少なくとも1種の非イオン性化合物(B)中のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基は、好ましくは、少なくとも5個のアルキルオキシ基および/またはアルキレンオキシ基をそれぞれ含む。
【0062】
式(I)の化合物それ自体およびその調製は、例えば、文献WO2010/149262A1から知られている。
【0063】
好ましい本発明による組成物は、
(A)第一の界面活性剤として、式(I)のイオン性化合物(または上記で定義されている好ましい式(I)の化合物)、
および
(B)第二の界面活性剤として、以下からなる群から選択される、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物、
(B1)式(II)
R
5-[O-R
6]
l-OR
18 (II)
(式中、
R
5は、分岐または非分岐、好ましくは分岐のC
6~12-フルオロアルキル基、または好ましくは1または2個の二重結合を含有し、且つ、好ましくは合計12~20個のフッ素原子を含有する分岐または非分岐の、好ましくは分岐のC
6~12-フルオロアルケニル基であり、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基、好ましくは分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、より好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基、好ましくはメチルであり、
および
lは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数である)の化合物、
(B2)式(III)
H
3C-(CH
2)
m-CH
2-[O-R
7]
n-OR
19 (III)
(式中、
R
7は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基、好ましくは分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、より好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
R
19は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基、好ましくはメチルであり、
mは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数であり、
および
nは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数である)の化合物、
(B3)式(IV)
【化2】
(式中、
R
17は、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基、好ましくは分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、より好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
および
oは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数である)の化合物、
(B4)式(V)
【化3】
(式中、
R
8、R
13およびR
14は、それぞれ互いに独立して、水素またはメチルであり、好ましくはR
8、R
13およびR
14はすべて水素であり、
R
9、R
11およびR
12は、それぞれ互いに独立して、分岐または非分岐のC
2~6-アルキレン基、好ましくは分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、より好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
R
10は、分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基、好ましくはエチルであり、
および
p、qおよびrは、それぞれ互いに独立して、2~25の範囲の整数である)の化合物、
および
(B5)式(VI)
(H
3C)
3Si-O-R
15-O-Si(CH
3)
3 (VI)
(式中、
R
15は、
1~100個の範囲、好ましくは1~50個の範囲の数の、式(VII)
-[Si(CH
3)
2-O]- (VII)
の繰り返し単位、
および
1~100個の範囲、好ましくは1~50個の範囲の数の、式(VIII)
-[Si(CH
3)(R
16)-O]- (VIII)
(式中、R
16は、1個以上のエチレングリコール(すなわち1,2-エチレンジオキシ)基および/または1個以上のプロピレングリコール(すなわち1,3-プロピレンジオキシ)基を含む基である)
の繰り返し単位からなり、
式(VII)の繰り返し単位および式(VIII)の繰り返し単位が、
- 無作為に、または
- 各場合ともブロックごとに2個以上の式(VII)または式(VIII)の繰り返し単位を含むブロックが無作為に交互に、配置されている)の化合物
を含む。
【0064】
本発明の組成物において、式(I)の1種以上のイオン性化合物は、式(II)、(III)、(IV)、(V)および/または(VI)の1種以上の非イオン性化合物と組み合わせる(例えば、混合する)ことができる。好ましい本発明の組成物は、1種類のみのイオン性化合物(I)が、1種類の非イオン性化合物と、すなわち式(II)の化合物と、または式(III)の化合物と、または式(IV)の化合物と、または式(V)の化合物と、または式(VI)の化合物と、組み合わされる場合である。
【0065】
式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物、およびこれらを製造する方法は当技術分野で知られており、それぞれの化合物は、例えば界面活性剤として市販されている。式(II)の化合物および前記化合物を合成するための方法は、例えば、文献JPS5064208A、JPS50101306A、JPS50101307AおよびJPS5952520から知られている。好ましい式IVの化合物の1つは、ポリエチレングリコールモノ(トリスチリルフェニル)エーテル(CAS(登録商標)RN99734-09-5)である。好ましい式(V)の化合物の1つは、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(CAS(登録商標)RN28961-43-5)である。
【0066】
式(VI)の化合物において、1個を超えるエチレングリコール基がR16に存在する場合、これらは一緒につながってポリエチレングリコール基を形成することが好ましい。1個を超えるプロピレングリコール基がR16に存在する場合、これらは一緒につながってポリプロピレングリコール基を形成することが好ましい。式(VI)の化合物は、例えばShin Etsu社(日本)から側鎖ポリエーテル修飾シリコーンとして市販されている。好ましい式Vの化合物は、Shin Etsu社から「KF351A」の名称で市販されている。化合物「KF351」は、式(IX)
Ra-(C2H4O)s(C3H6O)t-Rb (IX)
のポリアルキレンオキシ基を置換基R16として含む。
【0067】
化合物KF351はさらに、好ましくはDIN53015:2001-02に従ってHoeppler Falling-Ball粘度計を使用して測定して、25℃で65~75mm2/sの範囲の動粘度を有する。化合物KF351は、25℃で(水に対して)1.0~1.10の範囲、好ましくは1.06の比重によって、さらに特徴付けられる。化合物KF351は、Griffinの方法(Griffin,W.C.:「Classification of surface active agents by HLB」,J.Soc.Cosmet.Chem.1,1949年を参照)に従って測定して、10~20の範囲、好ましくは10~15の範囲、より好ましくは12の親水性-親油性バランス(「HLB」)値によって、さらに特徴付けられる。
【0068】
(A)第一の界面活性剤として、上で定義されている式(I)のイオン性化合物
(式中、各基Z1、Z2およびZ3は、互いに独立して、構造Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-の基であり、式中、Ri、A、R1、R2、R3、R4、c、dおよびeは、上で定義されている意味または好ましい意味を有する)、
および/または(好ましくは、および)
(B)第二の界面活性剤として、上で定義されている式(II)の少なくとも1種の非イオン性化合物
を含む、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0069】
第一の界面活性剤として、式(I)のイオン性化合物、および第二の界面活性剤として、上で定義されている少なくとも1種の式(II)の非イオン性化合物(または本明細書で定義されている少なくとも1種の好ましい式(II)の非イオン性化合物)を含む、本発明による組成物は、製品、詳細には、基板、より詳細には半導体基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を含む製品の洗浄またはすすぎにおいて、特に有益な特性を有し、前記製品の欠陥低減に特に有益な特性を有することが、自社実験で見出された。第一の界面活性剤として、式(I)のイオン性化合物、および第二の界面活性剤として、上で定義されている少なくとも1種の式(II)の非イオン性化合物(または本明細書で定義されている少なくとも1種の好ましい式(II)の非イオン性化合物)を含む、本発明による組成物は、長期間にわたって、例えば6ヶ月以上の期間、好ましくは12ヶ月以上の期間、特に良好な貯蔵安定性(貯蔵寿命)を示すことも、自社実験で見出された。
【0070】
式(I)の化合物において、各基Z1、Z2およびZ3が互いに独立して、
好ましくは
- 総数4~50個の、より好ましくは5~20個の、さらにより好ましくは6~10個の炭素原子を有し
および
- 総数2~15個の、より好ましくは3~10個のフッ素原子を有し、
および/または、好ましくは
- 自らのアルキル基を介して、カルボキシル基のまたは式Iの化合物の基の隣接する酸素原子に結合している、
アルキル-フルオロアルキルエーテル基である、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0071】
本明細書中、上で定義されているような式(I)の化合物の好ましい一例は、アルキル-フルオロアルキルエーテル基が、構造F3C-CF2-CH2-O-CH2-CH(C2H5)-を有する、式(Ia)の化合物(下記参照)である。
【0072】
式(I)の化合物において、
Xが、金属を含まない一価カチオンであり、好ましくは、
- プロトン
および
- 基NR4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC1~4-アルキル基である)からなる群から選択され、
Y1およびY2のうちの1つが、-COO-、-SO3
-、-(O)SO3
-、-PO3
2-および-(O)PO3
2-からなる群から選択されるアニオン性極性基であり、好ましくはスルホネート-SO3
-であり、もう一方は水素であり、好ましくはY1がアニオン性極性基でありY2が水素であり、
および
各基Z1、Z2、およびZ3が、互いに独立して、
- 構造Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-の基(式中、
R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC1~4-アルキル基であり、
Riは、分岐または非分岐のC1~10-フルオロアルキル基であり、
cは、1~10の範囲の整数であり、
dは、1~10の範囲の整数であり、
および
eは、1~5の範囲の整数である)である、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0073】
さらに、式(I)の化合物において、
Xが、
- プロトン
および
- 基NR4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC1~4-アルキル基であり、より好ましくは基NR4
+はNH4
+である)からなる群から選択され、
Y1およびY2のうちの1つがスルホネート-SO3
-であり、もう一方は水素であり、好ましくはY1がスルホネートでありY2が水素であり、
各基Z1、Z2およびZ3が、互いに独立して、
- 構造Ri-{A[-C(R1)(R2)-]c[-C(R3)(R4)-]d}e-の基(式中、
R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、または分岐または非分岐のC1~4-アルキル基、好ましくはC1~2-アルキル基であり、
aは0~2の範囲の整数であり、好ましくはaは1または2であり、
bは1~6の範囲の整数であり、好ましくはbは1または2であり、
cは1~10の範囲の整数であり、好ましくはcは1または2であり、
dは1~10の範囲の整数であり、好ましくはdは1または2であり、
および
eは1~5の範囲の整数であり、好ましくはeは1である)であり、
および好ましくは基Z1、Z2およびZ3のすべては、同じ構造を有する、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0074】
さらに、式(I)の化合物において、
Xが、
- プロトン
および
- 基NR4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC1~4-アルキル基であり、より好ましくは基NR4
+はNH4
+である)からなる群から選択され、
Y1が、スルホネート、-SO3
-であり、
Y2が、水素であり、
および基Z1、Z2およびZ3は、同じ構造を有し、各場合とも式F3C-CF2-CH2-O-CH2-CH(C2H5)-の基である、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0075】
よって、式(I)の化合物が、式(Ia)
【化4】
(式中、Xは、プロトンおよび基NR
4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC
1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、より好ましくは基NR
4
+はNH
4
+である)からなる群から選択される)
の化合物である、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)も、特に好ましい。
【0076】
さらに、式(II)の化合物が、
- 式(IIa)
【化5】
(式中、
R
6、R
18およびlは、上記の意味または好ましい意味(式(II)について上で定義されている通り)を有する)の化合物、
- 式(IIb)
【化6】
(式中、
R
6、R
18およびlは、上記の意味または好ましい意味(式(II)について上で定義されている通り)を有する)の化合物、
および
- それらの混合物
からなる群から選択される、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0077】
第一の界面活性剤(A)として式(I)の化合物、好ましくは上で定義されている好ましい式(I)の化合物、および第二の界面活性剤(B)として1種以上(好ましくは1種)の式(IIa)の化合物および/または1種以上(好ましくは1種)の式(IIb)の化合物を含む、本発明による組成物が、特に好ましい。
【0078】
好ましい式(II)の化合物の1つは、Neos社(日本)からFTergent(登録商標)212Mとして市販されている、ポリエチレングリコールエーテルと化合物1,1,1,2,4,5,5,5-オクタフルオロ-3-(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-2-プロパニル)-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテンとの反応生成物(例えばJPS5064208A、JPS50101306A、JPS50101307Aおよび/またはJPS5952520を参照)である。
【0079】
意図される使用、例えば半導体基板用の欠陥低減すすぎ溶液として、水性組成物が好ましいので、さらなる成分として、
(C) 水、好ましくは脱イオン水
を含む、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0080】
上記のように、本発明による第二の非イオン性界面活性剤(B)、詳細には式(II)の非イオン性化合物(特に好ましい式(IIa)および(IIb)の化合物を含む)が、第一の(イオン性)界面活性剤(A)と、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層、詳細にはフォトレジストとの間の相互作用の程度を有利に仲介すること、キャリア溶媒としての水に対する第一のイオン性界面活性剤(A)の溶解性および/またはコロイド安定性を改善し、パターン化材料層表面への粒子の付着を最小限にする、および/または前記表面へのそのような粒子の再堆積を低減することも、自社実験で見出された。
【0081】
- 組成物中に存在する式(II)の化合物(存在する場合、式(IIa)の化合物および/または式(IIb)の化合物を含む)に対する式(I)の化合物の質量比が、1:4~1:1の範囲、好ましくは1:3~3:4の範囲にあり、
および/または
- 組成物中に存在する、
- 式(I)の化合物の総量および
- 式(II)の化合物の総量
の合計が、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~0.5質量%の範囲、好ましくは0.02質量%~0.25質量%の範囲、より好ましくは0.05質量%~0.12質量%の範囲にある、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)、好ましくは第二の界面活性剤として、少なくとも1種の式(II)の非イオン性化合物を含む組成物も、好ましい。
【0082】
上で定義されているように、組成物中に存在する式(II)の化合物(好ましくは式(IIa)の化合物)に対する式(I)の化合物の好ましい質量比を有する本発明による組成物が、製品、詳細には、基板、より詳細には半導体基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を含む製品の洗浄またはすすぎにおいて、特に有益な特性を有し、前記製品の欠陥低減に特に有益な特性を有することが、自社実験で見出された。
【0083】
組成物中に存在する式(I)の化合物および式(II)の化合物(好ましくは式(IIa)の化合物および/または式(IIb)の化合物)の、上で定義されているような好ましい質量比および総量(濃度)を有する、本発明による組成物が、基板、例えばそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を有する半導体基板上で、十分な濡れ性の、および一方では十分に低い表面張力の、他方では、存在する場合、十分に低い組成物中のミセル形成および/または基板上の残留物形成の、好ましいバランスを示すことも、自社実験で見出された。組成物中のミセル形成および/または基板上の残留物形成は、パターン化材料の構造に悪影響を与え、その結果、得られる製品の機能に悪影響を与えるであろう。
【0084】
- 組成物の平衡表面張力が、好ましくは標準DIN53914:1997-07に従って、プレート法によりKruess張力計K100を用いて25℃で測定して、35mN/m未満、好ましくは30mN/m未満、より好ましくは28mN/m未満、さらにより好ましくは25mN/m未満であり、
および/または
- 組成物のpHが、4.0~11.0の範囲、好ましくは7.0~11.0の範囲、より好ましくは8.0~10.0の範囲、さらにより好ましくは8.0~9.6の範囲にある、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)、好ましくは第二の界面活性剤として、式(II)の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含む、好ましくは水性組成物も、好ましい。
【0085】
本発明の水性組成物、詳細には式(I)の化合物、好ましくは上で定義されている好ましい式(I)の化合物、および1種以上(好ましくは1種)の式(IIa)の化合物および/または式(IIb)の化合物を含む水性組成物は、アルカリ環境、例えば9~12の範囲のpH、または9.5~11の範囲のpHの環境において特に安定であることが、自社実験で見出された。上で説明したようなアルカリ環境における本発明の組成物の安定性は、有利である。それは、アルカリ性媒体中の、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を自らで支持している基板から、(当技術分野で通常行われるプロセスからの)粒子をもっともよく除去できることが多いからである。よって、基板、好ましくは半導体基板を含む製品を洗浄するまたはすすぐ一般的な方法は、通常、アルカリ性媒体を用いて行われる。その理由は、例えばアルカリ環境では、ゼータ電位または除去される粒子の電荷が、粒子の除去を容易にする反発効果を支持するからである。
【0086】
8.0~10.0の範囲、好ましくは8.0~9.6の範囲のpHを有する本発明の組成物は、長期間にわたって特に安定であり、従って、最適化された貯蔵安定性の観点で最も適していることも見出された。本発明による組成物のpHは、当技術分野で知られている方法によって、例えば、適した量の弱酸または弱塩基を、好ましくは金属イオンの含有量が少ない、好ましくは金属イオンを含まない状態で添加することによって、調整することができる。本発明による組成物のpHを調整するための好ましい塩基の1つは、水酸化アンモニウムである。
【0087】
(A)第一の界面活性剤として、式(I)のイオン性化合物(上で定義されている、または上で定義されている好ましい式(I)の化合物)、
(B)第二の界面活性剤として、1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基(上で定義されている、または上で定義されている1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む好ましい非イオン性化合物)を含む少なくとも1種の非イオン性化合物、好ましくは、(上で定義されている)少なくとも1種の式(II)の化合物、
(C)(上で定義されている)水、
および
(D)1種以上の可溶化剤、好ましくは、総数3~6個の炭素原子を含み、総数1~4個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキレングリコール(アルカンジオール)の1種以上の部分エーテル(すなわち、このような部分エーテルの少なくとも1個のヒドロキシル基は遊離ヒドロキシル基である)、より好ましくはエチレングリコールまたはプロピレングリコール(各場合とも、アルキル基は総数1~4個の炭素原子を含む)の1種以上の部分エーテル、さらにより好ましくは、1-メトキシ-2-プロパノールである可溶化剤
を含む、またはこれらからなる本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)も好ましい。
【0088】
本発明の好ましい組成物において、好ましくは本明細書中、上で記載したように、組成物中に存在する
- 式(I)の化合物(成分(A))の総量、および
- 1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物、好ましくは式(II)の少なくとも1種の化合物(成分(B))の総量
の合計は、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~0.5質量%の範囲、好ましくは0.02質量%~0.25質量%の範囲、より好ましくは0.05質量%~0.1質量%の範囲であり、
および
組成物中に存在する1種以上の可溶化剤(成分(D))の総量は、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~0.5質量%の範囲、好ましくは0.02質量%~0.25質量%の範囲、より好ましくは0.05質量%~0.1質量%の範囲にある。
【0089】
- 構成成分(A)、(B)、(C)および(D)の総量、好ましくは構成成分(A)、(B)および(C)の総量が、組成物の総質量に基づいて、90質量%を超え、好ましくは95質量%を超え、さらにより好ましくは98質量%を超え、
および/または
- 組成物のpHが、7.0~11.0の範囲、好ましくは8.0~10.0の範囲、より好ましくは8.0~9.6の範囲にある、
本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0090】
上で列挙した成分(A)~(D)とは別に、本発明の好ましい組成物は、好ましくは、組成物のpH値を本明細書で定義する値または好ましい値に調整するために必要な量の弱酸または弱塩基のみを含む。
【0091】
標準DIN53914:1997-07に従ってプレート方法(上記参照)により平衡表面張力を測定するには、通常、面積が数平方センチメートルほどの薄いプレートを使用する。プレートは通常、完全な濡れを確保するために、高い表面エネルギーを有するプラチナから作られる。濡れによるプレートにおける力Fは、張力計(または微量天秤)により測定され、それを使用して、Wilhelmyの式:
【数2】
(式中、lは、Wilhelmyプレートの濡れ縁であり、θは、液相とプレートの間の平衡接触角である)を使用して平衡表面張力γを計算する。この平衡接触角は、毛管力によって引き起こされる、(例えばフォトレジストなどの)小さい機構の間における最大応力σを計算するために使用される接触角とは異なる(上記参照)。
【0092】
接触角は一般に、液体と蒸気の界面が固体表面と接触するところで、液体を通して従来測定される角度である。接触角は、当技術分野で一般に知られているヤング式によって、液体による固体表面の濡れ性を定量化する。所定の温度と圧力における固体、液体、および蒸気の所定の系は、固有の平衡接触角を有する。平衡接触角は、液体、固体、および蒸気の分子相互作用の相対強度を反映する。
【0093】
上で定義されている好ましい平衡表面張力を有する本発明による組成物が、製品に対する良好で迅速な洗浄またはすすぎ作用を示す有益な拡張能を示すことも、自社実験で見出された。「良好な拡張能」とは、好ましくは、製品、詳細には、基板、より詳細には半導体基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料(例えば半導体ウエハに支持されているフォトレジスト)を含む製品上の低い平衡接触角、すなわち、好ましくは標準DIN53914:1997-07に定義されているように測定して、0°~25°の範囲、好ましくは0°~20°の範囲の平衡接触角によって、特徴づけられる。当業者は、当技術分野で既知の方法に従って、平衡表面張力を調整することができる。
【0094】
組成物の平衡表面張力が低くなるほど、毛管力が低くなって、パターン崩壊が予防される、または低減する(例えばNamatsuら、Appl.Phys.Let.66(20)、1995年による。上記参照)。特定の平衡表面張力を有する本発明による組成物、および/またはその使用方法のさらなる利点は、nm規模でライン-スペース構造(パターン)を有するパターン化材料層の透過および洗浄が、非常に効率的になることである。
【0095】
(A)第一の界面活性剤として、式(I)
(式中、
Xは、プロトンおよび基NR
4
+(式中、各Rは、Hおよび分岐または非分岐のC
1~6-アルキル基からなる群から独立して選択され、好ましくは分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基であり、より好ましくは基NR
4
+はNH
4
+である)からなる群から選択され、
Y1が、スルホネート、-SO
3
-であり、
Y2が、水素であり、
および
基Z1、Z2およびZ3は、同じ構造を有し、各場合とも式F
3C-CF
2-CH
2-O-CH
2-CH(C
2H
5)-の基である)のイオン性化合物、
および
(B)第二の界面活性剤として、少なくとも1種の式(IIa)
【化7】
(式中、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基、好ましくはメチルであり、
および
lは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数である)の非イオン性化合物、
および/または(すなわち、少なくとも1種の式(IIa)の化合物と少なくとも1種の式(IIb)の化合物との混合物を含む)、
少なくとも1種の式(IIb)
【化8】
(式中、
R
6は、分岐または非分岐のC
2~4-アルキレン基、好ましくは非分岐のC
2~3-アルキレン基であり、
R
18は、水素、または分岐または非分岐のC
1~4-アルキル基、好ましくはメチルであり、
および
lは、5~30の範囲、好ましくは6~25の範囲の整数である)の化合物、
および
(C)水、
を含む組成物であって、組成物のpHが、7.0~11.0の範囲、好ましくは8.0~10.0の範囲、より好ましくは8.0~9.6の範囲にあり、
および好ましくは
組成物中に存在する
- 式(I)の化合物の総量、および
- 式(II)の化合物の総量
の合計が、組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~0.5質量%の範囲、好ましくは0.02質量%~0.25質量%の範囲、より好ましくは0.05質量%~0.1質量%の範囲にある、本明細書で定義する本発明による組成物(または好ましいものとして上または下で記載するような本発明による組成物)が好ましい。
【0096】
本発明はまた、好ましくは
- パターン崩壊を予防または低減し、
- ラインエッジラフネスを低減し、
- ウォーターマーク欠陥を予防または除去し、
- フォトレジスト膨張を予防または低減し、
- Blob欠陥を予防または低減し、
および/または
- 粒子を除去する
ために、製品、好ましくは、基板およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料を含む製品の洗浄またはすすぎに、本明細書で定義する本発明による組成物を使用する方法(または本明細書で好ましいと記載する本発明による組成物を使用する方法)に関する。
【0097】
一般に、製品を洗浄するまたはすすぐための本発明の組成物に関連して本明細書で論じる本発明のすべての態様は、本明細書中に上および下で定義されている本発明による前記洗浄組成物の使用方法に、必要な変更を加えて適用され、逆もまた同様である。
【0098】
本発明の使用方法に従って洗浄するまたはすすぐ製品は、好ましくは、半導体産業で使用される製品である。
【0099】
先に言及した不具合または効果が存在すると、得られる製品、詳細には、集積回路デバイス、光学デバイス、マイクロマシンまたは機械的精密デバイスのようなデバイスに関しての性能に悪影響が生じると考えられ、それに応じて、(こうした不具合または効果を避けるのに役立つ)本発明は、産業上の価値が高くなる。
【0100】
従って、
- 前記洗浄またはすすぎが、集積回路デバイス、光学デバイス、マイクロマシン、または機械的精密デバイスを作るプロセスの一部であり、
および/または
- 前記基板が半導体基板、好ましくは半導体ウエハである、
本明細書で定義する本発明による組成物の使用方法(または本明細書で好ましいと記載する本発明による使用方法)が好ましい。
【0101】
- ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層が、現像されたパターン化フォトレジスト層、パターン化バリア材料層、パターン化多積層材料層およびパターン化誘電体材料層からなる群から選択され、
および/または
- フォトレジスト構造および/またはパターン化多積層ライン/スペース構造の場合、パターン化材料層のアスペクト比が2より大きく、好ましくは3より大きく、
および/または
- パターン化材料が、32nm以下、好ましくは22nm以下のライン幅のライン-スペース構造を有する、
本明細書で定義する本発明による組成物の使用方法(または本明細書で好ましいと記載する本発明による使用方法)も好ましい。
【0102】
現像されたパターン化フォトレジスト層、パターン化バリア材料層、パターン化多積層材料層およびパターン化誘電体材料層は、パターン崩壊、ラインエッジラフネスの低減およびフォトレジスト膨張を特に起こしやすい。こうした悪影響を避けることにより、機能不良デバイスが生成される数はかなり減少するので、デバイス性能ならびに生産高が改善される。
【0103】
パターン化材料層が、非フォトレジスト構造では10を超えるアスペクト比を有し、フォトレジスト構造では2を超える、好ましくは3を超えるアスペクト比を有する、上で定義されている(または上で好ましいと定義されている)組成物の、本発明による使用方法が好ましい。非フォトレジスト構造では10を超えるアスペクト比を有し、フォトレジスト構造では2を超える、好ましくは3を超えるアスペクト比を有する材料層は、洗浄またはすすぎ中にパターン崩壊を特に起こしやすいので、上で定義されている組成物で、好ましくは、臨界ミセル濃度で測定して35mN/m未満、好ましくは30mN/m未満、より好ましくは28mN/m未満、さらにより好ましくは25mN/m未満の平衡表面張力を有する、上で定義されている組成物で、洗浄し、すすぐことが好ましい。そのような組成物の利点は、パターン崩壊が特に効率的に低減する、または避けられることである。
【0104】
特に、パターン化材料層が32nm以下、好ましくは22nm以下のライン幅のライン-スペース構造を有する、上で定義されている(または上で好ましいと定義されている)組成物の、本発明による使用方法が好ましい。32nm以下、好ましくは22nm以下のライン幅のライン-スペース構造を有するパターン化材料層は、洗浄またはすすぎ中にパターン崩壊を特に起こしやすいので、上で定義されている組成物で、より好ましくは、臨界ミセル濃度で測定して35mN/m未満、好ましくは30mN/m未満、より好ましくは28mN/m未満、さらにより好ましくは25mN/m未満の平衡表面張力を有する、上で定義されている組成物で、洗浄し、すすぐことが好ましい。
【0105】
本発明は、基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む洗浄した、またはすすいだ製品を作る方法であって、
以下の工程:
- 基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品を用意する、または提供する工程、
- 上で定義されている本発明による組成物(または上記で好ましいと定義されている本発明による組成物)を用意する、または提供する工程、
および
- 洗浄した、またはすすいだ製品を得るために、前記組成物を用いて前記製品を洗浄する、またはすすぐ工程
を含む方法にも関する。
【0106】
一般に、製品を洗浄するまたはすすぐための本発明の組成物および/または前記組成物の本発明による使用方法に関連して本明細書で論じる本発明のすべての態様は、本発明による洗浄したまたはすすいだ製品の製造方法に、必要な変更を加えて適用され、逆もまた同様である。
【0107】
以下の工程、
- 液浸フォトレジスト層、EUVフォトレジスト層または電子ビームフォトレジスト層を有する基板を提供する工程、
- 浸漬液の有無に関わらず、マスクを通してフォトレジスト層を化学線に曝露する工程、
- 基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品が得られるように、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターンを得るため、曝露したフォトレジスト層を現像液で現像する工程、
- 洗浄した、またはすすいだ製品を得るために、前記組成物を用いて前記製品を洗浄する、またはすすぐ工程
および任意に
- 前記洗浄した、またはすすいだ製品を、好ましくは脱水機にかけることにより、または乾燥プロセスにより乾燥させる工程
をさらに含む、本明細書で定義した本発明による方法が、好ましい。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明および例示することを意図している。
【0109】
実施例1:試験組成物の調製
以下の本発明による組成物I1、I1aおよびI2、および本発明によらない比較組成物としての組成物C1およびC2(本明細書ではまとめて「試験組成物」と称する)を、表1aに示す成分の従来の混合によって調製した。混合後、必要に応じて、希釈したアンモニア水溶液を添加し、組成物のpHを調整した。表1aおよび1bに示す組成物において、そこで使用した式(I)の化合物は、XがNH4
+であり、Y1がスルホネート、-SO3
-であり、Y2が水素であり、基Z1、Z2およびZ3は同じ構造を有し、各場合とも式F3C-CF2-CH2-O-CH2-CH(C2H5)-の基である式(I)の化合物であった。
【0110】
表1aおよび1bに示す組成物において、式(II)の化合物はFTergent(登録商標)212Mであった(上記参照)。
【0111】
表1bに示す組成物において、式(III)の化合物は、C13オキソアルコールエトキシレート洗剤である、BASF SEから市販されているLutensol(登録商標)TO8であった。
【0112】
表1bに示す組成物において、式(IV)の化合物は、ポリエチレングリコールモノ(トリスチリルフェニル)エーテル(CAS(登録商標)RN99734-09-5)であった。
【0113】
表1bに示す組成物において、式(V)の化合物は、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、平均Mn≒912(CAS(登録商標)RN28961-43-5)であった。
【0114】
表1aおよび1bに示す組成物において、式(VI)の化合物はKF351Aであった(上記参照)。
【0115】
【0116】
以下の本発明による組成物I1b、I2a、I3、I4およびI5、および本発明によらない比較組成物としての組成物C3(本明細書ではまとめて「試験組成物」と称する)は、表1bに示す成分を従来の混合によって調製した。混合後、必要に応じて、希釈したアンモニア水溶液を添加し、組成物のpHを調整した。
【0117】
【0118】
実施例2:臨界ミセル濃度(CMC)の測定
CMCは、プレート方法によってKruess張力計K100を用いて、異なる濃度を有する、一連の界面活性剤水溶液の平衡表面張力を測定することによって、測定した。得られたグラフは、通常、2つの独特な領域を有する。CMCを下回る平衡表面張力は、広い範囲で、界面活性剤濃度の対数に線形従属である。CMCを上回る平衡表面張力は、界面活性剤の濃度とは、ほぼ無関係である。両方の領域のデータポイントは、単回帰によって統計学的に当てはめることができる。CMCは、これらの領域における、データに当てはめた2つの線形回帰直線の間における交点である。
【0119】
実施例3:本発明による組成物の平衡表面張力
界面活性剤水溶液の平衡表面張力を、DIN53914:1997-07に従って、プレート方法によりKruess張力計K100を用いて25℃で測定した。
【0120】
プレート方法は、通常、面積数平方センチメートルほどの薄いプレートを使用する。プレートは、通常、完全な濡れを確保するために、高い表面エネルギーを有するプラチナから作られる。濡れによるプレートにおける力Fを、張力計または微量天秤により測定し、それを使用して、Wilhelmyの式:
【数3】
(式中、lは、Wilhelmyプレートの濡れ縁であり、θは、液相とプレートの間の接触角である)を使用して平衡表面張力を計算した。結果を上記の表1aおよび表1bに示す。
【0121】
結果から、本発明の組成物は、30mN/m未満の平衡表面張力を有し、且つ本発明の好ましい組成物は28mN/m未満の平衡表面張力を有することが分かる。本発明の好ましい組成物I1は、25mN/m未満の平衡表面張力を有していた。
【0122】
実施例4:本発明の組成物の貯蔵安定性
上記の実施例1で説明したように試験組成物を調製し、25℃および40%の相対湿度で9週間保存した。この貯蔵期間の前(すなわち、組成物の調製直後)および後に、各場合とも上の実施例2に記載の表面張力測定によって、試験組成物のCMC曲線について分析した。平衡表面張力は、各場合とも、(脱イオン水を用いた)100倍希釈までのさまざまな濃度を有する一連の(すなわち、10を超える)界面活性剤水溶液について測定した。この試験の結果を下の表2に示す。
【0123】
【0124】
この実施例4の結果から、本発明による組成物I1は、貯蔵期間にわたって平衡表面張力が変化(増加)しなかったので、貯蔵条件下で最良の貯蔵安定性を示したことが分かる。また、この実験の結果から、本発明の組成物の最も適したpHが(最適化された貯蔵安定性の目的のために)pH10未満、好ましくはpH9.6以下であることも分かる。pHが9.6以下の本発明による組成物については、そこに含有される界面活性剤の分解性が極めて低いか、または全くないことが見出された。
【0125】
実施例5:限界寸法の測定による、本発明の組成物および比較組成物のすすぎ性能
Si半導体試験ウエハを標準のポジティブフォトレジストでコーティングした後、当技術分野で一般に知られているように、標準的一連のプロセス工程(フォトレジストのベーク、化学線への曝露、水性現像液(2.38質量%のTMAHを含有する)によるポジティブレジストの現像)を行い、ウエハの表面上に40nm/70nmのライン幅/ビアホール(via-hole)直径を有するラインスペース/ビアホール構造を作成した。
【0126】
そしてこのようにして作成した試験ウエハ上のライン-スペース構造を、現像工程後に、本発明による組成物I1、I1a、I1b、I2、I2a、I3、I4およびI5、および比較組成物C1、C2およびC3(すべての組成物は上の実施例1で定義した通り、すべての実験は試験組成物ごとに別の半導体ウエハで行った)で、ウェハ上の液体たまりを乾燥させずにすすぎ、その後、試験ウエハの表面上に、10ml/秒の流速で5秒間、各試験組成物を(すすぎ溶液として)噴霧した。さらなる比較のため、前記ライン-スペース構造も同じ条件で(現像工程後に)、単一の界面活性剤としてアニオン性の非分岐(直鎖)フルオロアルキル化合物を含む従来技術の標準的な欠陥低減すすぎ水溶液(9.4~9.7の範囲のpH、25~30mN/mの範囲の表面張力を有していた)(以下、「組成物POR」と称する)ですすいだ。
【0127】
本明細書中、上で定義されている組成物によるすすぎに続き、限界寸法(CD)「ライン幅/ビア直径」を、限界寸法走査型電子顕微鏡(「CD SEM」;KLA Tencor社、米国によるKLA8100XP)によって、密な領域(すなわち、XとY両方の次元におけるパターン配置の繰り返し)、半密な領域(すなわち、X次元またはY次元のみにおけるパターン配置の繰り返し)とアイソ(iso)領域(すなわち、個々のパターンがどれも互いに分離している)で、各場合ともすすぎ後のそれぞれの測定値30個を平均することによって測定し、本実験に関連する限界寸法として定義した。限界寸法は一般に、ライン/スペース幅またはビア/ホールの直径などの半導体ウエハ上に存在するパターンのサイズ、より具体的には、半導体ウエハ上に示される最小のサイズを表す。
【0128】
本発明による組成物I1、I1a、I1b、I2、I2a、I3、I4およびI5で、比較組成物C1、C2およびC3で、および組成物PORですすいだ後、上で説明した方法で測定した限界寸法を収集し、走査型電子顕微鏡のCDソフトウェアによって比較した。次いで、本発明による組成物I1、I1a、I1b、I2、I3、I4およびI5と、一方では比較組成物C1、C2およびC3との、他方では組成物PORとの間の限界寸法差を、ソフトウェアによって算出し、関連する領域内(以下の表3aおよび3bに示す密、半密またはアイソ)の「組成物PORに対する最大限界寸法近接バイアス」(すなわち、試験組成物ですすいだウエハと標準のすすぎ溶液組成物PORですすいだウエハとの間の最大CD偏差)の形式で表した。標準組成物PORで測定したそれぞれの限界寸法値に対して2nm以下の「最大限界寸法近接バイアス」値は、試験組成物を用いて達成された好ましいすすぎ結果を示す。「最大限界寸法近接バイアス」の値は可能な限り低くする必要があり、その2nmの値は、好ましい上限の閾値である。この値はさらなるプロセスにとって満足のいくものであり、例えば不十分な洗浄またはすすぎの結果によって最終的なデバイスまたは製品の性能が制限されることはない。この試験の結果を以下の表3aおよび3bに示す。
【0129】
【0130】
この実施例5の結果から、本発明による組成物(第一の界面活性剤として式(I)のイオン性化合物、および第二の界面活性剤として1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物を含む、すなわち組成物I1、I1a、I1b、I2、I2a、I3、I4、またはI5)は、式(I)のイオン性化合物のみを含む比較組成物(すなわち、比較組成物C1)、または1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む非イオン性化合物のみを含む比較組成物(すなわち、比較組成物C2)よりも良好なすすぎ結果を示し(おそらく欠陥低減に対する潜在性がより高いため)、よって、本明細書で定義する第一の界面活性剤および第二の界面活性剤の両方を含む本発明の組成物の相乗効果を示している。この試験モデルにおける最も好ましくない結果は、第一の界面活性剤としてコリンヒドロキシドを含み、第二の界面活性剤として式IIIの化合物を含む比較試験組成物C3で得られた。比較試験組成物C3は、本試験モデルの成功基準(標準組成物PORで測定されたそれぞれの限界寸法値に対して2nm以下の「最大限界寸法近接バイアス」値)を明らかに満たしていないので、基板、およびそれに支持されている、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層を含む製品の洗浄またはすすぎに適していないと見なされる。
【0131】
最良の結果は、本発明による組成物I1で達成され、試験設定において最良のすすぎ結果を示した。
【0132】
実施例6:組成物の液体粒子(ミセル)含有量
組成物I1(本発明による)およびC1(比較組成物)を、上記の実施例1で説明したように調製した。両方の組成物を、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルター(孔径0.02μm、Entegris社)で24時間ろ過した。ろ過後、両方の組成物の液体粒子含有量を、Rion KL27パーティクルカウンター(Rion Co.、Ltd.日本)を使用して、光散乱によって測定した。方法については、K.Kondoらの「光散乱法による液体材料中粒子の測定」、「界面ナノ電子化学、2013年3月」の講演録を参照されたい。
【0133】
一般に、光散乱は、パーティクルカウンター機器のノズルから導入された試料に光が照射され、粒子が光を通過するときに発生する。散乱光は光検出器によって検出され、分析可能な電気信号に変換される。電気信号のサイズは粒子サイズを表し、散乱光検出の頻度は粒子カウント(粒子の数)を表す。
【0134】
データは、各場合とも試験組成物ごとの単回測定値3つを平均することによって、サンプリングした。この実験の結果を以下の表4に示す。
【0135】
【0136】
表4の「測定範囲を超えた」という用語は、粒子計数器によって検出された粒子の数が多すぎて、実験設定で計測できないことを意味する。
【0137】
上記の表4に示すデータから、本発明による組成物は、本発明によらない比較組成物よりも、含有する粒子が著しく少ないことが分かる。これらの粒子は、圧搾時にフィルターの細孔を通過することができる部分的に可溶な界面活性剤凝集物(「ミセル」)を主に含む。従ってこの実験では、固体(硬い)粒子はろ過されたが、界面活性剤凝集物はろ過されなかった(または、ろ過の程度ははるかに少なかった)。しかしながら、ろ過されなかった粒子(界面活性剤凝集物)は、それぞれの組成物の洗浄またはすすぎ効果に、悪影響を及ぼす可能性がある。
【0138】
実施例7:基板を含む製品に対する本発明の組成物の平衡接触角
本発明による組成物、組成物「I1b」(実施例1の組成物I1と類似しているが、組成物の総質量に対し、式(I)の化合物および式(II)の化合物の総濃度が0.05質量%低い)および比較組成物C1(本発明によらない)を、上記の実施例1で説明したように調製した。
【0139】
一般的な未露光のポジティブフォトレジスト(「基板」)でコーティングされた平型半導体ウエハを、使用中に光学スクリーンを取り付けたKruess滴型分析器(DSA100型、Kruess GmbH、ドイツ)の水平支持体に置いた。試験組成物を加えるために、マイクロリットルのシリンジを基板の中心に配置し、滴型分析器のマイクロマニピュレーターに接続した。マイクロマニピュレーターを使用して、シリンジの針先の位置をウエハの上方で慎重に調整した。シリンジの先端は、基板の表面から数マイクロメートル離れて配置し、試験組成物の液滴が落下したときの衝撃による影響を排除した。重力の影響が無視できるように、液滴の体積は各場合とも2μlを選択した。電荷結合デバイス(CCD)カメラを使用して接触角計のシリンジを正確に動かすことにより、液滴を記録して所定の体積で基板に適用し、試験組成物を基板の表面に適用した直後(「0秒」)に平衡接触角を測定し、その10秒後に再び測定した。この実験の結果を以下の表5に示す。
【0140】
【0141】
上記の表5の結果から、本発明による組成物の平衡接触角は、本発明によらない比較組成物の接触角よりもはるかに小さく、本発明による組成物が本発明によらない比較組成物よりも、基板の表面(すなわち、半導体ウエハのフォトレジストでコーティングされた表面)の濡れ性が良好である(すなわち、基材の表面をより良好に濡らす)ことが分かる。基板の良好な濡れ性を示す組成物は、通常、前記基板の劣った濡れ性を示す組成物よりも、より良好な前記基板の洗浄またはすすぎ結果および/またはより良好な欠陥低減結果を達成する。
【0142】
実施例8:パターン崩壊の観点における本発明の組成物および比較組成物のすすぎ性能
Si半導体試験ウエハを標準のポジティブフォトレジストでコーティングした後、当技術分野で一般に知られているように、プロセス工程の標準的な連続(フォトレジストのベーク、化学線への曝露、水性現像液(2.38質量%のTMAHを含有する)によるポジティブレジストの現像)を行い、ウエハの表面上に40nm/70nmのライン幅/ビアホール直径を有するラインスペース/ビアホール構造を作成した。
【0143】
そしてこのようにして作成した試験ウエハ上のライン-スペース構造を、現像工程後に、本発明による組成物I1b、I2a、I3、I4およびI5、および比較組成物C3(すべての組成物は上の実施例1で定義した通り、すべての実験は試験組成物ごとに別の半導体ウエハで行った)で、ウェハ上の液体たまりを乾燥させずにすすぎ、その後、試験ウエハの表面上に、10ml/秒の流速で5秒間、各試験組成物を(すすぎ溶液として)噴霧した。
【0144】
本明細書中、上で定義されている組成物ですすいだ後、試験ウエハをプラチナの薄い保護層でコーティングした(当技術分野で知られているように、表面導電率を高めるために、プラチナ層の厚さは約0.5nm以下)。次いで、それぞれ10μm2の5つの試験領域を試験ウエハごとに無作為に選択し、Hitatchi SU8220走査型電子顕微鏡を用いて、走査型電子顕微鏡(SEM)のトップダウン像(またはわずかなチルト像)により、先に作成したライン-スペース/ビア-ホール構造(上記参照)のパターン崩壊の数を、試験領域ごとに検査した。試験ウエハ上の5つの試験領域からの崩壊したパターンの数を計測し、得られた数の平均を四捨五入して、結果として(試験ウエハごとに)記録した。
【0145】
この実験の結果を以下の表6に示す。
【0146】
【0147】
上記の表6に示すこの実施例8の結果から、第一の界面活性剤として式(I)のイオン性化合物、および第二の界面活性剤として1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物を含む本発明による組成物(すなわち組成物I1b、I2a、I3、I4、またはI5)はすべて、本発明によらないイオン性化合物(すなわち、コリンヒドロキシド)、および第二の界面活性剤として1個以上のポリアルキルオキシ基および/またはポリアルキレンオキシ基を含む少なくとも1種の非イオン性化合物を含む比較組成物(すなわち、比較組成物C3)よりも、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層において、著しく良好なすすぎ結果を示すことが分かる。すなわち、本発明による前記組成物を用いたすすぎは、前記比較組成物を用いたすすぎよりも、すすいだ構造のパターン崩壊の数が著しく少ない結果となる。
【0148】
本発明による組成物I1b、I2a、I3、I4は、この試験方法において、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層で特に良好なすすぎ結果を示し、すすいだ構造のパターン崩壊の数が特に少なかった。従って、組成物I1b、I2a、I3、I4は、本発明による好ましい組成物を表す。
【0149】
本発明による組成物I1bは、この試験方法において、ライン幅が50nm以下のライン-スペース構造を有するパターン化材料層で最良のすすぎ結果を示し、すすいだ構造のパターン崩壊は全くなかった。従って、組成物I1bは、本発明による特に好ましい組成物を表す。