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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】移動する物体の画像データの取得
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20230915BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230915BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230915BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20230915BHJP
   G02B 7/40 20210101ALI20230915BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230915BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G06K7/10 408
G03B15/00 T
G03B13/36
G02B7/40
H04N23/60
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021063258
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2021179602
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】10 2020 109 929.0
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ポンティッジャ
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191561(JP,A)
【文献】特開2005-215373(JP,A)
【文献】特開昭63-083886(JP,A)
【文献】特開昭62-156611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28-7/40
G06K 7/10
G03B 15/00
G03B 13/36
G02B 7/40
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域(14)を通って移動する物体(48)を検出するためのカメラ(10)であって、画像データを記録するための画像センサ(18)と、焦点位置を調節するための焦点調節ユニット(17)を有する受光光学系(16)と、前記物体(48)までの距離値を測定するための距離センサ(24)と、前記距離値に依存して焦点位置を調節するために前記距離センサ(24)及び前記焦点調節ユニット(17)と接続された制御及び評価ユニット(38)とを備えるカメラ(10)において、
前記制御及び評価ユニット(38)が、利用可能な焦点合わせ時間が十分でない場合の補償方法として、不鮮明さを受け入れつつより早く到達可能であって、距離測定により調節可能であったであろう理想的な焦点位置からの意図的な焦点ずれがある焦点位置において画像データの記録を実行するように構成されており、前記焦点ずれが、要求される画像データの画像鮮明度に対して十分に小さいずれに留まっていることを特徴とするカメラ(10)。
【請求項2】
前記制御及び評価ユニット(38)が、利用可能な焦点合わせ時間を、前記物体(48)が撮影位置に達するであろう時点から算定するように構成されており、特に前記距離センサ(24)が前記物体(48)の移動速度を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ(10)。
【請求項3】
前記制御及び評価ユニット(38)が、目下の焦点位置と、測定された前記距離値に応じた理想的な焦点位置とから必要な焦点変更時間を特定するように構成されており、特に前記制御及び評価ユニット(38)に、第1の焦点位置から第2の焦点位置への位置調節とそれに必要な焦点変更時間との間の関係規則が保存されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ(10)。
【請求項4】
前記制御及び評価ユニット(38)が、前記利用可能な焦点合わせ時間を前記必要な焦点変更時間と比較し、該必要な焦点変更時間に足りない場合にのみ、焦点ずれのある状態で画像データを記録するように構成されていることされていることを特徴とする請求項2及び3に記載のカメラ(10)。
【請求項5】
前記制御及び評価ユニット(38)が、前記理想的な焦点位置への焦点調節を行いながらも、要求される画像鮮明度に対して焦点ずれが十分に小さくなったらすぐに画像データを記録するように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項6】
前記制御及び評価ユニット(38)が、前記理想的な焦点位置までではなく、単に前記焦点ずれを目標として焦点調節を行うように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項7】
前記制御及び評価ユニット(38)が、要求される画像データの画像鮮明度を得るために十分に小さい焦点ずれを持つ焦点位置に初めて到達できるのが利用可能な焦点合わせ時間を過ぎた後である場合には、その時間が過ぎるまで画像データの記録を遅らせるように構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項8】
前記距離センサ(24)の距離測定野(56)が前記検出領域(14)と少なくとも部分的に重なっていること、及び/又は、前記距離センサ(24)がカメラ(10)に統合されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項9】
前記距離測定野(56)が、物体(48)が前記検出領域(14)に入る前に該距離測定野(56)の内側で検出されるように調整されていることを特徴とする請求項8に記載のカメラ(10)。
【請求項10】
前記距離センサ(24)が、特に光伝播時間法の原理による、光電式の距離センサとして構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項11】
前記制御及び評価ユニット(38)が、距離測定値によれば調節後の焦点位置における画像データの記録の実行の際に前記物体(48)がまだ被写界深度内にある場合に、前記焦点ずれを、要求される画像データの画像鮮明度に対して十分小さいと評価するように構成されていること、特に前記被写界深度が光学的特性から及び/又は用途固有の要求から定められた被写界深度であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項12】
前記制御及び評価ユニット(38)が、前記画像データを用いて前記物体(48)上のコード(52)のコード内容を読み取るように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項13】
前記制御及び評価ユニット(38)が、撮影されたコード(52)を読み取る上で画像鮮明度が十分であれば、要求される画像データの画像鮮明度に対して前記焦点ずれが十分に小さいと評価するように構成されていること、特にそれがコードの種別、モジュールサイズ及び/又は復号法に依存していることを特徴とする請求項12に記載のカメラ(10)。
【請求項14】
前記検出領域(14)を通って搬送方向(50)に検出対象の物体(48)を案内する搬送装置(46)付近に静的に取り付けられていることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載のカメラ(10)。
【請求項15】
検出領域(14)を通って移動する物体(48)の画像データを取得するための方法であって、距離センサ(24)で前記物体(48)までの距離値を測定し、該距離値に依存して受光光学系(16)の焦点位置を調節する方法において、
利用可能な焦点合わせ時間が十分でない場合の補償方法として、不鮮明さを受け入れつつより早く到達可能であって、距離測定により調節可能であったであろう理想的な焦点位置からの意図的な焦点ずれがある焦点位置において画像データの記録を実行し、前記焦点ずれが、要求される画像データの画像鮮明度に対して十分に小さいずれに留まっていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は15のプレアンブルに記載のカメラ及び検出領域を通って移動する物体の画像データの取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラは、産業上の利用において、例えば物品の検査や測定等の目的で、物品の特性を自動的に捕らえるために多様な方法で用いられる。その場合、物品の画像が撮影され、業務に応じて画像処理により評価される。カメラの別の用途としてコードの読み取りがある。画像センサを用いて、表面にコードが付された物品が撮影され、その画像内でコード領域が識別されて復号が行われる。カメラベースのコードリーダは、1次元バーコード以外に、マトリックスコードのように2次元的に構成され、より多くの情報を提供する種類のコードも問題なく処理できる。印刷された住所や手書き文書の自動的なテキスト認識(光学式文字認識:OCR)も原則的にはコードの読み取りである。コードリーダの典型的な利用分野としては、スーパーマーケットのレジ、荷物の自動識別、郵便物の仕分け、空港での荷物の発送準備、その他の物流での利用が挙げられる。
【0003】
よくある検出状況の1つはカメラをベルトコンベアの上方に取り付けるというものである。カメラはベルトコンベア上で物品の流れが相対運動している間、画像を撮影し、取得された物品特性に応じてその後の処理ステップを開始する。このような処理ステップでは、例えば、搬送中の物品に作用する機械上で具体的な物品に合わせて更なる処理を行ったり、物品の流れの中から品質管理の枠組み内で特定の物品を引き出すこと又は物品の流れを複数の物品の流れに分岐させることにより物品の流れを変化させたりする。そのカメラがコードリーダである場合、各物品が、それに付されたコードに基づき、正しい仕分け等の処理ステップのために識別される。
【0004】
カメラは複雑なセンサ系の一部であることが多い。例えば、ベルトコンベアに設けられた読み取りトンネルでは、多数のカメラベースのコードリーダが、幅の広いベルトコンベアをカバーするために並べて取り付けられたり、更に物品を複数の側から撮影するために異なる視点から取り付けられたりするのが通例である。更に、搬送される物品の形状を特殊なレーザスキャナで事前に測定し、そこから焦点情報、カメラの作動時点、物品を含む画像領域等を特定することもよくある。
【0005】
物体距離に関するレーザスキャナの事前情報がない場合、ピントがはっきり合った位置で画像が撮影されているかをコントラストに基づいて確認することができる。このような方法で焦点を調節するには多数の画像を撮影しなければならないが、まさに相対運動における撮影の場合、それは不可能である。なぜなら、正しい焦点位置が見つかったときには物体はもはや適切な撮影位置にない場合があるからである。
【0006】
別の方法として、物体までの距離をカメラ自体を用いて測定することが考えられる。しかしそれは、設定すべき焦点位置が判明するのが遅くなり、移動行程によっては、物体がその撮影位置に来るまでに焦点位置を適合させるための時間がもう十分に残っていない、ということを意味する。例えばレーザスキャナによって前段で距離測定を行えばこの時間的な境界条件は緩和される。しかしそれはレーザスキャナの購入、取り付け及び調整のために追加のコストがかかることを意味する。しかも、ばらばらの物体に対してはそれで焦点切り替えのために十分な時間ができるが、高さの異なる2つの物体が接近して続いている場合はそうではない。
【0007】
特許文献1では、光伝播時間法(飛行時間:TOF)に基づく距離センサがカメラに統合されている。そのセンサにより高さプロファイルが測定され、それに基づいて様々な機能が実行される。それらの機能の1つに受光光学系の焦点位置の調節がある。しかし、焦点調節のための時間に余裕がないという前述の問題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE 10 2018 105 301 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
故に本発明の課題は、適切に調節された焦点位置で画像の撮影を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1又は15に記載のカメラ及び検出領域を通って移動する物体の画像データの取得方法により解決される。カメラと物体が互いに相対運動を行い、それにより撮影対象の物体がカメラの検出領域内へ入ってくる又は該検出領域を通り抜ける。画像センサが検出領域、従ってそこにある物体の画像乃至は画像データを取得する。鮮明な画像を生成するため、焦点調節可能な受光光学系、つまり受光対物レンズが設けられる。対物レンズは品質要求に応じて一又は複数のレンズ及び他の光学素子を備えている。距離センサがカメラと撮影対象物との間の距離を表す距離値を測定する。制御及び評価ユニットが焦点調節ユニットとして機能する。該ユニットはそのために距離センサから距離値を受け取り、その距離値に基づいて受光光学系の焦点位置を調節する。制御及び評価ユニットは好ましくは、画像データの読み出し、前処理、評価等を行うために画像センサとも接続される。またはその代わりに、焦点合わせを行う専用の部品と、カメラ内の他の任務(画像データの処理等)に関わる専用の部品とをそれぞれ設ける。
【0011】
本発明の出発点となる基本思想は、焦点合わせ時間を短くするため、焦点位置を完全に理想的というわけではない位置に調節することにある。その際に甘受される焦点ずれは明確に定義され且つなおも受け入れ可能な枠内に留まっている。非常に分かりやすく言えば、カメラの焦点を、理想的にではなく、単に十分良好に合わせるのである。故に画像データは若干不鮮明であるが、要求される画像鮮明度に対してはなお十分である。焦点ずれの対象となる理想的な焦点位置とは、理論的な最適位置ではなく、距離測定により調節可能であったであろう最適位置である。その理想的な焦点位置にも距離測定の誤差や焦点調節装置の公差等による不可避のずれがある。画像データが記録される焦点位置が、カメラが距離測定に基づいて達成できたであろう位置から意図的にずらされる。理想的な焦点位置を設定するために足りないのはカメラの性能ではなく焦点合わせ時間である。
【0012】
本発明には、焦点合わせ時間を短くすることができ、しかも記録された画像データがなおも所期の目的のために利用可能であるという利点がある。特にコード読み取り等の所定の画像評価ができる状態が維持される。撮影時点との関係で距離測定が比較的遅かったり、非常に高さの異なる物体が接近して続いたりして、利用できる時間が非常に短くなった場合、画像データを十分高速に記録しなければならない。その場合、なおも適時に画像を撮影するために不鮮明さの点で妥協することができる。これにより画像データのうち十分に鮮明に撮影されるものの分量が全体として多くなり、そうすると今度は画像評価に成功する割合が高くなり、特にコード読み取りに応用した場合の読み取り率が高まる。
【0013】
制御及び評価ユニットは、利用可能な焦点合わせ時間を、物体が撮影位置に達するであろう時点から算定するように構成されていることが好ましい。前記時点には、十分に鮮明な画像を撮影できるような焦点位置が設定されていなければならない。他方で、焦点調節装置がようやく動作を開始できるのは、距離センサの距離測定値が既に得られ、且つ、例えば移動する物体の流れの中で先行する別の高さの物体に対してそれまで行われていた別の焦点位置での画像撮影が終了した直後である。従って、焦点変更を開始できる時点は距離センサの測定データから導き出すことができる。
【0014】
距離センサは物体の移動速度を測定するように構成されていることが好ましい。それには例えば複数ゾーン型の距離センサが好適である。物体は運動の過程でセンサの複数の測定ゾーンに次々に進入する。その速度を用いて、カメラ及び/又は距離センサによる物体の検出の時点と位置、そして特に物体の撮影位置を相互に換算することができる。距離センサによる測定の代わりに、前記速度が既知であったり、パラメータで設定されていたり、別のセンサにより又はカメラによる先の画像撮影から測定されて必要に応じて外挿されたり、特に一定とみなされたりする。
【0015】
制御及び評価ユニットは、目下の焦点位置と、測定された距離値に応じた理想的な焦点位置とから必要な焦点変更時間を特定するように構成されていることが好ましい。必要な焦点変更時間は利用可能な焦点合わせ時間と対を成す物である。必要な焦点変更時間は、受光光学系に組み込まれた対物レンズ及びそれに付随する焦点調節装置の特性である。故に、ある一定の調節行程に対しては一定の焦点変更時間が必要である。その際、公差と、場合によっては温度及び経年劣化の効果を考慮し、補償することができる。
【0016】
制御及び評価ユニットには、第1の焦点位置から第2の焦点位置への位置調節とそれに必要な焦点変更時間との間の関係規則が保存されていることが好ましい。関係規則は特に解析関数若しくは近似式(例えば全体的又は部分的な線形又は多項式関数)として、又は参照テーブル(Lookup Table: LUT)として定めておくことができる。その都度の焦点変更時間は対物レンズと焦点調節装置の特性から計算したり、シミュレーションしたりすることができる。あるいは適当な較正測定を実行する。
【0017】
制御及び評価ユニットは、利用可能な焦点合わせ時間を必要な焦点変更時間と比較し、必要な焦点変更時間に足りない場合にのみ、焦点ずれのある状態で画像データを記録するように構成されていることが好ましい。即ち、そもそも妥協して焦点ずれのある状態で画像を撮影する必要があるか検査するのである。利用可能な焦点合わせ時間で十分間に合うときは理想的な焦点位置に設定することが好ましい。
【0018】
制御及び評価ユニットは、理想的な焦点位置への焦点調節を行いながらも、要求される画像鮮明度に対して焦点ずれが十分に小さくなったらすぐに画像データを記録するように構成されていることが好ましい。これは明確に定義された焦点ずれで画像を撮影する1つの方法である。利用可能な焦点合わせ時間が理想的な焦点位置への調節には十分ではないことが明らかであっても、その位置への位置変更を行う。しかし、画像撮影は理想的な焦点位置に達する前に早めに実行する。しかもそれは、まだ残っている焦点ずれ、つまり理想的な焦点位置までに残っている移動行程が、要求される画像鮮明度を保証するために十分に小さくなった時点で実行される。その際、残るは必要な焦点ずれのみという状態に初めてなるのはいつかを計算し、そのときにシャッターを切ることができる。あるいは、理想的な焦点位置にできるだけ近付くために、利用可能な焦点合わせ時間を使い切って最後の瞬間にシャッターを切る。これもまたそのときに焦点ずれが十分に小さいという条件に当てはまり、その条件が言わば予定以上に満たされている。
【0019】
制御及び評価ユニットは、理想的な焦点位置までではなく、単に前記焦点ずれを目標として焦点調節を行うように構成されていることが好ましい。これは補償の別の方法である。ここでは、理想的な焦点位置ではなく、より近くにある、十分に焦点ずれが小さい焦点位置に意図的に向かうことで、必要な焦点変更時間を短縮する。
【0020】
制御及び評価ユニットは、要求される画像データの画像鮮明度を得るために十分に小さい焦点ずれを持つ焦点位置に初めて到達できるのが利用可能な焦点合わせ時間を過ぎた後である場合には、その時間が過ぎるまで画像データの記録を遅らせるように構成されていることが好ましい。状況によっては、利用可能な焦点合わせ時間が、なお許容可能な焦点ずれを持つ焦点位置を設定するのに十分ではないことがあり得る。その場合、予定した時点に撮影を実行しても無駄である。なぜなら、その画像データで所期の目的を達成することができないことは最初から明らかだからである。それ故、許容可能な焦点ずれで撮影ができるようになるまで画像撮影を遅らせる。そのとき物体はもはや最適な撮影位置にはないが、故意に不十分な鮮明度で記録された画像データとは違って、その位置では所期の目的がまだ達成できる可能性がある。
【0021】
距離センサの距離測定野が検出領域と少なくとも部分的に重なっていること、及び/又は、距離センサがカメラに統合されていることが好ましい。距離センサとカメラの視野が重なるということは、例えば前段に配置されたレーザスキャナの場合と異なり、距離値が画像撮影の直前になってようやく測定されるということを意味する。従って、高さの異なる2つの物体が前後に連続するという状況がなくても、利用可能な焦点合わせ時間は非常に短くなる。視野の重なりは特に距離センサがカメラに統合される場合に生じる。これには利点が多い。なぜなら、システムがコンパクトでカプセル化された状態になり、制御及び評価ユニットが内部で距離センサに容易にアクセスでき、システム全体を取り付けて稼働させることがはるかに容易になるからである。本発明に係る焦点合わせにより、距離測定が比較的遅くなるという欠点は少なくとも明らかに抑えられる。
【0022】
距離測定野は、物体が検出領域に入る前に該距離測定野の内側で検出されるように調整されていることが好ましい。このようにすれば、理想的な焦点位置が早めに分かるため、情報の欠如による利用可能な焦点合わせ時間の損失が限定される。前段に配置されたレーザスキャナと比べて、カメラに統合された又はカメラ付近に配置された距離センサは前記の点で不利であるが、それが少なくとも部分的に補われる。これは、カメラの検出領域よりも広い距離測定野により、あるいは距離センサを検出領域内へ入ってくる物体の方へ向けることにより達成できる。このようにして測定された距離値は三角法により換算する必要がある。なぜなら、斜めに測定した距離はその後の画像撮影時における物体までの距離とは異なるからである。ただし、この換算は距離測定を検出領域内で初めて行う場合でも少なくとも有益である。その場合は単に角度の差がより小さいに過ぎない。
【0023】
距離センサは、特に光伝播時間法の原理による、光電式の距離センサとして構成されていることが好ましい。この種の距離センサは既製のチップ又はモジュールとして入手可能である。特に、距離センサは、それぞれTDC(時間デジタル変換器)を通じて個別の光伝播時間を測定する多数のSPAD(シングルフォトンアバランシェフォトダイオード)を備えていることが好ましい。
【0024】
制御及び評価ユニットは、距離測定値によれば調節後の焦点位置における画像データの記録の実行の際に物体がまだ被写界深度内にある場合に、焦点ずれを、要求される画像データの画像鮮明度に対して十分小さいと評価するように構成されていることが好ましい。これは、焦点ずれが十分に小さい又は要求される画像鮮明度がまだ維持されているのはいつかを確定する1つの方法である。そのために制御及び評価ユニットは、距離と、該距離に対してなお許容しうる焦点ずれとの関係を知っていることが好ましい。当然ながらこの関係は、最新の焦点位置と設定すべき焦点位置から必要な焦点合わせ時間を決定する関係とは別のものである。ここでは、理想的な焦点位置に対し、なお許容しうる焦点ずれが関連付けられる。物体がまだ被写界深度内で撮影されるというのは、その基準を表現する1つの方法である。ただし、関連付けの形式については同じことが言える。即ち、前記関係は解析関数若しくは近似式(例えば全体的又は部分的な線形又は多項式関数)として、又は参照テーブル(Lookup Table: LUT)として定めておくことができる。
【0025】
制御及び評価ユニットは光学的な特性から被写界深度を特定するように構成されていることが好ましい。この実施形態では被写界深度がより狭義に光学的又は物理的な意味で解釈される。これは特にDOF(d)~dNc/fという規則により定められる。ここで、DOFは物理的な被写界深度(Depth of Field: DOF)、dは物体までの距離である。Nは対物レンズの開口数であり、従って絞りに依存する。cは錯乱円(Circle of Confusion)であり、容認される不鮮明さの度合い(例えば画像センサ上の1画素)に相当する。そしてfは受光光学系の焦点距離である。これらのパラメータのほとんどは選択した受光光学系の対物レンズ定数であり、DOFが距離dの二乗に依存していることから、近接領域においては遠方領域よりも焦点ずれに関して厳しい要求を設定すべきであることが分かる。ただし、ここで述べているのは物体の位置に関することであり、例えば受光光学系の焦点距離又は画像焦点距離の設定に関することではない。これらは物体距離を通じて規定される焦点位置と非線形な関係にある。
【0026】
制御及び評価ユニットは用途固有の要求から被写界深度を定めるように構成されていることが好ましい。これによれば、実施形態によっては、被写界深度を純粋に物理的に定義するのではなく、どの評価目標物を画像データで追跡するかに依存させることができる。この場合、第1に重要なのは単なる画像鮮明度の基準ではなく、その画像データから目的とする評価を行うことができるかという問題である。この判定は用途毎に非常に異なるものとなり得る。
【0027】
制御及び評価ユニットは画像データを用いて物体上のコードのコード内容を読み取るように構成されていることが好ましい。これにより本カメラは、様々な規格に準拠したバーコード及び/又は2次元コード用、場合によってはテキスト認識(光学式文字認識:OCR)用のカメラベースのコードリーダとなる。コードを読み取る前に、コード候補として関心領域(ROI)を特定するセグメント化を行うことがより好ましい。
【0028】
制御及び評価ユニットは、撮影されたコードを読み取る上で画像鮮明度が十分であれば、要求される画像データの画像鮮明度に対して焦点ずれが十分に小さいと評価するように構成されていることが好ましい。これは被写界深度に関する用途固有の要求の好ましい事例と理解することができる。つまり、コードを読み取ることができる程度に画像を鮮明に撮影せよということである。コードを読み取る上で画像鮮明度がいつ十分になるかは予めシミュレーション又は実験で予想することができる。そのためには、カメラに対して、例えば周囲光と印字品質を考慮して典型的な条件下で様々な距離でコードを提示し、どの程度の焦点ずれまでまだコードが読み取られるか(GoodRead)又はどの程度の焦点ずれからもうコードが読み取られなくなるか(NoRead)を見出す。コードを読み取ることができるかどうかは、特にコードの種別、モジュールサイズ及び/又は復号法に依存して決まる。これらは画像鮮明度に関する要求に明らかに影響するパラメータ又は設定項目である。用途固有の被写界深度という用語でいうところの被写界深度はここに挙げた各パラメータに特に依存する。
【0029】
カメラは、検出領域を通って搬送方向に検出対象の物体を案内する搬送装置付近に静的に取り付けられていることが好ましい。これはよく見られる産業上のカメラの利用法であり、搬送装置の働きにより物体が検出領域を通って移動する。物体が絶え間なく入れ替わる上、搬送装置により物体の入れ替わりの予定時間が厳密に決まっているため、焦点調節装置はほぼ絶え間なく、短い持ち時間で反応できなければならない。いつ物体が撮影位置にくるか等を決定するために、搬送装置の速度、従って移動する物体の速度を、搬送制御装置、センサ(搬送装置に設置したエンコーダ等)又はベルトコンベアのパラメータ設定から取得することができる。
【0030】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0031】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】距離センサを有するカメラの概略断面図。
図2】カメラをベルトコンベア付近に取り付けた模範的な応用例の3次元図。
図3】焦点合わせ方法を説明するために、カメラと該カメラの検出領域内を移動する物体を示した図。
図4図3と同様の図であって、高さの異なる2つの物体が連続する場合を示した図。
図5】様々な焦点位置(X軸)及び物体距離(Y軸)での物体上のコードの試行的な読み取りの成功と不成功を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1はカメラ10の概略断面図である。検出領域14からの受信光12が受光光学系16に入射し、該光学系が受信光12を画像センサ18へ導く。受光光学系16の光学素子は、複数のレンズ並びに絞り及びプリズムといった他の光学素子から成る対物レンズとして構成されていることが好ましいが、ここでは簡略に1個のレンズだけで表されている。異なる距離にある物体を鮮明に撮影するため、受光光学系16は焦点調節装置17で様々な焦点位置にセットすることができる。それには様々な機能原理が考えられる。例として、ステップモータや可動コイル型アクチュエータによる画像焦点距離の変更の他、液体レンズ又はゲルレンズ等による焦点距離の変更もある。
【0034】
カメラ10の撮像中に検出領域14を発射光20でくまなく照らすため、カメラ10は任意選択の照明ユニット22を含んでいる。これは図1では発光光学系のない単純な光源の形で描かれている。別の実施形態ではLEDやレーザダイオード等の複数の光源が例えば円環状に受光路の周りに配置される。それらは、色、強度及び方向といった照明ユニット22のパラメータを適合化するために、多色型でグループ毎に又は個別に制御可能とすることもできる。
【0035】
画像データを取得するための本来の画像センサ18に加えて、カメラ10は検出領域14内の物体までの距離を光伝播時間法(飛行時間:TOF)で測定する光電式の距離センサ24を備えている。距離センサ24は、TOF発光光学系28を有するTOF発光器26と、TOF受光光学系32を有するTOF受光器30とを含んでいる。これらを用いてTOF光信号34が発信され、再び受信される。光伝播時間測定ユニット36がTOF光信号34の伝播時間を測定し、その時間からTOF光信号34を反射した物体までの距離を測定する。
【0036】
図示した実施形態では、TOF受光器30は複数の受光素子30a又は画素を備えており、位置分解された高さプロファイルを取得することができる。代わりの形態では、TOF受光器30が受光素子30aを1個だけ備えていたり、複数の受光素子30aの測定値を1つの距離値に換算したりする。距離センサ24の構成は単なる模範例であり、他にも光伝播時間法を用いない光電式の距離測定や、非光学的な距離測定も考えられる。光伝播時間法を用いた光電式の距離測定は公知であるため、詳しい説明は行わない。模範的な測定法として、周期的に変調されたTOF光信号34を用いる光混合検出法(Photomischdetektion)とパルス変調されたTOF光信号34を用いるパルス伝播時間測定法の2つがある。また、TOF受光器30を光伝播時間測定ユニット36の全体又は少なくとも一部(例えば光伝播時間測定用の時間デジタル変換器)と共に共通のチップ上に収めた高度集積型の解決策もある。それにはSPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)受光素子30aのマトリックスとして構成されたTOF受光器30が特に適している。このようなSPADベースの距離測定には、複数の受光素子32aを位置分解型の測定ではなく統計的な多重測定に利用してより正確な距離値を求めることが特に有利である。TOF光学系28、32は任意の光学系(例えばマイクロレンズアレイ等)を代表してそれぞれ単独レンズとして単に記号的に示されている。
【0037】
制御及び評価ユニット38が焦点調節装置17、照明ユニット22、画像センサ18及び距離センサ24と接続されており、カメラ10内での制御、評価及び他の調整の任務を担う。即ち、制御及び評価ユニット38は、距離センサ24の距離値に応じて焦点調節装置17の焦点位置を制御するとともに、画像センサ18から画像データを読み出し、それを保存するか、インターフェイス40へ出力する。制御及び評価ユニット38は画像データ内のコード領域を見出して復号することができることが好ましい。これによりカメラ10はカメラベースのコードリーダとなる。様々な制御及び評価の課題のために複数の部品を設けることで、例えば焦点の適合化を単独の部品内で実行し、画像データの前処理を単独のFPGA上で実行することもできる。
【0038】
カメラ10はケーシング42により保護されている。ケーシング42は受信光12が入射する前面領域において前面パネル44により閉鎖されている。
【0039】
図2はカメラ10をベルトコンベア46付近に設置して利用できることを示している。以下ではカメラ10が単に記号として示されており、図1に基づいて既に説明した構成はもはや示されていない。矢印50で示したように、ベルトコンベア46は物体48をカメラ10の検出領域14を通過するように搬送する。物体48は表面にコード領域52を持つことができる。カメラ10の任務は物体48の特性を捕らえることであり、更にコードリーダとしての好ましい使用においては、コード領域52を認識し、そこに付されたコードを読み取り、復号して、その都度対応する物体48に割り当てることである。物体の側面、特に側面に付されたコード領域54も認識するために、好ましくは、複数の追加のセンサ10(図示せず)を異なる視点から使用する。また、複数のカメラ10を並べて配置し、共同でより幅の広い検出領域14をカバーするようにしてもよい。
【0040】
図3図2の状況と同様に下方に向けられた検出領域14を持つカメラ10を示している。この例では距離センサ24の距離測定野56が検出領域14よりも広く、該領域を含んでいる。しかし、この例から外れて、検出領域14と距離測定野56が部分的に重なる構成や、重ならない構成も考えられる。距離測定野56が少なくとも部分的に手前に位置していればより早めに距離測定値が利用可能になるという利点がある。
【0041】
撮影対象の物体48が速度vで検出領域14内へ入ってくる。速度vは、搬送装置のパラメータとして既知のもの、エンコーダ等の外部のセンサで測定したもの、先の画像撮影から再構成したもの、又は距離センサ24を用いて測定したものとすることができる。最後の場合、距離センサ24は受光素子30aから成る複数の受信ゾーンを備えていることが好ましい。物体48は各ゾーンへ次々に進入するから、その時間の連続と測定された距離から速度vを推定することができる。
【0042】
物体48は距離測定野56に入ったときに検出される。その物体が検出領域14の中央に来たときに撮影を実行する必要がある。それまでにまだ行程dを進まなければならず、そこまでの時間はt=d/vで与えられる。行程dは更に距離hに依存している。それは、物体48の高さが変われば最初に検出される位置も変わるからである。他方で距離hは距離センサ24により測定され、しかも垂直ではなく斜めに測定された距離値hmから式h=hm1cosαを使って換算しなければない。ここで図示した構成では、角度αは、距離測定野56への進入の際にhm1が直ちに測定されるとすれば距離センサ24の視野角の半分に当たり、いずれにせよ構成が固定されているから既知である。これらの量からd=htanαを計算することができる。
【0043】
従って、図3に示した幾何学と時間的挙動は既知である。カメラ10には、焦点位置を高さhに合わせるために利用可能な焦点合わせ時間がまだdt=tだけ残っている。焦点合わせ時間dtには更に慣性に対する補正分と、逆に上乗せ分を考慮することができる。なぜなら物体の前側の縁部ではなく中央部を撮影すべきだからである。
【0044】
逆に、測定された距離hに応じて、現在の焦点位置から理想的な焦点位置まで焦点変更を行うために、どのくらいの焦点変更時間DTが必要になるかを決定することができる。これは例えば焦点調節装置17の事前較正により達成することができる。即ち、値hから値hまでの様々な焦点調節を実行し、新たな焦点位置に来るまでの時間を測定するのである。代わりに理論的なシステム観察やシミュレーションを利用してもよい。いずれにせよ、対(h,h)に焦点変更時間DTを割り当てる関数又は参照テーブルが結果として得られる。模範例として、最小の焦点位置hから最大の焦点位置hまで(又はその逆)の最大の位置変更に対応する値は50msである。図3の状況の場合に必要な焦点変更時間DTは対(h,h)から計算できる。ここでhは現在設定されている焦点位置である。ホームポジションにおいては焦点を中心位置hまで動かすことで、次の物体48のために必要な焦点変更時間DTを限定することができる。
【0045】
利用可能な焦点合わせ時間dtが必要な焦点変更時間DTと比べて十分であるとき、即ちdt≧DTであるときは、理想的な焦点位置が設定され、物体48が撮影位置に来たら直ちにカメラ10の性能の枠内で最適な鮮明度で撮影が実行される。問題となるのは利用可能な焦点合わせ時間dtが十分でない場合である。その場合は補償方法が適用される。即ち、理想的な焦点位置ではなく、より早く到達可能な焦点位置で画像を撮影するのである。これによれば多少の不鮮明さが甘受されるが、それは明確に定義されており、なおも画像撮影で所期の目的(例えばコード52の読み取り)を達成できるものである。なお許容しうる焦点ずれを(特にその都度の距離に割り当てられた被写界深度に基づいて)確定する方法については、後で図5を参照して説明する。
【0046】
さて、利用可能な焦点合わせ時間dtが不十分であり、どのくらいの焦点ずれがまだ許容できるかが分かっているとき、それぞれ個別に又は組み合わせて適用できる複数の補償方法がある。複数の補償方法を組み合わせるとは、例えば理想的な物体位置における若干不鮮明な画像ともはや完全に理想的ではない物体位置における鮮明な画像とを撮影するために、複数回の画像撮影を実行するということも意味し得る。
【0047】
なお許容される焦点ずれで以て、hよりも目下の焦点位置に近く、従ってより早く到達する焦点位置h’で画像撮影を行うことができる。1つの方法として、焦点位置を理想的な焦点位置hまで変更する操作を時間内に最後まで完遂できないことが明らかであるにも関わらずその操作を実行することが可能である。その場合は少なくとも焦点位置h’に到達したら直ちに早めに画像撮影を実行する。それに必要な焦点変更時間DT’<DTは予め決定可能であり、DT’の後にシャッターが切られる。画像撮影は焦点位置h’においてすぐに実行してもよいし、利用可能な焦点合わせ時間dtを更に使い切って、hとh’の間の焦点位置h”で画像撮影を実行してもよい。
【0048】
別の方法は、理想的な焦点位置の代わりに、なお許容しうる焦点ずれにより与えられる公差範囲又は被写界深度の両端の限界のうち近い方に焦点位置h’を設定すること、又は、利用可能な焦点合わせ時間d1のうちに辛うじてまだ到達可能な焦点位置h’をhとh’の間で設定することである。これがうまくいくのは、利用可能な焦点合わせ時間dtが少なくともそのような位置変更のために十分であって、そのために必要な焦点変更時間DT’を新たに決定できる場合だけである。ただし、それができない場合でもなお前述の被写界深度の限界にある焦点位置h’を設定し、そのときに初めて画像撮影を実行することも考えられる。その場合、物体52は若干進み過ぎてしまっているが、画像鮮明度が不十分であることが分かっている画像と違い、若干撮影が遅すぎた画像でもまだ完全に利用できる(例えばコード52をまだ含んでいる)可能性がある。いずれにせよ、その物体のずれは、焦点位置が理想的な焦点位置hにさえ一致するまで待った場合よりも小さい。この場合、その更に遅い時点において(特に追加の画像のために)画像撮影を行うことも考えられる。
【0049】
図4図3と同じように下方に向けられた検出領域14を持つカメラ10を再度示している。ただしここでは第1の物体48の高さhと明らかに異なる高さhを有する別の物体48aが間隔を詰めて後に続いている。この別の物体48aの撮影を時点tにおいて行う必要がある。この時点tは進むべき行程dから算出される。d、h及びtという量はd、h及びtと同様に計算されるが、当然ながら、距離センサ24がその別の物体48aを最初に検出したときに初めて決定可能になる。
【0050】
今度は利用可能な焦点合わせ時間がdt=t-tである。そして、物体48の撮影後に別の物体48aの撮影のために焦点位置をhからhへ変更しなければならず、このことから必要な焦点変更時間DTが算出される。これらの量を用いても図3と同様の説明が当てはまり、利用可能な焦点合わせ時間dtが短すぎる場合には、最大限にまだ焦点ずれが許容可能である焦点位置h’において画像撮影を行う。図4の状況は、物体の間隔d-d及び高さの差h-hによっては図3の状況よりも厳しくなることがあるから、前述の焦点変更による利益が非常に大きく、その焦点変更は必要とあれば理想的な焦点位置hに完全に到達し、しかもそれがより高速である。
【0051】
ここまで、どの程度の焦点ずれがまだ容認できるかという問題は単に持ち出したただけであった。これについて以下に詳しく検討する。その場合、純粋な光学的又は物理的な要求と用途固有の要求とを区別することができる。1つの方法は、設定された焦点位置と理想的な焦点位置の差がまだ被写界深度内にあれば、焦点ずれがまだ十分に小さいとみなすことである。ここで、その被写界深度の幅はその都度の焦点位置又はその都度の物体距離に対する依存性を示す。
【0052】
物理的な被写界深度DOF(h)は、DOF(h)~2hNc/fという式で近似できる。ここで、hはカメラ10と物体48の間の距離である。Nは受光光学系16の対物レンズの開口数fNumであり、従って絞りに依存する。cは錯乱円(Circle of Confusion)であり、容認される不鮮明さの度合い(例えば画像センサ18上の1画素)に相当する。そしてfは対物レンズの焦点距離である。故にこれらの多くは、既知であって固定された対物レンズの特徴量である。絞りや露光等、被写界深度に対する他の影響は固定したり最適に調節したりすることにより十分に排除できる。
【0053】
しかし、物理的な被写界深度DOF(h)には用途上の固有の要求が考慮されていない。それはコード読み取りの例を見れば明らかである。即ち、そこで最終的に重要なのは画像が物理的なコントラスト基準を満たすかではなく、コードを読み取ることができるかである。多くの場合、この用途固有の被写界深度DOFappは、用途固有のパラメータに依存する係数κを用いてDOFapp(h)=κDOF(d)とモデル化できる。ここで、典型的な用途固有のパラメータには、モジュールサイズ(例えばモジュール当たりの画素数で計測されるもの)、コードの種類、そして何より適用される復号アルゴリズムがある。これらを単純な係数κで模することができなくても、いずれにせよDOFappをシミュレーション又は実験で決めるという方法が残っている。
【0054】
図5は様々な焦点位置及び物体距離での物体48上のコード52の試行的な読み取りを描いた図である。明るい点58は試行的な読み取りの成功(GoodRead)を、暗い点60は不成功(NoRead)を表している。2本の線62は成功と不成功の境界に沿っており、該2本の線の距離区間が焦点位置毎又は物体距離毎に要求される用途固有の被写界深度DOFapp(d)を表している。
【0055】
このような図は、特定の枠組み条件に対して、先に挙げたコードの種類、モジュールサイズ、復号法、露光といったパラメータを考慮しつつ、実測又はシミュレーションにより作成することができる。これにより関数又はテーブル(Lookup Table: LUT)の形で関係規則が得られる。その規則から、制御及び評価ユニット38は、与えられた暫定的な距離値での被写界深度、そしてコードが読み取り可能になることがまだ保証されるようななお許容しうる焦点ずれを読み取ることができる。異なる枠組み条件に対して複数の関係規則を設けることで、状況及び用途と関連付けて、例えばコードの種類、モジュールサイズ、露光、使用されるデコーダ等に応じて適切ななお許容しうる焦点ずれを決めるようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5