(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】プラスチック基材用カチオン硬化組成物、塗料、プラスチック製品および使用
(51)【国際特許分類】
C08G 65/28 20060101AFI20230915BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20230915BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20230915BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230915BHJP
C09D 161/10 20060101ALI20230915BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20230915BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230915BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230915BHJP
【FI】
C08G65/28
C08G59/62
C08G65/18
C09D133/00
C09D161/10
C09D167/00
C09D163/00
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2022519714
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 CN2020117189
(87)【国際公開番号】W WO2021057804
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】201910936201.5
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520348369
【氏名又は名称】チャンジョウ グリーン フォトセンシティブ マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU GREEN PHOTOSENSITIVE MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン,ビン
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-057078(JP,A)
【文献】国際公開第2006/011260(WO,A1)
【文献】特表2010-523801(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108314911(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
C08G 65/00 - 67/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材用カチオン硬化組成物であって、
ポリヒドロキシ樹脂(A)と、エポキシ化合物(B)と、オキセタニル基含有化合物(C)と、カチオン開始剤(D)とを含み、
ポリヒドロキシ樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)、アクリル樹脂(A2)および/またはフェノール樹脂(A3)であり、前記カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~20):(1~25)であ
り、前記エポキシ化合物(B)は、脂環式エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物から選ばれ、前記エポキシ化合物(B)におけるエポキシ構造は、3元環エポキシ基であることを特徴とするプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項2】
前記プラスチック基材用カチオン硬化組成物において、ヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~10):(1~15)であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項3】
前記プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~40)重量部の前記ポリヒドロキシ樹脂(A)と、(10~65)重量部の前記エポキシ化合物(B)と、(10~70)重量部の前記オキセタニル基含有化合物(C)と、(0.5~10)重量部の前記カチオン開始剤(D)とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項4】
前記プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~30)重量部の前記ポリヒドロキシ樹脂(A)と、(15~50)重量部の前記エポキシ化合物(B)と、(20~60)重量部の前記オキセタニル基含有化合物(C)と、(2~5)重量部の前記カチオン開始剤(D)とを含むことを特徴とする請求項3に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂(A1)は、ヒドロキシル価が50~500mgKOH/gであり、数平均分子量が200~12000であ
ることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂(A1)は、ヒドロキシル価が80~350mgKOH/gであり、数平均分子量が300~5000であることを特徴とする請求項5に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項7】
前記アクリル樹脂(A2)は、ヒドロキシル価が15~200mgKOH/gであり、ガラス転移温度が10~150℃であり、数平均分子量が500~20000であ
ることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項8】
前記アクリル樹脂(A2)は、ヒドロキシル価が50~150mgKOH/gであり、ガラス転移温度が20~100℃であり、数平均分子量が1000~8000であることを特徴とする請求項7に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項9】
前記フェノール樹脂(A3)は、ヒドロキシル価が50~300mgKOH/gであり、数平均分子量が300~15000であ
ることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項10】
前記フェノール樹脂(A3)は、ヒドロキシル価が100~250mgKOH/gであり、数平均分子量が500~8000であることを特徴とする請求項9に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項11】
前記脂環式エポキシ化合物のエポキシ当量は、80~500であり、
前記脂肪族エポキシ化合物のエポキシ当量は、80~500であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項12】
重量部で、(0~40)重量部の助剤(E)をさらに含み、
前記助剤(E)は、増感剤、着色材料、難燃剤、レベリング剤、硬化促進剤、光/熱酸発生剤、接着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、増粘剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、隔離剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤からなる群から選ばれる1種または複種であることを特徴とする請求項5~
10のいずれか1項に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項13】
(1~10)重量部の助剤(E)を含むことを特徴とする請求項12に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物を含むことを特徴とする塗料。
【請求項15】
プラスチック基材と、前記プラスチック基材の少なくとも一部の領域に塗布される塗層とを含むプラスチック製品であって、前記塗層は、請求項1~
13のいずれか1項に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物を硬化させることによって形成されることを特徴とするプラスチック製品。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載のプラスチック基材用カチオン硬化組成物のエネルギー硬化分野における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化の分野に関し、具体的には、プラスチック基材用カチオン硬化組成物、塗料、プラスチック製品および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場には様々な種類のプラスチックがあり、用途に応じて汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチックに分類することができ、化学組成に応じてポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)などに分類することができる。プラスチック基材は低価格であるため、車両、家電、建築、および産業などの分野で幅広く使用できる。
【0003】
しかし、プラスチック基材は、加工成形後に発生する表面欠陥や、下流工程での過程に表面が傷つきやすいことから、熱硬化性や光硬化性塗料をプラスチック基材の表面に一層塗布し、また基材の表面に対して硬化処理を行うことが多い。
【0004】
既存文献は、プラスチック基材に応用すると、基材の耐擦傷性の欠如と硬度不良の問題を解決する塗料組成物を提供している。また、別の既存文献では、プラスチック基材に応用された塗料の付着力、耐摩耗性、耐候性が劣るという問題を解決したプラスチック基材用塗料組成物が提供されている。
【0005】
しかしながら、上記の2つの塗料組成物は、いずれも柔軟性が良好ではなく、特にブリスターパッケージング業界に応用される場合には、塗料が高い柔軟性を有することが求められる。
【0006】
したがって、塗料産業の開発ニーズを満たすために、柔軟性に優れ、プラスチック基材への付着力が良好な塗料組成物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、既存の塗料がプラスチック基材に応用された場合に、柔軟性と付着力が劣るという問題を解決するために、プラスチック基材用カチオン硬化組成物、塗料、プラスチック製品および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、プラスチック基材用カチオン硬化組成物を提供し、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、ポリヒドロキシ樹脂(A)と、エポキシ化合物(B)と、オキセタニル基含有化合物(C)と、カチオン開始剤(D)とを含み、ポリヒドロキシ樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)、アクリル樹脂(A2)および/またはフェノール樹脂(A3)であり、カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~20):(1~25)である。
【0009】
さらに、プラスチック基材用カチオン硬化組成物において、ヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~10):(5~15)である。
【0010】
さらに、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~40)重量部のポリヒドロキシ樹脂(A)と、(10~65)重量部のエポキシ化合物(B)と、(10~70)重量部のオキセタニル基含有化合物(C)と、(0.5~10)重量部のカチオン開始剤(D)とを含む。
【0011】
さらに、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~30)重量部のポリヒドロキシ樹脂(A)と、(15~50)重量部のエポキシ化合物(B)と、(20~60)重量部のオキセタニル基含有化合物(C)と、(2~5)重量部のカチオン開始剤(D)とを含む。
【0012】
さらに、ポリエステル樹脂(A1)は、ヒドロキシル価が50~500mgKOH/gであり、数平均分子量が200~12000であり、好ましくは、ポリエステル樹脂(A1)は、ヒドロキシル価が80~350mgKOH/gであり、数平均分子量が300~5000である。
【0013】
さらに、アクリル樹脂(A2)は、ヒドロキシル価が15~200mgKOH/gであり、ガラス転移温度が10~150℃であり、数平均分子量が500~20000であり、好ましくは、アクリル樹脂(A2)は、ヒドロキシル価が50~150mgKOH/gであり、ガラス転移温度が20~100℃であり、数平均分子量が1000~8000である。
【0014】
さらに、フェノール樹脂(A3)は、ヒドロキシル価が50~300mgKOH/gであり、数平均分子量が300~15000であり、好ましくは、フェノール樹脂(A3)は、ヒドロキシル価が100~250mgKOH/gであり、数平均分子量が500~8000である。
【0015】
さらに、エポキシ化合物(B)は、脂環式エポキシ化合物および/または脂肪族エポキシ化合物から選ばれ、好ましくは、前記脂環式エポキシ化合物は、エポキシ当量が80~500であり、好ましくは、前記脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ当量が80~500である。
【0016】
さらに、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(0~40)重量部の助剤(E)をさらに含み、好ましくは、(1~10)重量部の助剤(E)を含み、好ましくは、助剤(E)は、増感剤、着色材料、難燃剤、レベリング剤、硬化促進剤、光/熱酸発生剤、接着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、増粘剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、隔離剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤からなる群から選ばれる1種または複種である。
【0017】
本発明の他の一態様によれば、上記プラスチック基材用カチオン硬化組成物を含む塗料を提供する。
【0018】
本発明のさらなる一態様によれば、プラスチック基材と、前記プラスチック基材の少なくとも一部の領域に塗布される塗層とを含むプラスチック製品であって、前記塗層は、上記プラスチック基材用カチオン硬化組成物によって形成されるプラスチック製品を提供する。
【0019】
本発明のさらなる一態様によれば、上記プラスチック基材用カチオン硬化組成物のエネルギー硬化分野における使用を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の技術的技術案を適用すると、ポリヒドロキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)およびオキセタニル基含有化合物(C)は、開始剤(D)の開始下で硬化反応を起こし、塗層を形成することができる。エポキシ化合物(B)とオキセタニル基含有化合物(C)の添加は、塗層の硬化速度を改善するのに寄与し、ポリヒドロキシ樹脂(A)の添加は、架橋密度を高め、塗層の金属基材における付着力を向上させるに寄与すると同時に、オキセタニル基含有化合物(C)の添加は、成分の適合性を向上させるに寄与する。
【0021】
上記カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比を上記範囲に限定することにより、塗層のプラスチック基材への付着力、柔軟性、成膜性および硬化速度を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における実施例および実施例の特徴は、矛盾がない場合、互いに組み合わせることができることに留意されたい。以下、実施例を結合して本発明を詳細に説明する。
【0023】
背景技術で述べたように、既存のプラスチックパッケージ用塗料は、柔軟性や付着力に劣るという問題がある。上記の課題を解決するために、本発明は、プラスチック基材用カチオン硬化組成物を提供し、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、ポリヒドロキシ樹脂(A)と、エポキシ化合物(B)と、オキセタニル基含有化合物(C)と、カチオン開始剤(D)とを含み、ポリヒドロキシ樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)、アクリル樹脂(A2)および/またはフェノール樹脂(A3)であり、カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~20):(1~25)である。
【0024】
ポリヒドロキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)およびオキセタニル基含有化合物(C)は、開始剤(D)の開始下で硬化反応を起こし、塗層を形成することができる。エポキシ化合物(B)とオキセタニル基含有化合物(C)の添加は、塗層の硬化速度を向上させるに寄与し、ポリヒドロキシ樹脂(A)の添加は、架橋密度を高め、塗層の金属基材における付着力を向上させるに寄与すると同時に、オキセタニル基含有化合物(C)の添加は、成分の適合性を向上させるに寄与する。
【0025】
上記カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比を上記範囲に限定することにより、塗層のプラスチック基材への付着力、柔軟性、成膜性および硬化速度を大幅に向上させることができる。
【0026】
上記カチオン硬化組成物により形成される塗層の総合性能をさらに向上させるために、好ましい実施例では、プラスチック基材用カチオン硬化組成物において、ヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、1:(3~10):(5~15)である。
【0027】
好ましい実施例では、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~40)重量部のポリヒドロキシ樹脂(A)と、(10~65)重量部のエポキシ化合物(B)と、(10~70)重量部のオキセタニル基含有化合物(C)と、(0.5~10)重量部のカチオン開始剤(D)とを含む。上記カチオン硬化組成物中の各成分の使用量は、上記範囲を含むがそれに限定されなく、上記範囲に限定することにより、各成分の相乗効果をさらに発揮し、これにより、形成された塗層の付着力と柔軟性がさらに向上する。
【0028】
より好ましくは、プラスチック基材用カチオン硬化組成物は、重量部で、(5~30)重量部のポリヒドロキシ樹脂(A)と、(15~50)重量部のエポキシ化合物(B)と、(20~60)重量部のオキセタニル基含有化合物(C)と、(2~5)重量部のカチオン開始剤(D)とを含む。
【0029】
<ポリヒドロキシ樹脂(A)>
ポリヒドロキシ樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(A1)、アクリル樹脂(A2)およびフェノール樹脂(A3)から選ばれる少なくとも1種であり、2種以上の混合物であってもよい。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂(A1)は、多塩基酸とポリオールを重縮合することで製造される。重縮合反応は、不活性雰囲気中で、100~260℃、好ましくは130~220℃の温度で行われる。
【0031】
多塩基酸とは、分子中に炭化水素基と直接結合したカルボキシル基を複数含む化合物であり、脂肪族酸、脂環式酸、および芳香族酸に分類される。好ましい実施例では、多塩基酸には、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸および無水フタル酸からなる群の1種または複種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
より好ましくは、上記多塩基酸には、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および無水フタル酸からなる群の1種または複種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
ポリオールは、分子中に脂肪族炭素鎖に直接結合したヒドロキシル基を複数含む化合物である。
【0034】
好ましい実施例では、上記ポリオールには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジ-β-ヒドロキシエチルブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルジオール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、メチルプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、エチルブチルプロピレンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-ペンタン-1,5-ジオール、2,2,4(2,4,4)-トリメチルヘキサン-1,6-ジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ペンタエリスリトール、マンニトールおよびソルビトール、ならびにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、キシリレングリコールおよびネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートからなる群の1種または複種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
より好ましくは、上記ポリオールには、エチレングリコール、ネオペンチルジオール、ペンタエリスリトール、1,6-エタンジオール、メチルプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、エチルブチルプロピレンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンおよびグリセロールからなる群の1種または複種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
好ましい実施例では、上記ポリエステル樹脂(A1)は、ヒドロキシル価が50~500mgKOH/gである。ポリエステル樹脂(A1)のヒドロキシル価を上記範囲に限定することにより、他のヒドロキシル価に比べて、塗層のプラスチック基材への付着力、可加工性、架橋密度が向上し、ひいてはエンタルピー緩和による塗装膜の硬化時の脆化を抑制することに寄与する。より好ましくは、ポリエステル樹脂(A1)のヒドロキシル価が80~350mgKOH/gである。
【0037】
好ましい実施例では、上記ポリエステル樹脂(A1)は、数平均分子量が200~12000である。ポリエステル樹脂(A1)の分子量を上記範囲に限定することにより、他の範囲に比べて、塗層の強度を向上させることに寄与し、塗装作業を容易にする。より好ましくは、上記ポリエステル樹脂の数平均分子量が300~5000である。
【0038】
本発明のアクリル樹脂(A2)とは、アクリレート系またはメタクリレート系と他のオレフィン系モノマーの共重合からなるポリマーである。ここで、(メタ)アクリレート系または他のオレフィン系モノマーの少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含む官能性モノマーであり、ヒドロキシル基を含む官能性モノマーは、好ましくは、以下の構造を有する:
【0039】
ここで、R0はH、またはCH3であり、RはC2~C10の直鎖または分岐アルキルアルコールである。
【0040】
好ましい実施例では、上記ヒドロキシル基を含む官能性モノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、シンナミルアルコール、シトロネロールおよび2-ヘキセン-1-オールからなる群から選ばれる1種または複種である。
【0041】
別の好ましい実施例では、上記の、ヒドロキシル基を含まない官能性モノマーは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、テトラヒドロフランメチルアクリレート、フルオロアルキルアクリレート、アクリロニトリルまたはスチレンからなる群から選ばれる1種または複種である。
【0042】
好ましい実施例では、上記アクリル樹脂(A2)は、ヒドロキシル価が15~200mgKOH/gである。アクリル樹脂(A2)のヒドロキシル価を上記範囲にすることにより、他のヒドロキシル価に比べて、形成された塗層のプラスチック基材への付着力、可加工性、架橋密度がさらに向上し、ひいてはエンタルピー緩和による塗装膜の硬化時の脆化を抑制することに寄与する。より好ましくは、アクリル樹脂(A2)のヒドロキシル価が50~150mgKOH/gである。
【0043】
好ましい実施例では、上記アクリル樹脂(A2)は、ガラス転移温度(Tg)が10~150℃である。アクリル樹脂(A2)のガラス転移温度を上記範囲にすることにより、他の範囲に比べて、組成物中の他の成分とのより良い相溶性を向上し、そして上記カチオン硬化組成物の膜形成性を向上することに寄与する。より好ましくは、上記アクリル樹脂(A2)のガラス転移温度(Tg)が20~100℃である。
【0044】
好ましい実施例では、上記アクリル樹脂(A2)は、数平均分子量が500~20000である。アクリル樹脂の分子量を上記範囲にすることにより、他の範囲に比べて、塗層の強度を向上させることに寄与する。より好ましくは、上記アクリル樹脂(A2)の数平均分子量が1000~8000である。
【0045】
本発明で用いるフェノール樹脂(A3)は、フェノール化合物と脂肪族アルデヒド系化合物とを酸性またはアルカリ性の条件下で縮合反応させて得られるフェノール樹脂であることができる。
【0046】
好ましくは、フェノール化合物は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、ビスフェノールA、p-フェニルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリクレゾール、3,4,5-トリクレゾール、ヒドロキノン、レソルシノール、α-ナフトールおよびβ-ナフトールである。
【0047】
好ましくは、フェノール化合物は、フェノール、ヒドロキノン、p-tert-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、ビスフェノールA、p-フェニルフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノールおよびα-ナフトールのうちの1種または複種である。
【0048】
前記脂肪族アルデヒド系化合物は、C1~C8を含むアルデヒドであり、ホルムアルデヒド、p-ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、ブチルアルデヒド、2-クロトンアルデヒド、ペンタナール、トリメチルアセトアルデヒドが挙げられる。
【0049】
本発明で用いるフェノール樹脂(A3)は、エポキシ変性フェノール樹脂であってもよく、変性方法は限定されない。
【0050】
より好ましくは、フェノール樹脂(A3)は、ヒドロキシル価が50~300mgKOH/gであり、より好ましくは100~250mgKOH/gである。本発明に用いるフェノール樹脂は、数平均分子量が300~15000であり、より好ましくは500~8000である。
【0051】
<エポキシ化合物(B)>
本発明のエポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物であることが好ましい。
【0052】
上記脂環式エポキシ化合物は、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセンまたはシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することにより得られるエポキシシクロヘキサンまたはエポキシシクロペンタンを含む化合物が挙げられる。
【0053】
例えば、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、プロパン-2,2-ジイル-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート、ジ-2-エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレート、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、α-ピネンオキシド、リモネンジオキシドなど。
【0054】
上記脂環式エポキシ化合物は、エポキシ当量が80~500の化合物であることが好ましい。
【0055】
上記脂環式エポキシ化合物は、市販品、例えば、CELLOXIDE 2021P、CELLOXIDE 2081、CELLOXIDE 2000、CELLOXIDE 3000(Daicel Corporation制)などを使用することができる。
【0056】
上記脂肪族エポキシ化合物とは、芳香族エポキシ化合物または脂環式エポキシ化合物に分類されないエポキシ化合物を指し、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、アルキルカルボン酸のグリシジルエステルなどの単官能エポキシ化合物、または脂肪族ポリオールまたはそのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステルなどの多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0057】
代表的な化合物として、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12~13混合アルキルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどのポリオールのグリシジルエーテル、およびプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの脂肪族ポリオールにアルキレンオキシドを1種または2種以上付加して得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルなどが挙げられる。
【0058】
さらに、高級脂肪族アルコールのモノグリシジルエーテルまたは高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0059】
上記脂肪族エポキシ化合物は、エポキシ当量が80~500であるものが好ましい。
【0060】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、市販品を使用することができ、例えば、Denacol EX-121、Denacol EX-171、Denacol EX-192、Denacol EX-211、Denacol EX-212、Denacol EX-313、Denacol EX-314、Denacol EX-321、Denacol EX-411、Denacol EX-421、Denacol EX-512、Denacol EX-521、Denacol EX-611、Denacol EX-612、Denacol EX-614、Denacol EX-622、Denacol EX-810、Denacol EX-811、Denacol EX-850、Denacol EX-851、Denacol EX-821、Denacol EX-830、Denacol EX-832、Denacol EX-841、Denacol EX-861、Denacol EX-911、Denacol EX-941、Denacol EX-920、Denacol EX-931(Nagase ChemteX Corporation制);Epolight M-1230、Epolight 40E、Epolight 100E、Epolight 200E、Epolight 400E、Epolight 70P、Epolight 200P、Epolight 400P、Epolight 1500NP、Epolight 1600、Epolight80MF、Epolight 100MF(共栄社化学社制)、Adeka Glycirol ED-503、AdekaGlycirol ED-503G、Adeka Glycirol ED-506、Adeka Glycirol ED-523T(ADEKA社制)などが挙げられることができる。
【0061】
<オキセタニル基含有化合物(C)>
オキセタニル基とエポキシ基との両方を含む場合は、エポキシ基のみを含み、オキセタニル基を含まない組成物と比較して、組成物の硬化を促進させることができる。同時に、オキセタニル基の存在により、この組成物から作られる塗装膜の柔軟性が向上し、その後の加工時にプラスチック製品にクラックや破損が生じにくくなる。
【0062】
オキセタニル基含有化合物(C)は、カチオン開始剤の存在下での光照射によって重合または架橋することができる。オキセタニル基含有化合物には、1つまたは複数のオキセタニルを含む。
【0063】
製造コストと反応性を考慮するために、本発明のオキセタニル基含有化合物(C)としては、以下の構造が選ばれる。
【0064】
好ましい実施例では、オキセタニル基含有化合物(C)には、1つのオキセタニル基を含み、その構造式を式(1)に示す。
【0065】
ここで、Zは酸素原子であり、
R1は水素原子、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)または6~18個の炭素原子を有するアリール基(フェニルやナフチル、フリルまたはチエニルなど)から選ばれ、R2は水素原子、エポキシ基、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、6~18個の炭素原子を有するアリール基(フェニル、ナフチル、アントラセニルなど)、7~18個の炭素原子を有する置換または非置換アラルキル基(ベンジル、フルオロベンジル、メトキシベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミルまたはエトキシベンジルなど)または他の芳香環を有する基(フェノキシメチルまたはフェノキシエチルなどのアリールオキシアルキル基など)から選ばれる。
【0066】
好ましくは、分子内にオキセタニル基を1つだけ含む化合物(C)は、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)トルエン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ベンゼン、4-メトキシ-(1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)ベンゼン、(1-(3-エチル3-オキセタニルメトキシ)エチル)フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンチルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルからなる群から選ばれる1種または複種である。
【0067】
別の好ましい実施例では、オキセタニル基含有化合物(C)には、2つのオキセタニル基を含み、その構造式を式(2)に示す。
【0068】
R1は上記式(1)の表記と同様とする;
R3は、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキレン基(エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、1~120個の炭素原子を有する直鎖または分岐のポリ(アルキレンオキシ)(ポリ(エチレンオキシ)またはポリ(プロピレンオキシ)など)、直鎖または分岐の不飽和炭化水素基(1,3-プロピレン、メチル1,3-プロピレンまたはブチレン)から選ばれる。
【0069】
好ましくは、R
3は、以下の式(3)および(4)に示す多価基から選ばれる。
【0070】
ここで、R
4は、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、1~4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン原子(塩素原子または臭素原子など)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシル基またはカルバモイル基から選ばれ、xは0~4の任意の整数である。
【0071】
ここで、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、-NH-、-SO-、-SO2-、-C(CF3)2-、または-C(CH3)2-を示す。
【0072】
さらなる好ましい実施例では、オキセタニル基含有化合物(C)には、二つのオキセタニル基を含み、その構造式を(5)に示す。
【0073】
式(5)において、R1は上記式(1)の表記と同様とする。
【0074】
分子内に3つ以上のオキセタニルを含む化合物は、例えば、下記分子式(6)に示す。
【0075】
ここで、R1は上記分子式(1)の表記と同様とし、R6は原子価が3~10の有機基から選ばれる。
【0076】
好ましくは、分子内に2つまたは複数のオキセタニル基を含む化合物は、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレン(methylenyl))プロパンジイルビス(オキシメチレン)ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)エタン、1,3-ビス(3-エチル-オキセタニルメトキシ)メチル)プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジエチレンメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルからなる群から選ばれる1種または複種である。
【0077】
好ましくは、オキセタンは、式(1)で定義される成分から選ばれ、R1は水素原子、C1~C4のアルキル基であり、Zは酸素原子であり、R2は水素原子、エポキシ基、C1~C4のアルキル基またはフェニル基である。より好ましくは、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)トルエン、3-ベンジルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ベンゼン、3,3’-[オキシビスメチレン]ビス[3-エチル]オキセタン、3-エチル-3-[(エチレンオキシド-2-メトキシ)メチル]オキセタン、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ジ((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)ベンゼン、1,2-ジ((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)エタン、1,3-ジ((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)プロパン、およびジ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)である。
【0078】
反応性の観点から、エポキシ基に対するオキセタニル基のモル比が(5~15):(3~10)である場合、光放射に対するカチオン性硬化組成物の活性を向上することに有利になる。組成物の応用性能の観点から、ヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比が1:(3~10):(5~15)である場合、カチオン硬化組成物で得られた塗装膜の柔軟性の向上に有利になり、プラスチック基材への付着力が良好である。
【0079】
<カチオン開始剤(D)>
カチオン開始剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射によりカチオンやルイス酸を生成し、エポキシ化合物やオキセタニル基含有化合物などのカチオン硬化性成分の重合を開始させることができる化合物である。
【0080】
本発明に提供されるカチオン硬化組成物において、カチオン開始剤(D)は、当該分野で一般的に使用されているタイプのものを使用することができる。好ましくは、ヨードニウム塩、スルホニウム塩またはアリールフェロセン塩の1種または両種である。コスト、併用する場合の効果(光重合開始効率、硬化速度など)などの複合的な要因から、ヨードニウム塩および/またはスルホニウム塩類の光重合開始剤が好ましく、特に好ましくは下記一般式に示される構造を有する化合物である。
【0081】
上記一般式中、R7およびR8はそれぞれ独立して、水素、C1~C20の直鎖または分岐アルキル基、C4~C20のシクロアルキルアルキル基またはアルキルシクロアルキル基、C6~C20の置換または非置換アリール基から選ばれ、これらの基中の非環状-CH2-は任意に-O-、-S-または1,4-フェニレンで置換される。
【0082】
R9は、C6~C20の置換または非置換アリール基、C6~C20の置換または非置換アルキルアリール基、C1~C20の直鎖または分岐アルキル基、C4~C20のシクロアルキルアルキル基またはアルキルシクロアルキル基、置換または非置換フェニルチオフェニル基から選ばれ、これらの基中の非環状-CH2-は任意にカルボニル、-O-、-S-または1,4-フェニレンで置換される。
【0083】
R10およびR11はそれぞれ独立して、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシルオキシ基、アリールチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換可能なアミノ基、シアノ基、ニトロ基またはハロゲン原子から選ばれ、m1、m2はそれぞれ独立して、0~4の整数から選ばれる。
【0084】
A-はそれぞれ独立して、X-、ClO4
-、CN-、HSO4
-、NO3
-、CF3COO-、(BX4)-、(SbX6)-、(AsX6)-、(PX6)-、Al[OC(CF3)3]4
-、スルホン酸イオン、B(C6X5)4
-または[(Rf)bPF6-b]-から選ばれ、Xはハロゲンであり、Rfは水素原子の≧80%がフッ素原子で置換されたアルキル基を示し、bは1~5の整数を示し、且つb個のRf基は互いに同一または異なっている。
【0085】
R7およびR8はそれぞれ独立して、水素、C1~C12の直鎖または分岐アルキル基、C4~C10のシクロアルキルアルキル基またはアルキルシクロアルキル基、C6~C12の置換または非置換アリール基から選ばれ、これらの基中の非環状-CH2-は任意に-O-、-S-または1,4-フェニレンで置換される。
【0086】
R9は、C6~C20の置換または非置換アリール基、C6~C10の置換または非置換アルキルアリール基、置換または非置換フェニルチオフェニル基から選ばれ、これらの基中の非環状-CH2-は任意にカルボニル、-O-、-S-または1,4-フェニレンで置換される。
【0087】
R10およびR11はそれぞれ独立して、水素、C1~C10の直鎖または分岐アルキル基、C1~C10の直鎖または分岐アルコキシ基、C1~C10のアルキルカルボニル基またはハロゲンから選ばれる。
【0088】
好ましい実施例では、カチオン開始剤(D)のカチオン部分は、以下の構造のうちの1種または複種から選ばれる。
【0089】
【0090】
好ましい実施例では、カチオン開始剤(D)のアニオン部分は、Cl-、Br-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、BF4
-、C4F9SO3
-、B(C6H5)4
-、C8F17SO3
-、CF3SO3
-、Al[OC(CF3)3]4
-、(CF3CF2)2PF4
-、(CF3CF2)3PF3
-、[(CFwCF2]2PF4
-、[(CF3)2CF2]3PF3
-、[(CF3)2CFCF2]2PF4
-または(CF3)2CFCF2]3PF3
-から選ばれる。
【0091】
さらに、同じ構造の市販のカチオン開始剤を本発明の光開始剤(D)に使用することもでき、例えば、常州強力電子新材料有限公司製のPAG20001、PAG20002、PAG30201、PAG30101、およびBASF社製のIrgacure250の1種または複種である。
【0092】
本発明のカチオン開始剤(D)成分は、上記化合物を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
<助剤(E)>
カチオン硬化組成物の総合性能をさらに向上させるために、上記カチオン硬化組成物は、助剤(E)をさらに含み、助剤(E)は、増感剤、着色材料、難燃剤、レベリング剤、硬化促進剤、光/熱酸発生剤、接着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、増粘剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、相溶化剤、安定剤、隔離剤、帯電防止剤、消泡剤、難燃剤からなる群の1種または複種が含まれるが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、重量部で、上記カチオン硬化組成物は、(0~40)重量部の助剤(E)、より好ましくは(1~10)重量部の助剤(E)を含む。
【0094】
好ましい実施例では、上記カチオン硬化組成物には、任意選択で増感剤が添加されることができる。増感剤の添加は、組成物の感度をさらに向上させるため、または長波長光源、特にUV-LED下での光硬化のニーズに対応するために有利である。
【0095】
より好ましくは、上記増感剤には、チオアントロン化合物、キサントン化合物、アクリジン類、アントラセン類およびクマリン類からなる群から選ばれる1種または複種であり、さらに好ましくはアントラセン類および/またはチオアントロン化合物が含まれるが、これに限られるものではない。
【0096】
例えば、天津久日新材料製のJRCure-1105(ITX)、JRCure-1106(DETX)、常州強力電子新材料製のPSS303、PSS510、PSS513、PSS515、PSS519などである。
【0097】
さらに、増感剤は、以下の構造を含む化合物から選択することができる。
【0098】
【0099】
好ましい実施例では、増感剤の添加量は、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの総重量の0~0.1倍、好ましくは0.005~0.06倍である。
【0100】
別の好ましい実施例では、本発明のカチオン硬化組成物には、任意選択で着色材料が添加されることができ、着色材料としては、顔料、着色剤、染料、および天然色素からなる群のうちの1種または複種を含む。
【0101】
青色顔料またはシアン顔料は、ピグメントブルー(Pigment Blue)1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60であることが好ましく、緑色顔料としては、ピグメントグリーン(Pigment Green)7、26、36、50が挙げられる。
【0102】
赤色顔料またはマゼンタ顔料は、ピグメントレッド(Pigment Red)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、19、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、酸化鉄などであることが好ましく、紫色顔料としては、ピグメントバイオレット(Pigment Violet)3、19、23、29、30、37、50、88が挙げられ、橙色顔料としては、ピグメントオレンジ(Pigment Orange)13、16、20、36が挙げられる。
【0103】
黄色顔料は、ピグメントイエロー(Pigment Yellow)1、2、3、4、5、6、7、10、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109、110、120、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193であることが好ましい。
【0104】
黒色顔料は、ピグメントブラック(Pigment Black)7、28、26、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック;三菱化学製のNO.2300、NO.900、MCF88、NO.33、NO.40、NO.45、NO.52、MA7、MA8、MA100;Cabot Japan制Regal 400R、Regal 300R、Regal 660R、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400などのカーボンブラックであることが好ましい。
【0105】
白色顔料は、ピグメントホワイト(Pigment White)6、18、21、酸化チタンなどであることが好ましい。
【0106】
本発明のカチオン硬化組成物において、着色材料の添加量は、成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの総重量の0~40%、好ましくは1~10%である。着色材料の平均粒子径は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。
【0107】
本発明において、本発明のカチオン硬化組成物に着色材料を安定して分散させるために、好ましくは、上記カチオン硬化組成物は、分散モノマーおよび/または分散助剤をさらに含む。着色材料100重量部に対して、分散助剤の含有量が30~80重量部であり、分散モノマーの重量分率と色材の重量分率との合計は100%である。
【0108】
本発明で使用できる分散助剤としては、ポリマー分散剤が好ましく、より好ましくは、上記ポリマー分散剤は、BYK Chemie制のDISPERBYK-101/102/103/106/111/161/162/163/164/166/167/168/170/171/174/182;EFKA添加剤制のEFKA4010/4046/4080/5010/5207/5244/6745/6750/7414/7462/7500/7570/7575/7580;San Nopco Limited制のDISPERSE AID 6/8/15/9100;Avecia制のSOLSPERSE分散剤:SOLSPERSE3000/5000/9000/12000/13240/13940/17000/22000/24000/26000/28000/32000/36000/39000/41000/71000;Adeka Corporation制のADEKA PLURONIC L31/F38/L42/L44/L61/L64/F68/L72/P95/F77/P84/F87/P94/L101/P103/F108/L121から選ばれる。
【0109】
本発明で使用できる分散モノマーは、特に限定されるものではない。例えば、低分子量を有する重合性化合物を使用することができ、好ましくは低粘度の重合性化合物である。
本発明の他の一態様によれば、上記カチオン硬化組成物を含む塗料を提供する。
【0110】
ポリヒドロキシ樹脂(A)、エポキシ化合物(B)およびオキセタニル基含有化合物(C)は、開始剤(D)の開始下で硬化反応を起こし、塗層を形成することができる。
【0111】
エポキシ化合物(B)とオキセタニル基含有化合物(C)の添加は、塗層の硬化速度を向上させるに寄与し、ポリヒドロキシ樹脂(A)の添加は、架橋密度を高め、塗層の金属基材における付着力を向上させるに寄与すると同時に、オキセタニル基含有化合物(C)の添加は、成分の適合性を向上させるに寄与する。上記カチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比を上記範囲に限定することにより、塗層の基材への付着力、柔軟性、成膜性および硬化速度を大幅に向上させることができる。これに基づいて、上記カチオン硬化組成物を含む塗料で形成された塗層は、付着力が強く、柔軟性と膜形成性が良好で、および硬化速度が速いという利点を有する。
【0112】
<硬化用光源>
カチオン硬化組成物をプラスチック基材に塗布した後、光線照射を行い、皮膜を形成する。
【0113】
「光線照射」とは、紫外域から可視域、赤外域までの電磁波の波長を持つ光である。本発明に記載のカチオン硬化組成物の硬化で使用できる光線照射は、通常、150~2000nmの範囲の放射波長、好ましくは200~600nmの範囲の放射波長を有し、組成物中のカチオン重合開始剤の種類などに応じて、高感度な波長を有する照射源を適宜選択して使用することができる。適切な紫外線光源は、水銀アーク、カーボンアーク、低圧、中圧、または高圧水銀ランプ、渦電流プラズマアーク、および紫外線発光ダイオードが挙げられ、好ましい紫外線光源は、中圧水銀ランプである。塗装膜の照射量は、10~1000mJ/cm2であり、好ましくは50~500mJ/cm2である。
【0114】
また、光線照射の後、必要に応じて塗装膜を加熱することで、加熱による塗装膜中の未反応物を低減し、光線照射や成形加工による塗装膜への歪みを緩和することができる。加熱工程では、塗装膜の硬度や付着力が向上することもある。好ましくは、上記加熱工程は、温度が150~250℃であり、加熱時間が1~30分間である。
【0115】
本発明によって提供されるプラスチック用カチオン硬化組成物は、エネルギー硬化分野で適用することができ、特にプラスチック基材への適用に適合である。
【0116】
<プラスチック基材>
本発明に提供されるカチオン硬化組成物は、プラスチック基材への塗布に適用される。本発明で使用されるプラスチック基材は、特定の制限なしに、当分野における従来のプラスチック基材であってもよい。好ましい実施例では、本発明に記載のプラスチック基材には、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PUR)、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリウレア、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ナイロン、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)で変性されたポリプロピレンなどが含まれるが、上記のプラスチック混合物のプラスチック基材であってもよい。必要に応じて、上記プラスチック基材は、脱脂、洗浄等の公知の方法により前処理を行うことができる。
【0117】
<プラスチック基材を含む塗装製品>
本発明のさらなる一態様によれば、プラスチック基材と、上記プラスチック基材の少なくとも一部の領域に塗布される塗層とを含むプラスチック製品であって、塗層は、上記プラスチック基材用カチオン硬化組成物を硬化させることによって形成されるプラスチック製品を提供する。カチオン硬化組成物は、従来の方法でプラスチック基材に塗布することができ、従来の方法は、刷毛塗り、ローラーコーティング、浸漬、注入、噴霧などが挙げられるが、これらに限定されない。プラスチック基材の全面を塗布してもよいし、一部のみを塗布してもよい。塗布の膜厚は用途に応じて適宜選択することができ、通常、乾燥塗膜の膜厚は約2~20ミクロン、より好ましくは2~8ミクロンである。
【0118】
本発明は、具体的な実施例に結合して以下にさらに詳細に説明されるが、これらは、本願で主張される保護範囲を限定するものとして理解されるものでない。
実施例および比較例で使用した成分は以下の通りである。
【0119】
<ポリヒドロキシ樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A1-1):PCL210、ヒドロキシル価:109~119mgKOH/g(日本ダイセル株式会社);
ポリエステル樹脂(A1-2):CapaTM、ヒドロキシル価:294~328mgKOH/g(Perstorp);
ポリエステルアクリル樹脂(A2-1):RA35.2、ヒドロキシル価:95~105mgKOH/g(唯盛ケミカル);
アクリル樹脂(A2-2):SETAQUA(R)6522、ヒドロキシル価:79mgKOH/gである(Allnex樹脂);
フェノール樹脂(A3-1):F51、エポキシ値:0.51(ヒドロキシル価:約150mgKOH/g)(常州向陽新材有限公司);
フェノール樹脂(A3-2):E44、エポキシ値:0.44(ヒドロキシル価:約210mgKOH/g)(三木6101)。
【0120】
【0121】
【0122】
<カチオン開始剤(D)>
D1:トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(常州強力PAG20002s);
D2:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(常州強力PAG30202);
【0123】
<助剤(E)>
E1:増感剤PSS306(常州強力);
E2:レベリング剤BYK307(ドイツBYK);
E3:消泡剤BYK055(ドイツBYK);
【0124】
<無色のカチオン硬化組成物>
室温で、黄色灯下で、表1および表2に示す配合による各成分を予備混合した後、ミキサーを用いて1500~2000rpmで30分間高速分散して均一に混合し、ストレーナーでろ過して無色のカチオン硬化組成物を製造した。
【0125】
表1および表2に示す配合は、各成分の重量部(単位:g)である。括弧内の数字は、対応する物質に含有された官能基の物質量(単位:mol)を示す。
【0126】
【0127】
【0128】
実施例1~12および比較例1~2のカチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比は、表3を参照する。
【0129】
【0130】
<有色のカチオン硬化組成物>
顔料分散体の製造:
室温下で、表4に示す配合による各成分を予備混合した後、ミキサーを用いて800~1000rpmで1h撹拌し、顔料分散体のD90(Omec社のTopSizerレーザー粒子サイズ分析計で測定する)が、1.50μm以下になるまで2000~3000rpmで撹拌し、顔料分散体-1、分散体-2、分散体-3および分散体-4を製造した。
【0131】
表4に示す配合は、各成分の重量部(単位:g)である。
【0132】
【0133】
上記配合において、ピグメントブラックは三菱MA7で、ピグメントホワイトは石原チタンホワイトR706で、ピグメントブルーはBASFフタロシアニンブルー15:3で、ピグメントレッドはクラリアント122である。
【0134】
有色のカチオン硬化組成物の製造:
室温で、黄色灯下で、表5に示す配合による各成分を予備混合した後、ミキサーを用いて1500~2000rpmで30分間高速分散して均一に混合し、ストレーナーでろ過して有色のカチオン硬化組成物を製造した。
【0135】
表5に示す配合は、各成分の重量部(単位:g)である。括弧内の数字は、対応する物質に含有される官能基の物質量(単位:mol)を示す。
【0136】
【0137】
実施例13~18および比較例8のカチオン硬化組成物におけるヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比を表6に示す。
【0138】
【0139】
性能測定
表1~2および表5に示すカチオン硬化組成物を皮膜形成した後、性能評価測定を行った。
【0140】
操作は次のとおりである:
基板としてPETとPPを使用し、アセトンで拭いた後にコーティングを行い、塗層の厚さは25±5μmで、硬化完了後に特性を測定した。測定結果を表7と表8に示す。
【0141】
測定方法:
(1)硬度試験:国家規格GB/T6739-86を参照して、硬度6B~6Hの製図用鉛筆を用意し、手動で塗装膜の鉛筆硬度を測定する。テーブルの上に塗膜板を水平に置き、鉛筆を45°の角度で持ち、塗膜面を1cm程度、均等な速度で強く押し、塗膜に傷をつける。同じ硬度記号の鉛筆で5本のストロークを繰り返し、2本のストローク以上でサンプルプレートの下地に傷がつかない場合は、塗膜にストロークが2本以上確認するまで、鉛筆を一つの記号で硬いものに交換する。該鉛筆の硬度よりも一つ小さい記号は、塗膜の鉛筆硬度である。
【0142】
(2)付着力試験:国家規格GB/T9286-1998を参照して、PETフィルムまたはPPフィルムへの塗装膜の付着力をそれぞれ測定した。スクライブを使って、塗膜に、塗膜の深さ全体を貫くように平行に6本の切れ目を入れ、次に同じ6本の切れ目を前者に垂直に入れ、多数の小さな正方形を形成し、幅25mmの半透明感圧テープで切れ目格子全体に貼り、テープを強く引っ張って標準と比較して、塗膜の付着力の等級を判定した。
【0143】
(3)柔軟性試験:国家規格GB1731を参照して、PETフィルムに組成物を塗布し、硬化後、塗装膜面を上にして、必要な直径のシャフトロッドに試験サンプルを押し付け、ロッドの周りに曲げ、曲げた後に両親指はシャフトロッドの中心線に対して対称である。目視または4倍の拡大鏡で塗装膜を観察し、網目、割れや剥がれなどの損傷がないかどうか、塗装膜に損傷を与えずにサンプルプレートが異なる直径のシャフトロッドに曲げることができるシャフトロッドの最小径が塗膜の柔軟性を示し、シャフトロッドの直径が小さいほど柔軟性に優れていることを示す。
【0144】
(4)硬化時間試験:国家規格GB/T1728-79を参照して、組成物をPETフィルムに噴霧し、組成物の硬化時間をそれぞれ測定した。
【0145】
(5)VOC試験:サンプル0.2gを秤量し、秤量したPETフィルムに塗布して秤量し、塗布したサンプルを固化し、室温で15分間冷却して秤量し、塗膜を110℃の換気オーブンに入れて1時間乾燥させ、塗膜をデシケーターに入れて室温まで冷却し、秤量した。
【0146】
処理された揮発性物質=100[(B-C)/(B-A)];潜在的な揮発性物質=100[(C-D)/(B-A)];
総揮発性物質%=処理された揮発性物質%+潜在的な揮発性物質%
ここで、AはPETフィルムの重量(g)であり、Bは塗膜とPETフィルムの重量(g)であり、
【0147】
Cは硬化後の塗膜とPETフィルムの重量(g)であり、Dは硬化と加熱後の塗膜とPETフィルムの重量(g)である。
【0148】
【0149】
【0150】
表7と表8から、次のことが分かる。
実施例1~12および比較例3~5を比較すると、本発明によって提供されるカチオン硬化組成物の使用は、それから形成される塗層の総合性能を大幅に向上させるに寄与することが分かる。実施例1~12および比較例1~2を比較すると、ヒドロキシル基と、3元環エポキシ基と、4元環エポキシ基とのモル比を本発明の好ましい範囲内に限定することによって、それから形成される塗層の総合性能を向上させるに寄与することが分かる。実施例13~18および比較例6~8を比較すると、本発明によって提供されるカチオン硬化組成物の使用は、それから形成される塗層の総合性能を大幅に向上させるに寄与することが分かる。
【0151】
要約すると、本発明のカチオン硬化組成物は、無色系、有色系ともに優れた柔軟性を示し、プラスチック基材への付着力が良好で、硬化速度が適度で、VOC排出量が低く、プラスチック製品に広く使用することができる。
【0152】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって様々な変更や変形が可能である。本発明の精神および原理の範囲内で行われた修正、均等置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。