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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/30 20060101AFI20230915BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20230915BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230915BHJP
   B60L 50/53 20190101ALI20230915BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20230915BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20230915BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230915BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B60L9/30
B60L15/20 J
B60L9/18 J
B60L50/53
B60L50/75
B60L58/40
E02F9/20 M
F04B49/06 321A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022044918
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】牧村 雄基
(72)【発明者】
【氏名】谷垣 絢太
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049668(WO,A1)
【文献】特開2013-062890(JP,A)
【文献】特開2014-204633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 9/30
B60L 15/20
B60L 9/18
B60L 50/53
B60L 50/75
B60L 58/40
E02F 9/20
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源に接続されたインバータと、該インバータを介して前記複数の電源から供給される電力によって駆動する電気モータと、該電気モータによって駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプの油圧によって作動するアクチュエータと、前記インバータを介して前記電気モータに供給される電力を制御する制御装置と、前記インバータに接続された蓄電装置または燃料電池システムと、を備えた電動式建設機械であって、
前記複数の電源は、商用電源と、前記蓄電装置または前記燃料電池システムと、を含み、
前記制御装置は、前記電気モータの要求回転数または前記油圧ポンプの駆動トルクと前記複数の電源の各々の供給可能電力を加算した最大供給電力とに基づいて前記電気モータの回転数指令および許容トルクを設定または算出し、
前記インバータは、前記回転数指令と前記電気モータの回転数とに基づいて算出した前記電気モータの演算トルクが前記許容トルクを超える場合は前記許容トルクを、前記演算トルクが前記許容トルクを超えない場合は前記演算トルクを、それぞれトルク指令に設定し、前記トルク指令に応じたトルクを発生可能な電力を前記電気モータへ供給することを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
前記油圧ポンプは、可変容量ポンプであり、
前記制御装置は、前記電気モータの前記要求回転数を前記回転数指令に設定し、前記電気モータの前記許容トルクを、前記最大供給電力に効率値を乗じた値を前記回転数指令で除して算出したトルクに設定することを特徴とする請求項1に記載の電動式建設機械。
【請求項3】
前記油圧ポンプは、固定容量ポンプであり、
前記制御装置は、前記最大供給電力に効率値を乗じた値を前記油圧ポンプの駆動に必要な前記駆動トルクで除して前記電気モータの前記回転数指令を算出し、前記油圧ポンプの前記駆動トルクを前記電気モータの前記許容トルクに設定することを特徴とする請求項1に記載の電動式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電動式作業機械の油圧駆動装置が知られている。特許文献1に記載された電動式作業機械の油圧駆動装置は、電動機と、油圧ポンプと、複数のアクチュエータと、制御弁装置と、コントローラとを備えている(第0019段落、請求項1等)。
【0003】
上記油圧ポンプは、上記電動機によって駆動される。上記複数のアクチュエータは、上記油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される。上記制御弁装置は、上記油圧ポンプから吐出された圧油を上記複数のアクチュエータに分配供給する。上記コントローラは、上記電動機の回転数を制御することにより上記油圧ポンプの吐出流量を制御する。
【0004】
この従来の油圧駆動装置において、上記コントローラは、上記油圧ポンプが消費している油圧動力を算出し、この油圧動力の大きさと予め設定した上記電動機が消費可能な最大許容動力とに基づいて上記電動機に許容される最大角加速度を算出する。さらに、上記コントローラは、上記最大角加速度を超えないように上記電動機の角加速度を制限させて、上記電動機の回転数を制御する。
【0005】
この従来の油圧駆動装置によれば、電動機が駆動する油圧ポンプの消費動力が油圧ポンプの負荷圧などが変化することで変動しても、それに応じて電動機の角加速度が制限されるので、電動機が消費する動力は、予め定められた最大許容動力の範囲内に確実に制限される(特許文献1、第0022段落)。また、油圧ポンプの消費動力が小さく、電動機の回転数上昇に動力を振り向けることができる場合には、電動機の角加速度を大きく設定できるため、電動機の回転数が速やかに増加し、複数のアクチュエータを良好な応答性で駆動することができる(同、第0023段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2020/049668号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の電動式作業機械の油圧駆動装置は、電動機の回転数を制御するためのインバータと、インバータに直流電力を供給するバッテリと、インバータに接続されたAC/DC変換器とを備えている。AC/DC変換器は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に変換してインバータに供給する(特許文献1、第0035)。この商用電源は、電動式作業機械のユーザが準備することになるが、ユーザの契約電力量や電力変換設備の容量などの制約から給電能力に限界があり、ユーザが商用電源の給電電力を変更可能になっている場合がある。
【0008】
そのため、商用電源から供給される電力によって電動機が発生するトルクでは、油圧ポンプの最大負荷を賄えない場合がある。このような場合、バッテリから電動機へ電力を供給することが可能である。しかし、何らかの異常によりバッテリから電動機へ供給可能な電力が減少すると、バッテリから電動機へ油圧ポンプの駆動に必要なトルクを発生させるための電力を供給できなくなり、電動機が失速(ストール)するおそれがある。
【0009】
本発明は、各々の電源の供給可能電力が変動して、複数の電源による最大供給電力が変動しても、油圧ポンプを駆動する電動機の失速を回避し、油圧ポンプが発生する油圧で作動するアクチュエータの意図しない停止を回避可能な電動式建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源に接続されたインバータと、該インバータを介して前記複数の電源から供給される電力によって駆動する電気モータと、該電気モータによって駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプの油圧によって作動するアクチュエータと、前記インバータを介して前記電気モータに供給される電力を制御する制御装置と、を備えた電動油圧ショベルであって、前記制御装置は、前記電気モータの要求回転数または前記油圧ポンプの駆動トルクと前記複数の電源の最大供給電力とに基づいて前記電気モータの回転数指令および許容トルクを設定または算出し、前記インバータは、前記回転数指令と前記電気モータの回転数との差分にゲインを乗じて算出した前記電気モータの演算トルクが前記許容トルクを超える場合は前記許容トルクを、前記演算トルクが前記許容トルクを超えない場合は前記演算トルクを、それぞれトルク指令に設定し、トルク指令に応じたトルクを発生可能な電力を前記電気モータへ供給することを特徴とする電動油圧ショベルである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の上記一態様によれば、各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源からの最大供給電力が変動しても、油圧ポンプを駆動する電気モータの失速を回避し、油圧ポンプが発生する油圧で作動するアクチュエータの意図しない停止を回避可能な電動油圧ショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電動作業機械の実施形態1を示す側面図。
図2図1の電動作業機械の概略的な構成を示すブロック図。
図3図2の電動作業機械の各構成間の信号の入出力関係を示すブロック図。
図4図3の電動作業機械の制御装置の動作を示すフロー図。
図5図3の電動作業機械のインバータの動作を示すフロー図。
図6】本開示に係る電動作業機械の実施形態2の図4に相当するフロー図。
図7】本開示に係る電動作業機械の実施形態3の図2に相当するブロック図。
図8】本開示に係る電動作業機械の実施形態3の図3に相当するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示に係る電動作業機械の実施形態を説明する。
【0014】
[実施形態1]
図1は、本開示に係る電動作業機械としての電動油圧ショベルの実施形態1を示す側面図である。図2は、図1の電動油圧ショベルの概略的な構成を示すブロック図である。図3は、図2の電動油圧ショベルの各構成間の信号の入出力関係を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態の電動油圧ショベル100は、たとえば、走行体101と、旋回体102と、作業機110と、を備えている。また、電動油圧ショベル100は、たとえば、インバータ103と、電気モータ104と、油圧ポンプ105と、アクチュエータ120と、制御装置130と、を備えている。また、電動油圧ショベル100は、たとえば、受電装置106と、コンバータ107と、蓄電装置140とを備えている。さらに、電動油圧ショベル100は、たとえば、ヒューマン・マシン・インタフェース(HMI)150を備えている。
【0016】
走行体101は、たとえば、左右の履帯を備えている。走行体101は、たとえば、後述する左右の油圧モータ121によって左右の履帯をそれぞれ回転させることで、電動油圧ショベル100を任意の方向へ走行させる。旋回体102は、走行体101の上に取り付けられ、後述する油圧モータ122によって走行体101に対して旋回可能に設けられている。
【0017】
作業機110は、たとえば、ブーム111と、アーム112と、バケット113とを備えている。ブーム111は、たとえば、旋回体102の前部の幅方向中央部に取り付けられ、後述するブームシリンダ123を伸縮させることで、旋回体102に対して上下に回動可能に設けられている。アーム112は、たとえば、アーム112の先端部に取り付けられ、後述するアームシリンダ124を伸縮させることで、ブーム111に対して上下に回動可能に設けられている。バケット113は、たとえば、アーム112の先端部に取り付けられ、後述するバケットシリンダ125を伸縮させることで、アーム112に対して上下に回動可能に設けられている。
【0018】
アクチュエータ120は、たとえば、走行体101の左右の履帯を回転させる走行用の左右の油圧モータ121と、旋回体102を旋回させる旋回用の油圧モータ122と、作業機110を動作させるブームシリンダ123、アームシリンダ124、およびバケットシリンダ125を含む。
【0019】
コントロールバルブ126は、たとえば、油圧ポンプ105から圧送される作動油を、走行用の油圧モータ121、旋回用の油圧モータ122、ブームシリンダ123、アームシリンダ124、およびバケットシリンダ125に分配する。油圧ポンプ105およびパイロットポンプ127は、たとえば、後述する電動機としての電気モータ104によって駆動される。パイロットポンプ127は、パイロット油圧操作方式のコントロールバルブ126に油圧であるパイロット圧を供給することで、コントロールバルブ126を駆動する。
【0020】
インバータ103は、各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源に接続されている。より具体的には、図2に示す例において、インバータ103は、コンバータ107を介して第1の電源である商用電源CPに接続されるとともに、第2の電源である蓄電装置140にも接続されている。電動油圧ショベル100のユーザが用意する商用電源CPは種々多様であり、仕様によって供給可能電力が変動する。また、蓄電装置140は、たとえば、蓄電装置140を構成する複数の電池パック141A,141B,141Cのいずれかに故障が発生した場合などに、供給可能電力が変動する。
【0021】
インバータ103は、たとえば、インバータ回路を有し、蓄電装置140から供給される直流電力を3相交流電力に変換して電気モータ104へ供給する。インバータ103は、たとえば、図3に示すように、モータ制御部103aと、電流制御部103bとを有している。インバータ103は、たとえば、一つ以上のマイクロコントローラを有し、マイクロコントローラがメモリに記憶されたプログラムを中央処理装置(CPU)によって実行することで、モータ制御部103aおよび電流制御部103bの機能が実現される。
【0022】
モータ制御部103aは、たとえば、電気モータ104に設けられたモータ回転数センサ104aから、電気モータ104の回転数Nmを取得して制御装置130へ出力する。また、モータ制御部103aは、たとえば、インバータ103と電気モータ104の状態を監視して異常を検知し、インバータ103と電気モータ104の異常状態に関する信号Errを制御装置130へ出力する。
【0023】
また、モータ制御部103aは、たとえば、制御装置130から入力される電気モータ104の回転数指令Ncと電気モータ104の許容トルクTmaxとに基づいて、電気モータ104のトルク指令Tcを電流制御部103bへ出力する。電流制御部103bは、たとえば、モータ制御部103aから入力された電気モータ104のトルク指令Tcに相当するトルクを電気モータ104が出力するように、インバータ回路の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を制御して、電気モータ104の回転数を制御する。
【0024】
電気モータ104は、たとえば、インバータ103から3相交流電流が供給されることで回転して、油圧ポンプ105およびパイロットポンプ127を駆動する。すなわち、本実施形態の電動油圧ショベル100は、電気モータ104によって油圧ポンプ105を駆動させることで、走行体101による走行動作、旋回体102による旋回動作、および作業機110による掘削動作を行う電動式の油圧ショベルである。また、電気モータ104は、電気モータ104の回転数Nmを検出するモータ回転数センサ104aを有している。モータ回転数センサ104aは、インバータ103に情報通信可能に接続され、インバータ103へ電気モータ104の回転数Nmを出力する。
【0025】
油圧ポンプ105は、前述のように、電気モータ104によって駆動され、アクチュエータ120へ油圧を供給する。油圧ポンプ105は、たとえば、1回転あたりの吐出量を変更することができる可変容量ポンプである。より具体的には、油圧ポンプ105は、たとえば、斜板の傾転角を変化させることで1回転あたりの吐出量を変更することが可能な斜板式可変容量ポンプである。油圧ポンプ105は、たとえば、制御装置130に情報通信可能に接続され、制御装置130から入力される傾転角指令θcに基づいて、斜板の傾転角を制御することで、油圧出力を制御する。そしてこの油圧ポンプ105は、この斜板の傾転角の変化により回転駆動するためのトルク(吸収トルク)が変化し、1回転あたりの吐出量が大きくなるほど吸収トルクが増加する。
【0026】
アクチュエータ120は、油圧ポンプ105の油圧によって作動する。アクチュエータ120は、たとえば、走行体101を駆動させる走行用の油圧モータ121と、旋回体102を走行体101に対して旋回させる旋回用の油圧モータ122とを含む。また、アクチュエータ120は、たとえば、作業機110のブーム111を上下に回動させるブームシリンダ123と、作業機110のアーム112を上下に回動させるアームシリンダ124と、作業機110のバケット113を上下に回動させるバケットシリンダ125とを含む。
【0027】
また、アクチュエータ120は、たとえば、コントロールバルブ126を含む。コントロールバルブ126は、油圧ポンプ105によって生成された油圧を、走行用の油圧モータ121、旋回用の油圧モータ122、ブームシリンダ123、アームシリンダ124、およびバケットシリンダ125へ分配する。これにより、アクチュエータ120は、走行装置101、旋回体102、および作業機110を作動させる。
【0028】
制御装置130は、インバータ103を介して電気モータ104に供給される電力を制御する。制御装置130は、たとえば、図2に示すように、インバータ103、油圧ポンプ105、受電装置106、コンバータ107、蓄電装置140、およびHMI150に、情報通信可能に接続されている。制御装置130は、たとえば、図3に示すように、ポンプ回転数算出部131と、充電指令演算部132と、モータ指令演算部133と、ポンプ制御部134とを有している。
【0029】
制御装置130は、たとえば、一つ以上のマイクロコントローラを有している。図3に示す制御装置130の各部は、たとえば、制御装置130を構成するマイクロコントローラのCPUによってメモリに記憶されたプログラムを実行することで実現される制御装置130の各機能を表している。制御装置130の各部の動作については後述する。
【0030】
受電装置106は、たとえば、図1および図2に示すように、電源ケーブルSCを介して商用電源CPに接続される。受電装置106は、たとえば、商用電源CPから供給される交流電力を検出して、商用電源CPの電圧の正常性を確認する機能を有している。受電装置106は、商用電源CPから供給される交流電力の電圧異常を検出すると、電力供給経路を遮断してコンバータ107を保護する。
【0031】
上記の受電装置106の各機能は、たとえば、受電装置106を構成するスイッチング回路、電圧センサ、電流センサ、および制御回路によって実現される。受電装置106は、たとえば、制御装置130に情報通信可能に接続され、交流電力の電圧の正常または異常を含む商用電源CPの電力供給状態PSSを、制御装置130へ出力する。
【0032】
コンバータ107は、受電装置106から供給される交流電力を直流電力に変換してインバータ103または蓄電装置140へ供給する。コンバータ107は、たとえば、コンバータ回路と、マイクロコントローラを有している。コンバータ107のマイクロコントローラは、制御装置130に情報通信可能に接続される。コンバータ107のマイクロコントローラは、制御装置130から入力される充電指令BCCに基づいて、コンバータ回路を制御する。
【0033】
コンバータ回路は、たとえば、電流を制御しながら蓄電装置140を充電する電流制御充電機能と、電圧を制御しながら蓄電装置140を充電する電圧制御充電機能とを有している。コンバータ107のマイクロコントローラは、たとえば、コンバータ107の状態の監視と異常検知を行い、コンバータ107の正常または異常を含むコンバータ状態CNVSを制御装置130へ出力する。
【0034】
蓄電装置140は、たとえば、電池パック141と、遮断装置142と、バッテリ・マネジメント・ユニット(BMU)143と、マスタ・バッテリ・マネジメント・ユニット(MBMU)144と、を有している。図3に示す例において、蓄電装置140は、複数の電池パック141A,141B,141Cを有している。また、各々の電池パック141A,141B,141Cには、遮断装置142A,142B,142Cと、BMU143A,143B,143Cとが、それぞれ設けられている。なお、蓄電装置140が備える電池パック141、遮断装置142、およびBMU143の数は、特に限定されない。
【0035】
電池パック141は、たとえば、直列および並列に接続された複数の電池セルと、個々の電池セルの電圧を検出する電圧センサと、一つ以上の電池セルの温度を検出する温度センサと、電池セルに流れる電流を検出する電流センサと、を備えている。電池セルは、特に限定はされないが、たとえば、リチウムイオン二次電池などの二次電池を使用することができる。遮断装置142は、BMU143によって制御され、コンバータ107と電池パック141との間の電力供給経路を遮断または接続する。
【0036】
BMU143は、たとえば、電池パック141、遮断装置142、およびMBMU144に対して情報通信可能に接続される。BMU143は、たとえば、電池パック141の電圧センサ、温度センサ、および電流センサの検出結果を取得して、電池パック141の状態を監視する。また、BMU143は、電池パック141の電圧センサの検出結果と、電流センサの検出結果に基づく電流の積算値とによって、電池パック141の充電状態を算出および記録する。
また、各々のBMU143A,143B,143Cは、各々の電池パック141A,141B,141Cを構成する電池セルの性能仕様と、充電状態と、温度センサの検出結果とに基づいて、各々の電池パック141A,141B,141Cの供給可能電力BPa,BPb,BPcを算出する。また、BMU143は、電池パック141を使用しない場合や、電池パック141の異常を検知した場合に、遮断装置142を制御して、遮断装置142によって電池パック141の電力供給経路を遮断する。
【0037】
各々のBMU143A,143B,143Cは、たとえば、各々の遮断装置142A,142B,142Cによって、各々の電池パック141A,141B,141Cの電力供給経路を遮断した場合、各々の電池パック141A,141B,141Cの供給可能電力BPa,BPb,BPcをゼロに設定する。また、各々のBMU143A,143B,143Cは、たとえば、各々の電池パック141A,141B,141Cの温度センサの検出結果が所定の温度を超えた場合に、各々の電池パック141A,141B,141Cの供給可能電力BPa,BPb,BPcを、通常よりも低下させた所定の電力に制限する。
【0038】
MBMU144は、たとえば、制御装置130と、各々のBMU143A,143B,143Cとに、情報通信可能に接続されている。MBMU144は、各々のBMU143A,143B,143Cとの間で通信を行って、蓄電装置140を統括して監視する。MBMU144は、たとえば、各々のBMU143A,143B,143Cから入力された各々の電池パック141A,141B,141Cの供給可能電力BPa,BPb,BPcの合計であるバッテリ供給可能電力BPmaxを算出して、制御装置130へ出力する。
【0039】
HMI150は、たとえば、表示装置151と、入力装置152と、操作装置153とを含む。表示装置151は、たとえば、液晶表示装置や有機EL表示装置などによって構成され、電動油圧ショベル100のオペレータが搭乗する旋回体102のキャブ102aの室内に設置されている。表示装置151は、電動油圧ショベル100の各種の情報を表示する。
【0040】
入力装置152は、たとえば、表示装置151と一体に設けられたタッチパネルを含む。入力装置152は、たとえば、オペレータによる情報や指令の入力を受け付けて、制御装置130へ出力する。入力装置152によって受け付けるオペレータの情報の入力は、たとえば、商用電源CPの供給可能電力CPSを含む。より詳細には、商用電源CPは、電動油圧ショベル100のユーザが用意するため、商用電源CPの供給可能電力CPSはユーザによって変動する。そのため、表示装置151は、たとえば、複数の供給可能電力CPSを選択肢として画面に表示し、入力装置152は、表示された選択肢の中からオペレータが特定の供給可能電力CPSを選択して入力し、選択された供給可能電力CPSを制御装置130へ出力する。
【0041】
操作装置153は、たとえば、キャブ102aの室内に設置され、オペレータが油圧ポンプ105の回転数を制御するための制御ダイアルを含む。操作装置153は、制御装置130に情報通信可能に接続され、オペレータによる制御ダイアルの操作量DOAを検出して制御装置130へ出力する。
なお、操作装置153は、走行体101を駆動させる走行用の油圧モータ121、旋回用の油圧モータ122、ブームシリンダ123、アームシリンダ124およびバケットシリンダ125の各アクチュエータ120をそれぞれ操作する不図示の操作レバーの操作量に応じて油圧ポンプ105の目標回転数を算出するものであっても良い。
【0042】
以下、図4および図5を参照して、本実施形態の電動油圧ショベル100における制御装置130とインバータ103の動作を説明する。図4は、電動油圧ショベル100の制御装置130による処理の流れの一例を示すフロー図である。図5は、電動油圧ショベル100のインバータ103の処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0043】
制御装置130は、図4に示す処理フローPF1を開始すると、まず、最大供給電力Pmaxを算出する処理P11を実行する。この処理P11において、図3に示す制御装置130の充電指令演算部132は、たとえば、受電装置106、コンバータ107、および入力装置152から、それぞれ、商用電源CPの電力供給状態PSS、コンバータ状態CNVS、および商用電源CPの供給可能電力CPSを取得する。さらに、充電指令演算部132は、取得した情報に基づいて、コンバータ107の供給可能電力CPmaxを算出する。
【0044】
より詳細には、充電指令演算部132は、商用電源CPの電力供給状態PSSが正常である場合、コンバータ107の供給可能電力CPmaxに、ユーザが選択した商用電源CPの供給可能電力CPSを代入する。また、充電指令演算部132は、商用電源CPの電力供給状態PSSが異常であるか、受電装置106に商用電源CPが接続されていないか、または、コンバータ状態CNVSが異常である場合、コンバータ107の供給可能電力CPmaxにゼロを代入する。
【0045】
充電指令演算部132は、算出したコンバータ107の供給可能電力CPmaxを、モータ指令演算部133へ出力する。また、充電指令演算部132は、算出したコンバータ107の供給可能電力CPmaxを代入した充電指令BCCを、コンバータ107へ出力する。コンバータ107は、蓄電装置140へ供給される電力が、充電指令演算部132から入力された充電指令BCCに対応する電力となるように、コンバータ回路を制御する。
【0046】
また、この処理P11において、モータ指令演算部133は、充電指令演算部132から入力されたコンバータ107の供給可能電力CPmaxと、MBMU144から入力されたバッテリ供給可能電力BPmaxとを取得する。さらに、モータ指令演算部133は、取得したコンバータ107の供給可能電力CPmaxとバッテリ供給可能電力BPmaxとを加算して、インバータ103に接続された複数の電源の最大供給電力Pmaxを算出する。
【0047】
次に、制御装置130は、複数の電源の最大供給電力Pmaxによって、油圧ポンプ105が最小回転数でアイドリング可能か否かを判定する処理P12を実行する。制御装置130のメモリには、たとえば、油圧ポンプ105のアイドリング動力IRPと、電気モータ104とインバータ103の効率値EIMとが、あらかじめ記録されている。アイドリング動力IRPは、油圧ポンプ105を最小回転数でアイドリングさせるのに必要な動力である。
【0048】
ここで、油圧ポンプ105のアイドリング動力IRPは、たとえば、あらかじめ設定されている油圧ポンプ105の最小アイドリング回転数Niに、油圧ポンプ105の最小吸収トルクTminを乗じて、算出される(IRP=Ni×Tmin)。なお、油圧ポンプ105の最小吸収トルクTminは、斜板式の油圧ポンプ105において、斜板の傾転角を最小にしたときに油圧ポンプ105を回転させるのに必要なトルクであり、油圧ポンプ105の性能仕様によって決定される。また、電気モータ104とインバータ103の効率値EIMは、電気モータ104とインバータ103の性能仕様によって決定される。
【0049】
この処理P12において、制御装置130のモータ指令演算部133は、たとえば、複数の電源の最大供給電力Pmaxに効率値EIMを乗じて算出した電気モータ104の動力(Pmax×EIM)と、油圧ポンプ105のアイドリング動力IRPとを比較する。モータ指令演算部133は、算出した電気モータ104の動力がアイドリング動力IRPより小(Pmax×EIM<IRP)である場合、最小回転数でのアイドリング不可(NO)と判定する。この場合、電気モータ104が油圧ポンプ105を動作させる電力が不足していることから、制御装置130は、故障を判定する処理P15を実行して、図4に示す処理フローPF1を終了する。
【0050】
一方、処理P12において、モータ指令演算部133は、算出した電気モータ104の動力がアイドリング動力IRP以上(Pmax×EIM≧IRP)である場合、最小回転数でのアイドリングが可能(YES)と判定し、電気モータ104の回転数指令Ncに電気モータ104の要求回転数Nrを代入する処理P13を実行する。
【0051】
この処理P13で使用される電気モータ104の要求回転数Nrは、たとえば、制御装置130のポンプ回転数算出部131によって算出される。より詳細には、オペレータが油圧ポンプ105の回転数を制御するために、操作装置153の制御ダイアルを操作すると、操作装置153からポンプ回転数算出部131へ操作量DOAが入力される。ポンプ回転数算出部131は、操作装置153から入力された操作量DOAに基づいて電気モータ104の要求回転数Nrを算出し、モータ指令演算部133へ出力する。
【0052】
処理P13において、モータ指令演算部133は、ポンプ回転数算出部131から入力された電気モータ104の要求回転数Nrを電気モータ104の回転数指令Ncに代入する。すなわち、本実施形態において、制御装置130は、電気モータ104の要求回転数Nrに基づいて、電気モータ104の回転数指令Ncを設定する。次に、制御装置130は、電気モータ104の許容トルクTmaxを算出する処理P14を実行する。
【0053】
処理P14において、モータ指令演算部133は、電気モータ104が回転数指令Ncに対応する回転数で油圧ポンプ105を回転させる場合に出力可能なトルクTaを算出して、電気モータ104の許容トルクTmaxに代入する。ここで、電気モータ104が出力可能なトルクTaは、複数の電源の最大供給電力Pmaxに、電気モータ104とインバータ103の効率値EIMを乗じた値を、電気モータ104の回転数指令Ncで除した値である(Ta=Pmax×EIM/Nc)。
【0054】
すなわち、本実施形態において、制御装置130は、複数の電源の最大供給電力Pmaxに基づいて、電気モータ104の許容トルクTmaxを算出する。より具体的には、制御装置130は、たとえば、電気モータ104の許容トルクTmaxを、複数の電源の最大供給電力Pmaxに効率値EIMを乗じた値を電気モータ104の回転数指令Ncで除して算出したトルクTaに設定する。このトルクTaは、前述のように、複数の電源から最大供給電力Pmaxが供給され、電気モータ104が回転数指令Ncに対応する回転数で油圧ポンプ105を回転させる場合に、電気モータ104が出力可能なトルクである。
【0055】
以上の処理P11から処理P14により、本実施形態の制御装置130は、電気モータ104の要求回転数Nrと、複数の電源の最大供給電力Pmaxとに基づいて、電気モータ104の回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを設定または算出する。その後、制御装置130は、図4に示す処理フローPF1を終了し、処理P13および処理P14で算出した電気モータ104の回転数指令Ncと許容トルクTmaxを、インバータ103へ出力する。
【0056】
制御装置130から出力された電気モータ104の回転数指令Ncと許容トルクTmaxは、インバータ103のモータ制御部103aへ入力される。モータ制御部103aは、電気モータ104のモータ回転数センサ104aから入力された回転数Nmを、制御装置130のモータ指令演算部133へ出力している。また、モータ制御部103aは、制御装置130から入力された電気モータ104の回転数指令Ncと許容トルクTmaxに基づいて、電気モータ104の回転数制御を行う。
【0057】
図5は、図3の電動油圧ショベル100のインバータ103の動作を示すフロー図である。インバータ103は、図5に示す処理フローPF2を開始すると、電気モータ104の回転数指令Ncに基づいて演算トルクTwを算出する処理P21を実行する。この処理P21において、インバータ103のモータ制御部103aは、たとえば、電気モータ104の回転数指令Ncと、モータ回転数センサ104aで検出された電気モータ104の回転数Nmとの差分に、ゲインGpを乗じて、電気モータ104の演算トルクTwを算出する(Tw=Gp(Nc-Nm))。ここで、ゲインGpは、電気モータ104を制御するためのフィードバックゲインであり、設計時に計算されてあらかじめ設定されている。
【0058】
次に、インバータ103は、電気モータ104の演算トルクTwが許容トルクTmaxを超えるか否かを判定する処理P22を実行する。この処理P22において、モータ制御部103aは、たとえば、電気モータ104の演算トルクTwが、許容トルクTmaxを超えていないこと(NO)を判定すると、電気モータ104のトルク指令Tcを、電気モータ104の演算トルクTwに設定する処理P23を実行して、図5に示す処理フローPF2を終了する。
【0059】
一方、処理P22において、モータ制御部103aは、たとえば、電気モータ104の演算トルクTwが、許容トルクTmaxを超えていること(YES)を判定すると、電気モータ104のトルク指令Tcを、電気モータ104の許容トルクTmaxに設定する処理P24を実行して、図5に示す処理フローPF2を終了する。その後、モータ制御部103aは、電気モータ104のトルク指令Tcを電流制御部103bへ出力する。電流制御部103bは、電気モータ104がトルク指令Tcに相当するトルクを出力するように、インバータ103のインバータ回路のIGBTを制御する。
【0060】
以上のように、インバータ103は、電気モータ104の回転数指令Ncと電気モータ104の回転数Nmとの差分にゲインGpを乗じて算出した電気モータ104の演算トルクTwが、許容トルクTmaxを超える場合は、許容トルクTmaxをトルク指令Tcに設定する。また、インバータ103は、演算トルクTwが許容トルクTmaxを超えない場合は、演算トルクTwをトルク指令に設定する。そして、インバータ103は、トルク指令Tcに応じたトルクを発生可能な電力を電気モータ104へ供給する。
【0061】
また、制御装置130のモータ指令演算部133によって算出された電気モータ104の許容トルクTmaxは、ポンプ制御部134にも入力される。ポンプ制御部134は、入力された蓄電装置140の許容トルクTmaxに基づいて、可変容量式の油圧ポンプ105における斜板の傾転角θを算出する。
【0062】
より詳細には、制御装置130のメモリには、油圧ポンプ105の斜板の傾転角θごとに、油圧ポンプ105を回転させるために必要なトルクが規定された傾転角/トルクテーブルが記録されている。ポンプ制御部134は、制御装置130のメモリに記録された傾転角/トルクテーブルを参照し、油圧ポンプ105を回転させるために必要なトルクが電気モータ104の許容トルクTmaxを超えない油圧ポンプ105の傾転角θを導出する。ポンプ制御部134は、導出した傾転角θを傾転角指令θcとして油圧ポンプ105へ出力して、油圧ポンプ105の斜板の傾転角θを制御する。
【0063】
以下、本実施形態の電動油圧ショベル100の作用を説明する。
【0064】
本実施形態の電動油圧ショベル100は、前述のように、各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源である商用電源CPと蓄電装置140に接続されたインバータ103と、そのインバータ103を介して複数の電源から供給される電力によって駆動する電気モータ104とを備えている。また、電動油圧ショベル100は、電気モータ104によって駆動される油圧ポンプ105と、その油圧ポンプ105の油圧によって作動するアクチュエータ120と、インバータ103を介して電気モータ104に供給される電力を制御する制御装置130と、を備えている。制御装置130は、電気モータ104の要求回転数Nrと複数の電源の最大供給電力Pmaxとに基づいて、電気モータ104の回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを設定または算出する。インバータ103は、電気モータ104の回転数指令Ncと電気モータ104の回転数Nmとの差分にゲインGpを乗じて電気モータ104の演算トルクTwを算出する。インバータ103は、算出した演算トルクTwが許容トルクTmaxを超える場合は許容トルクTmaxを、演算トルクTwが許容トルクTmaxを超えない場合は演算トルクTwを、それぞれトルク指令Tcに設定する。そして、インバータ103は、トルク指令Tcに応じたトルクを発生可能な電力を電気モータ104へ供給する。
【0065】
このような構成により、本実施形態の電動油圧ショベル100によれば、電気モータ104および油圧ポンプ105は、たとえば、オペレータによる操作装置153の操作に基づく電気モータ104の要求回転数Nrによって、回転数が制御される。その際、インバータ103が複数の電源の最大供給電力Pmaxを超えて電力を消費しないように制限しながら電気モータ104および油圧ポンプ105の回転数を制御することができる。
【0066】
たとえば、本実施形態の電動油圧ショベル100は、インバータ103に接続された蓄電装置140をさらに備え、複数の電源は、蓄電装置140を含む。蓄電装置140を構成する複数の電池パック141A,141B,141Cのうち、一つの電池パック141Aが故障すると、BMU143Aが遮断装置142Aによって電池パック141Aの電力供給経路を遮断する。これにより、電池パック141Aの供給可能電力BPaがゼロになってバッテリ供給可能電力BPmaxが減少し、複数の電源の最大供給電力Pmaxが減少する。
【0067】
しかし、制御装置130は、前述のように、電気モータ104の要求回転数Nrと複数の電源の最大供給電力Pmaxとに基づいて、電気モータ104の回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを設定または算出する。これにより、蓄電装置140のバッテリ供給可能電力BPmaxの減少に応じて、電気モータ104の回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを低下させることができる。そして、インバータ103は、電気モータ104の回転数指令Ncに基づく演算トルクTwが許容トルクTmaxを超える場合は許容トルクTmaxを、演算トルクTwが許容トルクTmaxを超えない場合は演算トルクTwを、それぞれトルク指令Tcに設定する。そして、インバータ103は、トルク指令Tcに応じたトルクを発生可能な電力を電気モータ104へ供給する。したがって、蓄電装置140の故障によりバッテリ供給可能電力BPmaxが減少して複数の電源の最大供給電力Pmaxが減少しても、電気モータ104が出力可能なトルクで油圧ポンプ105を回転させることができ、電気モータ104の失速を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態の電動油圧ショベル100において、油圧ポンプ105は、可変容量ポンプである。制御装置130は、操作装置153の操作量DOAに基づく電気モータ104の要求回転数Nrを回転数指令Ncに設定する。また、制御装置130は、電気モータ104の許容トルクTmaxを、最大供給電力Pmaxに効率値EIMを乗じた値を回転数指令Ncで除して算出したトルクTaに設定する。
【0069】
このような構成により、本実施形態の電動油圧ショベル100によれば、制御装置130によって設定される電気モータ104の許容トルクTmaxを、複数の電源の最大供給電力Pmaxの増減に応じて増減させることができる。その結果、制御装置130は、電気モータ104の許容トルクTmaxに応じた傾転角指令θcを油圧ポンプ105へ出力して油圧ポンプ105の傾転角θを制御することができ、電気モータ104の負荷を軽減して、電気モータ104の失速を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態の電動油圧ショベル100において、複数の電源は、商用電源CPを含む。そのため、たとえば、前述のように、商用電源CPの仕様、電源ケーブルSCの接続の有無、またはコンバータ107の異常などによって、コンバータ107の供給可能電力CPmaxが変動し、複数の電源の最大供給電力Pmaxが変動することがある。このような場合でも、制御装置130は、コンバータ107の供給可能電力CPmaxとバッテリ供給可能電力BPmaxとを加算して、複数の電源の最大供給電力Pmaxを算出する。したがって、コンバータ107の供給可能電力CPmaxが減少して、複数の電源の最大供給電力Pmaxが減少しても、バッテリ供給可能電力BPmaxの減少時と同様に、電気モータ104が出力可能な負荷で油圧ポンプ105を回転させることができ、電気モータ104の失速を防止することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、各々の電源の供給可能電力が変動する複数の電源からの最大供給電力Pmaxが変動しても、油圧ポンプ105を駆動する電気モータ104の失速を回避し、油圧ポンプ105が発生する油圧で作動するアクチュエータ120の意図しない停止を回避可能な電動油圧ショベル100を提供することができる。
【0072】
[実施形態2]
以下、前述の実施形態1の図1から図3および図5を援用し、図6を参照して本発明に係る電動油圧ショベルの実施形態2を説明する。図6は、本開示に係る電動油圧ショベルの実施形態2の図4に相当するフロー図である。
【0073】
本実施形態の電動油圧ショベル100は、油圧ポンプ105が固定容量ポンプである点と、制御装置130が電気モータ104の回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを算出または設定する処理P13’,P14’が前述の実施形態1の電動油圧ショベル100と異なっている。本実施形態の電動油圧ショベル100のその他の点は、実施形態1の電動油圧ショベル100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施形態において、制御装置130は、図6に示す処理フローPF1’を開始すると、前述の実施形態1と同様に、複数の電源の最大供給電力Pmaxを算出する処理P11を実行する。その後、制御装置130は、前述の実施形態1と同様に、複数の電源の最大供給電力Pmaxによって、油圧ポンプ105が最小回転数でアイドリング可能か否かを判定する処理P12を実行する。
【0075】
処理P12において、制御装置130は、最小回転数でのアイドリングが可能(YES)と判定すると、電気モータ104の上限回転数を回転数指令Ncに代入する処理P13’を実行する。本実施形態において、制御装置130のメモリには、たとえば、固定容量ポンプである油圧ポンプ105を駆動するために必要な駆動トルクTpが、あらかじめ記録されている。
【0076】
処理P13’において、モータ指令演算部133は、たとえば、蓄電装置140のMBMU144から入力されたバッテリ供給可能電力BPmaxと、充電指令演算部132から入力されたコンバータ107の供給可能電力CPmaxとを取得する。さらに、モータ指令演算部133は、バッテリ供給可能電力BPmaxとコンバータ107と供給可能電力CPmaxを加算して、複数の電源の最大供給電力Pmaxを算出する。
【0077】
さらに、処理P13’において、モータ指令演算部133は、複数の電源の最大供給電力Pmaxに効率値EIMを乗じて、メモリに記録された油圧ポンプ105の駆動トルクTpで除することで、電気モータ104の上限回転数Nmaxを算出する(Nmax=Pmax×EIM/Tp)。そして、モータ指令演算部133は、算出した上限回転数Nmaxを、電気モータ104の回転数指令Ncに設定する。
【0078】
その後、制御装置130は、電気モータ104の許容トルクTmaxを、固定容量ポンプである油圧ポンプ105を駆動させるために必要な駆動トルクTpに設定する処理P14’を実行する。本実施形態において、油圧ポンプ105は、固定容量ポンプであるため、油圧ポンプ105を回転させるために必要な駆動トルクTpは変動しない。そのため、モータ指令演算部133は、たとえば、電気モータ104の許容トルクTmaxに、油圧ポンプ105の駆動トルクTpを代入して、図6に示す処理フローPF1’を終了する。
【0079】
以上のように、本実施形態の電動油圧ショベル100において、油圧ポンプ105は、固定容量ポンプである。また、制御装置130は、複数の電源の最大供給電力Pmaxに効率値EIMを乗じた値を油圧ポンプ105の駆動に必要な駆動トルクTpで除して電気モータ104の回転数指令Ncを算出し、油圧ポンプ105の駆動トルクTpを電気モータ104の許容トルクTmaxに設定する。
【0080】
このような構成により、本実施形態の電動油圧ショベル100によれば、複数の電源の最大供給電力Pmaxが変動しても、その最大供給電力Pmaxに応じて電気モータ104の上限回転数Nmaxを制限することができる。したがって、複数の電源の最大供給電力Pmaxが変動しても、電気モータ104によって油圧ポンプ105を駆動させることが可能な駆動トルクTpを発生させることができ、電気モータ104の失速を防止することができる。
【0081】
[実施形態3]
以下、前述の実施形態1の図1を援用し、図7および図8を参照して、本発明に係る電動油圧ショベルの実施形態3を説明する。図7は、本発明に係る電動油圧ショベルの実施形態3の図2に相当するブロック図である。図8は、本発明に係る電動油圧ショベルの実施形態3の図3に相当するブロック図である。
【0082】
本実施形態の電動油圧ショベル100は、実施形態1の電動油圧ショベル100の受電装置106およびコンバータ107に替えて、インバータ103に接続された燃料電池システム160を備えている。すなわち、本実施形態において、電動油圧ショベル100の複数の電源は、たとえば、蓄電装置140と燃料電池システム160とを含んでいる。
【0083】
燃料電池システム160は、たとえば、水素タンク161と、燃料電池スタック162と、燃料電池コンバータ(FCコンバータ)163と、燃料電池制御部(FC制御部)164とを有している。水素タンク161は、たとえば、電動油圧ショベル100の旋回体102に搭載され、高圧の水素ガスが充填される。燃料電池スタック162は、たとえば、旋回体102に搭載された複数の燃料電池セルを含み、水素タンク161から供給される水素ガスと、空気または酸素などの酸化ガスとを反応させて発電する。
【0084】
FCコンバータ163は、たとえば、燃料電池スタック162から供給された電力を電圧変換してインバータ103および蓄電装置140へ供給する。FC制御部164は、たとえば、FCコンバータ163および制御装置130に情報通信可能に接続され、FCコンバータ163の状態を監視して、FCコンバータ163を制御する。また、FC制御部164は、FCコンバータ163からインバータ103および蓄電装置140へ供給可能な燃料電池システム160の供給可能電力Pfcを算出して、制御装置130のモータ指令演算部133へ出力する。
【0085】
燃料電池システム160の供給可能電力Pfcは、たとえば、燃料電池スタック162の仕様に基づいて設定され、あらかじめ制御装置130のメモリに記録されている。また、FC制御部164は、水素タンク161に充填された水素の残量が所定の水準よりも低下した場合や、燃料電池スタック162またはFCコンバータ163に異常が発生した場合に、燃料電池システム160の供給可能電力Pfcを通常よりも低下させる。
【0086】
モータ指令演算部133は、たとえば、FC制御部164から入力された燃料電池システム160の供給可能電力Pfcと、蓄電装置140のMBMU144から入力されたバッテリ供給可能電力BPmaxとを加算して、複数の電源の最大供給電力Pmaxを算出する。
【0087】
このような構成により、本実施形態の電動油圧ショベル100によれば、前述の実施形態1および2の電動油圧ショベル100と同様に、複数の電源の最大供給電力Pmaxが変動しても、油圧ポンプ105を駆動する電気モータ104の失速を回避し、油圧ポンプ105が発生する油圧で作動するアクチュエータ120の意図しない停止を回避可能な電動油圧ショベル100を提供することができる。
【0088】
以上、図面を用いて本開示に係る電動油圧ショベルの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。たとえば、前述の実施形態では、複数の電源として、商用電源と蓄電装置、または、燃料電池システムと蓄電装置の組合せを説明した。しかし、複数の電源の組合せは特に限定されず、たとえば、商用電源と燃料電池システムとの組合せであってもよく、商用電源、太陽電池、および蓄電装置の組合せであってもよく、複数の蓄電装置であってもよい。また、蓄電装置が備える電池パックの数は、単数でも複数でもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 電動油圧ショベル
103 インバータ
104 電気モータ
105 油圧ポンプ
120 アクチュエータ
130 制御装置
140 蓄電装置(電源)
160 燃料電池システム(電源)
CP 商用電源(電源)
EIM 効率値
Gp ゲイン
Nm 回転数
Nc 回転数指令
Nr 要求回転数
Pmax 最大供給電力
Tc トルク指令
Tmax 許容トルク
Tp 駆動トルク
Tw 演算トルク
【要約】      (修正有)
【課題】各々の電源の供給可能電力が変動しても、油圧ポンプを駆動する電気モータの失速を回避可能な電動油圧ショベルを提供する。
【解決手段】電動油圧ショベルは、インバータ103と、電気モータ104と、油圧ポンプ105と、アクチュエータと、制御装置130と、を備えている。制御装置は、電気モータの要求回転数Nrと、コンバータ107の供給可能電力CPmaxとバッテリ供給可能電力BPmaxとの合計に基づいて、電気モータの回転数指令Ncおよび許容トルクTmaxを設定または算出する。また、インバータは、回転数指令Ncと電気モータの回転数Nmとの差分にゲインを乗じて算出した電気モータの演算トルクが、許容トルクTmaxを超える場合は許容トルクTmaxを、許容トルクTmaxを超えない場合は演算トルクを、それぞれトルク指令Tcに設定し、トルクを発生可能な電力を電気モータへ供給する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8