IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】衣料用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230915BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230915BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20230915BHJP
   D06L 1/12 20060101ALI20230915BHJP
   D06F 35/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/29
C11D3/04
D06L1/12
D06F35/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021204127
(22)【出願日】2021-12-16
(65)【公開番号】P2022099291
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020212607
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】開 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】美野輪 優
(72)【発明者】
【氏名】石塚 仁
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-503833(JP,A)
【文献】特開2014-037503(JP,A)
【文献】特開2003-073698(JP,A)
【文献】特開2009-120664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を質量%以上30質量%以下、水を50質量%以上、及び任意に(b)無機塩〔以下、(b)成分という〕を含有し、
(a)成分が、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤であり、
(a)成分として、陰イオン界面活性剤を含有し、(a)成分中、陰イオン界面活性剤の割合が75質量%以上であり、
(a)成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩を含有し、
(a)成分中、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩の割合が75質量%以上であり、
(b)成分を10質量%以下含有し、
30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下であり、
角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上であり、
角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との比であるG’1.0/G''1.0が1未満である、
衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(b)成分を2質量%以上20質量%以下含有する、請求項1に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分として、無機硫酸塩、及び無機塩化物から選ばれる1種以上の無機塩を含有する、請求項1又は2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)成分として、硫酸ナトリウムを含有する、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分として、硫酸ナトリウムを含有し、且つ、硫酸マグネシウム、塩化リチウム、及び塩化ナトリウムから選ばれる1種以上の無機塩を含有する、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である、(a)/(b)が1以上15以下である、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
30℃のpHが8以上11以下である、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項8】
手洗い用である、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項9】
塗布型である、請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項10】
(a)界面活性剤〔以下、(a)成分という〕及び水を含む成分を混合して(a)成分、水、及び任意に(b)無機塩〔以下、(b)成分という〕を含有する衣料用液体洗浄剤組成物を製造する、衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法であって、
(a)成分を、混合する成分の全量中、質量%以上30質量%以下で用い、
水を、混合する成分の全量中、50質量%以上で用い、
(b)成分を、混合する成分の全量中、10質量%以下で用い、
(a)成分として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を用い、
(a)成分として、陰イオン界面活性剤を用い、(a)成分中、陰イオン界面活性剤の割合が75質量%以上であり、
(a)成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩を用い、
(a)成分中、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩の割合が75質量%以上であり、
混合する成分の種類及び混合量を調整して、得られる衣料用液体洗浄剤組成物が、下記(I)~(III)
(I)30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下、(II)角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上、
(III)角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との
比であるG’1.0/G''1.0が1未満、
を満たすようにする、
衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~の何れか1項に記載の衣料用液体洗浄剤組成物で衣料を洗浄する、衣料の洗浄方法。
【請求項12】
前記衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布した後、当該衣料を洗浄する、請求項11に記載の衣料の洗浄方法。
【請求項13】
前記衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布し、塗布された箇所を手洗いする、請求項11又は12に記載の衣料の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体洗浄剤組成物、衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法、及び衣料の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の繊維製品の洗濯方法には、大きく分けて手洗い洗濯と洗濯機洗濯の2種類がある。近年では、アジア地域の洗濯機の普及が増加する傾向にあるが、洗浄力、経済性、文化的背景、洗濯意識などから、手洗い洗濯が広く行われている。手洗い洗濯は、作業者が汚れの落ち具合を確認しながら洗浄できるため、繊維に付着した全体的な汚れだけでなく、部分的な食べこぼし等の汚れを落とす洗浄にも適している。手洗い洗濯では、多くの作業者が、洗浄剤、例えば粉末状や液体状の洗浄剤を水に溶かして得た洗浄液を用いて衣料を洗濯している。
【0003】
液体状の洗浄剤は、洗浄液の調製に用いる他に、繊維製品に直接塗布して用いることもできる。例えば、手洗い洗濯では、作業中に、繊維製品の汚れが目立つ箇所に液体洗浄剤を塗布してもみ洗い等することができる。
【0004】
特許文献1には、液体洗剤であって、その約5重量%~約20重量%の界面活性剤系を含み、前記界面活性剤系が0.20~1.75のアルコキシル化度を有するアルコキシル化アニオン性界面活性剤を含み、前記洗剤は20℃で約2500mPa・s~約6000mPa・sの注入粘度を有し、中剪断粘度の高剪断粘度に対する比が約2~約1である、液体洗剤が開示されている。当該液体洗剤は、塩化ナトリウム等の電解質を含有できるとされている。
【0005】
特許文献2には、エチレンオキシ基を含む所定のエーテル硫酸エステル塩と炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を含む所定のエーテル硫酸エステル塩とを混合して得られる界面活性剤組成物が開示されている。当該界面活性剤組成物は、更に、塩化ナトリウム等の無機塩を含有できるとされている。
【0006】
特許文献3には、(A)特定のα-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩と、(B)(A)以外のアニオン界面活性剤と、(C)ベタイン型両性界面活性剤とを含有する液体洗浄剤が開示されている。当該液体洗浄剤は、更に、硫酸マグネシウム等の水溶性無機塩を含有できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-503833号公報
【文献】特開2009-120664号公報
【文献】国際公開第2017/069017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
手洗い洗濯などに用いる液体洗浄剤組成物では、良好な洗浄力を有することに加え、1つの製剤が、洗浄液の調製と塗布洗浄の両方に使えることが利便性の上では有利である。一般に、液体洗浄剤組成物の粘度を適度に高くすることは、塗布洗浄には望ましいと考えられるが、水と混合して洗浄液を調製する際の分散性、溶解性の低下が懸念される。
【0009】
本発明は、塗布洗浄などに適した粘度を有し、洗浄力に優れ、且つ水への分散性、溶解性にも優れた衣料用液体洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を5質量%以上30質量%以下、及び水を含有し、
30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下であり、
角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上であり、
角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との比であるG’1.0/G''1.0が1未満である、
衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(a)界面活性剤〔以下、(a)成分という〕及び水を含む成分を混合して(a)成分及び水を含有する衣料用液体洗浄剤組成物を製造する、衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法であって、
(a)成分を、混合する成分の全量中、5質量%以上30質量%以下で用い、
混合する成分の種類及び混合量を調整して、得られる衣料用液体洗浄剤組成物が、下記(I)~(III)
(I)30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下、(II)角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上、
(III)角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との比であるG’1.0/G''1.0が1未満、
を満たすようにする、
衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、前記本発明の衣料用液体洗浄剤組成物で衣料を洗浄する、衣料の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布洗浄などに適した粘度を有し、洗浄力に優れ、且つ水への分散性、溶解性にも優れた衣料用液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[衣料用液体洗浄剤組成物]
(a)成分は界面活性剤である。
(a)成分としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(a)成分として、陰イオン界面活性剤を含有することが好ましい。この場合、陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤を含有することもでき、陰イオン界面活性剤以外の界面活性剤は、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる界面活性剤が好ましい。
【0015】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗浄力及び溶解性の観点から、(a)成分を、5質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下含有する。なお、本発明では、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を調製する際の(a)成分等の各成分の配合量をそれぞれの含有量と見なすことができる。
【0016】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、(a)成分として、陰イオン界面活性剤を含有し、(a)成分中、陰イオン界面活性剤の割合が75質量%以上、更に80質量%以上、更に85質量%以上、そして、100質量%以下であることが好ましく、この割合は100質量%であってもよい。
【0017】
本発明の衣料用液体洗剤組成物は、陰イオン界面活性剤を、洗浄力の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量以下含有する。
【0018】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(a)成分として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩(以下、AESという)を含有することが好ましい。AESのオキシアルキレン基は、オキシエチレン基、オキシプロピレン基などが挙げられる。AESのオキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは1以上4以下である。AESのアルキル基は、好ましくは炭素数8以上、より好ましくは10以上であり、更に、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは炭素数16以下である。AESが塩である場合、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0019】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、(a)成分として、AESを含有し、(a)成分中、AESの割合が75質量%以上、更に80質量%以上、更に85質量%以上、そして、100質量%以下であることが好ましく、この割合は100質量%であってもよい。
【0020】
本発明の衣料用液体洗剤組成物は、AESを、洗浄力及び粘度の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量以下含有する。
【0021】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(b)成分として、無機塩を含有することが好ましい。
(b)成分としては、無機硫酸塩、及び無機塩化物から選ばれる1種以上の無機塩が挙げられる。
無機硫酸塩としては、硫酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。硫酸アルカリ金属塩は、硫酸ナトリウムが挙げられる。硫酸アルカリ土類金属塩は、硫酸マグネシウムが挙げられる。
無機塩化物としては、アルカリ金属塩化物などが挙げられる。アルカリ金属塩化物は、塩化リチウム、塩化ナトリウムが挙げられる。
(b)成分は、硫酸アルカリ金属塩が好ましく、硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0022】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(b)成分として、硫酸ナトリウムを含有することが好ましい。
【0023】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物が、(b)成分として、硫酸ナトリウムを含有し、且つ、硫酸ナトリウム以外の無機塩を含有することができる。その場合、硫酸ナトリウム以外の無機塩は、硫酸マグネシウム、塩化リチウム、及び塩化ナトリウムから選ばれる1種以上の無機塩であることが好ましい。
【0024】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、(b)成分として硫酸ナトリウムを含有し、(b)成分中、硫酸ナトリウムの割合が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この割合は100質量%であってもよい。
【0025】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、粘度制御の観点から、(b)成分を、2質量%以上、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、そして、20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有する。
【0026】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物が(b)成分を含有する場合、洗浄力と溶解性の両立の観点から、組成物中の(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である、(a)/(b)が、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは5以下である。
【0027】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、水を含有する。組成物中の水の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0028】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、任意成分として、増泡剤、酵素、pH調整剤、安定化剤、蛍光染料、香料、色素、防腐剤、溶剤などの成分を含有することができる。
pH調整剤としては、アルカリ剤、酸剤が挙げられる。アルカリ剤としては、例えば、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン、更に炭素数1以上5以下のアルカノールアミンが挙げられる。酸剤としては、例えば、クエン酸などの有機酸が挙げられる。pH調整剤は、本発明の組成物のpHが後述する範囲となるように用いることが好ましい。pH調整剤のうちアルカリ剤としては、洗浄力と安定性の観点から、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミンが好ましい。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、アルカノールアミン、更にモノエタノールアミンを、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下含有する。pH調整剤のうち酸剤としては、洗浄力と安定性の観点から、クエン酸などの有機酸が好ましい。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、有機酸、更にクエン酸を、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下含有する。
【0029】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下である。η0.1/η100は、洗浄力及び溶解性の観点から、好ましくは1.8以上、より好ましくは2以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。液体洗浄剤が低せん断状態において高粘度であることは、液体洗浄剤に加わる機械力が小さい状態では、高粘度であることを意味し、液体洗浄剤を汚れに塗布した際の、汚れへの密着性の向上による洗浄力の向上につながると考えられる。また、液体洗浄剤が高せん断状態において低粘度であることは、液体洗浄剤に加わる機械力が大きい状態では低粘度であることを意味し、洗濯機などでの濯ぎ時には容易に水に分散し、溶け残りの低減につながると考えられる。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、η0.1/η100が所定範囲にあることで、洗浄態様の違いによる機械力の変動に応じた粘度挙動をとることが可能となり、塗布洗浄から浴中洗浄(洗濯機での洗浄)といった種々の洗浄態様において、優れた洗浄力及び溶解性が得られるものと推察される。
本発明では、粘度η0.1、η100は、それぞれ、30℃で、回転式レオメーター(アントンパール社製、型番MCR302、直径50mmのコーンプレート使用)を用いて、せん断速度0.1s-1又は100s-1の条件下で測定する。
【0030】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上である。G’100/G''100は、塗布洗浄力の観点から、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、G’100/G''100が所定範囲にあることで、当該組成物に機械力が加わる時間が短い状態では、当該組成物が固体的な性質を示し、例えば、汚れに塗布して用いる場合は当該組成物の汚れへの密着性が高まり、高い洗浄力が発現するものと推察される。
本発明では、貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100は、それぞれ、30℃で、回転式レオメーター(アントンパール社製、型番MCR302、直径50mmのコーンプレート使用)を用いて100radから0.1radの範囲で測定し、100radで得られたG’、G’’を貯蔵弾性率G’100、損失弾性率G''100とする。
【0031】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との比であるG’1.0/G''1.0が1未満である。G’1.0/G''1.0は、溶解性の観点から、好ましくは0以上、より好ましくは0.01以上、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下である。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、G’1.0/G''1.0が所定範囲にあることで、当該組成物に機械力が加わる時間が長い状態では、当該組成物が固体的となるような性質は発現しにくくなり、例えば、洗濯機などでの洗浄や濯ぎの際には当該組成物が容易に水に分散し、溶け残りを低減できるものと推察される。
本発明では、貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0は、それぞれ、貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100と同様に、ただし、角周波数を1.0rad/sとして測定する。
【0032】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、計量しやすさと溶解性の観点から、30℃での粘度が、好ましくは2000mPa・s以上、より好ましくは2500mPa・s以上、更に好ましくは3000mPa・s以上、そして、好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは30000mPa・s以下、更に好ましくは10000mPa・s以下、より好ましくは5000以下である。この粘度は、B型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業(株)製)(30℃、M3、12rpm)で測定されたものである。
【0033】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗浄力の観点から、30℃でのpHが、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下である。このpHは、例えば、pHメーター(株式会社堀場製作所、型番:D-71)を用いて測定されたものであってよい。
【0034】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、手洗い用、すなわち衣料の手洗い用として好適である。
【0035】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、塗布型の組成物として好適である。塗布型とは、衣料に直接塗布して洗浄に供する洗浄方法に使用されることを意味するものであってよい。
【0036】
[衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法]
本発明は、(a)界面活性剤〔(a)成分〕及び水を含む成分を混合して(a)成分及び水を含有する衣料用液体洗浄剤組成物を製造する、衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法であって、
(a)成分を、混合する成分の全量中、5質量%以上30質量%以下で用い、
混合する成分の種類及び混合量を調整して、得られる衣料用液体洗浄剤組成物が、下記(I)~(III)
(I)30℃におけるせん断速度0.1S-1の粘度η0.1と30℃におけるせん断速度100S-1の粘度η100との比であるη0.1/η100が1.5以上30以下、(II)角周波数100rad/sの貯蔵弾性率G’100と損失弾性率G''100との比であるG’100/G''100が1以上、
(III)角周波数1.0rad/sの貯蔵弾性率G’1.0と損失弾性率G''1.0との比であるG’1.0/G''1.0が1未満、
を満たすようにする、
衣料用液体洗浄剤組成物の製造方法を提供する。本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、本発明の製造方法で製造することができる。
【0037】
本発明の製造方法には、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。(a)成分の具体例や好ましい例も本発明の衣料用液体洗浄剤組成物と同じである。η0.1/η100、G’100/G''100、G’1.0/G''1.0の測定法や好ましい範囲も本発明の衣料用液体洗浄剤組成物と同じである。本発明の製造方法では、(b)成分である無機塩を混合することが好ましい。(b)成分の具体例や好ましい例も本発明の衣料用液体洗浄剤組成物と同じである。
【0038】
η0.1/η100は、混合する成分のうち、例えば、界面活性剤の成分を増量すると、値は大きくなる。また、無機塩の成分を増量すると、値は減少する傾向がある。これを踏まえて、界面活性剤や無機塩などの成分の種類や量を調整することで、この比の値を調整することができる。
【0039】
G’100/G''100は、混合する成分のうち、例えば、界面活性剤や無機塩の成分を増量すると、値は大きくなる傾向がある。これを踏まえて、界面活性剤や無機塩などの成分の種類や量を調整することで、この比の値を調整することができる。
【0040】
G’1.0/G''1.0は、混合する成分のうち、例えば、界面活性剤の成分を増量すると、値は大きくなる傾向がある。これを踏まえて、界面活性剤の成分の種類や量を調整することで、この比の値を調整することができる。
【0041】
[衣料の洗浄方法]
本発明により、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物で衣料を洗浄する、衣料の洗浄方法が提供される。
本発明の洗浄方法では、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布した後、当該衣料を洗浄することができる。
本発明の洗浄方法では、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布し、塗布された箇所を手洗いすることができる。
【0042】
本発明の衣料の洗浄方法では、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物が、衣料に塗布された箇所で、水で希釈されることが好ましい。希釈は、例えば、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を衣料に塗布した後、水を接触させる、水を含んだ衣料に本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を塗布する、などの方法により行うことができる。希釈の倍率は、好ましくは2倍以上、そして、好ましくは100倍以下である。
【0043】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法の一例として、(1)本発明の衣料用液体洗浄剤組成物と水とを用いて洗浄液を調製すること、(2)前記洗浄液に衣料を浸漬し、浸漬した衣料に本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を塗布すること、(3)前記衣料の塗布された箇所を手洗いすること、を行う衣料の洗浄方法が挙げられる。
【0044】
更に、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法の他の例として、(1)本発明の衣料用液体洗浄剤組成物と水とを用いて洗浄液を調製すること、(2)前記洗浄液に衣料を浸漬し、浸漬した衣料に本発明の衣料用液体洗浄剤組成物を塗布すること、(3)前記衣料の塗布された箇所を手洗いすること、(4)手洗い後の前記衣料を前記洗浄液と接触させ、当該衣料を手洗い洗浄すること、を行う衣料の洗浄方法が挙げられる。
【0045】
手洗いの方法としては、衣料を手でもみ洗いする方法、衣料同士を手で擦り合わせる方法、衣料を繊維束を植毛したブラシなどの道具を用いて擦り洗いする方法などが挙げられる。
【実施例
【0046】
表1に示す配合成分を用いて衣料用液体洗浄剤組成物を調製し、以下の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表で用いた成分は以下のものである。
・ES(1):ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数1)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、エマール170J(花王(株)製)
・ES(2):ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数2)ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、エマール270J(花王(株)製)
・LAS:ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ネオペレックスG-15(花王(株)製)
・AE(EO3):ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数3)アルキル(炭素数10~14)エーテル、エマルゲン103(花王(株)製)
・AE(EO6):ポリオキシエチレン(エチレンオキサイド平均付加モル数6)アルキル(炭素数10~14)エーテル、エマルゲン108(花王(株)製)
・C12AB:ラウリルアミドプロピルベタイン、アンヒトール20AB(花王(株)製)
・PEG(200万):重量平均分子量200万のポリエチレングリコール
・MEA:モノエタノールアミン
【0047】
(1)洗浄力の評価
<人工汚染布の作製>
6cm×6cmの木綿/ポリエステルブロード混紡染着布(木綿/ポリエステル比=35/65 谷頭商店より購入)に、下記組成から成る人工汚垢を1枚当り100mgになるようグラビア塗工して人工汚染布を複数作製した。
【0048】
*人工汚垢
下記A、B、C、D、Eを含有する組成物を人工汚垢とした。それぞれの質量%は、最終組成の人工汚垢中の割合であり、合計が100質量%となるようにBの量を調節した。A:調整油(人工汚垢中の質量%が、ラウリン酸0.44質量%、ミリスチン酸3.15質量%、ペンタデカン酸2.35質量%、パルチミチン酸6.31質量%、ヘプタデカン酸0.44質量%、ステアリン酸1.6質量%、オレイン酸7.91質量%、トリオレイン13.33質量%、パルミチン酸n-ヘキサデシル2.22質量%、スクアレン6.66質量%となる量で用いる)
B:塩化カルシウム(2水塩)105mgを秤量し、蒸留水に溶かして1,000mlとして得た硬水
C:卵白レシチン液晶物1.98質量%(蒸留水80mlにアルギニン塩酸塩11.37g、ヒスチジン4.20g、セリン2.44gを溶解し、濃塩酸でpHを5.0に調整した後、この溶液と卵白レシチンをミキサーで十分混ぜ合わせて得た卵白レシチン液晶物)D:鹿沼赤土8.11質量%
E:カーボンブラック0.025質量%
【0049】
<塗布洗浄条件>
人工汚染布を4枚用い、1枚につき衣料用液体洗浄剤組成物0.2gを直接塗布した。炭酸カルシウム換算で179mg/Lの硬水(本硬水はドイツ硬度で10°DHに相当する)1Lに、衣料用液体洗浄剤組成物を塗布した汚染布4枚を入れて、ターゴトメーターにて以下の条件で洗浄した。
漬け置き時間30分
洗浄時間3分、回転速度180rpm
水温30℃
洗浄力は、汚染前の原布、及び洗浄前後の550nmにおける反射率を測色色差計(日本電色株式会社製 Z-300A)にて測定し、次式によって洗浄率(%)を求めた。汚染布4枚の洗浄率をそれぞれ求め、その平均値を表に示した。この評価では、洗浄率が50%以上であることが望ましい。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(原布の反射率-洗浄前の反射率)]
【0050】
(2)溶解性の評価
表1の衣料用液体洗浄組成物に色素(赤色106号)を0.0005質量%添加し着色した。200mLのガラス製ビーカーに30℃のイオン交換水100mlを添加し、撹拌子を用いて回転数150pmで攪拌した。攪拌している状態に上記の着色した衣料用液体洗浄剤組成物10gを添加した。1分後、10分後の混合物を採取した。マイクロプレートリーダー(TECAN製)を用いて採取した水の吸光度(570nm)を測定した。溶解率
を以下に定義する。この評価では、溶解率が80%以上であることが望ましい。
溶解率(%)=100×[(1分後の吸光度-イオン交換水の吸光度)/(10分後の吸光度-イオン交換水の吸光度)]
【0051】
【表1】