(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】2弾性率金属コード
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20230915BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20230915BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20230915BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B60C9/20 E
B60C9/00 L
B60C9/18 K
D07B1/06 A
(21)【出願番号】P 2021504255
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070034
(87)【国際公開番号】W WO2020021007
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】コルニーユ リシャール
(72)【発明者】
【氏名】バルゲ アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ロティ ガエル
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0321376(US,A1)
【文献】特開2002-088668(JP,A)
【文献】特開平09-002015(JP,A)
【文献】特開2013-043548(JP,A)
【文献】特開2001-213117(JP,A)
【文献】特開2001-063310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/20
B60C 9/00
B60C 9/18
D07B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋巻き金属フィラメント状要素(54)の単層(52)を含むコード(50)であって、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)が、コード(50)が実質的に直線の方向に延びる時に該実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線(A)の周りに螺旋経路を描き、それにより、該主軸線(A)に対して実質的に垂直な断面平面内で、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)の中心と該主軸線(A)との間の距離が、該層(52)の全ての該金属フィラメント状要素(54)に関して実質的に一定かつ同一である前記コード(50)であって、
・5GPa≦M
1≦16GPa、かつ
・40GPa≦M
2≦160GPa、かつ
・3≦M
2/M
1であり、
M
1及びM
2は、GPaを単位として表され、ここで、
M
1=10/A
100であり、ここで、
A
100が、100MPaの負荷下でのコードの%を単位とする伸長であり、かつ
M
2=[(F
40-F
30)/(A
40-A
30)]/Sであり、ここで、
Sは、S=Ml/Mvであるようなmm
2を単位として表される断面積であり、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント要素(54)の線密度であり、
・Mvは、cm
3当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント要素(54)の質量密度であり、
・F
40は、コードの理論最大力F
tの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・F
30は、コードの前記理論最大力F
tの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・A
40は、コードの前記理論最大力F
tの40%での%を単位として表されるコードの前記伸長であり、
・A
30は、コードの前記理論最大力F
tの30%での%を単位として表されるコードの前記伸長であり、
ここで、F
t=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、前記単層(52)を構成する前記金属フィラメント要素(54)のMPaを単位として表される平均引張強度である、
ことを特徴とするコード(50)。
【請求項2】
6≦M
2/M
1であることを特徴とする請求項1に記載のコード(50)。
【請求項3】
M
2/M
1≦19であることを特徴とする請求項1に記載のコード(50)。
【請求項4】
As≧1%であるような構造伸長Asを有し、
前記構造伸長Asは、力-伸長曲線を取得するためにコードに2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定され、
前記構造伸長Asは、前記力-伸長曲線の最大勾配に対応する%を単位とする伸長に等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のコード(50)。
【請求項5】
螺旋巻き金属フィラメント状要素(54)の単層(52)を含む充填されたコード(51)であって、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)が、コード(50)が実質的に直線の方向に延びる時に該実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線(A)の周りに螺旋経路を描き、それにより、該主軸線(A)に対して実質的に垂直な断面平面内で、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)の中心と該主軸線(A)との間の距離が、該層(52)の全ての該金属フィラメント状要素(54)に関して実質的に一定かつ同一であり、該金属フィラメント状要素(54)が、コード(51)の内部エンクロージャ(58)を定め、充填されたコード(51)が、エラストマー組成に基づいておりかつ充填されたコード(51)の該内部エンクロージャ(58)に位置する該内部エンクロージャ(58)のための充填材料(53)を含む前記充填されたコード(51)であって、
・5GPa≦M
c1≦30GPa、かつ
・40GPa≦M
c2≦150GPa、かつ
・3≦M
c2/M
c1であり、
M
c1及びM
c2は、GPaを単位として表され、ここで、
・M
c1=10/A
c100であり、ここで、
・A
c100は、100MPaの負荷下での充填されたコード(51)の%を単位とする伸長であり、かつ
・M
c2=[(F
c40-F
c30)/(A
c40-A
c30)]/Sであり、ここで、
・Sは、S=Ml/Mvであるようなmm
2を単位として表される断面積であり、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント要素(54)の線密度であり、
・Mvは、cm
3当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント要素(54)の質量密度であり、
・F
c40は、充填材料なしのコードの理論最大力F
ctの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・F
c30は、前記充填材料なしのコードの前記理論最大力F
ctの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・A
c40は、前記充填材料なしのコードの前記理論最大力F
ctの40%での%を単位として表される充填されたコードの前記伸長であり、
・A
c30は、前記充填材料なしのコードの前記理論最大力F
ctの30%での%を単位として表される充填されたコードの前記伸長であり、
ここで、F
ct=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、前記単層(52)を構成する前記金属フィラメント状要素(54)のMPaを単位として表される平均引張強度である、
ことを特徴とする充填されたコード(51)。
【請求項6】
4≦M
c2/M
c1であることを特徴とする請求項5に記載の充填されたコード(51)。
【請求項7】
M
c2/M
c1≦12であることを特徴とする請求項5に記載の充填されたコード(51)。
【請求項8】
Asc≧1%であるような構造伸長Ascを有し、
前記構造伸長Ascは、力-伸長曲線を取得するために、充填されたコードに2014年の規格ASTM D2969-04を適用することによって決定され、
前記構造伸長Ascは、前記力-伸長曲線の最大勾配に対応する%を単位とする伸長に等しい、
ことを特徴とする請求項5に記載の充填されたコード(51)。
【請求項9】
トレッド(20)及びクラウン補強体(14)を含むクラウン(12)と、2つの側壁(22)と、2つのビード(24)とを含むタイヤ(10,10’)であって、
各側壁(22)が、各ビード(24)を前記クラウン(12)に接続し、前記クラウン補強体(14)が、該クラウン(12)内でタイヤ(10)の円周方向(Z)に延び、タイヤ(10)が、該ビード(24)の各々内に固着されて前記側壁(22)内及び該クラウン(12)内を延びるカーカス補強体(32)を含み、前記クラウン補強体(14)が、該カーカス補強体(32)と前記トレッド(20)の間で半径方向に挿入され、
前記クラウン補強体(14)が、エラストマー組成に基づくエラストマー母材に埋め込まれた少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素(48)を含む少なくとも1つのフーピングプライ(19)を含むフープ補強体(17)と、作動フィラメント状補強要素(46、47)を含む少なくとも1つの作動プライ(16、18)を含む作動補強体(15)とを含み、
前記カーカス補強体(32)が、カーカスフィラメント状補強要素(44)を含む少なくとも1つのカーカスプライ(34)を含み、
少なくとも前記作動フィラメント状補強要素(46、47)及び前記カーカスフィラメント状補強要素(44)が、タイヤの半径方向(Y)の赤道円周平面(E)の上への投影内に三角形メッシュを定めるように配置される、
前記タイヤ(10,10’)であって、
前記フーピングフィラメント状補強要素(48)又は各フーピングフィラメント状補強要素(48)は、螺旋巻き金属フィラメント状要素(54)の単層を含む充填されたコード(51)によって形成され、該金属フィラメント状要素(54)は、該充填されたコード(51)の内部エンクロージャ(58)を定め、該充填されたコード(51)は、前記エラストマー組成に基づくものであるかつ該充填されたコード(51)の該内部エンクロージャ(58)に位置する該内部エンクロージャ(58)のための充填材料(53)を含み、
前記充填されたコード(51)は、それがタイヤ(10,10’)から抽出された状態で請求項5に従うものである、
ことを特徴とするタイヤ(10,10’)。
【請求項10】
トレッド(20)及びクラウン補強体(14)を含むクラウン(12)と、2つの側壁(22)と、2つのビード(24)とを含むタイヤ(10,10’)であって、
各側壁(22)が、各ビード(24)を前記クラウン(12)に接続し、前記クラウン補強体(14)が、該クラウン(12)内でタイヤ(10)の円周方向(Z)に延び、タイヤ(10)が、該ビード(24)の各々内に固着されて該側壁(22)内及び該クラウン(12)内を延びるカーカス補強体(32)を含み、前記クラウン補強体(14)が、該カーカス補強体(32)と前記トレッド(20)の間で半径方向に挿入され、
前記クラウン補強体(14)が、エラストマー組成に基づくエラストマー母材に埋め込まれた少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素(48)を含む少なくとも1つのフーピングプライ(19)を含むフープ補強体(17)と、作動フィラメント状補強要素(46、47)を含む少なくとも1つの作動プライ(16、18)を含む作動補強体(15)とを含み、
前記カーカス補強体(32)が、カーカスフィラメント状補強要素(44)を含む少なくとも1つのカーカスプライ(34)を含み、
少なくとも前記作動フィラメント状補強要素(46、47)及び前記カーカスフィラメント状補強要素(44)が、タイヤの半径方向(Y)の赤道円周平面(E)の上への投影内に三角形メッシュを定めるように配置され、
前記フーピングフィラメント状補強要素(48)又は各フーピングフィラメント状補強要素(48)が、螺旋巻き金属フィラメント状要素(54)の単層を含む充填されたコード(51)によって形成され、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)が、コード(50)が実質的に直線の方向に延びる時に該実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線(A)の周りに螺旋経路を描き、それにより、該主軸線(A)に対して実質的に垂直な断面平面内で、該層(52)の各金属フィラメント状要素(54)の中心と該主軸線(A)との間の距離が、該層(52)の全ての該金属フィラメント状要素(54)に関して実質的に一定かつ同一であり、該金属フィラメント状要素(54)が、該充填されたコード(51)の内部エンクロージャ(58)を定め、該充填されたコード(51)が、前記エラストマー組成に基づくものであるかつ該充填されたコード(51)の該内部エンクロージャ(58)に位置する該内部エンクロージャ(58)のための充填材料(53)を含む、
前記タイヤ(10,10’)であって、
前記フーピングプライ(19)は、それがタイヤ(10,10’)から抽出された状態で、
・100daN.mm
-1≦M
n1≦600daN.mm
-1、かつ
・1000daN.mm
-1≦M
n2≦4500daN.mm
-1、かつ
・3≦M
n2/M
n1であり、
M
n1及びM
n2は、daN.mm
-1を単位として表され、ここで、
・M
n1=250/A
n250であり、ここで、
・A
n250は、250daN.dm
-1の負荷下での前記フーピングプライ(19)の%を単位として表される等価伸長であり、A
n250は、250daN.dm
-1の該負荷をフーピングプライ(19)のデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素(48)の密度で割り算して単位負荷を取得することによって、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で前記充填されたコード(51)を引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での該充填されたコード(51)の伸長を決定することによって得られ、かつ
・M
n2=[(F
n40-F
n30)/(A
n40-A
n30)]であり、ここで、
・F
n40は、前記フーピングプライ(19)の理論最大力F
ntの40%に等しいdaN.dm
-1を単位として表される力であり、
・F
n30は、前記フーピングプライ(19)の前記理論最大力F
ntの30%に等しいdaN.dm
-1を単位として表される力であり、
・A
n40は、前記フーピングプライ(19)の前記理論最大力F
ntの40%での%を単位として表される該フーピングプライの前記等価伸長であり、A
n40は、該フーピングプライ(19)の該理論最大力F
ntの40%をフーピングプライ(19)のデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素(48)の密度dで割り算して40%での単位負荷を取得することによって、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で前記充填されたコード(51)を引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での該充填されたコード(51)の伸長を決定することによって得られ、、
・A
n30は、前記フーピングプライ(19)の前記理論最大力F
ntの30%での%を単位として表される該フーピングプライの前記等価伸長であり、A
n30は、該フーピングプライ(19)の該理論最大力F
ntの30%をフーピングプライ(19)のデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素(48)の前記密度dで割り算して30%での単位負荷を取得することによって、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で前記充填されたコード(51)を引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での該充填されたコード(51)の伸長を決定することによって得られ、
ここで、F
nt=Ml×Rm×d/Mvであり、daN.dm
-1を単位として表され、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント状要素(54)の線密度であり、
・Mvは、cm
3当たりのgを単位として表される前記金属フィラメント状要素(54)の質量密度であり、
・Rmは、前記単層(52)を構成する前記金属フィラメント状要素(54)のMPaを単位として表される平均引張強度であり、
・dは、フーピングプライ(19)のdm当たりの個数を単位として表される該フーピングプライ(19)内の前記1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素(48)の前記密度である、
という特性を有する、
ことを特徴とするタイヤ(10,10’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのタイヤを補強するのに使用可能である金属コードに関する。タイヤは、支持要素、例えばリムと協働することによって大気圧よりも高い圧力まで加圧することができるキャビティを形成することを意図するケーシングを意味すると理解される。本発明によるタイヤは、実質的にトロイダル形状の構造を有する。
【背景技術】
【0002】
クラウンと2つの側壁とを含む乗用車のためのタイヤは従来技術から公知である。従来、これらのタイヤは、2つのビード内に固着されてそれ自体がトレッドを半径方向に載せているクラウン補強体を半径方向に載せているカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、2つの側壁によってこれらのビードに接合されている。カーカス補強体は、カーカスフィラメント状補強要素を含む単一カーカスプライを含む。クラウン補強体は、作動フィラメント状補強要素を含む2つの作動プライを含む作動補強体を含み、2つのプライの作動フィラメント状補強要素は、一方の作動プライから他方まで反対の向きを有するタイヤの周方向との角度を形成する。同様に、クラウン補強体は、フーピング織物フィラメント状補強要素を含む単一フーピングプライを含むフープ補強体を含む。カーカスフィラメント状補強要素及び作動フィラメント状補強要素は、クラウン内に三角形メッシュを定めるように配置される。そのようなタイヤは、特にUS2007006957に説明されている。2つの作動プライの存在に起因して、US2007006957でのフーピング織物フィラメント状補強要素は、比較的劣る機械特性を有する。
【0003】
作動補強体が単一作動プライを含むタイヤは、WO2016/166056から公知である。このようにして、タイヤのクラウン補強体は軽量化される。このタイヤでは、三角形メッシュは、カーカスフィラメント状補強要素、作動フィラメント状補強要素、及びフーピングフィラメント状補強要素のクラウン内の特定の配置によってもたらされる。WO2016/166056は、織物及び金属フーピングフィラメント状補強要素を説明している。特に、WO2016/166056は、各々が鋼鉄モノフィラメントで製造されて0.26mmに等しい直径を有するN=3個の螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含むフーピングフィラメント状補強要素を形成するコード3.26を説明している。単一作動プライの存在に起因して、WO2016/166056でのフーピングフィラメント状補強要素は、比較的良好な機械特性を有する。
【0004】
US2007006957及びWO2016/166056では、フーピングフィラメント状補強要素は、タイヤフーピング機能を保証しなければならず、すなわち、タイヤの回転速度に関連付けられた遠心力の効果、例えば、タイヤに強い負荷が印加された時のタイヤのプロファイルの変形又は接地面の変容を相殺しなければならない。この点に関して、US2007006957でのタイヤは、そのフーピング機能を改善することができるフーピングフィラメント状補強要素を有する。
【0005】
更に、騒音、特に、例えば規格ISO13325:2003に従う測定方法を用いて評価される「惰走」騒音と呼ばれる騒音の発生が可能な限り少ないタイヤを有することが望ましい。この点に関して、WO2016/166056でのタイヤは、比較的大量の騒音を生じる。
【0006】
更に、US2007006957でのタイヤ及びWO2016/166056でのタイヤの場合の両方では、織物材料、特にアラミドの比較的高いコストに起因して、フーピング織物フィラメント状補強要素は比較的高価である。他方で例えば高速での高温では、これらの織物材料の機械特性は、それらの熱安定性が劣ることに起因して有意に劣化する。最後に、織物フィラメント状要素は、タイヤが受ける機械的攻撃、例えばパンクに関していくらかあるとしても単に小さい保護の役割を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タイヤのフーピング機能を保証すること及びタイヤによって生じる騒音を低減することの両方を可能にする金属フーピングフィラメント状補強要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるコード
【0009】
この目的のために、本発明の主題は、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含むコードであり、層の各金属フィラメント状要素は、コードが実質的に直線の方向に延びる時に実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに螺旋経路を描き、それにより、主軸線に対して実質的に垂直な断面平面での層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線との間の距離は、層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であり、このコードでは、
・5GPa≦M1≦16GPa、かつ
・40GPa≦M2≦160GPa、かつ
・3≦M2/M1であり、
M1及びM2は、GPaを単位として表され、ここで、
・M1=10/A100であり、ここで、
・A100は、100MPaの負荷下でコードの%を単位とする伸長であり、かつ
・M2=[(F40-F30)/(A40-A30)]/Sであり、ここで、
・Sは、mm2を単位として表されるS=Ml/Mvであるような断面積であり、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント要素の線密度であり、
・Mvは、cm3当たりのgを単位として表される金属フィラメント要素の質量密度であり、
・F40は、コードの理論最大力Ftの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・F30は、コードの理論最大力Ftの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・A40は、コードの理論最大力Ftの40%での%を単位として表されるコードの伸長であり、
・A30は、コードの理論最大力Ftの30%での%を単位として表されるコードの伸長であり、
ここで、Ft=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、単層を構成する金属フィラメント要素のMPaを単位として表される平均引張強度である。
【0010】
本発明によるコードは、下記で説明する比較試験によって実証するように、タイヤによって生じる騒音を5GPaから16GPaの範囲にわたるM1の値に起因して低減することを可能にする。M1は、通常の条件、従って「惰走」騒音と呼ばれる騒音を生じる条件を表す条件下で走行している時にコードが受ける負荷に対するコードの弾性率を表している。5GPaを下回ると、比較的低い印加負荷の場合でもコードは過度に大きく変形することになり、従ってかなり高い弾性率M2に対応する伸長範囲に達することになり、この弾性率は、特に、タイヤによって生じる騒音に関してだけではなくタイヤの快適さに関しても好ましくなくなる。16GPaを上回ると、コードは、過度に高い弾性率を有することになり、従って比較的高い剛性を有することになり、それによってタイヤの走行によって発生する騒音が増大する。
【0011】
更に、本発明によるコードは、下記で説明する比較試験によって実証するように、40GPaから160GPaの範囲にわたるM2の値に起因して優れたフーピング機能も有する。M2は、強い負荷がタイヤに印加された時にコードが受ける負荷に対するコードの弾性率を表している。40GPaを下回ると、コードは、タイヤの回転速度に関連付けられた遠心力の効果を相殺するほど十分なフーピング機能を保証することができない。160GPaを上回ると、例えば、歩道、減速ハンプ、又は窪みのような障害物を通り過ぎる時に有意な変形が加えられる際にコードが損傷を受けるリスクがある。
【0012】
最後に、M2/M1比は、本発明によるコードの可能な限り小さい騒音の発生と優れたフーピング機能とが同時に得られること、及び1つの性能態様が別の性能態様のために犠牲にされないことを保証する。
【0013】
A30及びA40の値は、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコードを引張することによって得られた力-伸長曲線からコードの理論最大力Ftのそれぞれ30%及び40%の場所の値を決定することによって得られる。同様に、A100の値は、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコードを引張することによって得られた力-伸長曲線から100MPaの負荷下でのコードの伸長を決定することによって得られる。
【0014】
平均機械強度Rmは、単層を構成する金属フィラメント状要素の機械強度にこれらの金属フィラメント状要素の個数によって加重した平均を意味する。従って、例えば、金属フィラメント状要素の全てが同じ機械強度を有する場合に、平均機械強度Rmは、各金属フィラメント状要素の機械強度に等しい。各金属フィラメント状要素の機械強度又は引張強度は、引張負荷下でのこの要素の破断時の最大歪みであり、2014年の規格ASTM D2969-04を各金属フィラメント状要素に適用することによって決定される。
【0015】
金属フィラメント状要素の線密度Mlは、例えば、2014年の規格ASTM D2969-04を各金属フィラメント状要素に適用し、次いで、各金属フィラメント状要素の線密度の値を合計することによって決定される。
【0016】
金属フィラメント状要素の質量密度Mvは、金属フィラメント状要素の各々を構成する金属の質量密度である。例えば、タイヤの分野に使用される炭素鋼では、質量密度Mvは、7.8g.cm-3に等しい。
【0017】
上述した利点に加えて、本発明によるコードは、金属フィラメント状要素の使用に起因して、US2007006957及びWO2016/166056に説明されている従来技術のフーピング織物フィラメント状補強要素と比較してそれ程高価ではなく、より熱安定性が高く、タイヤに対して機械的保護を与えるフープ補強体の製造を可能にする。更に、金属フィラメント状要素の使用は、フープ補強体が製造された後にそれを放射線写真によって検査することを容易にする。
【0018】
特性M1、M2、M2/M1、M1’、M1’’、Ft、Ml、Mv、Rm、及び下記で説明する他の特性の値は、コードが製造された直後、すなわち、エラストマー母材内に埋め込むあらゆる段階の前か、又はコードが例えばタイヤのエラストマー母材から抽出され、それに伴ってあらゆるエラストマー母材、特にコードに存在するあらゆる材料がコードから除去される洗浄段階を施した後かのいずれかでコード上で測定される又はコードから決定される。元の状態を保証するために、各金属フィラメント状要素とエラストマー母材との間の接着界面は、例えば炭酸ナトリウム浴中の電気化学工程を用いて排除しなければならない。下記で説明する成形段階に関する効果、特にコードの伸長は、プライ及びコードの抽出によって排除され、この抽出中にプライ及びコードは、成形段階以前からのこれらの特性を実質的に取り戻す。
【0019】
当業者は、M1及びM2の値を本発明の範囲の限度内で変更するためにコードの幾何学的特性を変更することができると考えられる。この場合に、弾性率M1を引き上げるために、金属フィラメント状要素の曲率半径を低減し、それによって金属フィラメント状要素によって定められる内部エンクロージャの直径を増大させることができる。それとは対照的に、弾性率M1を引き下げるために、金属フィラメント状要素の曲率半径を増大させ、それによって内部エンクロージャの直径を低減することができる。弾性率M2を引き上げるために、各金属フィラメント状要素の螺旋角度を小さくし、それによって内部エンクロージャの直径を低減することができる。それとは対照的に、弾性率M2を引き下げるために、各金属フィラメント状要素の螺旋角度を大きくし、それによって内部エンクロージャの直径を増大させることができる。
【0020】
この点に関して、螺旋角度αは当業者に公知のパラメータであることを想起されるであろう。この場合に、螺旋角度αは、3回反復を含む以下の反復計算を用いて決定することができ、添字iが反復回数1,2、又は3を示している。%を単位として表される構造伸長Asを既知として、螺旋角度α(i)は、慣例記号Pが、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチであり、Nが、層内の金属フィラメント状要素の個数であり、Dfが、ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素の直径であり、Arcos、Cos、Arctan、及びSinが、それぞれ逆余弦関数、余弦関数、逆正接関数、及び正弦関数を表す時に、式α(i)=Arcos[(100/(100+As)×Cos[Arctan((π×Df)/(P×Cos(α(i-1))×Sin(π/N))]]であるようなものである。1回目の反復、すなわち、α(1)の計算では、α(0)=0である。αが度を単位として表される時に、3回目の反復では、小数点の背後に少なくとも1つの有効桁を有するα(3)=αが得られる。
【0021】
当業者に公知のパラメータである構造伸長Asは、例えば、2014年の規格ASTM D2969-04を試験されたコードに適用し、それによって力-伸長曲線を取得することで決定される。Asは、取得されたこの力-伸長曲線からこの曲線の最大勾配に対応する%を単位とする伸長として推定される。力-伸長曲線は、増大する伸長の方向に構造部分、弾性部分、及び可塑性部分を含むことを想起されるであろう。構造部分は、コードの含気、すなわち、コードを構成する様々な金属フィラメント状要素の間の空き空間から得られる構造伸長Asに対応する。弾性部分は、コードの構造、特に様々な層の角度及びスレッドの直径の構成から得られる弾性の伸長に対応する。可塑性部分は、1又は2以上の金属フィラメント状要素の可塑性から得られる可塑性の伸長(弾性限界よりも大きい不可逆変形)に対応する。
【0022】
各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチPは、当該フィラメント状要素が内部に位置付けられたコードの軸線と平行に測定される当該フィラメント状要素が延びる長さであり、この長さの後にこのピッチを有する当該フィラメント状要素がこのコード軸線の周りに1完全巻回を作る長さであることを想起されるであろう。
【0023】
ミリメートルを単位として表される螺旋直径Dhは、Pが、各金属フィラメント状要素が巻かれる際のピッチであり、αが、上記で決定された各金属フィラメント状要素の螺旋角度であり、Tanが正接関数である時に、Dh=P×Tan(α)/πという関係式を用いて計算される。螺旋直径Dhは、コードの主軸線の周りに垂直な平面内で層の複数の金属フィラメント状要素の中心を通過する理論円の直径に対応する。
【0024】
本発明によるコードの金属フィラメント状要素は、直径Dvのコードの内部エンクロージャを定める。ミリメートルを単位として表されるエンクロージャ直径Dvは、Dfが、各金属フィラメント状要素の直径であり、Dhが螺旋直径であり、これら両方がミリメートルを単位として表される時に、Dv=Dh-Dfという関係式を用いて計算される。
【0025】
ミリメートルを単位として表される各金属フィラメント状要素の曲率半径Rfは、Pが、ミリメートル単位として表される各金属フィラメント状要素のピッチであり、αが各金属フィラメント状要素の螺旋角度であり、Sinが正弦関数である時に、Rf=P/(π×Sin(2α))という関係式を用いて計算される。
【0026】
本発明によるコードは、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む。言い換えれば、本発明によるコードは、螺旋巻き金属フィラメント状要素の2つの層でも2よりも多い層でもなく1つの層を含む。層は、1つだけではなく複数の金属フィラメント状要素で製造される。コードの一実施形態では、例えば、コードの製造工程が完了した時に、上記で定めたコードは、巻かれた金属フィラメント状要素の層から構成される、言い換えれば、層内のもの以外のいずれの他の金属フィラメント状要素も含まない。
【0027】
本発明によるコードは、単一螺旋を有する。定義により、単一螺旋コードは、各金属フィラメント状要素の軸線がコード軸線の周りに第1の螺旋を描き、更にコード軸線によって描かれた螺旋の周りに第2の螺旋を描く2重螺旋コードとは対照的に層の各金属フィラメント状要素の軸線が単一螺旋を描くコードである。言い換えれば、コードは、実質的に直線の方向に延びる時に互いに螺旋状に巻かれた金属フィラメント状要素の単層を含み、この層の各金属フィラメント状要素は、主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内で層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線との間の距離が層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であるような螺旋経路を実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに描く。各金属フィラメント状要素の中心と主軸線の間のこの距離は、螺旋直径Dhの半分に等しい。それとは対照的に、2重螺旋コードが実質的に直線の方向に延びる時に、層の各金属フィラメント状要素の中心と実質的に直線の方向との間の距離は、層の金属フィラメント状要素の全てに関して異なる。
【0028】
本発明によるコードは、中心金属コアを持たない。このコードをNが金属フィラメント状要素の個数である1xN構造のコード又はオープンコードとも呼ぶ。上記で定めた本発明によるコードでは、内部エンクロージャは空であり、従っていずれの充填材料も持たず、特にいずれのエラストマー組成も持たない。従って、このコードを充填材料なしのコードと呼ぶ。
【0029】
本発明によるコードのエンクロージャは、金属フィラメント状要素によって境界が定められ、理論円により、すなわち、一方で各金属フィラメント状要素の半径方向内側に、他方で各金属フィラメント状要素に対してタンジェントに境界が定められた容積に対応する。この理論円の直径は、エンクロージャ直径Dvに等しい。
【0030】
フィラメント状要素は、長手方向に主軸線に沿って延び、主軸線と垂直に主軸線に沿う寸法Lと比較して相対的に小さい最大寸法Gを有する断面を有する要素を意味する。相対的に小さいという表現は、L/Gが100よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、1000よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。この定義は、円形断面を有するフィラメント状要素と、非円形断面、例えば多角形又は楕円形の断面を有するフィラメント状要素との両方を意図している。非常に好ましくは、各金属フィラメント状要素は円形断面を有する。
【0031】
定義により、金属という用語は、フィラメント状要素の大部分(すなわち、その重量の50%超)又は全て(その重量の100%)が金属材料から構成されることを意味する。各金属フィラメント状要素は、好ましくは、鋼鉄、より好ましくは、当業者が一般的に炭素鋼と呼ぶパーライト炭素鋼又はフェライト-パーライト炭素鋼で製造され、又はステンレス鋼(定義によると少なくとも10.5%のクロムを含む鋼鉄)で製造される。
【0032】
コードは、文献WO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法に従ってかつそのような設備を使用することによって製造される。分割段階を実施するそのような方法は、金属フィラメント状要素が螺旋状に巻かれる単一アセンブリ段階を含み、このアセンブリ段階に特に構造伸長の値を引き上げるために各金属フィラメント状要素を個々に事前形成する段階が先行する従来のケーブリング方法と区別しなければならない。そのような方法及び設備は、文献EP0548539、EP1000194、EP0622489、WO2012055677、JP2007092259、W02007128335、JPH06346386、又はEP0143767に説明されている。これらの方法実施中に、可能な最も大きい構造伸長をもたらすように金属モノフィラメントが個々に事前形成される。しかし、特定の設備を必要とする金属モノフィラメントを個々に事前形成するこの段階は、個々の事前形成段階がなく、他に大きい構造伸長をもたらすことを可能にすることもない方法と比較して、この方法を相対的に非生産的にするだけでなく、このようにして事前形成される金属モノフィラメントに対して事前形成ツールとの摩擦に起因する悪影響も有する。そのような悪影響は、金属モノフィラメントの面に破裂開始ファクタを生成し、従って金属モノフィラメントの耐久性に関して、特に圧縮下耐久性に関して有害である。そのような事前形成マークの不在又は存在は、製造方法実施後に電子顕微鏡下で又はより簡単にはコードを製造する方法を知ることによって識別可能である。
【0033】
使用される方法に起因して、コードの各金属フィラメント状要素は事前形成マークを持たない。そのような事前形成マークは、特に扁平を含む。更に、事前形成マークは、各金属フィラメント状要素が沿って延びる主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内を延びる亀裂を含む。そのような亀裂は、主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内で各金属フィラメント状要素の半径方向外面から半径方向内側に向けて延びる。上述のように、そのような亀裂は、機械的事前形成ツールによる曲げ負荷に起因して、すなわち、各金属フィラメント状要素の主軸線とは垂直に引き起こされ、それによってこれらの亀裂は耐久性に関して非常に有害になる。それとは対照的に、金属フィラメント状要素が一時的中心上で集合的かつ同時に事前形成されるWO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法では、事前形成負荷は捻り方向に、従って各金属フィラメント状要素の主軸線の周りに非垂直に作用する。生成されるいずれの亀裂も、各金属フィラメント状要素の半径方向外面から半径方向内側に向けてではなく、各金属フィラメント状要素の半径方向外面に沿って延び、それによってこれらの亀裂は耐久性に関してそれ程有害ではなくなる。
【0034】
「aとbの間」という表現で表すあらゆる値範囲は、a超からb未満までの値範囲を表し(すなわち、限界値a及びbを除外する)、それに対して「aからbまで」という表現で表すあらゆる値範囲は、aからbに至るまでの値範囲を意味する(すなわち、厳密に限界値a及びbを含む)。
【0035】
下記で説明する任意的な特性は、技術的に適合する限り、互いに組み合わせることができる。
【0036】
有利なことに、6GPa≦M1、好ましくは、8GPa≦M1である。すなわち、コードは、かなり高い弾性率M2に対応する伸長範囲に過度に急激に到達するリスクを持たずに比較的高い負荷を受け持つ。
【0037】
有利なことに、M1≦14GPa、好ましくは、M1≦12GPaである。すなわち、タイヤによって生じる騒音が更に低減する。
【0038】
有利なことに、65GPa≦M2、好ましくは、80GPa≦M2、より好ましくは、90GPa≦M2である。すなわち、コードのフーピング機能が更に改善される。
【0039】
有利なことに、M2≦150GPa、好ましくは、M2≦140GPa、より好ましくは、M2≦130GPaである。すなわち、有意な変形が加えられる際にコードが損傷を受けるリスクが低減する。
【0040】
有利なことに、6≦M2/M1、好ましくは、8≦M2/M1、より好ましくは、10≦M2/M1である。すなわち、タイヤによって生じる騒音の低減及びコードのフーピング機能が更に改善する。
【0041】
有利なことに、M2/M1≦19、好ましくは、M2/M1≦17、より好ましくは、M2/M1≦15である。すなわち、所与の弾性率M1において過度に高い弾性率M2が存在すること、又は所与の弾性率M2において過度に低い弾性率M1が存在することが回避される。
【0042】
有利なことに、A200が%を単位として表される200MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、5GPa≦M1’≦16GPaであるようにM1’=20/A200である。
【0043】
有利なことに、6GPa≦M1’、好ましくは、8GPa≦M1’である。
【0044】
有利なことに、M1’≦14GPa、好ましくは、M1’≦12GPaである。
【0045】
上述したM1’に関する有利な特性は、コードが200MPaよりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、一層大きい負荷範囲にわたって、従って様々な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0046】
更に有利なことに、A300が%を単位として表される300MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、5GPa≦M1’’≦16GPaであるようにM1’’=30/A300である。
【0047】
有利なことに、6GPa≦M1’’、好ましくは、8GPa≦M1’’である。
【0048】
有利なことに、M1’’≦14GPa、好ましくは、M1’’≦12GPaである。
【0049】
上述したM1’’に関する有利な特性は、コードが300MPaよりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、非常に大きい負荷範囲にわたって、従って非常に多様な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0050】
有利なことに、コードは、それに2014年の規格ASTM D2969-04を適用し、それによって力-伸長曲線を取得することで決定され、%を単位とした力-伸長曲線の最大勾配に対応する伸長に等しいAs≧1%、好ましくは、As≧2.5%、より好ましくは、As≧3%、更に好ましくは、3%≦As≦5.5%であるような構造伸長Asを有する。
【0051】
有利なことに、各金属フィラメント状要素は事前形成マークを持たない。言い換えれば、コードは、金属フィラメント状要素の各々を個々に事前形成する段階を持たない方法によって得られる。
【0052】
上述のように、本発明によるコードは、文献WO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法に従ってかつそのような設備を使用することによって製造される。この方法は、M個の金属フィラメント状要素を含む一時的アセンブリを撚転によって組み立てる段階であって、その間にM個の金属補強要素が一時的中心上に集合的にかつ同時に事前形成される上記組み立てる段階と、それに続く一時的アセンブリを一時的中心と本発明によるコードとの間で分離する段階であって、その間に一時的アセンブリが一時的中心と一時的アセンブリのM個の金属フィラメント状要素の少なくとも一部分との間で分離されて本発明によるコードが形成される上記分離する段階とを含む。より具体的には、そのような方法は、一時的アセンブリを形成するためにM個の金属フィラメント状要素の層内でM個の金属フィラメント状要素を一時的中心の周りに互いに組み立てる段階と、一時的アセンブリを少なくともM1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリとM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリとに分割する段階とを含む。次いで、第1のアセンブリ及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方は、本発明によるコードを形成し、すなわち、M1=N及び/又はM2=Nである。
【0053】
撚転段階に応答した各金属フィラメント状要素の弾性回復に起因して、一時的アセンブリの各金属フィラメント状要素のピッチは、一時的ピッチからそれよりも大きいピッチPに変化する。当業者は、望ましいピッチPをもたらすために適用される一時的ピッチがどのように決定されるかを知っている。
【0054】
類似の方式で、コード内の各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、この弾性回復に起因して、一時的アセンブリ内の各フィラメント状要素の一時的螺旋直径よりも実質的に大きい。コード内の各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、撚転の度合いが高いほど一時的アセンブリ内の各フィラメント状要素の一時的螺旋直径よりも一層大きい。当業者は、撚転度合いと一時的中心の性質とに依存して望ましい螺旋直径Dhをもたらすために適用される一時的螺旋直径がどのように決定されるかを知っている。エンクロージャ直径Dvに対して同じことが当てはまる。
【0055】
有利なことに、第1の実施形態では、一時的アセンブリを分割する段階は、第1及び第2のアセンブリの一時的中心を分離する段階を含む。この実施形態では、第1のアセンブリは、互いに巻かれて単層内で第1のアセンブリの軸線の周りに分散されたM1個のフィラメント状要素から構成される。同様に、この実施形態の第2のアセンブリは、互いに巻かれて単層内で第2のアセンブリの軸線の周りに分散されたM2個の金属フィラメント状要素から構成される。言い換えれば、この第1の実施形態では、一時的中心が少なくとも1つのフィラメント状要素を含む場合に、一時的中心の各フィラメント状要素は、M1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリ及びM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリに属さない。従ってM1+M2=Mである。
【0056】
この第1の実施形態の第1の好ましい変形では、分割段階実施中に、第1のアセンブリは、第2のアセンブリと一時的中心とによって形成された一時的ユニットから分離され、次いで、第2のアセンブリと一時的中心とが互いに分離される。第2の変形では、分割段階実施中に、一時的中心と第1のアセンブリと第2のアセンブリとが互いに対にされて同時に分離される。
【0057】
有利なことに、本方法は、一時的中心を再利用する段階を含み、この段階実施中に、
・一時的中心が分割段階の下流で回収され、
・先に回収された一時的中心がアセンブリ段階の上流に導入される。
【0058】
好ましい実施形態では、一時的中心を再利用する段階は継続的に行うことができ、すなわち、分離段階から出る一時的中心は、それを蓄積する中間段階なくアセンブリ段階に再導入される。別の実施形態では、一時的中心を再利用する段階は断続的であり、すなわち、一時的中心を蓄積する中間段階が存在する。
【0059】
より好ましくは、織物一時的中心が使用される。
【0060】
第2の実施形態では、一時的アセンブリを分割する段階は、一時的中心を少なくとも第1のアセンブリと第2のアセンブリとの間で分割する段階を含む。従って、この第2の実施形態では、互いに螺旋状に巻かれたP1個、P2個の金属フィラメント状要素それぞれの層を各々が含む金属フィラメント状要素の2つのアセンブリが得られ、これらのアセンブリのうちの少なくとも一方では、中心コアは、周りに当該層の金属フィラメント状要素が巻かれた一時的中心の少なくとも一部分を含む又はそれから構成される。言い換えれば、この第2の実施形態では、一時的中心がK個の金属フィラメント状要素を含む場合に、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの少なくとも1個は、M1個の金属フィラメント状要素の第1のアセンブリ及びM2個の金属フィラメント状要素の第2のアセンブリのうちの少なくとも一方に属する。
【0061】
有利なことに、分割段階実施中に、一時的中心の少なくとも第1の部分が一時的アセンブリの第1の金属フィラメント状要素と一緒に分割され、それによって第1のアセンブリが形成される。
【0062】
従って、第1のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれたP1個の金属フィラメント状要素の層と、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの第1の部分(K1個のフィラメント状要素)を含む又はそれから構成され、周りにP1個の金属フィラメント状要素が互いに螺旋状に巻かれた中心コアとを含む。P1+K1=M1である。
【0063】
有利なことに、分割段階実施中に、一時的中心の少なくとも第2の部分が一時的アセンブリの第2の金属フィラメント状要素と一緒に分割され、それによって第2のアセンブリが形成される。
【0064】
従って、第2のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれたP2個の金属フィラメント状要素の層と、一時的中心のK個の金属フィラメント状要素のうちの第2の部分(K2個のフィラメント状要素)を含む又はそれから構成され、周りにP2個の金属フィラメント状要素が互いに螺旋状に巻かれた中心コアとを含む。P2+K2=M2である。
【0065】
好ましくは、第1のアセンブリと第2のアセンブリとは同時に形成される。
【0066】
好ましくは、分割段階の前に、一時的中心の第1の部分と第2の部分が一時的中心を構成する。従って、一時的中心の第1の部分と第2の部分は相補的である。従ってK1+K2=Kである。変形では、K1+K2<Kであることが可能である。
【0067】
変形では、第1のアセンブリは、一時的中心を含む又はそれから構成される中心コアの周りで互いに螺旋状に巻かれたP1個の金属フィラメント状要素の層を含み、第2のアセンブリは、互いに螺旋状に巻かれ、中心コアを持たないP2=M2個の金属フィラメント状要素の層を含む。
【0068】
一実施形態では、アセンブリ段階は、撚転によって実施される。そのような場合に、金属フィラメント状要素は、集合的撚転と要素自体の軸線の周りの個々の撚転との両方を受け、それによって金属フィラメント状要素の各々に対する撚り戻しトルクを生じる。別の実施形態では、アセンブリ段階は、ケーブリングによって実施される。この場合に、金属フィラメント状要素は、アセンブリ点付近の同期回転に起因して要素自体の軸線の周りの撚転を受けない。
【0069】
好ましくは、撚転アセンブリ段階では、本方法は、一時的アセンブリを平衡化する段階を含む。従って、M個の金属フィラメント状要素と一時的中心とで構成されるアセンブリに対して平衡化段階が実施される場合に、平衡化段階は、暗黙のうちに分割段階の上流に実施される。
【0070】
有利なことに、本方法は、分割段階の後に第1及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方を平衡化する段階を含む。
【0071】
有利なことに、本方法は、第1及び第2のアセンブリのそれぞれの進行方向の周りのこれらのアセンブリの回転を維持する段階を含む。この段階は、分割段階の後かつ第1及び第2のアセンブリのうちの少なくとも一方を平衡化する段階の前に実施される。
【0072】
一実施形態では、金属フィラメント状要素は、直径Dvのコードの内部エンクロージャを定め、各金属フィラメント状要素は、直径Dfと螺旋曲率半径Rfとを有し、Dv、Df、及びRfは、ミリメートルを単位として表され、コードは、9≦Rf/Df≦30及び1.30≦Dv/Df≦2.10という関係式を満たす。
【0073】
そのような特性は、本発明による弾性率M1を有するコードをもたらすことを可能にし、比較的小さい直径を維持しながらタイヤによって生じる騒音を低減することを可能にする。
【0074】
本発明者は、本発明の背景では、各金属フィラメント状要素の直径Dfに対して十分に大きい曲率半径Rfに起因するコードの長手軸線からの各金属フィラメント状要素の比較的大きい間隔に起因して、コードが十分に含気され、この間隔によって金属フィラメント状要素が互いに向かって徐々に移動することが可能になり、比較的低い弾性率M1をもたらすことが可能になると仮定する。更に、各金属フィラメント状要素の過度に大きい曲率半径Rfの場合に、コードは、例えばタイヤに対する補強の役割を保証するのに不十分な圧縮時長手方向剛性のみを有することになる。
【0075】
更に、過度に大きい内部エンクロージャ直径Dvの場合に、コードは、金属フィラメント状要素の直径に対して過度に大きい直径を有することになる。それとは対照的に、過度に小さい内部エンクロージャ直径Dvの場合に、コードは、金属フィラメント状要素が負荷に適応することができるには金属フィラメント状要素間に過度に小さい空間のみを有することになる。この場合に、弾性率M1は過度に高く、タイヤは過度に高い騒音を発することになる。
【0076】
更に、Rf/Dv及びDv/Dfのそのような比の場合に、コードは、優れた長手方向圧縮性を提供し、特に高い圧縮耐久性が与えられる。
【0077】
好ましい実施形態では、11≦Rf/Df≦19である。
【0078】
好ましい実施形態では、1.30≦Dv/Df≦2.05、より好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.00である。
【0079】
有利なことに、螺旋曲率半径Rfは、2mm≦Rf≦7mmであるようなものである。
【0080】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対しては2mm≦Rf≦5mm、好ましくは、3mm≦Rf≦5mmである。
【0081】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、4mm≦Rf≦6mm、好ましくは、4mm≦Rf≦5mmである。
【0082】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、4mm≦Rf≦7mm、好ましくは、4.5mm≦Rf≦6.5mmである。
【0083】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mmであるようなものである。
【0084】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.50mm≦Dh≦1.00mm、好ましくは、0.70mm≦Dh≦1.00mmである。
【0085】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.85mm≦Dh≦1.20mm、好ましくは、0.90mm≦Dh≦1.15mmである。
【0086】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.95mm≦Dh≦1.40mm、好ましくは、1.00mm≦Dh≦1.35mmである。
【0087】
有利なことに、Dvは、Dv≧0.46mmであるようなものである。
【0088】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.46mm≦Dv≦0.70mmである。
【0089】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.50mm≦Dv≦0.80mmである。
【0090】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.55mm≦Dv≦1.00mmである。
【0091】
好ましい実施形態では、各金属フィラメント状要素は、3mm≦P≦15mm、好ましくは、3mm≦P≦9mmであるようなピッチPで巻かれる。
【0092】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して3mm≦P≦9mmである。
【0093】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、7mm≦P≦15mmである。
【0094】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、9mm≦P≦15mmである。
【0095】
有利な実施形態では、全ての金属フィラメント状要素が同じ直径Dfを有する。
【0096】
有利なことに、Dfは、0.10mm≦Df≦0.50mmであるようなものである。
【0097】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.20mm≦Df≦0.35mm、好ましくは、0.25mm≦Df≦0.33mmである。
【0098】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.22mm≦Df≦0.40mm、好ましくは、0.25mm≦Df≦0.38mmである。
【0099】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、0.32mm≦Df≦0.50mm、好ましくは、0.35mm≦Df≦0.50mmである。
【0100】
有利なことに、コードは、D≦2.00mmであるような直径Dを有する。
【0101】
Dと表示する直径又は見かけ直径は、フィラメント状要素の巻きピッチPの1.5倍に少なくとも等しい直径の接点を有する厚みゲージ(1/100ミリメートルの精度をもたらすことを可能にし、a型接点が装備され、0.6N前後の接触圧を有するKaeferからのモデルJD50を挙げることができる)を用いて測定される。測定プロトコルは、3つの測定(コードの軸線と垂直にゼロ張力下に実施される)のセットの3回反復から構成され、これらの測定のうちの第2及び第3のものは、コードの軸線の周りの測定方向の回転によって前回の測定から3分の1回転だけ角度オフセットされた方向に実施される。
【0102】
乗用車だけでなくオートバイのような二輪車にも向けたタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、好ましくは、乗用車に対して0.75mm≦D≦1.40mm、好ましくは、1.00mm≦D≦1.30mmである。
【0103】
小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、1.15mm≦D≦1.55mmである。
【0104】
オフロード車両、例えば農業車両又は建設プラント車両のためのタイヤを補強することを意図するコードの一実施形態では、1.5mm≦D≦2mmである。
【0105】
一実施形態では、各金属フィラメント状要素は、単一金属モノフィラメントを含む。この場合に、各金属フィラメント状要素は、金属モノフィラメントで有利に構成される。この実施形態の変形では、金属モノフィラメントは、銅、亜鉛、錫、コバルト、又はこれらの金属の合金、例えば黄銅又は青銅を含む金属被覆の層で直接に被覆される。この変形では、各金属フィラメント状要素は、例えば鋼鉄で製造された金属モノフィラメントから構成され、金属被覆層で直接に被覆されたコアを形成する。
【0106】
この実施形態では、各金属要素モノフィラメントは、上述のように好ましくは鋼鉄で製造され、1000MPaから5000MPaの範囲にわたる機械強度を有する。そのような機械強度は、タイヤの分野で一般的に遭遇する鋼鉄等級、すなわち、NT(標準張力)級、HT(高張力)級、ST(超張力)級、SHT(超高張力)級、UT(ウルトラ張力)級、UHT(ウルトラ高張力)級、及びMT(メガ張力)級に対応し、高機械強度の使用は、コードを内部に埋め込むことを意図する母材の補強の改善及びこうして補強される母材の軽量化を潜在的に可能にする。
【0107】
有利なことに、層がN個の螺旋巻き金属フィラメント状要素から構成される場合に、Nは、3から6の範囲にわたる。
【0108】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の直径Dfに対するピッチPの比Kは、P及びDfがミリメートルを単位として表される時に19≦K≦44であるようなものである。
【0109】
有利なことに、各金属フィラメント状要素の螺旋角度αは、13°≦α≦21°であるようなものである。
【0110】
過度に高い比Kの値の場合又は過度に小さい螺旋角度の値の場合に、コードの長手方向圧縮性が低減し、タイヤは過度に高い騒音を発する。過度に低い比Kの値の場合又は過度に大きい螺旋角度の値の場合に、コードの長手方向剛性が低減し、従ってコードの補強機能が低減する。
【0111】
本発明によって充填されたコード
【0112】
本発明の更に別の主題は、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む充填されたコードであり、層の各金属フィラメント状要素は、コードが実質的に直線の方向に延びる時に実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに螺旋経路を描き、それにより、主軸線に対して実質的に垂直な断面平面内で層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線の間の距離が層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であり、金属フィラメント状要素は、コードの内部エンクロージャを定め、充填されたコードは、エラストマー組成に基づくかつ充填されたコードの内部エンクロージャに位置する内部エンクロージャのための充填材料を含み、この充填されたコードでは、
・5GPa≦Mc1≦30GPa、かつ
・40GPa≦Mc2≦150GPa、かつ
・3≦Mc2/Mc1であり、
Mc1及びMc2は、GPaを単位として表され、ここで、
・Mc1=10/Ac100、ここで、
・Ac100は、%を単位とする100MPaの負荷下での充填されたコードの伸長であり、
・Mc2=[(Fc40-Fc30)/(Ac40-Ac30)]/S、ここで、
・Sは、mm2を単位として表されるS=Ml/Mvであるような断面積であり、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント要素の線密度であり、
・Mvは、cm3当たりのgを単位として表される金属フィラメント要素の質量密度であり、
・Fc40は、充填材料なしのコードの理論最大力Fctの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・Fc30は、充填材料なしのコードの理論最大力Fctの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・Ac40は、充填材料なしのコードの理論最大力Fctの40%での%を単位として表される充填されたコードの伸長であり、
・Ac30は、充填材料なしのコードの理論最大力Fctの30%での%を単位として表される充填されたコードの伸長であり、
ここで、Fct=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、単層を構成する金属フィラメント状要素のMPaを単位として表される平均引張強度である。
【0113】
本発明による充填されたコードは、エラストマー母材内に上記で定めた充填材料なしのコードを埋め込むことによって得られる。エラストマー母材は、エラストマー組成に基づいている。充填材料は、エラストマー組成、この場合は充填されたコードが埋め込まれる母材と同じ組成に基づいている。
【0114】
本発明による充填材料なしのコード又は充填されたコードのエンクロージャの境界は、金属フィラメント状要素によって定められ、このエンクロージャは、理論円によって境界が定められた容積、すなわち、一方で各金属フィラメント状要素の半径方向内側に、他方で各金属フィラメント状要素に対してタンジェントに境界が定められた容積に対応する。
【0115】
充填材料の存在に起因して、充填されたコードは、充填材料なしのコードの弾性率M1よりも高い弾性率Mc1を有する。その理由は、比較的低い負荷の場合に、充填材料が、単層の金属フィラメント状要素の互いに向かう半径方向移動を妨げ、これが、単層の金属フィラメント状要素の互いに向かう半径方向移動を妨げるものがない充填材料なしのコードの弾性率M1と比較して弾性率Mc1の増大を生じるからである。
【0116】
充填材料の存在に起因して、充填されたコードは、充填材料なしのコードの弾性率M2よりも低い弾性率Mc2を有する。その理由は、比較的高い負荷の場合に、充填材料がフィラメント状要素の位置を互いに対して固定してしまうので、充填されたコードのフィラメント状要素が、充填材料なしのコードのフィラメント状要素よりも大きい螺旋角度を有したままで負荷の印加を受けるからである。充填されたコードのフィラメント状要素のこのより大きい螺旋角度値は、充填材料なしのコードの弾性率M2と比較して弾性率Mc2の低下をもたらす。
【0117】
エラストマー母材は、エラストマー組成の架橋から得られるエラストマー挙動を有する母材を意味する。従ってエラストマー母材は、エラストマー組成に基づいている。エラストマー母材と全く同様に、充填材料もエラストマー組成、この場合はコードが埋め込まれる母材と同じ組成に基づいている。
【0118】
「~に基づく」という表現は、当該組成が、組成の製造の様々なフェーズ中にいくつかが少なくとも部分的に互いに反応することができる及び/又は反応することが意図された様々な使用成分の原位置反応の化合物及び/又は生成物を含み、従って当該組成が完全又は部分的な架橋状態にあるか又は未架橋状態にあることが可能であることを意味すると理解しなければならない。
【0119】
エラストマー組成は、当該組成が少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含むことを意味する。好ましくは、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含む組成は、エラストマーと架橋システムと充填剤とを含む。これらのプライに使用される組成は、フィラメント状補強要素のスキムコーティングのための従来の組成であり、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム、補強充填剤、例えばカーボンブラック及び/又はシリカ、架橋システム、例えば、好ましくは、硫黄とステアリン酸と酸化亜鉛とを含む加硫システム、並びに任意的に加硫促進剤、加硫遅延剤、及び/又は様々な添加剤を含む。フィラメント状補強要素と、それが埋め込まれる母材との間の接着は、例えば、通常の接着剤組成、例えばRFL型の接着剤又は同等の接着剤によって保証される。
【0120】
充填材料なしのコードの場合と同様に、M1は、通常条件、従って「惰走」騒音と呼ばれる騒音を生じる条件に対応する条件下で走行する時にコードが受ける負荷に対するコードの弾性率を表し、M2は、タイヤに強い負荷が印加されている時にコードが受ける負荷に対するコードの弾性率を表している。
【0121】
Ac30及びAc40の値は、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコードを引張することによって得られた力-伸長曲線から充填材料なしのコードの理論最大力Fctのそれぞれ30%及び40%を決定することによって得られる。前述のことを踏まえると、Fctは、FtであることでFtに等しい。A100と類似の方式で、Ac100の値は、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコードを引張することによって得られた力-伸長曲線から100MPaの負荷下での充填されたコードの伸長を決定することによって得られる。
【0122】
充填されたコードの金属フィラメント状要素の平均引張強度Rmは、充填材料なしのコードの金属フィラメント状要素の平均引張強度Rmに等しい。充填されたコードの線密度Ml及び質量密度Mvは、定義により、それぞれ充填材料なしのコードの線密度Ml及び質量密度Mvに等しい。
【0123】
特性Mc1、Mc2、Mc2/Mc1、Mc1’、Mc1’’、Fnt、Ml、Mv、Rm、及び下記で説明する特性の値は、エラストマー母材から、例えばタイヤから抽出され、充填材料が保持されたコード上で測定される又はそれから決定される。
【0124】
本発明による充填されたコードは、文献WO2016083265及びWO2016083267に説明されている方法に従ってかつそのような設備を使用することによって本発明による充填材料なしのコードと同じく製造される。
【0125】
下記で説明する任意的な特性は、技術的に適合する限り、互いに組み合わせることができる。
【0126】
有利なことに、7GPa≦Mc1、好ましくは、10GPa≦Mc1である。これは、充填されたコードは、かなり高い弾性率Mc2に対応する伸長範囲に過度に急激に到達するリスクを招くことなく比較的高い負荷を受け持つ。
【0127】
有利なことに、Mc1≦25GPa、好ましくは、Mc1≦20GPaである。これは、タイヤによって生じる騒音が更に低減する。
【0128】
有利なことに、60GPa≦Mc2、好ましくは、70GPa≦Mc2、より好ましくは、80GPa≦Mc2である。これは、コードのフーピング機能が更に改善される。
【0129】
有利なことに、Mc2≦140GPa、好ましくは、Mc2≦130GPa、より好ましくは、Mc2≦120GPaである。これは、有意な変形が加えられる際に充填されたコードが損傷を受けるリスクが低減する。
【0130】
有利なことに、4≦Mc2/Mc1、好ましくは、5≦Mc2/Mc1、より好ましくは、6≦Mc2/Mc1である。これは、タイヤによって生じる騒音の低減及び充填されたコードのフーピング機能が更に改善する。
【0131】
有利なことに、Mc2/Mc1≦12、好ましくは、Mc2/Mc1≦11、より好ましくは、Mc2/Mc1≦10である。これは、所与の弾性率Mc1において過度に高い弾性率Mc2が存在すること、又は所与の弾性率Mc2において過度に低い弾性率Mc1が存在することが回避される。
【0132】
有利なことに、Ac200が%を単位として表される200MPaの負荷下での充填されたコードの伸長である時に、5GPa≦Mc1’≦30GPaであるようにMc1’=20/Ac200である。
【0133】
有利なことに、7GPa≦Mc1’、好ましくは、10GPa≦Mc1’である。
【0134】
有利なことに、Mc1’≦25GPa、好ましくは、Mc1’≦20GPaである。
【0135】
上述したMc1’に関する有利な特性は、充填されたコードが、200MPaよりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、一層大きい負荷範囲にわたって、従って様々な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0136】
有利なことに、Ac300が%を単位として表される300MPaの負荷下での充填されたコードの伸長である時に、5GPa≦Mc1’’≦30GPaであるようにMc1’’=30/Ac300である。
【0137】
有利なことに、7GPa≦Mc1’’、好ましくは、10GPa≦Mc1’’である。
【0138】
有利なことに、Mc1’’≦25GPa、好ましくは、Mc1’’≦20GPaである。
【0139】
上述したMc1’’に関する有利な特性は、充填されたコードが、300MPaよりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、非常に大きい負荷範囲にわたって、従って非常に多様な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0140】
有利なことに、充填されたコードは、それに2014年の規格ASTM D2969-04を適用し、それによって力-伸長曲線を取得することで決定され、%を単位とした力-伸長曲線の最大勾配に対応する伸長に等しいAsc≧1%、好ましくは、Asc≧1.5%、より好ましくは、Asc≧2%、更に好ましくは、2%≦Asc≦4%であるような構造伸長Ascを有する。
【0141】
本発明の他の主題
【0142】
本発明の更に別の主題は、コードが埋め込まれたエラストマー母材を含む半完成の製品又は物品を補強するための上記に定めた充填材料なしのコード又は充填されたコードの使用である。
【0143】
そのような半完成の製品又は物品は、未硬化状態(すなわち架橋又は加硫の前の)と硬化状態(架橋又は加硫の後の)の両方での車両のためのパイプ、ベルト、コンベヤベルト、トラック、タイヤである。好ましい実施形態では、そのような半完成の製品又は物品は、プライの形態を取る。
【0144】
本発明の更に別の主題は、上記に定めた充填されたコードが少なくとも1つ埋め込まれたエラストマー母材を含む半完成の製品又は物品である。
【0145】
本発明の更に別の主題は、コードを含むタイヤを補強するための上記に定めた充填材料なしのコード又は充填されたコードの使用である。
【0146】
本発明による半完成の製品又は物品内、例えば本発明によるタイヤ内では、充填されたコードはエラストマー母材内に埋め込まれる。本発明による半完成の製品又は物品内、例えば本発明によるタイヤ内では、充填されたコードは、エラストマー組成に基づくかつ充填されたコードの内部エンクロージャに位置する内部エンクロージャのための充填材料を含む。この場合に、充填材料は、コードが埋め込まれるエラストマー母材が基づくものと同じエラストマー組成に基づいている。
【0147】
本発明によるタイヤ
【0148】
本発明の別の主題は、トレッドとクラウン補強体とを含むクラウンと、2つの側壁と、2つのビードとを含むタイヤであり、各側壁は、各ビードをクラウンに接続し、クラウン補強体は、クラウン内でタイヤの周方向に延び、タイヤは、ビードの各々内に固着されて側壁及びクラウン内を延びるカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、半径方向にカーカス補強体とトレッドとの間に挿入され、クラウン補強体は、エラストマー組成に基づくエラストマー母材内に埋め込まれた少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素を含む少なくとも1つのフーピングプライを含むフープ補強体と、作動フィラメント状補強要素を含む少なくとも1つの作動プライを含む作動補強体とを含み、カーカス補強体は、カーカスフィラメント状補強要素を含む少なくとも1つのカーカスプライを含み、少なくとも作動フィラメント状補強要素及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置され、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素は、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む充填されたコードによって形成され、金属フィラメント状要素は、充填されたコードの内部エンクロージャを定め、充填されたコードは、エラストマー組成に基づくかつ充填されたコードの内部エンクロージャに位置する内部エンクロージャのための充填材料を含み、充填されたコードは、それがタイヤから抽出された状態で、上記に定めたものと同様である。
【0149】
ここで定めるタイヤは、発生する騒音を低減し、優れたフープ補強体を提供するために上記で定めた充填されたコードの特性を使用する。当業者は、タイヤの望ましい使用に依存してフーピングプライ内のコードの寸法特性とコードの密度とを選ぶことになる。この場合に、本発明のタイヤは、乗用自動車(特に四輪駆動車及びSUV(スポーツのための多目的車)を含む)のためのものとすることができるが、オートバイのような二輪車、又は小型トラック、重量車両、すなわち、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両、オフロード車両、農業車両又は建設プラント車両、航空機又はその他の搬送車両又は荷役車両のためのものとすることもできる。
【0150】
充填されたコードを参照しながら上述した有利で任意的な特性は、上記で定めたタイヤにも当てはまる。
【0151】
本発明の更に別の主題は、トレッドとクラウン補強体とを含むクラウンと、2つの側壁と、2つのビードとを含むタイヤであり、各側壁は、各ビードをクラウンに接続し、クラウン補強体は、クラウン内でタイヤの周方向に延び、タイヤは、ビードの各々内に固着されて側壁及びクラウン内を延びるカーカス補強体を含み、クラウン補強体は、半径方向にカーカス補強体とトレッドとの間に挿入され、クラウン補強体は、エラストマー組成に基づくエラストマー母材内に埋め込まれた少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素を含む少なくとも1つのフーピングプライを含むフープ補強体と、作動フィラメント状補強要素を含む少なくとも1つの作動プライを含む作動補強体とを含み、カーカス補強体は、カーカスフィラメント状補強要素を含む少なくとも1つのカーカスプライを含み、少なくとも作動フィラメント状補強要素及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置され、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素は、螺旋巻き金属フィラメント状要素の単層を含む充填されたコードによって形成され、この層の各金属フィラメント状要素は、コードが実質的に直線の方向に延びる時に、この実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線の周りに実質的に垂直な断面平面内で層の各金属フィラメント状要素の中心と主軸線との間の距離が層の全ての金属フィラメント状要素に関して実質的に一定かつ同一であるような螺旋経路を主軸線の周りに描き、金属フィラメント状要素は、充填されたコードの内部エンクロージャを定め、充填されたコードは、エラストマー組成に基づくかつ充填されたコードの内部エンクロージャに位置する内部エンクロージャのための充填材料を含み、フーピングプライは、それがタイヤから抽出された状態で、以下の特性を有する。
・100daN.mm-1≦Mn1≦600daN.mm-1、かつ
・1000daN.mm-1≦Mn2≦4500daN.mm-1、かつ
3≦Mn2/Mn1であり、
Mn1及びMn2は、daN.mm-1を単位として表され、ここで、
・Mn1=250/An250、ここで、
・An250は、250daN.dm-1の負荷をフーピングプライのデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素の密度で割り算し、それによって単位負荷を取得し、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコードを引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での充填されたコードの伸長を決定することによって得られる%を単位として表される250daN.dm-1の負荷下でのフーピングプライの等価伸長であり、
・Mn2=[(Fn40-Fn30)/(An40-An30)]、ここで、
・Fn40は、フーピングプライの理論最大力Fntの40%に等しいdaN.dm-1を単位として表される力であり、
・Fn30は、フーピングプライの理論最大力Fntの30%に等しいdaN.dm-1を単位として表される力であり、
・An40は、フーピングプライの理論最大力Fntの40%をフーピングプライのデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素の密度dで割り算し、それによって40%での単位負荷を取得し、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコードを引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での充填されたコードの伸長を決定することによって得られる%を単位として表されるフーピングプライの理論最大力Fntの40%でのフーピングプライの等価伸長であり、
・An30は、フーピングプライの理論最大力Fntの30%をフーピングプライのデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素の密度dで割り算し、それによって30%での単位負荷を取得し、次いで、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコードを引張することによって得られた力-伸長曲線からこの単位負荷下での充填されたコードの伸長を決定することによって得られる%を単位として表されるフーピングプライの理論最大力Fntの30%でのフーピングプライの等価伸長であり、ここで、
Fnt=Ml×Rm×d/Mvであり、daN.dm-1を単位として表され、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の線密度であり、
・Mvは、cm3当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の質量密度であり、
・Rmは、MPaを単位として表される単層を構成する金属フィラメント状要素の平均引張強度であり、
・dは、dm当たりのフーピングプライの個数を単位として表されるフーピングプライ内の1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素の密度である。
【0152】
ここで定めるタイヤは、乗用自動車(特に四輪駆動車及びSUV(スポーツのための多目的車)を含む)に適合する特性を有する。
【0153】
充填材料なしのコード又は充填されたコードと類似の方式で、本発明によるタイヤは、100daN.mm-1から600daN.mm-1の範囲にわたるMn1の値に起因して比較的低いレベルの騒音しか発生させない。Mn1は、通常条件、従って「惰走」騒音と呼ばれる騒音を生じる条件に対応する条件下で走行する時にプライが受ける負荷に対するフーピングプライの弾性率を表している。
【0154】
充填材料なしのコード又は充填されたコードと類似の方式で、本発明によるタイヤは、1000daN.mm-1から4500daN.mm-1の範囲にわたるMn2の値に起因して優れたフープ補強体を有する。Mn2は、強い負荷がタイヤに印加された時にフーピングプライが受ける負荷に対するフーピングプライの弾性率を表している。
【0155】
最後に、Mn2/Mn1比は、可能な限り小さい騒音の発生と優れたフープ補強体とが同時に得られること、及び1つの性能態様が別の性能態様のために犠牲にされないことを保証する。等価伸長An250は、250daN.dm-1の負荷をフーピングプライの各フーピングフィラメント状補強要素が受ける単位負荷に関係付けることによって決定される。この目的のために、250daN.dm-1の負荷は、フーピングプライのデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素の密度で割り算される。このようにして単位負荷が得られる。次いで、この単位負荷下でのタイヤのコードの伸長が、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でタイヤのコードを引張することによって得られた力-伸長曲線から決定される。このようにして、等価伸長An250が得られる。
【0156】
伸長An250と類似の手法で、フーピングプライの理論最大力Fntの30%又は40%での負荷をプライの各フーピングフィラメント状補強要素が受ける単位負荷に関係付けることによって各等価伸長An40及びAn30が決定される。この目的のために、フーピングプライの理論最大力Fntの30%又は40%が、フーピングプライのデシメートル当たりのフーピングフィラメント状補強要素の密度dによって割り算される。このようにして、30%又は40%での単位負荷が得られる。次いで、この単位負荷下でのタイヤのコードの伸長が、2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でタイヤのコードを引張することによって得られた力-伸長曲線から決定される。このようにして、等価伸長An30又はAn40が得られる。
【0157】
タイヤのコードの金属フィラメント状要素の平均引張強度Rmは、充填材料なしのコード又は充填されたコードの金属フィラメント状要素の平均引張強度Rmに等しい。タイヤのコードの線密度Ml及び質量密度Mvは、定義により、充填材料なしのコード又は充填されたコードの線密度Ml及び質量密度Mvにそれぞれ等しい。
【0158】
プライ内のフィラメント状補強要素の密度dは、フィラメント状補強要素がプライ内を延びる方向に対して垂直な方向にプライに存在するフィラメント状補強要素の個数である。密度dは、補強要素がプライ内を延びる方向に対して垂直な方向の2つの連続するフィラメント状補強要素の間の軸線間距離に等しいmmを単位として表される埋め込みピッチpから決定することもできる。dとpの間の関係は、d=100/pである。
【0159】
特性Mn1、Mn2、Mn2/Mn1、Mn1’、Mn1’’、Fnt、Ml、Mv、Rm、d、及び下記で説明する他の特性の値は、タイヤから抽出されたプライ及びコード上で測定される又はそれから決定される。
【0160】
タイヤは、支持要素、例えばリムと協働することにより、大気圧よりも高い圧力まで加圧することができるキャビティを形成することを意図するケーシングを意味すると理解される。本発明によるタイヤは、実質的にトロイダル形状の構造を有する。
【0161】
本明細書では、半径方向横断面又は半径方向断面は、タイヤの回転軸線を含む平面内の横断面又は断面を意味する。
【0162】
軸線方向という表現は、タイヤの回転軸線に対して実質的に平行な方向を意味する。
【0163】
周方向という表現は、軸線方向とタイヤの半径の両方に対して実質的に垂直な方向(言い換えれば、タイヤの回転軸線を中心とする円に対するタンジェンシャル)を意味する。
【0164】
半径方向という表現は、タイヤの半径に沿う方向、すなわち、タイヤの回転軸線に交わり、この軸線に対して実質的に垂直ないずれかの方向を意味する。
【0165】
子午面(Mと表示する)は、タイヤの回転軸線に対して垂直であり、2つのビードの間の中間に位置し、クラウン補強体の中心を通過する平面である。
【0166】
タイヤの赤道円周平面(E)は、子午面及び半径方向と垂直にタイヤの赤道線を通過する理論面である。タイヤの赤道線は、周方向断面平面(周方向に対して垂直であり、半径方向と軸線方向と平行な平面)内でタイヤの回転軸線と平行であり、かつ地面との接触状態になることが意図されたトレッドの半径方向最外点と、支持体、例えばリムとの接触状態になることが意図されたタイヤの半径方向最内点とであるHに等しい距離を挟む2つの点の間で等距離に位置付けられた軸線である。
【0167】
角度の向きは、当該角度を定める基準直線から当該角度を定める他方の直線に到達するために回転する必要がある時計周り又は反時計周りの方向、この場合はタイヤの周方向を意味する。
【0168】
破断荷重の15%に等しい荷重に対するプライの引張割線弾性率をMA15と表示し、daN/mmを単位として表している。弾性率MA15は、2014年の規格ASTM D2969-04をプライのコードに適用することによって得られた力-伸長曲線に基づいて計算される。コードの引張割線弾性率は、点(0,0)と、破断荷重の15%に等しい縦座標値を有する曲線の点との間に引かれた直線の勾配を決定することによって計算される。弾性率MA15は、コードの引張割線弾性率に上記で定めた1mmのプライ当たりのコードの密度dを乗じることによって決定される。
【0169】
コードの破断荷重は、2014年の規格ASTM D2969-04に従って測定される。プライの破断荷重は、2014年の規格ASTM D2969-04をプライのコードに適用することによって得られた力-伸長曲線に基づいて計算される。プライの破断荷重は、コードの破断荷重に上記で定めた単位幅のプライ当たりのコードの密度dを乗じることによって決定される。
【0170】
下記で説明する任意的な特性は、技術的に適合する限り、互いに組み合わせることができる。
【0171】
有利なことに、125daN.mm-1≦Mn1、好ましくは、150daN.mm-1≦Mn1である。すなわち、フーピングプライは、かなり高い弾性率Mn2に対応する伸長範囲に過度に急激に到達するリスクを招くことなく比較的高い負荷を受け持つ。
【0172】
有利なことに、Mn1≦500daN.mm-1、好ましくは、Mn1≦400daN.mm-1である。すなわち、タイヤによって生じる騒音が更に低減する。
【0173】
有利なことに、1500daN.mm-1≦Mn2、好ましくは、1750daN.mm-1≦Mn2、より好ましくは、2000daN.mm-1≦Mn2である。すなわち、コードのフーピング機能が更に改善される。
【0174】
有利なことに、Mn2≦4000daN.mm-1、好ましくは、Mn2≦3800daN.mm-1、更にMn2≦3200daN.mm-1である。すなわち、有意な変形が加えられる際にフーピングプライが損傷を受けるリスクが低減する。
【0175】
有利なことに、4≦Mn2/Mn1、好ましくは、5≦Mn2/Mn1、より好ましくは、6≦Mn2/Mn1である。すなわち、タイヤによって生じる騒音の低減及びコードのフーピング機能が更に改善する。
【0176】
有利なことに、Mn2/Mn1≦12、好ましくは、Mn2/Mn1≦11、より好ましくは、Mn2/Mn1≦10である。すなわち、所与の弾性率Mn1において過度に高い弾性率Mn2が存在すること、又は所与の弾性率Mn2において過度に低い弾性率Mn1が存在することが回避される。
【0177】
有利なことに、An500が%を単位として表される500daN.dm-1の負荷下でのフーピングプライの等価伸長である時に、100daN.mm-1≦Mn1’≦600daN.mm-1であるようにMn1’=500/An500である。
【0178】
有利なことに、125daN.mm-1≦Mn1’、好ましくは、150daN.mm-1≦Mn1’である。
【0179】
有利なことに、Mn1’≦500daN.mm-1、好ましくは、Mn1’≦400daN.mm-1である。
【0180】
上述したMn1’に関する有利な特性は、フーピングプライが、500daN.dm-1よりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、一層大きい負荷範囲にわたって、従って様々な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0181】
有利なことに、An750が%を単位として表される750daN.dm-1の負荷下でのフーピングプライの等価伸長である時に、100daN.mm-1≦Mn1’’≦600daN.mm-1であるようにMn1’’=570/An750である。
【0182】
有利なことに、125daN.mm-1≦Mn1’’、好ましくは、150daN.mm-1≦Mn1’’である。
【0183】
有利なことに、Mn1’’≦500daN.mm-1、好ましくは、Mn1’’≦400daN.mm-1である。
【0184】
上述したMn1’’に関する有利な特性は、フーピングプライが、750daN.dm-1よりも低い負荷の全てに対してさえも比較的低い弾性率を有することを保証することを可能にする。すなわち、タイヤは、非常に大きい負荷範囲にわたって、従って非常に多様な使用にわたって比較的低いレベルの騒音しか発生させない。
【0185】
好ましい実施形態では、充填されたコードは、それがタイヤから抽出された状態で上記に定めたものと同様である。非常に好ましくは、充填されたコードは、それがタイヤから抽出された状態で5GPa≦Mc1≦30GPa、40GPa≦Mc2≦150GPaであり、3≦Mc2/Mc1であるようなものである。更に、一層好ましくは、充填されたコードは、それがタイヤから抽出された状態でMc1、Mc2、Mc2/Mc1、Mc1’、及びMc1’’に関して上述した有利な特性を有する。
【0186】
有利な実施形態では、フープ補強体は、単一フーピングプライを含む。有利なことに、フープ補強体は、単一フーピングプライを含む。従って、フープ補強体は、フーピングプライ以外には、フィラメント状補強要素によって補強されたいずれのプライも持たない。タイヤのフープ補強体から除外されるそのような被補強プライのフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と織物フィラメント状補強要素とを含む。非常に望ましくは、フープ補強体は、フーピングプライによって形成される。この実施形態は、乗用車、二輪車のためのタイヤ、小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤ、及び好ましくは、乗用車のためのタイヤに特に適している。
【0187】
有利な実施形態では、フープ補強体は、半径方向に作動補強体とトレッドとの間に挿入される。この場合に、金属コードの使用により、フープ補強体は、そのフーピング機能に加えて、フーピング織物フィラメント状補強要素を含むフープ補強体よりもかなり効果的であるパンク及び衝撃からの保護機能を有する。
【0188】
有利な実施形態では、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素は、タイヤの周方向と厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度を形成する。
【0189】
有利な実施形態では、各作動フィラメント状補強要素は、金属フィラメント状要素である。
【0190】
有利な実施形態では、各作動プライの作動フィラメント状補強要素は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。より好ましくは、各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの作動補強体の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。
【0191】
有利な実施形態では、カーカス補強体は、単一カーカスプライを含む。従って、カーカス補強体は、カーカスプライ以外には、フィラメント状補強要素によって補強されたいずれのプライも持たない。タイヤのカーカス補強体から除外されるそのような被補強プライのフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と織物フィラメント状補強要素とを含む。非常に好ましくは、カーカス補強体は、カーカスプライによって形成される。この実施形態は、乗用車、二輪車のためのタイヤ、小型トラック、重量車両、例えば、軽鉄道車両、バス、重貨物路上搬送車(貨物車、牽引車、トレーラー)から選ばれた産業車両のためのタイヤ、及び好ましくは、乗用車のためのタイヤに特に適している。
【0192】
有利な実施形態では、各カーカスフィラメント状補強要素は、織物フィラメント状要素である。
【0193】
定義により、織物は、接着剤組成に基づく1又は2以上の被覆層で任意的に被覆された1又は2以上の要素織物モノフィラメントによって形成された非金属フィラメント状要素を意味する。各要素織物モノフィラメントは、例えば、溶融紡糸、溶液紡糸、又はゲル紡糸によって得られる。各要素織物モノフィラメントは、有機材料、特にポリマー材料、又は無機材料、例えばガラス又は炭素から製造される。ポリマー材料は、熱可塑型のもの、例えば、脂肪族ポリアミド、特にポリアミド6,6、及びポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートとすることができる。ポリマー材料は、非熱可塑型のもの、例えば、芳香族ポリアミド、特にアラミド、及び天然又は人工のいずれかのセルロース、特にレーヨンとすることができる。
【0194】
好ましくは、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの一方のビードからタイヤの他方のビードまで軸線方向に延びる。
【0195】
有利な実施形態では、クラウン補強体は、作動補強体とフープ補強体とによって形成される。
【0196】
プライは、一方を1又は2以上のフィラメント状補強要素とし、他方をエラストマー母材とするアセンブリであり、1又は2以上のフィラメント状補強要素がエラストマー母材内に埋め込まれたアセンブリである。
【0197】
有利なことに、各プライのフィラメント状補強要素は、エラストマー母材内に埋め込まれる。様々なプライは、同じエラストマー母材又は異なるエラストマー母材を含むことができる。
【0198】
本発明によるタイヤの第1の実施形態では、作動補強体は2つの作動プライを含み、好ましくは、作動補強体は2つの作動プライから構成される。
【0199】
この第1の実施形態では、作動フィラメント状補強要素及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置される。この第1の実施形態では、フーピングフィラメント状補強要素は、三角形メッシュを定める必要はない。
【0200】
有利なことに、この第1の実施形態では、各作動プライ内の各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの周方向と10°から40°、好ましくは、20°から30°の範囲にわたる角度を形成する。
【0201】
有利なことに、一方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素がタイヤの周方向となす角度の向きは、他方の作動プライ内で作動フィラメント状補強要素がタイヤの周方向となす角度の向きと反対である。言い換えれば、一方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素に他方の作動プライ内の作動フィラメント状補強要素が交差する。
【0202】
有利なことに、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの子午面内で、言い換えれば、タイヤのクラウン内でタイヤの周方向と80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度を形成する。
【0203】
有利なことに、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの赤道円周平面内で、言い換えれば、各側壁内でタイヤの周方向と80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度を形成する。
【0204】
本発明の第2の実施形態では、作動補強体は単一作動プライを含む。従って、作動補強体は、作動プライ以外には、フィラメント状補強要素によって補強されたいずれのプライも持たない。タイヤの作動補強体から除外されるそのような被補強プライのフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と織物フィラメント状補強要素とを含む。非常に好ましくは、作動補強体は、作動プライによって形成される。この実施形態は、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素が上記で定めたコードによって形成される時に特に有利である。この場合に、上述したフープ補強体の機械強度及び耐久性特性は、作動プライを作動補強体から排除することを可能にする。有意に軽量のタイヤが得られる。
【0205】
この第2の実施形態では、1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素、作動フィラメント状補強要素、及びカーカスフィラメント状補強要素は、赤道円周平面上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるように配置される。この第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、フーピングフィラメント状補強要素は、三角形メッシュを定めるのに必要である。
【0206】
有利なことに、各カーカス補強フィラメント状要素は、タイヤの子午面内で、言い換えれば、タイヤのクラウン内でタイヤの周方向と55°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、55°から80°、より好ましくは、60°から70°の範囲にわたる角度AC1を成す。従って、カーカスフィラメント状補強要素は、周方向となす角度に起因してタイヤのクラウン内の三角形メッシュの形成に加担する。
【0207】
一実施形態では、各カーカスフィラメント状補強要素は、タイヤの赤道円周平面内で、言い換えれば、タイヤの各側壁内でタイヤの周方向と85°よりも大きいか又はそれに等しい角度AC2を成す。カーカスフィラメント状補強要素は、各側壁内で実質的に半径方向のものであり、すなわち、周方向に対して実質的に垂直であり、半径方向タイヤの全ての利点を保持することを可能にする。
【0208】
一実施形態では、各作動フィラメント状補強要素は、タイヤの子午面内でタイヤの周方向と10°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、30°から50°、より好ましくは、35°から45°の範囲にわたる角度ATを成す。従って、作動フィラメント状補強要素は、周方向となす角度に起因してタイヤのクラウン内の三角形メッシュの形成に加担する。
【0209】
可能な限り効果的な三角形メッシュを形成するために、角度ATの向きと角度AC1の向きは、好ましくは、タイヤの周方向に関して反対である。
【0210】
タイヤの第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、クラウンは、トレッドとクラウン補強体を含む。トレッドは、
・地面との接触状態になることが意図された面によって半径方向外側に向けて、かつ
・クラウン補強体によって半径方向内側に向けて、
境界が定められたポリマー材料、好ましくは、エラストマー材料のストリップであると理解される。
【0211】
ポリマー材料のストリップは、ポリマー材料、好ましくは、エラストマー材料のプライから構成され、又は各々がポリマー材料、好ましくはエラストマー材料から構成されるいくつかのプライのスタックから構成される。
【0212】
タイヤの第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、クラウン補強体は、単一フープ補強体と単一作動補強体を有利に含む。従って、クラウン補強体は、フープ補強体及び作動補強体以外には、補強要素によって補強されたいずれの補強体も持たない。タイヤのクラウン補強体から除外されるそのような補強体の補強要素は、フィラメント状補強要素、編物、又は織物を含む。非常に好ましくは、クラウン補強体は、フープ補強体と作動補強体で構成される。
【0213】
タイヤの第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、非常に好ましい実施形態では、クラウンは、クラウン補強体以外には、補強要素によって補強されたいずれの補強体も持たない。タイヤのクラウンから除外されるそのような補強体の補強要素は、フィラメント状補強要素、編物、又は織物を含む。非常に好ましくは、クラウンは、トレッドとクラウン補強体とで構成される。
【0214】
タイヤの第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、非常に好ましい実施形態では、カーカス補強体は、半径方向にクラウン補強体と直接接触状態になるように配置され、クラウン補強体は、半径方向にトレッドと直接接触状態になるように配置される。この非常に好ましい実施形態では、単一フーピングプライ及び単一作動プライは、半径方向に互いに直接接触状態になるように有利に配置される。
【0215】
半径方向に直接接触状態という表現は、半径方向に互いに直接接触している当該の物体、この場合はプライ、補強体、又はトレッドが、例えば、半径方向に互いに直接接触しているこれらの当該の物体の間にいずれかの物体、例えば、いずれかのプライ、補強体、又はストリップが半径方向に挿入されることによって半径方向に分離されることがないことを意味する。
【0216】
上述した第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、有利なことに、フーピングプライは、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して300daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、350daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、より好ましくは、400daN.mm-1よりも大きいか又はそれに等しい引張割線弾性率を有する。一実施形態では、フーピングプライは、有利なことに、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して500daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、好ましくは、450daN.mm-1よりも小さいか又はそれに等しい引張割線弾性率を有する。
【0217】
上述した第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれであるかに関わらず、フーピングプライの破断荷重は、55daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、60daN.mm-1よりも大きく又はそれに等しく、より好ましくは、65daN.mm-1よりも大きいか又はそれに等しい。有利なことに、フーピングプライの破断荷重は、85daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、好ましくは、80daN.mm-1よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、75daN.mm-1よりも小さいか又はそれに等しい。
【0218】
本発明によるタイヤを製造する方法
【0219】
本発明によるタイヤは、下記で説明する方法を用いて製造される。
【0220】
最初に、各カーカスプライ、各作動プライ、及び各フーピングプライが製造される。各プライは、当該プライのフィラメント状補強要素を未架橋エラストマー組成内に埋め込むことによって製造される。
【0221】
次いで、カーカス補強体、作動補強体、フープ補強体、及びトレッドが、未乾燥形態のタイヤを形成するように配置される。
【0222】
次いで、未乾燥形態のタイヤは、それ自体を少なくとも半径方向に拡大させるように成形される。この段階は、未乾燥形態のタイヤの各プライを周方向に伸張する効果を有する。従ってこの段階は、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素をタイヤの周方向に伸張するという効果を有する。従って、上記又は各々のフーピングフィラメント状補強要素は、成形段階の前に成形後とは異なる特性を有する。
【0223】
上述した充填材料なしのコードの特性は、成形段階を所与としてタイヤを製造する方法の完了時にタイヤが上述した利点を有することになることを保証する。
【0224】
最後に、各組成が架橋状態を提供し、かつ当該組成に基づくエラストマー母材を形成するタイヤをもたらすために、成形された未乾燥形態のタイヤの組成は、例えば、硬化又は加硫によって架橋される。
【0225】
単なる非限定例として図面を参照しながら与える以下の説明を閲読することで本発明はより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるタイヤの半径方向断面図である。
【
図2】赤道円周平面E上へのフーピングフィラメント状補強要素、作動フィラメント状補強要素、及びカーカスフィラメント状補強要素の投影を示す
図1のタイヤの破断図である。
【
図3】
図1のタイヤの子午面M上への投影内のこのタイヤの側壁に配置されたカーカスフィラメント状補強要素の図である。
【
図4】本発明によるコード(直線で静止状態にあると仮定した)の軸線に対して垂直なこのコードの横断面図である。
【
図6】本発明による充填されたコード(直線で静止状態にあると仮定した)の軸線に対して垂直なこのコードの横断面図である。
【
図7】
図4及び
図6の各コードが受ける歪みの伸長依存変動を示し、更に各曲線に対するタンジェントが弾性率M
1及びM
c1を示す各コードの力-伸長曲線の図である。
【
図8】
図4及び
図6の各コードが受ける荷重の伸長依存変動を示し、更に各曲線に対するタンジェントが弾性率M
2及びM
c2を示す各コードの力-伸長曲線の図である。
【
図9】
図4及び
図6の各コードが受ける歪みの伸長依存変動を示し、更に各曲線に対するタンジェントが弾性率M
1’及びM
c1’を示す各コードの力-伸長曲線の図である。
【
図10】
図4及び
図6の各コードが受ける歪みの伸長依存変動を示し、更に各曲線に対するタンジェントが弾性率M
1’’及びM
c1’’を示す各コードの力-伸長曲線の図である。
【
図11】
図8の各曲線の導関数の変動を伸長の関数として示す曲線の図である。
【
図12】
図1のタイヤのフーピングプライが受ける荷重の伸長依存変動を示し、更にこの曲線に対するタンジェントが弾性率M
n1及びM
n2を示すこのプライの等価力-伸長曲線の図である。
【
図13】
図1のタイヤのフーピングプライが受ける荷重の伸長依存変動を示し、更にこの曲線に対するタンジェントが弾性率M
n1’及びM
n2を示すこのプライの等価力-伸長曲線の図である。
【
図14】
図1のタイヤのフーピングプライが受ける荷重の伸長依存変動を示し、更にこの曲線に対するタンジェントが弾性率M
n1’’及びM
n2を示すこのプライの等価力-伸長曲線の図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態によるタイヤの
図1と類似の図である。
【
図18】
図4のコード、
図6の充填されたコード、及び従来技術のフーピングフィラメント状補強要素の
図7及び
図8と類似の曲線の図である。
【
図19】
図4のコード、
図6の充填されたコード、及び従来技術のフーピングフィラメント状補強要素の
図7及び
図8と類似の曲線の図である。
【
図20】
図1及び
図15のタイヤ、並びに従来技術のタイヤのフーピングプライが受ける荷重の伸長依存変動を示し、更に各曲線に対するタンジェントが各フーピングプライの弾性率M
n1及びM
n2を示す各フーピングプライの等価力-伸長曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0227】
本発明の第1の実施形態によるタイヤ
【0228】
図1は、それぞれタイヤの通常の軸線方向(X)、半径方向(Y)、及び周方向(Z)に対応する座標系X、Y、Zを示している。
【0229】
図1は、全体参照番号10で表示する本発明によるタイヤの半径方向断面図を示している。タイヤ10は、軸線方向Xに対して実質的に平行な軸線の周りの回転を実質的に提供する。この場合に、タイヤ10は、乗用車を意図している。
【0230】
タイヤ10は、それぞれ作動フィラメント状補強要素46、47を含む2つの作動プライ16、18を含む作動補強体15と、少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素48を含むフーピングプライ19を含むフープ補強体17とを含むクラウン補強体14を含むクラウン12を有する。クラウン補強体14は、クラウン12内でタイヤ10の周方向Zに延びる。クラウン12は、クラウン補強体14の半径方向外側に配置されたトレッド20を含む。この場合に、クラウン12は、トレッド20とクラウン補強体14とで構成される。この場合に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19は、半径方向に作動補強体15とトレッド20の間に挿入される。この場合に、作動補強体15は、2つの作動プライ16、18のみを含み、フープ補強体17は、単一フーピングプライ19を含む。この場合に、作動補強体15は2つの作動プライ16、18から構成され、フープ補強体17はフーピングプライ19から構成される。クラウン補強体14は、作動補強体15とフープ補強体17で構成される。
【0231】
タイヤ10は、クラウン12を半径方向内側に向けて延ばす2つの側壁22を更に含む。更に、タイヤ10は、側壁22の半径方向内側にある2つのビード24であって、その各々が充填ゴム30の塊を載せている環状補強構造体26、この場合はビードワイヤ28を有する上記ビード24を有し、更に半径方向カーカス補強体32を有する。各側壁22は、各ビード24をクラウン12に接続する。
【0232】
カーカス補強体32は、複数のカーカスフィラメント状補強要素44を含むカーカスプライ34を有し、カーカスプライ34は、ビードからクラウン12に向かって側壁を通って延びる主ストランド38と、環状補強構造体26の半径方向外側にある半径方向外側端部42を有する折り返しストランド40とを各ビード24内に形成するようにビードワイヤ28の周りの折り返し部によってビード24の各々に固着される。従って、カーカス補強体32は、ビード24から側壁22内でそれを通って延び、クラウン12の中に延びてその中を延びる。カーカス補強体32は、クラウン補強体14及びフープ補強体17の半径方向内側に配置される。従って、クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に挿入される。カーカス補強体32は、単一カーカスプライ34を含む。この場合に、カーカス補強体32は、カーカスプライ34によって形成される。
【0233】
タイヤ10は、側壁22の軸線方向内側にかつクラウン補強体14の半径方向内側に置かれて2つのビード24の間を延びる好ましくはブチルで製造された気密内部層46を更に含む。
【0234】
各作動プライ16、18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34は、対応するプライの補強要素が埋め込まれたエラストマー母材を含む。作動プライ16、18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34の各エラストマー母材は、従来、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム、補強充填剤、例えばカーボンブラック及び/又はシリカ、架橋システム、例えば、好ましくは、硫黄とステアリン酸と酸化亜鉛とを含む加硫システム、並びに時に加硫促進剤、加硫遅延剤、及び/又は様々な添加剤を含む補強要素のスキムコーティングのための従来のエラストマー組成に基づいている。
【0235】
図2及び
図3を参照すると、各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の一方のビード24から他方のビード24まで軸線方向に延びる。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の子午面M内及び赤道円周平面E内で、言い換えれば、クラウン12及び各側壁22内でタイヤ10の周方向Zと80°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、80°から90°の範囲にわたる角度A
Cを成す。
【0236】
図2を参照すると、各作動プライ16、18の作動フィラメント状補強要素46、47は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。各作動フィラメント状補強要素46、47は、タイヤ10の作動補強体15の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。各作動フィラメント状補強要素46、48は、子午面M内でタイヤ10の周方向Zと10°から40°、好ましくは、20°から30°の範囲にわたってこの場合は26°に等しい角度を形成する。作動プライ16内で作動フィラメント状補強要素46とタイヤ10の周方向Zとがなす角度Sの向きは、他方の作動プライ18内で作動フィラメント状補強要素47とタイヤ10の周方向Zとがなす角度Qの向きと反対である。言い換えれば、一方の作動プライ16内の作動フィラメント状補強要素46に他方の作動プライ18内の作動フィラメント状補強要素47が交差する。
【0237】
図2を参照すると、単一フーピングプライ19は、そのエラストマー組成に基づくフーピングプライ19のエラストマー母材内に埋め込まれた本発明による充填されたコード51によって構成又は形成された少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素48を含む。充填されたコード51に対しては、
図6を参照しながら下記でより詳細に説明する。充填されたコード51は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づくエラストマー母材内で本発明によるコード50をカレンダ処理する方法によって生成される。コード50に対しても
図4及び
図5を参照しながら下記でより詳細に説明する。上述のように、フーピングフィラメント状補強要素48は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づくエラストマー母材内にコード50を埋め込むことによって得られる。
【0238】
この事例では、フーピングプライ19は、タイヤ10のクラウン12の軸線方向幅LFにわたって間断なく巻かれた単一フーピングフィラメント状補強要素48を含む。有利なことに、軸線方向幅LFは、作動プライ18の幅LTよりも小さい。フーピングフィラメント状補強要素48は、タイヤ10の周方向Zと厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度AFを成す。この事例では、この角度は、この場合は5°に等しい。dは、dm当たりのフーピングプライ19の個数で表したフーピングプライ19内のフーピングフィラメント状補強要素48の密度である。この場合に、d=73dm-1である。
【0239】
カーカスフィラメント状補強要素44及び作動フィラメント状補強要素46、47は、赤道円周平面E上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるようにクラウン12に配置される。
【0240】
各カーカスフィラメント状補強要素44は、織物フィラメント状要素であり、従来、2個のマルチフィラメントストランドを含み、各マルチフィラメントストランドは、ポリエステル、この場合はPETのモノフィラメントの紡績糸から構成され、これら2個のマルチフィラメントストランドは、個々に240巻回.m-1で一方向に過剰撚転され、次いで、240巻回.m-1で反対方向に互いに撚転される。これら2個のマルチフィラメントストランドは、互いの周りに螺旋状に巻かれる。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220テクスに等しい番手を有する。
【0241】
各作動フィラメント状補強要素46、47は、金属フィラメント状要素であり、この場合に、各々が0.30mmに等しい直径を有する2つの鋼鉄モノフィラメントのアセンブリであり、これら2つの鋼鉄モノフィラメントは、14mmのピッチで互いに巻かれる。
【0242】
本発明によるコード
【0243】
図4、
図5、及び
図6を参照すると、本発明による各コード50及び51は、螺旋巻き金属フィラメント状要素54の単層52を含む。この事例では、各コード50、51は単層52から構成される、言い換えれば、各コード50、51は、層52のもの以外のいずれの金属フィラメント状要素も含まない。層52は、N個の螺旋巻き金属フィラメント状要素から構成され、Nは、3から6の範囲であり、この場合はN=4である。各コード50及び51は、当該コードがその最大長さに沿って延びる方向に対して実質的に平行に延びる主軸線Aを有する。この層の各金属フィラメント状要素54は、各コード50、51が実質的に直線の方向に延びる時に、この実質的に直線の方向に対して実質的に平行な主軸線Aに対して実質的に垂直な断面平面内で層52の各金属フィラメント状要素54の中心と主軸線Aとの間の距離が層52の全ての金属フィラメント状要素54に関して実質的に一定かつ同一であるような螺旋経路を主軸線Aの周りに描く。層52の各金属フィラメント状要素54の中心と主軸線Aとの間のこの一定の距離は、螺旋直径Dhの半分に等しい。
【0244】
図示の実施形態では、各金属フィラメント状要素54は、単一金属モノフィラメント56を含む。各金属フィラメント状要素54は、銅、亜鉛、錫、コバルト、又はこれらの金属の合金、この場合は黄銅を含む金属被覆の層(図示していない)を更に含む。各金属モノフィラメント56は炭素鋼で製造され、この場合は3100MPaに等しい引張強度を有する。
【0245】
各金属フィラメント状要素54の直径Dfは、全ての金属フィラメント状要素54に関して0.10≦Df≦0.50mm、好ましくは、0.20mm≦Df≦0.35mm、より好ましくは、0.25mm≦Df≦0.33mm、この場合はDf=0.32mmであるようなものである。各金属フィラメント状要素54には事前形成マークがない。
【0246】
各コード50及び51は、D≦2.00mm、好ましくは、0.75mm≦D≦1.40mm、より好ましくは、1.00mm≦D≦1.30mm、この場合はD=1.27mmであるような直径Dを有する。
【0247】
有利なことに、各コード50及び51の各金属フィラメント状要素54は、3mm≦P≦15mm、好ましくは、3mm≦P≦9mm、この場合はP=8mmであるようなピッチPで巻かれる。
【0248】
各金属フィラメント状要素の直径Dfに対するピッチPの比Kは、P及びDFがミリメートルを単位として表される時に19≦K≦44、この場合はK=25であるようなものである。
【0249】
各コード50及び51の金属フィラメント状要素54は、直径Dvの内部エンクロージャ58を定める。
【0250】
図6を参照すると、充填されたコード51は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づく内部エンクロージャ58に対する充填材料53を含み、この充填材料53は、コード51の内部エンクロージャ58内に位置する。コード50は、
図4及び
図5に見ることができるように充填材料を含有せず、すなわち、コード50の内部エンクロージャ58は空である。
【0251】
コード50は、As≧1%であるような、好ましくはAs≧2.5%、より好ましくはAs≧3%であるような、更に好ましくは3%≦As≦5.5%、この場合は4.8%に等しいような構造伸長Asを有する。上述のように、値Asは、2014年の規格ASTM D2969-04を適用してコード50の力-伸長曲線をプロットすることによって決定される。得られた曲線を
図8に示している。次いで、この力-伸長曲線からこの曲線の導関数の変動が推定される。
図11は、この導関数の変動を伸長の関数として示している。この場合に、この導関数の最高点が値Asに対応する。
【0252】
コード50の各金属フィラメント状要素の螺旋角度αは、13°≦α≦21°であるようなものである。この事例では、上述のように、コード50の特徴に関して、α(1)=20.05°、α(2)=20.36°、及びα(3)=α=20.37°である。
【0253】
コード50の各金属フィラメント状要素54は、2mm≦Rf≦7mm、好ましくは、2mm≦Rf≦5mm、より好ましくは、3mm≦Rf≦5mmであるような螺旋曲率半径Rfを有する。曲率半径Rfは、Rf=P/(π×Sin(2α))という関係式を用いて計算される。この場合はP=8mm及びα=20.37°であるので、Rf=3.90mmである。
【0254】
コード50の各金属フィラメント状要素54の螺旋直径Dhは、0.40mm≦Dh≦1.50mm、好ましくは、0.50mm≦Dh≦1.00mm、より好ましくは、0.70mm≦Dh≦1.00mmであるようなものである。螺旋直径Dhは、Dh=P×Tan(α)/πという関係式を用いて計算される。この場合はP=8mm及びα=20.37°であるので、Dh=0.95mmである。
【0255】
エンクロージャ直径Dvは、Dfが各金属フィラメント状要素の直径であり、Dhが螺旋直径である時にDv=Dh-Dfという関係式を用いて計算される。有利なことに、Dvは、Dv≧0.46mm、好ましくは、0.46mm≦Dv≦0.70mmであるようなものである。この場合はDh=0.95mm及びDf=0.32mmであるので、Dv=0.63mmである。
【0256】
9≦Rf/Df≦30、好ましくは、11≦Rf/Df≦19である。この場合は、Rf/Df=12.2である。更に、1.30≦Dv/Df≦2.1、好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.05、より好ましくは、1.30≦Dv/Df≦2.00であり、この場合は、Dv/Df=1.97である。
【0257】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコード50を引張することによってコード50の力-伸長曲線がプロットされた
図7を参照すると、コード50は、A
100が%を単位として表される100MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、M
1=10/A
100によって定められる弾性率M
1を有する。
【0258】
コード50の弾性率M1は、本発明によると5GPa≦M1≦16GPaであるようなものである。更に、有利なことに、6GPa≦M1、好ましくは、8GPa≦M1である。同じく有利なことに、M1≦14GPa、好ましくは、M1≦12GPaである。この場合は、M1=8.2GPaである。
【0259】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコード50を引張することによってコード50の力-伸長曲線がプロットされた
図8を参照すると、コード50は、M
2=[(F
40-F
30)/(A
40-A
30)]/Sによって定められる弾性率M
2を有し、ここで、
・Sは、mm
2を単位として表されるS=Ml/Mvであるような断面積であり、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の線密度であり、
・Mvは、cm
3当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の質量密度であり、
・F
40は、コードの理論最大力F
tの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・F
30は、コードの理論最大力F
tの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・A
40は、コードの理論最大力F
tの40%での%を単位として表されるコードの伸長であり、
・A
30は、コードの理論最大力F
tの30%での%を単位として表されるコードの伸長であり、ここで、
F
t=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、単層を構成する金属フィラメント状要素のMPaを単位として表される平均引張強度である。
【0260】
コード50の弾性率M2は、本発明によると40GPa≦M2≦160GPaであるようなものである。更に、有利なことに、65GPa≦M2、好ましくは、80GPa≦M2、より好ましくは、90GPa≦M2である。同じく有利なことに、M2≦150GPa、好ましくは、M2≦140GPa、より好ましくは、M2≦130GPaである。この場合は、M2=110GPaである。
【0261】
本発明により、3≦M2/M1である。更に、有利なことに、6≦M2/M1、好ましくは、8≦M2/M1、より好ましくは、10≦M2/M1である。同じく有利なことに、M2/M1≦19、好ましくは、M2/M1≦17、より好ましくは、M2/M1≦15である。この場合は、M2/M1=13.4である。
【0262】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコード50を引張することによってコード50の力-伸長曲線がプロットされた
図9を参照すると、コード50は、A
200が%を単位として表される200MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、M
1’=20/A
200によって定められる弾性率M
1’を有する。コード50の弾性率M
1’は、5GPa≦M
1’≦16GPaであるようなものである。有利なことに、6GPa≦M
1’、好ましくは、8GPa≦M
1’である。同じく有利なことに、M
1’≦14GPa、好ましくは、M
1’≦12GPaである。この場合は、M
1’=9.1GPaである。
【0263】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下でコード50を引張することによってコード50の力-伸長曲線がプロットされた
図10を参照すると、コード50は、A
300が%を単位として表される300MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、M
1’’=30/A
300によって定められる弾性率M
1’’を有する。コード50の弾性率M
1’’は、4GPa≦M
1’’≦16GPaであるようなものである。有利なことに、6GPa≦M
1’’、好ましくは、8GPa≦M
1’’である。同じく有利なことに、M
1’’≦14GPa、好ましくは、M
1’’≦12GPaである。この場合は、M
1’’=10.2GPaである。
【0264】
コード51は、Asc≧1%、好ましくは、Asc≧1.5%、より好ましくは、Asc≧2%、更に好ましくは、2%≦Asc≦4%、この場合は3.3%に等しいような構造伸長Ascを有する。上述のように、値Ascは、2014年の規格ASTM D2969-04を適用して充填されたコード51の力-伸長曲線をプロットすることによって決定される。得られた曲線を
図8に示している。次いで、この力-伸長曲線からこの曲線の導関数の変動が推定される。
図11は、この導関数の変動を伸長の関数として示している。この場合に、この導関数の最高点が値Ascに対応する。
【0265】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張することによって充填されたコード51の力-伸長曲線がプロットされた
図7を参照すると、充填されたコード51は、A
c100が%を単位として表される100MPaの負荷下でのコードの伸長である時に、M
c1=10/A
c100によって定められる弾性率M
c1を有する。
【0266】
充填されたコード51の弾性率Mc1は、本発明によると5GPa≦Mc1≦16GPaであるようなものである。更に、有利なことに、7GPa≦Mc1、好ましくは、10GPa≦Mc1である。同じく有利なことに、Mc1≦25GPa、好ましくは、Mc1≦20GPaである。この場合は、Mc1=11.4GPaである。
【0267】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張することによって充填されたコード51の力-伸長曲線がプロットされた
図8を参照すると、充填されたコード51は、M
c2=[(F
c40-F
c30)/(A
c40-A
c30)]/Sによって定められる弾性率M
c2を有し、ここで、
・Sは、mm
2を単位として表されるS=Ml/Mvであるような断面積であり、ここで、
・Mlは、充填材料なしのコードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の線密度であり、
・Mvは、cm
3当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の質量密度であり、
・F
c40は、充填材料なしのコードの理論最大力F
ctの40%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・F
c30は、充填材料なしのコードの理論最大力F
ctの30%に等しいdaNを単位として表される力であり、
・A
c40は、充填材料なしのコードの理論最大力F
ctの40%での%を単位として表される充填されたコードの伸長であり、
・A
c30は、充填材料なしのコードの理論最大力F
ctの30%での%を単位として表される充填されたコードの伸長であり、
ここで、F
ct=Ml×Rm/Mvであり、daNを単位として表され、ここで、Rmは、単層を構成する金属フィラメント状要素のMPaを単位として表される平均引張強度である。
【0268】
充填されたコード51の弾性率Mc2は、本発明によると40GPa≦Mc2≦150GPaであるようなものである。更に、有利なことに、60GPa≦Mc2、好ましくは、70GPa≦Mc2、より好ましくは、80GPa≦Mc2である。同じく有利なことに、Mc2≦140GPa、好ましくは、Mc2≦130GPa、より好ましくは、Mc2≦120GPaである。この場合は、Mc2=97.5GPaである。
【0269】
本発明によると3≦Mc2/Mc1である。更に、有利なことに、4≦Mc2/Mc1、好ましくは、5≦Mc2/Mc1、より好ましくは、6≦Mc2/Mc1である。同じく有利なことに、Mc2/Mc1≦12、好ましくは、Mc2/Mc1≦11、より好ましくは、Mc2/Mc1≦10である。この場合は、Mc2/Mc1=8.5である。
【0270】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張することによって充填されたコード51の力-伸長曲線がプロットされた
図9を参照すると、充填されたコード51は、A
c200が%を単位として表される200MPaの負荷下での充填されたコードの伸長である時に、M
c1’=20/A
c200によって定められる弾性率M
c1’を有する。充填されたコード51の弾性率M
c1’は、5GPa≦M
c1’≦30GPaであるようなものである。有利なことに、7GPa≦M
c1’、好ましくは、10GPa≦M
c1’である。同じく有利なことに、M
c1’≦25GPa、好ましくは、M
c1’≦20GPaである。この場合は、M
c1’=13.3GPaである。
【0271】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張することによって充填されたコード51の力-伸長曲線がプロットされた
図10を参照すると、充填されたコード51は、A
c300が%を単位として表される300MPaの負荷下での充填されたコードの伸長である時に、M
c1’’=30/A
c300によって定められる弾性率M
c1’’を有する。充填されたコード51の弾性率M
c1’’は、5GPa≦M
c1’’≦30GPaであるようなものである。有利なことに、7GPa≦M
c1’’、好ましくは、10GPa≦M
c1’’である。同じく有利なことに、M
c1’’≦25GPa、好ましくは、M
c1’’≦20GPaである。この場合は、M
c1’’=15.6GPaである。
【0272】
本発明によるタイヤ10に戻ると、かつ2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張し、その結果に密度dを乗じることによってフーピングプライ19の等価力-伸長曲線がプロットされた
図12を参照すると、フーピングプライ19は、A
n250が%を単位として表される250daN.dm
-1の負荷下でのフーピングプライ19の等価伸長である時に、M
n1=250/A
n250によって定められる弾性率M
n1を有する。
【0273】
弾性率Mn1は、本発明によると100daN.mm-1≦Mn1≦600daN.mm-1であるようなものである。更に、有利なことに、125daN.mm-1≦Mn1、好ましくは、150daN.mm-1≦Mn1である。同じく有利なことに、Mn1≦500daN.mm-1、好ましくは、Mn1≦400daN.mm-1である。この事例では、Mn1=283daN.mm-1である。
【0274】
更に、フーピングプライ19は、Mn2=[(Fn40-Fn30)/(An40-An30)]によって定められる弾性率Mn2を有し、ここで、
・Fn40は、フーピングプライ19の理論最大力Fntの40%に等しいdaN.dm-1を単位として表される力であり、
・Fn30は、フーピングプライ19の理論最大力Fntの30%に等しいdaN.dm-1を単位として表される力であり、
・An40は、フーピングプライ19の理論最大力Fntの40%での%を単位として表されるフーピングプライの等価伸長であり、
・An30は、フーピングプライ19の理論最大力Fntの30%での%を単位として表されるフーピングプライの等価伸長であり、
ここで、Fnt=Ml×Rm×d/Mvであり、daN.dm-1を単位として表され、ここで、
・Mlは、コードのm当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素の線密度であり、
・Mvは、cm3当たりのgを単位として表される金属フィラメント状要素54の質量密度であり、
・Rmは、MPaを単位として表される単層52を構成する金属フィラメント状要素54の平均引張強度であり、
・dは、dm当たりのフーピングプライ19の個数を単位として表されるフーピングプライ19内の1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素48の密度である。
【0275】
弾性率Mn2は、本発明によると1000daN.mm-1≦Mn2≦4500daN.mm-1であるようなものである。更に、有利なことに、1500daN.mm-1≦Mn2、好ましくは、1750daN.mm-1≦Mn2、より好ましくは、2000daN.mm-1≦Mn2である。同じく有利なことに、Mn2≦4000daN.mm-1、好ましくは、Mn2≦3800daN.mm-1、より好ましくは、Mn2≦3200daN.mm-1である。この事例では、Mn2=2418daN.mm-1である。
【0276】
本発明により、3≦Mn2/Mn1である。更に、有利なことに、4≦Mn2/Mn1、好ましくは、5≦Mn2/Mn1、より好ましくは、6≦Mn2/Mn1である。同じく有利なことに、Mn2/Mn1≦12、好ましくは、Mn2/Mn1≦11、より好ましくは、Mn2/Mn1≦10である。この事例では、Mn2/Mn1=8.5である。
【0277】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張し、その結果に密度dを乗じることによってフーピングプライ19の等価力-伸長曲線がプロットされた
図13を参照すると、フーピングプライ19は、A
n500が%を単位として表される500daN.dm
-1の負荷下でのフーピングプライ19の等価伸長である時に、M
n1’=500/A
n500によって定められる弾性率M
n1’を有する。M
n1’は、100daN.mm
-1≦M
n1’≦600daN.mm
-1であるようなものである。更に、有利なことに、125daN.mm
-1≦M
n1’、好ましくは、150daN.mm
-1≦M
n1’である。同じく有利なことに、M
n1’≦500daN.mm
-1、好ましくは、M
n1’≦400daN.mm
-1である。この場合は、M
n1’=331daN.mm
-1である。
【0278】
2014年の規格ASTM D2969-04の条件下で充填されたコード51を引張し、その結果に密度dを乗じることによってフーピングプライ19の等価力-伸長曲線がプロットされた
図14を参照すると、フーピングプライ19は、A
n750が%を単位として表される750daN.dm
-1の負荷下でのフーピングプライ19の等価伸長である時に、M
n1’’=750/A
n750によって定められる弾性率M
n1’’を有する。M
n1’’は、100daN.mm
-1≦M
n1’’≦600daN.mm
-1であるようなものである。更に、有利なことに、125daN.mm
-1≦M
n1’’、好ましくは、150daN.mm
-1≦M
n1’’である。同じく有利なことに、M
n1’’≦500daN.mm
-1、好ましくは、M
n1’’≦400daN.mm
-1である。この場合は、M
n1’’=388daN.mm
-1である。
【0279】
第1の実施形態によるタイヤを製造する方法
【0280】
タイヤ10は、下記で説明する方法を用いて製造される。
【0281】
最初に、作動プライ16、18及びカーカスプライ34が、各プライの複数のフィラメント状補強要素を互いに平行に配置し、これらの要素を架橋後にエラストマー母材を形成することが意図された少なくとも1つのエラストマーを含む未架橋組成内に例えばスキムコーティングによって埋め込むことによって製造される。プライの複数のフィラメント状補強要素が互いに平行であり、更にプライの主方向と平行である直線プライとして公知のプライが得られる。次いで、必要に応じて、各直線プライの一部分がある切断角度で切断され、プライの複数のフィラメント状補強要素が互いに平行であり、プライの主方向と切断角度に等しい角度を形成する傾斜プライとして公知のプライが得られるようにこれらの部分が互いに対して当接される。
【0282】
次いで、アセンブリ方法が実施され、その実施中に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19が、作動補強体15の半径方向外側に配置される。この事例では、第1の変形では、LFよりもかなり小さい幅Bを有するストリップが製造され、このストリップの未架橋エラストマー組成に基づくエラストマー母材内にコード51を埋め込むことによってこのストリップ内にフーピングフィラメント状補強要素48が形成され、ストリップは、軸線方向幅LFが得られるように数回にわたって螺旋に巻かれる。第2の変形では、幅LFを有するフーピングプライ19が、カーカスプライ及び作動プライと類似の方式で製造され、作動補強体15の上で1回巻かれる。第3の変形では、コード50によって形成されたフーピングフィラメント状補強要素48が、作動プライ18の半径方向外側に巻かれ、次いで、その上にフーピングプライ19の未架橋エラストマー組成に基づく層が堆積され、この層内に、コード50によって形成されたフーピングフィラメント状補強要素48がタイヤの硬化中に埋め込まれることになる。これら3つの変形では、タイヤを製造する方法の完了時に、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づくエラストマー母材内へのコード50の埋め込みによって得られたフーピングフィラメント状補強要素48を含むフーピングプライ19を形成するために、コード50によって形成されて接合されたフィラメント状補強要素48が、未架橋エラストマー組成に基づく母材内に埋め込まれる。次いで、フーピングフィラメント状補強要素が、充填されたコード51によって形成される。
【0283】
更に、カーカス補強体、作動補強体、フープ補強体、及びトレッドが、エラストマー母材の組成がまだ架橋されておらず、未硬化状態にある未乾燥形態のタイヤを形成するように配置される。
【0284】
次いで、未乾燥形態のタイヤは、それを少なくとも半径方向に拡大するように成形される。最後に、各組成が架橋状態を提供し、当該組成に基づくエラストマー母材を形成するタイヤをもたらすために、成形された未乾燥形態のタイヤの組成は、例えば硬化又は加硫によって架橋される。
【0285】
本発明の第2の実施形態によるタイヤ
【0286】
図15及び
図17は、本発明の第2の実施形態によるタイヤ10’を示している。これらの図では、第1の実施形態によるタイヤ10と類似の要素を同一参照番号によって表している。
【0287】
タイヤ10’は、軸線方向Xに対して実質的に平行な軸線の周りの回転を実質的に提供する。タイヤ10’は、この場合は乗用車を意図している。
【0288】
タイヤ10’は、トレッド20とクラウン補強体14とを含むクラウン12を有し、クラウン補強体14は、クラウン12内で周方向Zに延びる。
【0289】
クラウン補強体14は、単一作動プライ18を含む作動補強体15と、単一フーピングプライ19を含むフープ補強体17とを含む。この場合に、作動補強体15は作動プライ18から構成され、フープ補強体17はフーピングプライ19から構成される。クラウン補強体14は、作動補強体15とフープ補強体17で構成される。
【0290】
クラウン補強体14は、トレッド20を載せている。この場合に、フープ補強体17、この場合はフーピングプライ19は、半径方向に作動補強体15とトレッド20の間に挿入される。
【0291】
タイヤ10’は、クラウン12を半径方向に内側に向けて延ばす2つの側壁22を含む。更に、タイヤ10’は、側壁22の半径方向内側にある2つのビード24であって、その各々が充填ゴム30の塊を載せている環状補強構造体26、この事例ではビードワイヤ28を有する上記ビード24を有し、更に半径方向カーカス補強体32を有する。クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に置かれる。各側壁22は、各ビード24をクラウン12に接続する。
【0292】
カーカス補強体32は、単一カーカスプライ34を有する。この場合に、カーカス補強体32は、カーカスプライ34によって形成される。カーカス補強体32は、ビード24から側壁22を通ってクラウン12の中に延びる主ストランド38と、半径方向に環状補強構造体26の外側にある半径方向外側端部42を有する折り返しストランド40とを各ビード24内に形成するようにビードワイヤ28の周りで折り返すことによってビード24の各々内に固着される。従って、カーカス補強体32は、ビード24から側壁22を通ってクラウン12の中に延びる。この実施形態では、カーカス補強体32は、クラウン12を通って軸線方向にも延びる。クラウン補強体14は、半径方向にカーカス補強体32とトレッド20の間に挿入される。
【0293】
各作動プライ18、フーピングプライ19、及びカーカスプライ34は、対応するプライの1又は2以上の補強要素が埋め込まれたエラストマー母材を含む。
【0294】
図16を参照すると、単一カーカスプライ34は、カーカスフィラメント状補強要素44を含む。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10の一方のビード24から他方のビード24まで軸線方向に延びる。各カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10’の子午面M内で、言い換えれば、クラウン12内でタイヤ10の周方向Zと55°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、55°から80°、より好ましくは、60°から70°の範囲にわたる角度A
C1を成す。所与の縮尺において全てのカーカスフィラメント状補強要素44を互いに平行に示す略図である
図17を参照すると、カーカスフィラメント状補強要素44は、タイヤ10’の赤道円周平面E内で、言い換えれば、側壁22内でタイヤ10’の周方向Zと85°よりも大きいか又はそれに等しい角度A
C2を成す。
【0295】
この例では、基準直線から反時計周り方向に、この場合は周方向Zに向けられた角度が正号を有し、基準直線から時計周り方向に、この場合は周方向Zに向けられた角度が負号を有するという一般則を採用する。この事例では、AC1=+67°及びAC2=+90°である。
【0296】
図16を参照すると、単一作動プライ18は、複数の作動フィラメント状補強要素46を含む。これらの作動フィラメント状補強要素46は、互いに対して実質的に平行に横並びで配置される。各作動フィラメント状補強要素46は、タイヤ10の作動補強体15の一方の軸線方向端部から他方の軸線方向端部まで軸線方向に延びる。各作動フィラメント状補強要素46は、子午面M内でタイヤ10’の周方向Zと10°よりも大きく又はそれに等しく、好ましくは、30°から50°、より好ましくは、35°から45°の範囲にわたる角度A
Tを成す。上記で定めた向きを所与とすると、A
T=-40°である。
【0297】
単一フーピングプライ19は、少なくとも1つのフーピングフィラメント状補強要素48を含む。この事例では、フーピングプライ19は、2つの隣接する巻きの間の軸線方向距離が1.3mmに等しいようにタイヤ10’のクラウン12の軸線方向幅LFにわたって間断なく巻かれる。有利なことに、軸線方向幅LFは、作動プライ18の幅LTよりも小さい。フーピングフィラメント状補強要素48は、タイヤ10’の周方向Zと厳密に10°よりも小さく、好ましくは、7°よりも小さく又はそれに等しく、より好ましくは、5°よりも小さいか又はそれに等しい角度AFを成す。この事例では、AF=+5°である。
【0298】
フーピングプライ19は、その破断荷重の15%に等しい荷重に対して430daN.mm-1に等しい引張割線弾性率を有する。フーピングプライの破断荷重は69daN.mm-1に等しい。
【0299】
カーカスフィラメント状補強要素44、作動フィラメント状補強要素46、及びフーピングフィラメント状補強要素48は、赤道円周平面E上へのタイヤの半径方向の投影内に三角形メッシュを定めるようにクラウン12に配置されることに注意されるであろう。この場合に、角度AFにより、更に角度ATの向きと角度AC1の向きがタイヤ10’の周方向Zに関して反対であることにより、三角形メッシュを得ることが可能になる。
【0300】
各カーカスフィラメント状補強要素44は、織物フィラメント状要素であり、従来、2つのマルチフィラメントストランドを含み、各マルチフィラメントストランドは、ポリエステル、この場合はPETのモノフィラメントの紡績糸から構成され、これら2つのマルチフィラメントストランドは、個々に240巻回.m-1で一方向に過剰撚転され、次いで、互いに240巻回.m-1で反対方向に互いに撚転される。これら2つのマルチフィラメントストランドは、互いの周りに螺旋状に巻かれる。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220テクスに等しい番手を有する。
【0301】
各作動フィラメント状補強要素46は、金属フィラメント状要素であり、この場合に、各々が0.30mmに等しい直径を有する2つの鋼鉄モノフィラメントのアセンブリであり、これら2つの鋼鉄モノフィラメントは、14mmのピッチで互いに巻かれる。
【0302】
フーピングフィラメント状補強要素48は、上述のように充填されたコード51によって形成される。従って、フーピングフィラメント状補強要素48は、フーピングプライ19のエラストマー組成に基づくエラストマー母材内にコード50を埋め込むことによって得られる。タイヤ10’のフーピングプライ19は、タイヤ10のフーピングプライ19と同じ特性、特に、Mn1、Mn2、Mn2/Mn1、Mn1’、及びMn1’’、Fnt、d、Ml、Mv、Rmに関する特性を有する。
【0303】
タイヤ10’は、タイヤ10を製造する方法と類似の方法を実施することによって製造される。タイヤ10’の三角形メッシュを形成するために、EP1623819又はFR1413102に説明されている特定のアセンブリ方法が実施される。
【0304】
比較試験
【0305】
コード50及び充填されたコード51に関するデータを表1に集約している。表1に同じく列挙しているのは、以下に関連するデータである。
・WO2016/16605に説明されているコード3.26によって形成され、本発明によるものではなく、従来技術の撚転アセンブリ方法を実施することによって得られたコードC1、
・互いの周りに螺旋状にメートル当たり250回巻かれた各々140テクスの2つのナイロンストランドの撚転平衡化されたアセンブリによって形成された従来技術のフーピング織物フィラメント状補強要素C2、及び
・メートル当たり270回巻かれた330テクスの第1のアラミドストランドと330テクスの第2のアラミドストランドと188テクスの第3のナイロンストランドとの撚転平衡化されたアセンブリによって形成された従来技術のフーピング織物フィラメント状補強要素C3。
【0306】
表1では、「NS」という表示は、当該パラメータが当該のフーピング織物フィラメント状補強要素に対して物理的意味を持たないことを示している。
【0307】
フーピング織物フィラメント状補強要素C2及びC3に関して、線密度は、2014年のASTM D885/D885M-10a規格に従って各々が決定された各ストランドの番手の和として定めたものである。質量密度は、ストランドの質量密度を各ストランドの番手により、要素C3の場合はアラミドに関して1.44g.cm-3、ナイロンに関して1.14g.cm-3前後によって加重平均したものによって決定したものである。理論最大力Ftは、2014年のASTM D885/D885M-10a規格に従って決定された各フーピング織物フィラメント状補強要素の破断荷重として定めたものである。他の特性は、同等又は類似の方式で決定したものである。
【0308】
これらのコード及びフーピング織物フィラメント状補強要素の力-伸長曲線を
図18及び
図19に列挙している。
【0309】
本発明によるタイヤ10’に関するデータを表2に列挙している。同じく表2に列挙しているのは、以下に関連するデータである。
・フーピング補強要素C1を含むフーピングプライを除いてタイヤ10’と同一であるタイヤP1、
・フーピング補強要素C2を含むフーピングプライを除いてタイヤ10’と同一であるタイヤP2、及び
・フーピング補強要素C3を含むフーピングプライを除いてタイヤ10’と同一であるタイヤP3。
【0310】
これらのタイヤのフーピングプライの力-伸長曲線を
図20に列挙している。
【0311】
タイヤ及び各タイヤのフーピングが生じる騒音を評価するための試験の結果を表3に列挙している。
【0312】
騒音
【0313】
コスト及び迅速化の理由から、騒音に対してはシミュレーションによって評価した。今回試験する複数のタイヤをISO13325:2003規格の条件下に置き、これらのタイヤの各々の理論放射音響パワーと計測騒音の間の関係を特に成形段階の影響を考慮に入れたグラフの形態で確立した。次いで、各タイヤP1、P2、P3、及び10’の理論放射音響パワーを決定し、先に構成したグラフを用いて発生する騒音の値を決定した。その結果をタイヤP1が発生させる騒音を基準騒音として採用して提示し、試験した各タイヤの騒音の改善をタイヤP1と比較して示した。
【0314】
フーピング
【0315】
上記に鑑みて、このフーピングフィラメント状補強要素を含むフーピングフィラメント状補強要素又はフーピングプライのフーピング機能は、弾性率M2、Mc2、及びMn2の値によって与えられる。これらの弾性率M2、Mc2、及びMn2の値が高いほど、タイヤのフーピングは良好である。
【0316】
コスト
【0317】
コストは、原材料の平均コストの関数としてだけではなく、更にフーピングプライを製造する方法及び従って特に各フィラメント状補強要素を生成する方法の関連コストの関数としてのフーピングプライの製造コストの概算である。コストは、最も安価なタイヤP2のフーピングプライを基準として与えたものである。
【0318】
タイヤP1は、最も高いフーピング機能を有するプライを有する。しかし、非常に高い弾性率M1、Mc1、及びMn1に起因して、タイヤP1は非常に大きい騒音を発する。
【0319】
タイヤP2は、強い負荷下ではタイヤの有効なフーピングを可能にしない非常に低いフーピング特性のみを有するフーピングプライを有する。織物フィラメント状補強要素C2は、作動補強体が単一作動プライから構成され、フーピング補強体が負荷のうちの有意な部分を受け持つタイヤには特に不適切である。作動補強体が2つの作動プライから構成されるタイヤの場合に、フーピング補強体は、負荷のうちのこの有意な部分を受け持つことができなくなり、従って織物フィラメント状補強要素C2がより適切である可能性があるが、非常に高い負荷の場合は十分なフーピング機能を追加しない。
【0320】
タイヤP3は、タイヤP2のものよりも良好な特性とタイヤP1よりも低い騒音レベルとを有するフーピングプライを有する。フーピング機能は十分ではあるものの依然としてタイヤP1及び10’のものよりも低い。更に、タイヤP3は、アラミドを含むフィラメント状要素を用い、その結果、タイヤP1及び10’の金属フィラメント状要素よりもかなり高価なフィラメント状要素がもたらされる。
【0321】
タイヤ10’は、本発明により、タイヤP3のフーピングプライと比較して優れており(タイヤP1のみがそれよりも良好なフーピング機能を有する)、それと共にそれ程大きい騒音を発せずに非常に安価なフーピングプライを有する。フィラメント状補強要素50及び51は、その優れたフーピング機能に起因して、作動補強体が単一作動プライから構成され、2つの作動プライから構成される作動補強体を含むタイヤの場合にこれら2つの作動プライが受け持つことになる有意な負荷部分をフープ補強体が受け持つタイヤに特に適切である。フィラメント状補強要素50及び51はまた、作動補強体が2つの作動プライから構成され、従ってタイヤのフーピング機能が非常に有意に補強されて生じる騒音が同時に低減されると考えられるタイヤの場合に特に適切である。
【0322】
【0323】
【0324】
【符号の説明】
【0325】
50 コード
54 金属フィラメント状要素
58 内部エンクロージャ
D コードの直径
Dh 螺旋直径