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  • 特許-蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置 図1
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  • 特許-蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20230915BHJP
   F27B 14/10 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C23C14/24 A
F27B14/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021198805
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084558
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591097632
【氏名又は名称】長州産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】末永 真吾
(72)【発明者】
【氏名】濱永 教彰
(72)【発明者】
【氏名】政田 英昭
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/014575(WO,A1)
【文献】実開昭59-076558(JP,U)
【文献】特開2021-183714(JP,A)
【文献】特開2004-134250(JP,A)
【文献】特開2004-59992(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0010481(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
F27B 14/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱により加熱される蒸着用坩堝であって、
開口部側部分が強磁性体金属から形成されており、
他の部分が非磁性体金属から形成されており、
上記開口部側部分がくびれ部を有する蒸着用坩堝。
【請求項2】
上記開口部側部分を形成する材料が、鉄、ニッケル、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、オーステナイト・フェライト系ステンレス又は析出硬化系ステンレス鋼であり、
上記他の部分を形成する材料が、チタン、銅、アルミニウム又はオーステナイト系ステンレスである請求項1に記載の蒸着用坩堝。
【請求項3】
上記開口部側部分を形成する材料と上記他の部分を形成する材料とが共にステンレスである請求項1又は請求項2に記載の蒸着用坩堝。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の蒸着用坩堝と、
上記蒸着用坩堝の周囲を覆うように配置されたコイルと
を備える蒸着源。
【請求項5】
請求項に記載の蒸着源を備える蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネル、太陽電池等の金属電極配線、有機エレクトロルミネッセンス(EL)層、半導体層、その他の有機材料薄膜及び無機材料薄膜等は、真空蒸着法等の蒸着によって形成されることがある。このような蒸着を行う蒸着装置は、通常、常温で固体の蒸着材を加熱し、気化した蒸着材を基板表面に向けて噴射させる蒸着源(蒸発源等とも称される。)、及び基板を保持する基板保持部等から構成される。蒸着源は、蒸着材を収容する坩堝と、この蒸着材を直接又は間接に加熱し、気化させる加熱手段とを備える。蒸着源の加熱手段として誘導加熱を用いるものが知られている(特許文献1、2参照)。誘導加熱方式は、抵抗加熱方式に比べて、加熱効率が良く、熱応答性に優れる等の利点があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-52301号公報
【文献】特開2020-176298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コイルを用いた誘導加熱方式においては、コイルの中心部分が最も磁場が強くなり、この中心部分が最も加熱されやすくなる。坩堝の周囲を覆うようにコイルを配置し、誘導加熱により坩堝を加熱する場合、坩堝の開口部及びその周辺は、磁場が相対的に弱いことに加えて、開口していることにより、中心部分と比べて温度が低くなる。このため、坩堝内に収容された蒸着材が、加熱により気化し、坩堝外へ拡散される際、蒸着材の一部が坩堝の開口部及びその周辺に析出し易い。坩堝の開口部及びその周辺に析出した蒸着材は、蒸着材の拡散を妨げ、閉塞を招く場合もある。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、蒸着材の開口部及びその周辺への析出が抑制され、安定的に蒸着材を拡散させることができる蒸着用坩堝、並びにこのような蒸着用坩堝を備える蒸着源及び蒸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、開口部を有し、誘導加熱により加熱される蒸着用坩堝であって、開口部側部分が、他の部分より誘導加熱による温度上昇が大きい材料から形成されている蒸着用坩堝(A)である。
【0007】
上記課題を解決するためになされた他の本発明は、誘導加熱により加熱される蒸着用坩堝であって、開口部側部分が強磁性体金属から形成されており、他の部分が非磁性体金属から形成されている蒸着用坩堝(B)である。
【0008】
当該蒸着用坩堝(A)及び蒸着用坩堝(B)においては、上記開口部側部分を形成する材料と上記他の部分を形成する材料とが共にステンレスであることが好ましい。
【0009】
当該蒸着用坩堝(A)及び蒸着用坩堝(B)においては、上記開口部側部分がくびれ部を有することが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するためになされた別の本発明は、当該蒸着用坩堝(A)又は蒸着用装置(B)と、上記当該蒸着用坩堝(A)又は蒸着用装置(B)の周囲を覆うように配置されたコイルとを備える蒸着源である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた別の本発明は、当該蒸着源を備える蒸着装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着材の開口部及びその周辺への析出が抑制され、安定的に蒸着材を拡散させることができる蒸着用坩堝、並びにこのような蒸着用坩堝を備える蒸着源及び蒸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る蒸着用坩堝を示す側面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る蒸着源を示す模式的側面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る蒸着装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係る蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置について詳説する。
【0015】
<蒸着用坩堝>
図1の蒸着用坩堝10は、蒸着装置の蒸着源に用いられる。蒸着用坩堝10は、気化させる蒸着材を収容する容器である。蒸着用坩堝10は、誘導加熱により加熱される。蒸着用坩堝10は、有底略円筒形状を有する。図1の蒸着用坩堝10においては、下側が底であり、上側が開口している。すなわち、蒸着用坩堝10は、上側先端に開口部11を有する。
【0016】
蒸着用坩堝10は、中心軸A(図1における蒸着用坩堝10の対称軸)に垂直な仮想面Bを境界として、開口部側部分12(図1における上側部分)と、他の部分13(図1における下側部分)とで、形成される材料が異なる。開口部側部分12は、開口部11を含む部分であり、蒸着用坩堝10の高さを基準として、例えば開口部11(図1における上端)から10~50%までの部分とすることができる。蒸着用坩堝10の開口部側部分12はくびれ部14を有する。他の部分13は、開口部側部分12以外の部分であり、底側の部分である。他の部分13は、主に蒸着材が収容される部分であってよい。但し、開口部側部分12にまで、蒸着材が収容されていてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、開口部側部分12は、他の部分13より誘導加熱による温度上昇が大きい材料から形成されている。開口部側部分12は、例えば周波数300kHzでの高周波誘導加熱を行った場合に、他の部分13より温度上昇が大きい材料から形成されていてよい。このような形態の蒸着用坩堝10によれば、コイルを用いた誘導加熱を行った際、開口部側部分12が他の部分13よりも温度が高くなりやすいため、気化した蒸着材の開口部11及びその周辺への析出が抑制され、安定的に蒸着材を拡散させることができる。なお、開口部11及びその周辺とは、開口部側部分12の一部又は全部であってよい。
【0018】
開口部側部分12及び他の部分13をそれぞれ形成する材料は、従来公知の蒸着用坩堝の形成材料等の中から、蒸着材の種類、気化する温度等を考慮し、上記の条件を満たす材料を選択して用いることができる。開口部側部分12及び他の部分13をそれぞれ形成する材料は、金属であってもよく、非金属(セラミックス、酸化物、カーボン等)であってもよい。なお、開口部側部分12及び他の部分13が共に金属である場合、これらの接合を容易に行うことができる等の利点がある。また、他の部分13が金属の場合、他の部分13が誘導加熱によっては十分に加熱されない場合も、開口部側部分12からの伝熱によって効率的に温度上昇し、収容されている蒸着材を気化させることができる。
【0019】
誘導加熱による温度上昇の生じ易さは、材料の電気抵抗率、透磁率等が影響する。例えば、開口部側部分12は、他の部分13よりも電気抵抗率が高い材料から形成されていてもよい。また、開口部側部分12は、他の部分13よりも透磁率が高い材料から形成されていてもよい。開口部側部分12が他の部分13よりも電気抵抗率が高い材料から形成されている形態としては、例えば、開口部側部分12がカーボンから形成されており、他の部分13が銅から形成されている例を挙げることができる。また、開口部側部分12が鉄から形成されており、他の部分13が銅から形成されている例は、開口部側部分12が他の部分13よりも電気抵抗率が高い材料から形成されている形態でもあり、開口部側部分12が他の部分13よりも透磁率が高い材料から形成されている形態でもある。開口部側部分12が他の部分13よりも透磁率が高い材料から形成されている典型的な形態としては、開口部側部分12が強磁性体材料から形成されており、他の部分13が非磁性体材料から形成されている形態が挙げられる。このような形態の中でも、開口部側部分12が強磁性体金属から形成されており、他の部分13が非磁性体金属から形成されていることが好ましい。
【0020】
本発明の一実施形態において、開口部側部分12が強磁性体金属から形成されており、他の部分13が非磁性体金属から形成されている。このような形態の蒸着用坩堝10によっても、コイルを用いた誘導加熱を行った際、開口部側部分12が他の部分13よりも温度が高くなりやすいため、気化した蒸着材の開口部11及びその周辺への析出が抑制され、安定的に蒸着材を拡散させることができる。
【0021】
強磁性体金属としては、鉄、ニッケル、フェライト系ステンレス(JIS SUS430等)、マルテンサイト系ステンレス(JIS SUS410等)、オーステナイト・フェライト系ステンレス(JIS SUS329J1等)、析出硬化系ステンレス鋼(JIS SUS630等)等が挙げられる。
【0022】
非磁性体金属としては、チタン、銅、アルミニウム、オーステナイト系ステンレス(JIS SUS304、SUS316、SUS201等)等が挙げられ、適度な加熱が可能である等の観点からは、チタン及びオーステナイト系ステンレスが好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態において、開口部側部分12を形成する材料と他の部分13を形成する材料とが共にステンレスであることが好ましい。具体的には、開口部側部分12がフェライト系ステンレス(JIS SUS430等)、マルテンサイト系ステンレス(JIS SUS410等)、オーステナイト・フェライト系ステンレス(JIS SUS329J1等)、析出硬化系ステンレス鋼(JIS SUS630等)等から形成されており、他の部分13がオーステナイト系ステンレス(JIS SUS304、SUS201等)等から形成されていることが好ましい。このように、開口部側部分12を形成する材料と他の部分13を形成する材料とが共にステンレスである場合、開口部側部分12と他の部分13とを溶接等により比較的容易かつ強固に接合することができる。また、ステンレスは、強磁性体のものと非磁性体のものとが存在することからも、蒸着用坩堝10の形成材料として好適である。
【0024】
上述のように、蒸着用坩堝10の開口部側部分12にはくびれ部14が形成されている。すなわち、開口部側部分12には、径が細い部分が存在する。本発明者らの知見によれば、蒸着用坩堝10の開口部側部分12にくびれ部14を設けることで、蒸着材の量や加熱の程度等によらず蒸着材の拡散が均一に生じる等の利点が得られる。一方で、開口部側部分にこのようなくびれ部を有する従来の蒸着用坩堝においては、蒸着材が特にこのくびれ部に析出し易く、閉塞を招きやすい。そのため、くびれ部を有する蒸着用坩堝に本発明を適用した場合、蒸着材の開口部及びその周辺(くびれ部等)への析出が抑制できるという利点を特に顕著に得ることができる。
【0025】
蒸着用坩堝10の高さとしては、例えば、36mm以上190mm以下の範囲内であってよい。蒸着用坩堝10の直径(内径)としては、例えば、9mm以上45mm以下の範囲内であってよい。この蒸着用坩堝10の直径(内径)は、他の部分13又は底における直径(内径)であってよい。蒸着用坩堝10の直径(内径)に対するくびれ部14の直径(内径)の比としては、例えば、0.1以上0.9以下の範囲内であってもよく、0.2以上0.7以下の範囲内であってもよい。蒸着用坩堝10の側壁の平均厚さとしては、例えば、0.3mm以上1mm以下の範囲内であってよい。
【0026】
蒸着用坩堝10を用いて蒸着を行う際は、蒸着用坩堝10内には蒸着材が収容される。蒸着材としては特に限定されず、有機EL層等を形成するための有機材料、半導体層、金属配線等を形成するための無機材料等が挙げられる。このように蒸着用坩堝10は、有機蒸着及び無機蒸着のいずれにも好適に用いられる。
【0027】
蒸着用坩堝10には、気化効率を考慮し、蒸着材と共に、熱的及び化学的に安定しており、かつ蒸着材よりも熱伝導率の高い粒状の伝熱媒体が収納されていてもよい。あるいは、粒状の伝熱媒体と、この伝熱媒体を被覆する蒸着材とで構成される複合材を蒸着用坩堝10に収納してもよい。また、蒸着用坩堝10には、誘導加熱により加熱される加熱媒体が、蒸着材と共に収容されていてもよい。
【0028】
<蒸着源>
図2の蒸着源20は、蒸着用坩堝10と、蒸着用坩堝10の周囲を覆うように配置されたコイル21と、コイル21に接続された電力供給装置22とを備える。コイル21は、蒸着用坩堝10の中心軸Aと、コイル21の中心軸Aとが一致するように配置される。蒸着源20に備わる蒸着用坩堝10の具体的形態は上記した通りである。
【0029】
コイル21は、蒸着用坩堝10を誘導加熱するためのものである。コイル21は、電線が螺旋状に巻かれてなる、円筒形状の公知のものを用いることができる。
【0030】
電力供給装置22は、コイル21と接続しており、通常、コイル21に交流電流を供給する。電力供給装置22は商用電源等と接続し、通常、所定の周波数の交流を発生する。電力供給装置22からコイル21へ供給する電流の周波数は、特に限定されず、蒸着用坩堝10を形成する材料等に応じて設定することができ、例えば数10~数100kHzの範囲とすることができ、100~600kHzの範囲内であってもよく、300~500kHzの範囲内であってもよい。
【0031】
当該蒸着源20によれば、コイル21へ電流が流れることで生じる誘導加熱において、蒸着用坩堝10の開口部側部分12が他の部分13よりも温度が高くなりやすいため、気化した蒸着材の開口部11及びその周辺への析出が抑制され、安定的に蒸着材を拡散させることができる。
【0032】
蒸着源は、例えば、蒸着材収容室と拡散室とを有する構成とするものであってもよい。この場合、蒸着材収容室の中に、蒸着材が収容された蒸着用坩堝が、その周囲がコイルで覆われた状態で配置される。拡散室には、蒸着材が噴射される噴射ノズルが連結されていてよい。このような蒸着源においては、加熱により気化した蒸着用坩堝内の蒸着材は、蒸着材収容室から拡散室に移動する。拡散室に移動した気体状の蒸着材は、噴射ノズルから噴射される。噴射ノズルは、例えば拡散室の上面に配置されていてよい。蒸着材収容室と拡散室とは一体となっていてもよく、別体となっていてもよい。蒸着源は、電源供給装置や、蒸着材の流路に設けられたバルブ等により、蒸着材の放出量を制御可能に構成されていてよい。
【0033】
<蒸着装置>
図3の蒸着装置30は、蒸着源20、基板保持部31及び真空チャンバ32を備える。蒸着源20のうちの少なくとも蒸着用坩堝10及びコイル21、並びに基板保持部31は、真空チャンバ32内に配置される。電力供給装置22は、真空チャンバ32の外に配置されていてよい。
【0034】
蒸着源20(コイル21が周囲を覆うように配置された蒸着用坩堝10)は、真空チャンバ32内の下方に配置される。蒸着用坩堝10内には、固体状の蒸着材Xが収容される。
【0035】
基板保持部31は、真空チャンバ32内の上方に配置される。基板保持部31には、蒸着を行う対象となる基板Yが、下向きに配置される。基板Yを構成する材料は、樹脂、金属、酸化物等、特に限定されない。
【0036】
真空チャンバ32により、蒸着を行う空間は適切な真空度に維持できる。すなわち、蒸着装置30は、真空蒸着装置であってよい。真空チャンバ32には、真空チャンバ32内の気体を排出させて、真空チャンバ32内の圧力を低下させる真空ポンプ、真空チャンバ32内に一定の気体を注入して、真空チャンバ32内の圧力を上昇させるベンティング手段などが備えられていてもよい。
【0037】
蒸着装置30は、従来の蒸着装置(例えば、従来の真空蒸着装置)と同様の方法により使用することができる。当該蒸着装置30によれば、蒸着を行う際の蒸着用坩堝10の開口部及びその周辺への蒸着材Xの析出を抑制することができる。このため当該蒸着装置30によれば、長時間にわたる蒸着を安定的に行うことができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、蒸着用坩堝の形状は特に限定されず、円筒形以外の形状であってもよい。また、蒸着用坩堝は、開口部側部分にくびれ部が無い形状であってもよい。
【0039】
蒸着用坩堝は、例えば3種以上の材料から構成されたものであってもよい。このような場合であっても、開口部側部分が、他のいずれの部分より誘導加熱による温度上昇が大きい材料から形成されているか、開口部側部分が強磁性体金属から形成されており、他のいずれの部分も非磁性体金属から形成されていればよい。但し、開口部側部分と他の部分との間など、各材料間(各部分間)を接続する材料がある場合、この接続する材料は考慮しない。
【実施例
【0040】
以下、実施例を挙げて、本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<実施例1>
開口部側部分が強磁性体金属であるSUS430、他の部分が非磁性体金属であるSUS316から形成された、開口部側部分にくびれ部を有する、容量2cmの略円筒形状の坩堝を作製した。この坩堝と、電線が螺旋状に等間隔に巻かれてなるコイルとを用いて、実施例1の蒸着源を組み立てた。
【0042】
<実施例2>
容量が5cmであること以外は実施例1で作製した坩堝と同様の坩堝を作製した。この坩堝を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の蒸着源を組み立てた。
【0043】
<比較例1>
チタン製の均一な材料からなる容量2cmの坩堝を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の蒸着源を組み立てた。
【0044】
<比較例2>
チタン製の均一な材料からなる容量5cmの坩堝を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の蒸着源を組み立てた。
【0045】
[評価]
実施例1、2及び比較例1、2のそれぞれの蒸着源について、坩堝内に蒸着材を収容し、誘導加熱を行うことで蒸着材を気化させた。蒸着材にはAlq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)を用い、誘導加熱は周波数350kHzの交流電流をコイルに流すことにより行った。比較例1、2の各蒸着源においては、開口部の周辺に蒸着材が徐々に析出し、最終的に閉塞が生じたが、実施例1、2の各蒸着源においては、開口部の周辺への蒸着材の析出は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蒸着用坩堝、蒸着源及び蒸着装置は、ディスプレイパネルや太陽電池等の金属電極配線、半導体層、有機EL層、その他の有機材料薄膜や無機材料薄膜等の成膜に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 蒸着用坩堝
11 開口部
12 開口部側部分
13 他の部分
14 くびれ部
20 蒸着源
21 コイル
22 電力供給装置
30 蒸着装置
31 基板保持部
32 真空チャンバ
A 中心軸
B 中心軸Aに垂直な仮想面
X 蒸着材
Y 基板
図1
図2
図3