(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ティッシュ用途のための再パルプ化可能な一時的湿潤強度ポリマーの合成
(51)【国際特許分類】
C08F 261/04 20060101AFI20230915BHJP
D21H 17/36 20060101ALI20230915BHJP
D21H 21/18 20060101ALI20230915BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20230915BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C08F261/04
D21H17/36
D21H21/18
C08L51/06
C08L1/02
(21)【出願番号】P 2021523506
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 US2019058728
(87)【国際公開番号】W WO2020092479
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-29
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518022813
【氏名又は名称】バックマン ラボラトリーズ インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ,アフメド
(72)【発明者】
【氏名】グローヴァー,ダニエル
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104119480(CN,A)
【文献】特開平08-246388(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00144155(EP,A2)
【文献】特表2003-529640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 261/04
D21H 17/36
D21H 21/18
C08L 51/06
C08L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール主鎖と該ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた複数の側鎖とを含むグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、
複数の側鎖からの前記側鎖の1つ以上が、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、ii)分岐アルキルアクリレートの単位と、
及びiii) 脂肪族アミドの単位を含み、
ここで、総固形分重量で30重量パーセント~60重量パーセントのポリビニルアルコール主鎖、総固形分重量で20重量パーセント~50重量パーセントの分岐アルキルアクリレート、
及び総固形分重量で2.5重量パーセント~15重量パーセントの脂肪族アミドの単位であり、及び、
ここで、カルボン酸側鎖を含む場合には総固形分重量で12重量パーセント~25重量パーセントのカルボン酸側鎖であり、反応性第四級アンモニウム塩を含む場合には総固形分重量で5重量パーセント~10重量パーセントの反応性第四級アンモニウム塩である、
グラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項2】
複数の側鎖からの前記側鎖の数の少なくとも75%が、i)前記脂肪族モノカルボン酸、前記脂肪族ジカルボン酸、及び前記反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位を含み、又は
複数の側鎖からの前記側鎖の数の少なくとも75%が、i)前記脂肪族モノカルボン酸、前記脂肪族ジカルボン酸、及び前記反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、ii)前記脂肪族アミド若しくは前記分岐アルキルアクリレートの単位、
を含む、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項3】
複数の側鎖からの前記側鎖の1つ以上が前記脂肪族アミド、前記分岐アルキルアクリレート並びに前記脂肪族モノカルボン酸若しくは前記脂肪族ジカルボン酸を含み、
ここで、該脂肪族アミドは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド、またはN-t-ブチルアクリルアミドまたはそれらの任意の組み合わせから選択され、該分岐アルキルアクリレートは、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレートまたはそれらの任意の組合せから選択され、及び、該脂肪族モノカルボン酸または該脂肪族ジカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メチレンコハク酸、またはそれらの組み合わせから選択される、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項4】
複数の側鎖からの側鎖が、i)前記反応性第四級アンモニウム塩の単位を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項5】
前記反応性第四級アンモニウム塩の単位は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、又は、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、又はそれらの任意の組み合わせの単位を含む、
請求項4に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項6】
複数の側鎖からの側鎖が、i)前記脂肪族モノカルボン酸及び前記脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位を含む、請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項7】
未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、5Kダルトン~20000Kダルトンの単峰性分子量分布を有する、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項8】
未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、74 mol%~99 mol%の加水分解度を有する、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項9】
未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、74 mol%~90 mol%の加水分解度を有する、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項10】
複数の側鎖からの前記側鎖の1つ以上が前記ポリビニルアルコール主鎖のアセテート部分によって該ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされる、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項11】
複数の側鎖からの前記側鎖の1つ以上が前記ポリビニルアルコール主鎖のヒドロキシル部分によって該ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされる、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項12】
前記反応性第四級アンモニウム塩が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの少なくとも1つ、又はそれらの組合せを含み、
前記脂肪族アミドが、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド及びN-t-ブチルアクリルアミドの少なくとも1つを含み、かつ
前記分岐アルキルアクリレートが、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート及び2-エチルブチルアクリレートの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項13】
下記構造(I):
【化1】
(式中、(a)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して74%~84%であり、
(b)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して16%~26%であり、
各Rは、アセテート又は複数の側鎖からの側鎖である)であるか、又は該構造を含む、 請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項14】
総固形分重量で40重量パーセント~50重量パーセントのポリビニルアルコール主鎖と、
総固形分重量で6重量パーセント~10重量パーセントの反応性第四級アンモニウム塩側鎖と、
総固形分重量で6重量パーセント~9重量パーセントの脂肪族アミドと、
総固形分重量で24重量パーセント~50重量パーセントの分岐アルキルアクリレートと、
を含む、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項15】
下記構造(IV):
【化2】
(式中、aの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して30%~34%であり、bの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して6%~10%であり、cの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して0.5%~1.0%であり、dの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して58%~62%である)であるか、又は該構造を含む、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項16】
下記構造(IV):
【化3】
(式中、aの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して30%~34%であり、bの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して6%~10%であり、cの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して0.5%~1.0%であり、dの総重量パーセントは、前記グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して58%~62%である)である、請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項17】
少なくとも25%の固形分を有する、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項18】
乾燥固体微粒子の形態である、
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【請求項19】
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
該グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが分散される水性媒体と、
を含む、ポリマー組成物。
【請求項20】
3~6のpHを有する、
請求項19に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む、水系グラフトエマルジョンポリマー。
【請求項22】
請求項15又は16に記載のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む、水系グラフトエマルジョンポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年11月2日に出願された先行する米国仮特許出願第62/754598号の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、この出願の全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマー、該グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含有する組成物、及びそれらの製紙のための使用、及びその製品に関する。
【背景技術】
【0003】
製紙は一般に、水性パルプ組成物を形成し、次いで、パルプをシーティングして乾燥させて所望の紙製品を形成することを含む。紙製品を湿潤用途で、例えばペーパータオル又はティッシュペーパーとして使用する場合、良好な湿潤強度が望まれることが多い。しかしながら、湿潤強度が強すぎると、水に浸漬した際に紙が分散せず、下水道を詰まらせることがある。
【0004】
また、水に分散しないと、紙のリサイクルも困難になる。例えば、事務用紙はしばしばリサイクルされる。リサイクル時には、紙を再パルプ化する必要があり、一般的に水溶液中の紙の分散を伴う。しかしながら、プリンタで使用するためには、事務用紙は水をはじく能力を必要とする。そうでなければ、プリンタによって用紙に置かれたインクがにじんで、印刷された文書又は画像の質が低下する。
【0005】
紙の湿潤強度及び撥水性を改善するために、様々な添加剤が採用されている。一般に、これらの添加剤は、共有結合を介して紙繊維に付着したポリマーである。かかるポリマーは、湿潤強度又は撥水性を改善することができるが、紙をリサイクルする際に問題が発生する。再パルプ化すると、添加剤内の部分が紙繊維に共有結合を提供し、製紙工場の様々な箇所に、再凝集する親水性で粘着性の高分子残基を残す。粘着性異物として知られているこれらの凝集体は、製紙工場の様々な要素を詰まらせることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、紙の湿潤強度を改善し、一時的な撥水性を紙に提供し、及び/又は紙に吸水遅延特性を与えながら、水に容易に分散し得る(easily water-dispersible)紙を製造する添加剤に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、親水性と疎水性との間のバランスが微調整された新規の非反応性グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供することである。
【0008】
本発明の別の特徴は、水分散性であり、セルロース基質に容易に吸着されるが、一時的な撥水及び/又は吸水遅延特性を有する樹脂を提供することである。
【0009】
本発明の更なる特徴は、ポリマー及び/又は該ポリマーを含む樹脂で処理した場合に一時的にはるかに少ない水を吸収するブロッター紙及び/又はティッシュペーパーを提供することである。
【0010】
本発明の追加的な特徴は、処理されたティッシュペーパーを水中に長期間浸漬しても、水が繊維間の絡み合いを破壊することを妨げないため、水中でのティッシュペーパーの完全な分散を可能にするティッシュペーパーを提供することである。
【0011】
本発明の別の特徴は、ティッシュペーパーに乾燥引張強度及び/又は湿潤引張強度を付与するが、下水道における良好な水分散性を可能にするポリマーを提供することである。
【0012】
本発明の追加的な特徴は、最初の分散から数分にわたって水によってゆっくりと可塑化されて洗い流されるか又は再分散され得るように、紙の再パルプ化及び/又はリサイクルを妨げないポリマーを提供することである。
【0013】
本発明の別の特徴は、比較的低い加水分解度を有するポリビニルアルコールとビニル系カチオン性モノマーとの反応生成物である新規なグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供することである。
【0014】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の明細書で一部説明され、本明細書から一部明らかとなるか、又は本発明の実施により認識することができる。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において具体的に指摘された要素及び組合せを用いて実現及び達成される。
【0015】
上記の特徴の1つ以上が、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供することにより本発明に従って達成されている。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、ポリビニルアルコール主鎖と該ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた複数の側鎖とを有する又は含む。複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上は、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む。
【0016】
本発明は更に、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、該グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが分散される水性媒体とを含むポリマー組成物に関する。
【0017】
本発明は更に、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む水系エマルジョンポリマーに関する。
【0018】
本発明は更に、セルロースパルプと、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含むセルロースパルプ製品に関する。
【0019】
本発明は更に、紙材と、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む紙製品に関する。
【0020】
本発明は更に、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む少なくとも1つの紙層を備えた製品に関する。製品は、紙シート、板紙、ティッシュペーパー、及び/又は壁材である。
【0021】
本発明は更に、綿繊維と、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む繊維状物質に関する。
【0022】
本発明は更に、水性懸濁液中のセルロース製紙繊維上に一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを吸収するか、或いは一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーで処理する工程を含む製紙方法に関する。この方法には、さらに、水性懸濁液をウェブに形成し、このウェブを乾燥させる工程を含めることができる。この方法において、一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが存在しない水性懸濁液で作られた紙と比較して、湿潤紙力及び/又は乾燥紙力及び/又は水分散性を高めるのに有効である。
【0023】
本発明は更に、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを作製する方法であって、該方法が、ポリビニルアルコールポリマーの水溶液を準備する工程と、少なくとも1つのフリーラジカル形成開始剤及び「側鎖モノマー」と称される側鎖(複数の場合もある)を形成する複数のモノマーを該水溶液に添加する工程とを含む、方法に関する。該方法では、複数の側鎖モノマーは、(a)脂肪族モノカルボン酸、及び/又は脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩、又はそれらの任意の組合せと、(b)任意に、脂肪族アミドと、(c)任意に分岐アルキルアクリレートとを含む。
【0024】
本発明は更に、紙を再パルプ化する方法であって、該方法が紙製品をアルカリ金属イオン含有苛性水溶液と接触させる工程を含む、方法に関する。この接触時に、本発明によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーにおけるカルボン酸官能基(carboxylic functionalities)は、アルカリ金属カルボキシレート官能基に変換される。この方法において、紙製品は、紙材と本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む。
【0025】
本発明は更に、第1のポリビニルアルコール主鎖と、該第1のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第1の複数の側鎖とを含む第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む、ポリマー混合物に関する。第1の複数の側鎖からの側鎖は、i)脂肪族モノカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せとを含む。ポリマー混合物はまた、第2のポリビニルアルコール主鎖と、該第2のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第2の複数の側鎖とを含む第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む。第2の複数の側鎖からの側鎖は、i)1つ以上の単位の反応性第四級アンモニウム塩と、任意に、ii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せとを含む。
【0026】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が例示的及び説明的なものに過ぎず、請求項に記載の本発明を更に説明することを意図すると理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの一実施形態のフーリエ変換赤外分光法を示す図である。
【
図2】動的光散乱法による本発明のグラフト化ポリビニルアルコールの一実施形態の粒径分析を示す図である。
【
図3】本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの一実施形態のゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量分布を示す図である。
【
図4】本発明のグラフト化ポリビニルアルコール樹脂の幾つかの調製例で処理したハンドキャスト紙シートの湿潤強度及び乾燥強度を示す棒グラフである。
【
図5】本発明のグラフト化ポリビニルアルコール樹脂の幾つかの調製例で処理したハンドキャスト紙シートの紙分散性試験を示す棒グラフである。
【
図6】本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの実施例で処理したハンドキャスト紙シートの湿潤強度減衰と、グリオキシル化ポリアクリルアミドで処理した紙との比較を示す棒グラフである。
【
図7】本発明の幾つかの実施例で処理した手作りのシートの水分散性に加えて、相対的湿潤強度及び乾燥強度の比較を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、水分散性であり、セルロース基質に容易に吸着されるが、一時的な撥水特性及び/又は吸水遅延特性を有する、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーに関する。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを組み込んだ紙製品は、一時的湿潤強度を有し得て、再パルプ化可能であり、リサイクル、及び/又は下水道での分散が可能である。
【0029】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、共に連結した複数のビニルアルコール及び酢酸ビニル繰り返し単位を有するポリビニルアルコール主鎖を含む(comprises or includes)。この主鎖は、このようにポリビニルアルコール主鎖の炭素骨格に対するペンダント基として(pendent to)複数のアセテート部分及びヒドロキシル部分を有する。ポリビニルアルコール主鎖の構造は、ポリビニルアルコール主鎖が未反応形態である場合にアセテート部分及びヒドロキシル部分を提供し、次いで、モノマーと反応して本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを形成することができる。選択肢として、アルキレン繰り返し単位が主鎖に存在することができ、したがってポリビニルアルコール主鎖は、ポリ(アルキレン-co-ビニルアルコール-co-酢酸ビニル)ポリマーと記載することができる。したがって、ポリビニルアルコール主鎖は、ポリマー、コポリマー、又はターポリマーとみなすことができ、そのように呼ぶこと又は名付けることができる。
【0030】
ポリビニルアルコール主鎖は、遊離した未反応形態で、約74 mol%~約99 mol%又はこの範囲を下回る若しくは上回る他の量の加水分解度を有することができる。74 mol%から99重量%(99 mol%)の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、範囲は、74 mol%~95 mol%、74 mol%~90 mol%、74 mol%~88 mol%、76 mol%~95 mol%、76 mol%~90 mol%、及び76 mol%~88 mol%となり得る。74 mol%から99重量%の間の全ての値がこの範囲に含まれるため、加水分解度は、74 mol%、75 mol%、76 mol%、77 mol%、78 mol%、79 mol%、80 mol%、81 mol%、82 mol%、83 mol%、84 mol%、85 mol%、86 mol%、87 mol%、88 mol%、89 mol%、90 mol%、91 mol%、92 mol%、93%、94 mol%、95 mol%、96 mol%、97 mol%、及び98 mol%(その小数及び分数を含む)となり得る。本明細書で使用する場合、「約」という語は、加水分解度について、列挙される値の±1 mol%の加水分解度を指す。
【0031】
好ましい一態様では、ポリビニルアルコール主鎖は、遊離した未反応の形態で、約74 mol%~約88 mol%の加水分解度を有し、このポリビニルアルコール主鎖は、遊離した未反応の形態で、反応性第四級アンモニウム塩を含む少なくとも1つのモノマーと反応する。
【0032】
加水分解度は、ポリビニルアルコール主鎖の主鎖に遊離したペンダントヒドロキシル部分(-OH)が幾つ存在するかに関する指標であり得る。ポリビニルアルコールの合成は、まず、ポリ酢酸ビニルを形成する酢酸ビニルの重合を伴う。その後、アセテート部分(-O-(CO-)CH3)は、加水分解反応を経てアルコール部分で置換され、遊離したペンダントヒドロキシル部分を形成する。そのため、本明細書で使用する場合、「加水分解度」は、ポリ酢酸ビニルのエステル交換反応時にアルコール部分で置換されるアセテート部分のmol%を指すことができる。そのため、一例として、74 mol%のアセテート部分は、74 mol%の加水分解度を特徴とするポリビニルアルコール主鎖に対してアルコール部分で置換される。
【0033】
本発明の態様では、ポリビニルアルコール主鎖は、未反応の形態で、約1000ダルトン~約50000ダルトンの数平均分子量を有し得る。ポリビニルアルコール主鎖の重量平均分子量は、未反応の形態で、10000ダルトン~200000ダルトンであり得る。
【0034】
ポリビニルアルコール主鎖は、未反応の形態で、1.1~10、例えば2~7の多分散性Mw/Mnを有し得る。
【0035】
ポリビニルアルコール主鎖の単峰性の分子量分布は、未反応の形態で、5Kダルトン~500Kダルトン、例えば50Kダルトン~500Kダルトンであり得る。単峰性の分子量分布は、約219Kダルトン±50000ダルトン、例えば約219Kダルトン±10000ダルトンの平均を有し得る。
【0036】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの主鎖を形成する遊離した未反応のポリビニルアルコールを本明細書では「PVOH」と称する場合がある。
【0037】
未反応の形態のポリビニルアルコール主鎖は、POVAL(商標)(Kuraray Co., Ltd.) 5/88、3/80、3/82、3/85、4/85、4/88、5/82、6/88、13/88、3/88、5/74、5/88、8/88、及びRS2117の1つ以上、SELVOL(商標)(Sekisui Specialty Chemicals America, LLC)502、513、518、418、425、443、203、523、205及び540の1つ以上、並びにそれらの任意の組合せであり得る。
【0038】
ポリビニルアルコール主鎖とモノマーとの反応の際、複数の側鎖が、そのアセテート部分及び/又はそのヒドロキシル部分で、それらを介して、又はそれらにより、ポリビニルアルコール主鎖の複数の繰り返し単位の1つ以上にグラフトされる。モノマーは、i)脂肪族モノカルボン酸、及び/又は脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上のモノマー、並びに、任意にii)脂肪族アミド、若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せであり得る。特定の理論又は特定の化学反応機構に束縛されることを望まないが、アセテート部分及び/又はヒドロキシル部分の全部又は一部をグラフト化反応の間にモノマーで置換することができる。
【0039】
複数の側鎖は、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む側鎖を含む(comprises)、側鎖から本質的になる、側鎖からなる、側鎖を含む(includes)、又は側鎖である。したがって、ポリビニルアルコールと反応するモノマーは、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、反応性第四級アンモニウム塩、脂肪族アミド、及び/又は分岐アルキルアクリレートから選択される。これらのモノマーの任意の組合せは、ポリビニルアルコール主鎖を形成するポリビニルアルコールとの反応に含めることができる。
【0040】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーにおいて、複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができる。さらに、複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含むことができ、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸、及び/又は反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない。
【0041】
或いは、複数の側鎖からの側鎖の1つ以上は、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0042】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーにおいて、複数の側鎖からの側鎖は、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができる。この態様では、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖は、脂肪族モノカルボン酸の単位及び/又は脂肪族カルボン酸の単位を必要としないか、又はそれらを有していない。本発明の一態様では、複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができる。さらに、複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含むことができ、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない。
【0043】
本発明の別の態様では、複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができ、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸のいかなる単位も有していない。複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含むことができ、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない。
【0044】
本発明の別の態様は、複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーに関する。
【0045】
本発明の別の態様は、複数の側鎖からの側鎖が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーに関する。複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができる。さらに、複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含むことができ、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない。
【0046】
本発明の別の態様は、複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含むことができ、反応性第四級アンモニウム塩のいかなる単位も有していない、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーに関する。複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない。
【0047】
本発明の別の態様は、複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せを含む、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーに関する。
【0048】
第四級アンモニウム塩の単位が、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖に存在する場合、これらの側鎖は「カチオン性側鎖」と呼ばれる場合がある。これらの側鎖は、セルロース繊維へのグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの迅速な吸着及び再パルプ化性に寄与することができる。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの幾つかの側鎖は、反応性第四級アンモニウム塩の単位を有する必要はない。セルロース繊維への迅速な吸着は、例えば、少なくとも75%の数のグラフト化ポリビニルアルコールの側鎖が反応性第四級アンモニウム塩の単位を含む(comprise or include)場合であっても起こり得る。
【0049】
本発明の別の態様では、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖はカルボン酸の単位を有する場合がある。カルボン酸の単位を含む側鎖を有するグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む紙製品を水で洗浄すると、その実施形態はゆっくりと膨潤した後、破断又は再分散し、それによって、溶液内の正確な金属イオン及び提供される正確なカルボキシレート部分に関係なく、ポリマーの樹脂を固体状態から水分散性ポリマーに変換する。カルボキシレート部分は、紙繊維上でアニオン性から負の電荷を帯びた部分(anionic-to-negatively-charge moieties)となり得る。
【0050】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖におけるカルボン酸の単位は、再パルプ化性に寄与し得る。カルボン酸の単位を含む側鎖を有するグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む紙製品を苛性溶液で洗浄すると、カルボン酸部分はカルボキシレート部分に変換され得て、それによりグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの樹脂を固体状態から水分散性ポリマーに変換することができる。例えば、カルボキシ部分は、ポリマーを含む紙製品を金属イオン含有苛性水溶液と接触させることでカルボキシレート部分に変換され得る。さらに、金属イオン含有苛性水溶液中にナトリウムイオンが含まれる場合、カルボキシ部分の一部をカルボン酸ナトリウム部分に変換することができる。溶液中の正確な金属イオン及び提供される正確なカルボキシレート部分に関わらず、カルボキシレート部分は紙繊維上でアニオン性から負の電荷を帯びた部分となり得る。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーのカルボキシレート部分は、紙の中のセルロース繊維上のカルボキシレート部分によりアニオン性になることができる。紙繊維上のアニオン性から負の電荷を帯びた部分の存在に伴い、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー及び紙繊維は互いに反発することができ、それにより水分散性が高まる。
【0051】
苛性及び/又は非苛性溶液中の水分散性に寄与するカルボキシ部分は、カルボン酸側鎖によって提供され得る。これらの側鎖のカルボン酸は、限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、イタコン酸、メチレンコハク酸、又はこれらの任意の組合せであり得る。
【0052】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマー内のヒドロキシ部分及びアミド部分の親水性の性質はまた、非苛性溶液中の紙製品の分散を増加させることができる。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む紙を水に分散すると、ヒドロキシ部分及びアミド部分が水中で膨潤し、紙が短時間で機械的強度を失う原因となる。機械的強度、及びその喪失は、シート厚さに依存する場合もある。
【0053】
苛性及び/又は非苛性溶液中での水分散性に寄与するヒドロキシ部分は、ポリビニルアルコール鎖によって提供され得る。例えば、ポリビニルアルコール主鎖の遊離したペンダントヒドロキシル部分は、主鎖及びモノマーとの反応後にまだ存在し、この水分散性に寄与することができる。
【0054】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖内のアミドの単位は、水分散性に寄与し得る。水に分散すると、アミド部分が水中で膨潤し、紙が機械的強度を失う原因となる。
【0055】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖内のアミドの単位は、紙の乾燥強度及び/又は湿潤強度に寄与し得る。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの水溶液のpHが十分に酸性である場合、アミド部分のアミン部分は、紙繊維内の負に帯電した部分に感受性のあるプロトン化カチオン形態へと変換され得る。このように、グラフト化ポリビニルアルコールポリマー中のプロトン化アミド部分は、ポリマーを紙繊維に静電的に引き付け、湿潤強度及び/又は乾燥強度を高めることができる。例えば、プロトン化アミド部分を、セルロース繊維内のカルボキシ部分に静電的に引き付けることができる。紙繊維内の負に帯電した部分に関わらず、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む水溶液及び/又は該ポリマーを組み込んだ樹脂のpHが約3~約6、好ましくは約4~約5である場合に、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを紙繊維に結合するのに十分な量のプロトン化アミド部分を提供することができる。
【0056】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖内のアミドの単位は、限定されるものではないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド若しくはN-t-ブチルアクリルアミド、又はそれらの任意の組合せ等の脂肪族アミドによって提供することができる。
【0057】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマー内のアミド、ヒドロキシル、及び/又は第四級アンモニウム塩部分は、水分散性に寄与し得るが、ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされたポリエチレン部分によって一時的水バリアを提供することができる。アルキル部分によって提供される一時的水バリアは、紙の吸水速度を低下させ、それによって湿潤強度を高めることができる。
【0058】
低いガラス転移温度及び/又は表面張力を有するアルキル部分は、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーによって提供される一時的水バリアを改善することができる。低いガラス転移温度及び/又は表面張力を有するアルキル部分はまた、ポリビニルアルコールの強い分子内水素結合又は分子凝集エネルギーを低減することで、より実質的なセルロースを作り出すため、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの湿潤セルロース繊維への接着性を改善することもできる。
【0059】
一時的水バリアはまた、限定されるものではないが、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、及びそれらの任意の組合せ等の1つ以上の分岐アルキルアクリレートをポリビニルアルコール主鎖上にグラフトすることによっても提供され得る。本発明のこの態様では、1つ以上の分岐アルキルアクリレートの単位はグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの側鎖に存在する。
【0060】
本発明の一態様では、脂肪族モノカルボン酸の単位、脂肪族ジカルボン酸の単位、反応性第四級アンモニウム塩の単位、脂肪族アミドの単位、及び/又は分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを提供する側鎖を、ポリビニルアルコール主鎖中の酢酸ビニル繰り返し単位のアセテート部分にグラフトすることができる。このグラフト化は構造(I)によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供する:
【化1】
【0061】
この構造では、(a)単位の総重量パーセントを、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して74重量%~84重量%とすることができる。74重量%から84重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この値は、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、及び83重量%であり得る。この範囲は、74重量%~82重量%、77重量%~84重量%、80重量%~84重量%、又は80重量%~82重量%であり得る。(b)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して16重量%~26重量%である。16重量%から26重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この値は、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、及び25重量%であり得る。この範囲は、16重量%~23重量%、16重量%~20重量%、20重量%~26重量%、又は20重量%~23重量%であり得る。(a)及び(b)の単位の総重量パーセントは100重量%に等しくできるか、又は100重量%である。
【0062】
構造(I)では、Rは、アセテートと、脂肪族モノカルボン酸の単位、脂肪族ジカルボン酸の単位、反応性第四級アンモニウム塩の単位、脂肪族アミドの単位、分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む側鎖との任意の組合せである。
【0063】
構造(I)によると、複数のR基が存在するため、幾つかの側鎖は反応性第四級アンモニウム塩のいかなる単位も含む必要がない。反応性第四級アンモニウム塩モノマーの単位を含むRにおける側鎖は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。カルボン酸の単位を含むRにおける側鎖は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メチレンコハク酸の単位及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。脂肪族アミドの単位を含むRにおける側鎖は、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミドの単位及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。分岐アルキルアクリレートの単位を含むRにおける側鎖は、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレートの単位及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。本明細書で使用する場合、「側鎖」という語は、1つの側鎖に限定されるものではなく、同じ又は類似の構造の複数の側鎖を指す場合がある。
【0064】
代替的な構造では、脂肪族モノカルボン酸の単位、脂肪族ジカルボン酸の単位、反応性第四級アンモニウム塩の単位、脂肪族アミドの単位、及び/又は分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを提供する側鎖を、ビニルアルコール単位、エチレン単位、及び酢酸ビニル単位の繰り返し単位を有するポリビニルアルコール主鎖中の酢酸ビニル繰り返し単位のアセテート部分にグラフトすることができる。このグラフトは構造(II)によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供する:
【化2】
【0065】
構造(II)では、(a)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して90重量%~95重量%である。90重量%から95重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、91重量%、92重量%、93重量%、及び94重量%が含まれる。(b)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して1重量%~8重量%である。1重量%から8重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、及び7重量%が含まれる。(c)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して1%~3%である。2重量%を含む1重量%から3重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれている。
【0066】
構造(II)によれば、複数のR基がある。各R基は、アセテート単位、又は脂肪族モノカルボン酸の単位、脂肪族ジカルボン酸の単位、反応性第四級アンモニウム塩の単位、脂肪族アミドの単位、及び/又は分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む側鎖であり得る。反応性第四級アンモニウム塩モノマーの単位を含むRにおける側鎖は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。カルボン酸の単位を含むRにおける側鎖は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メチレンコハク酸の単位及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。脂肪族アミドの単位を含むRにおける側鎖は、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミドの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。分岐アルキルアクリレートの単位を含むRにおける側鎖は、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレートの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。本明細書で使用する場合、「側鎖」という語は、1つの側鎖に限定されるものではなく、同じ又は類似の構造の複数の側鎖を指す場合がある。
【0067】
別の代替的な構造では、構造(III)によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを提供するように、アミド部分、カルボキシ部分及び/又はポリエチレン部分を提供する側鎖(a side chain, or side chains)を、ポリビニルアルコール主鎖のアセテート部分にグラフトすることができる:
【化3】
【0068】
この構造では、aは0.70~0.95、bは0.01~0.30、cは0~0.5、a+b+c=1、Xは酢酸ビニルと重合可能な任意のモノマー(「Xモノマー」)である。
【0069】
aの場合、この範囲内の全ての値が含まれ、したがって、aは、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、及び0.94のいずれかとなり得る。好ましくは、aは0.80~0.95、より好ましくは0.90~0.95である。
【0070】
bの場合、この範囲内の全ての値が含まれ、したがって、bは、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28及び0.29のいずれかとなり得る。好ましくは、bは0.05~0.25、より好ましくは0.05~0.20である。
【0071】
cの場合、この範囲内の全ての値が含まれ、したがって、cは、0.1、0.2、0.3及び0.4のいずれかとなり得る。好ましくは、cは0.1~0.5である。
【0072】
構造(III)によれば、複数のR基がある。各R基は、アセテート単位、又は脂肪族モノカルボン酸の単位、脂肪族ジカルボン酸の単位、反応性第四級アンモニウム塩の単位、脂肪族アミドの単位、分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む側鎖であり得る。反応性第四級アンモニウム塩モノマーの単位を含むRにおける側鎖は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。カルボン酸の単位を含むRにおける側鎖は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メチレンコハク酸の単位及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。脂肪族アミドの単位を含むRにおける側鎖は、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミドの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。分岐アルキルアクリレートの単位を含むRにおける側鎖は、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレートの単位、及び/又はそれらの任意の組合せを含むことができる。本明細書で使用する場合、「側鎖」という語は、1つの側鎖に限定されるものではなく、同じ又は類似の構造の複数の側鎖を指す場合がある。a、b、及びcはそれぞれ、上記構造(III)内の部分のモル量を表す。
【0073】
構造(III)では、Xモノマーは、ポリビニルアルコールを形成する任意の反応条件下で酢酸ビニルと重合することができる任意のモノマーである。選択肢として、Xモノマーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、1-ペンテン、及び4-メチル-1-ペンテンであり得る。Xモノマーの他の選択肢としては、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、スチレン、ビニルケトン、(メタ)アクリロニトリル、アクリロフェノン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、(イソ)ブチル(メタ)アクリレート、ブチルシアノアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、エチルシアノアクリレート、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、メチル2-クロロアクリレート、メチル2-フルオロアクリレート、メチルシアノアクリレート、ビニルプロピオネート、N-ビニルアセトアミド、4-ビニルベンジルクロリド、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、ビニルシラン、ビニルスルホン酸、若しくは4-ビニルトルエン、ビニルトリエトキシシラン、又はそれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
構造に関係なく、本発明のグラフト化ポリビニルアルコール中のポリビニルアルコール主鎖は、カルボキシル官能基、アミン官能基、アミド官能基若しくはイミド官能基、又はそれらの任意の組合せ等の追加の官能基を提供する単位を3 mol%以下の量でそこに組み込むことができる。
【0075】
構造及びポリビニルアルコール主鎖の任意の形態に関係なく、側鎖を、ポリビニルアルコール主鎖内で利用可能な酢酸ビニル繰り返し単位の約90%~約100%にグラフトすることができ、及び/又はポリビニルアルコール主鎖内のビニルアルコール繰り返し単位の約90%~約100%にグラフトすることができる。これらの範囲間の全ての値が含まれるため、値は91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%となり得る。
【0076】
選択肢として、どのように製造されるかに関係なく、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、構造(IV)を有するか、又は該構造を含むことができる:
【化4】
【0077】
構造(IV)では、aの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して30%~34%であり、bの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して6%~10%であり、cの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して0.5%~1.0%であり、dの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して58%~62%である。
【0078】
aの場合、30重量%から34重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、31重量%、32重量%、及び33重量%が含まれる。bの場合、6重量%から10重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、7重量%、8重量%、及び9重量%が含まれる。cの場合、0.5重量%から1.0重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、及び0.9重量%が含まれる。dの場合、58重量%から62重量%の間の全ての値は、端点を含めてこの範囲に含まれており、そのため、この範囲には、例えば、59重量%、60重量%、及び61重量%が含まれる。
【0079】
側鎖モノマーは、重量基準で1:2:8~1.5:3:6の比範囲でポリビニルアルコール主鎖に結合し、(b)脂肪族アミドの量に正規化することができる。グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、限定されるものではないが、少なくとも25重量%の固形分、例えば23重量%から27重量%以上の固形分の水分散性、及び/又は乾燥固体粒子を形成する能力等の様々な望ましい特性を有することができる。
【0080】
所望の特性に応じて、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、全固形分重量で約40%~約42%、好ましくは40%~50%のポリビニルアルコール主鎖重量パーセント、全固形分重量で約5%~約10%、好ましくは6%~8%の第四級アンモニウム塩側鎖重量パーセント、全固形分重量で約4%~約10%、好ましくは5%~8%の脂肪族アミド重量パーセント、及び全固形分重量で約35%~約45%の分岐アルキルアクリレート重量パーセントを含むことができる。
【0081】
他の選択肢として、どのように製造されるかに関係なく、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、構造(V)を有するか、又は該構造を含むことができる:
【化5】
【0082】
構造(V)では、aの総重量パーセントは総重量パーセントに基づいて0.05%~0.5%であり、bの総重量パーセントは総重量パーセントに基づいて1.25%~2.5%であり、cの総重量パーセントは総重量パーセントに基づいて0.5%~4.0%であり、dの総重量パーセントは総重量パーセントに基づいて40%~42%であり、gの総重量パーセントは総重量パーセントに基づいて50%~60%、例えば55%である。
【0083】
構造(V)では、側鎖モノマーは、重量基準で3:1:5~2.5:1:4のa:b:c比範囲でポリビニルアルコール主鎖に結合し、(b)脂肪族アミドの量に正規化することができる。
【0084】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールを形成するために、様々な機構により、ポリビニルアルコール主鎖の酢酸ビニル及び/又はビニルアルコール繰り返し単位に側鎖をグラフトすることができる。例えば、ビニル部分を含む側鎖、限定されるものではないが、メチレンコハク酸、アクリレート、アクリル酸、メタクリレート、反応性第四級アンモニウム塩モノマー及び/又はメタクリル酸等を、遊離PVOHの存在下でのモノマーのラジカル誘起重合によって、ポリビニルアルコール主鎖に付加することができる。モノマーのラジカル誘起重合は、酸化剤及び/又は還元剤等のフリーラジカル形成開始剤の存在下でポリマーに側鎖をグラフトすることによって達成され得る。適切なフリーラジカル形成開始剤としては、限定されるものではないが、過酸化物、アゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられる。適切な還元剤としては、限定されるものではないが、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、硫酸鉄(II)、及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられる。適切な酸化剤としては、限定されるものではないが、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル(正:benzoyl peroxide)、過酸化ジクミル、及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられる。したがって、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、遊離した未反応のポリビニルアルコールポリマーの水溶液を準備すること、及び該水溶液にフリーラジカル形成開始剤及び所望の複数の側鎖形成モノマーを添加することによって作製され得る。水溶液に添加される側鎖モノマーには、(a)脂肪族系、アリル系、ビニル系及びアクリル系の第四級アンモニウム塩の少なくとも1つを含む反応性第四級アンモニウム塩モノマー側鎖と、(b)脂肪族アミドと、(c)分岐アルキルアクリレートとが含まれ得る。他の側鎖は、脂肪族アミドの単位及び/又は分岐アルキルアクリレートの単位を含むことができるが、脂肪族系、アリル系、ビニル系及びアクリル系の第四級アンモニウム塩の単位を有しない。
【0085】
水溶液のpHを制御するため、限定されるものではないが、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及び/又はそれらの任意の組合せ等の緩衝塩を使用することができる。
【0086】
十分な期間の(例えば3時間~4時間以上)後、遊離残留モノマーは、限定されるものではないが、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.01%/t-ブチルヒドロペルオキシド0.08%(重量%)、過酸化水素/鉄(II)化合物、及び/又はそれらの任意の組合せ等の十分な量の還元/酸化対を添加することによって抑制され得る。十分な量の還元/酸化対は、遊離残留モノマーの抑制が生じる限り特に制限されない。好ましくは、還元/酸化対の量はそれぞれ0.005重量%及び0.08重量%である。
【0087】
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、限定されるものではないが、少なくとも16重量%の固形分、例えば16重量%から20重量%以上の固形分の水分散性、及び/又は乾燥固体粒子を形成する能力等の様々な望ましい特性を有することができる。
【0088】
所望の特性に応じて、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、全固形分重量で約30%~約60%、好ましくは40%~50%のポリビニルアルコール主鎖重量パーセント、全固形分重量で約12%~約25%、好ましくは15%~21%のカルボン酸側鎖重量パーセント、全固形分重量で約2.5%~約15%、好ましくは6%~11%の脂肪族アミド重量パーセント、及び全固形分重量で約20%~約35%の分岐アルキルアクリレート重量パーセントを含むことができる。
【0089】
更なる選択肢として、グラフト化ポリビニルアルコールポリマー又はそのポリビニルアルコール主鎖は架橋され得る又は架橋されている。架橋は、ポリビニルアルコール主鎖の部分間の内部イオン結合又は共有結合によって生じ得る。或いは、架橋は、ポリビニルアルコール主鎖の部分と任意の適切な架橋剤とを反応させることによって行うことができる。
【0090】
本発明はまた、第1のポリビニルアルコール主鎖と該第1のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第1の複数の側鎖とを含む第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、第1の複数の側鎖からの側鎖が、i)脂肪族モノカルボン酸、及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はその任意の組合せとを含む、第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、第2のポリビニルアルコール主鎖と該第2のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第2の複数の側鎖とを含む第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、第2の複数の側鎖からの側鎖が、i)1つ以上の単位の反応性第四級アンモニウム塩と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せとを含む、第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む(comprise)、それらから本質的になる、それらからなる、それらを含む(include)、又はそれらを有することができる、ポリマー混合物に関する。
【0091】
ポリマー混合物は、第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー:第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの重量比10:1~1:10、又はこの範囲外の他の重量比で第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー及び第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む(comprise)、それらからなる、それらから本質的になる、それらを含む(include)、又はそれらを有することができる。
【0092】
第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー及び第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーはそれぞれ、本明細書に記載される任意の構造を有することができる。
【0093】
第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、第2のグラフト化ポリビニルアルコールの歩留向上剤として機能し得て、又はその逆の場合もあり得る。第1のグラフト化ポリビニルアルコール及び第2のグラフト化ポリビニルアルコールはともに、2つのグラフト化ポリビニルアルコール間の粒子電荷密度の差に起因する2成分架橋系とみなすことができる。
【0094】
本発明のポリマー混合物を、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを用いて、それに対して、又はそれに行われる本明細書に記載される任意の方法に使用することができる。
【0095】
ポリマー組成物は、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを水性媒体内に分散させることによって製造され得る。
【0096】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを、様々な製品に組み込むことができる。例えば、該ポリマーを、湿潤強度及び/又は乾燥強度を高める、及び/又は一時的な撥水性を提供する、及び/又は吸水遅延特性を提供するために、紙製品に組み込むことができる。
【0097】
紙製品に上記ポリマーを組み込むことは、限定されるものではないが、セルロース繊維等の紙の製造に適した繊維状物質と、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む繊維状パルプを製造することによって達成され得る。好ましくは、繊維状物質は、限定されるものではないが、カルボキシレート部分等の負に帯電した部分を含む。繊維状パルプを水性懸濁液に変換することができ、その中で、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを繊維状物質に吸収又は吸着させることができる。水性懸濁液は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを、好ましくは負に帯電した部分を含むパルプストックに添加することにより提供することができる。例えば、上記ポリマーを、セルロース製紙繊維を含むパルプストックに添加することができる。提供される方法に関わらず、その後、懸濁液をウェブに形成し、乾燥させて紙製品を提供することができる。懸濁液をウェブに形成することは、繊維状物質上にグラフト化ポリビニルアルコールポリマーが吸着した後に懸濁液を排出することによって達成することができる。
【0098】
好ましくは、水性懸濁液は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが存在しない水性懸濁液で作られた紙製品と比較して、湿潤強度、及び/又は乾燥強度、及び/又は水分散性を高めるのに有効な量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む。例えば、セルロース紙製品の場合、水性懸濁液は、乾燥セルロース製紙繊維1トン当たり4ポンド~10ポンドのグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含むことができる。理想的には、水性懸濁液内のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの量は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが存在しない水性懸濁液を用いて作られた紙製品と比較して、湿潤強度及び/又は乾燥強度を少なくとも10%(例えば10%から50%以上)高めるのに有効である。
【0099】
紙製品の湿潤強度は、一片の乾いた紙製品を室温で5分間相対湿度100%に供し、その後、湿った紙製品の引張強度を測定することによって測定することができる。引張強度は、以下の方法で測定することができる。
1 カッター機を使用して13×150 mmのブロッター紙片を切断する;
2 45℃で12時間全ての紙片を調湿する(Condition);
3 デシケータ内において室温(RT)(例えば25℃)で少なくとも2時間全ての紙片を調湿する;
4 0.0015重量%ポリマー溶液又は必要な全てのポリマー濃縮物を調製する;
5 0.0015重量%ポリマー溶液に各紙片を1秒間浸漬するか、又は単にそれを浸して取り出す;
6 ブロッター紙のシート上に各紙片セットを置く;
7 紙片を60℃で24時間乾燥させる;
8 室温で少なくとも2時間、デシケータ内の全ての紙片を調湿する;
9 引張強度を試験するため50 Kgロードセルを使用する;
10 乾燥引張強度を測定するため、各セットから5紙片を試験する;
11 一度に各セットの5紙片を取り、相対湿度100%及び室温の湿度チャンバーに5分間置く;
12 5分後に紙片を保持するためチャンバー内に開いたガラス瓶を加える;
13 相対湿度100%で5分後、ガラス瓶の中に紙片を維持し、紙片内の水分レベルをできるだけ一定に保つためにしっかりと閉じる;
14 乾燥引張強度用に設定された同じ引張計ソフトウェアを使用して、湿潤引張強度について各セットからの5紙片を試験する。
【0100】
湿潤強度を試験する他の方法としては、TAPPI T-465 om-15として知られる標準的な試験方法が挙げられ得る。ここでは、紙試験片を曲げて、水カップ(フィンチカップ)に少しの間浸漬してから引張計で試験する。
【0101】
紙製品の乾燥強度は、ハンドキャストシートを、例えば、13×127 mmのサイズで切断し、次いで、引張計で引張強度を測定する前に数時間、室温及び相対湿度50%で調湿することを除いて、上に記載される引張強度を測定するものと同様の方法で測定することができる。
【0102】
水分散性は、10×20 mmのハンドキャスト紙試験片及び/又はブロッター紙試験片を切断し、次いで50℃及び相対湿度50%で4時間、試験片を調湿することにより測定することができる。各紙試験片を200 mlの脱イオン水を入れたビーカー内に置く。次いで、紙試験片を含む水を300 rpmで磁気的に撹拌する。紙試験片の完全な分散のための時間を記録する。グラフト化ポリビニルアルコールで処理された紙試験片は60秒未満の分散時間を示したが、G-PAMで処理されたものは180秒超の分散時間を示し、及び/又は他の幾つかのG-PAMバッチについては全く分散を示さなかった。
【0103】
撥水性は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーで処理されたブロッター紙の上に水滴を置き、この水滴が処理されたブロッター紙に拡散するのに必要な時間を記録することによって測定することができる。
【0104】
提供され得る強度、撥水性、及び/又は分散性に関わらず、水性懸濁液内のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの量は、フィンチカップ法及び/又は湿度チャンバー法によって決定される湿潤紙力と、引張計によって決定される乾燥紙力との約0.6、又は0.6±0.2若しくは0.6±0.1の比を提供することができる。
【0105】
紙製品は、どのように製造されるかに関係なく、紙材及びグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含むことができる。紙製品の紙材は、ポリビニルアルコール主鎖の繰り返し単位にグラフトされた脂肪族アミドの一部にプロトン化アミン及び第四級アンモニウム塩と静電的に相互作用するカルボキシ部分を有するセルロース繊維を含むことができる。
【0106】
紙製品を、限定されるものではないが、紙シート、板紙、ティッシュペーパー、又は壁材等の紙製品の層を備える更なる製品に組み込むことができる。したがって、紙の層は、脂肪族アミドの一部上のプロトン化アミン及び第四級アンモニウム塩、及び/又はポリビニルアルコール主鎖の繰り返し単位にグラフトされた反応性第四級アンモニウム塩と静電的に相互作用するカルボキシル部分を有するセルロース繊維を含むことができる。
【0107】
本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、紙製品以外の繊維状物質を処理するために使用することができる。例えば、負に帯電した部分を含む繊維状物質を有する衣服を該ポリマーで処理することができる。例えば、脂肪族アミドの一部のプロトン化アミン及び/又は第四級アンモニウム塩、及び/又はポリ(ビニルアルコール-co-酢酸ビニル)の繰り返し単位にグラフトされた反応性第四級アンモニウム塩と静電的に相互作用するカルボキシ部分を有する綿線維を含む繊維状物質を製造することができる。材料内の繊維の種類に関わらず、繊維状物質は、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーで繊維をコーティングする及び/又はそれを含浸させることによって得ることができる。
【0108】
モノマーの多様性及びポリビニルアルコールポリマーに対する相対濃度は、最終使用又は顧客の適用中に必要とされる湿潤強度を付与し、廃棄後の下水道において完全な分散を可能にする、この一時的湿潤強度の所望の性能を達成することに関連する。この二重の相反する機能の「スマートな」性能は、このポリマーと、或る特定のpH範囲で1つの機能しか行うことができない共有架橋産物とを区別する。
【0109】
湿潤強度を改善するために一般的に使用される他の添加剤と同様に、従来のグリオキシル化ポリアクリルアミドは紙繊維に共有結合する。加えて、従来のグリオキシル化ポリアクリルアミドは、その骨格に沿ってヒドロキシル残基を欠いている。ヒドロキシル残基の欠如は、膨張する水によって機械的に引っ張られるようになるグリオキシル化ポリアクリルアミド処理紙の能力を制限する。グリオキシル化ポリアクリルアミド処理紙によって十分な量の水を膨潤することができたとしても、グリオキシル化ポリアクリルアミドと紙繊維との間の共有結合が、得られた機械的歪みが紙を分散することを妨ぐ。グリオキシル化ポリアクリルアミドとは異なり、本発明のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーは、プロトン化アミン及び/又は第四級アンモニウム塩部分と紙繊維内の負に帯電したカルボキシ部分との間の静電相互作用によって紙繊維に結合される。より弱いこの静電相互作用は、グラフト化ポリビニルアルコールが水を膨潤するときに、より壊れやすい。そのため、グラフト化ポリビニルアルコールポリマー内のプロトン化アミン単位及び/又は反応性第四級アンモニウム塩単位と紙繊維との間のより弱い静電相互作用は、水分散性の改善に寄与する。したがって、紙繊維に共有結合する他の添加剤との比較では、同様の結果が期待され得る。
【0110】
本発明は、以下の実施例により更に明確化され、これらは本発明の例示となるものである。
【実施例】
【0111】
実施例1~実施例4
グラフト化ポリビニルアルコールポリマー(TWS15)の合成及び特性評価
グラフト化ポリビニルアルコールの実施例を、ポリビニルアルコールポリマー(CAS番号25213-24-5)を水に15重量%の固形分で溶解して調製した。次いで、第四級アンモニウム塩側鎖モノマーとしてのジアリルジメチルアンモニウムクロリド(CAS番号7398-69-8)、脂肪族アミド側鎖モノマーとしてのアクリルアミド(CAS番号79-06-1)、及び分岐アルキルアクリレート側鎖モノマーとしての2-エチルヘキシルアクリレート(CAS番号103-11-7)をPVOH水溶液に加えた。ジアリルジメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドを65℃の15%PVOH水溶液に加えた。2-エチルヘキシルアクリレートを、滴下添加により、120分間かけて加えた。次いで、重硫酸ナトリウム(CAS番号7631-90-5)及び過硫酸アンモニウム(CAS番号7727-54-0)をフリーラジカル形成開始剤として、また重炭酸ナトリウム(CAS番号144-55-8)を緩衝塩としてエマルジョンに加えた。次いで、半連続重合を、0.8重量%の過硫酸アンモニウム溶液を65℃で240分間供給することによって開始した。次いで、過硫酸アンモニウムを一定の速度でエマルジョン中に送り込みながら、重合を80℃で2時間伝播した。次いで、過酸化水素(CAS番号7722-84-1)及びt-ブチルヒドロペルオキシド(CAS番号75-91-2)をエマルジョンに0.1%重量/重量で添加して、遊離残留モノマーを抑制した。200 rpm~300 rpmの撹拌を80℃で1時間維持した。その後、バッチを室温まで冷却してから、包装トートに排出した。
【0112】
最終的なエマルジョンは以下の重量パーセンテージを有していた。
【0113】
【0114】
次いで、生成したグラフト化ポリビニルアルコールポリマーをフーリエ変換赤外分光法、動的光散乱法による粒度分析、ゲル透過クロマトグラフィー、pH、及び分散固形分によって特性評価した。
【0115】
パーセンテージとしての上記実施例の加水分解度(%)は以下の通りであった:M5-TWS13(74%)、M7-TWS13(80%)、M8-TWS13(80%)及び M9-TWS13(74%)。
【0116】
一時的湿潤強度 湿潤強度減衰試験
ハンドキャストシートを、1:1重量比で軟質木材パルプと硬質木材パルプを配合して調製した。パルプを1重量%の濃度(consistency)に希釈した。1 Lの希釈パルプを、10 lb/トン相当の実施例1~実施例4としての実施形態の様々な例へと処理した。ハンドキャストシートを13×127×0.125 mmの紙片に切断した。実施例3及び実施例4は、メタクリル酸側鎖部分により僅かにアニオン性であった。実施例1及び実施例2は、第四級アンモニウム塩側鎖部分により僅かにカチオン性であった。実施例1及び実施例4は、実施例3及び実施例4で用いたものよりも低い加水分解度のポリビニルアルコールを有していた。
【0117】
全ての手作りの紙片を90℃で24時間放置して乾燥させ、次いでデシケータにおいて室温で2時間調湿した。その後、ハンドキャスト紙試験片をTAPPI T-465 om-15に供し、紙試験片を曲げてウォーターカップ(フィンチカップ)に浸漬した。引張強度及び湿潤強度減衰を測定した。乾燥及び湿潤引張強度の結果を
図4に示す。実施例1~実施例4及びGPAMで処理した手作りのシートの水分散性を
図5に示し、ブランク及びグリオキシル化G-PAMに対する4つの実施例の湿潤強度減衰を
図6に示す。
【0118】
図4からわかるように、グリオキシル化ポリアクリルアミドとグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの分散液で処理した紙片は、M7-TWS13以外は同様の乾燥強度を有していた。実施例1及び実施例2(M5及びM7)の僅かにカチオン性樹脂の実施例で処理した紙片は、G-PAMで処理したものの2倍及び3倍の湿潤強度を示した。M5-TWS13及びM7-TWS13の湿潤/乾燥引張強度は、ブランク、G-PAM、及び僅かにアニオン性の樹脂よりも優れていた。カチオン樹脂で処理された紙片のM5-TWS13及びM7-TWS13の湿潤引張強度減衰は、ブランク、G-PAM、及びアニオン樹脂を上回り、最初の湿潤強度は120秒後に約1/2に低下するが、残りの試験片については同じ期間の後、ほぼ同じままである。
【0119】
実施例5~実施例8
グラフト化ポリビニルアルコールポリマー(TWS15)の合成及び特性評価
ポリエチレンビニルアルコールポリマー(CAS番号26221-27-2)を水中に10重量%の固形分で溶解して、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを調製した。次いで、カルボン酸側鎖モノマーとしてのメタクリル酸(CAS番号79-41-4)、脂肪族アミド側鎖モノマーとしてのアクリルアミド(CAS番号79-06-1)、及び分岐アルキルアクリレート側鎖モノマーとしての2-エチルヘキシルアクリレート(CAS#103-11-7)を、10重量%ポリエチレンビニルアルコールポリマー溶液中で少なくとも30分間乳化した。重硫酸ナトリウム(CAS番号7631-90-5)及び過硫酸アンモニウム(CAS番号7727-54-0)をフリーラジカル形成開始剤として、また重炭酸ナトリウム(CAS番号144-55-8)を緩衝塩としてエマルジョンに加えた。次いで、バッチ重合を、0.8重量%の過硫酸アンモニウム溶液を60℃で供給することによって開始した。次いで、過硫酸アンモニウムを一定の速度でエマルジョン中に送り込みながら、重合を80℃で2時間伝播した。次いで、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(CAS番号6035-47-8)、過酸化水素(CAS番号7722-84-1)及びt-ブチルヒドロペルオキシド(CAS番号75-91-2)をエマルジョンに添加して、遊離残留モノマーを抑制した。200 rpmの撹拌を80℃で1時間維持した。その後、バッチを室温まで冷却した。
【0120】
最終的なエマルジョンは以下の重量パーセンテージを有していた。
【0121】
【0122】
次いで、生成したグラフト化ポリビニルアルコールポリマーをフーリエ変換赤外分光法、動的光散乱法による粒度分析、ゲル透過クロマトグラフィー、pH、及び分散固形分によって特性評価した。
【0123】
実施例9及び実施例10
一時的湿潤強度及び分散性の比較試験
ブロッター紙を13×127×0.125 mmの紙片に切断した。10枚の紙片をグリオキシル化ポリアクリルアミド、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーTWS-15、16、22及び18の0.0015重量%ポリマー溶液に1秒間浸した。反応温度が62℃及び40℃にそれぞれ達したときにメタクリル酸及びアクリルアミドを添加するためにTWS16及びTWS22を半連続モードで開始して調製したことを除き、ポリビニルアルコールポリマーTWS-16及びTWS-22を実施例5で詳述したものと同様の方法で調製した。実施例8(TWS18)は異なる組成を有し、ポリアルキレンビニルアルコール濃度が低下し、アクリルアミド及び2-エチルヘキシルアクリレートの2つのモノマー濃度が、化学組成表において上に示した他の実施例よりも高かった。
【0124】
全ての浸した紙片を、50℃で24時間放置して乾燥させた。その後、浸した紙片をデシケータにおいて室温で2時間調湿した。次いで、浸した紙片を、室温で5分間相対湿度100%に供した。次いで、湿潤引張強度測定及び分散性評価のため、水分レベルを一定に保つために、密閉ガラス瓶中の湿度チャンバーから浸した紙片の各セットを採取した。引張強度及び分散性を、上述のように測定した。湿潤引張強度及び分散性評価の結果を
図7に示す。
【0125】
図7からわかるように、グリオキシル化ポリアクリルアミド及びグラフト化ポリビニルアルコールポリマーの分散液中に浸した紙片は、異なる化学的レシピを有するTWS18を除いて同様の湿潤強度を有していた。グラフト化ポリビニルアルコールポリマー溶液に浸した紙片は、グリオキシル化ポリアクリルアミドグラフト化ポリビニルポリマー(グリオキシル化ポリアクリルアミド)で処理された紙片よりも水分散性が有意に優れていた。
【0126】
本発明は以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序及び/又は任意の組合せで含む:
【0127】
1. ポリビニルアルコール主鎖と該ポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた複数の側鎖とを含むグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、
複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、グラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0128】
2. 複数の側鎖からの上記側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0129】
3. 複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0130】
4. 複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0131】
5. 複数の側鎖からの側鎖が、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0132】
6. 複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0133】
7. 複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0134】
8. 複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)反応性第四級アンモニウム塩の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含み、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸のいかなる単位も有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0135】
9. 複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0136】
10. 複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0137】
11. 複数の側鎖からの側鎖が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0138】
12. 複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0139】
13. 複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0140】
14. 複数の側鎖からの側鎖の数の少なくとも75%が、i)脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せとを含み、反応性第四級アンモニウム塩のいかなる単位も有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0141】
15. 複数の側鎖からの側鎖の数の25%以下が、脂肪族アミドの単位若しくは分岐アルキルアクリレートの単位、又はそれらの任意の組合せを含み、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び反応性第四級アンモニウム塩の単位を有していない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0142】
16. 複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0143】
17. 未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、約5Kダルトン~20000Kダルトンの単峰性分子量分布を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0144】
18. 未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、約74 mol%~約99 mol%の加水分解度を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0145】
19. 未反応形態のポリビニルアルコール主鎖が、約74 mol%~約90 mol%の加水分解度を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0146】
20. 複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上がポリビニルアルコール主鎖のアセテート部分によってポリビニルアルコール主鎖にグラフトされる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0147】
21. 複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上がポリビニルアルコール主鎖のヒドロキシル部分によってポリビニルアルコール主鎖にグラフトされる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0148】
22. 反応性第四級アンモニウム塩が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、3-アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、又はそれらの組合せの少なくとも1つを含み、
脂肪族アミドが、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド及びN-t-ブチルアクリルアミドの少なくとも1つを含み、
分岐アルキルアクリレートが、2-エチルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルペンチルアクリレート及び2-エチルブチルアクリレートの少なくとも1つを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0149】
23. 下記構造(I):
【化6】
(式中、(a)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して74%~84%であり、
(b)単位の総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して16%~26%であり、
各Rは、アセテート又は複数の側鎖からの側鎖である)を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0150】
24. 総固形分重量で約40%~約50%のポリビニルアルコール主鎖重量パーセントと、
総固形分重量で約6%~約10%の反応性第四級アンモニウム塩側鎖重量パーセントと、
総固形分重量で約6%~約9%の脂肪族アミド重量パーセントと、
総固形分重量で約24%~約50%の分岐アルキルアクリレート重量パーセントと、
を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0151】
25. 下記構造(IV):
【化7】
(式中、aの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して30%~34%であり、bの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して6%~10%であり、cの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して0.5%~1.0%であり、dの総重量パーセントは、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの総重量に対して58%~62%である)を有するか、又はそれを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0152】
26. 少なくとも25%固形の固形分を有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0153】
27. 乾燥固体微粒子の形態である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー。
【0154】
28. 任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが分散される水性媒体と、
を含む、ポリマー組成物。
【0155】
29. 約3~約6のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるポリマー組成物。
【0156】
30. 任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む、水系グラフトエマルジョンポリマー。
【0157】
31. セルロースパルプと、
任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
を含む、セルロースパルプ製品。
【0158】
32. 紙材と、
任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
を含む、紙製品。
【0159】
33. 紙材がカルボキシル部分を含むセルロース繊維を含み、
複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、反応性第四級アンモニウム塩の単位を含み、
反応性第四級アンモニウム塩の単位のうち1単位が、セルロース繊維のカルボキシル部分と静電的に相互作用するカチオン電荷を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による紙製品。
【0160】
34. 紙シート、板紙、ティッシュペーパー、又は壁材である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む少なくとも1つの紙層を備える製品。
【0161】
35. 紙層がカルボキシル部分を含むセルロース繊維を含み、
複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、反応性第四級アンモニウム塩の単位を含み、
反応性第四級アンモニウム塩の単位のうち1単位が、セルロース繊維のカルボキシル部分と静電的に相互作用するカチオン電荷を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による製品。
【0162】
36. 綿繊維と、
任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
を含む、繊維状物質。
【0163】
37. 綿繊維がグラフト化ポリビニルアルコールポリマーで被覆されている、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による繊維状物質。
【0164】
38. 綿繊維にグラフト化ポリビニルアルコールポリマーが含浸されている、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による繊維状物質。
【0165】
39. 綿繊維の少なくとも一部がカルボキシル部分を含むセルロース繊維を含み、
複数の側鎖からの上記側鎖の1つ以上が、反応性第四級アンモニウム塩の単位を含み、
反応性第四級アンモニウム塩の単位のうち1単位が、セルロース繊維のカルボキシル部分と静電的に相互作用するカチオン電荷を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による繊維状物質。
【0166】
40. 紙を作製する方法であって、該方法が、
水性懸濁液中のセルロース製紙繊維に一定量の任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを吸収させることと、
上記懸濁液をウェブに形成することと、
上記ウェブを乾燥することと、
を含み、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの量が、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが存在しない水性懸濁液で作られた紙と比較して、湿潤紙力、乾燥紙力及び水分散性の少なくとも1つを高めるのに有効である、方法。
【0167】
41. 水性懸濁液が乾燥セルロース製紙繊維1トン当たり4ポンド~10ポンドのグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による方法。
【0168】
42. グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの量が、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーが存在しない水性懸濁液を用いて作られた紙と比べて、湿潤紙力及び乾燥紙力から選択される少なくとも1つの紙の物性を少なくとも10%高めるのに有効である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による方法。
【0169】
43. グラフト化ポリビニルアルコールポリマーの量が0.6の乾燥紙力に対する湿潤紙力の比を提供するのに有効であり、フィンチカップ法及び湿度チャンバー法により湿潤紙力の値が決定され、乾燥紙及び調湿紙の直接引張強度測定によって乾燥紙力の値が決定される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による方法。
【0170】
44. 水性懸濁液中のセルロース製紙繊維に一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを吸収させることが、
セルロース製紙繊維を含むパルプストックを準備することと、
パルプストックに一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを添加することと、
を含み、
上記懸濁液をウェブに形成することが、
一定量のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーを吸収した後、懸濁液を排出することと、
排出された懸濁液を紙及び板紙の1つに形成することと、
を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による方法。
【0171】
45. グラフト化ポリビニルアルコールポリマーを作製する方法であって、該方法が、
ポリビニルアルコールポリマーの水溶液を準備することと、
水溶液に、少なくとも1つのフリーラジカル形成開始剤及び複数の側鎖モノマーを添加することと、
を含み、複数の側鎖モノマーが、
(a)脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び反応性第四級アンモニウム塩、又はそれらの任意の組合せと、
(b)任意に、脂肪族アミドと、
(c)任意に、分岐アルキルアクリレートと、
を含む、方法。
【0172】
46. 複数の側鎖モノマーの少なくとも一部をポリビニルアルコール主鎖に、重量基準で3:1:5~2.5:1:4のa:b:c比範囲で結合し、(b)脂肪族アミドの量に正規化することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様による方法。
【0173】
47. 紙を再パルプ化する方法であって、該方法が、
紙製品をアルカリ金属イオン含有苛性水溶液と接触させて、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるグラフト化ポリビニルアルコールポリマー中のカルボン酸官能基をアルカリ金属カルボキシレート官能基に変換することを含み、
紙製品が、紙材と、グラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む、方法。
【0174】
48. 第1のポリビニルアルコール主鎖と該第1のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第1の複数の側鎖とを含む第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、第1の複数の側鎖からの側鎖が、i)脂肪族モノカルボン酸、及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1つ以上の単位と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はその任意の組合せとを含む、第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーと、
第2のポリビニルアルコール主鎖と該第2のポリビニルアルコール主鎖にグラフトされた第2の複数の側鎖とを含む第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーであって、第2の複数の側鎖からの側鎖が、i)1つ以上の単位の反応性第四級アンモニウム塩と、任意にii)脂肪族アミド若しくは分岐アルキルアクリレート、又はそれらの任意の組合せとを含む、第2のグラフト化ポリビニルアルコールポリマーとを含む、ポリマー混合物。
【0175】
49. 第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー:第2のポリビニルアルコールポリマーの重量比10:1~1:10で第1のグラフト化ポリビニルアルコールポリマー及び第2のポリビニルアルコールポリマーを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様によるポリマー混合物。
【0176】
本発明は文及び/又は段落に記載される上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せが本発明の一部であるとみなされ、組み合わせることができる特徴に関しては何ら限定を意図しない。
【0177】
出願人らはこの開示における全ての引用文献の全内容を具体的に援用する。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と任意の範囲下限又は好ましい値との任意の対からなる全ての範囲を具体的に開示するものと理解される。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定されることは意図されない。
【0178】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者にとって明らかであろう。本明細書及び本実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。
【符号の説明】
【0179】
図2
Size Distribution by Intensity 強度によるサイズ分布
Intensity (Percent) 強度(パーセント)
Size (d. nm) サイズ(直径nm)
Record 11:14481-1 記録11:14481-1
TWS22A-Average TWS22A-平均
Partical size analysis by Dynamic LightScattering of TWS Grafted vinyl alcohol copolymer TWSグラフト化ビニルアルコールコポリマーの動的光散乱法による粒径(正:Particle size)分析
図3
Mv Signal Mvシグナル
Time (min) 時間(分)
図4
Dry and wet tensile strength of Examples1-4 実施例1~4の乾燥引張強度及び湿潤引張強度
Tensile strength (N/m) 引張強度(N/m)
Blank ブランク
Dry TS N/m 乾燥TS N/m
Wet TS N/m 湿潤TS N/m
図5
Water Dispensability of paper (Sec) 紙の水分散性(秒)
Time (sec) 時間(秒)
Blank ブランク
図6
Wet tensile decay of Examples 1-4 実施例1~4の湿潤引張減衰
Wet Tensile strength (N/m) 湿潤引張強度(N/m)
Blank ブランク
Initial wet TS N/m 初期湿潤TS N/m
60 Sec 60秒
120 Sec 120秒
図7
Comparison of relative wet strength, Drystrength and dispersibility of blotter paper treated polymers ポリマーで処理したブロッター紙の相対湿潤強度、乾燥強度、及び分散性の比較
Wet strength 湿潤強度
Dry strength 乾燥強度
Dispersibility (Sec) 分散性(秒)