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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230915BHJP
   C22C 38/06 20060101ALI20230915BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20230915BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20230915BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/06
C22C38/60
C21D8/12 A
H01F1/147 175
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021531072
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2019016380
(87)【国際公開番号】W WO2020111736
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0152977
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジェワン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ス
(72)【発明者】
【氏名】シン,ス-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ス
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027565(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022360(WO,A1)
【文献】特開2014-185365(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002904(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/140509(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/117602(WO,A1)
【文献】特開2011-190485(JP,A)
【文献】特開2003-166019(JP,A)
【文献】特表2018-504516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 1/00-1/84
C21D 7/00-8/10
C21D 9/00-9/66
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.
1%、Bi:0.000~0.003%、およびGa:0.000~0.003%含
み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなり、下記数2を満足することを特徴とする
無方向性電磁鋼板。
[数2]
0.002≦[Bi]+[Ga]≦0.005
(数2中、[Bi]、[Ga]はそれぞれ、Bi、Gaの含量(重量%)を示す。)
【請求項2】
下記数1を満足することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
[数1]
[せん断加工以後鉄損(W1550)]-[放電加工以後鉄損(W1550)]≦
0.05(W/kg)
【請求項3】
C、S、NおよびTiのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下(0%を除く
)にさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.
1%、Bi:0.000~0.003%およびGa:0.000~0.003%含み、
残部がFeおよび不可避的な不純物からなり、下記数2を満足するスラブを加熱する段
階、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および
前記冷延板を最終焼鈍する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[数2]
0.002≦[Bi]+[Ga]≦0.005
(数2中、[Bi]、[Ga]はそれぞれ、Bi、Gaの含量(重量%)を示す。)
【請求項5】
前記熱延板を製造する段階以後、
前記熱延板を焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の無方向性電
磁鋼板の製造方法。
【請求項6】
下記数3を満足することを特徴とする請求項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
[数3]
[熱延板焼鈍温度(℃)]×[最終焼鈍温度(℃)]/[最終焼鈍時間(S)]≦11
000
【請求項7】
前記熱延板を熱延板焼鈍する段階で、900~1150℃で1~5分間焼鈍することを
特徴とする請求項または請求項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記最終焼鈍する段階で、900℃~1100℃で60~180秒間焼鈍することを特
徴とする請求項~請求項のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、無方向性電磁鋼板の加工時、鋼板内に残留する応力を最小化して鉄損の劣化を防止した無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は全ての方向に均一な磁気的特性を有しており、一般にモーターコア、発電機の鉄心、電動機、小型変圧機の材料として使用される。無方向性電磁鋼板の代表的な磁気的特性は鉄損と磁束密度であって、無方向性電磁鋼板の鉄損が低いほど鉄心が磁化される過程で損失される鉄損が減少して効率が向上し、磁束密度が高いほど同一のエネルギーでさらに大きな磁場を誘導することができ、同じ磁束密度を得るためには少ない電流を印加してもよいため銅損を減少させてエネルギー効率を向上させることができる。 無方向性電磁鋼板によりモーターコア、発電機の鉄心、電動機、小型変圧機などを製造する工程は、さらにパンチング、打抜などの加工過程を含む。この加工過程中に鋼板内に応力が発生し、これは加工が終わった後にも依然として残留する。鋼板内に残留した応力は鉄心が磁化される過程で磁区構造の変形を引き起こして磁区の移動に不利になるので鉄損を劣化させる。したがって、無方向性電磁鋼板はパンチング、打抜などの加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施する。しかし、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きい場合、応力除去焼鈍を省略する場合もある。この場合、加工後の残留応力が除去されず鉄損劣化が発生する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的とするところは、無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することであり、さらに具体的には、無方向性電磁鋼板の加工時、鋼板内に残留する応力を最小化して鉄損の劣化を防止した無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.1%、Bi:0.0001~0.003%、およびGa:0.0001~0.003%含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなり、
下記数1を満足することを特徴とする。
[数1]
[せん断加工以後鉄損(W15/50)]-[放電加工以後鉄損(W15/50)]≦0.05(W/kg)
【0005】
C、S、NおよびTiのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下にさらに含み、
P、SnおよびSbのうちの1種以上をそれぞれ0.2重量%以下にさらに含み、
Cu、NiおよびCrのうちの1種以上をそれぞれ0.05重量%以下にさらに含み、
Zr、MoおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.01重量%以下にさらに含むことを特徴とする。
【0006】
下記数2を満足することを特徴とする。
[数2]
0.002≦[Bi]+[Ga]≦0.005
数2中、[Bi]、[Ga]はそれぞれ、Bi、Gaの含量(重量%)を示す。
【0007】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.1%、Bi:0.0001~0.003%およびGa:0.0001~0.003%含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなるスラブを加熱する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含み、
熱延板を製造する段階以後、熱延板を焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
下記数3を満足することを特徴とする。
[数3]
[熱延板焼鈍温度(℃)]×[最終焼鈍温度(℃)]/[最終焼鈍時間(S)]≦11000
【0009】
熱延板を熱延板焼鈍する段階で、900~1150℃で1~5分間焼鈍することを特徴とする。
また、最終焼鈍する段階で、900℃~1150℃で60~180秒間焼鈍することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無方向性電磁鋼板を加工しても、磁性が劣化せず、加工前および後にも磁性に優れている。
したがって、加工以後、磁性改善のための応力除去焼鈍(SRA)を必要でとしない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及できる。
ここで使用される専門用語は単に特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるのではない。
ある部分が他の部分「の上に」または「上に」あると言及する場合、これは直ぐ他の部分の上にまたは上にあり得るか、その間に他の部分が伴われることがある。対照的に、ある部分が他の部分「の真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量だけ残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
異なって定義しなかったが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り理想的であるか非常に公式的な意味に解釈されない。
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0012】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.1%、Bi:0.0001~0.003%、およびGa:0.0001~0.003%含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。
以下、無方向性電磁鋼板の成分限定の理由を説明する。
Si:0.2~4.3重量%
シリコン(Si)は、鋼の非抵抗を増加させて鉄損中の渦流損失を低めるために添加される主要元素である。Siが過度に少なく添加されれば、鉄損が劣化する問題が発生する。逆に、Siが過度に多く添加されれば、磁束密度が著しく減少し、加工性に問題が発生することがある。したがって、前述の範囲でSiを含むが、具体的に、Siを2.0~4.0重量%、さらに具体的に、Siを2.5~3.8重量%含むこととする。
【0013】
Mn:0.05~2.5重量%
マンガン(Mn)は、Si、Alなどと共に非抵抗を増加させて鉄損を低める元素でありながら集合組織を向上させる元素である。Mnが過度に少なく添加されれば、鉄損が劣化する問題が発生する。逆に、Mnが過度に多く添加されれば、磁束密度が著しく減少することがあり、析出物が多量形成されることがある。したがって、前述の範囲でMnを含むが、さらに具体的に、Mnを0.3~1.5重量%含むこととする。
Al:0.1~2.1重量%
アルミニウム(Al)は、Siと共に非抵抗を増加させて鉄損を減少させる重要な役割を果たし、また、磁気異方性を減少させて圧延方向と圧延垂直方向の磁性偏差を減少させる役割を果たす。Alが過度に少なく添加されれば、前述の役割を期待しにくい。Alが過度に多く添加されれば、磁束密度が著しく減少することがある。したがって、前述の範囲でAlを含むが、さらに具体的に、Alを0.3~1.5重量%含むこととする。
【0014】
Bi:0.0001~0.003重量%
ビスマス(Bi)は偏析元素であって、結晶粒界に偏析することによって結晶粒界強度を低下させ転位が結晶粒界に固着される現象を抑制する。しかし、その添加量が過度に多ければ、結晶粒成長を抑制させて磁性を低下させることがある。したがって、Biを前述の範囲で含むが、具体的に、Biを0.0003~0.003重量%、さらに具体的に、Biを0.0005~0.003重量%含むこととする。
Ga:0.0001~0.003重量%
ガリウム(Ga)も、Biと同様に、偏析元素であって、結晶粒界に偏析することによって結晶粒界強度を低下させ転位が結晶粒界に固着される現象を抑制する。しかし、その添加量が過度に多ければ、結晶粒成長を抑制させて磁性を低下させることがある。したがって、Gaを前述の範囲で含むが、さらに具体的に、Gaを0.0005~0.003重量%含むこととする。
【0015】
BiおよびGaは、下記数2を満足する。
[数2]
0.002≦[Bi]+[Ga]≦0.005
数2中、[Bi]、[Ga]はそれぞれ、Bi、Gaの含量(重量%)を示す。
BiとGaは偏析元素であって、結晶粒界に偏析することによって結晶粒界強度を低下させ転位が結晶粒界に固着される現象を抑制する。したがって、数2を満足する量でBi、Gaを添加する。
【0016】
本発明の無方向性電磁鋼板は、C、S、NおよびTiのうちの1種以上をそれぞれ0.005重量%以下にさらに含む。前述のように、追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。さらに具体的に、C、S、NおよびTiをそれぞれ0.005重量%以下含む。
C:0.005重量%以下
炭素(C)はTi、Nbなどと結合して炭化物を形成して磁性を劣位になるようにし、最終製品で電気製品に加工後使用時、磁気時効によって鉄損が高まって電気機器の効率を減少させるため、その上限を0.005重量%とする。具体的に、Cを0.004重量%以下含むが、さらに具体的に、Cを0.001~0.003重量%含むこととする。
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は磁気的特性に有害なMnS、CuSおよび(Cu、Mn)Sなどの硫化物を形成する元素であるので、できる限り低く添加するのが好ましい。Sが多量含まれる場合、微細な硫化物の増加によって磁性が劣位となることがある。したがって、Sを0.005重量%以下含むが、さらに具体的に、Sを0.001~0.003重量%含むこととする。
【0017】
N:0.005重量%以下
窒素(N)はAl、Ti、Nbなどと強く結合することによって窒化物を形成して結晶粒成長を抑制するなど磁性に有害な元素であるので、少なく含有させるのが好ましい。本発明ではNを0.005重量%以下含むが、具体的に、Nを0.004重量%以下に、さらに具体的に、Nを0.001~0.003重量%含むこととする。
Ti:0.005重量%以下
チタニウム(Ti)はC、Nと結合することによって微細な炭化物、窒化物を形成して結晶粒成長を抑制し、多く添加されるほど増加された炭化物と窒化物によって集合組織も劣位となって磁性が悪くなるようになる。本発明の一実施形態ではTiを0.005重量%以下含むが、具体的に、Tiを0.004重量%以下含み、さらに具体的に、Tiを0.001~0.003重量%含むこととする。
【0018】
本発明の無方向性電磁鋼板は、P、SnおよびSbのうちの1種以上をそれぞれ0.1重量%以下含むが、具体的に、P、SnおよびSbをそれぞれ0.1重量%以下にさらに含むこととする。
リン(P)、スズ(Sn)およびアンチモン(Sb)は、追加的な磁性改善のために添加してもよい。しかし、添加量が過度に多い場合、結晶粒成長性を抑制させ生産性を低下させる問題があって、その添加量がそれぞれ0.1重量%以下になるように制御しなければならない。さらに具体的に、P、SnおよびSbのうちの1種以上をそれぞれ0.5重量%以下にさらに含むこととする。
本発明の無方向性電磁鋼板は、Cu、NiおよびCrのうちの1種以上をそれぞれ0.05重量%以下さらに含むこととする。
製鋼工程で不可避的に添加される元素である銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)の場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物および窒化物を形成して磁性に有害な影響を及ぼすので、これら含有量をそれぞれ0.05重量%以下に制限する。
本発明の無方向性電磁鋼板は、Zr、MoおよびVのうちの1種以上をそれぞれ0.01重量%以下にさらに含む。
ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などは強力な炭窒化物形成元素であるため、できる限り添加されないのが好ましく、それぞれ0.01重量%以下に含有されるようにする。
【0019】
残部は、Feおよび不可避的な不純物からなる。不可避的な不純物については製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは当該分野で広く知られているので、具体的な説明は省略する。本発明で前述の合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を害しない範囲内で多様に含まれる。追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。
前述のように、Si、Mn、Al、Bi、Gaの添加量を適切に制御することによって、加工時の磁性劣化を最少化することができる。具体的に、本発明では下記数1を満足する。
[数1]
[せん断加工以後鉄損(W15/50)]-[放電加工以後鉄損(W15/50)]≦0.05(W/kg)
【0020】
放電加工は、ワイヤーに電圧をかけコアがワイヤーを通過するようにして線に沿って金属を切断する加工である。放電加工を行う時、応力による鉄損損失が実質的にない。一方、せん断(またはパンチング)加工時には鋼板内に残留する応力が存在し、これによって鉄損損失が発生する。本発明では数1を満足することによって、鉄損劣化が少なく、加工以後に別途の応力除去焼鈍を必要としない。さらに具体的に、数1の値は0.01~0.05W/kgになる。さらに具体的に、放電加工およびせん断加工は30mm×305mmの試験片に加工したことを意味し、特にせん断加工はクリアランス(Clearance)を5%に設定したせん断加工によって試験片を製造した場合である。クリアランスとは、上型と下型との隙間を被加工材の板厚さで割った値をいう。
本発明の無方向性電磁鋼板は基本的な鉄損も優れる。具体的に、無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)が2.3W/Kg以下である。さらに具体的に、無方向性電磁鋼板の鉄損(W15/50)が2.1~2.3W/kgである。この時、鉄損はせん断加工以後の鉄損を意味する。
【0021】
本発明による無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを加熱する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を最終焼鈍する段階を含む。
まず、スラブを加熱する。
スラブの合金成分については前述の無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないので、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は実質的に同一である。
具体的に、スラブは重量%で、Si:0.2~4.3%、Mn:0.05~2.5%、Al:0.1~2.1%、Bi:0.0001~0.003%およびGa:0.0001~0.003%含み、残部はFeおよび不可避的な不純物からなる。
その他の追加元素については無方向性電磁鋼板の合金成分で説明したので、重複する説明は省略する。
【0022】
スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1250℃以下に加熱することができる。スラブ加熱温度が過度に高ければ、スラブ内に存在するAlN、MnSなどの析出物が再固溶された後、熱間圧延および焼鈍時に微細析出されて結晶粒成長を抑制し磁性を低下させることがある。さらに具体的に、スラブを1100~1250℃で加熱することができる。加熱時間は10分~1時間加熱とする。
その次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板の厚さは2~2.3mmとする。熱延板を製造する段階で、仕上げ圧延温度は800~1000℃である。熱延板は、700℃以下の温度で巻取できる。
熱延板を製造する段階以後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。この時、熱延板焼鈍温度は900~1150℃であり、焼鈍時間は1~5分である。熱延板焼鈍温度が過度に低いか、時間が過度に短ければ、組織が成長しないか微細に成長して冷間圧延後焼鈍時磁性に有利な集合組織を得るのが容易でない。焼鈍温度が過度に高いか時間が過度に長ければ、結晶粒が過度に成長し板の表面欠陥が過多になることがある。熱延板焼鈍は必要によって磁性に有利な方位を増加させるために行われることであり、省略も可能である。焼鈍された熱延板を酸洗する。さらに具体的に、熱延板焼鈍温度は950~1050℃、焼鈍時間は2~4分である。
【0023】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は0.10mm~0.70mmの厚さで最終圧延する。具体的には、0.35~0.50mmに圧延する。必要時、1次冷間圧延と中間焼鈍後に2次冷間圧延することができ、最終圧下率は50~95%の範囲とすることができる。
次に、冷延板を最終焼鈍する。冷延板を焼鈍する工程で焼鈍温度は、通常無方向性電磁鋼板に適用される温度であれば大きく制限はない。無方向性電磁鋼板の鉄損は結晶粒の大きさと密接に関連するので900~1100℃であれば適当である。焼鈍時間は60~180秒とする。温度が過度に低いか時間が過度に短い場合、結晶粒が過度に微細であって履歴損失が増加し、温度が過度に高いか、時間が過度に長い場合は、結晶粒が過度に粗大であって渦流損が増加して鉄損が劣位となることがある。さらに具体的に、930~1050℃で90~130秒焼鈍する。
【0024】
熱延板焼鈍する段階および最終焼鈍する段階は、下記数3を満足する。
[数3]
[熱延板焼鈍温度(℃)]×[最終焼鈍温度(℃)]/[最終焼鈍時間(S)]≦11000
加工後の鉄損が優れるためには最終焼鈍板の析出物に係る熱延板焼鈍温度および最終焼鈍の温度が重要であり、前述の数3を満足するように調節する。最終焼鈍板の微細析出物密度が高い場合には、それによって加工時、転位がピーニングされて残留応力が大きくなるので、最終焼鈍板の結晶粒径は最適の磁性を満足しながらも析出物は十分に粗大でなければならない。ここで、熱延板の焼鈍温度は低いほど微細析出物の形成を抑制して加工後残留応力が小さい電磁鋼板を形成することができる。最終焼鈍温度も低いほど有利であるが、最終焼鈍温度が低い場合、最適の鉄損のための結晶粒径を確保することができない。また、熱延板焼鈍温度が過度に高い場合には熱延板焼鈍工程で形成された析出物によって結晶粒径の成長が遅い。よって、低い熱延板温度条件と最終焼鈍時低い温度で焼鈍時間を増加させて結晶粒の大きさを確保することが重要である。数1の熱延板焼鈍温度および最終焼鈍温度は亀裂温度を意味する。具体的に、数3の値は7500~11000である。
【0025】
最終焼鈍後、鋼板は平均結晶粒直径が80~170μmになる。この時、直径は結晶粒と同一の面積を有する仮想の円を仮定してその円の直径を意味する。直径は圧延面(ND面)と平行な断面を基準にして測定することができる。
最終焼鈍後、絶縁被膜を形成する。前記絶縁被膜は有機質、無機質および有機-無機複合被膜で処理でき、その他絶縁の可能な被膜剤で処理することも可能である。
【0026】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がここに限定されるのではない。
【実施例
【0027】
実施例
表1で整理した合金成分および残部Feおよび不可避的な不純物からなるスラブを製造した。スラブを1150℃まで加熱した。その後、2.3mmの厚さで熱間圧延し650℃で巻取した。空気中で冷却した熱延鋼板は表2に整理された温度で3分間焼鈍し、酸洗した後、0.5mm厚さで冷間圧延した。その後、冷延板を表2に整理した温度および時間で最終焼鈍した。
製造した鋼板のL方向およびC方向から磁性測定のための長さ30mm×幅305mmのエプスタイン試験片をクリアランス(Clearance)を5%と設定したせん断加工によって採取した。加工による影響がない状態の試片の鉄損を測定するために板の加工を放電加工で行って、これによってせん断あるいはパンチング加工による鉄損劣化度を評価する尺度として活用した。前記の試験片に対して、全ての鉄損(W15/50)はエプスタイン試験で測定した。鉄損(W15/50)は50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延方向垂直方向の平均損失(W/kg)である。この時、鉄損はせん断加工後鉄損である。
【0028】
【表1】
【表2】
表1および表2に示すように、Bi、Gaを同時に含む発明材はせん断加工以後鉄損と放電加工以後鉄損の差が大きくないのを確認することができる。また、鉄損も優れているのを確認することができる。
反面、BiまたはGaを含まない比較材はせん断加工以後鉄損と放電加工以後鉄損の差が大きく、鉄損も比較的に劣位であるのを確認することができる。
【0029】
本発明は実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施できるということが理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではないと理解しなければならない。