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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】液状物質の分子気化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20230915BHJP
   A61M 11/04 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61M11/00 300D
A61M11/04 300A
A61M11/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020560824
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 IB2019055027
(87)【国際公開番号】W WO2019243987
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】102018000006391
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520417023
【氏名又は名称】ヌトリンテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブランディマルテ,ブルーノ
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06196219(US,B1)
【文献】特開平07-231938(JP,A)
【文献】特開昭62-106773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M11/00
A61M13/00
A61M15/00
A24F47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻及び/又は経口装置を通して呼吸療法のための飽和乾き蒸気の形態の液状物質を送達するシステムであって、
支持体と、
前記物質を収容するリザーバと、
記リザーバに取外し可能に接続可能な引出し手段と、
前記物質の吐出手段であって、前記引出し手段と流体連通しており、所定の方向及び速度のパラメータに従って前記物質の前記送達を可能にするような面積及び形状を提示する前記物質の通過部分を有する吐出手段と、
前記リザーバ内に収容された前記物質に振動を印加するように構成された、振動タイプの第1機械的気化手段と、
熱エネルギーを放出するように構成された、第2加熱気化手段と、所定の送達プログラムに従って、前記第1機械的気化手段及び前記第2加熱気化手段の作動を制御するように構成された制御ユニットと、
を備え、
前記所定の送達プログラムが、少なくとも、前記第1機械的気化手段によって印加される前記振動の周波数及び持続時間値、及び前記第2加熱気化手段によって操作される前記熱の温度値及び持続時間を定義し、
前記所定の送達プログラムが、療法及び送達すべき物質のタイプに関連付けられ、
前記第1機械的気化手段及び第2加熱気化手段が、自動又は手動選択に応じて併せて起動されるように構成され、
前記リザーバ、前記吐出手段、前記第1機械的気化手段及び前記第2加熱気化手段が、モジュール式システムを形成するような方法で前記支持体に取外し可能に接続されるように構成され、
前記リザーバ内に収容された前記物質を乾き蒸気状態にするような方法で、
前記第1機械的気化手段が、10~13W/cm2に含まれるエネルギー密度を発生させて、4.5~5.5MHzに含まれる超音波周波数で前記物質に振動を印加するように構成され、
前記第2加熱気化手段が、15~25KHzに含まれる周波数で電流が供給され、且つ前記物質の温度を少なくとも250℃にするように構成された誘導手段を備える、システム。
【請求項2】
1秒より短い時間で飽和乾き蒸気の形態で前記液状物質の前記気化を達成するような構成を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記所定の送達プログラムが、前記物質を前記乾き蒸気状態にするような方法で、前記第1機械的気化手段及び前記第2加熱気化手段の同時起動を提供する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1機械的気化手段及び前記第2加熱気化手段が、前記リザーバとともに前記支持体から選択的に取外し可能であるような方法で、前記リザーバと一体的である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットに接続され、且つ使用者が所定の送達プログラムを選択するのを可能にするように構成されたインタフェース手段を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1機械的気化手段が、セラミック材料から作製された振動素子を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2加熱気化手段が、少なくとも前記リザーバの底部に付与されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記吐出手段が選択的に交換可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記吐出手段が、所定投与量に従って吐出を停止するように作動させることができる、前記制御ユニットに接続されたブロック弁を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記リザーバからの前記物質の前記引出し手段が、ポンプ及び逆止弁を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
第1チャンバ及び第2チャンバを担持するリザーバを備え、前記第1チャンバ及び前記第2チャンバが、飽和乾き蒸気が前記第2チャンバから前記第1チャンバに流れることができるような方法で相互的に流体連通しており、前記第2チャンバが、前記第1チャンバの周囲を少なくとも部分的に囲むように構成され、前記第1機械的気化手段が前記第2チャンバに接続され、前記第2加熱気化手段が前記第1チャンバに接続されており、
前記第1機械的気化手段が、前記第2チャンバ内に収容された液状物質に、前記液状物質を前記飽和乾き蒸気状態にするように振動を印加するように構成され、前記第2加熱気化手段が、
そのように得られた前記飽和乾き蒸気を加熱するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
さらなる物質を収容するさらなるリザーバと、
圧縮器と、
前記さらなるリザーバと前記圧縮器との間の流体連通を具現化するように構成された接続手段と、
を備え、
前記さらなるリザーバ及び前記圧縮器が、前記支持体に取外し可能に接続可能であり、
前記圧縮器が、前記制御ユニットに取外し可能に接続可能であり、
前記さらなるリザーバが、前記引出し手段に取外し可能に接続可能であり、
前記システムの構成が、所定の送達プログラムに従って前記制御ユニットによる前記圧縮器の前記作動により、前記さらなるリザーバに収容された前記さらなる物質の霧化及び送達を可能にするようなものである、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、液状物質の送達システムであって、液状物質の気化を飽和乾き蒸気の形態で実施するように構成されたシステムに関する。
【0002】
本発明のシステムは、特に医療用途に対し、肺膜のレベルで高い浸透能力を有する、有効成分を含有する気化溶液を患者に投与する目的に対して、意図されている。
【背景技術】
【0003】
背景
従来、医薬有効成分を含む液状物質の蒸気の形態での投与が、上気道疾患及び下気道疾患を消散させることを目的とする療法において用いられる。こうした物質は、一般に、溶媒に結合した医薬有効成分を含む。
【0004】
当該技術分野において、こうした液状物質を、患者の気道、又は鼻腔、喉頭腔、気管支に送達することができるように空気中に分散されるようなサイズの液滴に分解するために好適な、吸入器、エアロゾル噴霧器及びネブライザ等、多くの装置が既知である。
【0005】
目下、基本的に、有効成分を含有する物質を患者の気道/腔内に蒸気又は噴霧の形態で放出する2つの方法がある。
【0006】
第1方法は、エアロゾル噴霧器又は機械式/電気機械式ネブライザシステムを用いて実施される。これらのシステムは、放出口によって気流の通過を提供し、この放出口は、細い管によって、投与すべき溶液を収容するリザーバに接続されている。空気の流れにより、物質の液滴は、放出口から出るまで管に押し通される。こうしたシステムでは、送達される液滴のサイズ及び数は、空気流の速度によって決まり、調整可能でも測定可能でもない。
【0007】
第2方法は、代わりに、空気によって投与される溶液を蒸気温度まで加熱して、患者による蒸気の吸入を可能にする。
【0008】
これらの送達方法により、送達される液滴のサイズ、投与量、圧力、速度及び送達温度に関して、送達される物質のパラメータをうまく制御することが困難になる。したがって、それらの送達方法により、投与療法は、正確且つカスタマイズ可能な方法で実施することができず、一貫した方法で繰り返すこともできない。
【0009】
さらに、既知のタイプの装置によって操作される気化によって得られる液滴は、サイズは低減するが、患者の気管支のレベルで停止する浸透能力を有する。
【0010】
米国特許第6196219B1号は、霧化された液滴の分散の形態で液状医薬物質を患者に送達する吸入器を記載している。この吸入器は、スプレー装置に接続された、送達すべき供給液体を担持するハウジングを備え、スプレー装置自体が供給液体を作成することができる。
【0011】
米国特許第8714150B2号は、気体又は蒸気の形態で1種又は複数種の物質を送達する電子タバコを記載している。この電子タバコは、ハウジング、第1カートリッジ、第2カートリッジ、電源又はバッテリ、コントローラ及び通信デバイスを備える。
【0012】
米国特許出願公開第2012/118301号は、使用者によって吸入されるように意図された物質を噴霧する平面トランスデューサを備える電子タバコを記載している。この電子タバコは、噴霧すべき液体を収集するリザーバが収容されているハウジングと、充電式バッテリ等の電源手段とを備える。
【0013】
米国特許出願公開第2017/0245550号は、気化した1回分の用量が使用者によって完全に吸入されると、気化させるべき液状物質を自動的に交換する(又は供給する)手段を含む、気化装置を記載している。
【0014】
米国特許出願公開第2017/0367402号は、気化させるべき液体の供給部と、前記液体が流れることができる、前記供給部に接続されたチャネルと、加熱素子とを備える、携帯型気化装置を記載している。この加熱素子は、チャネル内部を流れる液体を気化させるためにその液体に伝達すべき熱を発生させるように構成されており、この目的で、加熱素子は、コイルのように、チャネルに限定することができる。
【0015】
米国特許出願公開第2017/0181475号は、制御マイクロプロセッサと、ユーザデータメモリデバイス及び装置自体の動作パラメータと、インターネットネットワークへの又はさらなる装置への接続のためのアクセス手段とを備える、電子タバコを記載している。
【0016】
国際公開第2008/077271A1号は、タバコノズル、バッテリ、空圧スイッチ、液体チャンバ及び霧化チャンバを含む、電子化喫煙装置を記載している。
【0017】
国際公開第2011/065754A2号は、保管部と、スイッチングデバイスと、スイッチングデバイスに従って動作する電源デバイスと、物質を気化する気化デバイスとを備える、物質の霧化及び吸入装置を記載している。
【0018】
米国特許出願公開第2017/231278A1号は、液状エアロゾル形成基板と、第1電極及び第2電極と、1つ又は複数のエアロゾル発生要素を含むエアロゾル発生器と、制御システムとを備える、エアロゾル発生システムを記載している。第1電極及び第2電極は、液体保管部分の少なくとも一部が間にあるように配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
したがって、本発明によって提起され且つ解決される技術的問題は、従来技術に関して上述した欠点を克服することができるシステムを提供するという問題である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した欠点は、請求項1による独立システムによって解決される。
【0021】
本発明の好ましい特徴は、従属請求項の主題である。
【0022】
本発明は、有効成分を含有する液状物質の改善された気化システムであって、物質が、飽和乾き蒸気(より簡単には、以下、乾き蒸気とも)の形態で、すなわち、分子レベルで分解されて、患者に送達されるのを可能にするシステムを提供する。実際には、既知であるように、飽和乾き蒸気は、物質全体が蒸気の形態であり、液体のいかなる液滴も存在しない、液状物質の特定レベルの状態を表す。
【0023】
実際には、本発明のシステムは、自由分子を得るために、特に、有効成分の分子と溶媒の分子との間、及び有効成分自体の分子の間の、物質の分子結合を切断するように構成されている。
【0024】
有利には、分子次元まで分解された物質は、気管支だけでなく、肺胞の膜にも達することができ、患者への有効成分の有効な投与が可能になる。
【0025】
本発明のシステムは、互いに独立して、別法として、連続して、又は同時に実施することができる2つのモードを用いて、飽和乾き蒸気の状態に達するまで物質を処理するように構成されている。
【0026】
第1方法は、所定閾値を超える周波数で振動が印加される物質を提供し、所定閾値は物質自体の特徴に相関する。振動は、物質の分子結合の切断により乾き蒸気を得ることができるようなエネルギー含量を有していなければならない。
【0027】
第2方法は、分子結合を切断するため等、物質自体の特徴に相関する乾き蒸気の温度に達するまで、物質に熱エネルギーを伝達する。
【0028】
この目的で、本システムは、振動エネルギーを印加する機械的又は電気機械的手段と、物質を加熱する熱的手段とを備える。提案するシステムの好ましい変形によれば、機械的又は電気機械的手段は、特に、超音波周波数での振動に好適なセラミック素子を備える。さらに好ましい変形によれば、機械的手段は、5MHzより高い、又は特に4.5~5.5MHzであり得る超音波周波数で振動を発するように、及び/又は、10W/cmを超える、好ましくは10~13W/cmのエネルギー密度を発生させるように構成されている。
【0029】
熱的手段に関して、本発明の好ましい実施形態によれば、これは、少なくとも250℃まで物質の温度を上昇させるように構成されている。実際には、一般的な医療溶液に関して、100℃に達すると、溶液の温度は上昇しないが、供給されるさらなるエネルギーにより、溶媒の分子と溶質の分子との結合が切断される。
【0030】
好ましい実施形態によれば、物質の加熱は、15~25KHzに含まれる周波数で電流が供給される誘導手段によって発生することができる。
【0031】
物質の分子結合を切断する両方法が、振動手段に且つ加熱手段に接続される制御ユニットが存在することにより、制御され且つ事前に決定可能な方法で実施される。
【0032】
有利には、機械的手段及び熱的手段に関して上に報告した好ましい動作範囲により、10秒間より短い時間で、飽和乾き蒸気の形態で液状物質の気化を得ることができる。
【0033】
本発明の好ましい変形によれば、制御ユニットは、送達すべき所定の物質に基づく所定の送達プログラムと指示された療法とに従って、機械的又は電気機械的手段及び熱的手段の作動を制御するように構成された、電子マイクロプロセッサによって実装される。
【0034】
送達プログラムは、たとえば、送達の標的身体部位(たとえば、鼻腔、上気道、肺等)に相関する、物質に印加すべき振動の周波数、気化した物質が送達される温度、圧力及び速度、送達すべき物質の用量、並びに蒸気が放出される方向等のパラメータを定義する。
【0035】
有利には、異なるタイプの療法においてシステムを使用するような方法で、異なるプログラムに従って物質の送達を具現化するのを可能にするために、本システムの好ましい実施形態は、使用者が異なる所定の送達プログラムを選択するのを可能にするように構成されたインタフェースを備える。別法として、送達パラメータ、すなわち、少なくとも、機械的又は電気機械的気化手段及び熱的気化手段の起動パラメータを手動で選択するオプションが提供される。
【0036】
さらに、本発明の特に有利な変形は、好適なインタフェース手段によって、送達すべき物質タイプを簡単に選択するオプションを提供する。行われた選択に基づいて、制御ユニットは、所定のパラメータに従って、すなわち、所定の送達プログラムに従って、機械的又は電気機械的手段及び/又は熱的手段を起動する。
【0037】
さらなる変形によれば、制御ユニットは、メモリユニットとデータ通信するように構成されており、メモリユニットには、所定の送達プログラムとともに、これらの送達プログラムとインタフェース手段によって選択することができる物質のタイプとの関係が格納されている。
【0038】
さらに、好ましい実施形態によれば、連続送達又はパルス状送達を選択して、送達モードを調整することも可能であり、後者の場合、パルスの持続時間、後続するパルス間の間隔、各パルスに対する送達される物質の用量、及び送達パルスの総数をプログラムすることができる。
【0039】
さらに特に有利な変形によれば、本発明のシステムに、物質の送達モードをその霧化によっても実施することができるような方法で、アスピレータ/圧縮器(好ましくはタービン)に接続する更なる手段が設けられる。
【0040】
こうした送達モードは、リポソームに不溶性であり及び/又は挿入された有効成分(たとえば、リポソームに挿入されたピロリン酸第二鉄等、塩)の吸入(気管支/肺)による投与に必要とされる。
【0041】
有利には、本発明によるシステムにより、間質送達に好適な、1ミクロン未満の直径を有する、決定された有効成分を含有する、送達すべき物質の粒子を得ることができる。特に、こうした寸法の粒子は、小気管支に達し肺胞まで進んで、血流における有効成分の通過プロセスを活性化するために好適である。
【0042】
本発明の他の利点、特徴及び使用方法は、非限定的な例によって提示するいくつかの実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなるだろう。
【0043】
図面の簡単な説明
以下、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明によるシステムの第1の好ましい実施形態の例示的なブロック図を示す。
図2】本発明によるシステムの第2の好ましい実施形態の例示的なブロック図を示す。
図3】本発明によるシステムの第3の好ましい実施形態の例示的なブロック図を示す。
図4図3に示す実施形態によるシステムに含まれるリザーバの好ましい実施形態を、詳細に図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
上述した図面は、例示的な且つ非限定的な目的に対してのみ意図されている。
【0046】
好ましい実施形態の詳細な説明
最初に図1を参照すると、本発明によるシステムの好ましい実施形態が、全体的に1で示されている。
【0047】
システム1は、呼吸療法を実施するために、分子レベルにおいて乾き蒸気の形態で分解された、医薬有効成分を含む、液状物質を送達するように構成されている。
【0048】
システム1は、好ましくは、物質及び呼吸療法のタイプによって異なる送達方法の実施を可能にする、モジュール式構成を有する。
【0049】
システム1は、まず、支持体100と支持体100に取外し可能に接続可能なリザーバ2とを備える。リザーバ2は、液状物質を収容するように構成されており、好ましくは、金属材料から、又はいずれの場合でも物質自体と適合性のある材料から作製されている。
【0050】
リザーバ2は、気化させるべき液体用の入口の部分において加工されたねじ蓋を有することができ、好ましくは5~40cm、好ましくは15cmに等しい容量を有する。さらに、リザーバ2は、好ましくは、定期的な清掃を可能にするために容易に視察されるように、その内側にアクセスを容易にする手段を備える。
【0051】
リザーバ2は、好ましくはポンプ18及び/又は逆止弁13を備える物質の引出し手段5と連通しており、逆止弁13は、蒸気がポンプ18によってリザーバ2内にはね返されないように構成されている。ポンプ18は、特に、量的に事前に規定された用量で、且つ制御ユニット7によってプログラム可能な圧力で、蒸気を引き込み且つ押し出すように構成されており、制御ユニット7については後述する。これらの引出し手段5は、リザーバ2に取外し可能に接続可能である。
【0052】
さらに、リザーバ2内にセンサ又はプローブ14、15を収納することができ、センサ又はプローブ14、15は、それぞれ物質の圧力及び温度を検出するように構成され、それにより、リザーバ2内での物質の気化中にこうしたパラメータをモニタリングすることができる。特に、100℃を超える加熱により、リザーバ内の圧力は約3気圧になる可能性があり、一般に、溶液中の物質の場合、この圧力により、溶媒の分子からの溶質分子の解放が促進される。
【0053】
プローブ14、15は、制御ユニット7と通信する。さらに、制御ユニット7に接続された、リザーバ2内に存在する物質の圧力及び温度を調節する手段が存在し得る。
【0054】
システム1は、引出し手段5と流体連通して配置された、物質の吐出手段6をさらに備える。この手段6は、たとえば、口、鼻、耳若しくは他の腔又は治療対象の表面であり得る送達標的に応じて、さまざまな形状及び長さのノズルが設けられているマスク又は管等、1つ又は複数の経鼻及び/又は経口送達装置を含む。
【0055】
吐出手段6は、厳密に、送達すべき物質の通過部分の面積及び形状によって決まる、所定の方向及び速度パラメータに従って物質の送達を可能にするような形状である。したがって、この吐出手段6は、必要とされる具体的な用途に従って選択することができるために、選択的に交換可能であることが有利に予測可能である。
【0056】
吐出手段6には、好ましくは、ブロック弁が備えられ、ブロック弁は、通常は蒸気の通過を可能にし、制御ユニット7のコマンドによって送達を停止するように閉鎖することができる。制御ユニット7は、事前に定義された用量の物質が送達されるとブロック弁の閉鎖を制御し、このように、患者に送達される物質の投与量制御が操作される。
【0057】
システム1はまた、リザーバ2内に収容された物質に、それを乾き蒸気状態にするような方法で振動を印加するように構成された、振動タイプの、機械的又は電気機械的第1気化手段3も備える。
【0058】
第1気化手段3は、好ましくは、物質に超音波周波数振動を、特に少なくとも3MHz、好ましくは5MHz以上の周波数で印加するように構成されている。さらに、第1気化手段3は、こうした振動に関連して、たとえば少なくとも3W/cmに等しい、好ましくは10W/cm以上の、物質の分子結合を切断するのに十分なエネルギー密度を発生させるように構成することができる。
【0059】
さらに好ましくは、第1気化手段3は、4.5~5.5MHzの超音波周波数で振動を発するように、及び/又は好ましくは10~13W/cmのエネルギー密度を発生させるように構成されている。このエネルギー密度に関連して、飽和乾き蒸気の放出は、1,000ミリバールの圧力で得られる。
【0060】
言い換えれば、第1気化手段3は、分子の間の結合を切断することによって物質が分子次元に達するのを可能にして、物質を乾き蒸気状態にする、調整可能な周波数及びエネルギー密度で、機械振動エネルギーを印加するように構成されている。特に、第1気化手段3は、セラミック材料から作製された振動素子を備える。
【0061】
さらに、システム1は、リザーバ2内に収容された物質に、分子結合を切断して物質を乾き蒸気状態にするような方法で熱エネルギーを伝達するように構成された、加熱タイプの第2気化手段4を備える。
【0062】
第2気化手段4は、物質の温度を、飽和乾き蒸気温度に、たとえば、沸点が100℃の物質の場合は少なくとも250℃にするように構成されている。
【0063】
好ましくは、第2気化手段4は、15~25KHzの周波数で電流が供給されるように構成されている。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2気化手段4は、好ましくは少なくともリザーバ2の底部に付与される、誘導加熱素子を備える。特に、第2気化手段4は、望ましい場合は高温気化を可能にするように、又は、第1気化手段3の実行によって生成される蒸気を加熱するように、実施することができる。
【0065】
特に、第1気化手段3は、液状物質に、4.5~5.5MHzに含まれる超音波周波数で振動を印加して、10~13W/cmのエネルギー密度を発生させるように構成され、第2気化手段4は、物質の温度を少なくとも250℃にするように構成された、15~25KHzの電流周波数が供給される誘導手段を備え、システム1の構成は、液状物質の気化を1秒未満の時間で飽和乾き蒸気の形態で実施するようなものである。
【0066】
基本的に、機械的又は電気機械的作用を有するこうした気化手段3及び熱作用を有するこうした気化手段4の両方が、物質の分子結合を切断して物質を飽和乾き蒸気の物理状態にするのに十分な、物質のエネルギー含量の増大をもたらすように構成されている。したがって、物質の気化は、互いに独立して実施することができるこれらの第1手段3及び第2手段4のうちの一方のみを使用することによって達成することができる。
【0067】
別法として、システム1は、気化が、制御ユニット7によって又は手動制御を用いることによって好適に調節される、前記第1手段3及び第2手段4の両方の同時使用によって具現化されるようにする。この目的で、システム1は、使用者が、第1気化手段3及び第2気化手段4の実施のためのパラメータを調整するとともに、所定の送達プログラムを選択するのを可能にするように構成された、他の制御ユニット7に接続されたインタフェース手段8を備えることができる。
【0068】
この同時作動モードは、たとえば、気化に、10W/cmを超えるエネルギー密度で5MHz以上の周波数での振動の印加が必要である、油状物質の処理に必要とされる。さらに、(たとえば、200℃を超える)油状物質の沸騰値より高くなければならない、温度の急な上昇を用いることが必要である。
【0069】
予期されるように、電子マイクロプロセッサを用いて実装することができる制御ユニット7は、所定の送達プログラムにおいて定義することができるパラメータに従って、第1気化手段3及び/又は第2気化手段4の実施を命令するように構成され、又は別法として、パラメータは、インタフェース手段8を使用してオペレータによって手動で選択することができる。
【0070】
所定の送達プログラムは、少なくとも、療法及び送達すべき物質の具体的なタイプに関連して、第1気化手段3によって印加される振動の周波数、持続時間及びエネルギー密度値、及び/又は第2気化手段4によって操作される熱の温度値及び持続時間を定義する。上述したパラメータは、乾き蒸気状態に達するために事実上高温にするか、又は事実上高周波数で電圧を加えなければならない、物質の物理的/化学的特徴に(特に、分子結合エネルギーに)強く依存する。
【0071】
さらに、システム1は、制御ユニット7に接続された又は制御ユニット7に組み込まれたメモリユニット9を備えることができ、そこには、投与療法及び送達すべき物質のそれぞれのタイプに関連する所定の送達プログラムが格納されている。このように、不定数の回数に対して物質を投与する療法の反復可能性を保証することができる。特に、メモリユニット9はまた、所定の送達プログラムの変更又は更新を可能にするように、システム1に且つ追加の外部電子デバイスに有利に接続可能であり得るUSBキーの形態でも具現化することができる。
【0072】
制御ユニット7は、さらに、リザーバ2内に収容された気化させるべき液状物質の圧力及び温度を調節するように構成することができる。温度に関して、これは、好ましくは、18℃~250℃に含まれるように維持される。さらに、制御ユニット7は、送達される蒸気の量及びその圧力を、ポンプ18、弁13、及び吐出手段6のブロック弁を通して調節することができる。
【0073】
さらに、本発明の特に有利な実施形態によれば、第1気化手段3及び/又は第2気化手段4は、モジュールタイプのシステムを具現化するように、支持体100に取外し可能に接続可能である。
【0074】
特に、第1気化手段3及び/又は第2気化手段4は、リザーバ2と一体化しており、支持体100から選択的に取外し可能な気化器グループ50を達成する。
【0075】
実際、システム1のモジュール性により、支持体100から、第1気化手段3、第2気化手段4及びリザーバ2を含む気化器グループ50を取り外して、内部に収容された物質を霧化する手段に接続されたさらなるリザーバ2と交換することができる。このように、システム1は、乾き蒸気の発生を見越したモードに加えて、霧化の送達モードも具現化することができる。
【0076】
噴霧手段は、図1において一例として点線で示す、好ましくはフィルタが設けられた圧縮器15と、リザーバ2と圧縮器15との間の流体連通を具現化するように構成された接続手段とを備える。リザーバ2、圧縮器15及びそれらのそれぞれの接続手段は、図2において参照番号60で示す霧化器グループを具現化する。
【0077】
図2をさらに参照すると、本発明のシステム1’の具現化のさらなる形態が示されており、後述する構成要素のうちの一部のみが表されている。図2には表されていない構成要素は、システム1’の以下の説明によってカバーされていないものとともに、システム1に含まれるものと等しいとみなされる。
【0078】
システム1’は、第1気化手段3、第2気化手段4及びリザーバ2からなる気化器グループ50の代わりに、さらなる物質を収容する反対のリザーバ2、圧縮器15及び接続手段16を含む霧化器グループ60を備え、接続手段16は、さらなるリザーバ2と圧縮器15との間の流体連通を具転化するように構成されている。接続手段16は、送達すべき霧化物質の流れを構成する液滴のサイズを所定方法で調節する等のために、くちばし状(beak)構造を有する。
【0079】
好ましくは互いに一体化しているさらなるリザーバ2及び圧縮器15の両方は、支持体100に取外し可能に接続される。圧縮器15はまた、制御ユニット7にも取外し可能に接続され、一方で、さらなるリザーバ2は、引出し手段5に取外し可能に接続される。
【0080】
特に、圧縮器15は、0.5~3.5(好ましくは1.5に等しい)気圧の圧力で作動することができ、一方で、引出し手段5は、0.5~3.5(好ましくは2.5に等しい)気圧の圧力で動作する吐出ポンプを備えることができる。
【0081】
こうした変形によれば、システム1’の構成は、所定の送達プログラム、又は圧縮器15の動作パラメータの手動選択に従って、制御ユニット7による圧縮器15の作動により、リザーバ2内に収容されたさらなる物質の霧化及び送達を可能にするというものである。この変形1’は、非気化可能物質を送達するように意図されており、したがって、本発明の汎用性を向上させる。
【0082】
予測されるように、手段16の適切な構成を用いて、たとえば2~20ミクロンであり得る霧化液滴のサイズを調整することができる。
【0083】
システム1、1’の電源は、制御ユニット7に接続された充電式バッテリ11に委ねることができる。有利には、バッテリ充電段階11の間にシステム1、1’の動作を提供することができる。
【0084】
ここまで記載したことを考慮すると、本発明によるシステム1、1’は、高い蒸気温度での気化可能な不溶性有効成分の場合の水溶液又は水性懸濁液の送達に、且つ、室温で気化可能な非水溶液、又は中間温度での気化の必要性がある溶液を送達するために、有利に使用することができる。たとえば、本発明により、家庭で熱的条件を再現するために鉄含有水を含む温水を供給することが可能になる。
【0085】
さらに、圧縮器15を提供するシステム1’の構成により、粘着性粘液物質の霧化を具現化することができる。さらに、霧化により、リポソームに挿入された場合であっても、不溶性有効成分を送達することができる。このように、有効成分は、不溶性であり及び/又はリポソームに挿入される(たとえば、ピロリン酸第二鉄等、塩)場合であっても、吸入(気管支/肺)によって服用することができる。有利には、本発明により、粘着性粘液物質の液滴を室温で咽喉内に直接放出することができ、この液滴は、粘膜の温度により、咽喉と接触したときに保護膜を形成する。
【0086】
有利には、本発明により、送達される用量(生成物の量)、圧力、放出速度、及び、噴霧変形の場合は、成分がミストを霧化するナノ液滴の直径も等のパラメータが電子的に制御される。これらのパラメータは、各所定の送達プログラムに関連してメモリユニット9に格納することができる。
【0087】
さらに、システム1、1’のモジュール性と、気化器グループ50及び霧化器グループ60の交換可能性とにより、異なる送達モードを選択することができ、たとえば、室温での分子蒸気、プログラムされた温度での加熱分子蒸気、又は所定液滴サイズでの噴霧から選択することができる。
【0088】
さらに、本発明は、制御ユニット7が、所定の送達プログラム又は手動型選択に従って、連続モードにより又はパルス状モードにより、気化状態及び霧化状態の両方で物質の送達を制御することを可能にすることができる。パルス状送達の場合、パルス持続時間、1つのパルスと次のパルスとの間隔、各パルスに対して送達される物質の投与量とともに、パルスの総数をプログラムすることができる。
【0089】
ここで添付の図3を参照し、図3には、1000で示す、本発明によるシステムの第3の好ましい実施形態のブロック図が示されている。図3に示す構成要素に加えて、システム1000は、システム1及び/又は1’に含まれるさらなる構成要素を備えることができる。システム1000内に含まれ且つ図3に表されていないすべての構成要素は、システム1000の以下の説明によってカバーされていない構成要素とともに、システム1内に含まれているものと等しいと理解される。システム1000は、「二重チャンバ」を有するリザーバ22を備える。図4に詳細に示すように、特に、リザーバ22は、第1チャンバ25及び第2チャンバ26を備える。第2チャンバ26は、好ましくは、少なくとも部分的に第1チャンバ25の周囲を囲むように構成されている。この好ましい構成によれば、第1チャンバ25は、少なくとも部分的に第2チャンバ26内に収容されている。
【0090】
第1チャンバ25は、さらに、第2チャンバ26と流体連通しており、特に、第1チャンバ25は、その底壁のうちの1つに、特に、上述した第2チャンバ26の底壁39に、入口開口部を有することができ(又は、いかなる底壁も有していない場合もあり得る)、この開口部は、第2チャンバ26内部に面している。
【0091】
システム1000は、上述したリザーバ22に関連して、第1気化手段3及び第2気化手段4をさらに備える。特に、システム1000は、それぞれの誘導発電器35に接続されたインダクタ29を備える加熱手段と、それぞれの超音波発生器34に接続された、超音波周波数で振動するように適合された、好ましくはセラミック素子33を含む振動手段とを有する。
【0092】
図4に示す好ましい実施形態によれば、超音波周波数で振動するのに適切なセラミック素子33は、第2チャンバ26の上述した底壁39に、好ましくは前記チャンバ26の外側で関連付けられる。インダクタ29は、代わりに、好ましくは、第1チャンバ25に、特に側壁49において、好ましくは第1チャンバ25の外側で関連付けられる。
【0093】
誘導発電器35及び超音波発生器34は、物質の気化が患者に送達されるのを可能にするように選択的に起動される。
【0094】
好ましくは、気化させるべき物質は、第2チャンバ26内に収容され、超音波周波数振動手段の作用により飽和乾き蒸気の状態にされる。このようにして得られる蒸気は、第1チャンバ25に流れ込み、そこで、上述した加熱手段によって加熱される。第1チャンバ25はまた、好ましくは入口開口部の位置とは反対の位置に出口開口部も有し、そこから、蒸気はリザーバ22を離れるように出ることができる。
【0095】
さらに図3を参照すると、システム1000は、送達すべき気化物質の量、言い換えれば投与量を決定する吐出弁28と、入口において供給される空気をリザーバ22まで運んで、気化物質を運ぶ流れを具現化するタービンポンプ27とをさらに備えることができる。空気流は入口44(図4)によって第2チャンバ26に入ることができ、一方、空気流及び気化物質の出口は30で示す。
【0096】
リザーバ22のこうした構成及び機能により、生物学的に許容可能な温度で、非常に短時間で溶液の分子集合体の解放が可能になる。
【0097】
さらに、システム1000は、好ましくは、温度センサ31及び圧力センサ32とともに、気化及び送達手段を制御するプロセッサ36と、センサに、且つ気化手段、及び気化された/気化させるべき物質を運ぶことに電力を供給する充電式バッテリ37とを備える。
【0098】
特に、リザーバ22はアルミニウムから作製することができる。好ましくは、第1チャンバ及び第2チャンバは、円筒状構造、さらにより好ましくは同心状構造を有する。この実施形態によれば、第2チャンバの直径は、(気化させるべき溶液の量に応じて)約5~7cm、好ましくは6cmとすることができ、一方で、底壁39に対して直交する方向に従って測定されるリザーバ22の高さは、約5~7cm、好ましくは6cmとすることができる。
【0099】
以降、本発明によるシステム1によって溶媒に結合された有効成分を含有する物質の好ましい実施形態について説明する。
【0100】
物質は、気化器グループ50に含まれるリザーバ2内に挿入される。気化器グループ50は、支持体100に接続される。送達すべき物質のタイプに応じて、且つ予期される投与療法に応じて、使用者は、インタフェース手段8を用いて所定の送達プログラムを選択し、又は、送達パラメータの自動調整を実施する。別法として、制御ユニット7が、メモリユニット9に格納された所定の送達プログラムを自動的に採用する。所定の送達プログラム又は実施される手動調整に応じて、制御ユニット7は、第1気化手段3及び/又は第2気化手段4の実施を、互いに独立して命令する。こうした第1気化手段3及び第2気化手段4の起動は、連続して、又は同時モードで実行することができる。
【0101】
第1気化手段3が起動されると、第1気化手段3は、有効成分と溶媒との間と同じ有効分の分子の間との両方で、物質における分子結合の切断を具現化するようなエネルギー密度に関連して、機械振動エネルギーを物質に印加する。
【0102】
第2気化手段4が起動されると、第2気化手段4は、有効成分と溶媒との間と有効成分自体の分子の間との両方で、分子結合の切断を具現化するような熱エネルギーを物質に印加する。
【0103】
第1気化手段3及び第2気化手段4が同時に実施される場合、振動の周波数、エネルギー密度、及び物質に伝達される熱は、制御ユニット7により、分子結合を切断し、物質を乾き飽和蒸気の物理状態にするような方法で、適切に調節される。
【0104】
物質が気化すると、制御ユニット7は、気化した物質をリザーバ2から吐出手段6に運ぶ引出し手段5の作動を制御し、所定圧力を印加する。最終的に、物質は、送達される蒸気の速度及び方向の調節を操作する吐出手段6を通して放出される。さらに、ブロック弁を用いて送達される溶液の投与量は、吐出手段6において具現化される。
【0105】
続いて、上述した実施形態の各々を用いて実施することができる、本発明によるシステムの好ましい動作パラメータを報告する。
【0106】
特に熱に反応しない薬剤の溶液に関して、(約)1分未満の間、室温(20~25℃)で開始して、約5~10ccの溶液の気化を得るように振動手段のみを起動させることができる。システムの動作パラメータを以下に列挙する。すなわち、60Wで電力が供給され、12W/cmのエネルギー密度を供給する、5MHzの周波数で動作するセラミック材料での超音波周波数振動発生器である。
【0107】
異なる気化モードに従って、以下の動作パラメータに従って超音波周波数振動手段及び加熱手段を同時に起動することができる。すなわち、12W/cmに等しく生成された電力密度で、5MHzの周波数で動作するセラミック材料の超音波周波数振動発生器と、全体的な出力が60Wの20KHz電源を用いる誘導加熱とである。本方法によれば、1秒より短い時間(典型的には、0.7秒)で、10ccの溶液の気化が得られ、気化した物質は、1ミクロン未満の直径の粒子と、40℃~37℃の温度を有する。
【0108】
特に、熱エネルギーの(患者への20℃~40℃/45℃の)伝達によって補助される、高周波数超音波(5HMz)及び高エネルギー密度(10~12W/cm、典型的には2.5W/cmである気化閾値よりはるかに高い)による気化により、1秒未満の時間で1ミクロン未満の直径の粒子が生成される。したがって、再凝縮の前の潜伏時間(6/10秒)を考慮すると、粒子は、肺胞及び血流に達することができる。
【0109】
本発明について、ここまで、好ましい実施形態に関して説明した。以下に示す特許請求の範囲の保護の範囲によって定義されるように、同じ発明の中心に関連する他の実施形態があり得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4