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特許7350078呼吸関連睡眠障害を治療するためのデバイスおよび方法、そのようなデバイスに関する使用方法および制御プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】呼吸関連睡眠障害を治療するためのデバイスおよび方法、そのようなデバイスに関する使用方法および制御プロセス
(51)【国際特許分類】
   A61H 23/02 20060101AFI20230915BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230915BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61H23/02 340
A61B5/11
A61B5/145
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021543589
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2018001232
(87)【国際公開番号】W WO2020070535
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-10-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521141361
【氏名又は名称】ブレアス メディカル エービー
(73)【特許権者】
【識別番号】505347628
【氏名又は名称】インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル (インサーム)
(73)【特許権者】
【識別番号】521141372
【氏名又は名称】ウニベルシテ クラウデ バーナード リオン 1
(73)【特許権者】
【識別番号】521141383
【氏名又は名称】セントレ レオン-ベラード
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】メンガイ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】チャペロン,ジーン-ワイ ベス
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ゾーガニ,アリ
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-11064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158091(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 23/02
A61B 5/11
A61B 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のアクチュエータと、制御ユニットとを備える、呼吸関連睡眠障害の治療における使用のためのデバイスであって、
前記第1のアクチュエータは、被験者の身体の第1の体外解剖学的部位との外部機械的接触のために構成され、
前記制御ユニットは、少なくとも1バーストの第1の一次振動を提供するように前記第1のアクチュエータを制御するように構成され、
前記第1の一次振動は、前記デバイスが前記被験者の体内でせん断波を生成するために、所与の時間間隔中、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に広がる非一定周波数を有する可変周波数を有するスイープ振動を含み
前記第1の体外解剖学的部位は、首または胸部であり、
前記呼吸関連睡眠障害は、いびき、上気道抵抗症候群(UARS)、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、肥満低換気症候群(OHS)の1つである、
デバイス。
【請求項2】
前記第1のアクチュエータと、前記被験者の身体の第1の体外解剖学的部位との外部機械的接触のために構成された少なくとも第2のアクチュエータとを含むいくつかのアクチュエータを備え、
前記制御ユニットは、少なくとも1バーストの第2の一次振動を提供するように前記第2のアクチュエータを制御するように構成され、
前記第2の一次振動は、所与の時間間隔中、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる前記動作可能周波数範囲に広がる非一定周波数を有する可変周波数を有するスイープ振動を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1および第2の一次振動は、同期的である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1および第2の一次振動は、位相シフトを示す、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1および第2の一次振動は、同じ振幅および同じ周波数コンテンツを有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
第2のバースト中の前記第1の一次振動は、前記第2のバースト中、単一の一定一次周波数を含み、前記単一の一定一次周波数は、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる前記動作可能周波数範囲内に含まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記一次振動は、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる前記動作可能周波数範囲に含まれる、または前記動作可能周波数範囲と重なる伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する、請求項1~5のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
前記一次振動は、所与のバースト中、少なくともいくつかの別個の周期副振動の和である振動であり、またはそれを含み、前記周期副振動のいくつかは各々が別個の一次周波数を有し、前記いくつかの単一一次周波数は、前記動作可能周波数範囲内に含まれ、前記伝達周波数帯域に広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記一次振動は、いくつかの別個の時間間隔の各々において、所与の間隔中、単一一次周波数を有する周期振動である振動であり、またはそれを含み、前記いくつかの単一一次周波数は、2つの連続した時間間隔の間で異なり、前記動作可能周波数範囲内に含まれ、前記伝達周波数帯域に広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記スイープ振動は、所与の時間間隔中、時間の関数として変化する周波数を有する、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記スイープ振動は、所与の時間間隔中、時間の連続関数として変化する周波数を有する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも10Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項13】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも20Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項14】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも40Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項15】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも40~80Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項16】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも30~100Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項17】
前記伝達周波数帯域は、少なくとも15~800Hzに広がる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項18】
前記動作可能周波数範囲は、15Hz~200Hzの範囲内に含まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記バーストがバースト期間を有し、前記制御ユニットは、前記少なくとも1バーストの一次振動を提供し、バースト列期間の満了までいくつかの連続バーストの列の一次振動を提供するように、前記アクチュエータ(複数も可)を制御するように構成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項20】
生成された前記せん断波は、前記被験者の前記体内の15ミリメートル以上の深さに、または15ミリメートル以上の深さまで伝搬する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
生成された前記せん断波は、前記被験者の前記体内の15ミリメートル以上の深さにおける、または15ミリメートル以上の深さまでの、10マイクロメートル以上の振幅を有する、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記制御ユニットは、手動で作動されるスイッチの状態に基づいて、前記アクチュエータ(複数も可)をオンまたはオフにするように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記制御ユニットは、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータの測定値に基づいて、前記アクチュエータ(複数も可)をオンまたはオフにするように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するように構成されたモニタを備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記デバイスを、前記被験者の前記少なくとも1つの生理的パラメータを測定するように構成されたモニタとリンクするように構成された有線通信リンクを備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記被験者の前記少なくとも1つの生理的パラメータを遠隔モニタから受信するように構成された無線通信リンクを備える、請求項23に記載のデバイス。
【請求項27】
前記モニタは、医療モニタ、生活モニタ、または電話機から選択される、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記被験者の前記少なくとも1つの生理的パラメータは、
呼吸気流量、
血中酸素飽和度、
血中炭酸ガス圧(PCO)、
呼吸速度、
心拍数、
1回換気量、
またはそれを表すパラメータ、
または、たとえば脳波検査(EEG)によって測定された脳活動パラメータ、
または、たとえば筋電図検査(EMG)測定された筋活動パラメータ、
または前記被験者のいびきを表すパラメータ
の1つである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項29】
測定値として用いられる前記被験者の前記少なくとも1つの生理的パラメータは、血中酸素飽和度である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項30】
前記アクチュエータは、
首ベルト、
胸部ベルトまたはベスト、
横隔膜ベルト、
腹部ベルト
の少なくとも1つの形状を成すホルダに配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項31】
前記ホルダは、いくつかのアクチュエータを保持し、前記被験者の身体領域に適合する、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記被験者の前記体内でせん断波を生成するために、前記被験者の前記身体の前記第1の体外解剖学的部位の別々の位置との外部機械的接触によっていくつかの第1の一次振動を提供するように構成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項33】
請求項1に記載のデバイスであって、前記使用において、前記第1の一次振動が、
(i)SOが基準SOよりも低いこと、好適には、
(a)SaOが基準SaOよりも低いこと、
(b)SvOが基準SvOよりも低いこと、
(c)StOが基準StOよりも低いこと、または
(d)SpOが基準SpOよりも低いこと、
(ii)PCOが基準PCOよりも高いこと、
(iii)空気流量が基準空気流量よりも低いこと、好適には、口鼻熱気流量測定値が基準口鼻熱気流量よりも低いこと、
(iv)鼻圧が基準鼻圧よりも低いこと、
(v)呼吸速度が基準呼吸速度よりも低いこと、
(vi)1回換気量が基準1回換気量よりも低いこと
の少なくとも1つが発生する第1の期間の後に開始されることによって特徴付けられ、
前記第1の期間は、0秒~5分である、
デバイス。
【請求項34】
(i)SOが基準SO以上であること、好適には、
(a)SaOが基準SaO以上であること、
(b)SvOが基準SvO以上であること、
(c)StOが基準StO以上であること、または
(d)SpOが基準SpO以上であること、
(ii)PCOが基準PCO以下であること、
(iii)空気流量が基準空気流量以上であること、好適には、前記口鼻熱気流量測定値が基準口鼻熱気流量以上であること、
(iv)鼻圧が基準鼻圧以上であること、
(v)呼吸速度が基準呼吸速度以上であること、または
(vi)1回換気量が基準1回換気量以上であること
の少なくとも1つが発生する第2の期間の後に、前記第1の一次振動を停止することによって特徴付けられ、
前記第2の期間は、0秒~約5時間である、請求項33に記載のデバイス。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
睡眠中、身体のシステムの多くは同化状態となって、免疫系、神経系、骨格系、および筋肉系の回復を助長し、これらは、気分、記憶、および認知能力を維持し、内分泌系および免疫系の機能において大きな役割を果たす生命過程である。体内概日時計は、毎日、夜間に睡眠を促進する。睡眠の多様な目的およびメカニズムは、進行中の重要な研究題材である。人口光の出現は、先進国における睡眠時間を大きく変えてきた。
【0002】
人々は、たとえば不眠症、過眠症、睡眠発作、および睡眠時無呼吸などの睡眠異常、たとえば夢遊病およびレム睡眠行動障害などの睡眠時随伴症、歯ぎしり、および概日リズム睡眠障害を含む様々な睡眠障害を患い得る。
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠の正常な進行を妨げ、多くの場合、より深刻な他の健康問題の原因となる、睡眠中の呼吸の大きな途絶えが生じる症状である。無呼吸は、患者の気道周囲の筋肉が睡眠中に弛緩して、気道を虚脱させ、酸素の取込みを遮断させる時に発生する。閉塞性睡眠時無呼吸は、中枢性睡眠時無呼吸よりも一般的である。血液中の酸素レベルが降下すると、患者は、呼吸を再開するために、深い睡眠から抜け出す。これらの発症が毎時間に数回発生すると、睡眠時無呼吸は、治療を必要とし得る深刻度に達する。
【0004】
OSAの症状は、咽喉の筋肉および軟組織の異常弛緩に起因する上気道の虚脱を含み得る。虚脱は、気道を遮断し、呼吸を中断させ得る。数秒後、何が起こっているかを脳が検出し、微小な覚醒を引き起こす。これが、無呼吸として知られている。付加的な発症は、非常に緩慢かつ浅い呼吸を含み得る。これは、低呼吸と呼ばれ、咽喉が部分的に遮断される時に起こる。
【0005】
OSAを患う人々は、毎晩、何百回もの無呼吸および低呼吸発症を経験し得る。これらは、彼らの深い睡眠パターンを、大幅に小さな区切りの浅い睡眠活動に分断することによって中断し、それによって、脳が酸素不足であったことにより、朝、身体の不満足感が残され得る。
【0006】
いびきは、この症候群を患う人々に共通の所見である。いびきは、口、鼻、および咽喉の後部を通って移動する空気の乱流音である。いびきをかく人の全員が呼吸困難を有するわけではないが、他の危険因子を伴ういびきは、OSAの前兆である可能性が高いと分かっている。ただし、いびきの音の大きさは、閉塞症の深刻度を示すものではない。上気道が極端に閉塞すると、大きな音を出すための十分な空気移動が存在しない場合がある。さらに、最大音量のいびきが、個人が睡眠時無呼吸症候群を有することを意味するわけではない。睡眠時無呼吸の最も示唆的な兆候は、いびきが止まる時に生じる。罹患した被験者は一般に、回復していないと感じながら起床する。日中、彼らは疲れやすく、これは、短気や集中力の問題を引き起こし得る。場合によっては、被験者は頭痛や物忘れに悩まされることがあり、これは次第に、不安感や意気消沈を伴い得る。
【0007】
深刻さの程度は、AHI(無呼吸低呼吸指数)によって測定され得る。この指数は、毎時間の無呼吸および低呼吸の回数を反映する。OSA症状の種類を考慮して、様々な治療の選択肢が考えられ得る。人口の約7.5%は、AHI>15である、中程度から重度のOSAを患っていると推定される。
【0008】
OSAは、被験者およびパートナーの日常生活を崩壊させるのみならず、心血管疾患の高い危険性、高血圧、および起きている間の眠気や集中力低下を含む、他の健康または安全面への影響も及ぼし得る。高血圧は、治療せずにいると、たとえば2型糖尿病、肥満、心臓発作、または/および脳卒中といった他の深刻な問題の危険性を増加させ得る。また、運転中の眠気や集中力低下は、被験者および/または他者に安全面の危険性を負わせる。
【0009】
睡眠中の重要な生理的指数は、脳波のEEG、眼球運動の眼電図記録(EOG)、および骨格筋活動の筋電図記録(EMG)を含む。これらの測定値の同時収集は、睡眠ポリグラフィと呼ばれ、専門的な睡眠研究所で行われ得る。OSAの診断は、複雑であり得る。他の条件を除外した後、被験者は、睡眠試験センターでの、または在宅睡眠調査において自宅での一晩中の睡眠試験を行うように要求され得る。被験者の睡眠中、呼吸、心拍数、胸部および腹部運動、筋緊張、脳波、および口および鼻内の空気流を含む様々な身体機能を測定する多数の電極が、被験者の皮膚に載置され得る。
【0010】
睡眠時無呼吸は、症状、危険因子、および観察結果(たとえば過剰な日中の眠気および疲労)の評価によって診断され得るが、診察のための至適基準は、正式な睡眠調査(睡眠ポリグラフィ、または場合によっては、縮退チャネルの在宅ベースの試験ポリグラフィ)である。調査は、正式な閾値に関連する、睡眠中の毎時間の発症の回数および種類から導出された信頼性の高い不調指数(無呼吸低呼吸指数(AHI)、または呼吸障害指数(RDI)を確立することができ、この閾値を超えると、患者は睡眠時無呼吸を患っていると考えられ、その後、彼らの睡眠時無呼吸の深刻度が定量化され得る。軽度のOSA(閉塞性睡眠時無呼吸)は、毎時間5~14.9回の発症の範囲に及び、中度のOSAは、毎時間15~29.9回の発症の範囲内に収まり、重度のOSAは、毎時間30回を超える発症を有する患者である。治療の例は、持続性気道陽圧(CPAP)マシン、生活様式の変更、マウスガード、外科手術、横隔神経刺激デバイス、または他の低頻度で用いられる治療を含む。
【0011】
CPAPは、軽度および重度症状のOSA被験者の治療に関する現在の至適基準である。CPAPは、1980年代に開発され、一般に、上気道を開放状態に維持するために上気道に絶えず空気を押し込むことを伴い得る。このシステムは、一定または自動圧力で空気を押し出すマシンと、被験者が自身の顔面に付け、一晩中装着する必要があるマスク(口部または顔面)とで構成され得る。被験者は、フェイスマスクを付け、特定の姿勢で眠ることを学習する必要がある。
【0012】
この治療選択肢には、この療法の良好な順守を著しく低くする多くの欠点が存在する。多くの被験者は、愛情行為に影響を及ぼす可能性に加えて、このマシンを使用する際の夜間の不快適性に不満を訴える。これは、絶え間ない振動雑音、ならびに、たとえばシステム漏洩、鼻の乾き、赤目、鼻詰まり、および顔面のマスク跡などの更なる問題に起因する。これが不十分な順守をもたらし、診断された被験者の20%もが、この療法を完全に拒絶し、被験者の最大50%が、自身のCPAP療法を順守しない。
【0013】
深刻度の低い例において、減量、過剰な飲酒の回避、およびより多くの吸気のための適切なベッド位置での睡眠によって被験者の生活様式を変更することが妥当であり得る。
【0014】
下顎前方固定デバイス(MAD)として知られる専用マウスガードは、顎および舌を、咽喉の後部に大きな空間をもたらし得る順方向位置に保持するように処方され得る。しかし、多くの被験者は、常にマウスガードを伴う睡眠が不快であるという不満を訴え、順守は、時とともに低下する傾向がある。加えて、全ての被験者がこの療法に好反応を示すわけではなく、効能は限られる。
【0015】
重度のOSAの例において、またはたとえば呼吸を妨げる非常に大きな扁桃などの身体異常が存在する場合、外科的処置が必要とされ得る。多くの外科的処置が存在しており、そのうちのいくつかは急進的である。外傷性であることの他にも、(たとえば軟口蓋および咽頭の再成形などの)外科的処置が長期的に有益な効果を有するという保証はない。
【0016】
横隔神経刺激治療において、システムは、脳から横隔膜へ信号を送信する横隔神経の1つへ小さな電気パルスを伝達する。横隔膜は、これらの信号に応答し、より正常な呼吸パターンを復元するように設計される。この自発呼吸パターンは、良好な酸素化、交感神経系の活性化の抑制、および改善された睡眠を可能にし、これらは全て、循環器系疾患の改善をもたらす。一般に、システムは、睡眠中に自動的に作動する。医師は、ポータブルタブレットプログラマを介して情報を監視し、必要であれば、設定を非侵襲的に変更することができる。しかしながら、これは侵襲的システムであり、数少ない試験およびフィードバックしかなく、被験者に進んで受け入れられるものではない。
【0017】
OSAは、最も一般的な呼吸関連睡眠障害の1つであり、診断および/または治療のための十分な方法を有さない他の呼吸関連睡眠障害が存在する。したがって、新しい技術を用いて呼吸関連睡眠障害を診断および治療する必要性が存在する。
【0018】
US2017/0165101号は、振動を用いることによって、閉塞性睡眠時無呼吸および/またはいびきおよび/または不眠症を緩和するためのデバイスおよび方法を開示する。デバイスは、舌下および/または舌咽神経、頤舌筋、および他の首および咽頭部の筋肉を刺激し、睡眠中の気道閉塞を防止するための1または複数の構成で装着され得る。
【0019】
US2013/0030257号は、1または複数の被験者における心肺運動に関連する情報を抽出するためにドップラー効果の利用を取り入れ得る、非接触型生体運動センサおよびモニタデバイスに関する。抽出された情報は、たとえば、無呼吸発症および/またはいびき発症を決定し、および/または、無呼吸またはいびき治療デバイスと併せて使用されると被験者に無呼吸またはいびき治療を提供するために用いられ得る。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、デバイスに関し、上記デバイスは、少なくとも第1のアクチュエータと、制御ユニットとを備える。第1のアクチュエータは、被験者との外部機械的接触のために構成される。制御ユニットは、少なくとも1バーストの第1の一次振動を提供するように第1のアクチュエータを制御するように構成される。第1の一次振動は、デバイスが被験者の体内でせん断波を生成するために、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内の1または複数の周波数、または動作可能周波数範囲内で変化する周波数を有する。このように、そのようなデバイスは、被験者を治療するために用いられ得る。
【0021】
また本発明は、少なくとも第1のアクチュエータと、制御ユニットとを備えるデバイスのための制御プロセスにも関し、第1のアクチュエータは、被験者との外部機械的接触のために構成される。制御プロセスは、少なくとも1バーストの第1の一次振動を提供するように第1のアクチュエータを制御するように構成される。第1の一次振動は、デバイスが被験者の体内でせん断波を生成するために、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内の1または複数の周波数、または動作可能周波数範囲内で変化する周波数を有する。このように、そのような制御プロセスは、デバイスを用いて被験者を治療するために用いられ得る。
【0022】
単独で、または組み合わせて用いられる、そのようなデバイスまたはそのような制御プロセスの任意選択的な特徴は、以下の通りである。
【0023】
デバイスは、上記第1のアクチュエータと被験者との外部機械的接触のために構成された少なくとも第2のアクチュエータを含むいくつかのアクチュエータを備えてよく、制御ユニットおよび/または制御プロセスは、少なくとも1バーストの第2の一次振動を提供するように第2のアクチュエータを制御するように構成されてよく、第2の一次振動は、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内の1または複数の周波数、または動作可能周波数範囲内で変化する周波数を有してよい。
【0024】
第1および第2の一次振動は、同期的であってよく、または位相シフトを示してよい。
【0025】
第1および第2の一次振動は、同じ振幅および同じ周波数コンテンツを有してよく、または異なる振幅および/または異なる周波数コンテンツを有してよい。
【0026】
一次振動は、所与のバースト中、単一の一定一次周波数を有する周期振動であってよく、単一の一定一次周波数は、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内に含まれる。
【0027】
一次振動は、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に含まれる、または動作可能周波数範囲と重なる伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有してよい。
【0028】
一次振動は、所与のバースト中、少なくともいくつかの別個の周期副振動の和である振動であってよく、またはそれを含んでよく、周期副振動のいくつかは各々が別個の一次周波数を有し、いくつかの単一一次周波数は、動作可能周波数範囲内に含まれ、伝達周波数帯域に広がる。
【0029】
一次振動は、いくつかの別個の時間間隔の各々において、所与の間隔中、単一一次周波数を有する周期振動である振動であってよく、またはそれを含んでよく、いくつかの単一一次周波数は、2つの連続した時間間隔の間で異なり、動作可能周波数範囲内に含まれ、伝達周波数帯域に広がる。
【0030】
一次振動は、所与の時間間隔中、伝達周波数帯域に広がる非一定周波数を有するスイープ振動であってよく、またはそれを含んでよい。
【0031】
スイープ振動は、所与の時間間隔中、時間の関数として変化する周波数を有してよい。
【0032】
スイープ振動は、所与の時間間隔中、時間の連続関数として変化する周波数を有してよい。
【0033】
伝達周波数帯域は、少なくとも10Hz、または少なくとも20Hz、または少なくとも40Hz、または少なくとも40~80Hz、または少なくとも30~100Hz、または少なくとも15Hz~200Hz、または少なくとも15~800Hzに広がってよい。
【0034】
動作可能周波数範囲は、15Hz~200Hzの範囲内に含まれ得る。
【0035】
制御ユニットおよび/または制御プロセスは、上記少なくとも1バーストの一次振動を提供するように、また上記バーストがバースト期間を有し、バースト列期間の満了までいくつかの連続バーストの一次振動を提供するように、アクチュエータ(複数も可)を制御するように構成され得る。
【0036】
せん断波は、被験者の体内の15ミリメートル以上の深さに、または15ミリメートル以上の深さまで生成され、および/または伝搬してよい。
【0037】
せん断波は、被験者の体内の15ミリメートル以上の深さにおける、または15ミリメートル以上の深さまでの10マイクロメートル以上の振幅を有してよい。
【0038】
制御ユニットおよび/または制御プロセスは、手動で作動されるスイッチの状態に基づいて、アクチュエータ(複数も可)をオンまたはオフにするように構成され得る。
【0039】
制御ユニットおよび/または制御プロセスは、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータの測定値に基づいて、アクチュエータ(複数も可)をオンまたはオフにするように構成され得る。
【0040】
デバイスは、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するように構成されたモニタを備えてよい。
【0041】
デバイスは、デバイスを、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するように構成されたモニタとリンクするように構成された有線通信リンク、および/または、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを遠隔モニタから受信するように構成された無線通信リンクを備えてよい。
【0042】
モニタは、医療モニタ、生活モニタ、または電話機から選択され得る。
【0043】
本発明は更に、治療を必要とする被験者を治療する方法に関し、上記方法は、被験者においてせん断波を生成し、せん断波に応答して被験者に生理的変化を誘発するために、少なくとも1つのアクチュエータと被験者との外部接触によって、少なくとも1バーストの少なくとも1つの一次振動を被験者へ提供することを備える。
【0044】
これらの態様および/または他の態様は、添付図面と併せて参照される以下の実施形態の説明から、より明らかになり、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本教示のいくつかの実施形態に係る典型的なデバイスの構成を示す図である。
図2】本教示のいくつかの実施形態に係る他の典型的なデバイスの構成を示す図である。
図3】本教示のいくつかの実施形態に係る他の典型的なデバイスの構成を示す図である。
図4図2または図3に係るデバイスの概略図である。
図5A】本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中の時間(t)対振幅PV(t)によって表された一次振動の例を示すグラフである。図5Aは、例として、単純な余弦関数を示す。
図5B図5Aの一次振動の周波数領域(f)におけるFFTの二乗として表された、図5Aの一次振動の正規化エネルギスペクトル密度(ESD)を示す。
図5C】本教示のいくつかの実施形態に係る、時間領域における、図5Aの一次振動のパワースペクトル密度を示す。
図6A図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、各々が異なる周波数を示すいくつかの正弦または余弦関数の和である一次振動の他の例に関する。
図6B図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、各々が異なる周波数を示すいくつかの正弦または余弦関数の和である一次振動の他の例に関する。
図6C図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、各々が異なる周波数を示すいくつかの正弦または余弦関数の和である一次振動の他の例に関する。
図7A図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる段階的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図7B図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる段階的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図7C図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる段階的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図8A図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図8B図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図8C図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有する一次振動の他の例に関する。
図9A図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、たとえばバースト中に振幅にハミング窓関数を適用することによって、バースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図9B図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、たとえばバースト中に振幅にハミング窓関数を適用することによって、バースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図9C図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、たとえばバースト中に振幅にハミング窓関数を適用することによって、バースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図10図9Cと同様であるが、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、振幅に適用された他の窓関数、すなわち二次凹関数、二次凸関数、および指数関数に関してバースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図11図9Cと同様であるが、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、振幅に適用された他の窓関数、すなわち二次凹関数、二次凸関数、および指数関数に関してバースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図12図9Cと同様であるが、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、振幅に適用された他の窓関数、すなわち二次凹関数、二次凸関数、および指数関数に関してバースト中に振幅を変化させる一次振動の他の例に関する。
図13A図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、ここでは重畳白色雑音として表された雑音を有する一次振動の他の例に関する。
図13B図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、ここでは重畳白色雑音として表された雑音を有する一次振動の他の例に関する。
図13C図5A図5B、および図5Cと同様であるが、本教示のいくつかの実施形態に係る、バースト中に伝達周波数帯域に広がる連続的に変化する周波数を有し、かつ、ここでは重畳白色雑音として表された雑音を有する一次振動の他の例に関する。
図14】本教示に係る単純化された方法の図である。
図15】各々が、ポリビニルアルコール(PVA)組織模擬模型を用いる第1の実験構成の概略長手方向図および概略横方向図である。
図16】各々が、ポリビニルアルコール(PVA)組織模擬模型を用いる第1の実験構成の概略長手方向図および概略横方向図である。
図17】動物モデルの治療における、本教示のいくつかの実施形態を用いる方法の適用に応答する典型的な空気流量およびSpO2を示す。
図18】動物モデルの治療における、本教示のいくつかの実施形態を用いる方法の適用に応答する典型的な空気流量およびSpO2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示において使用される用語は、本教示の機能を考慮して、当業者によって使用される一般用語として選択されたが、当業者の意図、従来例、または新たな技術の導入に従って変更され得る。また、特定の例において任意に選択される用語が存在する場合、その用語の意味は、本教示の対応する説明部分において詳しく説明される。したがって、用語は、用語の各々の単純名ではなく、本開示の内容全体に基づいて定義または理解されるべきである。
【0047】
本教示において、あるものがいくつかの要素を含む(または備える、または有する)場合、それは、特定の制限がなければ、それらの要素のみを含んで(または備えて、または有して)よく、あるいは他の要素ならびにそれらの要素を含んで(または備えて、または有して)よいことを理解すべきである。
【0048】
本明細書で使用される「約」という用語は、一般に、所与の値または範囲の10%、5%、1%、または0.5%の範囲内を指す。あるいは、「約」という用語は、当業者が考慮した場合に許容可能な平均値の標準誤差の範囲内を意味する。本教示において、各数値パラメータは、報告された有効桁数の観点から、通常の丸め法を適用することによって解釈されるべきである。
【0049】
「被験者」という用語は、たとえば霊長類(特に高等霊長類)、羊、犬、齧歯類(たとえばマウスやラット)、モルモット、ヤギ、豚、猫、ウサギ、および牛などの全哺乳類を含む、生きている人間または動物を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、「改善」、および「促進」という用語は、本明細書において同義的に使用され得る。これらの用語は、治療効果および/または予防効果を含むがこれに限定されない有益または所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療効果とは、治療中の基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療効果は、被験者がなお基礎疾患を患っているとしても、被験者において改善が観察されるような基礎疾患に関連する生理的症状の1または複数の根絶または改善によって実現される。予防効果のために、特定の病気の診断が下されていない場合でも、この病気にかかる危険性のある被験者、または病気の生理的症状の1または複数を報告する被験者に、デバイスが使用され、あるいはプロセスが適用され得る。
【0051】
「呼吸関連睡眠障害」は、(良性の)いびき、習慣性いびき、慢性いびき、上気道抵抗症候群(UARS)、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、肥満低換気症候群(OHS)を含み得る呼吸異常の範囲を指す。いくつかの実施形態において、慢性いびきが含まれる。いくつかの実施形態において、習慣性いびきが含まれる。いくつかの実施形態において、上気道抵抗症候群(UARS)が含まれる。いくつかの実施形態において、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が含まれる。いくつかの実施形態において、肥満低換気症候群(OHS)が含まれる。
【0052】
UARSを患う被験者において、睡眠品質は一般に、たとえば睡眠を開始または維持する困難(不眠症)、快適でない睡眠、または過剰な日中の眠気などの臨床結果をもたらすところまで乱され得る。いびきによって引き起こされる多くの覚醒が非常に短時間であるという性質により、UARSを患う被験者は、これらの覚醒に無自覚な場合があり、同床者または家族からの目撃報告がなければ、自身がいびきをかいていることに気付かない場合がある。
【0053】
OSAは、睡眠中の(場合によっては「無呼吸」と称される)浅い、または間欠的な呼吸の反復的発症によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、被験者が呼吸しようと努力しても、反復的発症が生じる。いくつかの実施形態において、OSAは、血中酸素飽和度の低下に関連する。いくつかの実施形態において、無呼吸は、10秒以上続く。いくつかの実施形態において、無呼吸は、10~90秒続く。いくつかの実施形態において、無呼吸は、20秒未満続く。いくつかの実施形態において、無呼吸は、40秒より長く続く。いくつかの実施形態において、無呼吸は、10~15秒、15~20秒、20~25秒、25~30秒、30~35秒、35~40秒、40~45秒、45~50秒、50~55秒、55~60秒、60~65秒、65~70秒、70~75秒、75~80秒、80~85秒、または85~90秒続く。
【0054】
「血中酸素飽和度」、「血中酸素レベル」、「血中酸素飽和レベル」、または「SO」という用語は、血液中の総ヘモグロビン(不飽和+飽和)に対する酸素飽和ヘモグロビンの割合を指す。血中酸素飽和度は、様々な方法を用いて様々な組織内で測定され得る。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、動脈血酸素飽和度またはSaOを含む。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、静脈血酸素飽和度またはSvOを含む。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、組織酸素飽和度またはStOを含む。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、末梢酸素飽和度またはSpOを含む。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、動脈血ガス試験によって測定される。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、近赤外線分光法を用いて測定される。いくつかの実施形態において、血中酸素飽和度は、パルスオキシメータデバイスによって測定される。
【0055】
いくつかの実施形態において、正常な血中酸素パルス飽和度は、95%以上である。いくつかの実施形態において、正常な血中酸素パルス飽和度は、約98%以上である。いくつかの実施形態において、正常な血中酸素パルス飽和度は、約99%以上である。
【0056】
「呼吸気流量」という用語は、単位時間当たりの肺によって吸気された空気の量であり、この測定値は、診断のために使用され得る。呼吸気流量は、被験者の口および鼻を覆う顔面マスクによって測定され得る。呼吸気流量が負の数で表される場合、これは、単位時間当たりの肺による吐息の量を示す。
【0057】
いくつかの実施形態において、低酸素血睡眠障害を有する被験者は、低下した血中酸素飽和度を有する。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約92%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約90%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約88%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約86%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約84%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約82%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約80%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、78%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約75%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約70%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約65%以下である。いくつかの実施形態において、低下した血中酸素飽和度は、約95%、約94%、約92%、約90%、約88%、約86%、約84%、約83%、約80%、約78%、約76%、約74%、約72%、約70%、約68%、約65%、約63%、または約60%である。
【0058】
いくつかの実施形態において、睡眠障害を患う被験者は、同じ被験者に関する基準空気流量と比較して、所定の時間にわたる最大呼吸気流量の低下を有する。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約50%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約45%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約40%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約35%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約30%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約25%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約20%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約15%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約10%以下である。いくつかの実施形態において、低下した空気流量は、約5%以下である。
【0059】
「アクチュエータ」という用語は、本明細書で使用される場合、アクチュエータが運動、ここでは振動を加える、たとえばコンタクトパッド形状の出力部材を有するデバイスを称する。いくつかの実施形態において、デバイスは、電気機械または電磁デバイスである。いくつかの実施形態において、デバイスは、圧電デバイスである。いくつかの実施形態において、デバイスは、油圧デバイスである。いくつかの実施形態において、デバイスは、空圧デバイスである。いくつかの実施形態において、デバイスは、熱デバイスである。
【0060】
本明細書で使用される「振動」という用語は、一般に機械的現象を指し、これによって、身体または媒体の1またはいくつかの点の振動が平衡点の付近で発生する。この振動は、周期的またはランダムであってよい。いくつかの実施形態において、振動は、本教示のアクチュエータによって提供される。アクチュエータによって被験者の身体に提供される振動は、通常、アクチュエータのコンタクトパッドで発生する振動であり、一次振動と呼ばれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、一次振動は、被験者の体内で、機械的せん断波を発生させる。本教示の範囲を任意の特定の理論または仮説によって限定することなく、機械エネルギが媒体を通って伝搬する時、これは2つの主要モードを有してよく、その1つにおいて、媒体粒子は、波伝搬方向と垂直な方向に振動する。いくつかの実施形態において、この伝搬モードは、「せん断波」と呼ばれる。
【0062】
デバイス
【0063】
1つの態様において、本教示は、被験者を治療するための医療デバイスに関する。いくつかの実施形態において、被験者は、呼吸状態に悩まされている場合がある。いくつかの実施形態において、デバイスは、1または複数のアクチュエータを含み、その各々が本明細書において定義される。たとえば、1または複数のアクチュエータは、被験者の解剖学的形状に適合する形で好都合に配置され得る。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、以下、体外解剖学的部位と呼ばれる、身体部位の周囲に配置される。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、被験者の首領域の周囲に配置される。いくつかの実施形態において、本教示の少なくとも1つのアクチュエータは、被験者の首に配置される。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、たとえば首ベルト形状のホルダ、好適には可撓性ホルダに取り付けられる。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、被験者の胸部の周囲に配置される。たとえば、1または複数のアクチュエータは、被験者の上胸部の周囲に配置され得る。いくつかの実施形態において、本教示の少なくとも1つのアクチュエータは、被験者の胸部に配置される。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、ホルダ、好適には可撓性ホルダに、たとえば胸部ベルト形状で取り付けられる。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、ベスト形状で提供される。
【0064】
いくつかの実施形態において、デバイスは、非同期的に振動するいくつかのアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、デバイスは、同期的に振動するいくつかのアクチュエータを備える。いくつかの実施形態において、いくつかのアクチュエータは、複数の異なる周波数で振動する。いくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータは、1つの周波数で振動する。
【0065】
いくつかの実施形態において、デバイスは、1または複数のモニタを含み、あるいはデバイスは、たとえばデバイスをモニタとリンクするように構成された有線または無線(Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、・・・)通信リンクを通して、1または複数のモニタと共に動作するように構成され得る。モニタまたは複数のモニタは、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するように構成され得る。たとえば、モニタは、血中酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、呼吸気流量モニタ、呼吸速度モニタ、心拍数モニタ、体動モニタ、心電図(ECG)モニタ、脳波(EEG)モニタ、筋電図(EMG)モニタ、および/または睡眠段階調査モニタであってよく、またはそれらを備えてよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、モニタは、血中酸素飽和度モニタを含む。いくつかの実施形態において、デバイスは、SaOモニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、SvOモニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、StOモニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、SpOモニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、パルスオキシメータを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、モニタは、血中COモニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、口鼻熱気流量モニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、熱流センサを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、鼻圧センサを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、血圧センサを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、心拍数モニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、呼吸速度モニタを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、体位センサを含む。いくつかの実施形態において、モニタは、いびきセンサを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、モニタは、振動を監視するように構成される。いくつかの実施形態において、振動は、体内領域から起こる。たとえば、振動は、いびきによって生じ得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、デバイスは、制御ユニットを含む。たとえば、制御ユニットは、デバイスの1つのアクチュエータまたはデバイスのいくつかのアクチュエータを自動的にオンまたは/およびオフにするために、手動作動型スイッチからの入力を受信してよく、または/および、たとえばモニタから受信した測定値に基づいて、デバイスの1つのアクチュエータまたはデバイスのいくつかのアクチュエータを自動的にオンまたは/およびオフにするように構成され得る。実際、いくつかの実施形態において、デバイスは、本教示のモニタから測定値を受信するように構成された制御ユニットを含む。いくつかの実施形態において、デバイスは、参照測定値を提供するように構成された制御ユニットを含む。いくつかの実施形態において、デバイスは、測定値を参照測定値と比較するように構成された制御ユニットを含む。いくつかの実施形態において、デバイスは、アクチュエータをオンまたはオフにするように構成された手動作動型スイッチを含む。
【0070】
このように、いくつかの実施形態において、本教示のデバイスは、少なくとも第1のアクチュエータと、制御ユニットとを備え、制御ユニットは、デバイスが第1の一次振動を備える一次振動を被験者に提供するように、少なくとも1バーストの第1の一次振動を提供するように第1のアクチュエータをオンにすること、および第1のアクチュエータをオフにすることによって、第1のアクチュエータを制御するように構成される。
【0071】
図1において、本教示に係る被験者を治療するためのデバイスの例のいくつかの要素が示される。より正確には、図1は、この例では単一のアクチュエータであるアクチュエータ12を備えるデバイス10を示す。アクチュエータ12は、振動性運動を生成することができるバイブレータ14と、被験者との外部機械的接触のために構成された1または複数のコンタクトパッド18を有するアプリケータ16とを備える。
【0072】
この例ならびに以下の例において、コンタクトパッド18は、被験者との直接接触、典型的には被験者の身体との直接接触、典型的には被験者の皮膚との直接接触が意図された界面材料を備えてよい。
【0073】
上述したように、バイブレータ14は、制御ユニット20によって制御され得る機械的振動性運動の発信源である。バイブレータ14は、モータ、たとえば電動モータを備えてよい。モータは、たとえばリニアモータまたはロータリモータであってよく、たとえばリニアモータの場合は振動性であってよく、ロータリモータの場合は連続的であってよい生の運動を提供する。バイブレータ14は、生の運動を振動性運動に変換し得る機械式変速機を備えてよい。機械式変速機は、クラック/ロッド機構またはカム機構を含んでよく、あるいは、連続的な生の回転運動を交互の直線振動性運動に変換するための偏心重りを含んでよい。ただし、1つの実施形態において、バイブレータは、3149 E Kemper Road、Cincinnati、オハイオ州45241、米国所在のThe Modal Shop社が販売している、たとえば一体型電力増幅器を有するSmartShaker(登録商標)K2004E01モデルなどの電磁シェーカを備えてよい。そのような動電型エキサイタは、その基部に一体化された電力増幅器を有する小型の携帯式永久磁石シェーカである。この例において、アプリケータ16は、バイブレータ14によって生成された振動性運動をコンタクトパッド18へ伝達する。アプリケータ16は、ここでは直線である主ロッド22を備えるフレーム、たとえば剛性フレームを備えてよい。この例において、主ロッド22は、バイブレータ14に機械的に連結された一端を有し、他方の端部は、1または複数のコンタクトパッド18を担持するブラケット24に機械的に連結される。
【0074】
示される例において、ブラケット24は、被験者の体外解剖学的部位の輪郭と一致するように構成される。示される例において、ブラケット24は、被験者の首の輪郭と一致するために、弓形の形状である。この例において、バイブレータ14は、直線振動性運動を主ロッド22に伝達し、ここで、直線振動性運動の軸は、直線主ロッド22の軸と一致している。弓形ブラケット24は、たとえば直線主ロッド22の軸を含む平面に延びる。弓形ブラケット24は、たとえば、半円形状である。2つのコンタクトパッド18のみが表されるが、弓形ブラケットは、更に多い数のコンタクトパッド、たとえば3、4、5、6、7、8、または更に多い数のコンタクトパッドを備えてよい。これらのコンタクトパッドは、規則的な間隔または不規則的な間隔で、ブラケット24の伸長部分にわたり分散してよい。そのような間隔は、ランダムであってよい。コンタクトパッドは、1寸法に沿って分散し、たとえば弓形の上に分散してよく、あるいは、ブラケットの2寸法に沿って、たとえばいくつかの平行な弓形の上に分散してよく、あるいはブラケットの2Dまたは3D表面にランダムに分布してよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、この例において弓形ブラケット24に担持された所与のアクチュエータの全てのコンタクトパッドは、バイブレータ14によってアプリケータ16に付与される同じ振動性運動を有すると考えられ得る。そのような例において、アプリケータ16は、剛性であると考えられる。ただし、いくつかの実施形態において、アプリケータ16は、バイブレータからの振動性運動をコンタクトパッドに伝達することが可能なままで、ある程度の可撓性を示してよい。たとえば、そのような可撓性は、アプリケータの形状を実際の被験者にある程度適合させることを可能にし得る。そのような例において、アプリケータの異なる位置に位置する異なるコンタクトパッドの振動性運動は異なってよく、典型的には、異なる振幅および/または方向および/または異なる位相を有してよい。たとえば、図1の構成において、主ロッド22は剛性である、すなわち主ロッド22の一方の端部と他方の端部との間に著しい運動の差がないと考えられ得るが、ブラケット24は、ある程度の可撓性を示し得る。
【0076】
示される例において、コンタクトパッド18は、ブラケット24上のコンタクトパッドの位置に依存して各々が異なる向きを有する。ただし、変形例において、アクチュエータのいくつかのコンタクトパッド、または場合によっては全てのコンタクトパッドは、互いに平行であってよい。各コンタクトパッドは、コンタクトパッド18と被験者の身体との間の接触位置において被験者の身体と平行な接触表面を有するように設計および構成され得る。ただし、コンタクトパッドの1つまたはいくつかまたは全ては、丸みを帯びた接触表面を有してよい。理解できるように、このようにコンタクトパッドは、被験者の皮膚との接触表面の外部機械的接触によって、一次振動を被験者に伝達することができる。
【0077】
たとえば図2および図3の例に示すようないくつかの実施形態において、一般にバイブレータが圧電バイブレータである場合、アクチュエータのコンタクトパッド18は、バイブレータ14の外側表面である。
【0078】
制御ユニット20は、アクチュエータが被験者に一次振動を提供するようにアクチュエータ12を制御するように構成される。したがって、制御ユニット20は、バイブレータ14を制御するように構成され得る。制御ユニット20は、バイブレータ14に制御信号28を伝達するように構成された、たとえば制御可能発電機26の形式の制御信号生成器を備えてよい。制御信号28は、典型的には、電気制御信号である。制御ユニット20は、制御信号生成器26を制御するための、典型的にはプロセッサ、1または複数の電子メモリ、1または複数の入力および/または送出ポートを有する1または複数の通信回路などを備える電子制御回路30を備えてよい。いずれの場合も、たとえば通信リンクおよび/または電気リンクなどのリンク31が、電子制御回路30と制御信号生成器26との間に提供され得る。いくつかの実施形態において、制御ユニット20は、アクチュエータ12と積層され、たとえばバイブレータ14と積層され得る。いくつかの実施形態において、制御ユニット20の一部、たとえば制御信号生成器26は、アクチュエータと積層され、たとえばバイブレータ14と積層され得るが、制御ユニットの他の部分、たとえば電子制御回路(複数も可)30は、ホルダから遠隔であってよいことが提示され得る。いくつかの実施形態において、制御ユニット20は、アクチュエータ12から遠隔である。
【0079】
バイブレータ14の種類に依存して、制御信号28は、アクチュエータ12によって被験者へ伝達された一次振動の画像であってよい。
【0080】
本教示に係るデバイスは、単一のアクチュエータを備えてよい。ただし、デバイスは、図2および図3の例に示すように、たとえば少なくとも第1のアクチュエータおよび少なくとも第2のアクチュエータを含むいくつかのアクチュエータを備えてもよい。いくつかのアクチュエータを備えるデバイスにおいて、アクチュエータは同一であってよく、あるいは異なる種類であってよい。図2および図3の例において、デバイスは、好適には電気機械式、最も好適には圧電式である4つの同一のアクチュエータを備える。
【0081】
図2の例に示すように、本教示に係るデバイスは、その全てのアクチュエータを、同じ制御信号生成器26によって伝達され得る同じ制御信号28で制御させ得る。一方、図3の例に示すように、本教示に係るデバイスは、例示するように異なる制御信号生成器26によって、または同じ制御信号生成器の異なる出力によって伝達され得る異なる制御信号28で制御されるいくつかのアクチュエータを有してよい。
【0082】
図2および図3に示すように、本教示に係るデバイスにおいて、制御信号増幅器27は、制御信号生成器26と1または複数のバイブレータとの間に提供され得る。そのような制御信号増幅器27は、制御ユニット20の一部であってよく、またはアクチュエータの一部であってよく、またはその間の独立したエンティティであってよい。図2の典型的な実施形態において、単一の制御信号増幅器27が全てのアクチュエータ12に用いられるが、図3の典型的な実施形態において、各々がデバイスのアクチュエータ12の1またはサブセットへ制御信号28を伝達するいくつかの制御信号増幅器27が存在してよい。いくつかの制御信号生成器の例において、制御ユニットは、全ての制御信号生成器26を駆動する単一の電子制御回路30を備えてよく、または、各々が1または複数の制御信号生成器を駆動するが同じ制御ユニットの一部を成すと考えられるいくつかの電子制御回路30を備えてよい。
【0083】
どちらの例においても、任意の種類のバイブレータを含む任意の種類のアクチュエータが使用され得る。ただし、小型アクチュエータが望ましい。アクチュエータは、交流電気制御信号28を供給され、生の直線振動性運動を伝達するリニアモータ型と考えられ得る、圧電バイブレータ14を備えてよい。例として、59 Chemin du Vieux Chene、Inovallee、38246 MEYLAN Cedex、フランス所在のCEDRAT TECHNOLOGIES社製のAPAシリーズのアクチュエータをアクチュエータ12として実装してよい。そのようなアクチュエータの各々は、低電圧圧電セラミックの機械拡大プリロードスタックである。たとえば、APA600MMLアクチュエータが使用され得る。
【0084】
典型的には、本教示に係るデバイスは、アクチュエータの動作のため、および制御ユニットの動作のためのエネルギ源32を備え、またはエネルギ源32と接続され得る。電気機械または電磁バイブレータの例において、エネルギ源は、家庭用電気ネットワーク、家庭用電気ネットワークに接続され得る電気変換器または変圧器、バッテリなどのいずれか1つを備え得る電源であってよい。エネルギ源は、デバイス専用であってよい。
【0085】
本教示に係るデバイスは、被験者の少なくとも1つの生理的パラメータを測定するための上述したような1または複数のモニタを備えてよい。図2の例において、たとえば電気ケーブルなどの有線リンクである通信リンク37を介して制御ユニット20にリンクされた1つのモニタ36が示される。同じ例において、他のモニタ38は、たとえばBluetooth(登録商標)通信リンクなどの無線リンクである他の通信リンク39を介して制御ユニットにリンクされる。通信リンクは、制御ユニット20がモニタから測定された生理的パラメータを受信することを可能にする。通信リンクは、制御ユニット20の電子制御回路30とインタフェース接続してよい。
【0086】
本教示に係るデバイスにおいて、1または複数のアクチュエータは、ホルダ34に配置され得る。そのようなホルダ34は、被験者にアクチュエータまたは複数のアクチュエータを取り付けることを可能に、または容易にするように構成され得る。たとえば、限定ではないが、ホルダは、首ベルト、胸部ベルト、ベスト、横隔膜ベルト、または腹部ベルトの形状を成してよい。好適には、ホルダは、特にそれがいくつかのアクチュエータを保持する場合、アクチュエータが当てられる被験者の身体領域に適合する。典型的には、ホルダは、たとえば布帛構造および/または可撓性ポリマ構造を備えて可撓性であってよく、および/または、少なくとも部分的に半剛性、すなわち弾性であってよく、および/または、関節式であってよい。アクチュエータは、規則的な間隔または不規則的な間隔を有して、ホルダの伸長部分にわたり分散してよい。それらは、1寸法に沿って、たとえば直線上に分散してよく、あるいはホルダの2寸法または3寸法に沿って分散してよい。制御ユニット20、または少なくともその一部もまた、ホルダに配置され得ることを留意すべきである。いくつかの実施形態において、制御ユニット20の一部、たとえば制御信号生成器(複数も可)はホルダ34に配置され得るが、制御ユニットの他の部分、たとえば電子制御回路(複数も可)はホルダ34から遠隔であってよいことが提示され得る。
【0087】
たとえば図2および図3の例に示すようないくつかの実施形態において、1または複数のアクチュエータ12は、全体的または部分的にホルダ内に封入され得る。そのような例において、ホルダは、コンタクトパッド18を覆うライナを備えてよい。そのような例において、ライナは好適には、コンタクトパッド18の振動性運動に可能な限り少ない減衰しかもたらさないように構成され、コンタクトパッド18は、ライナが存在しない場合のように直接ではなくライナを通して間接的にではあり得るが、被験者と外部機械的接触状態にあると考えられ得る。
【0088】
図4は、図2または図3の図に係り得るデバイスの実施形態の概略図である。この例において、いくつかのアクチュエータ12は、たとえば首ベルトなどのベルト形状のホルダ34に配置される。ホルダ34は、アクチュエータ12を受け入れる中央ケーシング40を示す。中央ケーシング40は、たとえば被験者の首の前部に適合するように、被験者の首の輪郭の少なくとも一部を辿るような細長い形状を有してよい。中央ケーシング40は、可撓性または剛性、または剛性と可撓性との間の状態であってよい。ホルダ34は、ホルダが首の周囲の半分より多くを包囲することによってユーザの首の周囲に取り付けられ得るように、細長い弓形中央ケーシング40の両側に延びる、弓形状であってよい1または複数の横ウイング42も備えてよい。この例において、ホルダ34は、1周より短く伸びる弓形状であるため、横ウイング42の自由端の間で開放する。
【0089】
いくつかのアクチュエータ、すなわち少なくとも1つの第1のアクチュエータおよび少なくとも1つの第2のアクチュエータを備えるデバイスにおいて、両者が被験者との外部機械的接触のために構成される場合、制御ユニットは、少なくとも1つの第1の一次振動バーストを提供するように第1のアクチュエータを制御し、少なくとも1つの第2の一次振動バーストを提供するように第2のアクチュエータを制御するように構成され得る。そのような例において、デバイスは全体として、いくつかのアクチュエータを介して、一次振動、すなわち第1の一次振動および第2の一次振動を含む、デバイスのアクチュエータの各々によって提供される一次振動を備えるグローバルデバイス一次振動を提供する。したがって制御ユニットは、第1のアクチュエータをオンまたはオフにするように、かつ第2のアクチュエータをオンまたはオフにするようにも構成され得る。いくつかの実施形態において、第1および第2の一次振動は、同期的であってよい。それらは実際、同じ制御信号28が第1および第2のアクチュエータの両方へ提供されることの結果生じてよく、この例において、それらは同じ振幅および同じ周波数コンテンツを有する。ただし、それらは異なる振幅を示し得る。他の実施形態において、第1および第2の一次振動は、位相シフトを示してよい。それらは、被験者の体内で伝搬すると、いわゆる振動の収束をもたらし得る。当然、同じ原理が、2より多い数のアクチュエータにも適用され得る。そのような例において、デバイスの全てのアクチュエータは、同期的一次振動を提供するように制御されてよく、または、デバイスのアクチュエータの異なるサブセットは、所与のサブセット内では同期的であるが異なるサブセット間では位相シフトを示す一次振動を提供するように制御されてよく、この場合、アクチュエータのサブセットは、1または複数のアクチュエータを備える。
【0090】
一次振動
【0091】
本教示において、本教示に係るデバイス内のアクチュエータによって、またはデバイスに関する制御プロセスにおいて提供される、またはそのようなデバイスの使用または本教示に係る治療方法において実行される一次振動は、アクチュエータと被験者との接触表面、すなわち上記例におけるコンタクトパッド(複数も可)18において伝達される振動性運動である。一次振動は、アクチュエータをオンにした時に開始し、アクチュエータをオフにした時に停止するバースト期間中のバーストとして提供される。所与の治療中、デバイスは、バースト列期間の満了まで、いくつかの連続バーストの列の一次振動を伝達するように構成され得る。そのようなバースト列において、2つの連続したバーストは、直接連続し得るか、あるいはアクチュエータがオフにされるラプス期間によって分離され得る。同じアクチュエータによって提供される異なるバーストは、同じ周波数コンテンツ、振幅などを有する同じ一次振動をもたらす同じ制御信号に対応してよい。いくつかの実施形態において、バースト列は、バースト反復周波数で反復されるバーストの連続である。ただし、同じアクチュエータによって提供される異なるバーストは、異なるバーストにおいて異なる一次振動をもたらす異なる制御信号に対応してよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、デバイスのアクチュエータ12によって提供される一次振動は、所与のバースト中、単一の一定一次周波数を有する周期振動である。好適には、単一の一定一次周波数は、それ自体が5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に含まれる。
【0093】
動作可能周波数範囲は、少なくとも1つの一次周波数が被験者の内部でせん断波を生み出す観点で動作可能であるように、かつ治療が効果的であるように選択されるべき周波数範囲である。動作可能周波数範囲は、最大で5~1000Hzの範囲内で構成されると考えられる。ただし、特に何人かの被験者への何らかの治療に関して、動作可能周波数範囲は、最大で15~200Hzの範囲内で構成されると考えられる。
【0094】
そのような一次振動の例は、図5Aに示され、ここで一次振動は、余弦波の形式であり、バースト期間中の時間に沿ったその値は、次の時間関数、
PV(t)=A×cos(2×π×f×t+φ)
と書き表すことができ、
A:振動振幅、
f:振動周波数、
t:時間、
φ:振動位相
である。
【0095】
図5Aの例において、一次振動の周波数は5Hzである。留意すべき点として、図5Aは1秒の期間にわたる振動を示すが、これがバーストの期間であってよく、またはバーストはより長く継続してよい。図5Bは、周波数領域において表された一次振動の正規化二乗高速フーリエ変換を示し、ここで正規化は、算出された値が、周波数コンテンツにわたる最大算出値で割算されていることを示す。この関数は、所与のバーストの期間にわたる、振動が備える各周波数に関するエネルギの比を表す。この例において、単一の一次周波数が存在するので、振動の全てのエネルギが、この例では5Hzである単一の一次周波数で発生することが非常に明らかである。図5Cは、1バーストにわたる時間周波数パワースペクトル密度を表し、X軸に沿って時間が秒単位で表され、Y軸に沿って周波数がキロヘルツ単位で表されており、グラフの各点は、X軸上で読み取られる所与の時点における、Y軸上で読み取られるその時点の所与の周波数に関する振動のパワーに比例するグレーレベルを有する。グレースケールにおいて、黒色は、所与の周波数および所与の時点に関して無のパワーを表し、白色は、最大パワーを表す。したがって、ここでは、バーストの長さにわたり、パワーは一定を保ち、単一の一次周波数に集中することが明らかである。
【0096】
意図された治療のためにデバイスが動作可能であるために、デバイスは好適には、被験者の体内で、特定の皮下深さにあり、治療すべき不調における術部である特定の身体組織に到達するように体内で伝搬するせん断波を生成するように構成されなければならないことが分かっている。したがって、デバイスの動作によって誘発されるせん断波は、被験者の体内で10ミリメートル以上、好適には15ミリメートル以上の深さに、またはその深さまで生成され、および/または伝搬することが望ましいと分かっている。いくつかの実施形態において、デバイスの動作によって誘発されるせん断波は、被験者の体内で30ミリメートル以上、好適には50ミリメートル以上の深さに、またはその深さまで生成され、および/または伝搬する。実験において、デバイスの動作によって誘発されるせん断波は、被験者の体内で30ミリメートル以上の深さまで伝搬することが示されている。
【0097】
この趣旨で、出願者の試験により、デバイスのアクチュエータ(複数も可)によって生成される一次振動(複数も可)は、好適には、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる少なくとも1つの一次周波数を有する種類でなければならないことが分かる。
【0098】
治療法においてデバイスによって伝達される周波数スペクトルは、効果的な治療のために、必ずしも動作可能周波数範囲全体に広がる必要はない。対照的に、後述するように、治療法においてデバイスによって伝達される周波数スペクトルは、単一の一次周波数、または複数の一次周波数、および/または動作可能周波数範囲の全てを備えていない伝達周波数範囲を備えてよい。治療方法中にデバイスによって伝達される周波数スペクトルは、動作可能周波数範囲のごく一部のみに対応してよい。
【0099】
被験者の身体との外部接触におけるデバイスのアクチュエータ(複数も可)のコンタクトパッドにおいて発生する一次振動は、必ずしも、一次振動が付与される身体表面に対するせん断波である必要はないことに留意することが有用である。実際、コンタクトパッドが、身体表面に対し平行な、すなわち多くの場合は皮膚に対して平行な方向に行き来する一次振動を有するデバイスの構成を考えることが可能であるが、そのような状態は必須ではない。身体の表面と垂直な方向に沿った交互振動に存する一次振動、すなわち、振動が付与される身体表面に対する圧縮振動は、たとえば特定の深さで伝搬するせん断波などのせん断波を体内で生成し得ることが実際に示されている。この方法で、各々が体内で異なる伝搬方向を有する複数のせん断波が生成され得ることが示されている。一次振動は、回転運動、好適には、たとえば振動が付与される身体表面と垂直な軸の周囲での交互回転運動であってよく、またはそれを含んでよい。一次振動は、単一寸法に沿った交互運動、2寸法に沿った、すなわち表面に沿った交互運動、または3寸法に沿った、すなわち体積に沿った交互運動であってよく、またはそれを含んでよい。一次振動は、振動が付与される位置において被験者の身体表面と平行な少なくとも1寸法に沿った交互運動であってよく、またはそれを含んでよい。一次振動は、振動が付与される位置において被験者の身体表面と垂直な少なくとも1寸法に沿った交互運動であってよく、またはそれを含んでよい。
【0100】
1000Hzの周波数を超える周波数を有するせん断波は、身体組織内で強力に放散するので、身体の深さ方向に良好に伝搬せず、その結果、治療すべき不調に影響を及ぼすのに十分なエネルギを有して所望の術部組織に到達できないことが示されている。
【0101】
最大1000Hz、たとえば特定の被験者に関して最大800Hzの一次周波数が考えられるが、特にいくつかの応用に関して、一次周波数は好適には15Hz~200Hzの範囲内に含まれることも分かっている。実際、15Hz未満では、生成され得る任意のせん断波は十分なパワーを有さないことが決定されている。また、一次周波数を200Hz未満に維持することにより、表面に位置していない組織または器官にせん断波が到達することを可能にする深さまでの伝搬を含む、体内でのせん断波の伝搬が向上する。
【0102】
いくつかの実施形態において、一次振動は、約15Hz、約20Hz、約25Hz、約30Hz、約35Hz、約40Hz、約45Hz、約50Hz、約55Hz、約60Hz、約65Hz、約70Hz、約75Hz、約80Hz、約85Hz、約90Hz、約95Hz、約100Hz、約105Hz、約110Hz、約115Hz、約120Hz、約125Hz、約130Hz、約135Hz、または約140Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約70Hz、約75Hz、約80Hz、約85Hz、約90Hz、約95Hz、約100Hz、約105Hz、約110Hz、約115Hz、約120Hz、約125Hz、約130Hz、約135Hz、または約140Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約90Hz、約95Hz、約100Hz、約105Hz、約110Hz、約115Hz、約120Hz、約125Hz、約130Hz、約135Hz、または約140Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約90Hzの第1の周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動波は、約95Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約100Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約105Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約110Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約115Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約120Hzの一次周波数を含む。いくつかの実施形態において、一次振動は、約125Hzの一次周波数を含む。
【0103】
ただし、実験的応用が、一次振動(複数も可)の一次周波数の選択に敏感であると証明されたことを試験が示している。予備的理解として、所望の治療を得るために最も効果的な一次周波数は、場合によっては、たとえば治療すべき不調、不調に関与する身体組織などの他の要因にも依存することに加えて、被験者によって変動し得る。
【0104】
したがって、出願者は、単一の一次周波数の一次振動(複数も可)を提供するデバイスを用いるのではなく、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に含まれる、またはそれと重なる伝達周波数帯域にわたる周波数コンテンツ、または周波数スペクトルを有する一次振動を被験者の身体へ提供するデバイスを設計している。そのような一次振動の例は、図6A~13Cを参照して示される。
【0105】
以下の例から理解されるように、所与の一次振動の周波数コンテンツは、それが所与のアクチュエータによって伝達された一次振動であるか、デバイスのいくつかのアクチュエータによってグローバルに伝達されたグローバルデバイス一次振動であるかにかかわらず、バーストの期間にわたる一次振動の時間関数に高速フーリエ変換を実行することによって伝達され得る。そのような高速フーリエ変換は、任意の一次振動において、所望の治療効果を有するせん断波を体内で生成するために有効な振幅、および/またはエネルギおよび/またはパワーを有する1または複数の一次周波数、および/または一次伝達周波数帯域を識別することを可能にする。以下の例から理解されるように、所与の一次振動の周波数コンテンツは、5Hz~1000Hzの範囲外である、または15Hz~200Hzの範囲外であること、あるいは、所望の治療効果を有するせん断波を体内で生成するために不十分な振幅および/またはエネルギおよび/またはパワーしか有さないことのいずれかによって非動作可能な周波数を含み得る。一般に、動作可能周波数は、標的組織位置に、被験者の自発的ないびきによって生じる波の振幅以上の振幅を有するせん断波を生成するものと考えられる。
【0106】
本教示において、伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する一次振動の文脈において、伝達周波数帯域は、上限周波数と、上限周波数とは異なり、それより低い下限周波数とを有する周波数の範囲として定義される。
【0107】
本教示において、伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する一次振動とは、一次振動が、伝達周波数帯域の上限および下限周波数を含むいくつかの周波数を含む周波数コンテンツを有することを意味する。好適には、そのような一次振動は、伝達周波数帯域の上限と下限との間の少なくとも1つの追加の周波数、好適にはいくつかの追加の周波数を含む周波数コンテンツを有する。
【0108】
1つの実施形態によると、デバイスがいくつかのアクチュエータを備える場合、デバイスは、上記アクチュエータのいくつかが、各々、単一の一定一次周波数を有する一次振動を被験者の身体へ提供するように構成されてよく、単一の一定一次周波数は、全て等しいものではなく、5Hz~1000Hz、好適には15Hz~200Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内のいくつかの異なる一定一次周波数を備える。
【0109】
他の実施形態によると、デバイスは、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に含まれる、またはそれと重なる伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する一次振動を提供するために、制御ユニットが、1つのみのアクチュエータを含む少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成される。
【0110】
いくつかの実施形態において、伝達周波数帯域は、その上限周波数と下限周波数との間で、少なくとも10Hz、または少なくとも20Hz、または少なくとも40Hz、または少なくとも100Hz、または少なくとも150Hz、または少なくとも200HZ、または少なくとも250Hz、または少なくとも300Hz、または少なくとも350Hz、または少なくとも400Hz、または少なくとも450Hz、または少なくとも500Hzに広がってよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、伝達周波数帯域は、その上限周波数と下限周波数との間で、500Hz未満、または450Hz未満、または400Hz未満、または350Hz未満、または300Hz未満、または250Hz未満、または200Hz未満、または150Hz未満、または100Hz未満、または40Hz未満、または20Hz未満、または15Hz未満、または10Hz未満に広がってよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、伝達周波数帯域は、少なくとも15Hz~80Hz、または少なくとも15Hz~200Hz、または少なくとも30~100Hz、または少なくとも80Hz~250Hz、または少なくとも200Hz~500Hz、または少なくとも15~500Hzに広がってよい。
【0113】
図6Aは、所与のバースト中、いくつかの別個の周期副振動の和である一次振動の例を示し、副振動のいくつかは、各々が別個の一次周波数を有し、いくつかの単一一次周波数は、動作可能周波数範囲内に含まれ、伝達周波数帯域に広がっている。この例において、一次振動は3つの副振動の和であり、各副振動は余弦振動であるので、一次振動は、以下の時間関数、
PV(t)=A×cos(2×π×f1×t+φ)+A×cos(2×π×f2×t+φ)+A×cos(2×π×f3×t+φ)
の下で書き表すことができ、式中、たとえば、
f1=100Hz、
f2=500Hz、
およびf3=900Hz
である。
【0114】
この例において、各副振動の振幅Aは等しいが、異なる副振動に関して異なる振幅が可能であり得る。また、この例において、副振動は同じ位相を有するが、異なる副振動に関して異なる位相が可能であり得る。この例において、副振動は同期的に発生する。この例において、図6Aに示す一次振動は、図6Aに示すような形状を有する制御信号によって制御される1つのアクチュエータによって提供されると考えられる。ただし、上述したように異なる単一の一次周波数を有する一次振動を各々が提供するいくつかのアクチュエータを有するデバイスは、実際、デバイス全体の観点から、同様の周波数コンテンツを有するグローバルデバイス一次振動として理解される一次振動を提供する。留意すべき点として、図6Aは、たとえば1秒のバースト期間を有する一次振動の一部のみを示す。
【0115】
図6Bは、そのような一次振動が、3つの副振動の各々に対応する3つの周波数に全てのエネルギが集中するエネルギスペクトル密度を有することを示す。図6Cは、それら3つの周波数の各々に関して、この例では1秒のバースト期間を有し得るバースト中、パワーが一定を保つことを示す。
【0116】
図7Aは、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲に含まれる伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する一次振動の他の例を示す。いくつかの別個の時間間隔[ti;ti+1]の各々におけるこの一次振動は、単一の一次周波数fiを有する周期振動Pvi(t)であり、いくつかの単一一次周波数は、2つの連続した時間間隔の間で異なっており、動作可能周波数範囲内に含まれ、伝達周波数帯域に広がる。そのような所与の間隔中、周期振動は、たとえば、
Pvi(t)=A×cos(2×π×fi×t+φ)
の形式であってよい。
【0117】
例において、所与のバースト内に3つのそのような連続した時間間隔が存在し、各々が所与の一次周波数、
f1=50Hz、
f2=250Hz、
およびf3=500Hz
に対応する。
【0118】
この例において、各周期振動Pvi(t)の振幅は等しいが、異なる時間間隔に関して異なる振幅が可能であり得る。また、この例において、異なる時間間隔に関する周期振動Pvi(t)は同じ位相を有するが、異なる時間間隔に関して異なる位相が可能であり得る。この例において、図7Aに示す一次振動は、図7Aに示すような形状を有する制御信号によって制御される1つのアクチュエータによって提供されると考えられる。ただし、上述したように所与のバースト中の様々な時間間隔の1または複数の間に各々が周期振動Pvi(t)を提供するいくつかのアクチュエータを有するデバイスは、実際、デバイス全体の観点から、バーストの期間にわたり同様の周波数コンテンツを有するグローバルデバイス一次振動として理解される一次振動を提供する。
【0119】
図7Bは、そのような一次振動が、3つの周期振動Pvi(t)の各々に対応する3つの周波数に全てのエネルギが集中するエネルギスペクトル密度を有することを示す。図7Cは、それら3つの周波数の各々に関して、一次振動のパワーが時間間隔の各々における時間にわたり一定であり、異なる間隔に関する時間にわたり一定でもあるが、パワーは、経時的に段階的に変化する周波数に起因してよく、各段階変化は、上記時間間隔の1つの終わりまたは始まりに対応する。時間間隔[ti;ti+1]は、この例において等しい期間であるが、異なる期間を示してもよい。図7Aおよび図7Cは、たとえば1.5秒のバースト期間を有する一次振動を示す。
【0120】
図8Aは、所与の時間間隔中、伝達周波数帯域に広がる周波数を有する可変周波数を有するスイープ振動である一次振動の例を示す。そのような種類の信号は、場合によっては、チャープ信号と呼ばれる。示される例において、時間間隔はバーストであるが、これは、バーストの期間よりも小さく、バースト内に含まれる時間間隔であってもよい。一般に、スイープ振動は、この例において瞬時周波数であると理解される、所与の時間間隔中、時間の関数として、たとえば時間の連続関数として変化する周波数を有してよい。示される例において、ここではバーストに対応する所与の時間間隔中、一次振動の振幅は、以下の時間関数、
PV(t)=A×sin(2×π×F(t)+φ)
と書き表すことができ、
A:振動振幅、
t:時間、
φ:振動位相
である。
【0121】
そのような関数において、瞬時周波数f(t)は、関数F(t)の時間微分値F’(t)と関連付けられ、より正確には、この例においてf(t)=(1/2×π)×F’(t)と関連付けられるものとして定義され得る。
【0122】
この例において、スイープ信号は、線形スイープ信号、または線形チャープであり、ここで瞬時周波数f(t)は、f(t)=f0+ktと書き表され得る時間の線形可変関数である。
k=(f1-f0)/Tiが選択されてよく、式中、
Tiは、時間間隔の期間であり、
f0は、時間間隔の始まりにおける瞬時周波数であり、
f1は、時間間隔の終わりにおける瞬時周波数である。
【0123】
そのような例において、F(t)は、
F(t)=k/2t2+f0t
の型である。
【0124】
そのようなスイープ振動において、伝達周波数帯域は、時間間隔の始まりにおける瞬時周波数f0から始まり、時間間隔の終わりにおける瞬時周波数f1までの周波数の帯域である。
【0125】
図8Bは、5Hzの開始周波数f0から1000Hzの終了周波数f1までの範囲に及ぶ伝達周波数帯域を有するそのようなスイープ振動(またはチャープ信号)のエネルギスペクトル密度を示す。グラフ中、開始および終了周波数の周囲の振動は、そのような振動信号に本質的に存在する高調波の影響に対応する。図8Cは、この線形スイープ振動の例において、一次振動のパワーは、時間にわたり均等に分布するが、パワーは経時的に、ここでは直線的に変化する周波数に起因し得ることを示す。留意すべき点として、図8Aは、図8Cに示すように、たとえば2秒のバースト期間を有する一次振動の一部のみを示す。
【0126】
図9Aは、スイープ周波数を有する前述の例に関して説明したような時間関数にハミング窓が適用される変形例を示す。したがって、一次振動の最大振幅は、バーストの期間であってよい所与の時間間隔中、経時的に変化する。例において、振動は、釣鐘形状である。図9Bは、周波数領域において、バースト中の一次振動のエネルギもまた、中央周波数(この例では500Hz)において最大値を有する釣鐘形の変化で変化することを示す。図9Cは、一次振動のパワーが経時的に変化すること、および、パワーは経時的に、ここでは直線的に変化する周波数に起因し得ることを示す。図9Aおよび図9Cは、たとえば2秒のバースト期間を有する一次振動を示す。
【0127】
図10図11、および図12は、図8Cの例の更なる変形例を示し、ここで一次振動は、可変周波数を有するスイープ振動を有する。時間の線形関数として変動する周波数を有するのではなく、図8A~8Cの例におけるように、周波数変動は、図10の例における時間の二次凹関数、図11の例における時間の二次凸関数、または図12の例における時間の関数としての指数関数型変化を辿り得る。この後者の例において、スイープ振動は、
f(t)=f0kt、かつ
k=(f1/f0)(1/Ti)、
F(t)=f0[(kt)-1]/In(k)
である型の指数関数可変瞬時周波数f(t)を有してよい。
【0128】
図13Aに示す例は、スイープ振動を有するために変動周波数を有する一次振動の例であるが、ここでは、任意または非任意で、ここでは白色雑音関数である雑音関数が追加される。図13Bは、白色雑音信号が追加される、5Hzの開始周波数f0から1000Hzの終了周波数f1までの範囲に及ぶ伝達周波数帯域を有するそのようなベーススイープ振動(またはチャープ信号)のエネルギスペクトル密度を示す。図13Bのグラフにおいて、振動は主に雑音の影響に対応するが、そのような振動信号に本質的に存在する高調波の影響にも対応する。図13Bは、エネルギレベルが、ベーススイープ振動の開始周波数から終了周波数までの範囲におよび周波数帯域内で優勢であることを示す。ただし、図13Bは、振動の雑音部分が、1000Hzを超える周波数におけるエネルギにも寄与することも示す。ただし、そのような1000Hzを超える周波数のエネルギは、対応する波が被験者の体内で遠くまで伝搬し得ないことが知られているため、作用がないと見なされる。そのような1000Hzを超える周波数のエネルギは、皮膚表面または皮膚表面から10ミリメートル未満の深さでしか目立った影響を与えることができない。図13Cは、この白色雑音が重畳された線形スイープ振動の例において、一次振動のパワーは時間にわたり均等に分布するが、パワーは、各時点において、経時的に、ここでは直線的に変動する瞬時周波数に主に起因し得ることを示す。留意すべき点として、図13Aは、図13Cに示すようにたとえば2秒のバースト期間を有し得る一次振動の一部のみを示す。
【0129】
デバイスおよび方法は、上述した周波数コンテンツの組み合わせを含む、他の周波数コンテンツを更に有する一次振動を実行し得る。
【0130】
コンタクトパッドと接触している身体の表面組織の最大変位に対応する一次振動の振幅は、1マイクロメートル~1000マイクロメートル、好適には10マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲内に含まれ得る。
【0131】
上述の一次振動を用いると、せん断波が被験者の体内で生成され、関心体内解剖学的部位へ伝搬し、上記体内解剖学的部位において、5マイクロメートルより大きな、好適には10マイクロメートルより大きな、更に好適には50マイクロメートルより大きな、また更に好適には100マイクロメートルより大きな、また更に好適には200マイクロメートルより大きな、最も好適には500マイクロメートルより大きな振幅を有し得ることを実験が示している。
【0132】
いくつかの実施形態において、治療は、1バーストを含んでよい。いくつかの実施形態において、1バーストは、治療時間に等しいバースト期間を有する。いくつかの実施形態において、バースト期間は、0.5秒~60秒であってよい。いくつかの実施形態において、バースト期間は、1秒~10秒であってよい。
【0133】
いくつかの実施形態において、治療期間は、1分~300分であってよい。いくつかの実施形態において、治療期間は、5分~20分であってよい。いくつかの実施形態において、治療は、1つのバースト列を備えてよい。いくつかの実施形態において、治療は、少なくとも2つのバースト列を備える、いくつかのバースト列を備えてよい。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのバースト列は、直接連続するか、またはラプス期間によって分離される。
【0134】
使用法
【0135】
他の態様において、本教示は、本教示のデバイスの使用方法、より一般には、そのようなデバイスを用いて、または異なるデバイスを用いて実行され得る治療方法に関する。いくつかの実施形態において、方法は、呼吸関連睡眠障害を患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、上気道、気管、肺、または横隔膜における呼吸不全を患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、慢性肺疾患、睡眠障害、ALS、COPD、嚢胞性繊維症、神経筋疾患、喘息、肥満、いびき、2型糖尿病、またはうっ血性心不全の1または複数を患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、いびきを患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、OSAを患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、UARSを患う被験者を治療することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、OHSを患う被験者を治療することを含む。
【0136】
上記使用法の他に、本教示は、他の多様な応用(たとえば、左心房駆出率に関する心不全と肺との任意の関連、灌流および肺拡散に関する任意の関連、または一般に、せん断波によって共振し、または刺激され得る組織である任意の種類の筋肉)を有し得る。当業者は、実質および主旨において本教示から逸脱することなく、提案された技術を様々な応用で用いることができる。また、これらの応用は全て、本教示の範囲内である。
【0137】
いくつかの実施形態において、方法は、一次振動を提供することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、被験者の体内で、少なくとも第1の体内解剖学的部位を含む体内解剖学的部位に、またはそこへ至るまでせん断波を生成するという観点から、少なくとも第1の体外解剖学的部位を含む体外解剖学的部位へ一次振動を付与することを含む。
【0138】
後述する実験によって示されているように、方法は、せん断波に応答して被験者における生理的変化を誘発する。生理的変化は、治療すべき不調の軽減を含む。一般に、呼吸関連睡眠障害の例において、生理的変化は、
呼吸気流量、
血中酸素飽和度、
血中炭酸ガス分圧(PCO2)、
呼吸速度、
心拍数、
1回換気量
の少なくとも1つの改善を含む。
【0139】
後述する実験から明らかであるように、驚くべきことに、任意の一次振動の提供が停止した後の残留期間も生理的変化は保たれることが示された。
【0140】
上述したように、方法は、一次振動が、5Hz~1000Hzの範囲内に含まれる動作可能周波数範囲内の1または複数の周波数、または動作可能周波数範囲内で変化する周波数を有する時、最も効果的であることが証明されている。いくつかの例において、動作可能周波数範囲は、15Hz~200Hzの範囲内に含まれる。
【0141】
したがって、方法は、デバイスに関連して上記で説明および論述した様々な周波数コンテンツのいずれかを有する一次振動を提供することを伴う。特に、上述したように、一次振動は、方法のいくつかの実施形態において、動作可能周波数範囲に含まれる、または動作可能周波数範囲と重なる伝達周波数帯域に広がる周波数コンテンツを有する。
【0142】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の体外解剖学的部位の1つの位置に一次振動を付与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第1の体外解剖学的部位のいくつかの位置に、たとえば各々が第1の体外部位の上記いくつかの位置の1つに当てられたいくつかのアクチュエータを有するデバイスの使用によって一次振動を付与することを含む。
【0143】
たとえば方法は、少なくとも1つのアクチュエータと、被験者の第1の体外解剖学的部位の第1の位置との外部接触によって、少なくとも1バーストの少なくとも1つの第1の一次振動を被験者へ提供し、同時に、少なくとも1つのアクチュエータと、被験者の上記第1の体外解剖学的部位の第2の位置との外部接触によって、少なくとも1バーストの少なくとも1つの第2の一次振動を被験者へ提供してよい。そのような例において、第1および第2の一次振動は、位相シフトを示し得る。そのような位相シフトは、いくつかのアクチュエータを用いて、異なるアクチュエータによって異なるコンタクトパッドへ加えられる振動性運動の間に時間遅延を適用することによって実現され得る。本教示を任意の特定の仮説または理論に限定することなく、そのような位相シフトは、所与の第1の体内解剖学的部位に一次振動のエネルギを収束させ得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、方法は、被験者の体内で、少なくとも第2の体内解剖学的部位においてせん断波を生成するという観点から、第1の解剖学的部位とは異なる第2の体外解剖学的部位に一次振動を付与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第2の体外解剖学的部位の1つの位置に一次振動を付与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第2の体外解剖学的部位のいくつかの位置において、たとえば各々が第2の体外解剖学的部位の上記いくつかの位置の1つに当てられたいくつかのアクチュエータを有するデバイスの使用によって、一次振動を付与することを含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、一次振動が付与され得る体外解剖学的部位は、頭、鼻、口、首、胸部、背部、胸壁、および腹部から成るグループの1または複数である。
【0146】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の体内解剖学的部位および/または第2の体内解剖学的部位を含む体内解剖学的部位にせん断波を収束させることを含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、せん断波が生成される、またはせん断波が伝搬する体内解剖学的部位は、
軟口蓋、
咀嚼筋、
咽頭筋、
喉頭筋、
気管、
舌、
上気道、
喉頭蓋、
肺胞、
横隔膜、
たとえば
横隔神経、
肋間神経、
迷走神経、
弛緩神経、
舌下神経
などの神経、
肺、
静脈、
動脈(頸動脈など)
血管系、
心臓系
から成るグループに含まれ得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、第2の体内解剖学的部位は、第1の体内解剖学的部位と実質的に同様である。いくつかの実施形態において、第2の体内解剖学的部位は、第1の体内解剖学的部位と異なる。
【0149】
いくつかの実施形態において、本教示に係る方法は、第1の振動を提供することを含み、ここで、第1の振動の提供が手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで開始される。いくつかの実施形態において、第1の振動の提供は、たとえば被験者/患者またはたとえば医師などの他の人間であるシステムのユーザによって手動で作動され得るスイッチからの、たとえば電気/電子信号である入力の受信時、制御ユニットによって開始される。いくつかの実施形態において、第1の振動の提供は、デバイスの1または複数のアクチュエータを自動的にオンにする制御ユニットによって開始される。いくつかの実施形態において、方法は、第1の測定値が基準値と異なる場合に第1の振動を提供することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第1の測定値が基準値と異なっている第1の期間の後、第1の振動を提供することを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は基準値よりも低い。いくつかの実施形態において、第1の測定値は基準値よりも高い。いくつかの実施形態において、第1の期間は、任意の種類の呼吸異常発症(いびきまたは流量制限または低呼吸、または無呼吸または不飽和化または呼吸数または心拍数または動脈血炭酸ガス分圧の上昇・・・)が検出された後の数秒間である。
【0150】
いくつかの実施形態において、第1の測定値は、酸素飽和度またはSOを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、血中酸素飽和度を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、SaOであり、またはSaOを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、SvOであり、またはSvOを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、StOであり、またはStOを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、SpOであり、またはSpOを含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、血中炭酸ガス分圧(PCO)であり、または血中炭酸ガス分圧(PCO)を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、呼吸気流量を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、口鼻熱気流量測定値であり、または口鼻熱気流量測定値を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、鼻圧であり、または鼻圧を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、呼吸速度であり、または呼吸速度を含む。いくつかの実施形態において、第1の測定値は、1回換気量であり、または1回換気量を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の振動を停止することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第1の振動を停止することを含み、ここで、第1の振動は、手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで停止される。いくつかの実施形態において、第1の振動は、たとえば被験者/患者またはたとえば医師などの他の人間であるシステムのユーザによって手動で作動され得るスイッチからの、たとえば電気/電子信号である入力の受信時、制御ユニットによって停止される。いくつかの実施形態において、第1の振動は、1または複数のアクチュエータを自動的にオフにする制御ユニットによって停止される。いくつかの実施形態において、方法は、第2の測定値が基準値と異なる場合、第1の振動を停止することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、第2の測定値が基準値と異なっている第2の期間の後、第1の振動を停止することを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は基準値よりも低い。いくつかの実施形態において、第2の測定値は基準値よりも高い。いくつかの実施形態において、第2の測定値は基準値と同様である。いくつかの実施形態において、第2の期間は、任意の種類の正常な呼吸の発症(いびきまたは流量制限または低呼吸、または無呼吸または不飽和化または呼吸数または心拍数または動脈血炭酸ガス分圧の上昇・・・)が検出された後の約数秒間である。
【0152】
いくつかの実施形態において、第2の測定値は、酸素飽和度またはSOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、血中酸素飽和度を含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、SaOであり、またはSaOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、SvOであり、またはSvOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、StOであり、またはStOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、SpOであり、またはSpOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、血中炭酸ガス分圧またはPCOであり、または血中炭酸ガス分圧またはPCOを含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、呼吸気流量であり、または呼吸気流量を含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、口鼻熱気流量測定値であり、または口鼻熱気流量測定値を含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、鼻圧であり、または鼻圧を含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、呼吸速度であり、または呼吸速度を含む。いくつかの実施形態において、第2の測定値は、1回換気量であり、または1回換気量を含む。
【0153】
いくつかの実施形態において、基準値は、基準酸素飽和度または基準SOであり、または基準酸素飽和度または基準SOを含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準血中酸素飽和度であり、または基準血中酸素飽和度を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準SaOであり、または基準SaOを含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準SvOであり、または基準SvOを含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準StOであり、または基準StOを含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準SpOであり、または基準SpOを含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準血中炭酸ガス分圧(基準PCO)であり、または基準血中炭酸ガス分圧(基準PCO)を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準呼吸気流量であり、または基準呼吸気流量を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準口鼻熱気流量測定値であり、または基準口鼻熱気流量測定値を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準鼻圧であり、または基準鼻圧を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準呼吸速度であり、または基準呼吸速度を含む。いくつかの実施形態において、基準値は、基準1回換気量であり、または基準1回換気量を含む。
【0154】
他の態様において、本教示は、本教示に係るデバイスの使用法を含み、ここで、使用法は、第1の振動を提供することによって特徴付けられ、ここで、第1の振動は、
(i)SOが基準SOよりも低いこと、好適には、
(a)SaOが基準SaOよりも低いこと、
(b)SvOが基準SvOよりも低いこと、
(c)StOが基準StOよりも低いこと、および/または
(d)SpOが基準SpOよりも低いこと、
(ii)PCOが基準PCOよりも高いこと、
(iii)呼吸気流量が基準呼吸気流量よりも低いこと、好適には、口鼻熱気流量測定値が基準口鼻熱気流量よりも低いこと、
(iv)鼻圧が基準鼻圧よりも低いこと、
(v)呼吸速度が基準呼吸速度よりも低いこと、および/または
(vi)1回換気量が基準1回換気量よりも低いこと
の少なくとも1つが発生する第1の期間の後に開始され、第1の期間は、0秒~5分である。
【0155】
他の態様において、本教示は、本教示に係るデバイスの用途を含み、ここで、用途は、以下の条件、
(i)SOが基準SO以上であること、好適には、
(a)SaOが基準SaO以上であること、
(b)SvOが基準SvO以上であること、
(c)StOが基準StO以上であること、および/または
(d)SpOが基準SpO以上であること、
(ii)PCOが基準PCO以下であること、
(iii)呼吸気流量が基準呼吸気流量以上であること、好適には、口鼻熱気流量測定値が基準口鼻熱気流量以上であること、
(iv)鼻圧が基準鼻圧以上であること、
(v)呼吸速度が基準呼吸速度以上であること、および/または
(vi)1回換気量が基準1回換気量以上であること
の少なくとも1つが満たされる第2の期間の後、第1の振動を停止することによって特徴付けられ、第2の期間は、0秒~約5時間である。
【0156】
いくつかの実施形態において、本教示に係るデバイスの用途は、呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約20%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約25%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約30%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約35%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約40%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約45%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約50%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約55%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約60%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約65%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約70%以上の呼吸気流量の改善を含む。いくつかの実施形態において、改善は、約75%以上の呼吸気流量の改善を含む。
【0157】
本教示は、本例および添付図面に関連して更に詳しく論述され得る。ただし、当業者は、例および添付図面が特定の実施形態を例示するように意図されており、本教示が構成または利用され得る唯一の形式を表すことは意図されていないことを理解する。
【0158】
図14は、本教示に係る単純化された方法の例の図である。そのような方法において、ステップ301において本教示のデバイスがオンにされた後、または動作中である時、ステップ302において、被験者の生理的パラメータの測定値が作成される。測定値は、制御ユニットによって受信され、ここで、ステップ304において、測定値は所望の基準値と比較される。測定値が所望の基準値外である場合、制御ユニットは、ステップ306において、アクチュエータがオンであるかオフであるかを決定する。ステップ306においてアクチュエータがオフである場合、制御ユニットは、一次振動を提供する(その結果、被験者の体内でせん断波をもたらす)ためにステップ310においてアクチュエータをオンにし、ステップ302へ戻る。ステップ306においてアクチュエータがオンである場合、制御ユニットは、アクチュエータをオン位置で維持し、ステップ302へ戻る。ステップ304において、測定値が所望の基準値内である場合、制御ユニットは、アクチュエータがオンであるかオフであるかをステップ308において決定する。アクチュエータがオンである場合、制御ユニットは、ステップ312においてアクチュエータをオフにし、ステップ302へ戻る。アクチュエータがオフである場合、制御ユニットは、ステップ312においてアクチュエータをオフ位置で維持し、ステップ302へ戻る。このサイクルは、デバイスが、モニタによってトリガされる制御ユニットによって制御されるように維持する。
【0159】
実験
【0160】
実験1。上気道模擬模型
【0161】
この実験中に使用される、図15および図16に示すようなPVA模型100は、5~10%のポリビニルアルコール(ミズーリ州セントルイス所在のPVA Sigma Aldrich社)の水溶液で作られる。弾性模型を得るために、溶液は、所望の最終弾性に依存して2~5回の凍結および解凍サイクルを経た。模型100は、人間または動物の被験者の上気道を模擬するために、弾性材料の厚い壁104に包囲された内部長手方向通路102を有する管形状である。
【0162】
この実験の目的は、内部長手方向通路102の閉塞を生成するためにPVA模型100を外部拘束下に置き、その後、上述した方法に示すように、模型100に一次振動を付与することによって、せん断波を用いて通路を開放することが可能であると示すことであった。
【0163】
したがって、管状模型100は、気密エンクロージャ106内に載置された。模型の内部長手方向通路の一方の先端は、第1の連結管107によって、エンクロージャの外側にある、肺を模した空気源108に連結された。肺を模した空気源は、息の吸い吐きの模擬が可能であった。
【0164】
模型の内部長手方向通路の他方の先端は、第2の連結管110によって、エンクロージャの外側にある空気流量モニタ112に連結された。出願者である、FORESTASVAGEN 1、43533 MOLNLYCKE、スウェーデン所在のBREAS MEDICAL AB社が販売しているVivo(登録商標)システム(一般にVivo60)が、空気流量モニタとして使用された。したがって、肺を模した空気源108は、エンクロージャ内の大気圧下で、模型の内部長手方向通路102内に基準空気流量の循環をもたらすことができた。
【0165】
その後、内部長手方向通路102内の圧力に影響を及ぼすことなく、エンクロージャ106内で、模型100を包囲する圧力を増加させるために、エンクロージャ内に加圧ガスが注入114された。圧力は、模型100の厚い壁104を虚脱させ、内部長手方向通路102内の利用可能な断面積を制限することにより、内部長手方向通路102内の空気流の閉塞を生じさせる閉塞圧力レベルまで増加された。
【0166】
アクチュエータ12は、厚い壁104の外側壁表面との外部機械的接触状態で、エンクロージャ106内に提供された。実際、2つのアクチュエータ12が、模型100の周囲に径方向に対向して、模型の中心において長手方向に取り付けられた。アクチュエータは、59 Chemin du Vieux Chene、Inovallee、38246 MEYLAN Cedex、フランス所在のCEDRAT TECHNOLOGIES社製のAPAシリーズの圧電アクチュエータであった。アクチュエータを介して、120Hzの一次振動が模型に付与された。
【0167】
模型内のせん断波の伝搬および閉塞領域におけるせん断波の伝搬に起因する全体的な機械的変化は、超音波スキャナ(Verasonics(登録商標)Vantageおよび5MHz超音波プローブ)を用いて監視された。内部長手方向通路102内の空気流量の変動は、空気流量モニタ112を用いて監視された。
【0168】
PVA模型内の虚脱領域は、閉塞圧力レベルの付与の前後の内部長手方向通路102の機械的変動が観測されるように、超音波スキャナを用いて撮像された。超音波画像および測定された空気流量は、模型内にせん断波を生成する一次振動の付与が、PVA模型内の内部長手方向通路102を再開放することが可能であることを示した。
【0169】
制御された環境において得られたこの第1の結果は、純粋な物理モデルにおいて、外部拘束によって虚脱したPVA模型を開放するための本発明の方法に匹敵する方法の効果を論証するものである。留意すべき点として、この純粋な物理実験において、生理学的または生物学的メカニズムは一切役割を果たし得ない。
【0170】
例2。生体内試験
【0171】
この実験における様々な試験において、腹部を上に向けて背中で横たわった豚が提供された。上述したようなデバイスが首領域に当てられ、豚の尾にSPOモニタが提供された。たとえば図1および図2のデバイスなどのデバイスを含む様々なデバイスを用いて、また様々な大きさおよび重さの様々な豚を用いて、様々な試験が行われた。各試験に関して、豚は、いびきおよび/または流量制限および/または低呼吸および/または無呼吸を誘発するような姿勢で載置された。この姿勢は、空気流量制限または閉塞を誘発するために、豚の頭部を軽く傾けさせるものである。いびきおよび/または流量制限および/または低呼吸および/または無呼吸が誘発された後、上述したような方法が適用され、呼吸気流量およびSPOが監視された。
【0172】
図17および図18は、この実験の典型である試験の結果を示す。図18は、経時的に毎分リットル単位で表された被験者の呼吸気流量を示す。図18は、同じ試験中、測定された被験者のSPO2を示す。時間T0から時間T1に及ぶ最初の期間から、まず、誘発された呼吸障害に起因する深刻な不飽和化発症の後、被験者が自発的な再呼吸を行うことができるかが検証された。この最初の期間中、従来の換気処置が4回適用および停止された。図17および図18から分かるように、換気処置の適用は、当然、高レベルの呼吸気流量および90%を超えるSPO2レベルをもたらした。しかし、換気処置が中断される度、呼吸気流量は毎分50リットル未満まで低下し、SPO2もまた、60%未満を含む75%未満まで急速に低下した。したがって、時間T1から時間T2に及ぶ第2の期間中、本教示に係るデバイスを用いて、本教示に係る方法が適用された。この特定の試験において、いくつかのアクチュエータを備える図2に係るデバイスを用いて一次振動が付与された。一次振動は同期的であった。それらは、図8Aの例に示すようにバースト中の周波数の連続的変化を有する40~200Hzの範囲に広がるスイープ周波数を有する、2.5秒のバースト期間を有するバースト列を備えるものであった。バースト列期間に対応する、時間T1から時間T2に及ぶ治療期間は、8分であった。図17は、呼吸気流量における一次振動の付与の第1のほぼ即時的な効果を示し、呼吸気流量は、約2~3分後にほぼ安定したレベルに到達するように増加し続けている。並行して、SPO2測定値は、治療の開始に対応する時間T1における70%未満の値から、約5分間の治療後に90%を超え、一次振動の付与の終了に対応する第2の期間の終点T2において約94%に到達する値への安定した増加を示した。留意すべき点として、治療中、すなわち時間T1とT2との間、呼吸補助は提供されず、特に、CPAP治療は適用されなかった。
【0173】
最も重要な点として、図17および図18に明示されるように、本教示に係る方法およびデバイスによって誘発された生理的変化は残留性を有し、すなわち、生理的変化は、治療後、したがって振動が停止した後、特定の期間にわたり維持される。この例において、残留効果は、時間T3までの測定の終了まで、したがって44分の期間、維持された。時間T2から時間T3に及ぶこの試験の第3の期間中、治療の終了後、呼吸気流量は、時間T2における治療の終了時に得られた値と少なくとも等しい、またはその値を超える値に維持された。同様に、SPO2レベルは、この試験の第3の期間中、約85%を超え、最高では90%を超えて高く保たれた。他の試験は、期間は様々であるが、多くの場合、一次振動の付与の期間を大幅に超える期間で、同じ残留効果を示した。
【0174】
本教示は、特定の実施形態およびそれらの応用を用いて説明されたが、それらに対し、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって数多くの修正および変形例が生み出され得る。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18