(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】バックパック
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
A45F3/04 300
(21)【出願番号】P 2022501566
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007159
(87)【国際公開番号】W WO2021166235
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畠 誠
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0308086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0099932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0008404(US,A1)
【文献】特許第4677513(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3082428(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00-3/15
A45F 4/02-4/12
A45C 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有する本体部と、
前記本体部の上部から伸びる肩ベルト部と、
を備え、
前記本体部には、前記収容部内で収容物を着用者の背中側に付勢し得る態様にて前記収容部内を通る締付ストラップが取り付けられ、
前記締付ストラップは、一端が直接的または間接的に前記収容部の下部の所定位置に留められ、前記所定位置から前記収容部内を通って前記肩ベルト部に沿って取り付けられ、他端が着用者の肩の頂点より前面側に位置するように配置されるとともに、着用者の前面側の位置において締付長さが調整可能であることを特徴とするバックパック。
【請求項2】
前記締付ストラップは、複数の締付ストラップで構成され、前記収容部内において各締付ストラップの両端が対角に位置するよう配置されることにより前記収容部内で前記複数の締付ストラップが交差し、その交差する前記複数の締付ストラップが前記収容部内において収容物を着用者の背中側に付勢し得るよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のバックパック。
【請求項3】
前記本体部の下部から前面側に向けて伸び、前記肩ベルト部の下端と接続される脇ベルト部をさらに備え、
前記脇ベルト部には、着用者の前面側の位置において締付長さが調整可能である補助ストラップが前記本体部の下部から前面側へ前記脇ベルト部に沿って取り付けられ、
前記補助ストラップは、その締付長さの調整により前記本体部の下部において前記本体部を着用者の背中側に付勢し得るよう配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のバックパック。
【請求項4】
前記補助ストラップは、複数の補助ストラップで構成され、
前記脇ベルト部は、左右に配置された複数の脇ベルト部で構成され、
前記複数の補助ストラップは、それぞれの一端が前記本体部に留められ、それぞれの他端同士が左右の脇ベルト部に挟まれた着用者の前面側の位置にて所定の長さ調整部材を介して接続されることを特徴とする請求項3に記載のバックパック。
【請求項5】
前記補助ストラップは、複数の補助ストラップで構成され、前記本体部の下部において各補助ストラップの両端が対角に位置するよう配置されることにより前記本体部の下部中央で前記複数の補助ストラップが交差することを特徴とする請求項3に記載のバックパック。
【請求項6】
前記締付ストラップは、非伸縮性の素材で形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバックパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックパックに関する。特に、トレイルランニングに使用されるバックパックに関する。
【背景技術】
【0002】
トレイルランニングにおいては、競技の特性上または規定上、選手はバックパックを背負う必要がある。バックパックに収容する荷物は、走行距離や補給の条件等によって体積も重量も様々である。競技における走行距離は数十kmから百数十kmなど長い場合が多く、走りやすさや身体への負担軽減のために、身体への密着度が高いベスト型が主流となり、衣服に近い形態となっている。また、身体への密着度を高めるために胸部のストラップを強く締め付けて調節するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-148036号公報
【文献】特許第4677513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バックパック自体の密着度は高まっても、収容物が内部で揺れてしまえばバックパック全体へその揺れが伝搬しやすいため、着用者にはバックパック自体の揺れとして感じさせてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、収容物の揺れを抑制するバックパックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のバックパックは、収容部を有する本体部と、本体部の上部から伸びる肩ベルト部と、を備える。本体部には、収容部内で収容物を着用者の背中側に付勢し得る態様にて収容部内を通る締付ストラップが取り付けられ、締付ストラップは、一端が直接的または間接的に収容部の下部の所定位置に留められ、所定位置から収容部内を通って肩ベルト部に沿って取り付けられ、他端が着用者の肩の頂点より前面側に位置するように配置されるとともに、着用者の前面側の位置において締付長さが調整可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、収容物の揺れを抑制するバックパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】前面側から見たバックパックの外観図である。
【
図3】締付ストラップおよび補助ストラップの配置例を示す図である。
【
図4】バックパックの使用状態におけるストラップの付勢方向を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態における締付ストラップの構造を示す図である。
【
図7】第3の実施の形態における締付ストラップおよび付勢ベルトの構造を示す図である。
【
図8】第4の実施の形態における締付ストラップおよび補助布材の構造を示す図である。
【
図9】第5の実施の形態における締付ストラップおよび小型補助布材の構造を示す図である。
【
図10】第6の実施の形態における締付ストラップおよび付勢ストラップの構造を示す図である。
【
図11】第7の実施の形態における締付ストラップおよび付勢ストラップの構造を示す図である。
【
図12】第8の実施の形態における締付ストラップの構造を示す図である。
【
図13】第9の実施の形態における締付ストラップおよび補助布材の構造を示す図である。
【
図14】第10の実施の形態における締付ストラップおよび補助布材の構造を示す図である。
【
図15】第11の実施の形態における締付ストラップおよび補助布材の構造を示す図である。
【
図16】第12の実施の形態における締付ストラップの配置および構造を示す図である。
【
図17】第13の実施の形態における補助ストラップの配置および構造を示す図である。
【
図18】第14の実施の形態における補助ストラップの配置および構造を示す図である。
【
図19】第15の実施の形態における締付ストラップと複数の留め具の配置および第1の使用例を示す図である。
【
図20】第15の実施の形態における締付ストラップと複数の留め具の配置および第2の使用例を示す図である。
【
図21】第16の実施の形態における締付ストラップと留め付け構造に関する第1の使用例を示す図である。
【
図22】第16の実施の形態における締付ストラップと留め付け構造に関する第2の使用例を示す図である。
【
図23】第16の実施の形態における締付ストラップと留め付け構造に関する第3の使用例を示す図である。
【
図24】第17の実施の形態における締付ストラップとダイヤル式締付機構の配置を示す図である。
【
図25】第18の実施の形態におけるバックパック全体の外観図である。
【
図26】第18の実施の形態における前面側から見たバックパックの外観図である。
【
図27】第18の実施の形態における締付ストラップおよび補助ストラップの配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
本実施の形態においては、バックパックの本体部内部に、交差する複数の締付ストラップおよび交差する複数の補助ストラップを設ける。その複数の締付ストラップおよび複数の補助ストラップによって収容物およびバックパック本体部を着用者の背中側に付勢する。これにより、バックパック着用者の走行時に収容物が揺れることを抑制し、バックパック全体の揺れも抑制する。
【0010】
図1は、バックパック全体の外観図である。バックパック100は、本体部10と、肩ベルト部30と、脇ベルト部50と、を備える。本実施の形態におけるバックパック100は、主にトレイルランニングで使用されることを前提とするバックパックであり、衣服のように着用して身体への密着度を高められるようなベスト型バックパックとして形成される。したがって、本体部10と肩ベルト部30と脇ベルト部50が一着の衣服のように連続して一体的に構成される。ただし、本バックパックの用途はトレイルランニングに限定されるものではなく、一般的なランニングにも使用することができる。その他、ランニング以外の用途、例えばスピードハイク、ファストパッキング、トレッキング等の軽登山や日常生活で荷物を運ぶためのバックパックとしても使用することができる。本体部10、肩ベルト部30、脇ベルト部50の境は厳密に規定されるものではなく、境界線も外観には表れないが、境目の一例を目安として図示する。図において、肩ベルト部30はおおむね肩から前身頃にかけての部分を指し、例えば第1鎖線31aから第2鎖線31bにかけての部分が右肩ベルト部30aであり、第3鎖線31cから第4鎖線31dにかけての部分が左肩ベルト部30bである。脇ベルト部50はおおむね脇腹や胴周りに当たる部分を指し、例えば第2鎖線31bから第5鎖線31eにかけての部分が右脇ベルト部50aであり、第4鎖線31dから第6鎖線31fにかけての部分が左脇ベルト部50bである。残りの部分、例えば第1鎖線31a、第2鎖線31b、第5鎖線31e、第6鎖線31fで囲まれた部分が本体部10である。ただし、変形例においては、トレイルランニング用のベスト型ではない典型的なバックパックのように、本体部10と肩ベルト部30と脇ベルト部50のうち少なくともいずれかが他の部分から分離して形成されてもよい。例えば、肩ベルト部30と脇ベルト部50が分離して形成され、肩ベルト部30と脇ベルト部50が所定のストラップで接続される形で構成されてもよい。あるいは、脇ベルト部を設けずに本体部10と肩ベルト部30だけで構成され、肩ベルト部30が本体部10の下部と所定のストラップで接続される形で構成されてもよい。
【0011】
本体部10は、バックパック100を身体に装着した着用者の背中側に位置する部分である。本体部10は、複数枚の生地が積層された状態で縁部を縫い合わされて構成され、その積層された生地の間の空間として、装備や携行品等の荷物を収容できる収容部12を有する。本体部10の外表面中央には、上下方向に開閉できるファスナー14が設けられ、そのファスナー14を開放したときに、内部空間である収容部12内に携行品を出し入れできる。ファスナー14の長さは、本体部10全体の上下方向長さの約2/3程度であり、収容部12の上下方向の大きさもまた本体部10全体の上下方向長さの約2/3程度である。収容部12は、本体部10の上部容積の大部分を占めるほどの主要な荷室であり、他のポケット等より容量が大きい。ここで、バックパック100をトレイルランニングに用いる場合、重い荷物は腰に近い低い位置よりも、できるだけ首や肩に近い背中に載せるような形で高い位置に重心を保つことが走行時としては望ましい。したがって、収容部12の大部分が本体部10の上半分を占めるよう収容部12を本体部10の上部に設け、収容部12が本体部10の下部、特に最下端まで続かない構造とし、重い荷物が低い位置まで下がらないようにしている。
【0012】
肩ベルト部30は、本体部10の上部から着用者の肩の上を通って前面側の前身頃に相当する部分に向けて連続して形成される帯状部分であり、着用者の右肩側に伸びる右肩ベルト部30aと、左肩側に伸びる左肩ベルト部30bとを含む。右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bには、着用者の前面側においてドリンクボトルやソフトフラスク等を収容できる右胸ポケット34aおよび左胸ポケット34bが設けられる。上部胸ストラップ35、第1留め具36a、第2留め具36b、下部胸ストラップ37、第3留め具38a、第4留め具38bについては、次図において説明する。
【0013】
脇ベルト部50は、本体部10の下部から着用者の脇腹の横を通って前面側に向けて連続して形成される帯状部分であり、着用者の右脇側に伸びる右脇ベルト部50aと、左脇側に伸びる左脇ベルト部50bとを含む。右脇ベルト部50aには右脇ポケット54aが設けられ、左脇ベルト部50bには左脇ポケット54bが設けられる。右脇ベルト部50aの前面側端部は、その上部が右肩ベルト部30aと連続して形成されることによって接続される。左脇ベルト部50bの前面側端部は、その上部が左肩ベルト部30bと連続して形成されることによって接続される。
【0014】
このように、本体部10、肩ベルト部30、脇ベルト部50が連続して環状に形成されることで衣服のようなベスト型のバックパックが構成され、また環状部分の内側に形成される右腕通し部16aおよび左腕通し部16bに着用者が両腕を通すことで衣服のようにバックパック100を着用できる。
【0015】
本体部10には、収容部12内で収容物を着用者の背中側に付勢し得る態様にて収容部12内を通る複数の締付ストラップ32が取り付けられる。締付ストラップ32は、一端が直接的または間接的に収容部12の下部の所定位置に留められ、その所定位置から収容部12内の中央付近を通って肩ベルト部30に沿って取り付けられ、他端が着用者の肩の頂点より前面側に位置するように配置される。締付ストラップ32は、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bで構成される。締付ストラップ32は、幅1cm~3cmの非伸縮性のテープ状素材、例えばナイロン等の合成繊維で形成される。ただし変形例においては、締付ストラップ32として締付状態を損なわない程度の伸縮性を持たせた素材を用いてもよい。本実施の形態における右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bは、図示する通り、本体部10の上部、特に収容部12の内部においてファスナー14を開けた開口部の中心位置近辺で交差する。この交差位置は、本体部10の上部に設けられた収容部12の中心位置に相当し、収容部12の荷物の中心付近に交差部分が当たるよう設計されている。
【0016】
右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bは、少なくとも肩に当たる部分が複数の生地が重ね合わされて形成される。右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bは、それぞれの肩部分における生地間に形成される筒状の通路が収容部12と連続し、その通路を通るように右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bが配置される。なお、ここでいう「筒状」は、あくまで重なった生地同士を分離させた状態が筒状の通路になり得るとの意にすぎず、通常時には生地同士が重なって「筒」が折り畳まれた状態が維持される。右肩ベルト部30a内の通路には右締付ストラップ32aが通されてその上端が通路の前面側開口部から外部へ露出する。左肩ベルト部30b内の通路には左締付ストラップ32bが通されてその上端が通路の前面側開口部から外部へ露出する。肩ベルト部30内の通路には、締付ストラップ32を通して所定の経路上に留めて位置ズレを防止するためのストラップループが設けられてもよい。また、締付ストラップ32には、滑り止め加工がなされてもよい。右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bの外部へ露出した部分には、肩ベルト部30内の通路への逆戻りを防止するための右コードストッパー33aおよび左コードストッパー33bが取り付けられる。なお、変形例においては、締付ストラップ32を肩ベルト部30の内部通路ではなく、肩ベルト部30に沿ってその外表面に配置する構成としてもよい。その場合、肩ベルト部30の外表面に、締付ストラップ32を通して所定の経路上に留めて位置ズレを防止するためのストラップループが設けられてもよい。
【0017】
右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bは、収容部12内において各ストラップの両端が対角に位置するよう配置されることにより収容部12内で交差し、その交差する複数の締付ストラップ32が収容部12内において収容物を着用者の背中側に付勢し得るよう構成される。右締付ストラップ32aの下端は収容部12の左下位置に縫い付けられる等、直接的に留められ、左締付ストラップ32bの下端が収容部12の右下位置に縫い付けられる等、直接的に留められる。右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bは、下端が留められている以外は収容部12内に固着されていないため、その交差する二つのストラップ32と背中側の内面とで収容物を挟み込むことができる。右締付ストラップ32aの下端および左締付ストラップ32bの下端は本体部10に縫い付けられて位置固定されるため、右締付ストラップ32aの上端および左締付ストラップ32bの上端を前面側で下方に引っ張ると、収容部12内部で交差する右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bが緊張状態となって、収容物を背中側の内面に付勢できる。着用者は、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを引っ張った後の任意の位置で右コードストッパー33aと左コードストッパー33bを固定することにより、ストラップの締付長さを調整できる。すなわち、コードストッパー33を固定した位置から先のストラップ部分が前面側から筒状通路へ逆戻りすることを防止し、ストラップの締付長さと、収容物の収容部12内における付勢状態を維持できる。
【0018】
脇ベルト部50には、着用者の前面側の位置において締付長さが調整可能である補助ストラップ52が本体部10の下部から前面側へ脇ベルト部50に沿って取り付けられる。補助ストラップ52は、右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bで構成される。補助ストラップ52は、脇腹や腹部等の胴周りの圧迫を緩和するために、幅1cm~3cmの伸縮性のテープ状素材、例えばナイロン等の合成繊維で形成される。ただし変形例においては、補助ストラップ52として、胴周りを圧迫しすぎない程度の非伸縮性のテープ状素材を用いてもよい。
【0019】
右脇ベルト部50aおよび左脇ベルト部50bは、複数の生地が重ね合わされて形成される。右脇ベルト部50aおよび左脇ベルト部50bは、それぞれの生地間に形成される筒状の通路が収容部12の下部と連続し、その通路を通るように右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bが配置される。二つの補助ストラップ52の締付長さの調整により本体部10の下部において本体部10を着用者の背中側に付勢し得るよう配置される。すなわち、二つの補助ストラップ52は、本体部10の下部において各補助ストラップ52の両端が対角に位置するよう配置されることにより本体部10の下部中央で交差する。二つの補助ストラップ52は、それぞれの一端が本体部10の下部の所定位置に留められ、それぞれの他端同士が左右の脇ベルト部50に挟まれた着用者の前面側の位置にて長さ調整部材を介して接続される。より具体的には、右脇ベルト部50a内の通路には右補助ストラップ52aが通されてその先端が通路の前面側孔部から外部へ露出する。左脇ベルト部50b内の通路には左補助ストラップ52bが通されてその先端が通路の前面側孔部から外部へ露出する。右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bの外部へ露出した部分には、長さ調整部材として第5留め具53aおよび第6留め具53bが取り付けられる。第5留め具53aおよび第6留め具53bは、調整したストラップ長さを固定するとともに互いに接続できるバックルである。
【0020】
図2は、前面側から見たバックパック100の外観図である。右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bには、バックパック100を着用したときに対向する縁部に沿って、上部に第1留め具36aおよび第2留め具36bが互いに相対するように取り付けられ、下部に第3留め具38aおよび第4留め具38bが互いに相対するように取り付けられる。上部胸ストラップ35を第1留め具36aおよび第2留め具36bに掛止し、下部胸ストラップ37を第3留め具38aおよび第4留め具38bに掛止することにより、着用状態における右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bの位置を固定することができる。上部胸ストラップ35および下部胸ストラップ37は、伸縮自在な素材、例えばバンジーコード等、合成繊維で被覆された合成樹脂等で形成される。
【0021】
右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bの露出した先端には第5留め具53aと第6留め具53bが取り付けられる。これらの留め具が互いに接続されることにより、右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bの位置が固定され、右脇ベルト部50aと左脇ベルト部50bの脇腹への密着状態が維持される。第5留め具53aおよび第6留め具53bは右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bの長さ調整部材を兼ねており、各ストラップを引っ張って右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bで折り返す先端部分の長さを調整することによって各ストラップの長さおよび締付を調整できる。
【0022】
図3は、締付ストラップ32および補助ストラップ52の配置例を示す。各ストラップは、外部に露出する先端以外の部分は、外表面の生地より内側に配置されて外観には表れないが、本図ではストラップの配置を示すために、便宜上、バックパックの外表面にストラップを描いている。右締付ストラップ32aは、右肩ベルト部30aに沿って着用者の右胸、右肩、背中中央を通り背中左下付近の第1係止点70に縫い付けられて留められている。左締付ストラップ32bは、左肩ベルト部30bに沿って着用者の左胸、左肩、背中中央を通り背中右下付近の第2係止点71で縫い付けられて留められている。第1係止点70および第2係止点71は、収容部12の内部における右下隅と左下隅の位置であり、本体部10の上から約2/3の位置である。右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bは、背中中央の中央点72で交差する。右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bは、交差する中央点72を中心として、収容部12内部でストラップの下にある収容物60を着用者の背中側に付勢する。
【0023】
右補助ストラップ52aは、右脇ベルト部50aに沿って着用者の右脇から本体部10の下部を通って背中左下付近の第3係止点73で縫い付けられて留められている。左補助ストラップ52bは、左脇ベルト部50bに沿って着用者の左脇から本体部10の下部を通って背中右下付近の第4係止点74で縫い付けられて留められている。第3係止点73と第4係止点74の位置は、それぞれ第1係止点70と第2係止点71の直下近辺であり、本体部10の上から約2/3の位置である。右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bは、本体部10の下部中央点75で交差する。第3係止点73と第4係止点74の間には、締付ストラップ32と同じ非伸縮性のテープ状素材で形成された補強ストラップ55が取り付けられ、その両端が第3係止点73と第4係止点74に縫い付けられる。補強ストラップ55は、本体部10の横幅や形状を維持するために取り付けられる。変形例においては、補強ストラップ55の代わりに、本体部10の横幅や形状をより強固に維持するための樹脂等の補強材を取り付けてもよい。
【0024】
なお、収容部12は、本体部10において第3係止点73、第4係止点74より上方の位置に設けられており、補強ストラップ55が取り付けられる位置や右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bが交差する部分は収容部12の一部を構成しない箇所である。したがって、二つの補助ストラップ52は右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bとは違って収容物を付勢する機能は持たない。ただし、変形例においては、本体部10の下部にも収容部を設け、交差する二つの補助ストラップ52によって収容物を背中側に付勢する構成としてもよい。また、二つの補助ストラップ52を交差させずに、平行となるように設けてもよい。
【0025】
図4は、バックパックの使用状態におけるストラップの付勢方向を示す。バックパック100には、右締付ストラップ32a、左締付ストラップ32b、右補助ストラップ52a、左補助ストラップ52bの4本のストラップが取り付けられている。これらのストラップは、外部に露出する先端以外の部分は、外表面の生地より内側に配置されているため、特に背中側から見た外観には表れないが、本図ではストラップの付勢方向を示すために、便宜上、ストラップの配置をバックパックの外表面に描いている。
【0026】
着用者は、前面側の右胸付近に露出する右締付ストラップ32aの先端を、背中側から右肩の頂点を越えて右胸へ向かう第1方向62aに引っ張る(すなわち、締付長さを調整する)ことにより右締付ストラップ32aを締め付けることができる。同様に、着用者は前面側の左胸付近に露出する左締付ストラップ32bの先端を、背中側から左肩の頂点を越えて左胸へ向かう第2方向62bに引っ張る(すなわち、締付長さを調整する)ことにより左締付ストラップ32bを締め付けることができる。これにより、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bは、交差する背中中央の部分で収容物60を後方から背中に向かう方向である付勢方向64へ付勢することとなり、収容物60が背中から離れることと収容物60の揺れを抑制することができる。また、本体部10全体が着用者の背中から離れることを抑制して、本体部10全体の揺れも抑制することができる。荷物の揺れと本体部10全体の揺れを抑制することで、着用者の走行時の動きと収容物60および本体部10の揺れとの位相差を小さくすることができる。また、収容物60のサイズや容量にあわせて締付長さを適切に調整することができるので、収容物60を適切に付勢方向64へ付勢することができる。つまり、収容物60に対して適切な締付度合いを付与することができる。さらには、締付ストラップ32を肩越しに引っ張る形となるように配置することにより、荷物の重心をより上方に持ち上げて高い位置に保つことができるという効果もある。
【0027】
着用者は、前面側の右脇付近に露出する右補助ストラップ52aの先端を、背中から右脇を通って前面側へ向かう第3方向63aに引っ張ることにより右補助ストラップ52aを締め付けることができる。同様に、着用者は前面側の左脇付近に露出する左補助ストラップ52bの先端を、背中から左脇を通って前面側へ向かう第4方向63bに引っ張ることにより左補助ストラップ52bを締め付けることができる。右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bは、それぞれの先端同士を第5留め具53aおよび第6留め具53bで接続することでそれぞれの引っ張り状態が維持される。右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bは、本体部10の下部を後方から背中に向かう方向である付勢方向64へ付勢することにより、本体部10および左右の脇ベルト部50が着用者の背中や脇腹から離れることを抑制して、本体部10全体の揺れも抑制することができる。
【0028】
なお、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを背中の中心付近で交差させた上で、上腕部等の腕ではなく肩越しに通る配置とすることにより、荷物が少ない場合等でも交差する締付ストラップ32が着用者の肩甲骨に当たることを回避しやすく、肩甲骨の動きや腕振り動作を阻害することを抑制できる。また、左右の脇ベルト部50の縦幅は、着用者の左右の脇腹をおおむね覆う位置となるように設計される。ここで、人間の肋骨のうち、脇腹に対応する部分である付着弓肋の最下端にあるのが第10肋骨である。もし、脇ベルト部50の下端部が第10肋骨より上に位置すると、それだけ本体部10全体の縦幅が小さくなって収容部12の容量も小さくなるため、バックパックとしての本来の機能である収容力が低下しかねない。一方で、脇ベルト部50の下端部が第10肋骨より下に位置するほど、脇ベルト部50の脇腹へのフィット性を損ない、本体部10の揺れが大きくなりかねない。したがって、脇ベルト部50の下端部が着用者のおおむね第10肋骨付近に配置されるように脇ベルト部50の位置および縦幅を設計し、あるいは様々な体格に合わせた複数のサイズ展開で製品を用意することにより、収容部12の容量確保と本体部10のフィット性確保の両立を図る。
【0029】
図5は、本体部10の積層構造を示す。本体部10は、表面側から裏面側に向けて第1層20、第2層21、第3層22、第4層23の順に積層される。最表面の第1層20は、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維からなる伸縮性生地であり、収容部12に荷物を出し入れするためのスリット状開口部の両縁にその開口部を開閉するファスナー14が設けられる。第2層21として、交差する右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bと、交差する右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bが重ねられる。第3層22として、収容部12の内面を構成する内張18が重ねられる。内張18の縦方向の長さは交差する右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bに重なるが、右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bには重ならない長さである。内張18には第1内部ポケット19aと第2内部ポケット19bが設けられ、携行品のポケットとして機能する。第1内部ポケット19aと第2内部ポケット19bに収容された携行品は、これらポケットに収まっている限り収容位置が維持される上に、交差する右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bから付勢力を受け続けることができ、特に揺れが抑止されやすい。第4層23として、合成繊維のメッシュ生地である裏地24が重ねられる。第1層20と第3層22が重ねられてその周囲が縫い付けられて形成される空間が収容部12となり、荷物を収容できる。第3層22と第4層23が重ねられてその周囲が縫い付けられて形成される空間には、主にハイドレーションシステムを収容できる。第1層20と裏地24が重ねられた空間において右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bが配置される。なお、裏地24には、右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bの設計上の理想的な配置経路に沿って帯状のメッシュ素材が縫い合わされて筒状の通路が形成され、その通路を右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bが通される。右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bは、その通路内で背面側から脇腹付近を通って前面側へ向けた方向に自在に引っ張ることができるようになる。また、本図では4層の積層構造を例に説明したが、4層に限らず、一部の層を省略した3層以下の積層構造や、追加の層を設けた5層以上の積層構造としてもよい。例えば、5層以上とした場合に、第4層を裏地とし、第5層をメッシュ生地とし、その第4層と第5層が重ねられてその周囲が縫い付けられて形成される空間にハイドレーションシステムを収容できるようにしてもよい。
【0030】
(第2の実施の形態)
本実施の形態においては、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bとして異なる構造を採用する点で第1の実施の形態と相違し、他の構成は共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0031】
図6は、第2の実施の形態における締付ストラップ32の構造を示す。右締付ストラップ32aは、右肩ベルト部30aに沿って着用者の右胸から右肩を通り、右肩ベルト部30aと本体部10が接続される部分で第1付勢ベルト40aに連結される。第1付勢ベルト40aは、本体部10の右上の第1連結点76で右締付ストラップ32aと連結され、背中中央の中央点72を通り背中左下付近の第1係止点70に縫い付けられて留められている。このように、右締付ストラップ32aの一端は、第1付勢ベルト40aを介して間接的に本体部10に留められる。左締付ストラップ32bは、左肩ベルト部30bに沿って着用者の左胸から左肩を通り、左肩ベルト部30bと本体部10が接続される部分で第2付勢ベルト40bに連結される。第2付勢ベルト40bは、本体部10の左上の第2連結点77で左締付ストラップ32bと連結され、背中中央の中央点72を通り背中右下付近の第2係止点71で縫い付けられて留められている。このように、左締付ストラップ32bの一端もまた、第2付勢ベルト40bを介して間接的に本体部10に留められる。第1付勢ベルト40aおよび第2付勢ベルト40bは、例えば幅3cm~6cmの非伸縮性のテープ状素材としてナイロン等の合成繊維で形成される。ただし変形例においては、付勢ベルト40として付勢力を損なわない程度の伸縮性を有する素材を用いてもよい。第1付勢ベルト40aと第2付勢ベルト40bは、背中中央の中央点72で交差する。第1付勢ベルト40aと第2付勢ベルト40bは、交差する中央点72を中心として、収容部12内部で交差する2本の付勢ベルトの下にある収容物60を着用者の背中側に付勢する。第1付勢ベルト40aと第2付勢ベルト40bは、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bより幅広に構成される分、収容物60を安定的に付勢することができる。なお、第1付勢ベルト40aと第2付勢ベルト40bは分離して形成されるが、変形例においては中央点72で互いに縫い付けられる等により接続されてもよい。
【0032】
(第3の実施の形態)
本実施の形態においては、締付ストラップ32および付勢ベルト40として異なる構造を採用する点で第1,2の実施の形態と相違し、他の構成は共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0033】
図7は、第3の実施の形態における締付ストラップ32および付勢ベルト40の構造を示す。本実施の形態においては、第1の実施の形態における締付ストラップ32と第2の実施の形態における付勢ベルト40とを併用するような構造を有する。すなわち、右締付ストラップ32aは、右肩ベルト部30aに沿って着用者の右胸、右肩、背中中央の中央点72を通り背中左下付近の第1係止点70に縫い付けられて直接的に留められている。左締付ストラップ32bは、左肩ベルト部30bに沿って着用者の左胸、左肩、背中中央の中央点72を通り背中右下付近の第2係止点71で縫い付けられて直接的に留められている。これに加え、右締付ストラップ32aの下に第1付勢ベルト40aが設けられ、第1付勢ベルト40aは本体部10の右上の第1連結点76と左下の第4連結点79で右締付ストラップ32aに取り付けられる。同様に、左締付ストラップ32bの下に第2付勢ベルト40bが設けられ、第2付勢ベルト40bは本体部10の左上の第2連結点77と右下の第3連結点78で左締付ストラップ32bに取り付けられる。第1付勢ベルト40aおよび第2付勢ベルト40bは、例えば幅3cm~6cmの非伸縮性のテープ状素材としてナイロン等の合成繊維で形成される。ただし変形例においては、付勢ベルト40として付勢力を損なわない程度の伸縮性を有する素材を用いてもよい。第1付勢ベルト40aおよび第2付勢ベルト40bは、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bから取り外し可能となる形で構成されてもよい。右締付ストラップ32aおよび第1付勢ベルト40aの組合せと、左締付ストラップ32bおよび第2付勢ベルト40bの組合せは、背中中央の中央点72で交差する。右締付ストラップ32aおよび第1付勢ベルト40aの組合せと、左締付ストラップ32bおよび第2付勢ベルト40bの組合せは、交差する中央点72を中心として、収容部12内部で付勢ベルト40の下にある収容物60を着用者の背中側に付勢する。第1付勢ベルト40aと第2付勢ベルト40bは、右締付ストラップ32aおよび左締付ストラップ32bより幅広に構成される分、収容物60を安定的に付勢することができ、さらに右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bによって収容物60をより高い締付強度により安定的に付勢することができる。
【0034】
(第4の実施の形態)
本実施の形態においては、第3の実施の形態における付勢ベルト40に代えて補助布材を用いる点で第3の実施の形態と相違する。他の構成は第3の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0035】
図8は、第4の実施の形態における締付ストラップ32および補助布材の構造を示す。本実施の形態においては、締付ストラップ32に対して第3の実施の形態の付勢ベルト40を取り付ける代わりに、補助布材41を取り付ける。補助布材41は、収容物60を全体的に覆うことができる面積を有する面状の布部材であり、本体部10の右上の第1連結点76と左下の第4連結点79で右締付ストラップ32aに取り付けられ、本体部10の左上の第2連結点77と右下の第3連結点78で左締付ストラップ32bに取り付けられる。補助布材41は、収容部12の内径と同程度またはやや小さい程度の大きさである。なお、補助布材41は締付ストラップ32から取り外し可能な形で締付ストラップ32に取り付けられる。
【0036】
(第5の実施の形態)
本実施の形態においては、第4の実施の形態における補助布材41に代えて小型補助布材を用いる点で第4の実施の形態と相違する。他の構成は第4の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0037】
図9は、第5の実施の形態における締付ストラップ32および小型補助布材の構造を示す。本実施の形態においては、締付ストラップ32に対して第4の実施の形態の補助布材41を取り付ける代わりに、小型補助布材43を取り付ける。小型補助布材43は、補助布材41より小さく、収容物60の中心付近のみを覆うことができる面積を有する面状の布部材である。小型補助布材43は、右上の第1連結点76と左下の第4連結点79で右締付ストラップ32aに取り付けられ、左上の第2連結点77と右下の第3連結点78で左締付ストラップ32bに取り付けられる。小型補助布材43は、例えば5cm×5cm四方の大きさを有する。なお、小型補助布材43は締付ストラップ32から取り外し可能な形で締付ストラップ32に取り付けられる。
【0038】
(第6の実施の形態)
本実施の形態においては、第2の実施の形態における付勢ベルト40に代えて複数本の付勢ストラップを用いる点で第2の実施の形態と相違する。他の構成は第2の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0039】
図10は、第6の実施の形態における締付ストラップ32および付勢ストラップの構造を示す。本実施の形態においては、締付ストラップ32に対して第2の実施の形態の付勢ベルト40を取り付ける代わりに、複数本の付勢ストラップ42を取り付ける。すなわち、締付ストラップ32の一端は、複数本の付勢ストラップ42を介して間接的に本体部10に留められる。付勢ストラップ42は、締付ストラップ32より幅が狭いストラップであるが、複数本を用いることで、締付ストラップ32よりも広い範囲にわたって収容物60に対して付勢力を与えられる。第1付勢ストラップ42aおよび第2付勢ストラップ42bは、右上の第5連結点80で右締付ストラップ32aに取り付けられ、左下の第1係止部82aおよび第2係止部82bで縫い付けられて留められる。第3付勢ストラップ42cおよび第4付勢ストラップ42dは、左上の第6連結点81で左締付ストラップ32bに取り付けられ、右下の第3係止部82cおよび第4係止部82dで縫い付けられて留められる。
【0040】
(第7の実施の形態)
本実施の形態においては、第6の実施の形態における2本の付勢ストラップに代えて3本の付勢ストラップを用いる点で第6の実施の形態と相違する。他の構成は第6の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0041】
図11は、第7の実施の形態における締付ストラップ32および付勢ストラップの構造を示す。本実施の形態においては、締付ストラップ32に対して3本の付勢ストラップ42を取り付ける。付勢ストラップ42は、締付ストラップ32より幅の狭いストラップであるが、用いる本数が多いほど広い範囲にわたって収容物60に対して付勢力を与えられる。第5付勢ストラップ42e、第6付勢ストラップ42f、第7付勢ストラップ42gは、右上の第5連結点80で右締付ストラップ32aに取り付けられ、左下の第5係止部82e、第6係止部82f、第7係止部82gで縫い付けられて留められる。第8付勢ストラップ42h、第9付勢ストラップ42i、第10付勢ストラップ42jは、左上の第6連結点81で左締付ストラップ32bに取り付けられ、右下の第8係止部82h、第9係止部82i、第10係止部82jで縫い付けられて留められる。なお、用いる付勢ストラップの本数を増やすほど、幅広の扇状に構成することができ、収容物60に対する付勢力を安定させることができる。また、図示しないが、多数のストラップを様々な模様で網状に編んだ網目状部材として構成してもよい。
【0042】
(第8の実施の形態)
本実施の形態においては、第7の実施の形態における締付ストラップ32および3本の付勢ストラップ42に代えて3本のストラップを束ねた締付ストラップ32を用いる点で第7の実施の形態と相違する。他の構成は第7の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0043】
図12は、第8の実施の形態における締付ストラップ32の構造を示す。本実施の形態においては、3本のストラップを束ねて一つの締付ストラップ32を構成する。右締付ストラップ32aの肩から前面側にかけての部分は固定的に一つに束ねられた状態となって先端が前面側で外部に露出する。右締付ストラップ32aの肩から背中を通って本体部10の左下にかけての部分は3本のストラップに分離した状態となってそれぞれの端部が第1可変留め具83a、第2可変留め具83b、第3可変留め具83cによって本体部10の左下部分に留められる。左締付ストラップ32bの肩から前面側にかけての部分は固定的に一つに束ねられた状態となって先端が前面側で外部に露出する。左締付ストラップ32bの肩から背中を通って本体部10の右下にかけての部分は3本のストラップに分離した状態となってそれぞれの端部が第4可変留め具83d、第5可変留め具83e、第6可変留め具83fによって本体部10の右下部分に留められる。6個の可変留め具83は、それぞれを留める位置を上下方向の任意の位置に決定でき、配置や間隔を調整できる。例えば、間隔を広げれば収容物60を広い範囲にわたって安定的に付勢することができ、逆に間隔を狭めれば収容物60の中心付近を集中的に付勢することができる。
【0044】
以上、本実施の形態においては3本のストラップを束ねて一つの締付ストラップ32を構成する例を示した。変形例においては、2本のストラップを束ねて一つの締付ストラップ32を構成してもよいし、4本以上のストラップを束ねて一つの締付ストラップ32を構成してもよい。
【0045】
(第9の実施の形態)
本実施の形態においては、補助布材41を用いる点で第4の実施の形態と共通するが、2本の締付ストラップ32を交差させない点で第4の実施の形態と相違する。他の構成は第4の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0046】
図13は、第9の実施の形態における締付ストラップ32および補助布材41の構造を示す。本実施の形態においては、2本の締付ストラップ32を交差させて左右の対角位置に留める形ではなく、2本の締付ストラップ32を補助布材41を介することにより左右それぞれで同じ側に留める。すなわち、右締付ストラップ32aは、補助布材41の右上の第1連結点76と右下の第3連結点78を通り収容部12の右下の第2係止点71で留められる。左締付ストラップ32bは、補助布材41の左上の第2連結点77と左下の第2連結点77を通り第1係止点70で留められる。このように2本の締付ストラップ32を補助布材41を介して間接的に本体部10へ留めるため、交差させなくても、右締付ストラップ32aは右側に留め、左締付ストラップ32bは左側に留めるという構造も可能となる。この場合、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを引っ張ると、補助布材41は左右に引っ張られることにより、収容物60に当たる部分の面積が広がって最大化される。これにより、収容物60を広い範囲にわたってより安定的に付勢することができる。なお、補助布材41は締付ストラップ32から取り外し可能な形で締付ストラップ32に連結される。
【0047】
(第10の実施の形態)
本実施の形態においては、補助布材41を用いる点で第4,9の実施の形態と共通するが、4本の締付ストラップ32を用いた上で補助布材41の四隅に連結させる点で第4,9の実施の形態と相違する。他の構成は第4,9の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0048】
図14は、第10の実施の形態における締付ストラップ32および補助布材41の構造を示す。本実施の形態においては、2本の締付ストラップ32を交差させて左右の対角位置に留める形ではなく、4本の締付ストラップ32を補助布材41の四隅に連結する。より具体的には、右締付ストラップ32aは補助布材41の右上の第1連結点76に連結し、左締付ストラップ32bは補助布材41の左上の第2連結点77に連結する。さらに、補助布材41の右下に右下ストラップ32dを連結し、補助布材41の左下に左下ストラップ32cを連結する。右下ストラップ32dは、一端が補助布材41の右下の第3連結点78に連結され、他端が第2係止点71に留められる。左下ストラップ32cは、一端が補助布材41の左下の第4連結点79に連結され、他端が第1係止点70に留められる。このように、右締付ストラップ32aの一端は、補助布材41および左下ストラップ32cを介して間接的に本体部10に留められ、左締付ストラップ32bの一端もまた、補助布材41および右下ストラップ32dを介して間接的に本体部10に留められる。右締付ストラップ32aを引っ張ると、補助布材41の右上部分が右肩の方向に引っ張られ、左締付ストラップ32bを引っ張ると、補助布材41の左上部分が左肩の方向に引っ張られる。補助布材41の右下部分と左下部分は、右下ストラップ32dおよび左下ストラップ32cによる引っ張りに対する抵抗力により位置が固定されるため、補助布材41は上部分の左右への引っ張りにより、収容物60に当たる部分の面積が広がって最大化される。これにより、収容物60を広い範囲にわたってより安定的に付勢することができる。なお、本実施の形態における補助布材41は、収容物60の大部分を覆うことができる大きさの布を用いたが、変形例においては第5の実施の形態における小型補助布材43のように収容物60の中心部付近だけを覆う程度の大きさの布を用いる構成としてもよい。
【0049】
(第11の実施の形態)
本実施の形態においては、補助布材41を用いる点と2本の締付ストラップ32を用いる点で第4,9の実施の形態と共通し、また、補助布材41の上部が2本の締付ストラップ32に連結される点で第10の実施の形態と共通する。ただし、補助布材41の一部を直接的に収容部12の下部に留める点、すなわち2本の締付ストラップ32を間接的に収容部12に留める点で第4,9,10の実施の形態と相違する。他の構成は第4,9,10の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0050】
図15は、第11の実施の形態における締付ストラップ32および補助布材41の構造を示す。本実施の形態における補助布材41は、右上が右締付ストラップ32aに連結され、左上が左締付ストラップ32bに連結される。一方、補助布材41は右下が第2係止点71に留められ、左下が第1係止点70に留められるように、右下隅と左下隅が帯状に延伸した形状を有する。すなわち、締付ストラップ32の一端は、補助布材41を介して間接的に本体部10に留められる。これにより、第10の実施の形態における左下ストラップ32c、右下ストラップ32dを用いなくとも収容部12の右下と左下に補助布材41を留めることができる。この場合も、第10の実施の形態と同様に、右締付ストラップ32aを引っ張ると、補助布材41の右上部分が右肩の方向に引っ張られ、左締付ストラップ32bを引っ張ると、補助布材41の左上部分が左肩の方向に引っ張られる。補助布材41の右下部分と左下部分は位置が固定されるため、補助布材41は上部分の左右への引っ張りにより、収容物60に当たる部分の面積が広がって最大化される。これにより、収容物60を広い範囲にわたってより安定的に付勢することができる。なお、変形例においては、第11の実施の形態における補助布材41とは異なる形状により、補助布材41の下辺の一部または全部や両側辺の一部または全部が収容部12に縫い付けられて留められていてもよい。
【0051】
(第12の実施の形態)
本実施の形態においては、2本の締付ストラップ32を交差させる点で第1,3~5の実施の形態と共通するが、締付ストラップ32の下端を収容部12の内部ではなく外部、すなわち本体部10の外側に留める点で第1,3~5の実施の形態と相違する。他の構成は第1,3~5の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0052】
図16は、第12の実施の形態における締付ストラップ32の配置および構造を示す。交差する右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bの下端が収容部12の右下位置と左下位置に取り付けられる点で第1,3~5の実施の形態と共通する。ただし、本実施の形態では右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bの下端がストラップ孔45aとストラップ孔45bを通じて外部へ露出し、本体部10の外部に留められる。ストラップ孔45aは、右締付ストラップ32aが通る経路上において本体部10の外縁から5cm~10cm程度離れた位置に設けられる。ストラップ孔45bもまた、左締付ストラップ32bが通る経路上において本体部10の外縁から5cm~10cm程度離れた位置に設けられる。本体部10の外縁とストラップ孔45aまたはストラップ孔45bの間には、棒状の物や円筒状の物を挟める程度のスペースが生じ、締付ストラップ32の下端部と本体部10の外面との間にこれら棒状の物や円筒状の物を通して挟み込むことができる。例えば、図示するような、折り畳まれたトレイルランニングポールやトレッキングポールを締付ストラップ32と本体部10外面の間に通してもよいし、ドリンクボトルを通してもよい。これらのポールやボトルを締付ストラップ32に挟んだ状態で締付ストラップ32を引っ張ると、ポールやボトルをしっかりと固定することができる。この場合、収容部12内部の収容物の揺れだけでなくポールやボトルが揺れも同時に抑制でき、本体部10全体の揺れを抑制することができる。
【0053】
(第13の実施の形態)
本実施の形態においては、複数本のストラップを用いて一つの補助ストラップ52を構成する点で第1~12の実施の形態と相違する。他の構成は第1~12の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0054】
図17は、第13の実施の形態における補助ストラップ52の配置および構造を示す。本体部10下部の左上にある第3係止点73には、第1補助ストラップ52c、第2補助ストラップ52d、第3補助ストラップ52eの一端が留められ、それぞれ右脇ベルト部50aの内部を通り、他端が右脇ベルト部50aの先端に設けられた開口部から外部へ露出する。本体部10下部の右上にある第4係止点74には、第4補助ストラップ52f、第5補助ストラップ52g、第6補助ストラップ52hの一端が留められ、それぞれ左脇ベルト部50bの内部を通り、他端が左脇ベルト部50bの先端に設けられた開口部から外部へ露出する。脇ベルト部50の先端に設けられる開口部は、補助ストラップ52の本数と同数だけ設けられてもよいし、補助ストラップ52の本数に合わせた大きさにて設けられてもよい。
【0055】
以上、本実施の形態においては3本のストラップを用いて一つの補助ストラップ52を構成する例を示した。変形例においては、2本のストラップを用いて一つの補助ストラップ52を構成してもよいし、4本以上のストラップを用いて一つの補助ストラップ52を構成してもよい。
【0056】
(第14の実施の形態)
本実施の形態においては、複数本のストラップを用いて一つの補助ストラップ52を構成する点で第13の実施の形態と共通するが、束ねる構造が第13の実施の形態と相違する。他の構成は第13の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0057】
図18は、第14の実施の形態における補助ストラップ52の配置および構造を示す。本実施の形態においては、脇ベルト部50の先端の孔部から露出する補助ストラップ52の先端部分は1本のストラップとなっており、脇ベルト部50の内部で1本のストラップから複数本のストラップに分岐している。言い換えれば、複数本の補助ストラップが脇ベルト部50の内部で束ねられて1本の補助ストラップ52として外部に露出する形となっている。右補助ストラップ52aは、右脇ベルト部50aから1本の補助ストラップ52として先端が露出し、他端側は第1補助ストラップ52c、第2補助ストラップ52d、第3補助ストラップ52eの3本のストラップが束ねられて右補助ストラップ52aに連結する形となっている。第1補助ストラップ52c、第2補助ストラップ52d、第3補助ストラップ52eは、第1可変留め具83a、第2可変留め具83b、第3可変留め具83cによって本体部10の左下縁部に留められる。左補助ストラップ52bは、左脇ベルト部50bから1本の補助ストラップ52として先端が露出し、他端側は第4補助ストラップ52f、第5補助ストラップ52g、第6補助ストラップ52hの3本のストラップが束ねられて左補助ストラップ52bに連結する形となっている。第4補助ストラップ52f、第5補助ストラップ52g、第6補助ストラップ52hは、第4可変留め具83d、第5可変留め具83e、第6可変留め具83fによって本体部10の右下縁部に留められる。6個の可変留め具83は、それぞれを留める位置を上下方向の任意の位置に決定でき、配置や間隔を調整できる。
【0058】
以上、本実施の形態においては3本のストラップを束ねて一つの補助ストラップ52に連結する例を示した。変形例においては、2本のストラップを束ねて一つの補助ストラップ52に連結する構成としてもよいし、4本以上のストラップを束ねて一つの補助ストラップ52に連結する構成としてもよい。
【0059】
(第15の実施の形態)
本実施の形態においては、締付ストラップ32の締付長さの調節のためにコードストッパー33に代えて肩ベルト部30に留めるための留め具を用いる点で第1~14の実施の形態と相違する。他の構成は第1~14の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0060】
図19は、第15の実施の形態における締付ストラップ32と複数の留め具の配置および第1の使用例を示す。右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bには、対向する縁部に沿って6個ずつ留め具が設けられている。右肩ベルト部30aには、縁部に沿って上から第1右留め具84a、第2右留め具84b、第3右留め具84c、第4右留め具84d、第5右留め具84e、第6右留め具84fが設けられる。左肩ベルト部30bには、縁部に沿って上から第1左留め具85a、第2左留め具85b、第3左留め具85c、第4左留め具85d、第5左留め具85e、第6左留め具85fが設けられる。右締付ストラップ32aの先端には右ストラップ側留め具86aが設けられ、第1~6右留め具84a~fのいずれかに選択的に留め付けることができる。右ストラップ側留め具86aおよび第1~6右留め具84a~fは、例えばマグネット、クリップ、面ファスナー等のオス/メスコネクタのセットで構成されてよい。第1~6右留め具84a~fのうち、上部の留め具に付けるほど右締付ストラップ32aの締付長さを短くでき、下部の留め具に付けるほど右締付ストラップ32aの締付長さを長くできる。左締付ストラップ32bの先端には左ストラップ側留め具86bが設けられ、第1~6左留め具85a~fのいずれかに選択的に留め付けることができる。左ストラップ側留め具86bおよび第1~6左留め具85a~fもまた、例えばマグネット、クリップ、面ファスナー等のオス/メスコネクタのセットで構成されてよい。第1~6左留め具84a~fのうち、上段の留め具に付けるほど左締付ストラップ32bの締付長さを短くでき、下段の留め具に付けるほど左締付ストラップ32bの締付長さを長くできる。ここでいう「締付長さ」は、締付ストラップ32のうち、肩の頂点から先端までの長さ、あるいは前面側に露出する部分の長さを指し、「締付長さ」が長いほど締付ストラップ32の締付強度が高く、きつくなり、短いほど締付強度が低く、緩くなる。図示する状態の場合、右締付ストラップ32aは最上段の第1右留め具84aに右ストラップ側留め具86aが留め付けてあり、右締付ストラップ32aは最も短い締付長さ、すなわち最も緩い締付強度となっている。左締付ストラップ32bは上から4段目または下から3段目の第4左留め具85dに左ストラップ側留め具86bが留め付けてあり、左締付ストラップ32bは3番目に長い、すなわち3番目にきつい締付強度となっている。このように、着用者は荷物の大きさや形状、収容部12内の重量分布等の状況に応じて左右別々の締付ストラップ32の締付長さを、留め付ける先となる留め具の選択によって調節することができる。特に、留め具を上下方向に配置した数の分、すなわち本図の例では6段階で調節ができる。
【0061】
図20は、第15の実施の形態における締付ストラップ32と複数の留め具の配置および第2の使用例を示す。本使用例では、締付ストラップ32および複数の留め具の構造や配置は第1の使用例と同じであるが、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを前面側で交差させて留め具に留め付ける点で第1の使用例と相違する。より具体的には、右締付ストラップ32aの先端にある右ストラップ側留め具86aを、右肩ベルト部30a側ではなく左右が反対の側である左肩ベルト部30b側の第1~6左留め具85a~fのいずれかに選択的に留め付ける。同様に、左締付ストラップ32bの先端にある左ストラップ側留め具86bを、左肩ベルト部30b側ではなく左右が反対の側である右肩ベルト部30a側の第1~6右留め具84a~fのいずれかに選択的に留め付ける。図示する状態の場合、右締付ストラップ32aの右ストラップ側留め具86aを、左肩ベルト部30b側の下から3番目の第4左留め具85dに留め付け、左締付ストラップ32bの左ストラップ側留め具86bを、右肩ベルト部30a側の下から3番目の第4右留め具84dに留め付けている。この場合、左右の締付ストラップ32を左右同じ側の留め具に留め付けるより、反対側まで伸ばす分、締付長さが長くなり、締付強度を高くすることができる。さらに、上下6段階でも調節ができるため、上下左右で調節することにより、計12段階の調節が可能となる。
【0062】
(第16の実施の形態)
本実施の形態においては、締付ストラップ32の締付長さの調節のために締付ストラップ32の先端を補助ストラップ52等の他のストラップに留め付ける点で第15の実施の形態と相違する。他の構成は第1~15の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0063】
図21は、第16の実施の形態における締付ストラップ32と留め付け構造に関する第1の使用例を示す。第1の使用例においては、締付ストラップ32の先端にあるストラップ側留め具86を補助ストラップ52に掛止して留め付ける。右締付ストラップ32aの先端にある右ストラップ側留め具86aは右補助ストラップ52aに掛止され、左締付ストラップ32bの先端にある左ストラップ側留め具86bは左補助ストラップ52bに掛止される。この場合、第15の実施の形態と比べて、肩ベルト部30に受け側の留め具を設置する必要がなく、既存の形状のストラップに掛止するだけで締付ストラップ32の締付長さおよび締付強度を調節できる。補助ストラップ52の位置は、第15の実施の形態における第6右留め具84fや第6左留め具85fのような最下段の留め具の位置に相当するため、締付ストラップ32の締付長さを最長レベルに長くし、締付強度を最強レベルにきつくすることができる。
【0064】
図22は、第16の実施の形態における締付ストラップ32と留め付け構造に関する第2の使用例を示す。第2の使用例においては、締付ストラップ32の先端にあるストラップ側留め具86を、補助ストラップ52ではなく上部胸ストラップ35または下部胸ストラップ37に掛止する点で第1の使用例と異なる。図示する例では、右締付ストラップ32aの先端にある右ストラップ側留め具86aは下部右胸ストラップ37aに掛止され、左締付ストラップ32bの先端にある左ストラップ側留め具86bは下部左胸ストラップ37bに掛止される。この場合、第1の使用例よりも1段上の位置に締付ストラップ32を留め付けるため、第1の使用例より締付ストラップ32の締付長さを短くして締付強度を緩めることができる。さらに1段上の上部右胸ストラップ35a、上部左胸ストラップ35bに留め付ければ、さらに締付ストラップ32の締付長さを短くして締付強度を緩めることができる。このように、締付ストラップ32を補助ストラップ52、下部胸ストラップ37、上部胸ストラップ35のいずれかに掛止することで、締付長さおよび締付強度を3段階で調節することができる。
【0065】
図23は、第16の実施の形態における締付ストラップ32と留め付け構造に関する第3の使用例を示す。第3の使用例においては、締付ストラップ32のストラップ側留め具86を補助ストラップ52に掛止する点では第1の使用例と共通するが、本使用例では右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを交差させて左右反対側に掛止する点で相違する。より具体的には、右締付ストラップ32aの右ストラップ側留め具86aを左側の左補助ストラップ52bに掛止し、左締付ストラップ32bの左ストラップ側留め具86bを右側の右補助ストラップ52aに掛止する。これにより、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bが交差する分、締付長さが長くなり、締付強度が高くなる。右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bを交差させる方法は、ストラップ側留め具86を上部胸ストラップ35や下部胸ストラップ37に掛止させる場合にも応用でき、交差させないで上部胸ストラップ35、下部胸ストラップ37、補助ストラップ52に掛止させるよりも締付長さを長くして締付強度を高く調節できる。掛止位置の3段階と交差の有無により、計6段階の調節が可能となる。
【0066】
(第17の実施の形態)
本実施の形態においては、締付ストラップ32の締付長さの調節のために所定のダイヤル式締付機構を用いる点で第1~14の実施の形態と相違する。他の構成は第1~14の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0067】
図24は、第17の実施の形態における締付ストラップ32とダイヤル式締付機構の配置を示す。本実施の形態においては、第1~14実施の形態におけるコードストッパー33の代わりにダイヤル機構87を用いる。ダイヤル機構87は、ダイヤルの回転によりワイヤーを巻き取ることができ、中央のボタンを1回押下するだけで巻き取り状態を解除できる機構である。このダイヤル機構87の巻き取りおよび解除によって、締付ストラップ32の引っ張りおよび解除を実現する。右締付ストラップ32aの先端には、右ストラップダイヤル機構87aおよびそのワイヤーが取り付けられ、左締付ストラップ32bの先端には、左ストラップダイヤル機構87bおよびそのワイヤーが取り付けられる。上部胸ストラップ35、下部胸ストラップ37、補助ストラップ52の接続具としてもダイヤル機構87が用いられる。上部右胸ストラップ35aと上部左胸ストラップ35bの接続および締付のために上部胸ストラップダイヤル機構87cが用いられ、下部右胸ストラップ37aと下部左胸ストラップ37bの接続および締付のために下部胸ストラップダイヤル機構87dが用いられる。右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bの接続および締付のために補助ストラップダイヤル機構87eが用いられる。
【0068】
(第18の実施の形態)
本実施の形態においては、主に本体部10の上部に締付ストラップ32を設け、本体部10の下部に補助ストラップ52を設ける点で第1~17の実施の形態と共通するが、さらに本体部10の上部にも補助ストラップを設ける点で第1~17の実施の形態と相違する。他の構成は第1~17の実施の形態と共通する。以下、相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略する。
【0069】
図25は、第18の実施の形態におけるバックパック100全体の外観図である。本実施の形態においては、右補助ストラップ52aと左補助ストラップ52bのそれぞれに平行となるような方向に、右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bが設けられる。右胸補助ストラップ56aは、右補助ストラップ52aの上方において本体部10から右脇の下を通って前面側に向けて右補助ストラップ52aと平行に配置される。左胸補助ストラップ56bは、左補助ストラップ52bの上方において本体部10から左脇の下を通って前面側に向けて左補助ストラップ52bと平行に配置される。右胸補助ストラップ56aおよび左胸補助ストラップ56bは、本体部10においては収容部12の内部で交差するように配置され、左右の脇の下に設けられた孔部から前面側へ向けて外部へ露出し、その延長線上にある孔部から右肩ベルト部30aおよび左肩ベルト部30bの内部を通り、さらにその延長線上にある孔部から先端が外部へ露出する。右胸補助ストラップ56aおよび左胸補助ストラップ56bの先端には第7留め具53cおよび第8留め具53dが取り付けられる。
【0070】
図26は、第18の実施の形態における前面側から見たバックパック100の外観図である。着用者の脇の下付近または胸の下付近の高さで右胸補助ストラップ56aおよび左胸補助ストラップ56bが少なくとも前面側において水平となるように配置される。右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bは、その先端が右肩ベルト部30aと左肩ベルト部30bの間の位置で外部に露出する他、左右の脇の下付近でもそれぞれの一部が外部に露出する。右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bの露出した先端には第7留め具53cと第8留め具53dが取り付けられる。これらの留め具が互いに接続されることにより、右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bの位置が固定され、右肩ベルト部30aと左肩ベルト部30bの胸回りへの密着状態が維持される。第7留め具53cおよび第8留め具53dは右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bの長さ調整部材を兼ねており、各ストラップを引っ張って右胸補助ストラップ56aおよび左胸補助ストラップ56bで折り返す先端部分の長さを調整することによって各ストラップの長さおよび締付を調整できる。
【0071】
図27は、第18の実施の形態における締付ストラップおよび補助ストラップの配置例を示す。本図においても、ストラップの配置を示すために、便宜上、バックパックの外表面にストラップを描いている。図示する締付ストラップ32および補助ストラップ52の配置は第1の実施の形態における構成および配置と同様であるが、これらを第2~17の実施の形態における締付ストラップ32や補助ストラップ52を含む構成および配置に置き換えてもよい。これらに加え、本体部10上部の中央付近に水平方向に右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bがさらに配置される。右胸補助ストラップ56aの一端は、収容部12内部において右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bが交差する中央点72より左方の縁部である第5係止点90に縫い付けられて本体部10に直接的に固定される。右胸補助ストラップ56aは、第5係止点90から中央点72を通って右の脇の下付近でいったん外部へ露出し、右肩ベルト部30aの前面側内部を通過して前面側外部に先端が露出する。左胸補助ストラップ56bの一端は、収容部12内部において右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bが交差する中央点72より右方の縁部である第6係止点91に縫い付けられて本体部10に直接的に固定される。左胸補助ストラップ56bは、第6係止点91から中央点72を通って左脇の下付近でいったん外部へ露出し、左肩ベルト部30bの内部を通過して前面側の外部に先端が露出する。これら右補助ストラップ52aおよび左補助ストラップ52bによる胸回りにおける締付を必要としない場合には、それぞれ右肩ベルト部30aや左肩ベルト部30bの内部通路から先端以降の部分を後方に抜き出して収容部12の内部に畳んで収納するか、本体部10の側部にバンジーコード等で括り付けて留め付けておくことができる。
【0072】
なお、本図の例では、右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bが交差する点を、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bが交差する中央点72と同じ位置となるように設計する。より具体的には、第5係止点90および第6係止点91を、本体部10の上部または収容部12の縦幅において上から約1/2付近の位置、または本体部10全体の縦幅において上から約1/3付近の位置に設けている。右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bの交差する点を収容物60の中心付近に合わせることで、同じ位置で交差する右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bとともに、より集中的に収容物60の中心点に付勢力を加えることができる。ただし、変形例においては、右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bを中央点72よりも上方で交差させる設計としてもよいし、中央点72よりも下方で交差させる設計としてもよい。すなわち、第5係止点90および第6係止点91の位置を、図示する位置よりも上方、例えば本体部10の縦幅における上から約2/5付近の位置、または、図示する位置よりも下方、例えば本体部10の縦幅における上から約1/2付近の位置に移動させた構成としてもよい。これらの場合、右胸補助ストラップ56aおよび左胸補助ストラップ56bが交差する点と中央点72の2点で収容物60を支持することができ、分散して付勢力を加えることができる。
【0073】
また、図示する例では、右胸補助ストラップ56aと左胸補助ストラップ56bを右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bよりも外層に被せた形で交差させているが、右締付ストラップ32aと左締付ストラップ32bよりも内層、すなわち締付ストラップ32と収容物60の間の層において交差させる形としてもよい。
【0074】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0075】
例えば、上記の各実施の形態においては、締付ストラップおよび補助ストラップはそれぞれ肩ベルト部、脇ベルト部の内部を通過する態様について説明したが、変形例においてはこれに限られず、外部に露出していてもよい。露出する場合は、これらが正規の位置からずれにくいように、例えばガイドとなるループ部を複数設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0076】
10 本体部、 12 収容部、 30 肩ベルト部、 32 締付ストラップ、 50 脇ベルト部、 52 補助ストラップ、 60 収容物、 100 バックパック。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、主としてトレイルランニングに使用されるバックパックに関する。