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特許7350003系間情報交換により動力伝達機構の状態の変化を自動制御するための方法
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  • 特許-系間情報交換により動力伝達機構の状態の変化を自動制御するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】系間情報交換により動力伝達機構の状態の変化を自動制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20230915BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20230915BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 59/74 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20230915BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B60W10/00 102
B60W10/02
B60W10/06
F16H61/02
F16H59/18
F16H59/54
F16H59/74
F16H63/46
F16H63/50
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020552027
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019054117
(87)【国際公開番号】W WO2019185242
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】1852709
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ル ボセック, レティシア
(72)【発明者】
【氏名】オルベ, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ブルシェ, アルノー
(72)【発明者】
【氏名】トマ, フランソワ
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511442(JP,A)
【文献】特開2017-094824(JP,A)
【文献】特開2017-128167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
F02D 29/00-29/06
F16H 59/18
F16H 59/54
F16H 59/74
F16H 63/46
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態の変化を自動制御する方法であって、停止に近づいたときにエンジンを遮断することによって通常走行のモードから出る目的でまたは走行のエンジンオン惰走モードに入る目的でクラッチを開放することによって、エンジン制御モジュール(ECM)と変速制御装置(ATCU)との間の指示の系間交換によって、車両の前記エンジンと車輪との間に少なくとも1つの切り離しクラッチを有する自動変速装置に結合された燃焼機関で構成された動力伝達機構(PT)の状態の変化を自動制御する方法であって、
交換される系間指示が、一方ではブレーキを踏んでアクセルペダルが解除されたときの高速度通常走行中の、他方では前記アクセルペダルおよびブレーキペダルが解除された惰力走行中の前記エンジンの遮断を含み、
クラッチ開放停止のために高速度の前記エンジンを遮断することを許可するようにという要求が、前記アクセルペダルを完全に解除し、前記ブレーキペダルを踏み込んで、前記エンジンが前記エンジンの低アイドル速度にあるとき、前記ECMによって前記ATCUに送られることを特徴とする、態の変化を自動制御する方法。
【請求項2】
前記ECMから前記ATCUへの系間情報の送出が、前記自動変速装置を前記クラッチの前記開放に対するとともにエンジントルクの管理に対して準備させるようにという要求、前記エンジンを前記エンジンの低アイドル速度にしたままのエンジンオン惰力走行の要求、およびエンジンオフ惰力走行の要求を含むことを特徴とする、請求項1に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項3】
前記ATCUから前記ECMへの情報の送出が、高速度クラッチ開放停止段階またはエンジンオフ惰力走行段階に入ることの許可を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項4】
前記ECMによって前記ATCUに送られた情報が、前記自動変速装置をエンジンオフ惰走稼働に対して準備させるようにという要求を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項5】
前記ECMによって前記ATCUに送られた情報が、前記自動変速装置を高速度クラッチ開放停止に対して準備させるようにという要求を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項6】
前記自動変速装置を低速度クラッチ開放停止に対して準備させるようにという要求を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項7】
前記自動変速装置をエンジン停止に対して準備させるようにという要求を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項8】
力走行段階に入るために前記エンジンの前記遮断を許可するようにという要求が、制動がない場合に前記ECMによって前記ATCUに送られることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【請求項9】
エンジンオフ惰力走行段階に入るために前記エンジンを遮断することの許可が、前記エンジン速度が低アイドル速度に落ちた後に前記ATCUによって前記ECMに与えられることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の状態の変化を自動制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「通常」モード、「エンジンオン惰走」(または「セーリングアイドル」)モード、および「始動および停止」機能として知られる、燃焼機関を自動的に遮断し、再始動させる機能をすでに有する自動車両用動力伝達機構(PT:powertrain)の自動制御に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明の主題は、停止に近づいたときにエンジンを遮断することによって通常走行のモードから出る目的で、または走行のエンジンオン惰走モードに入る目的でクラッチを開放することによって、エンジン制御モジュールと変速制御装置との間の指示の系間交換によって、車両のエンジンと車輪との間に少なくとも1つの切り離しクラッチを有する自動変速装置に結合された燃焼機関で構成された動力伝達機構の状態の変化を自動制御するための方法である。
【背景技術】
【0003】
「停止および始動」機能により、ブレーキを踏んで、エンジンが、0km/hで停止することが可能になる。エンジンオン惰走または「セーリングアイドル」モードで走行する目的は、エンジンをエンジンのアイドリング速度にして車両を惰走させるように、変速装置をエンジンから切り離すことにある。
【0004】
「通常」モードから「惰走」モードに切り換えるために自動車両を自動的に制御するための方法が、公報FR3030423から知られている。当該車両は、自動的に制御されるクラッチを介して、トルクを被駆動車輪に供給することができるエンジンを有する。車両の被駆動車輪は、「通常」モードでクラッチによってエンジンに結合され、「惰走」モードでエンジンから切り離される。この方法によれば、遷移段階が「通常」モードと「惰走」モードとの間に経時的に挿入される。この期間中、エンジン速度は、エンジンの低アイドル速度に直接設定されるのではなく、クラッチが開放される前に車輪にトルクを伝達することなく、クラッチによって駆動される軸がその駆動軸と同じ速度で回転するように自動的に制御される。
【0005】
この遷移期間により、クラッチを開放したとき、または制動によりクラッチの突然の再閉鎖による「通常」モードへの復帰がもたらされる場合、揺れを回避することが可能になる。さらに、変速機が状態を変化させる過程にある間に惰走モードへの切換の要求が行われると、この遷移ステップのトリガは引き延ばされる。
【0006】
この方法では、エンジン制御モジュールと自動変速装置を制御する装置との間で情報や指示を交換することにより、「通常」モードとエンジンが低アイドル速度に置かれる「セーリングアイドル」型の惰走モードとの間の遷移を管理するための、一方であるエンジンの挙動と、他方であるギアボックス及びそのクラッチの挙動との間の望ましい一貫性が保証される。
【0007】
さらに、「通常」モードでまたは「惰走」モードでエンジンを遮断する可能性が導入されると、エンジンの挙動と変速装置の挙動との一貫性を確立するのはより複雑になり、新たなPT状態の管理が必要となる。体感される速度、揺れ、および振動の観点から適正なレベルの性能およびサービスを確実にするためには、エンジンと変速装置との間の新たな系間要求の交換が必要である。
【発明の概要】
【0008】
「停止および始動」ならびに「セーリングアイドル」モードを動作の他のモードに拡張することによって、燃料消費およびCO排出量を低減することが可能になる、新たな系間情報の交換をPT内に構築することが本発明の目的である。
【0009】
この目的で、本発明では、一方ではブレーキを踏んでアクセルペダルが解除されたときの高速度通常走行中の、および他方では、アクセルおよびブレーキペダルが解除された惰力走行中のエンジンの遮断を含む系間指示が用意される。
【0010】
好ましくは、ECMからATCUへの系間情報の送出は、クラッチの開放に対するとともにエンジントルクの管理に対して自動変速装置を準備させるようにという要求、エンジンをエンジンの低アイドル速度にしたままのエンジンオン惰力走行の要求、およびエンジンオフ惰力走行の要求を含む。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、本発明の1つの非限定実施形態の以下の説明から明確に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】PTの状態をまとめた図である。
図2】「惰走停止高速度」または「高速度クラッチ開放停止」機能を表す図である。
図3】この機能に関連付けられた系間交換を示す図である。
図4】「セーリング停止」または「エンジンオフ惰走」機能を表す図である。
図5】この機能に関連付けられた系間交換を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す状態の変化の自動制御は、車両のエンジンと車輪との間に少なくとも1つの切り離しクラッチを有する自動変速装置に結合された燃焼機関で構成された動力伝達機構(PT)に関する。状態のこれらの変化の自動制御は、エンジン制御モジュール(ECM:engine control module)と変速制御装置(ATCU:transmission control unit)との間の指示の系間交換を介して行われる。これらの交換により、停止に近づいたときにエンジンを遮断することによって、またはエンジンオン惰力走行モードに入る目的でクラッチを開放することによって走行の通常モードから出ることが可能になる。一般に「セーリングアイドル」と呼ばれる、このタイプの走行は、エンジンをオンにし、エンジンの低アイドル速度で回転させて行われる。
【0014】
図1は、情報のPT系間交換を拡張し、「通常」モードおよび「エンジンアイドル惰走」または「セーリングアイドル」モードを管理するために導入された新たな機能も示す。これらの2つのモード(「通常」と「セーリングアイドル」)は、互いに補完し合い、交互に中間状態となりえる状態であって、これによってエンジンの惰走機能の利点とエンジンの潜在的遮断の利点を組み合わせることが可能になる。「高速度クラッチ開放停止」のための、「惰走停止高速度」と呼ばれる、1つの新たな機能が用意される。それは、「通常」モードから、ブレーキを踏んでアクセルペダルが解除されたとき、エンジンがおおよそ20km/hで停止されることを可能にする。これらの状況の下で、エンジン制御モジュールは、燃料を節約するためにエンジンを停止させる。
【0015】
略図は、エンジンを遮断することができる2つの他の状態も示す。すなわち、
- 車両が動けなくされたときのエンジンの自動停止、または例えば5km/h未満で停止されたときエンジンを自動的に遮断し、再始動させる機能(「停止および始動」)に関連付けられた「オート停止」状態、および
- 「セーリング停止」と呼ばれる、今度はエンジンをオフにしたままの、新たな惰力走行モード。
【0016】
中間状態、または惰走モードに入る「エントリセーリング」モードが、「通常」モードから2つの「セーリング停止」または「セーリングアイドル」惰走モードのうちの一方または他方に移行するために用意される。最後に、2つの惰走モードから通常モードに復帰することが可能である。
【0017】
最良条件下での始動を確実にするために、エンジンが自動的に遮断されたとき(これが「オート停止」、「惰走停止高速度」または「セーリング停止」モードであるかどうかにかかわらず)、自動変速装置は、最適歯車比に「事前係合させて」おく必要がある。これは、要求されるエンジン停止のタイプに依存する。これが、エンジン制御モジュール(ECM)と自動変速装置(ATCU)を制御する装置との間に具体的な「系間」交換を設定することによって情報の系間交換を拡張する必要がある理由である。
【0018】
本発明によれば、交換される系間指示は、一方ではブレーキを踏んでアクセルペダルが解除されたときの高速度通常走行中の、および、他方では、アクセルおよびブレーキペダルが解除された惰力走行中のエンジンの遮断を含む。
【0019】
次に、ECMからATCUへの系間情報の送出は、クラッチの開放に対しておよびエンジントルクの管理に対して自動変速装置を準備させるようにという要求、エンジンをエンジンの低アイドル速度にしたままのエンジンオン惰力走行の要求、およびエンジンオフ惰力走行の要求を含む。
【0020】
「通常」モードから「惰走停止高速度」、または「高速度クラッチ開放停止」モードへの出入りを図2に示す。この機能は、アクセルペダルを解除し、ブレーキを踏んでおおよそ20kmhでのエンジンの停止に対応する。それにより、エンジンは、より大きな燃料節約を目的として停止されることが可能になる。当該シナリオは、例えば、運転者がアクセルペダルを解除し、ブレーキをかけ始める障害または事象(赤信号、環状交差点タイプの)の出現である。図は、時間に関して、アクセルペダルの、エンジン速度の、クラッチの、およびPT調整器の位置の進展を示す。本発明によれば、車両をエンジンオフ惰走の下で減速させるために、高速度のエンジンを遮断することを許可するようにという要求は、アクセルペダルを完全に解除し、ブレーキペダルを踏み込んで、エンジンがエンジンの低アイドル速度にあるとき、ECMによってATCUに送られる。
【0021】
その後の最良条件下での再始動を確実にするために、自動変速装置は、要求されるエンジン停止のタイプ「オート停止」、「惰走停止高速度」または「セーリング停止」により、最適歯車比に事前係合させておく必要がある。図3に要約した具体的な「系間」通信が、「通常」モードから「惰走停止高速度」モードの間の移行に対してECMからATCUの間に設定される。ECMは、「IC_StartStopStatus」要求をATCUに送って、エンジンを停止させるようにというECMの要望を表す。代わりに、ATCUは、「AT_StartStopMode」メッセージをECMに送って、変速装置が正しく事前処置されたときこの要求に肯定的に応答する。図2を参照すると、アクセルペダルを完全に解除し、ブレーキペダルを踏み込んで、およびエンジンを低アイドルにして、「ICE_StartStopStatus」という要求が、t1の日時で送られる。ATCUの許可「AT_StartStopMode」が、t2の日時においてエンジンに送られ、そのとき、変速装置がエンジンの次の再始動に対して事前処置される。要約すれば、アクセルペダルを完全に解除し、ブレーキペダルを踏み込んで、エンジンがエンジンの低アイドル速度にあるとき、高速度クラッチ開放停止に対するエンジンの高速度遮断を許可するようにという要求が、ECMによってATCUに送られる。
【0022】
図4で示す「セーリング停止」機能は、自動変速装置がエンジンから切り離されると、エンジンが遮断されて消費量を最適化する、「セーリングアイドル」の拡張に対応する。惰力走行段階に入るためにエンジンの遮断を許可するようにという要求が、制動がない場合、ECUによってATCUに送られる。「セーリング停止」機能を実施するために、図5に要約した具体的な系間通信が、ECMからATCUの間に設定される。ECMは、「ECM_SailingRequest」という名称の要求を通じて、惰走モードに移行したいというECMの要望をATCUに送信する。ECMは、「ICE_StartStopStatus」という名称の別の要求を通じて、エンジンの停止を許可するようにという要求を送る。次いで、ATCUは、メッセージ「AT_StartStopMode」を用いてエンジンの停止およびメッセージ「AT_SailingRequest」を用いて惰走モードへの移行を許可する。
【0023】
この例が目指すシナリオは以下の通りである。t0の日時において、運転者が制動なしでアクセルペダルを解除する。t1の日時において、ECMが惰走モードに入りたいというECMの要望を表す。t2の日時において、変速装置のクラッチが完全に開放される。t3の日時において、アクセルペダルが完全に解除され、エンジンがエンジンの低アイドル速度にある。エンジンの遮断を許可するようにという要求が、t4の日時で行われる。要求はt5の日時においてATCUによって許諾される。エンジンを遮断して、エンジンオフ惰力走行段階に入ることの許可が、最終速度がエンジンの低アイドル速度に低下した後にATCUによってECMに与えられる。t6の日時において、エンジンが遮断される。PTは「セーリング停止」モードにある。
【0024】
PTを惰走モードに設定したいというエンジンの要望(エンジン惰走要求)を表す「ECM_SailingRequest」系間通信は、すでに以下の状態および要求を含んでいる可能性がある。
- デフォルト通常モード:「通常運転」、
- 自動変速装置をクラッチの開放に対するとともにエンジントルクの管理に対して準備させるようにという要求:「エントリセーリング」、
- クラッチ状態開放および低アイドル速度におけるエンジン回転:「セーリングアイドル」。
【0025】
惰走中にエンジンを遮断する可能性を導入することによって、本発明は、この系間通信に、車両がクラッチを開放し、エンジンをオフにして走行している「セーリング停止」状態を加える。本発明によれば、ECMによってATCUに送られる情報は、エンジンオフ惰走稼働に対して変速装置自体を用意させるように変速装置を準備させる要求を含む。
【0026】
本発明は、以下の状態および要求をすでに含む、「AT_SailingRequest」系間通信には何も変化をもたらさない。すなわち、
- 「セーリング」許可、
- 「エントリセーリング」段階無効、
- 「エントリセーリング」から「セーリング」への移行一時的無効
- 「セーリング」から抜け出るという要求、
- 「セーリング」の終了阻止。
【0027】
対照的に、「AT_StartStopMode」系間通信は、2つの追加の状態の付加を通じて進展し、それは、おおよそ20km/hにおける通常モードでの制動の下でエンジンを遮断することの許可「惰走入力許可」、および制動なしの惰走の下でエンジンを遮断することの許可「セーリング停止許可」に関する。
【0028】
新たな機能なしの、既存の3つの状態は、
- 自動変速装置を介して伝達されるトルク:「通常動作」、
- 自動変速装置を0km/hにおけるエンジンの停止に対して事前処置:「オート停止許可」、および
- エンジン停止という理解の下で自動変速装置の復帰(「稼働ダウン」)
である可能性がある。
【0029】
次に、これらの状態に、
- 自動変速装置を「高速度クラッチ開放停止」に対して事前処置:「惰走入力許可」、および
- 自動変速装置を惰走の下でエンジンの停止に対して事前処置(30から130kmhの間の停止):「セーリング停止許可」
の2つの新たな状態が追加される。
【0030】
ATCUに要求された停止のタイプを伝送するための「ICE_StartStopStatus」系間通信は、以下の状態をすでに含んでいる可能性がある(エンジン遮断状態の「オフ」とは別に)。
1.エンジンの自立性が確立される前の初期設定段階において:
- エンジンが自立しているデフォルトモード「エンジン稼働」、
- スロットルを閉鎖することによってエンジンの停止に対する準備をさせるモード「予測停止」、
- エンジン停止の準備「停止開始」
- スロットルの閉鎖および噴射の遮断「最終停止」。
2.エンジンの停止の段階において:
- 「反射始動」タイプのエンジン始動(エンジン速度<始動部材速度閾値),
- 噴射によるエンジンの再開「噴射再開」、
- エンジンが失速する「エンジン失速」,
- 始動の準備によりエンジンが失速する「予測始動」、
- 噴射が「始動」条件下で許可されて、エンジンが始動装置部材によって駆動される。
【0031】
本発明によれば、「ICE_StartStopStatus」は:
- 自動変速装置自体をエンジンオフ惰走に対して事前処置するように自動変速装置(AT:automatic transmission)を準備させるようにという要求の送出:「セーリング停止警告」、
- ATに送られた、AT自体を高速度クラッチ開放停止に対して事前処置するようにという準備要求の送出:「惰走警告」、
- 停止されたときAT自体をエンジンの遮断に対して、または低速度エンジン遮断停止に対して事前処置するようにという、ATへの準備要求の送出:デュアルクラッチ変速装置の場合「停止警告」、
- AT自体をエンジン停止(「オート停止」または「惰走停止高速度」)に対して事前処置するようにという、ATへの準備要求の送出:可変速度駆動タイプの変速装置の場合「停止警告」
をさらに含むことができる。
【0032】
要約すれば、ECMによってATCUに送られた要求は、ここで、
- 変速装置自体を高速度クラッチ開放停止に対して事前処置するように変速装置自体を準備させる変速装置への要求、
- 変速装置自体を低速度クラッチ開放停止に対して事前処置させるように変速装置自体を準備させる変速装置への要求、
- 変速装置自体をエンジンの停止に対して事前処置させるように変速装置自体を準備させる変速装置への要求
を含む。
【0033】
本発明は、PTの技術的定義を変更せずに適用することができる。本発明は、デュアルクラッチ変速装置(DCT)および連続可変変速装置(CVT)を含む、様々なタイプの変速装置に適用され、その一方で、同時に、「eクラッチ」タイプの知的制御クラッチを包含するように拡張することもできる。新たな系間通信の創造により、自動変速装置は、自動変速装置自体を最適に事前処置することが可能になる。惰走モードから抜け出たいという要望をそれに知らせることによって、それは、NVM(「騒音・振動・乗り心地」)、揺れの最小化、クラッチが再閉鎖される速度、および車両の動き出しの観点から良好なサービスを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5