IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デドン・コリア・ジンセン・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7350137連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法
<>
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図1
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図2
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図3
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図4
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図5
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図6
  • 特許-連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】連続式蒸曝及び複合濃縮技術を用いたプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230915BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230915BHJP
   A61K 36/258 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P3/06
A61K36/258
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022120635
(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公開番号】P2023118037
(43)【公開日】2023-08-24
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0017912
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522101852
【氏名又は名称】デドン・コリア・ジンセン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン-クン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン-スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン-ソン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】クン・ヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】キュン・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ソル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・チョン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・マン・コン
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017532(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0112455(KR,A)
【文献】韓国登録特許第2411106(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第2411104(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/
A61K 31/704
A61K 36/258
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)人参を蒸煮した後、乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参、敗醤根、タデ葉及びミゾソバ葉を混合した黒参混合物に水を添加して抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に酒精を添加して抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を、板状蒸発濃縮機で濃縮して熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする黒参濃縮液の製造方法。
【請求項2】
前記(2)段階の黒参混合物は、黒参混合物の総重量を基準に、黒参48~52重量%、敗醤根18~22重量%、タデ葉18~22重量%、及びミゾソバ葉8~12重量%を混合した黒参混合物であることを特徴とする請求項1に記載の黒参濃縮液の製造方法。
【請求項3】
(1)人参を蒸煮した後、乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参48~52重量%、敗醤根18~22重量%、タデ葉18~22重量%、及びミゾソバ葉8~12重量%を混合した黒参混合物に水を7~9倍(v/w)添加して抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、45~55℃で2~4時間浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥する過程を7~9回繰り返して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に酒精を添加して抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機において50~60℃で67~71brixで濃縮し、85~95℃で5~7時間熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする請求項2に記載の黒参濃縮液の製造方法。
【請求項4】
(1)人参を90~110℃で1~3時間蒸煮した後、45~55℃で水分含量が12~18%(v/w)以内になるように乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参48~52重量%、敗醤根18~22重量%、タデ葉18~22重量%、及びミゾソバ葉8~12重量%を混合した黒参混合物に水を7~9倍(v/w)添加して80~90℃で1~3時間抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、45~55℃で2~4時間浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥する過程を7~9回繰り返して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に60~80%(v/v)酒精を7~9倍(v/w)添加して55~60℃で1~3時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機において50~60℃で67~71brixで濃縮し、85~95℃で5~7時間熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする請求項3に記載の黒参濃縮液の製造方法。
【請求項5】
前記(4)段階の黒参は、連続式蒸曝器に紅参を入れ、50~55℃の温度及び90~95%の湿度で60~90分間処理した後、90~95℃の温度及び90~95%の湿度で4~8時間処理する蒸参;90~95%の湿度で60~90分間45~55℃に降温した後、90~95%の湿度で60~90分間25~30℃に降温する冷却;及び連続式蒸曝器に水分を供給していない状態で50~55℃で乾燥;する前記蒸参、冷却及び乾燥する過程を7~9回繰り返して製造することを特徴とする請求項4に記載の黒参濃縮液の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち、いずれか1項に記載の方法で製造された、黒参濃縮液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)人参を蒸煮した後、乾燥して紅参を製造する段階;(2)黒参、敗醤根、タデ葉及びミゾソバ葉を混合した黒参混合物に水を添加して抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階;(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に浸漬した後、取り出す段階;(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥して黒参を製造する段階;(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に酒精を添加して抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階;及び(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機で濃縮して熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする黒参濃縮液の製造方法及び該方法で製造された黒参濃縮液に関する。
【背景技術】
【0002】
ジンセノサイド(ginsenoside)は、人参にあるサポニンであって、最近、抗癌、抗酸化、コレステロール低下効果が明らかになりつつ、生理活性物質として脚光を浴びている。人参サポニンは、他の植物で見出されるサポニンとは異なる特異な化学構造を有しており、薬理効能も特異的であり、人参(ginseng)配糖体(glycoside)という意味として「ジンセノサイド」とも呼ばれる。
【0003】
紅参特有の成分は、人参サポニン配糖体が熱によって加水分解されて生成されるプロサポゲニン(prosapogenin)形態の人工物であるが、紅参の製造時に生成されるプロサポゲニン成分は、ジンセノサイドRg5、Rg6、Rk1、Rk3、Rh4、F1、F4などが注目されている。
【0004】
紅参は、一回の蒸し干し過程を経るのに対して、黒参は、3回以上の蒸し干し過程を経るが(特に、9回の蒸し干し過程を経る黒参を、九蒸九暴黒参とも称する)、黒参の製造過程において色相が白色(水参、白参)→赤茶褐色(紅参)→黒茶褐色(黒参)に変わり、味と有用性も変わる。黒参の製造時に生成される人参プロサポゲニン成分は、ジンセノサイドRg2、Rg3、Rg5、Rg6、Rk1、Rk3、Rh1、Rh2、Rh4、F1、F4などがある。
【0005】
特許文献1には、黒参及び黒参濃縮液の製造方法が開示されており、特許文献2には、活性成分の含量に優れた黒参及び黒参濃縮液が開示されているが、本発明のプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加した黒参濃縮液の製造方法とは互いに異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第0753771号
【文献】韓国登録特許第0543862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、前記のような要求によって案出されたものであって、黒参特有のプロサポゲニンジンセノサイド含量が増加しつつ、さらに効率よく蒸曝及び濃縮して生産効率が高く、品質及び嗜好度が増進した黒参濃縮液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は、(1)人参を蒸煮した後、乾燥して紅参を製造する段階;(2)黒参、敗醤根、タデ葉及びミゾソバ葉を混合した黒参混合物に水を添加して抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階;(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に浸漬した後、取り出す段階;(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥して黒参を製造する段階;(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に酒精を添加して抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階;及び(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機で濃縮して熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする黒参濃縮液の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記方法で製造された黒参濃縮液を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の黒参濃縮液は、製造過程で有効成分損失を最小化しつつ、さらに効率的な生産が可能であり、かつ特定のジンセノサイド含量を増進させ、風味及び嗜好度に優れた利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の黒参濃縮液の製造工程を図式化した図面である。
図2】本発明の黒参を製造するために蒸参、冷却及び乾燥時に使用した連続式蒸曝黒参製造機を示す概路図である。
図3】本発明の蒸曝回数による紅参及び黒参の外観を比較した写真である。
図4】黒参抽出液を濃縮するための減圧濃縮機と板状蒸発濃縮機の原理を比較した概路図である。
図5】本発明の黒参抽出液を濃縮するための板状蒸発濃縮機と連続式熱処理過程を示す概路図である。
図6】本発明の紅参粉末、一般蒸曝黒参粉末、連続蒸曝黒参粉末の写真を比較した図面である。
図7】連続式熱処理時間による黒参濃縮液のジンセノサイド含量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的を達成するために本発明は、
(1)人参を蒸煮した後、乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参、敗醤根、タデ葉及びミゾソバ葉を混合した黒参混合物に水を添加して抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に酒精を添加して抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機で濃縮して熱処理する段階と、を含めて製造することを特徴とする黒参濃縮液の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(1)段階の紅参は、望ましくは、人参を90~110℃で1~3時間蒸煮した後、45~55℃で水分含量が12~18%(v/w)以内になるように乾燥して製造し、さらに望ましくは、人参を100℃で2時間蒸煮した後、50℃で水分含量が15%(v/w)以内になるように乾燥して、黒参製造に適した紅参として製造することができる。
【0014】
また、本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(2)段階の植物混合抽出物は、望ましくは、黒参混合物の総重量を基準に、黒参48~52重量%、敗醤根18~22重量%、タデ葉18~22重量%、及びミゾソバ葉8~12重量%を混合した黒参混合物に水を7~9倍(v/w)添加して80~90℃で1~3時間抽出した後、濾過して製造し、さらに望ましくは、黒参混合物の総重量を基準に、黒参50重量%、敗醤根20重量%、タデ葉20重量%、及びミゾソバ葉10重量%を混合した黒参混合物に水を8倍(v/w)添加して85℃で2時間抽出した後、濾過して製造することができる。前記のように製造された植物混合抽出物を用いて紅参を浸漬することが、紅参の有効成分の溶出を最小化しつつ、紅参内のジンセノサイド含量をさらに増進させ、まろやかで嗜好度に優れた紅参に前処理することができた。
【0015】
また、本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(3)段階は、望ましくは、紅参を植物混合抽出物に、45~55℃で2~4時間浸漬した後、取り出し、さらに望ましくは、紅参を植物混合抽出物に、50℃で3時間浸漬した後、取り出す。前記のような条件によって浸漬することが、さらに効率的に浸漬しつつ、特定のジンセノサイド含量もさらに高めることができた。
【0016】
また、本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(4)段階の黒参は、望ましくは、連続式蒸曝器に紅参を入れ、50~55℃の温度及び90~95%の湿度で60~90分間処理した後、90~95℃の温度及び90~95%の湿度で4~8時間処理する蒸参;90~95%の湿度で60~90分間45~55℃に降温した後、90~95%の湿度で60~90分間25~30℃に降温する冷却;及び連続式蒸曝器に水分を供給していない状態で50~55℃で乾燥;する前記蒸参、冷却及び乾燥する過程を7~9回、さらに望ましくは、前記蒸参、冷却及び乾燥する過程を8回繰り返して製造することができる。
【0017】
通常、黒参を製造する過程で蒸参及び乾燥時に水蒸気が発生する蒸参器で蒸参した後、乾燥器に移して乾燥させて製造したが、本発明は、水分供給、水分排出及び温度上昇が可能な連続式蒸曝器を通じて蒸曝と乾燥とを実施し、さらに効率的に蒸参及び乾燥を実施し、収率も高く、製造過程での有効成分の損失も最小化しつつ、最終黒参の特定ジンセノサイド含量も増進させることができた。
【0018】
また、本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(5)段階の黒参抽出液は、望ましくは、黒参を粉砕した黒参粉砕物に60~80%(v/v)酒精を7~9倍(v/w)添加して55~60℃で1~3時間抽出した後、濾過して製造し、さらに望ましくは、黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加して、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して、黒参内の有効成分をより最大に抽出することができた。
【0019】
また、本発明の黒参濃縮液の製造方法において、前記(6)段階は、望ましくは、黒参抽出液を板状蒸発濃縮機において50~60℃で67~71brixで濃縮し、85~95℃で5~7時間熱処理し、さらに望ましくは、黒参抽出液を板状蒸発濃縮機において55℃で69brixで濃縮し、85~95℃で6時間熱処理する。黒参抽出液を前記のような条件で濃縮した後、熱処理して、特定ジンセノサイド含量を高めつつ、さらに効率的に濃縮することができた。
【0020】
本発明の黒参濃縮液の製造方法は、さらに具体的には、
(1)人参を90~110℃で1~3時間蒸煮した後、45~55℃で水分含量が12~18%(v/w)以内になるように乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参48~52重量%、敗醤根18~22重量%、タデ葉18~22重量%、及びミゾソバ葉8~12重量%を混合した黒参混合物に水を7~9倍(v/w)添加して80~90℃で1~3時間抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、45~55℃で2~4時間浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥する過程を7~9回繰り返して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に60~80%(v/v)酒精を7~9倍(v/w)添加して55~60℃で1~3時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を板状蒸発濃縮機において50~60℃で67~71brixで濃縮し、85~95℃で5~7時間熱処理する段階と、を含み、
さらに具体的には、
(1)人参を100℃で2時間蒸煮した後、50℃で水分含量が15%(v/w)以内になるように乾燥して紅参を製造する段階と、
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参50重量%、敗醤根20重量%、タデ葉20重量%、及びミゾソバ葉10重量%を混合した黒参混合物に、水を8倍(v/w)添加して、85℃で2時間抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造する段階と、
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、50℃で3時間浸漬した後、取り出す段階と、
(4)連続式蒸曝器に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥する過程を8回繰り返して黒参を製造する段階と、
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加して、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造する段階と、
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を、板状蒸発濃縮機を用いて55℃で69brixで濃縮し、85~95℃で6時間熱処理する段階と、を含む。
【0021】
また、本発明は、前記方法によって製造された黒参濃縮液を提供する。
【0022】
本発明の黒参濃縮液は、黒参の製造時に生成されるプロサポゲニンジンセノサイド含量が増進することを特徴とし、前記プロサポゲニンジンセノサイドは、Rk1、Rg5及びRg3からなる群から選択される1つ以上のジンセノサイドでもあるが、それらに制限されない。
【0023】
以下、本発明の製造例及び実施例に基づいて詳細に説明する。但し、下記製造例及び実施例は、本発明の一例示に過ぎず、本発明の内容が、下記製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0024】
製造例1.黒参濃縮液(抽出物浸漬-連続式蒸曝-板状蒸発濃縮-熱処理)
(1)人参を100℃で2時間1回蒸煮した後、50℃で水分含量が15%以内になるように乾燥して紅参を製造した。
【0025】
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参50重量%、敗醤根(オミナエシ)20重量%、タデ葉20重量%、及びミゾソバ葉10重量%を混合した黒参混合物に精製水を8倍(v/w)添加して85℃で2時間抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造した。
【0026】
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、50℃で3時間浸漬した後、取り出した。
【0027】
(4)連続式蒸曝黒参製造機に、前記(3)段階で取り出した紅参を入れ、蒸参、冷却及び乾燥する過程を8回繰り返して黒参を製造した。
【0028】
前記蒸参、冷却及び乾燥は、50~55℃の温度及び90~95%の湿度で30~60分間予熱された連続式蒸曝黒参製造機に、前記浸漬した紅参を入れ、常圧を保持しつつ、50~55℃の温度及び90~95%の湿度(反応器内に水分供給)で60~90分間処理した後、90~95℃の温度及び90~95%の湿度で4~8時間処理する蒸参段階;90~95%の湿度で60~90分間45~55℃に降温した後、90~95%の湿度で60~90分間25~30℃に降温する冷却段階;及び、連続式蒸曝黒参製造機に水分を供給していない状態で50~55℃で乾燥する乾燥段階;といった前記蒸参、冷却及び乾燥段階を、8回繰り返して黒参を製造した。
【0029】
前記乾燥時、1~7回目には、5~9時間実施し、8回目には、36~72時間実施し、最終黒参の水分含量が16%以内になるようにした。
【0030】
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加し、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造した。
【0031】
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を、板状蒸発濃縮機を用いて、55℃で69brixで濃縮し、85~95℃で6時間熱処理した(図1)。
【0032】
比較例1.黒参濃縮液(水浸漬-一般蒸曝-減圧濃縮)
(1)人参を100℃で2時間1回蒸煮した後、50℃で水分含量が15%以内になるように乾燥して紅参を製造した。
【0033】
(2)前記(1)段階で製造した紅参を、精製水に、50℃で3時間浸漬した後、取り出した。
【0034】
(3)蒸煮器の水槽に精製水を入れ、蒸篭に前記(2)段階で取り出した紅参を載置して100℃で4~8時間蒸参する蒸参段階;蒸煮器の火を消して25~30℃に降温する冷却段階;熱風乾燥器に移して50~55℃で乾燥する乾燥段階;といった前記蒸参、冷却及び乾燥段階を8回繰り返して黒参を製造した。
【0035】
前記乾燥時、1~7回目には、5~9時間実施し、8回目には、36~72時間実施して、最終黒参の水分含量が16%以内になるようにした。
【0036】
(4)前記(3)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加し、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造した。
【0037】
(5)前記(4)段階で製造した黒参抽出液を、減圧濃縮機を用いて65~70℃で69brixで濃縮した。
【0038】
比較例2.黒参濃縮液(連続式蒸曝-板状蒸発濃縮-熱処理)
(1)人参を100℃で2時間1回蒸煮した後、50℃で水分含量が15%以内になるように乾燥して紅参を製造した。
【0039】
(2)前記(1)段階で製造した紅参を精製水に50℃で3時間浸漬した後、取り出した。
【0040】
(3)前記(2)段階で取り出した紅参を用いて製造例1の(4)ないし(6)段階と同じ方法で黒参濃縮液を製造した。
【0041】
比較例3.黒参濃縮液(抽出物浸漬-一般蒸曝-板状蒸発濃縮-熱処理)
(1)人参を100℃で2時間1回蒸煮した後、50℃で水分含量が15%以内になるように乾燥して紅参を製造した。
【0042】
(2)黒参混合物の総重量を基準に、黒参50重量%、敗醤根(オミナエシ)20重量%、タデ葉20重量%、及びミゾソバ葉10重量%を混合した黒参混合物に、精製水を8倍(v/w)添加して85℃で2時間抽出した後、濾過して植物混合抽出物を製造した。
【0043】
(3)前記(1)段階で製造した紅参を、前記(2)段階で製造した植物混合抽出物に、50℃で3時間浸漬した後、取り出した。
【0044】
(4)蒸煮器の水槽に精製水を入れ、蒸篭に前記(3)段階で取り出した紅参を載置し、100℃で4~8時間蒸参する蒸参段階;蒸煮器の火を消して25~30℃に降温する冷却段階;熱風乾燥器に移して50~55℃で乾燥する乾燥段階;といった前記蒸参、冷却及び乾燥段階を8回繰り返して黒参を製造した。
【0045】
前記乾燥時、1~7回目には、5~9時間実施し、8回目には、36~72時間実施して、最終黒参の水分含量が16%以内になるようにした。
【0046】
(5)前記(4)段階で製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加して、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造した。
【0047】
(6)前記(5)段階で製造した黒参抽出液を、板状蒸発濃縮機を用いて55℃で69brixで濃縮し、85~95℃で6時間熱処理した。
【0048】
比較例4.黒参濃縮液(抽出物浸漬-連続式蒸曝-減圧濃縮-熱処理)
(1)製造例1の(1)ないし(5)段階と同じ方法で黒参抽出液を製造した。
【0049】
(2)前記(1)段階で製造した黒参抽出液を、減圧濃縮機を用いて65~70℃で69brixで濃縮し、85~95℃で6時間熱処理した。
【0050】
1.黒参濃縮液の製造
(1)紅参準備
人参を100℃で2時間1回蒸煮した後、50℃で水分含量が15%以内になるように乾燥して紅参を製造した。
【0051】
(2)浸漬
前記製造した紅参を植物混合抽出物に50℃で3時間浸漬した後、取り出した。
【0052】
(3)連続蒸曝
本発明の紅参の連続蒸曝のために使用した連続式蒸曝黒参製造機の概路図は、図2の通りである。反応部内部の蒸篭において蒸参と乾燥とを進め、反応部内の温度、湿度及び時間を制御することができる制御部の制御板がある。
【0053】
連続式蒸曝黒参製造機の反応部内の蒸篭に、前記浸漬した後、取り出した紅参を載置し、下記表1のような条件で蒸参、冷却及び乾燥する過程を8回繰り返して黒参を製造した。湿度は、水が含まれた貯水タンクから連続式蒸曝黒参製造機の反応部への水分供給を通じて高い湿度を保持し、電気熱を加えて反応部の温度を高めて蒸参した。前記蒸参時、内部圧力が常圧を保持するように、蒸気排出ラインに蒸気が排出されるようにした。
【0054】
また、乾燥時、連続式蒸曝黒参製造機の反応部内の蒸気を排出した後、電気熱によって反応部を加温して乾燥を進めた。最後の乾燥時、最終黒参の水分含量が16%以内になるように36~72時間乾燥させた(図2及び図3)。
【0055】
【表1】
【0056】
(4)酒精抽出
前記製造した黒参を粉砕した黒参粉砕物に、70%(v/v)酒精を8倍(v/w)添加し、55~60℃で2時間抽出した後、濾過して黒参抽出液を製造した。
【0057】
(5)複合濃縮技術
通常、使用する減圧濃縮機を使用した減圧濃縮方式は、濃縮過程でタンクの二重ジャケット内部にスチームが供給され、この際、抽出液の蒸発過程でジャケットの接触面で瞬間的な熱衝撃によって持続的な成分破壊の可能性がある(図4)。
【0058】
本発明で使用した板状蒸発濃縮機(plate evaporator)は、平板状加熱濃縮機、プレート濃縮機または板状蒸発濃縮システムであると呼ばれ、前記のような減圧濃縮の短所を補って、抽出液の熱損を最小化する。また、多数のプレートの間に形成された空間から加熱、冷却、蒸発、凝縮がなされる方式であって、減圧濃縮方式に比べて優れた効率性を有するという利点がある。
【0059】
前記製造した黒参抽出液を、多数のプレートが積層されている板状蒸発濃縮機の下部に供給すれば、上部から供給されるスチームによって抽出液から水蒸気が発生して蒸気として排出され、スチームは、冷却水の供給によって凝縮されて凝縮数の形態に排出され、蒸気として排出されて残った抽出液は、濃縮された形態に得られ、最終69brixの黒参濃縮液を回収した(図4及び表2)。
【0060】
前記回収した黒参濃縮液を熱処理システムに移して85~95℃で6時間熱処理した(図5)。
【0061】
【表2】
【0062】
2.ジンセノサイド含量測定方法
ジンセノサイドの含量分析は、UVD(Ultra Visible Detector)が装着されたHPLC(High Performance Liquid Chromatography)で分析し、分析条件は、下記表3の通りであり、含量計算式は、下記式の通りである。
ジンセノサイド含量(mg/g)=S×(a×b)/試料採取量(g)
S:試験溶液中の個別ジンセノサイド濃度(mg/ml)
a:試験溶液の全量(ml)
b:希釈倍数
【0063】
【表3】
【0064】
実施例1.植物混合抽出物への浸漬条件確立
紅参を、植物混合抽出物に浸漬する温度、及び時間別水分含量と紅参成分流出程度とを比較した。
【0065】
水分含量の結果、処理温度が10℃及び30℃である場合、6時間浸漬しても、紅参内の水分含量が50%以下であり、50℃以上に浸漬して初めて、浸漬効率がよくなると示された(表4)。
【0066】
【表4】
【0067】
浸漬条件別浸漬液と浸漬後原料紅参のBrixと3種(Rb1、Rg1、Rg3の和)及び黒参3種(Rk1、Rg5、Rg3の和)の含量を比較した結果は、下記表5の通りである。
その結果、浸漬温度及び時間が長くなるほど、浸漬液内のジンセノサイドの流出程度が高くなることを確認した。また、浸漬後原料紅参の黒参3種ジンセノサイド含量は、50℃で3時間浸漬することが最も高いと示され、前記条件で浸漬することに最終決定した。
【0068】
【表5】
【0069】
実施例2.蒸参回数による流出液分析及び収率
通常、蒸し器を用いて蒸参する一般蒸参方法と本発明の連続式蒸曝黒参製造機を用いて水分供給を通じて蒸参する方法によって発生した流出液(1~8回の和)内のジンセノサイド含量を分析した結果は、下記表6の通りである。
【0070】
その結果、本発明の連続式蒸曝黒参製造機を用いる場合、流出液内のRg1、Rb1及びRg3が検出されておらず、一般蒸参時、Rg1及びRb1が検出されることを確認した。
【0071】
【表6】
【0072】
また、蒸参方法による黒参内の水分含量と重量収率とを比較した結果、9回蒸曝時、水分含量では、特に差が見られず、収率は、連続式蒸曝黒参製造機を用いた場合がさらに高く示された(表7)。また、黒参を粉砕した粉砕物において連続式蒸曝黒参粉末の黒色がさらに濃く現われることを確認した(図6)。
【0073】
【表7】
【0074】
実施例3.黒参のジンセノサイド含量
【0075】
通常、蒸し器を用いて蒸参する一般蒸参方法と本発明の連続式蒸曝黒参製造機を用いて水分供給を通じて蒸参する連続式蒸参方法をによって製造した黒参のジンセノサイド含量は表8の通りである。
【0076】
その結果、3回蒸曝に比べて、9回蒸曝時、Rg3(S)+Rk1+Rg5の和がさらに増進した。特に、本発明の連続式蒸曝黒参製造機を用いた黒参が一般蒸参黒参に比べて、69.75%さらに増加した。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例4.濃縮方法による黒参濃縮液の収率及びジンセノサイド含量
減圧濃縮と板状蒸発濃縮方式で濃縮した黒参濃縮液の生産効率とジンセノサイド含量とを比較した結果は、下記表9の通りである。
【0079】
通常の減圧濃縮時、スチーム温度が急上昇して濃縮液の品質に影響を与え、一方、本発明で使用した板状蒸発濃縮方式は、比較的低い温度で濃縮が可能であり、スチーム温度に影響を受けない。また、生産効率も、約8倍高く、抽出液を濃縮液として製造するとき、ジンセノサイドの損失なしに濃縮させうるということを確認した(表9)。
【0080】
【表9】
【0081】
実施例5.黒参濃縮液の官能検査
官能検査は、大人40人を対象として、それぞれの製造方法を異ならせた製造例1と比較例1ないし4の黒参濃縮液を、好みによって希釈して摂取させた後、異臭、苦味、全体的な選好度を評価するようにした。異臭及び苦味は、その程度が低くなるほど、高い点数を与えるようにし、全体的な選好度は、さらに選好する濃縮液にさらに高い点数を与えるようにし、5点尺度法で評価した。
【0082】
【表10】
【0083】
その結果、製造例1の抽出物浸漬、連続式蒸曝、板状蒸発濃縮及び熱処理過程を経て製造した黒参濃縮液が、比較例の黒参濃縮液に比べてさらに選好することを確認された。
【0084】
実施例6.連続式熱処理工程によるジンセノサイド変化
板状蒸発濃縮した黒参濃縮液の連続式熱処理時、熱処理時間によるジンセノサイド含量を比較した結果は、下記表11の通りである。
【0085】
【表11】
【0086】
その結果、Rg3、Rk1及びRg5含量がいずれも6時間熱処理時に最も高い含量を示した(図7)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7