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特許7350125塩基性染料とアミノ酸を含有する化合物、染毛用染料および染毛用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】塩基性染料とアミノ酸を含有する化合物、染毛用染料および染毛用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 69/06 20060101AFI20230915BHJP
   C09B 29/09 20060101ALI20230915BHJP
   C09B 29/02 20060101ALI20230915BHJP
   D06P 3/04 20060101ALI20230915BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230915BHJP
   C09B 19/00 20060101ALN20230915BHJP
   C09B 11/12 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
C09B69/06 CSP
C09B29/09 B
C09B29/02
D06P3/04 Z
A61Q5/06
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/49
C09B19/00
C09B11/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022062251
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2018162579の分割
【原出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2022087179
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慧悟
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰彰
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 成能
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勝美
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229668(JP,A)
【文献】特開2017-088502(JP,A)
【文献】特開2003-113329(JP,A)
【文献】特開昭60-233158(JP,A)
【文献】特表2002-523345(JP,A)
【文献】特表2002-523346(JP,A)
【文献】特表2010-528101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 69/06
C09B 29/09
C09B 29/02
D06P 3/04
A61Q 5/06
A61K 8/41
A61K 8/44
A61K 8/49
C09B 19/00
C09B 11/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、下記一般式(A-1)~(A-5),(A-7)~(A-11)のいずれかである化合物。
【化1】

[式中、Xは、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を少なくとも1個含有する塩基性染料を表し、
Zは、アミノ酸を含有する非発色アニオンを表し、前記非発色アニオンがアミノ酸系アニオン界面活性剤であり、
XとZは錯体を形成している。]
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含有する染毛用染料。
【請求項3】
請求項に記載の染毛用染料と、
湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、溶剤、pH調整剤、界面活性剤、香料、および、増粘剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤と、
水と、を含有する染毛用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性染料とアミノ酸を含有する化合物、染毛用染料および染毛用組成物に関する。より詳しくは、染毛力に優れ、水溶解性や泡立ちが良好で、洗浄時および乾燥後に毛髪の指通りを保持しながら、耐汗性に優れ、染色された毛髪の褪色を効果的に抑制することのできる染毛用染料および染毛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、幅広い年代で、黒髪や白髪を染毛することで様々な髪色を楽しむ人が増えており、染毛剤として、ヘアカラー(「ヘアダイ」という場合もある)、ヘアマニキュア、ヘアカラートリートメント、カラーリンスなどが、数多く販売されている。染毛処理では、染毛力が高く、色持ちが良好な酸化染料を用いた酸化染毛剤(永久染毛剤)が主として利用されてきたが、毛髪損傷やアレルギーなどの皮膚刺激が起きやすいという問題があった。このため、前記酸化染料に代えて、安全性が高い塩基性染料を用いた染毛剤が提案されている(特許文献1~5)。
【0003】
前記塩基性染料を用いた半永久染毛剤(ヘアカラートリートメントやカラーリンス)は、日々のシャンプー、日焼けなどの影響で、染色が褪色してしまうことが問題となっており、染色を維持するためには染毛を何度も繰り返す必要があった。染毛を繰り返すと毛髪が大きなダメージを受けるため、より褪色しやすくなる可能性があり、褪色抑制効果を有する塩基性染料などの開発が重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-269400号公報
【文献】特開2010-1278号公報
【文献】特開2017-88502号公報
【文献】国際公開第2013/190774号
【文献】国際公開第2014/203771号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、染毛力に優れ、水溶性や泡立ちが良好で、洗浄時および乾燥後の指通りを保持しながら、耐汗性に優れ、染色された毛髪の褪色を抑制する染毛用染料および該染毛用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果得られたものであり、以下を要旨とするものであり、以下の内容で構成されている。
【0007】
1.下記一般式(1)で表される化合物。
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、Xは、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を
少なくとも1個含有する塩基性染料を表し、
Zは、アミノ酸を含有する非発色アニオンを表す。]
【0010】
2.前記一般式(1)において、Xが、下記一般式(2)で表される塩基性染料である化合物。
【0011】
【化2】
【0012】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基を表す。]
【0013】
3.前記一般式(1)において、Xが、下記一般式(3)で表される塩基性染料である化合物。
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、R~R18は、それぞれ独立に、―H、ハロゲン原子、―NO、―NO、―CN、―OH、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基を表し、
~R18は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0016】
4.前記一般式(1)において、Xが、下記一般式(4)で表される塩基性染料である化合物。
【0017】
【化4】
【0018】
[式中、R19~R27は、それぞれ独立に、―H、ハロゲン原子、―NO、―NO、―CN、―OH、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基を表し、
19~R23、および、R24~R27は隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0019】
5.前記一般式(1)において、Xが、下記一般式(5)で表される塩基性染料である化合物。
【0020】
【化5】
【0021】
[式中、R28~R30は、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基を表し、
29とR30は互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0022】
6.前記一般式(1)において、Zで表されるアミノ酸含有非発色アニオンが、
アミノ酸系アニオン界面活性剤である化合物。
【0023】
7.前記化合物を含有する染毛用染料。
【0024】
8.前記染毛用染料と、
湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、溶剤、pH調整剤、界面活性剤、香料、および、増粘剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤と、
水と、を含有する染毛用組成物。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る化合物、染毛用染料によれば、染毛力に優れ、水溶解性や泡立ちが良好で、洗浄時および乾燥後に毛髪のパサツキがなく、毛髪のムラがなく、指通りを保持しながら、耐汗性に優れ、染色された毛髪の褪色を効果的に抑制する染毛用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。最初に、前記一般式(1)で表される化合物について、具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0027】
一般式(1)において、「X」で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を少なくとも1個含有する塩基性染料」における「塩基性染料」は、カチオン染料とも表され、前記塩基性染料は、分子構造中に塩基性(カチオン性)を示すオニオム基を有する化合物からなる染料を表す。「X」で表される染料分子に含まれるオニオム基の例としては、アンモニウム基(―NH )、ホスホニウム基(―PH )、オキソニウム基(―OH )、スルホニウム基(―SH )、イミニウム基(=NH )、ニトリリウム基(―C≡NH)などがあげられ、代表的なものは、下記の第四級アンモニウム基に関する基を有する。これらの基における「―H」の部分は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基もしくは芳香族炭化水素基などの他の基に置換されていてもよく、これらの基は1つの染料分子の中に1個でも複数含まれていてもよい。また、これらの塩基性染料「X」は、水溶性染料であることが好ましい。
【0028】
一般式(1)において、「X」で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基を少なくとも1個有する塩基性染料」における「アミノ基」としては、第四級アンモニウム基(―NRR'R'' R、R'およびR''はHまたは任意の置換基)、「=N<」もしくは「=NRR'」(R、R'はHまたは任意の置換基)、無置換アミノ基(―NH)、一置換アミノ基(―NHR Rは任意の置換基)または二置換アミノ基(―NHRR' RおよびR'は任意の置換基)があげられる。ただし、スルホン酸基(―SOH)、カルボキシル基(―COOH)、リン酸基(―O―PO(OH))、ヒドロキサム酸基(―CO―NH―OH)、ホスホン酸基(―PO(OH))、ホウ酸基(―O―B(OH))、ホスフィン酸基(―O―POH)、シラノール基(―SiH―OHまたは―Si(OH))などの酸性基を含まない塩基性染料であることが好ましい。
【0029】
一般式(1)において、「Z」は、「アミノ酸を含有する非発色アニオン」を表す。一般式(1)における「Z」は、前記「X」の対イオンであり、一般式(1)で表される化合物(錯体)を形成することができる。本発明における「アミノ酸を含有する非発色アニオン」とは、「アミノ酸」または「アミノ酸」の構造を含有しアニオンになることのできる化合物を意味する。一般にアミノ酸は、アミノ基(―NRR' RおよびR'はHまたは同一でも異なってもよい任意の基を表す)およびカルボキシル基(―COOH、―COO)を有する化合物である。具体的なアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンが主なα-アミノ酸としてあげられるが、本発明における「アミノ酸を含有する非発色アニオン」は、分子構造中にこれらのアミノ酸を含有していてもよく、したがって、アミノ酸中のアミノ基などが置換された構造を有していてもよい。
【0030】
一般式(1)中の「Z」において、前記したアミノ基およびカルボキシル基は1個ずつであっても複数であってもよい。「Z」で表される「アミノ酸を含有する非発色アニオン」が「アニオン」の状態である場合、「Z」は、カチオン「X」と対になり錯体を形成するアニオンである。したがって、「X」の価数および「Z」の価数は等しいことが好ましく、それぞれ1価または2価であることがより好ましく、それぞれ1価であることが特に好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される(X)(Z)において、一般式(1)全体が中性となるように、「X」および「Z」が、それぞれ1種類であっても複数が混合したものでもよいが、Xの種類は1種類であるのが好ましく、同様に、「Z」の種類は1種類であるのが好ましい。
【0032】
一般式(1)において、「X」は、市販の塩基性染料を使用することができる。また、一般式(1)において、「X」は、前記一般式(2)~(5)のいずれか1種で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
一般式(1)において、「X」中に含まれ、または、R~R30で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基」としては、―NH、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などの一置換アミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基などの二置換アミノ基、などがあげられる。また、これらのアミノ基にさらに基が結合した、トリメチルアミノ(もしくはトリメチルアンモニオ)基、トリエチルアミノ(もしくはトリエチルアンモニオ)基などのトリアルキルアミノ(トリアルキルアンモニオ)基、トリフェニルアミノ(もしくはトリメチルアンモニオ)基などの置換基を有していてもよい第四級アンモニウム基も「置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基」に含まれるものとし、これらの置換基は同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0034】
一般式(1)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、または、これらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状の基があげられる。
【0035】
一般式(1)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントリル基、アセナフテニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、などがあげられ、アシル基やアミノ基を介していてもよい。ここで、本発明の「芳香族炭化水素基」は、芳香族炭化水素基および縮合多環芳香族基を表すものとする。
【0036】
一般式(1)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基」における「炭素原子数2~30の複素環基」としては、具体的に、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ピリドインドリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、ヒダントイン基などがあげられ、アシル基やアミノ基を介して結合していてもよい。
【0037】
一般式(3)および(4)において、R~R27で表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などがあげられる。本発明において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0038】
一般式(3)~(5)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、t-オクチル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0039】
一般式(3)~(5)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などがあげられる。
【0040】
一般式(3)~(5)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基、t-オクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基があげられる。
【0041】
一般式(3)~(5)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などがあげられる。
【0042】
一般式(3)~(5)において、R~R30で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアシル基」における「炭素原子数1~20のアシル基」としては、具体的に、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などがあげられる。
【0043】
一般式(1)のX中の「置換基を有する炭素原子数0~20のアミノ基」における「置換基」、または、一般式(2)~(5)においてR~R30で表される
「置換基を有する炭素原子数0~20のアミノ基」、
「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」、
「置換基を有する炭素原子数1~20のアシル基」、
「置換基を有する炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」、または
「置換基を有する環形成原子数5~30の複素環基」における「置換基」としては、
具体的に、ニトロ基(―NO)、ニトロソ基(―NO)、シアノ基(―CN)、水酸基(―OH);
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6~30のアリール基を有する一置換もしくは二置換アミノ基;
スルホンアミド基(―S(=O)―NRR')(基中の「―NRR'」は、無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6~30のアリール基を有する一置換もしくは二置換アミノ基);
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、t-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などの炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~20のアシル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基、スチリル基などの炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、ピリドインドリル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナントリジニル基、ヒダントイン基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピラニル基、クマリニル基、イソベンゾフラニル基、キサンテニル基、オキサントレニル基、ピラノニル基、チエニル基、チオピラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チオキサンテニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、モルホリニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~30の複素環基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、(1,3-もしくは1,4-)シクロヘキサジエニル基、1,5-シクロオクタジエニル基などの炭素原子数3~30の環状オレフィン基;などがあげられる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」は前記例示した置換基を有していてもよく、さらに、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0044】
一般式(2)において、RまたはRとしては、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基が好ましい。
【0045】
一般式(3)において、R~R18としては、―H、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。
【0046】
一般式(3)において、R~R18は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、環を形成する場合、RとR、RとR、R~R11、R12~R16、R17とR18が互いに結合して環を形成するのが好ましく、環が5員環または6員環であるのが好ましい。
【0047】
一般式(4)において、R~R18としては、―H、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~20のアミノ基、または
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0048】
一般式(4)において、R19~R27は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、環を形成する場合、R20とR21、R22とR23、R24~R27が互いに結合して環を形成するのが好ましく、環は5員環または6員環が好ましい。
【0049】
一般式(5)において、R28~R30としては、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の複素環基が好ましい。
【0050】
一般式(5)において、R29とR30は、互いに結合して環を形成していてもよく、環を形成する場合、5員環または6員環が好ましい。
【0051】
一般式(1)において、「Z」で表される「アミノ酸を含有する非発色アニオン」は、アミノ酸を分子構造内に含有する、アミノ酸系界面活性剤であることが好ましく、したがって、アミノ酸系アニオン界面活性剤であるのが好ましい。具体的には、
N-アシル-N-アルキルグリシン塩(N-ココイル-N-メチルグリシンなどのN-C~C22アルカノイル-N-アルキルグリシン塩)、
N-アシル-N-アルキルグルタミン酸塩(N-ココイル-N-メチルグルタミン酸塩などのN-C~C22アルカノイル-N-アルキルグルタミン酸塩)、
N-アシル-N-アルキルアラニン塩(N-ココイル-N-メチルアラニン塩、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン塩などのN-C~C22アルカノイル-N-アルキルアラニン塩)、
N-アシル-N-アルキルアスパラギン酸塩(N-ココイル-N-メチルアスパラギン酸塩などのN-C~C22アルカノイル-N-アルキルアスパラギン酸塩)、
N-アシルグリシン塩(N-ココイルグリシン塩などのN-C~C22アルカノイルグリシン塩)、
N-アシルグルタミン酸塩(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ココイルグルタミン酸塩などのN-C~C22アルカノイルグルタミン酸塩)、
N-アシルアラニン塩(N-ココイルアラニン塩などのN-C~C22アルカノイルアラニン塩)、
N-アシルアスパラギン酸塩(N-ラウロイルアスパラギン酸塩などのN-C~C22アルカノイルアスパラギン酸塩)、
N-アシルサルコシン塩(N-ココイルサルコシン塩などのN-C~C22アルカノイルサルコシン塩)などのアミノ酸系アニオン(陰イオン)界面活性剤、があげられる。これらの塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどのアルカリ金属との塩、トリエタノールアミンなどのトリアルキルアミンとの塩、アルギニンなどの塩性アミノ酸との塩などがあげられる。
【0052】
一般式(1)において、「Z」で表される、アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N-アシル-N-アルキルグルタミン酸塩、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン塩などのN-アシル-N-アルキルアラニン塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、N-アシルアラニン塩が好ましい。これらのアミノ酸系アニオン界面活性剤において、「N-アルキル」基の部分が含まれる場合のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などがあげられ、メチル基が好ましい。また、これらのアミノ酸系アニオン界面活性剤において、「アシル」基としては、例えば、ココイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基などがあげられ、ココイル基またはラウロイル基が好ましい。
【0053】
一般式(1)で表される本発明の化合物として好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している、また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
【化15】
【0064】
【化16】
【0065】
【化17】
【0066】
前記一般式(1)で表される化合物は、例えば、前記一般式(1)中の(X)で表される塩基性染料と、(Z)で表されるアミノ酸のナトリウム塩などの塩とを、出発原料として合成することができる。具体的には、前記塩基性染料を水や有機溶媒などに溶解し、適切な温度条件下で、アミノ酸ナトリウム塩などを添加し反応させ、得られた固体を適した溶媒、温度などの条件で精製することによって、本発明の染毛用染料(アミノ酸を対イオンとする染料)である化合物を得ることができる。
【0067】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法などの公知の方法で精製することができる。また、化合物の同定や物性評価分析は、紫外可視吸収スペクトル分析(UV-Vis)、熱重量測定-示唆熱分析(TG-DTA)、ガスクロマトグラフィー分析(GC)、核磁気共鳴分析(NMR)分析などを行うことができる。
【0068】
本発明に係る化合物は、いわゆる染毛料(hair colorants)としての形態で使用することが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、染毛用染料として使用することが好ましく、他の染料や添加剤、助剤などの成分などを混合して、一般式(1)で表される化合物を含有する染毛用染料として使用することができる。本発明の染毛用染料に適した実施形態は染毛用組成物であり、
一般式(1)で表される化合物を含有する染毛用染料と、
湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、溶剤、pH調整剤、界面活性剤、香料、および、増粘剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤と、
水と、を含有する。
【0069】
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール類、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール類などがあげられる。湿潤剤を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0070】
膨潤剤としては、アンモニア(水酸化アンモニウム)またはモノエタノールアミン(MEA)を含むアルカリ水溶液があげられる。膨潤剤を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0071】
また、浸透剤、溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブトキシエタノールなどの炭素原子数1~6のアルキル基を有する1価アルコール;プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ヘプタンジオール、ヘプタントリオール、オクタンジオール、オクタントリオール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの炭素数3~8の多価アルコールまたはそのエーテル;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどの常温(25±2℃)で液状のN-アルキルピロリドン;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート(低級アルキレンカーボネート);ベンジルオキシエトキシエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、シンナミルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルエタノール、β-フェニルエチルアルコール等の芳香族アルコールがあげられる。これらの中でも、芳香族アルコール、又はN-アルキルピロリドンが好ましく、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエトキシエタノール、ベンジルオキシエタノールがより好ましい。浸透剤、溶剤を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、2~40質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0072】
pH調整剤としては、リン酸、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム等の酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基が挙げられる。pH調整剤を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0073】
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤が主に使用される。具体的には、ポリシロキサンなどのシリコーン化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪族アミンおよびその第四級アンモニウム塩(トリメチルステアリルアンモニウムクロリドなど)、ソルビトールアルキルエーテルなどの糖アルコールエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどがあげられるが、これらに限定されない。これらの中でも、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いることにより、皮膚への汚染低減効果(皮膚汚染防止性能)がさらに向上する。
【0074】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0075】
界面活性剤を使用する場合、その含有量は、皮膚への汚染を低減させる観点から、染毛用組成物の全量基準で、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0076】
香料としては、バニリン、シンナミックアルコール、ヘリオトロピン、クマリン、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシ-フェニル)-プロパナール、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、ベンズアルデヒド、アニスアルコール、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、酢酸ヘリオトロピル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェノキシエチルアルコール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、フラネオール、シュガーラクトン、マルトール、エチルマルトール、エチルジグリコール、ベンジルアセテート、リナロール、カンファー、ターピネオール、シトロネロール、ゲラニオール、2,6-ノナジエナール、メチルオクチルカルボネート、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール、ノナナール等が挙げられる。香料を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.00001~2質量%が好ましい。
【0077】
増粘剤としては、グアーガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボポル(登録商標、Carbopol)、ナトリウムアルギネート、ガムアラビック(Gum arabic)、セルロース誘導体及びポリ(エチレンオキシド)由来の増粘剤が挙げられる。これらの増粘剤には、染毛用組成物を高粘度化し、取扱いの容易な形態であるジェル状にする効果がある。増粘剤を使用する場合、その含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0078】
本発明の染毛用組成物に用いる水は特に限定されないが、イオン交換水、精製水、浄水などを使用することができる。
【0079】
本発明の、一般式(1)で表される化合物を含む染毛用染料は、それ自身染毛用染料として染毛力や堅牢性に優れ、毛髪を均一に染めることができるものである。また、一般式(1)で表される化合物を含む染毛用染料と、他色系毛髪用染料を組み合わせることにより、黄色~茶色~黒色系への調色も可能である。
【0080】
組み合わせる塩基性染料としては、例えば、分子内にアミノ基または置換アミノ基を有する直接染料があげられ、具体的には、赤色213号(C.I.Basic Violet 10、ローダミンB)、赤色214号(C.I.Basic Violet、ローダミンBアセテート);塩基性青(C.I.Basic Blue)7、9、26、75、99;塩基性赤(C.I.Basic Red)2、22、51、76;塩基性黄(C.I.Basic Yellow)57、87;塩基性橙(C.I.Basic Orange)31;塩基性茶(C.I.Basic Brown)16、17;塩基性紫(C.I.Basic Violet)2、3、4、14などがあげられる。なお、「C.I.」はカラーインデックスを意味する。
【0081】
組み合わせるHC染料としては、例えば、分子内にニトロ基を有する直接染料が挙あげられ、具体的には、C.I.HC Blue 2、15;C.I.HC Red 1、3、7、11、13;C.I.HC Yellow 2、4、5、9、11、13、C.I.HC Orange 1、2;C.I.HC Violet 1、2;4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールなどがあげられる。
【0082】
本発明の染毛用組成物の実施形態においては、一般式(1)で表される化合物を含む染毛用染料を、染毛用組成物の全量基準で0.001~5質量%とし、残部を、
湿潤剤、膨潤剤、浸透剤、溶剤、pH調整剤、界面活性剤、香料、および、増粘剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の助剤と、
水と、を含有するものとすることが好ましい。染毛用染料の含有量が0.001質量%未満であると、色調維持および均染性の効果が得られ難く、5質量%を超える量を添加しても、染着等の効果の向上は小さくなる。染毛用染料の含有量は、染毛用組成物の全量基準で、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~2質量%であることがより好ましい。
【0083】
本発明の染毛用組成物のpH値は4~9が好ましく、5~7がより好ましい。染毛用組成物のpH値は公知の方法により調整することができるが、クエン酸一水和物やクエン酸三ナトリウム二水和物などのpH調整剤を用いて行うのが好ましい。すなわち、例えばpH6の染毛用組成物を調製する場合は、クエン酸一水和物およびクエン酸三ナトリウム二水和物を水に溶解し、あらかじめpH6水溶液を調製した後、該水溶液中に一般式(1)で表される化合物を含む染毛料染料と、必要に応じてその他添加剤(助剤等)を添加することにより、pH6の染毛用組成物を得ることができる。
【0084】
本発明の染毛用組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、公知の化粧品用成分を添加してもよい。添加可能な化粧品用成分としては、高級アルコール、ワセリン、多価アルコール、エステル類、防腐剤、殺菌剤、シリコーン誘導体、水溶性高分子などがあげられる。
【0085】
本発明の染毛用組成物を用いる染毛方法としては、具体的には、例えば人の毛髪や家畜の毛などの染毛対象物に本発明の染毛用組成物を接触させることにより染毛することができる。染毛温度は、5~60℃であることが好ましく、頭皮付近で行うことを考慮すると、15~45℃であることがより好ましい。染毛時間は、5~60分が好ましく、10~30分がより好ましい。
【0086】
染毛後は通常、水洗や乾燥などの後処理を行う。水洗は、染毛料の色が完全に溶出しなくなるまで行えばよく、例えば、5~40℃、5~15L/分の流水で、0.5~2分間すすぐことにより行う。水洗後の乾燥は、自然乾燥(通常5~40℃で10分~10時間)でもよく、必要に応じて熱風乾燥機(通常40~60℃で10分~10時間)を用いてもよい。
【0087】
また、水洗後、ソーピングを行ってもよい。ソーピングは、例えばソーピング液(シャンプーとぬるま湯の混合液)を適量用いて、通常15~50℃の温度で1~10分間洗浄し、ソーピング液が完全に除去されるまで水洗することにより行う。
【0088】
以上のような形態により、本発明に係る化合物を含有する染毛用染料および染毛用組成物は、ヘアカラー、ヘアマニキュア、ヘアカラートリートメントのいずれにも優れた染着効果を発揮することができる。特に、染着力が弱いとされるヘアカラートリートメントに対しても効果を発揮することができる。
【実施例
【0089】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0090】
<試験検体の評価方法>
以下の実施例および比較例において、得られた試験検体の評価は分光測色計(株式会社カラーテクノシステム、JS555)を用いて行った。また、染毛濃度(K/S)は、以下の手順に従って算出した。染毛前(白髪)および染毛後(染毛)の試験検体の各波長(λ)における反射率(Rλ)を分光測色計で測定し、下記Kubelka-Munk式を用い、光学濃度(K/S)を算出した。染毛の光学濃度(K/S)から白髪の光学濃度(K/S)を差引いた値を染毛濃度(K/S)として求めた。
Kubelka-Munk式:
K/S=Σ(1-Rλ/2Rλ
λ:波長(λ)における反射率
λ: 400~700nm(10nm間隔)
【0091】
色味は、CIE L***表色系を用い、分光測色計によりL*、a*およびb*を測定した。L*は明度であり、大きいほど着色の強度は小さい。a*およびb*は色相と彩度を示す色度である。a*は、赤/緑の対の軸に対応し、プラスが赤、マイナスが緑である。b*は、黄/青の対の軸に対応し、プラスが黄、マイナスが青である。
【0092】
また、染毛前および染毛後の試験検体それぞれについて色味(L*、a*、b*)を測定し、その差ΔL*、Δa*およびΔb*の値から、下式により色差ΔE*および色相差ΔH*を算出した。
ΔE*={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
ΔH*={(Δa*)+(Δb*)1/2
【0093】
耐汗性は、未試験検体に対する下記耐汗性試験検体のK/Sの割合(残存率%)、色差(ΔE*)および色相差(ΔH*)を求め評価した。なお、ΔE*、ΔH*は株式会社カラーテクノシステム社製分光測色計JS555によりL*、a*およびb*を測定し下記に示す式により求めた。ΔE*は小さい方が変退色は少なく、またΔH*は小さい方が色相変化は少なく、耐汗性に優れていることを示す。
ΔE*={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
ΔH*={(Δa*)+(Δb*)1/2
【0094】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[合成実施例1] 化合物(A-1)の合成
反応容器にC.I.Basic Blue 75 50g、MeOH 500mL、水250mLを入れ、60℃に加熱し、C.I.Basic Blue 75を溶解した。この溶液にラウロイルグルタミン酸ナトリウム45.7gを入れ、60℃で2時間撹拌した。メタノールを減圧留去し、析出固体を水と濾別した。得られた固体を変性エタノール500mL中で、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分を除去し、溶媒を減圧留去する操作を2回繰り返し、下記式(A-1)で表される化合物(54.7g、収率62%)を得た。
【0096】
【化18】
【0097】
化合物(A-1)のNMR測定を行い、下記の結果を得た。
H NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm)=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.36(6H,t,J=7.6Hz),1.60-1.62(18H,m),2.23(2H,t,J=6.2Hz),2.28-2.32(2H,m),3.82(4H,m),4.26-4.28(1H,m),7.01(1H,d,J=2.8Hz),7.05(1H,d,J=2.8Hz),7.31-7.34(2H,m),7.39-7.40(2H,m),7.48-7.52(3H,m),7.78-7.80(2H,m).
【0098】
[合成実施例2] 化合物(A-2)の合成
反応容器にC.I.Basic Red 51 10gと水200mLを入れ、60℃に加熱しC.I.Basic Red 51を溶解した。この溶液にラウロイルグルタミン酸ナトリウム18.9gを入れ、60℃で1時間撹拌した。析出した固体と溶液をろ別し、得られた固体を変性エタノール100mL中で、60℃で1時間撹拌後、ろ過により不溶分除去後、溶媒を減圧留去し、下記式(A-2)で表される化合物(11.8g、収率57%)を得た。
【0099】
【化19】
【0100】
化合物(A-2)のNMR測定を行い、下記の結果を得た。
H NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm)=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.60-1.62(18H,m),2.23(2H,t,J=6.2Hz),2.28-2.32(2H,m),3.26(6H,s),4.04(6H,s),4.26-4.28(1H,m),6.94(2H,d,J=8.9Hz),7.50(2H,s),7.97(2H,d,J=8.9).
【0101】
[合成実施例3] 化合物(A-3)の合成
反応容器にC.I.Basic Violet 2 10gと水300mLを入れ、60℃に加熱しC.I.Basic Violet 2を溶解した。この溶液にラウロイルグルタミン酸ナトリウム18.9gを入れ、60℃で1時間撹拌した。溶液部分を除去し、得られた固体を変性エタノール500mL中で、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分除去後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を変性エタノール100mL中で、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分を除去し、溶媒を減圧留去し、下記式(A-3)で表される化合物(15.9g、収率89.7%)を得た。
【0102】
【化20】
【0103】
化合物(A-3)のNMR測定を行い、下記の結果を得た。
H NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm)=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.60-1.62(18H,m),2.11(9H,S),2.23(2H,t,J=6.2),2.28-2.32(2H,m),4.26-4.28(1H,m),6.78(3H,d,J=8.3Hz),6.93(3H,s),6.99(3H,d,J=8.3Hz).
【0104】
[合成実施例4] 化合物(A-4)の合成
反応容器にC.I.HC Blue 15 10gと水350mLを入れ、60℃に加熱しC.I.HC Blue 15を溶解した。この溶液にラウロイルグルタミン酸ナトリウム7.0gを入れ60℃で2時間撹拌した。溶液部分を除去して得られた固体を変性エタノール200mL中、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分を除去し、溶媒を減圧留去した。得られた固体を変性エタノール100mL中で、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分を除去し、溶媒を減圧留去し、下記式(A-4)で表される化合物(10.6g、収率73%)を得た。
【0105】
【化21】
【0106】
化合物(A-4)のNMR測定を行い、下記の結果を得た。
H NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm)=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.60-1.62(18H,m),2.21(12H,s),2.23(2H,t,J=6.2),2.28-2.32(2H,m),4.26-4.28(1H,m),7.14(4H,s),7.55-7.61(3H,m).
【0107】
[合成実施例5] 化合物(A-5)の合成
反応容器にC.I.Basic Brown 16 30gと水メタノール300mLを入れ、60℃に加熱しC.I.Basic Brown 16を溶解した。この溶液にラウロイルグルタミン酸ナトリウム29.5gを入れ、60℃で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去して得られた固体を、変性エタノール300mL中で、60℃で1時間撹拌し、ろ過により不溶分を除去した。溶媒を減圧留去して得られた固体を水150mL中で、60℃で1時間撹拌し、溶液をろ過により除く操作を3回繰り返し、得られた固体を乾燥し、下記式(A-5)で表される化合物(16.0g、収率29.3%)を得た。
【0108】
【化22】
【0109】
化合物(A-5)のNMR測定を行い、下記の結果を得た。
H NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm)=0.89(3H,t,J=6.9Hz),1.60-1.62(18H,m),2.23(2H,t,J=6.2Hz),2.28-2.32(2H,m),3.83(9H,s),4.26-4.28(1H,m),7.73(2H,d,J=8.9Hz),7.82(1H,d,J=8.9Hz),7.92(1H,d,J=9.6Hz),8.01(1H,d,J=9.6Hz),9.07(1H,s).
【0110】
[実施例1]
<染毛染色>
染毛用染料として化合物(A-3)16.5mg、エタノール100mg、界面活性剤としてトリメチルステアリルアンモニウムクロリド100mg、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース200mg、pH調整剤としてpH6水溶液9.53g(クエン酸・HO/クエン酸・三Na・2HO/水(1:11:988)水溶液)を混ぜ、染色ジェルを調製した。
次いで、染色する毛髪は、株式会社ビューラックス製白髪100%BM-Wを使用した。毛髪1質量部に対し染色ジェルを2質量部採り、毛髪にコームを用いて万遍なく塗付し、40℃で10分染色し、水洗した。
化合物(A-3)は、染毛染色に十分な水溶性を有し、染毛時の泡立ちが良好で、洗浄時および乾燥後に毛髪のパサツキがなく、また、毛髪のムラがなく、指通りが保持された試験検体を得ることができた。
【0111】
前記<試験検体の評価方法>により、試験前の試験検体の染毛濃度(K/S)および色味を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
<耐汗性試験>
十分に乾燥した試験検体について、下記の人工汗液(林純薬工業株式会社製)処理を行い、水洗した。
人工汗液処理:
・人工汗液成分
(酸性) 0.05%L-ヒスチジン塩酸塩一水和物
0.50%塩化ナトリウム
0.22%りん酸二水素ナトリウム二水和物
0.005%水酸化ナトリウム 水溶液(pH5.5)
(塩基性)0.05%L-ヒスチジン塩酸塩一水和物
0.50%塩化ナトリウム
0.50%りん酸水素二ナトリウム12水和物
0.007%水酸化ナトリウム水溶液(pH8.0)
・浴比: 1:10(染毛1質量部に対して処理液10質量部)
・処理温度:40℃
・処理時間:10分
上記の条件で人工汗液処理した毛髪試験検体について、染着濃度(K/S)を測定し残存率(%)を評価した。同様に、色味を測定し、試験前後の色相差(ΔH)を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0113】
【表1】
【0114】
[実施例2および実施例3]
実施例1の化合物(A-3)の代わりに、化合物(A-4)および(A-5)を用いた以外は、実施例1と同様に、染毛染色、染毛濃度測定および耐汗性試験を行った。得られた試験検体は、実施例1と同様に、水溶性、泡立ち、洗浄時および乾燥後に毛髪のパサツキがなく、また、毛髪のムラがなく、指通りが保持された試験検体を得ることができた。染毛濃度測定、耐汗試験の結果を表1に合わせて示す。
【0115】
[比較例1~比較例3]
実施例1の化合物(A-1)の代わりに、本発明の化合物に属さない染料である、C.I.Basic Violet 2、C.I.HC Blue 15およびC.I.Basic Brown 16を用いた以外は、実施例1と同様に、染毛染色、染毛濃度測定および耐汗性試験を行った。なお、上記の実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、および実施例3と比較例3で用いた染毛用組成物中のそれぞれの染料の濃度は、着色する毛髪の単位質量あたりの染料(発色に相当する成分のみ、非発色成分を除く)の質量が等しくなるように調整している(実際には、実施例と比較例の染料ジェルの溶液の吸光度測定により染料濃度を合わせて調整した)。これらの結果を表1に合わせて示す(表中の化合物の「C.I.」は省略している)。
【0116】
表1の結果から、本発明の化合物を含有する染毛用染料および染毛用組成物を用いたものは、従来の染料を用いたものよりも染毛濃度が高く、高い染毛力が得られることがわかった。また、酸性および塩基性の耐汗試験の結果から、比較例の染料よりも試験後の染毛濃度の残存率が高く、試験後の色相の変化も従来のものと同等であることがわかった。さらに、実施例の染毛用組成物を用いたものは、水溶性、泡立ち、洗浄時および乾燥後に毛髪のパサツキが有無や指通り指通りについて、比較例と同等の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る化合物および染毛用染料によれば、染毛力に優れ、水溶解性や泡立ちが良好で、洗浄時および乾燥後に毛髪の指通りを保持しながら、耐汗性に優れ、染色された毛髪の褪色を効果的に抑制することができる染毛用組成物を提供することができる。