(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】オートインジェクタシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
A61M5/20 550
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196140
(22)【出願日】2021-12-02
(62)【分割の表示】P 2020041954の分割
【原出願日】2009-05-20
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2008-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2008-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510307130
【氏名又は名称】アヴァント・メディカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビー・スレイト
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ダブリュー・バーク
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ジェイ・ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】コリー・エム・マーガーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シー・バーンズ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-230701(JP,A)
【文献】特開2003-180828(JP,A)
【文献】特開2007-127086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を注射するためのシステムであって、
インジェクタと、
薬剤を収容するための注射器を備える薬剤カセットと、
を備え、
前記インジェクタが、
前記薬剤カセットの先端方向で前記注射器を前進させるための第1モータと、
前記注射器から流体薬剤を吐出させるためのプランジャロッドと、
前記プランジャロッドを駆動するための第2モータと、
ユーザが当該システムの複数の異なる薬剤
送達時間のうちの1つを選択することを可能とするように、前記第2モータに動作可能に連結されたスイッチと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
当該システムの選択した前記薬剤
送達時間を自動的に維持するためのコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スイッチが、ユーザが当該システムの複数の異なる前記薬剤
送達時間に対応する複数の異なる速度のうちの1つに前記第2モータを設定するように、前記第2モータに動作可能に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スイッチが、ユーザが当該システムの3以上の前記薬剤
送達時間のうちの1つを選択することを可能とするように、前記第2モータに動作可能に連結されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
複数の異なる前記
薬剤送達時間が
、2.0秒以
上15.0秒以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記薬剤が
、1センチポアズという粘度を有する流体薬剤であり、
複数の異なる前記
薬剤送達時間が
、2.9秒以
上5.0秒以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記薬剤が
、19センチポアズという粘度を有する流体薬剤であり、
複数の異なる前記
薬剤送達時間が
、4.4秒以
上9.6秒以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記薬剤が
、29センチポアズという粘度を有する流体薬剤であり、
複数の異なる前記
薬剤送達時間が
、7.5秒以
上11.8秒以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記薬剤が
、19センチポアズという粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記薬剤が
、1センチポアズ以
上320センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤が
、5センチポアズ以
上40センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記薬剤が
、10センチポアズ以
上35センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記薬剤が
、15センチポアズ以
上30センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記薬剤が
、20センチポアズ以
上25センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記薬剤が
、16センチポアズ以
上42センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記薬剤が
、1センチポアズ以
上29センチポアズ以下の範囲にある粘度を有する流体薬剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
薬剤を注射するためのシステムであって、
インジェクタと、
薬剤を保持するための流体チャンバを有する薬剤カセットと、
を備え、
前記インジェクタが、
前記薬剤カセットの先端方向で前記流体チャンバを前進させるための第1モータと、
前記流体チャンバから流体薬剤を吐出させるためのプランジャロッドと、
前記プランジャロッドを駆動するための第2モータと、
ユーザが当該システムの複数の異なる薬剤
送達時間のうちの1つを選択することを可能とするように、前記第2モータに動作可能に連結されたスイッチと、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
当該システムの選択した前記薬剤
送達時間を自動的に維持するためのコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記スイッチが、ユーザが当該システムの複数の異なる前記薬剤
送達時間に対応する複数の異なる速度のうちの1つに前記第2モータを設定するように、前記第2モータに動作可能に連結されていることを特徴とする請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
前記スイッチが、ユーザが当該システムの3以上の前記薬剤
送達時間のうちの1つを選択することを可能とするように、前記第2モータに動作可能に連結されていることを特徴とする請求項17から19のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年5月20日に出願した米国特許出願第12/123888号及び2008年7月23日に出願した米国特許出願第12/178447号の優先権の利益を主張し、これらの開示のすべては、参考として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、皮下注射器から患者内に薬剤を注射するシステム及び方法に関する。より具体的には、本願は、オートインジェクタと、オートインジェクタと共に使用可能であり、注射前後で皮下注射器の注射針を隠すカセットと、に関する。
【背景技術】
【0003】
予備充填型の皮下注射器は、家庭用市場に対していくつかの利点がある。これら利点は、予備充填型の注射器が各薬剤について正確な必要用量を備えていることを含む。さらに、これらは、単に注射器のストッパを前進させることによって、容易に操作される。使用する特定の薬剤のコストの他に、予備充填型の注射器は、同様に経済的に製造される。その結果、これら利点すべては、予備充填型の注射器を商業的に魅力的である。
【0004】
それにもかかわらず、予備充填型の注射器は、市場において重大な欠点を有する。具体的には、多くのユーザは、露出した針を脅えるまたはユーザが注射を実行することが本質的に不可能であると感じる。露出している針を嫌悪しているため、並びに改善される多くの健康及び安全の問題のため、さまざまなタイプの注射器及び他のデバイスは、ユーザから針を隠すことと注射作業を自動化してユーザが注射を実行することを補助することとの具体的な目的のために開発されている。
【0005】
皮下注射器を用いて患者に流体薬剤を注射するため、一般的には3つの別個かつ異なる作業を実行しなければならない。これらは、1)針を患者に挿入することと、2)流体薬剤を注射器から患者に注射することと、3)注射を完了した後に針を引き抜くことと、である。各作業について、注射器にかかる力の強さ及び方向並びに力をかける場所は、作業ごとに異なる。例えば、針を挿入する作業と流体薬剤を注射する作業とを比較する。針の挿入は、注射器にかかる力が最小であることと、非常に短期間に力をかけることと、を必要とする。一方、薬剤の注射は、より大きな力をかけることを必要とする。さらに、この力は、注射器のプランジャにかけられなければならず、これは、主として比較的長期間となる。これら作業双方と比較すると、引き抜くことは、逆方向に力をかけることを必要とする。これら及び他の同様の考慮は、注射工程を自動化する場合に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2005/0277885号明細書
【文献】米国特許出願公開第2001/0005781号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動化した工程において注射器に力を発生させるバネは、従来、さまざまな目的で使用されている。しかしながら、バネの特性として、バネ力の強度及び方向が変更可能でない。その結果、バネは、いわゆる複数の作業を操作することに役立たない。これは、注射器の注射操作にわたって正確な制御が必要であり、かつ同方向で異なる強度の力が連続して必要である(例えば、針の挿入及び薬剤の注射)場合に、特にそうである。これは、異なる流体粘性を有する異なる薬剤を注射するために異なる期間で同一デバイスを使用することが望ましい状況において特に問題となりうる。
【0008】
上記機械的な考慮に加え、オートインジェクタの設計は、ユーザフレンドリーな配慮を必要とする。特に、注射器の注射針がユーザの視界から操作上隠されることは望ましい。好ましくは、この隠すことは、注射処置の前、間及び後で維持される。さらに、注射器が注射のために正確に位置決めされると注射器の操作がこれらの期間のみに制限されることは望ましい。
【0009】
したがって、使用中に注射針を隠し、注射処置中においてさまざまな力の要求を満たすことが可能であり、製造が比較的容易かつ高価でなく、かつ使用が容易である改良型の薬剤注射システムは、必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示において、予備充填型の皮下注射器から患者内に流体薬剤を注射するためのシステムは、予備充填された注射器があらかじめ組み込まれたカセットを採用する。この組み合わせにおいて、皮下注射器は、製造中にカセット内に組み込まれる、または受託サービス提供者によってその後に組み込まれる。いずれの場合でも、注射針は、カセットの内側に隠されており、エンドユーザの視界から隠されている。重要なことは、エンドユーザ(例えば流体薬剤を自己投与する患者)が必要な準備は、カセットを駆動機構に取り付けることだけである。
【0011】
構造的に、本開示のシステムは、針を有する予備充填型の注射器を想定しており、このシステムは、針を通して注射器から流体薬剤を吐出するためのストッパを有する。さらに、予備充填型の注射器は、注射針が視界から隠匿されかつ隠された所定位置でカセットに強固に保持されている。本開示から想定されるように、予備充填型の皮下注射器は、複数の異なる方法のいずれかで、隠匿位置において強固に保持されている。これらは、ラッチ機構、接着部または可撓性橋脚部(abutment)を有する。
【0012】
いったんカセットに予備充填型の皮下注射器を取り付けると、カセットは、駆動機構と係合する。詳細には、駆動機構は、2つの異なる機能を実行する2つの個別のモータを有する。第1モータは、注射針が隠される注射器の隠匿位置で注射器を係合させるために設けられている。そして、この係合している状態において、第1モータは、注射器及び注射針を隠匿位置から注射針が患者に挿入されるために伸長される伸長位置まで移動させる。針を患者に挿入している間、第2モータは、ストッパを注射器に押し付けて注射器から流体薬剤を吐出させるために設けられている。そして、注射を完全に終了したのち、第1モータは、注射器及び注射針を隠匿位置に引き戻す。重要なことは、注射器が引き戻されると、注射器は、カセットの内側において、再度隠匿位置で強固に保持される。このため、針は、注射処置中のすべての期間において視界から隠されたままである。さらに、上述のように、注射器は、カセットの内側で強固に保持され、注射針がカセットから不意に伸長しないことを保証する。
【0013】
動作において、エンドユーザは、あらかじめ組み込まれたカセットを駆動機構に取り付ける。そして、エンドユーザは、保護カバーを注射針から取り外し、システムを注射が行われる場所に位置付ける。そして、システムにあるボタンは、押下され、注射処置のために駆動機構を作動させる。注射を完了したのち、ここでは空になった注射器を有するカセットは、駆動機構から取り外され、廃棄される。
【0014】
本開示において、オートインジェクタシステムは、再使用可能なインジェクタと組み合わされて動作する使い捨てのカセットを有する。しかしながら、カセットをインジェクタに係合させる前に、予備充填型の注射器は、カセットに取り付けられかつ留められる。留められると、注射器は、ホーム位置においてカセットに保持される。本開示について、この予備充填型の注射器は、従来技術において公知の任意のタイプの注射器であってもよく、この注射器は、その先端部に注射針を有する流体チャンバと、流体チャンバ内に前進されるプランジャと、を有する。カセットが注射器と共にインジェクタと係合されると、システムは、使用の準備が整う。
【0015】
本開示のシステムの動作は、インジェクタに個別に取り付けられた2つの別個のモータを必要とする。これらモータが互いに機械的に独立しているが、これら2つのモータそれぞれの動作は、組織化されている。具体的には、第1モータは、注射器組立体全体の運動に作用する(すなわち、注射器チャンバ、注射針及びプランジャがすべて共に移動される)ために使用されている。一方、第2モータは、流体薬剤の注射を実施するために流体チャンバ内にプランジャを前進させるために採用されている。
【0016】
システムのデューティーサイクルにおいて、第1モータは、駆動ロッドを移動させて注射器と係合させる。この係合において、駆動ロッドは、同様にさもなければ注射器をホーム位置で保持するラッチを解放する。そして、注射器を解放したのち、第1モータは、注射器をカセットにおいて先端方向に前進させる。この運動により、注射針は、患者に挿入される。さらに、第1モータは、特定の針深さを達成すると針を急激に停止させる。そして、第1モータは、注射器から医薬薬剤を注射している間に針を安定させるのを補助するために使用される。
【0017】
上述のように、注射器からの医薬薬剤の注射は、第2モータを使用しながら達成される。具体的には、いったん針を患者に正確に挿入すると、第2モータは、プッシャを移動させて注射器のプランジャに対して付勢し、プランジャを注射器の流体チャンバ内へ前進させる。重要なことは、第2モータは、注射処理に従うために、プランジャを流体チャンバ内に所定の速度で前進させるようにプログラムされている。
【0018】
注射を完了したのち、第2モータは、プッシャを引き抜く。そして、第1モータは、再度使用される。具体的には、第1モータは、ここでは患者から注射針を引き抜くために、かつ注射器をカセットのホーム位置に復帰させるために使用され、このホーム位置では、注射器は、カセットに再び留められる。そして、カセットは、インジェクタから取り外され、廃棄される。
【0019】
第1及び第2モータの一致団結した動作を制御するため、システムは、インジェクタに取り付けられたマイクロプロセッサを有する。重要なことは、マイクロプロセッサは、モータをさまざまな目的でさまざまな力及びさまざまな速度で動作させる。より具体的には、第1モータは、針を迅速に(例えば約0.1メートル/秒(m/s)から約1.0m/s)で動作させなければならないが、そのようにするために大きな力を必要としない。同様に、第1モータによる針の引き抜きは、最小限の力を必要とする。しかしながら、第1モータと異なり、第2モータは、主として、流体薬剤を注射するためにより大きい力を発生させる必要がある。また、したがって、これは、同様に、主としてより遅い速度で動作する。さらに、そして最も重要なことは、さまざまな注射(すなわち、第2モータによる注射器プランジャの前進)は、さまざまな注射速度を必要とすることがある。このため、第2モータは、マイクロプロセッサによって速度制御される必要がある。
【0020】
上述した要素と同様に、本開示におけるシステムは、従来技術で公知のタイプの容量性皮膚センサを採用してもよい。使用する場合、このようなセンサは、システムが正確に注射のために位置決めされているかをユーザが確かめることを可能とする。詳細には、金属ホイルは、インジェクタの最も先端部に位置付けられており、ホイルが患者の皮膚表面と接触したときに容量性の信号を形成する。この信号の機能は、実際には2要素である。第1に、これは、システムが正確に位置決めされていない場合に初期的な動作を防止するために使用される。そして、第2に、これは、これが注射中に不正確に位置決めされなくなる場合に、システムの動作を妨害するために使用される。
【0021】
本明細書でさらに開示されていることは、患者に薬剤を注射するためのシステムである。システムは、インジェクタと、薬剤カセットと、を備える。薬剤カセットは、筐体と、筐体内で第1及び第2位置間で移動可能なスリーブと、薬剤を収容するチャンバと注射器チャンバから延在する注射針とを備える注射器と、を備える。注射器チャンバは、スリーブ内に少なくとも部分的に配置されており、注射針は、注射器チャンバとは反対側にある皮膚貫通端部を有する。皮膚貫通端部は、スリーブが第1位置にあるときに筐体内に配置されており、皮膚貫通端部は、スリーブが第2位置にあるときに筐体から外に伸長する。インジェクタは、カセットに取り外し可能に取り付けられる表面と、カセットが表面に取り付けられるとスリーブの所定部分と係合可能な第1端部を有するモータ駆動されるリンクと、を備える。リンクは、スリーブを第1位置から第2位置まで移動させるために設けられている。
【0022】
まださらに本明細書に開示されていることは、薬剤を注射するためのシステムである。システムは、インジェクタと、薬剤を収容するための注射器を備える薬剤カセットと、を備える。インジェクタは、注射器から流体薬剤を吐出させるプランジャロッドと、プランジャロッドを駆動させるモータと、ユーザがモータを複数のさまざまな速度の1つに設定することを可能とするためにモータに動作可能に結合されたスイッチと、を備える。複数のさまざまな速度は、システムの複数のさまざまな注射速度に対応する。
【0023】
同様に本明細書に開示されていることは、オートインジェクタ用の薬剤カセットである。薬剤カセットは、筐体と、第1及び第2位置間で筐体内を移動可能なスリーブと、薬剤を収容するチャンバと注射器チャンバから延在する注射針とを備える注射器と、を備える。注射器チャンバは、少なくとも部分的にスリーブ内に配置されている。注射針は、注射器チャンバとは反対側にある皮膚貫通端部を有し、皮膚貫通端部は、スリーブが第1位置にあるときに筐体内に配置され、皮膚貫通端部は、スリーブが第2位置にあるときに筐体から外に延在する。スリーブの所定部分は、カセットをオートインジェクタにまたはオートインジェクタ内に取り付けると、オートインジェクタの駆動リンクと係合する。
【0024】
さらに本明細書に開示されていることは、患者に薬剤を注射するためのオートインジェクタである。インジェクタは、カセットを取り外し可能に取り付ける表面であってカセットが薬剤を収容する注射器を保持するスリーブを表面に配置させる表面と、カセットが表面に取り付けられるとカセットの一部に係合可能な第1端部と第1位置から第2位置までスリーブを移動させるリンクとを有するモータ駆動されるリンクと、を備える。
【0025】
同様に開示されていることは、インジェクタと薬剤カセットとを備え、患者に薬剤を注射するシステムである。薬剤カセットは、筐体と、薬剤を収容するチャンバと注射器チャンバから延在する注射針とを備える注射器と、を備え、注射針は、注射器チャンバとは反対側にある皮膚貫通端部を有し、皮膚貫通端部は、注射器が第1位置にあるときに筐体内に配置され、皮膚貫通端部は、注射器が第2位置にあるときに筐体から外に延在する。インジェクタは、カセットを取り外し可能に取り付ける表面と、カセットを表面に取り付けると注射器の所定部分と係合可能な第1部分を有するモータ駆動されるリンクと、注射器を第1位置から第2位置まで移動させるリンクと、を有する。
【0026】
同様に開示されていることは、筐体と注射器とを備えるオートインジェクタ用の薬剤カセットである。注射器は、薬剤を収容するチャンバと、注射器チャンバから延在する注射針と、を備え、注射針は、注射器チャンバとは反対側にある皮膚貫通端部を有し、皮膚貫通端部は、注射器が第1位置にあるときに筐体内に配置され、皮膚貫通端部は、注射器が第2位置にあるときに筐体から外に延在する。注射器の所定部分は、カセットをオートインジェクタにまたはオートインジェクタ内に取り付けると、オートインジェクタの駆動リンクと係合する。
【0027】
さらに開示されていることは、インジェクタと薬剤カセットとを備え、患者に薬剤を注射するシステムである。インジェクタは、カセットを取り外し可能に取り付ける表面と、カセットを針注射モードで動作させる第1端部を有するモータ駆動されるリンクと、を備える。
【0028】
さらに開示されていることは、インジェクタと薬剤カセットとを備え、薬剤を注射するシステムである。インジェクタは、注射器から流体薬剤を吐出させるプランジャロッドと、プランジャロッドを駆動させるモータと、モータに動作可能に結合され、ユーザがシステムの複数の異なる薬剤注射速度の1つを選択することを可能とするスイッチと、を備える。
【0029】
ここで、本開示の態様に対して詳細に言及され、その例は、添付の図面で図示されており、全体にわたって、同様の参照符号は、同様の要素を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】薬剤を患者に注射するオートインジェクタシステムの例示的な実施形態を示す斜視図である。
【
図2】あらかじめ組み込まれかつ予備充填された皮下注射器と共に
図1のオートインジェクタシステムのカセットを示す拡大斜視図である。
【
図3A】あらかじめ組み込まれかつ予備充填された皮下注射器を示す
図1における線3-3に沿う断面図であって、予備充填された皮下注射器が針隠匿(基端)位置にある、断面図である。
【
図3B】
図3Aに示すあらかじめ組み込まれたカセットを示す断面図であって、薬剤送達後に注射器が針伸長(先端)位置にある、断面図である。
【
図4】カセットの別の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図5】あらかじめ組み込まれたカセットの代替の実施形態を示す
図1の線3-3に沿う断面図である。
【
図6】カセットがオートインジェクタと係合していることを示すオートインジェクタシステムの別の例示的な実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6のオートインジェクタのカセットとその構成要素とを示す分解斜視図である。
【
図8A】
図6のオートインジェクタシステムのカセットとモータ/駆動システムとを示す斜視図であって、デューティーサイクルの最初と終了とにおける位置にある、斜視図である。
【
図8B】
図8Aに示す構成要素を示す図であって、患者内に注射針を挿入するためにモータ/駆動システムの第1モータによって注射器をカセット内で前進させている、図である。
【
図8C】
図8Bに示す構成要素を示す図であって、患者内に注射器から流体薬剤を注射するためにモータ/駆動システムの第2モータによってプランジャを注射器内で前進させている、図である。
【
図9】再使用可能なオートインジェクタと対応する使い捨てのカセットとを備えるオートインジェクタシステムのさらに別の例示的な実施形態を示す拡大斜視図である。
【
図10A】
図9に示すオートインジェクタと同様のオートインジェクタの内部フレームの例示的な実施形態を示す斜視上面図であって、送達モータ/駆動システムを取り付けた、斜視上面図である。
【
図10B】
図10Aに示す内部フレームを示す斜視底面図であって、注射モータ/駆動システムを取り付けた、斜視底面図である。
【
図10C】
図10Aに示す内部フレームを示す斜視上面図であって、オートインジェクタ制御部材を取り付けた、斜視上面図である。
【
図10D】
図10Aに示す内部フレームを示す斜視底面図であって、オートインジェクタ制御部材を取り付けた、斜視底面図である。
【
図11A】
図9に示すカセットと同様のカセットを示す分解上面図である。
【
図11B】
図9に示すカセットと同様のカセットを示す分解側面図である。
【
図11C】
図9に示すカセットと同様のカセットを示す分解底面図である。
【
図15】センチポアズ(centipoise)で3つの異なる粘性からなる溶液のために、低速、中速及び高速の送達モータ速度設定で設定されたオートインジェクタシステムの3つの異なるサンプルにおける注射速度を示す表である。
【
図16】内側スリーブを排除したカセットの代替の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、薬剤をユーザ/患者(システムのユーザもしくは別人または動物)に注射するオートインジェクタシステムの例示的な実施形態が示されており、参照符号100が付されている。システム100は、全体的に、使い捨てのカセット112と、再使用可能な駆動機構またはオートインジェクタ114と、を有する。オートインジェクタ114は、オートインジェクタ114でカセット112を受けかつ保持するように寸法付けられたクレードル116を有する。オートインジェクタ114は、第1(注射)モータ118(破線で示す)と、第2(搬送)モータ120(同様に破線で示す)と、を有する。モータ118及び120は、限定されないがステッパモータ及びリラクタンスモータを含む任意の適切な公知のタイプのモータを備えてもよい。モータ118及び120それぞれは、モータの回転運動を線形運動に変換する駆動システムを有する。このような駆動システムは、限定されないがリードスクリュー/ウォームギア駆動システム、ラック・ピニオン駆動システム及びモータ118及び120が個別に軸方向の力をカセット112の内容物にかけることを可能とする他の線形駆動または伝達システムを含む。これら力は、軸122にほぼ沿って向けられる必要がある。これら力を発生させるためのモータ118及び120の作動は、オートインジェクタ114に設けられたボタン124を操作することによって実現される。
【0032】
図2を参照すると、カセット112は、皮下注射器128を保持する中空の管状をなす構造体を有する筐体126を備え、皮下注射器は、流体チャンバ132の先端部に取り付けられた注射針130を備える。従来の指グリップ134は、流体チャンバ132の基端部に設けられている。同様に、ストッパまたはプランジャ136は、流体チャンバ132の基端部に配置されており、針130を通って流体チャンバ132から流体薬剤を吐出させる。保護カバー138は、システム100が操作使用中でないときに針130を覆うために設けられてもよく、キャップ140は、保護カバー138を把持するために採用されている。
【0033】
システム100の動作前に、カセット112には、注射器128があらかじめ組み込まれており、この注射器には、所望の薬剤(例えば流体薬剤)が適切な用量で予備充填されている。カセット112をあらかじめ組み込む前に、保護カバー138は、注射器128にある針130を覆って位置付けられている。そして、予備充填された注射器128は、筐体の基端部142を通って筐体126内に挿入される。次に、キャップ140は、筐体126の先端部144に挿通され、キャップ140を保護カバー138に係合する。
【0034】
(予備充填された注射器128をあらかじめ組み込んだ)カセット112は、
図1に示すように、単純にカセット112をオートインジェクタのクレードル116に挿入することによって、オートインジェクタ114に取り付けられる。挿入されると、カセット112の筐体126に形成された対向する突起部(突起部146aのみ示す)は、凹所148a及び148bそれぞれに係合し、カセット112をオートインジェクタ114に固定する。
【0035】
1つの例示的な実施形態において、
図3Aに示すように、予備充填された注射器は、カセット112の内側に強固に保持されており、注射器128の注射針130は、カセット112の内側に隠され、これにより、カセット112の筐体126における弾性腕部152a及び152bの内面にそれぞれ形成された対向する隆起部150a及び150bによって、ユーザ/患者の視界から隠される(針隠蔽位置または基端位置)。隆起部150a及び150bは、第1モータ118の駆動システムがカセット112の筐体126を通って注射器128を押圧し、
図3Bに示すように、注射針130を針隠匿(基端)位置から針伸長(先端)位置まで移動させるにしたがって、注射器128によってかけられた軸方向の力によって弾性腕部152a及び152bが外方に湾曲するまで、ホーム位置(針隠匿位置)において注射器128を強固に保持する。この先端位置において、注射器128は、カセットの筐体126の内面に形成された停止部153a及び153bによってカセット112内に保持される一方、注射針130は、ユーザ/患者に挿入するためにカセットの筐体126から伸長する。
【0036】
1つの例示的な実施形態において、第1モータ118の駆動システムは、第1モータ118が注射器128ひいては注射針130を伸長(先端)位置から後退させることを可能とする態様で、注射器128と係合し、これにより、注射針130をその隠匿(基端)位置に復帰させ、注射器128は、隆起部150a及び150bと弾性腕部152a及び152bとによってホーム位置において筐体126内に強固に保持される。
【0037】
代替の実施形態において、単一のモータを、第1及び第2モータ118及び120に替えて使用してもよい。単一のモータを使用することは、モータの回転運動を線形運動に変換して線形運動を注射器128またはストッパ136に選択的に付与することが可能である適切な駆動部または伝達部を必要とする。
【0038】
図4は、カセット112の代替の実施形態を示しており、このカセット112は、内側スリーブ154と、筐体156と、を有する。内側スリーブ154は、中空でほぼ管状をなす構造体であってルーメン158を画定する構造体である。互いに軸方向で位置合わせされた基端側突出部160及び先端側突出部162は、内側スリーブ154の外面に形成されている。筐体156は、ルーメン164と軸方向に位置合わせされたスロット166を画定する。弾性腕部168a及び168bは、筐体156に形成され、スロット166の基端開口端部に向けて延在するように位置付けられている。弾性腕部168a及び168bは、それぞれ爪部170a及び170bと傾斜台部172a及び172bとを有して形成されている。弾性腕部168a及び168bとこれらの対応する爪部170a及び170b並びに傾斜台部172a及び172bとは、ラッチ機構を形成する。
【0039】
図4に示すカセットは、1つの例示的な実施形態において、内側スリーブ154を筐体156のルーメン164内に挿入し、内側スリーブ154にある基端側突出部160が弾性腕部168a及び168bの爪部170a及び170b内に位置決めされかつ保持され、そして皮下注射器128を内側スリーブ154のルーメン158に挿入することによって、注射器128があらかじめ組み込まれている。これは、注射器128の注射針130をカセット112内の隠匿(基端)位置に配置する。続いて、筐体156を通る注射器128の運動は、針隠匿(基端)位置から針伸長(先端)位置まで注射針130を移動させており、第1モータ118の駆動システムによって実現される。1つの例示的な実施形態において、第1モータ118の駆動システムは、内側スリーブ154の基端側突出部160に当接して押圧する棒部(図示略)を有してもよく、これにより、腕部168a及び168bを拡開させ、したがって、基端側突出部160をこれらの把持から解放する。そして、内側スリーブ154は、内側スリーブ内で強固に保持されている注射器128と共に、筐体156のルーメン164を通って先端方向に移動される。先端側への運動は、先端側突出部162がスロット166の端部受面174に接触するまで続く。注射器128の注射針130は、ここで、針伸長(先端)位置にある。続いて、第1モータ118の駆動システムの棒部は、基端側突出部に引張力をかけて筐体156のルーメン164を通って基端方向に内側スリーブ154を引き抜くために使用される。この基端への運動は、内側スリーブ154の基端側突出部160が再度爪部170a及び170bと係合するまで続き、これにより、注射器128をホーム位置に復帰させ、このため、注射針130を対応する針隠匿(基端)位置に配置する。
【0040】
図5は、カセット112のさらに別の実施形態を示している。この実施形態において、接着部176は、筐体126の内面に配置されており、注射器128を針隠匿(基端)位置で強固に保持する。接着部176または同様のタイプの拘束素子は、
図5に示すように、カセット112の注射器128と筐体126との間でいずれにも直接使用されてもよい。接着部176は、注射器128を選択的に解放し、そして、第1モータ118の駆動システムによって注射器128にかかる押圧力または引張力を受けて注射器128を再度接着する。
【0041】
システム100の動作の1つの例示的な方法において、あらかじめ組み込まれたカセット112は、オートインジェクタ114のクレードル116に位置付けられ、このクレードルは、この注射器128(
図3A、
図3B及び
図5)またはカセット112の内側スリーブ154の基端側突出部160(
図4)と係合する。注射前に、キャップ140をカセット112から取り外す。キャップ140が注射器128の針130を覆う保護カバー138に取り付けられているので、保護カバー138を同様に取り外す。システム100は、ここで注射の準備が整う。
【0042】
システム100を注射部位(図示略)に位置付けた状態で、オートインジェクタ114のボタン124を押下する。ボタン124を押下にすることにより、第1モータ118の線形駆動システムは、注射器128(
図3A、
図3B及び
図5)またはカセット112の内側スリーブ154の基端側突出部(
図4)に押圧力をかけさせられ、注射針130が針隠匿(基端)位置にあるホーム位置から注射針130が針伸長(先端)位置にある注射位置まで注射器128を移動させ、これにより、注射器128の針130を注射のためにユーザ/患者の組織内に突き通す。このとき、第2モータ120の線形駆動システムは、注射器128のストッパ136を押圧し、注射器128の流体チャンバ132から薬剤を吐出させる。注射を完了した後、第1モータ118は、再度作動されて注射器128(
図3A、
図3B及び
図5)またはカセット112の内側スリーブ154の基端側突出部160(
図4)に引張力をかけ、注射針130が針伸長(先端)位置にある注射位置から注射針130が針隠匿(基端)位置にあるホーム位置まで注射器128を引く。そして、カセット112は、伸長した注射器128と共にオートインジェクタ114のクレードル116から取り外され、廃棄される。
【0043】
図6は、参照符号200で示されるオートインジェクタシステムの別の例示的な実施形態を示している。図示のように、システム200は、全体的に、使い捨てのカセット212と、再使用可能なオートインジェクタ214と、を有する。さらに、
図6において破線で示すように、モータ/駆動システム216とマイクロコンピュータまたはコントローラ218とは、オートインジェクタ214の内側に取り付けられている。マイクロコンピュータ218は、オートインジェクタ214にあるボタン220を押下することによって作動される。作動すると、マイクロコンピュータ218は、モータ/駆動システムのカセット212との相互作用のために、モータ/駆動システム216の動作を制御する。
【0044】
図7に示すように、カセット212は、筐体222と、内側スリーブ224と、薬剤を保持するための流体チャンバ228と注射針230と流体チャンバ228内で移動可能であり注射針230を通してチャンバ228から薬剤を吐出させるプランジャ232とを有する皮下注射器226と、を有する。注射器226には、プランジャ232と接触することを可能とする開口部234が形成されている。注射器226は、内側スリーブ224に固定して結合されており、この組合体(すなわち注射器226及び内側スリーブ224)は、筐体222と協働してカセット212を構成する。
【0045】
さらに
図7を参照すると、内側スリーブ224は、突出部または突起部236を有する。筐体222には、オートインジェクタ214(
図6)と係合するために寸法付けられた固定部材238が形成されている。固定部材238は、オートインジェクタ214と係合し、カセット212をモータ/駆動システム216との動作配列に位置付ける。カセット212は、システム200のデューティーサイクル動作中にオートインジェクタ214に固定して保持され、その使用後にオートインジェクタ214から選択的に取り外されてもよい。
【0046】
図7に示すように、筐体222には、ラッチ機構240が形成されている。ラッチ機構240は、一対の対向する弾性腕部242a及び242bを有し、この一対の弾性腕部には、爪部244a及び244bがそれぞれ形成されている。図示のように、弾性腕部242a及び242bは、筐体222の側面248に沿って延在するスロット246の基端部に向けて延在する。
【0047】
組み立てると、カセット212は、一体ユニットを形成し、注射器の流体チャンバ228内の薬剤がある限りのみに使用されることを意図しており、その後廃棄される。組み立て前に、注射器226の流体チャンバ228には、所定用量の薬剤が予備充填される。そして、予備充填された注射器226は、注射器が固定して保持される内側スリーブ224に挿入される。そのため、内側スリーブ224の運動は、注射器226の対応する運動をもたらす。そして、組合体(すなわち注射器226及び内側スリーブ224)は、筐体222に結合される。このように結合すると、内側スリーブ224の突起部236は、弾性腕部242a及び242b間で爪部244a及び244bに嵌合する。したがって、注射器226の注射針230は、針隠匿(基端)位置にあるカセット212の筐体222の内側に保持されかつカセット212内に隠される。この構成において、カセット212は、
図6に示すように、オートインジェクタ214内にまたは上に実質的に取り付けられてもよい。
【0048】
図8Aから
図8Cをまとめて参照しながら、システム200の動作の1つの例示的な方法をここで説明する。
図8Aから
図8Cではオートインジェクタ214を図示していないが、図示されているカセット212とモータ/駆動システム216は、
図6に示すようなオートインジェクタ214内で動作上位置付けられていると考えられている。
図8Aに示すモータ/駆動システム216は、第1(注射)モータ250及び第2(送達)モータ254を有する。モータ250及び254は、ステッパモータ及びリラクタンスモータを含むがこれに限定されない適切な周知のタイプのモータである。モータ250及び254それぞれは、モータの回転運動を線形運動に変換する駆動システムを有する。このような駆動システムは、限定されないがリードスクリュー/ウォームギア駆動システム、ラック・ピニオン駆動システム及び他の線形駆動または伝達システムを含む。第1モータ250に関連する駆動システムは、第1モータ250によって移動される駆動ロッド252を有する。第2モータ254に関連する駆動システムは、第2モータ254によって移動されるプッシャ256を有する。第1モータ250及び第2モータ254の動作は、双方ともマイクロコンピュータ218によって制御されている。
【0049】
概略的に、システム200のデューティーサイクルは、カセット212の構造における一連の連続的な変化として想定される。システム200において、これら構造は、第1モータ250及び第2モータ254の個別の動作によって引き起こされる。これら動作に応じて、システム200についての完全なデューティーサイクルは、
図8Aから
図8B、
図8Cに示す構造の順で、そして、
図8Cから
図8B及び
図8Aに戻る逆順で構成する。
【0050】
図8Aは、ホーム位置にある注射器226を有するカセット212を示しており、このホーム位置は、注射針230を針隠匿(基端)位置に配置する。このホーム位置において、内側スリーブ224の突起部236は、筐体222にあるラッチ機構240によって保持される。したがって、注射器226の注射針230は、カセット212内で保持されかつカセット212内に隠される。
図8Bは、第1モータ250を介して注射位置へ移動される注射器226を有するカセット212を示しており、この第1モータは、駆動ロッド252を前進させ、注射針230は、オートインジェクタ214の先端部260にある穴部258を通ってカセット212から伸長する(
図6)。この前進により、駆動ロッド252は、ラッチ機構240と接触して突起部236を解放し、これにより、ここでラッチ解除された注射器226と筐体222にある内側スリーブ224との先端側への運動を可能とする。この運動は、マイクロコンピュータ218によって制御されかつ十分な力で実行され、注射針230がユーザ/患者の皮膚組織へ貫通することを可能とする。好ましくは、ホーム位置(
図8A)から注射位置(
図8B)までの注射器226のこの運動は、約0.1m/sから約1.0m/sの速度で実行される。さらに、第1モータ250は、事前にプログラムされてもよい。
【0051】
そして、注射器226が注射位置(
図8B)にある状態で、マイクロコンピュータ218は、第2モータ254を作動させてプッシャ256を流体チャンバ228(
図7)においてプランジャ232に対して移動させる。マイクロコンピュータ218は、主として流体薬剤である薬剤を注射するのに適した速度で流体チャンバ228からプランジャを前進させるように事前にプログラムされてもよい。
【0052】
図8Cは、注射の完了後の注射器組立体200を示している。上述のように、注射デューティーサイクルの完了は、プッシャ256を引くことを必要とする。プッシャ256のこの引き抜きは、第2モータ254によって達成される。いったんプッシャ256を引き抜くと(
図8B)、第1モータ250は、マイクロコンピュータ218によって再度作動され、駆動ロッド252を引き抜く。そして、駆動ロッド252は、突起部236を後退させ、ラッチ機構240と係合させ、これにより、注射器226をホーム位置に、かつ注射針230を針隠匿(基端)位置に配置する。そして、カセット212は、オートインジェクタ214から取り外され、廃棄される。
【0053】
システム200の追加の機能として、センサ262をオートインジェクタ214の先端部に設けてもよい。1つの例示的な実施形態において、センサ262は、カセット212の穴部258に近接して位置付けられる。センサ262は、1つの例示的な実施形態において、センサ262とユーザ/患者の皮膚との間で測定される容量に反応するタイプである。センサ262は、オートインジェクタ214がユーザ/患者の皮膚と物理的に接触するときを測定する。マイクロコンピュータ218は、このような接触が示された場合のみにシステム200のデューティーサイクルを動作させる。そうでなければ、システム200は、動作しない。
【0054】
図9は、全体的に参照符号300で示されるオートインジェクタシステムのさらに別の例示的な実施形態を示す。システム300は、概して、使い捨てのカセット312と、再使用可能なオートインジェクタ314と、を有する。オートインジェクタ314は、カセット312を受けるための切欠部315aを有する筐体315を有する。オートインジェクタの筐体315は、一対の対向する横方向タブ312aを受けるための凹所315bをさらに有し、このタブは、カセット312がオートインジェクタの筐体315の切欠部315aに位置付けられると、カセット312の基端部に形成されている。オートインジェクタの筐体315の凹所315bとカセット312の横方向のタブ330aとは、協働してオートインジェクタ314にカセット312をしっかりと保持し、オートインジェクタ314を動作したときにカセット312の長手方向の運動を防止する。また、オートインジェクタの筐体315は、システム300を作動させるための注射ボタン320と、システム300の状態を示すための複数の表示発光部321(例えばLED)と、を有する。皮膚検出センサ374は、オートインジェクタ314の先端部がユーザ/患者の皮膚と接触したときを検出するためにオートインジェクタ314の先端部に設けられている。オートインジェクタシステム300は、このような接触が示される場合のみ動作する。カセット312は、カセット312の先端部にある開口部(図示略)を挿通するキャップ340を有し、このキャップは、以下でより詳細に説明されるように、カセット312内に収容される注射器の注射針を覆う保護針シールドを把持するために使用される。
【0055】
ここで
図10Aから
図10Dを、最初に
図10Aを参照すると、オートインジェクタ314は、細長い内部フレーム316を有し、このフレームは、オートインジェクタの筐体315内に強固に固定されている(
図9)。フレーム316は、カセット支持セクション316aと、モータ/駆動システム・コントローラ(MDC)支持セクション316bと、を有する。カセット支持セクション316aは、筐体の切欠部315aの底部を形成し、カセット312のための取付面を画定する(
図9)。モータ/駆動システム349は、内部フレーム316のMDC支持セクション316bに強固に取り付けられている。モータ/駆動システム349は、第1(注射)モータ350(
図10B)と第2(送達)モータ354(
図10A)とを有する。第1及び第2モータ350、354は、限定されないがステッパモータ及びリラクタンスモータを含む任意の適切な公知のタイプのモータを備えてもよい。第1及び第2モータ350、354それぞれは、モータの回転運動を線形運動に変換するための駆動システムに関連付けられている。このような駆動システムは、限定されないがリードスクリュー/ウォームギア駆動システム、ラック・ピニオン駆動システム、及び回転モータ運動を線形運動に変換可能な伝達システムを含む。
図10Bに示すように、第1モータ350は、ラック部材352a及びピニオン353bを有するラック・ピニオン駆動システム352に関連付けられており、
図10Aに示すように、第2モータ354に関連付けられる駆動システムは、ギアドライブ356a及びリードスクリュー356bを備えるリードスクリュー駆動システム356を備える。
【0056】
再び
図10Bを参照すると、ラック・ピニオン駆動システム352のラック部材352bの先端部は、駆動リンク352cを形成する。
図9に示すように、駆動リンク352cは、カセット支持セクション316a内の長手方向に延在する細長い開口部316bを通って上方に延在する自由端部352dを有し、カセット312の注射器挿入機構を動作させる。第1モータ350を動作させると、ラック・ピニオン駆動システム352は、駆動リンク352cを線形の態様で移動させ、駆動リンクの自由端部352dは、カセット支持セクション316aの長手方向開口部316b内で先端側及び基端側に移動する。第1位置センサ353は、以下で説明するように、駆動リンク352cの位置及び速度を検出するために設けられている。
【0057】
再び
図10Aを参照すると、リードスクリュー駆動システム356のリードスクリュー356bは、細長いプッシャ356cを駆動する。細長いプッシャ356は、カセット312の薬剤送達機構を動作する自由端部356dを有する。第2モータ354を動作させると、リードスクリュー駆動システム356は、プッシャ356aを線形の態様で移動させ、プッシャの自由端部356dは、先端側または基端側の方向でオートインジェクタ314内を長手方向に移動する。第2位置センサ355は、以下で説明するように、プッシャ356aの位置及び速度を検出するために設けられている。
【0058】
ここで
図10Cを参照すると、内部フレーム316のMDC支持セクション316bは、同様にオートインジェクタ314の所定の制御部材を支持する。これら制御部材は、マイクロコンピュータまたはコントローラ319を形成する印刷回路基板組立体318を有する。印刷回路基板組立体318は、上述した注射ボタン320及び表示発光部321と、圧電ブザー322の形態をなす音響表示部と、を有する。コントローラ319は、第1及び第2モータ350及び354の動作を制御する1以上のあらかじめ決定されたプログラムを実行する。また、第1及び第2モータ350及び354とオートインジェクタ314のすべての制御部材とに給電する電源部323は、内部フレーム316のMDC支持セクション316bによって支持されている。1つの例示的な実施形態において、電源部323は、限定されないが、ステップアップDC-DCコンバータのような制御回路と、充電可能なリチウム電池のようなバッテリと、を備える。
【0059】
図10Dに示すように、内部フレームのカセット支持セクション316aは、オートインジェクタ314の特定の制御部材を支持する。これら制御部材には、カセット検出スイッチ370、速度選択スイッチ372及び上述した皮膚センサ374が含まれる。電源部323は、これら制御部材の所要電力に対応する。可撓性相互接続部371は、カセット検出スイッチ370、速度選択スイッチ372及び皮膚センサ374を印刷回路基板組立体318に接続するために設けられている。
【0060】
図9に示すように、カセット検出スイッチ370は、1つの例示的な実施形態において、作動ボタン370aによって動作開始され、この作動ボタンは、カセット支持セクション316aにある開口を貫通し、同一物をカセット支持セクション316aに取り付けたときにカセット312と係合する。速度選択スイッチ372は、カセット支持セクション316aにある別の開口を貫通するボタンまたは同様のアクチュエータ372aによって動作開始される。皮膚センサ374の先端部374aは、オートインジェクタの筐体315の先端部を形成し、この先端部は、ユーザ/患者の皮膚と接触する。
【0061】
図11Aから
図11Cをまとめて参照すると、カセット312は、筐体330と、筐体330内でスライド移動可能な内側スリーブ331と、内側スリーブ331内に固定して配置された皮下注射器326と、上述したキャップ340と、を有する。注射器326は、所定粘度かつ所定用量の流体薬剤が予備充填された流体チャンバ326aと、流体チャンバ326aの先端部から延在する注射針326b(破線で示される)と、注射針326bを覆う取り外し可能な針シールド326cと、注射針326bを通ってチャンバ326aから薬剤を吐出するために流体チャンバ326a内で移動可能なプランジャ326dと、を有する。流体薬剤の粘性は、主として、約1センチポアズから約320センチポアズの間の範囲であるが、320センチポアズを超える粘性を有する流体薬剤を有する注射器は、第2モータ354及び/または駆動システム356の適切な選択によって使用されてもよい。
【0062】
図12に示すように、内側スリーブ331は、内側スリーブ331の基端部に形成された一対のロック爪部331aを有する。ロック爪部331aは、注射器326の流体チャンバ326aの基端部に形成された指フランジ326eを係合するように構成されており、注射器326を内側スリーブ331に固定して保持する。
【0063】
図13及び
図14をまとめて示すと、内側スリーブ331のロック爪部331aの一方は、突出部または突起部331bを有しており、この突出部は、カセット筐体330に形成されたラッチ機構360と係合する。ラッチ機構360は、一対の向かい合う弾性ロック腕部360aを有しており、この腕部は、筐体330の側面に形成された長手方向に細長いスロット361の基端部から基端側に延在する。ロック腕部360aは、ロック爪スロット360bを形成し、突起部331bは、このスロットを貫通する。
【0064】
カセット312は、1つの例示的な実施形態において、まず、予備充填された注射器326を内側スリーブ331内に挿入して流体チャンバ326aの指フランジ326eがロック爪部331aにロックして係合することにより、組み立てられる。そして、予備充填された注射器326を有する内側スリーブ331は、カセット312の筐体330内に挿入され、内側スリーブ331の突起部331bは、互いに離間して筐体330のロック腕部360a間でスライドし、そして、ロック腕部360aの爪スロット360bに入る。いったん組み立てると、注射器326は、このときホーム位置にあり、注射器326の注射針326bは、針隠匿(基端)位置においてカセット312の筐体330内に隠される。代替の実施形態において、カセット312は、まず、空の内側スリーブ331をカセット312の筐体330内に挿入し、そして、予備充填された注射器326を空の内側スリーブ331内に挿入することによって、組み立てられる。
【0065】
第1位置センサ353は、駆動リンク352cの位置及び速度を検出するために設けられている。第1の例示的な実施形態において、注射器326がホーム位置にあるときを識別するために、及び注射器326がブレーキ位置、すなわち針伸長(先端)位置直前におけるカセット内の位置にあるときを検出するために、第1位置センサ353によって提供される位置情報を使用してもよい。注射器は、主として、注射針326bがユーザ/患者の皮膚を貫通した直後にブレーキ位置に入る。ブレーキ位置情報により、コントローラ319が、第1モータ350を迅速かつ内側スリーブ331/注射器326が注射位置を規定する端部停止部に衝突するときの衝撃及び振動を最小化する態様で停止させることを可能とする。第1位置センサ353によって提供される速度情報を、ホーム位置から注射位置まで移動する注射器の速度を維持するために使用してもよい。
【0066】
速度選択スイッチ372は、それぞれが異なるユーザ/患者の選択可能な薬剤注射速度(秒で測定される)に対応する2以上の設定を有する。これにより、ユーザ/患者にとって最も快適な薬剤注射速度を選択することが可能となる。1つの例示的な実施形態において、ユーザ/患者が速度選択スイッチ372のアクチュエータ372aを用いて2以上の薬剤注射速度の1つを選択すると、ユーザ/患者は、実際には第2モータ354に印加する電圧を2以上の異なる電圧の1つに設定する。しかしながら、実際の薬剤注射速度または送達速度は、第2モータ354が受けた負荷力(すなわち、プッシャ356cによってプランジャ326dにかかる負荷力)に依存する。さらに、負荷力は、注射針の寸法及び/または長さ、薬剤の粘性、プランジャ/流体チャンバの摩擦、モータ・駆動システムの許容誤差、及びカセットの許容誤差、並びに他のシステムファクタに依存する。第2モータ354が受けた負荷力が増大すると、第2モータ354の速度は、一定の電圧設定において減少し、このため、オートインジェクタシステム300の送達時間/速度を減少させる。同様に、第2モータ354が受ける負荷力が減少すると、第2モータ354の速度は、一定の電圧設定において増大し、このため、オートインジェクタシステム300の送達時間/速度を増大させる。したがって、1つの例示的な実施形態において、オートインジェクタ314のコントローラ319は、第2モータ354が受ける負荷力のバラツキを補償するフィードバック制御プログラムを有するようにあらかじめプログラムされており、このため、第2モータ354の薬剤注射速度を維持する。したがって、オートインジェクタシステム300は、第2モータ354の各速度設定に対して、一定の送達時間/速度を提供することが可能である。1つの例示的な実施形態において、コントローラ319によって実行されるフィードバック制御プログラムは、位置センサ355を介してプッシャ356cの速度を測定し、そしてリアルタイムで第2モータ354の電圧を増大または減少させて一定のプッシャ速度を維持しひいては選択された速度設定に対して一定の送達時間/速度を提供することによって第2モータ354の速度設定を維持する。
【0067】
以下の説明は、オートインジェクタシステム300の動作についての1つの例示的な方法を説明している。まず、ユーザ/患者は、速度スイッチ372のアクチュエータ372aを所望の速度設定に設定する。速度スイッチ372は、ユーザ/患者が第2モータ354をオートインジェクタシステム300の複数の異なる薬剤注射速度(秒で)の1つに設定することを可能とする。
図15は、オートインジェクタシステム300の3つの異なるサンプル(CM2-1、CM2-2、CM2-3)における注射速度(秒で)を示す表であり、これらサンプルは、センチポアズ(cP)で3つの異なる粘性(1cP、19cP及び29cP)の溶液について低速、中速及び高速の送達モータ速度設定で設定されている。1つの例示的な実施形態において、第2モータ354及び駆動システム356は、注射器326のプランジャ326dに約34パウンド(pound)までの力(この力は、注射器326の流体チャンバ326aの内側における約700psiと同等である)をかけるように選択されている。他の実施形態において、第2モータ354及び駆動システム356は、注射器326のプランジャ326dに34パウンドを超える力をかけるように選択されてもよい。
【0068】
次に、カセット312は、カセット312をオートインジェクタの筐体315の切欠部内に配置することによって取り付けられ、カセット312は、カセット筐体330の側方タブ330aがオートインジェクタの筐体315の凹所315b内に配置される状態で、カセット支持部材316a上に載置される。このように取り付けると、カセット312は、カセット検出スイッチ372のアクチュエータ372aを押下し、カセットの内側スリーブ331の突起部331bは、駆動リンク352cの自由端部352dと係合する。カセット検出スイッチのアクチュエータ372aを押下すると、コントローラ319は、音響表示部322を鳴らし、表示発光部321を所定の態様で点滅させ、この態様は、システムを使用する準備が整っていることを示す。そして、ユーザ/患者は、カセット312からキャップ340を取り外し、このため、注射器326から針シールドを取り外し、カセット312の内側からこれを引き抜く。次に、ユーザ/患者は、オートインジェクタ314の先端部をユーザ/患者の皮膚に当接して配置する。皮膚センサがユーザ/患者の皮膚を検出した場合、コントローラ319は、表示発光部を間断なく発光させ、ユーザ/患者に注射の準備が整っていることを示す。ユーザ/患者は、第1回転方向で第1モータ350を活動させる注射ボタン320を押下することによって、注射を開始し、この第1回転方向は、駆動リンク352cを先端方向に前進させ、このため、内側スリーブ331の突起部331bをラッチ機構360からラッチ解除し、これにより、ここで注射器326を収容するラッチ解除された内側スリーブ331のカセット筐体330に対する先端側への運動を可能とする。したがって、駆動リンク352cは、注射器326を針326bが針隠匿(基端)位置にあるホーム位置から針326bが針伸長(先端)位置にありかつユーザ/患者の皮膚組織内に達する注射位置まで移動させる。第1モータ350及び駆動システム352双方は、約0.01m/sから約5.0m/sの注射器注射速度(ホーム位置から注射位置まで移動する注射器の速度)をもたらすが、他の注射器注射速度は、適切なモータ及び/または駆動システムを選択することによって可能である。他の実施形態において、注射器注射速度の範囲は、約0.1m/sから約1.0m/sである。いくつかの実施形態において、第2速度位置スイッチ(図示略)は、ユーザ/患者が2以上の注射器注射速度を選択して針の注射をより快適とすることを可能とするために設けられてもよい。
【0069】
ここで注射器326が注射位置にある状態で、コントローラ319は、第2モータ354を第1回転方向で活動させ、この第1回転方向は、注射器326の流体チャンバ326a内にあるプランジャ326dに対して先端方向にプッシャ356cを前進させる。一実施形態において、コントローラ319は、流体薬剤の注射の完了後にオートインジェクタ314を停止させ、圧力を注射器326で消散させることを可能とし、すべての薬剤は、送達され、薬剤の「あとだれ(dribbling)」が発生しない。流体薬剤の注射が完了すると、コントローラ319は、第2モータ354を第2回転方向で活動させ、この第2回転方向は、プッシャ356cを基端方向に引き、このため、プッシャ356cを注射器326を流体チャンバ326aから部分的に引き抜き、注射針がユーザ/患者から引き抜かれることを可能とする。いったんプッシャ356cを部分的に引き抜くと、コントローラ319は、第1モータ350を第2回転方向に活動させ、この第2回転方向は、駆動リンク352cを基端方向に引き戻す。駆動リンク352cの自由端部が内側スリーブ331の突起部331bに結合しているので、駆動リンク352cは、使用済みの注射器326を収容する内側スリーブ331をホーム位置まで引き戻し、このホーム位置は、突起部331bが再びラッチ機構360によって留められ、このため、注射針326bを再度針隠匿(基端)位置に配置する。そして、コントローラ319は、第2モータ354を再び第2回転方向に活動させ、プッシャ356cを注射器326の流体チャンバ326aから完全に引き抜く。ここで、カセット312は、オートインジェクタ314から取り除かれ、廃棄されてもよい。
【0070】
オートインジェクタシステム300は、所望の薬剤注射速度を提供するように安定して構成されている。オートインジェクタシステムの1つの例示的な実施形態において、薬剤注射速度の範囲は、約2.0秒から約15.0秒である。
【0071】
オートインジェクタシステムの1つの例示的な実施形態において、薬剤は、約1センチポアズの粘性と約2.9秒から約5.0秒の範囲の薬剤注射速度とを有する流体薬剤である。
【0072】
オートインジェクタシステムの別の例示的な実施形態において、薬剤は、約19センチポアズの粘性と約4.4秒から約9.6秒の範囲の薬剤注射速度とを有する流体薬剤である。
【0073】
オートインジェクタシステムのさらなる例示的な実施形態において、薬剤は、約29センチポアズの粘性と約7.5秒から約11.8秒の範囲の薬剤注射速度とを有する流体薬剤である。
【0074】
オートインジェクタシステムの1つの例示的な実施形態において、薬剤は、約19センチポアズの粘性を有する流体薬剤である。
【0075】
オートインジェクタシステムの別の例示的な実施形態において、薬剤は、約1センチポアズから約320センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0076】
オートインジェクタシステムのさらに別の例示的な実施形態において、薬剤は、約5センチポアズから約40センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0077】
オートインジェクタシステムのまた別の例示的な実施形態において、薬剤は、約10センチポアズから約35センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0078】
オートインジェクタシステムのさらなる例示的な実施形態において、薬剤は、約15センチポアズから約30センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0079】
オートインジェクタシステムのさらにさらなる例示的な実施形態において、薬剤は、約20センチポアズから約25センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0080】
オートインジェクタシステムのさらにさらなる例示的な実施形態において、薬剤は、約16センチポアズから約42センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0081】
オートインジェクタシステムのさらにさらなる例示的な実施形態において、薬剤は、約1センチポアズから約29センチポアズの間の粘性を有する流体薬剤である。
【0082】
図16は、参照符号326’が付されたカセットの代替の実施形態を示している。
図11Aから
図11C及び
図12から
図14の実施形態において示される内側スリーブは、削除され、注射器326’の流体チャンバ326a’には、カセット筐体330に形成されたラッチ機構360と係合する突出部または突起部326pが設けられている。オートインジェクタ314の駆動リンク352cの自由端部352d(
図9)は、突起部326pと係合し、注射器326’をホーム位置から注射位置まで移動させる。
【0083】
オートインジェクタシステム及びその要素が例示的な実施形態で説明されているが、これに限定されない。むしろ、添付の特許請求の範囲は、オートインジェクタシステム及びその要素の他の変形例及び実施形態を含むように広く解釈されるべきであり、これは、システム及びその要素の等価物の領域及び範囲から逸脱することなく当業者によってなされる。
【0084】
[付記項1]
流体薬剤を患者に注射するためのシステムであって、
駆動機構と、
針を有する皮下注射器であって、当該皮下注射器に前記流体薬剤があらかじめ充填されており、当該皮下注射器が当該皮下注射器から前記針を通って流体を吐出するためのストッパを有する、皮下注射器と、
前記皮下注射器を収容しかつ保持するカセットであって、当該カセットが前記駆動システムに取り付けられると、第1位置と第2位置との間で当該カセットにおいて前記皮下注射器が運動するために、前記皮下注射器が前記駆動機構と係合される、カセットと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項2]
前記第1位置が、前記皮下注射器の前記針を前記カセットの内側に隠す基端位置であり、
前記第2位置が、前記流体薬剤の注射のために、前記針が前記カセットから伸長する先端位置であることを特徴とする付記項1に記載のシステム。
[付記項3]
前記駆動機構が、
前記基端及び前記先端位置間で前記皮下注射器を移動させるために前記皮下注射器と係合する第1モータと、
前記皮下注射器が前記先端位置にある間に前記皮下注射器から前記流体薬剤を吐出させるために前記ストッパを押圧する第2モータと、
を備えることを特徴とする付記項2に記載のシステム。
[付記項4]
前記カセットが、
前記皮下注射器を保持する内側スリーブと、
前記基端位置と前記先端位置との間における前記内側スリーブの運動中に前記内側スリーブを支持する筐体であって、
前記内側スリーブが当該筐体に選択的に係合して前記内側スリーブを強固に保持し、かつ前記内側スリーブを当該筐体から解放して前記内側スリーブを有する前記注射器の前記基端位置と前記先端位置との間においてその後に運動するために、前記駆動機構と係合可能である、筐体と、
を備えることを特徴とする付記項3に記載のシステム。
[付記項5]
前記筐体が、軸を規定する壁部を有しかつ第1及び第2端部を有する中空管であり、前記中空管の前記壁部が、前記中空管の前記第1及び第2端部間に延在する細長いスロットを有し、
前記カセットが、
前記筐体の前記壁部に形成された弾性腕部であって、当該弾性腕部に形成された爪部を有し、当該弾性腕部が前記筐体の前記スロット内に前記爪部を延在させるために付勢されている、弾性腕部と、
前記筐体の前記爪部と選択的に係合するために、前記内側スリーブから前記筐体のスロット内に径方向外方に延在する突出部と、
を備えることを特徴とする付記項4に記載のシステム。
[付記項6]
一対の前記弾性腕部をさらに備え、
前記弾性腕部が、前記内側スリーブにある前記突出部と協働して係合するために前記スロットにわたって互いに向かい合っていることを特徴とする付記項5に記載のシステム。
[付記項7]
前記皮下注射器の前記針を覆って位置付けられた保護カバーと、
前記保護カバーと係合可能なキャップであって、当該キャップを前記筐体から取り外したときに当該キャップと共に前記保護カバーをその後に取り外される、キャップと、
をさらに備えることを特徴とする付記項4に記載のシステム。
[付記項8]
前記カセットに取り付けられ、前記駆動機構の作用に応じて、前記基端位置から選択的に解放しかつ前記基端位置と再度係合するために前記基端位置で前記皮下注射器を保持する接着手段をさらに備えることを特徴とする付記項3に記載のシステム。
[付記項9]
前記カセットに形成されて前記皮下注射器を前記基端位置で保持し、かつ前記駆動機構の作動に応じて前記皮下注射器を前記基端位置から解放する弾性隆起部をさらに備えることを特徴とする付記項3に記載のシステム。
[付記項10]
予備充填された皮下注射器から流体薬剤を吐出するシステムであって、
前記皮下注射器が、針と、前記針を通って当該皮下注射器から前記流体薬剤を吐出させるストッパと、を有し、
当該システムが、
保持手段であって、当該保持手段の第1位置で前記皮下注射器を保持し、前記針を隠す、保持手段と、
前記第1位置と前記流体薬剤の注射のために前記針が前記保持手段から伸長する第2位置との間で前記保持手段において前記皮下注射器を移動させる移動手段と、
前記ストッパを押圧し、前記皮下注射器が前記第2位置にある間に前記皮下注射器から前記流体薬剤を吐出させる押圧手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項11]
前記移動手段が、前記押圧手段と組み合わせて、駆動手段を構成することを特徴とする付記項10に記載のシステム。
[付記項12]
前記保持手段が、カセットであり、
前記カセットが、前記駆動機構と選択的に係合されていることを特徴とする付記項11に記載のシステム。
[付記項13]
前記皮下注射器を保持する内側スリーブと、
前記第1位置と前記第2位置との間の前記内側スリーブの移動中に前記内側スリーブを保持する筐体であって、前記内側スリーブが当該筐体と選択的に係合して前記第1スリーブを前記第1位置で強固に保持し、前記内側スリーブを前記筐体から解放するため及びその後に前記第1位置と前記第2位置との間で前記内側スリーブと共に前記皮下注射器を移動させるために前記駆動機構と係合可能である、筐体と、
を備えることを特徴とする付記項12に記載のシステム。
[付記項14]
前記筐体が、軸を規定しかつ第1端部及び第2端部を有する壁部を有する中空管であり、前記中空管の前記壁部が、前記中空管の前記第1及び第2端部間に延在する長手方向のスロットを有し、
前記カセットが、
前記筐体の前記壁部に形成された弾性腕部であって、当該弾性腕部に形成された爪部を有し、当該弾性腕部が前記爪部を前記筐体の前記スロット内に延在させるために付勢される、弾性腕部と、
前記筐体の前記爪部と選択的に係合するために、前記内側スリーブから前記筐体の前記スロット内に径方向外方に延在する突出部と、
をさらに備えることを特徴とする付記項13に記載のシステム。
[付記項15]
前記カセットに取り付けられ、前記駆動機構の作用に応じて、前記第1位置から選択的に解放しかつ前記第1位置と再度係合するために前記第1位置で前記皮下注射器を保持する接着手段をさらに備えることを特徴とする付記項12に記載のシステム。
[付記項16]
前記カセットに形成され、前記駆動機構の作動に応じて、前記皮下注射器を前記基端位置で保持しかつ前記皮下注射器を前記基端位置から解放する弾性隆起部をさらに備えることを特徴とする付記項12に記載のシステム。
[付記項17]
皮下注射器から流体薬剤を吐出する駆動機構であって、
前記皮下注射器が、針と、当該皮下注射器から前記針を通って前記流体薬剤を吐出させるストッパと、を有し、
前記皮下注射器が、カセットと係合され、当該皮下注射器の前記針を隠し、
当該駆動機構が、
前記皮下注射器の前記針が前記カセットの内側において隠匿状態にある間に前記カセットと係合する筐体と、
前記カセットにおいて前記皮下注射器と前記針とをその前記隠匿位置から前記針が露出される伸長位置まで移動させるために前記筐体に取り付けられた第1モータと、
前記皮下注射器の前記針がその前記伸長位置にある間に、前記ストッパを押圧し、前記皮下注射器から前記流体薬剤を吐出するために前記筐体に取り付けられた第2モータと、
を備えることを特徴とする駆動機構。
[付記項18]
前記カセットが、
前記皮下注射器を保持する内側スリーブと、
前記内側スリーブが前記隠匿位置と前記伸長位置との間で移動している間に前記内側スリーブを支持する筐体であって、前記内側スリーブが、当該筐体と選択的に係合されて前記内側スリーブを前記隠匿位置で強固に保持し、当該筐体から前記内側スリーブを解放するためにかつその後に前記皮下注射器を前記内側スリーブと共に前記隠匿位置と前記伸長位置との間で移動させるために前記第1モータと係合可能である、筐体と、
を備えることを特徴とする付記項17に記載の駆動機構。
[付記項19]
前記カセットに取り付けられ、前記第1モータの作動に応じて、前記隠匿位置から選択的に解放しかつ前記隠匿位置に再度係合するために前記隠匿位置で前記皮下注射器を保持する接着手段をさらに備えることを特徴とする付記項17に記載の駆動機構。
[付記項20]
前記カセットに形成され、前記第1モータの作動に応じて、前記皮下注射器を前記隠匿位置で保持しかつ前記皮下注射器を前記隠匿位置から解放する弾性隆起部をさらに備えることを特徴とする付記項17に記載の駆動機構。
[付記項21]
流体薬剤を患者に注射するシステムであって、
ラッチ機構を有するカセットと、
皮下注射器であって、当該皮下注射器を前記カセットに保持するために前記ラッチ機構と係合可能である、皮下注射器と、
インジェクタであって、当該インジェクタに前記カセットを選択的に保持するための手段を有するインジェクタと、
前記インジェクタに取り付けられた第1モータであって、当該第1モータが、前記注射器を前記カセットから選択的に留めかつラッチ解除するために前記カセットと係合可能であり、第1位置と第2位置との間で前記カセットにおいてラッチ解除された前記注射器を移動させるために前記注射器と係合可能である、第1モータと、
前記インジェクタに取り付けられた第2モータであって、当該第2モータが、前記注射器から前記流体薬剤を吐出するために前記注射器と係合可能である、第2モータと、
前記第1及び第2モータの組織的な制御のために前記インジェクタに取り付けられたコンピュータと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項22]
前記皮下注射器が、
前記流体薬剤を保持する注射器チャンバと、
前記注射器チャンバから延在する注射針と、
前記注射器チャンバ内に前進するためにスライド可能に取り付けられて前記注射器チャンバから前記注射針を通して前記流体薬剤を吐出するプランジャと、
を備えることを特徴とする付記項21に記載のシステム。
[付記項23]
前記第1位置が、引き抜かれかつ前記カセットによって隠された注射針によって特徴付けられ、
前記第2位置が、前記注射器から前記流体薬剤を吐出させるために、前記注射針を前記カセットからかつ前記インジェクタから伸長させることによって特徴付けられることを特徴とする付記項22に記載のシステム。
[付記項24]
留められた前記注射器が、前記カセットにおいて前記第1位置で強固に保持されることを特徴とする付記項23に記載のシステム。
[付記項25]
デューティーサイクルが、連続的に、
前記第1位置から前記第2位置まで所定速度でラッチ解除された前記注射器を移動させるために前記第1モータをコンピュータ制御することと、
前記注射器から前記流体薬剤を吐出するために所定速度で前記注射器チャンバ内に前記プランジャを前進させるために前記第2モータをコンピュータ制御することと、
前記第2位置から前記第1位置まで前記注射器を引き抜くために、かつラッチを作動させて前記注射器を前記カセットにおける前記第1位置で強固に保持するために、前記第1モータをコンピュータ制御することと、
を必要とすることを特徴とする付記項24に記載のシステム。
[付記項26]
前記第1位置から前記第2位置まで前記注射器を前進させるための前記所定速度が、約0.1m/sから約1m/sであることを特徴とする付記項25に記載のシステム。
[付記項27]
前記カセットには、開口部が形成され、前記カセットから前記注射針が伸長することを可能とし、
当該システムが、前記開口部に近接して前記インジェクタに取り付けられた皮膚センサをさらに備え、前記開口部が患者の皮膚に当接して位置付けられると接触信号を生成することを特徴とする付記項23に記載のシステム。
[付記項28]
前記カセットが、前記インジェクタにある前記保持手段と係合可能なカセット本体部と、前記第1位置と前記第2位置との間で運動するために前記カセット本体部にスライド可能に取り付けられたスリーブと、をさらに備え、
前記注射器が、前記スリーブに前記スリーブと共に運動するために強固に保持されており、
前記ラッチ機構が、前記カセット本体部に形成された第1部分と、前記スリーブに形成された第2部分と、を有することを特徴とする付記項21に記載のシステム。
[付記項29]
患者に流体薬剤を注射するためのシステムであって、
前記流体薬剤を保持するための注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射針と、前記注射器チャンバ内に前進するためにスライド可能に取り付けられて前記注射
器チャンバから前記注射針を通って前記流体薬剤を吐出させるプランジャと、を有する皮下注射器と、
前記皮下注射器を保持するための支持手段であって、前記注射器が、当該支持手段において、前記注射針が引き抜かれかつ当該支持手段内に隠される第1位置と前記注射針が当該支持手段から伸長して前記皮下注射器から前記流体薬剤を吐出させる第2位置との間で選択的に移動可能である、支持手段と、
前記支持手段に係合された駆動手段であって、当該駆動手段が分岐され、前記支持手段において前記皮下注射器を移動させるための第1モータと、前記皮下注射器内に前記プランジャを前進させて前記皮下注射器が前記第2位置にあるときに前記流体薬剤を吐出させるための第2モータとを有する、駆動手段と、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項30]
前記支持手段が、
カセットと、
前記皮下注射器を前記第1位置で保持するために前記カセットに形成されたラッチ機構と、
を備えることを特徴とする付記項29に記載のシステム。
[付記項31]
前記カセットが、
インジェクタにある保持手段と係合可能なカセット本体部と、
前記第1位置と前記第2位置との間で移動するために前記カセット本体部にスライド可能に取り付けられたスリーブと、
を備え、
前記皮下注射器が、前記スリーブと共に移動するために前記スリーブに強固に保持され、
前記ラッチ機構が、前記カセット本体部に形成された第1部分と、前記スリーブに形成された第2部分と、を有することを特徴とする付記項30に記載のシステム。
[付記項32]
前記第1モータが、前記カセットから前記注射器を選択的に留めかつラッチ解除するために前記カセットに係合可能であることを特徴とする付記項30に記載のシステム。
[付記項33]
前記第1モータ及び前記第2モータを組織的に制御するために前記駆動手段に取り付けられたコンピュータをさらに備えることを特徴とする付記項30に記載のシステム。
[付記項34]
デューティーサイクルが、連続的に、
前記第1位置から前記第2位置まで所定速度でラッチ解除された前記注射器を移動させるために前記第1モータをコンピュータ制御することと、
前記注射器から前記流体薬剤を吐出するために所定の力でかつ所定速度で前記注射器チャンバ内に前記プランジャを前進させるために前記第2モータをコンピュータ制御することと、
前記第1位置から前記第2位置まで前記注射器を引き抜くために、かつラッチを作動させて前記注射器を前記カセットにおける前記第1位置で強固に保持するために、前記第1モータをコンピュータ制御することと、
を必要とすることを特徴とする付記項33に記載のシステム。
[付記項35]
前記第1位置から前記第2位置まで前記注射器を前進させるための前記所定速度が、約0.1m/sから約1m/sであることを特徴とする付記項34に記載のシステム。
[付記項36]
患者に注射器から流体薬剤を注射する方法であって、
皮下注射器をカセットに係合する工程であって、前記カセットが、前記カセットにおい
て前記皮下注射器を保持するためのラッチ機構を備え、前記皮下注射器が、前記流体薬剤を保持するための注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射針と、前記注射器チャンバ内に前進して前記流体薬剤を前記注射器チャンバから前記注射針を通って吐出させるためにスライド可能に取り付けられたプランジャと、を有する、工程と、
インジェクタにカセットを保持する工程であって、前記インジェクタが、前記皮下注射器を前記カセットから選択的に留めかつラッチ解除するために前記カセットと係合可能でありかつ前記注射針が引き抜かれかつ前記カセットで隠される第1位置と前記注射針が前記カセットから延在する第2位置との間で前記カセットにおいてラッチ解除された前記皮下注射器を移動させるために前記皮下注射器と係合可能な第1モータと、前記皮下注射器が前記第2位置にあるときに前記皮下注射器から前記流体薬剤を吐出させるために前記皮下注射器と係合可能な第2モータと、前記第1及び第2モータを組織的に制御するために取り付けられたコンピュータと、を有する、工程と、
前記インジェクタを作動させ、前記流体薬剤を前記皮下注射器から吐出させるためにデューティーサイクルを実行する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
[付記項37]
前記デューティーサイクルが、連続的に、
前記第1位置から前記第2位置まで所定速度でラッチ解除された前記注射器を移動させるために前記第1モータを制御する工程と、
前記注射器から前記流体薬剤を吐出するために所定の力でかつ所定速度で前記注射器チャンバ内に前記プランジャを前進させるために前記第2モータを制御する工程と、
前記第1位置から前記第2位置まで前記注射器を引き抜くために、かつラッチを作動させて前記注射器を前記カセットにおける前記第1位置で強固に保持するために、前記第1モータを制御する工程と、
を備えることを特徴とする付記項36に記載の方法。
[付記項38]
前記第1位置から前記第2位置まで前記注射器を前進させるための前記所定速度が、約0.1m/sから約1m/sであることを特徴とする付記項37に記載の方法。
[付記項39]
前記作動させる工程を監視する工程であって、前記カセットには、当該カセットから前記注射針が伸長することを可能とする開口部と、前記開口部に近接して前記インジェクタに取り付けられ、前記開口部が患者の皮膚に当接して位置付けられたことを判断するために接触信号を生成する皮膚センサと、が形成されている、工程をさらに備えることを特徴とする付記項36に記載の方法。
[付記項40]
前記カセットが、前記インジェクタにある前記保持手段と係合可能なカセット本体部と、前記第1位置と前記第2位置との間で移動するために前記カセット本体部にスライド可能に取り付けられたスリーブと、を備え、
前記皮下注射器が、前記スリーブと共に移動するために前記スリーブに強固に保持され、
前記ラッチ機構が、前記カセット本体部に形成された第1部分と、前記スリーブに形成された第2部分と、を有することを特徴とする付記項36に記載の方法。
[付記項41]
患者に薬剤を注射するシステムであって、当該システムが、
インジェクタと、薬剤カセットと、を備え、
前記薬剤カセットが、
筐体と、
第1及び第2位置間において前記筐体内で移動可能なスリーブと、
前記薬剤を収容するための注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射針と、を備える注射器であって、前記注射器チャンバが前記スリーブ内に少なくとも部分的
に配置され、前記注射針が前記注射器チャンバとは反対側にある皮膚貫通端部を有し、前記スリーブが前記第1位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体内に配置され、前記スリーブが前記第2位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体から外部に延在する、注射器と、
を備え、
前記インジェクタが、
前記カセットが取り外し可能に取り付けられる表面と、
前記カセットが前記表面に取り付けられると前記スリーブの所定部分と係合可能な第1端部と、前記スリーブを前記第1位置から前記第2位置まで移動させるリンクと、を有するモータ駆動されるリンクと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項42]
前記インジェクタが、前記注射器チャンバ内に収容された前記薬剤を前記注射針を通って特定の送達速度でその注射端部から外部に吐出させるためのモータ駆動されるプランジャロッドをさらに備えることを特徴とする付記項41に記載のシステム。
[付記項43]
前記プランジャロッドを駆動するためのモータをさらに備え、
前記モータが、速度調整可能であり、前記注射針の注射端部を通って外部に吐出される前記薬剤の送達速度をユーザが選択することを可能とすることを特徴とする付記項42に記載のシステム。
[付記項44]
前記薬剤の選択された送達速度を自動的に維持するためのコントローラをさらに備えることを特徴とする付記項43に記載のシステム。
[付記項45]
前記スリーブの前記所定部分が、前記スリーブの表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項41に記載のシステム。
[付記項46]
前記筐体が、前記スリーブが前記第1位置にあるときに前記突出部と解放可能に係合するラッチを有することを特徴とする付記項45に記載のシステム。
[付記項47]
前記ラッチが、爪スロットを有する少なくとも1つの弾性腕部を有することを特徴とする付記項46に記載のシステム。
[付記項48]
前記筐体が、前記スリーブが前記第1位置にあるときに前記スリーブの前記所定部分と解放可能に係合するラッチを有することを特徴とする付記項41に記載のシステム。
[付記項49]
前記ラッチが、爪スロットを有する少なくとも1つの弾性腕部を有することを特徴とする付記項48に記載のシステム。
[付記項50]
薬剤を注射するシステムであって、当該システムが、
インジェクタと、
薬剤を収容する注射器を備える薬剤カセットと、
を備え、
前記インジェクタが、前記注射器から流体薬剤を吐出させるためのプランジャロッドと、ユーザが当該システムの複数の異なる薬剤注射速度の1つを選択することを可能とするために、モータに選択的に結合されたスイッチと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項51]
当該システムの選択された送達速度を自動的に維持するコントローラをさらに備えることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項52]
複数の異なる注射速度が、約2.0秒から約15.0秒の範囲にあることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項53]
前記薬剤が、約1センチポアズの粘性を有する流体薬剤であり、
複数の異なる注射速度が、約2.9秒から約5.0秒の範囲にあることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項54]
前記薬剤が、約19センチポアズの粘性を有する流体薬剤であり、
複数の異なる注射速度が、約4.4秒から約9.6秒の範囲にあることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項55]
前記薬剤が、約29センチポアズの粘性を有する流体薬剤であり、
複数の異なる注射速度が、約7.5秒から約11.8秒の範囲にあることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項56]
前記薬剤が、約19センチポアズの粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項57]
前記薬剤が、約1センチポアズから約320センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項58]
前記薬剤が、約5センチポアズから約40センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項59]
前記薬剤が、約10センチポアズから約35センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項60]
前記薬剤が、約15センチポアズから約30センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項61]
前記薬剤が、約20センチポアズから約25センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項62]
前記薬剤が、約16センチポアズから約42センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項63]
前記薬剤が、約1センチポアズから約29センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項50に記載のシステム。
[付記項64]
オートインジェクタ用の薬剤カセットであって、当該薬剤カセットが、
筐体と、
第1及び第2位置間で移動可能なスリーブと、
薬剤を収容する注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射針と、を備える注射器であって、前記注射器チャンバが少なくとも部分的に前記スリーブ内に配置され、前記注射針が前記注射器チャンバの反対側にある皮膚貫通端部を有し、前記スリーブが前記第1位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体内に配置され、前記スリーブが前記第2位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体から外に延在する、注射器と、
を備え、
当該薬剤カセットが前記オートインジェクタに取り付けられると、前記スリーブの一部
が、前記オートインジェクタの駆動リンクと係合することを特徴とする薬剤カセット。
[付記項65]
前記スリーブの一部が、当該スリーブの表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項64に記載の薬剤カセット。
[付記項66]
前記筐体が、前記スリーブが前記第1位置にあるときに、前記突出部と解放可能に係合するラッチを有することを特徴とする付記項65に記載の薬剤カセット。
[付記項67]
前記ラッチが、爪スロットを有する少なくとも1つの弾性を有するロック腕部を有することを特徴とする付記項66に記載の薬剤カセット。
[付記項68]
前記筐体が、前記スリーブが前記第1位置にあるときに、前記スリーブの一部と解放可能に係合するラッチを有することを特徴とする付記項64に記載の薬剤カセット。
[付記項69]
前記ラッチが、爪スロットを有する少なくとも1つの弾性を有するロック腕部を有することを特徴とする付記項68に記載の薬剤カセット。
[付記項70]
患者に薬剤を注射するためのインジェクタであって、当該インジェクタが、
カセットが取り外し可能に取り付けられる表面であって、前記カセットが前記薬剤を収容する注射器を保持するスリーブを当該表面に配置させる、表面と、
前記カセットが前記表面に取り付けられると前記カセットの一部に係合可能な第1端部と、前記第1位置から前記第2位置まで前記スリーブを移動させるリンクと、を有するモータ駆動されるリンクと、
を備えることを特徴とするインジェクタ。
[付記項71]
前記注射器内に収容された前記薬剤を具体的な薬剤送達速度で吐出させるモータ駆動されるプランジャロッドをさらに備えることを特徴とする付記項70に記載のインジェクタ。
[付記項72]
前記プランジャロッドを駆動させるモータをさらに備え、
前記モータが、ユーザ薬剤送達速度を選択可能とするために速度調整可能であることを特徴とする付記項71に記載のインジェクタ。
[付記項73]
選択された薬剤送達速度を自動的に維持するコントローラをさらに備えることを特徴とする付記項72に記載のインジェクタ。
[付記項74]
前記リンクを駆動させる第2モータをさらに備えることを特徴とする付記項71に記載のインジェクタ。
[付記項75]
前記リンクを駆動させるモータをさらに備えることを特徴とする付記項70に記載のインジェクタ。
[付記項76]
前記薬剤が、約19センチポアズの粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項77]
前記薬剤が、約1センチポアズから約320センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項78]
前記薬剤が、約5センチポアズから約40センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項79]
前記薬剤が、約10センチポアズから約35センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項80]
前記薬剤が、約15センチポアズから約30センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項81]
前記薬剤が、約20センチポアズから約25センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項82]
前記薬剤が、約16センチポアズから約42センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項83]
前記薬剤が、約1センチポアズから約29センチポアズの範囲にある粘性を有する流体薬剤であることを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項84]
患者に薬剤に注射するためのシステムであって、
当該システムが、インジェクタと、薬剤カセットと、を備え、
前記薬剤カセットが、
筐体と、
前記薬剤を収容する注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射針と、を備える注射器であって、前記注射針が前記注射器チャンバの反対側にある皮膚貫通端部を有し、当該注射器が前記第1位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体内に配置され、当該注射器が前記第2位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体から外に延在する、注射器と、
を備え、
前記インジェクタが、
前記薬剤カセットを取り外し可能に取り付ける表面と、
前記薬剤カセットが前記表面に取り付けられるときに、前記注射器の一部を係合可能である第1端部と、前記注射器を前記第1位置から前記第2位置まで移動させるリンクと、を有するモータ駆動されるリンクと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項85]
前記注射器の一部が、前記注射器チャンバの表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項84に記載のシステム。
[付記項86]
前記スリーブが、前記注射器を当該スリーブ内に強固に保持するロック爪部を有することを特徴とする付記項41に記載のシステム。
[付記項87]
前記注射器の一部が、前記ロック爪部の表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項86に記載のシステム。
[付記項88]
前記スリーブが、前記注射器を当該スリーブ内に強固に保持するロック爪部を有することを特徴とする付記項64に記載のカセット。
[付記項89]
前記注射器の一部が、前記ロック爪部の表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項88に記載のカセット。
[付記項90]
オートインジェクタ用の薬剤カセットであって、当該薬剤カセットが、
筐体と、
前記薬剤を収容する注射器チャンバと、前記注射器チャンバから延在する注射器と、を備える注射器であって、前記注射針が前記注射器チャンバの反対側にある皮膚貫通端部を有し、当該注射器が前記第1位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体内に配置され、当該注射器が前記第2位置にあるときに前記皮膚貫通端部が前記筐体から外に延在する、注射器と、
を備え、
前記カセットが前記オートインジェクタにまたは前記オートインジェクタ内に取り付けられると、前記注射器の一部が、前記オートインジェクタの駆動リンクと係合する薬剤カセット。
[付記項91]
前記注射器の一部が、前記注射器チャンバの表面から延在する突出部を備えることを特徴とする付記項90に記載の薬剤カセット。
[付記項92]
患者に薬剤を注射するシステムであって、
当該システムが、インジェクタと、薬剤カセットと、を備え、
前記インジェクタが、
前記薬剤カセットが取り外し可能に取り付けられる表面と、
前記薬剤カセットを針注射モードで動作させる第1端部を有するモータ駆動されるリンクと、
を備えることを特徴とするシステム。
[付記項93]
薬剤を注射するシステムであって、
当該システムが、インジェクタと、薬剤カセットと、を備え、
前記インジェクタが、
注射器から流体薬剤を吐出させるプランジャロッドと、
前記プランジャロッドを駆動するモータと、
ユーザが当該システムの複数の異なる薬剤注射速度の1つを選択することを可能とするために、前記モータに動作可能に結合されたスイッチと、
を備えることを特徴とするシステム。
【符号の説明】
【0085】
100,200,300 システム,オートインジェクタシステム,注射器組立体、112,212,312 カセット(薬剤カセット)、114,214,314 オートインジェクタ(インジェクタ)、118,250,350 第1モータ、120,254,354 第2モータ、122 軸、124,220,320 ボタン,注射ボタン、126,156,222,330 筐体,カセット筐体、128,226,326,326’ 注射器,皮下注射器、130,230,326b 針,注射針、132,228,326a,326a’ チャンバ,流体チャンバ、136,232,326d ストッパ,プランジャ、138 保護カバー、140,340 キャップ、152a,152b,168a,168b,242a,242b 腕部,弾性腕部、154,224,331 内側スリーブ、160 基端側突出部、162 先端側突出部、166,246,361 スロット、170a,170b,244a,244b,331a 爪部、176 接着部(接着手段)、216,349 駆動システム、218,319 コントローラ,マイクロコンピュータ(コンピュータ)、234 開口部、236,331b,326p 突起部、240,360 ラッチ機構、256,356c プッシャ、262 センサ、316 フレーム,内部フレーム、316a カセット支持部材,カセット支持セクション、316b 開口部,長手方向開口部,モータ/駆動システム・コントローラ支持セクション、352 駆動システム,ラック・ピニオン駆動システム、352c 駆動リンク、353,355 位置センサ、356 駆動システム,リードスクリュー駆動システム、360a ロック腕部,弾性ロック腕部、360b 爪スロット,ロック爪スロット、372 速度スイッチ,速度選択スイッチ,カセット検出スイッチ、374 皮膚センサ,皮膚検出センサ