(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】水性難燃性組成物及びそのような難燃性組成物を含む水性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20230915BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230915BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20230915BHJP
C08L 75/00 20060101ALI20230915BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20230915BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230915BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230915BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230915BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230915BHJP
C08J 3/07 20060101ALI20230915BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230915BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20230915BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230915BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230915BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C08L101/02
C08L63/00 A
C08L33/00
C08L75/00
C08F20/10
C08G18/00 C
C08G18/08 004
C08G18/10
C08G18/65 005
C08J3/07 CFC
C08J3/07 CFF
C09D5/00 Z
C09D133/04
C09D163/00
C09D175/04
C09D201/02
(21)【出願番号】P 2022521745
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2020082389
(87)【国際公開番号】W WO2021099308
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-11
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ローデス,トゥーリカ アグラワル
(72)【発明者】
【氏名】エルダーズ,ニエルズ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534250(JP,A)
【文献】特開昭61-097148(JP,A)
【文献】特開2011-157487(JP,A)
【文献】特開平01-292068(JP,A)
【文献】特開平08-012853(JP,A)
【文献】特開平07-316380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08G 18/00
C08G 18/08
C08G 18/10
C08G 18/65
C08F 20/10
C09D 5/00
C09D 163/00
C09D 201/02
C09D 133/04
C09D 175/04
C08J 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中に分散された粒子を含む水性難燃性組成物であって、前記粒子が、
難燃性臭素化エポキシポリマー、及び
イオン性分散基を含む有機ポリマー
を
含み、
前記粒子が、レーザ回折によって測定して50~500nmの範囲の体積平均直径D[4:3]を有し、
前記粒子中の難燃性臭素化エポキシポリマーとイオン性分散基を含む有機ポリマーとの重量比が、10:90~80:20の範囲である、水性難燃性組成物。
【請求項2】
前記臭素化エポキシポリマーがトリブロモフェノール末端封鎖臭素化エポキシポリマーである、請求項1に記載の水性難燃性組成物。
【請求項3】
前記イオン性分散基を含む有機ポリマーが膜形成ポリマーである、請求項1又は2に記載の水性難燃性組成物。
【請求項4】
前記イオン性分散基を含む有機ポリマーが、ポリアクリレート、ポリウレタン、又はポリウレタン-尿素ハイブリッドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
【請求項5】
前記粒子が、レーザ回折によって測定して
100~200nmの範囲の体積平均直径D[4:3]を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
【請求項6】
a)有機溶媒中に前記難燃性ポリマーとイオン性分散基を含む有機分散ポリマーとの溶液を提供する工程と、
b)前記イオン性分散基の少なくとも一部を中和して、前記難燃性ポリマーと前記分散ポリマーとの中和溶液を得る工程と、
c)工程b)で得られた前記中和溶液を水中で乳化して、水相中に分散した前記難燃性ポリマーと前記分散ポリマーとを含む粒子を得る工程と
を含む方法によって得られる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
【請求項7】
工程a)で提供される前記分散ポリマーが末端遊離イソシアネート基を含み、前記方法が、
d)前記末端遊離イソシアネート基の少なくとも一部をジアミン又はトリアミンと反応させることによって、工程c)で得られた前記粒子中の末端遊離イソシアネート基を含む前記分散ポリマーを鎖延長させる工程をさらに含む、
請求項
6に記載の水性難燃性組成物。
【請求項8】
前記有機分散ポリマーが、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する1つ以上のモノマーとポリイソシアネートとの縮合重合によって得られるポリウレタン又はポリウレタン-尿素ハイブリッドであり、
前記1つ以上のモノマーが、イオン性分散基を有するポリオール又はポリアミン、及び
ポリカーボネートジオール又はポリエステルジオールを含む、請求項
6又は
7に記載の水性難燃性組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のモノマーが、イオン性分散基を有するポリオール又はポリアミン、及びポリカーボネートジオールを含む、請求項8に記載の水性難燃性組成物。
【請求項10】
前記有機溶媒が、
酸素化有機溶媒である、請求項
6から9のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
【請求項11】
前記有機溶媒が、ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテルである、請求項10に記載の水性難燃性組成物。
【請求項12】
前記有機溶媒が、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルである、請求項11に記載の水性難燃性組成物。
【請求項13】
前記イオン性分散基が、
カルボキシル基、スルホネート基又はホスホネート基である、請求項1から
12のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
【請求項14】
前記イオン性分散基が、カルボキシル基である、請求項13に記載の水性難燃性組成物。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の
水性難燃性組成物を含む水性難燃性コーティング組成物。
【請求項16】
1つ以上のさらなる膜形成ポリマーをさらに含む、請求項
15に記載の水性難燃性コーティング組成物。
【請求項17】
前記1つ以上のさらなる膜形成ポリマーが、
分散(メタ)アクリレートポリマーであって、前記(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、1℃の変調振幅、40秒の変調周期、及び5℃/分の基礎加熱範囲を使用する変調示差走査熱量測定によって測定して、少なくとも45℃である、分散(メタ)アクリレートポリマー、及び
ポリカーボネートポリオールに基づく分散ポリウレタン
を含む、請求項
16に
記載の水性難燃性コーティング組成物。
【請求項18】
請求項
16又は
17に記載の
水性難燃性コーティング組成物が堆積したコーティングでコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性難燃性組成物、そのような難燃性組成物を含む水性難燃性コーティング組成物、及びそのようなコーティング組成物が堆積したコーティングでコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性コーティングは、燃焼温度を上昇させること、燃焼速度を低下させること、火炎伝播を低減すること、及び煙発生を低減することを含む様々な手段によって燃焼を制御するために開発されてきた。
【0003】
民間航空機産業では、航空機の内装部品は、典型的には、外皮の間に挟まれたコア構造パネルを含むサンドイッチ構造である。そのような内装部品、例えば床、側壁、パネルカバー、窓周囲、仕切り、隔壁、天井、及び収納室などは、燃焼に耐え、燃焼中に放出する煙及び/又は他の有毒な煙は最小量でなければならない。航空機の内部客室のコーティング厚は、重量の制約により、典型的には50~100ミクロンの範囲である。発泡性コーティングは、典型的には200ミクロンを超える高い膜厚でのみ有効であるため、これらの重量の制約は発泡性コーティングの使用を制限する。
【0004】
米国の耐火規格は、連邦航空局によって制定されている。航空機の内装部品に関して、規定FAR 25.853には、米国で運航される多くの航空機で使用される材料の燃焼性要件が含まれる。特に、FAR 25.853は、材料の接炎時間が15秒を超えないこと、燃焼長さが6インチを超えないこと、及び滴下火炎が3秒を超えないことを必要とする。FARの熱放出速度を満たし、装飾部品に所望の審美性を有する効果的な難燃性コーティングを開発することは困難であった。コーティング組成物を水媒介性(waterborne)組成物として配合することができることも望ましい。
【0005】
臭素化エポキシポリマーは難燃剤として公知であり、水媒介性(water-borne)織物及び木材コーティングについて提案されている。米国特許出願公開第2018/298229号には、粉砕技術を使用することによって約1~10ミクロンの範囲の平均粒径に微粒子化された臭素化エポキシポリマーを含む水性難燃性配合物が開示されている。水性難燃性配合物は、透明な水性木材コーティングに使用される。
【0006】
コーティングの機械的特性、耐汚染性及び審美的特性に影響を与えることなく、耐火性要件が満たされるような量で水性コーティング組成物に使用することができる水性難燃性組成物が当分野において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2018/298229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、臭素化エポキシポリマーとイオン性分散基を有する有機ポリマーとの両方が溶解した有機液相を最初に提供し、次いで有機相を水中で乳化することによって得られる水性難燃性組成物として提供される場合、十分な量で臭素化エポキシポリマーを水性コーティング組成物に組み込むことができることが見出された。これにより、水中に分散した小粒子が得られる。粒子は、難燃剤(臭素化エポキシポリマー)と分散基を有する有機ポリマーとを含有し、粒子は、水性コーティング組成物に使用される場合、非常に良好な審美的特性、特に光沢を有するコーティングを、多量に使用される場合でさえもたらすのに十分に小さい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、第1の態様において、水相中に分散された粒子を含む水性難燃性組成物であって、上記粒子が、
難燃性臭素化エポキシポリマー、及び
イオン性分散基を含む有機ポリマー
を含む、水性難燃性組成物を提供する。
【0010】
水性難燃性組成物は、任意の適切な量で、例えばスターイン(stir-in)として、水性コーティング組成物に適切に使用することができる。
【0011】
したがって、本発明は、第2の態様において、本発明の第1の態様による難燃性組成物を含む水性難燃性コーティング組成物を提供する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様によるコーティング組成物が堆積したコーティングでコーティングされた基材を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による難燃性組成物は、水相に分散された粒子を含む水性組成物である。粒子は、難燃性臭素化エポキシポリマーと、イオン性分散基を有する有機ポリマーとを含む。難燃性臭素化エポキシポリマーと、イオン性分散基を有する有機ポリマーとの両方が、同じ粒子中に存在する。
【0014】
臭素化エポキシポリマーは、難燃剤(fire retardant)(難燃剤(flame retardant)とも呼ばれる)として公知であり、例えば米国特許出願公開第2018/298229号に開示されている。本発明による組成物中の難燃性臭素化エポキシポリマーは、好ましくは末端封鎖臭素化エポキシポリマー、より好ましくはトリブロモフェノール末端封鎖臭素化エポキシポリマー、特にビス(2,4,6-トリブロモフェニルエーテル)末端テトラブロモビスフェノールA-エピクロロヒドリンポリマーである。臭素化エポキシポリマーは、好ましくは700~20,000g/モル、より好ましくは700~3,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。トリブロモフェノール末端封鎖臭素化エポキシポリマーは、例えばTexFRon(登録商標)4002(ICL Industrial Products製)として市販されている。難燃性臭素化エポキシポリマーは、2つ以上の難燃性臭素化エポキシポリマーの混合物であってもよい。
【0015】
本明細書における分子量への言及は、較正のためにポリスチレン標準を使用して、スチレン-ジビニルベンゼンのカラムの組み合わせで溶離剤としてテトラヒドロフラン(THF)(+0.1%酢酸)(1ml/分)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定される分子量に対するものである。
【0016】
イオン性分散基を有する有機ポリマーは、任意の適切な有機ポリマー、好ましくは膜形成ポリマーであり得る。適切な有機ポリマーの例は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミド、又はそれらの2つ以上のハイブリッドである。好ましくは、上記ポリマーは、ポリアクリレート、ポリウレタン、又はポリウレタン-尿素ハイブリッドである。
【0017】
本明細書におけるポリアクリレートへの言及は、場合により他の共重合可能なビニルモノマー、例えばスチレンモノマー、置換スチレンモノマー、又はビニルエーテル若しくはエステル、例えばビニルアセテートと共に、アクリレート及び/又はメタクリレートモノマーのラジカル重合によって得られるコポリマーに対するものである。本明細書におけるアクリレート又はメタクリレートモノマーへの言及は、アクリレート又はメタクリレート官能性を有するモノマーに対するものである。(メタ)アクリレートモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸の脂肪族及び脂環式エステル、並びにアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルである。
【0018】
イオン性分散基は、水中でイオン性であり、それによってポリマーに水中での分散性を提供する基である。イオン性分散基は当分野で公知である。好ましくは、イオン性分散基は、カルボキシル基、スルホネート基又はホスホネート基である。イオン性分散基は、好ましくはポリマーの炭素原子に共有結合している。好ましくは、有機ポリマーは、有機ポリマー骨格と、ポリマー骨格の炭素原子に直接又は間接的に共有結合したペンダントイオン基とを有する。イオン性基がポリマー骨格の炭素原子に間接的に結合されている場合、そのような基は、二価の有機ラジカル、より好ましくは1~6個の炭素原子を含む二価の炭化水素ラジカルを介してポリマー骨格の炭素原子に結合される。より好ましくは、イオン性分散基はカルボキシル基であり、さらにより好ましくはポリマー骨格中の炭素原子に直接共有結合したカルボキシル基である。
【0019】
有機ポリマーは、水への分散性を提供するために任意の適切な量のイオン性分散基を有し得る。イオン性分散基の数は、好ましくは、分散ポリマーが5~50mg KOH/gポリマー、より好ましくは10~45mg KOH/gポリマー、さらにより好ましくは20~40mg KOH/gポリマーの範囲の酸価を有するようなものである。本明細書における酸価への言及は、ISO 2114に従って測定した酸価に対するものである。
【0020】
イオン性分散基を有する有機ポリマーがポリアクリレートである場合、ラジカル重合反応において、酸性コモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸などを共重合することにより、イオン性分散基を適切に組み込むことができる。
【0021】
イオン性分散基を有する有機ポリマーが、縮合ポリマー、例えばポリエステル、ポリウレタン、又はポリウレタン-尿素ハイブリッドなどである場合、重縮合反応におけるコモノマーとして、分散基を有するポリオール又はポリアミン、好ましくはジオール又はジアミンを使用することによって、イオン性分散基をポリマーに適切に組み込むことができる。このようなコモノマーの例は、ジメチロールプロピオン酸及び2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホネートである。ジメチロールプロピオン酸は、イオン性分散基を有する縮合ポリマーを調製するための特に好ましいコモノマーである。
【0022】
本発明による水性難燃性組成物は、
a)有機溶媒中に上記難燃性ポリマーとイオン性分散基を含む有機分散ポリマーとの溶液を提供する工程と、
b)上記イオン性分散基の少なくとも一部を中和して、上記難燃性ポリマーと上記分散ポリマーとの中和溶液を得る工程と、
c)b)で得られた上記中和溶液を水中で乳化して、水相中に分散した上記難燃性ポリマーと上記分散ポリマーとを含む粒子を得る工程と
を含む方法によって適切に得ることができる。
【0023】
a)では、有機溶媒中に難燃性臭素化エポキシポリマーとイオン性分散基を含む分散ポリマーとの溶液が提供される。有機溶媒は、臭素化エポキシポリマーと分散ポリマーとの両方が、中和溶液がc)で乳化する温度、典型的には15~95℃の範囲の温度で溶解する任意の有機溶媒又は有機溶媒の混合物であり得る。好ましくは、有機溶媒は、酸素化有機溶媒、例えばアルコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、アルキルアセテート、ケトン、エステル、若しくはグリコールエーテル/エステル、又はそれらの2つ以上の混合物などである。より好ましくは、溶媒は、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルを含み、さらにより好ましくはジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルを含む。
【0024】
a)で提供される溶液は、任意の適切な方法で、例えば、難燃性臭素化エポキシポリマーと分散ポリマーとの両方を同じ有機溶媒に溶解することによって、又は最初に2つの異なる溶液、すなわち第1の有機溶媒中の難燃性臭素化エポキシポリマーの溶液と第2の有機溶媒中の分散ポリマーの溶液とを調製し、次いで2つの溶液を組み合わせることによって得ることができる。第1及び第2の有機溶媒は、同じであっても異なっていてもよい。あるいは、溶液は、有機溶媒中に分散ポリマーを調製し、次いで、ポリマー溶液中に臭素化エポキシポリマーを溶解することによって提供されてもよい。分散ポリアクリレートは、例えばブチルアセテート又はメチルエチルケトンなどの適切な有機溶媒中で、例えばアクリルモノマーを(メタ)アクリル酸又はイタコン酸などのイオン性基とのように、アクリルモノマーを共重合することによって調製され得る。
【0025】
a)で提供される溶液では、臭素化エポキシポリマーと分散ポリマーとの両方が有機溶媒に溶解される。好ましくは、2つのポリマーは共有結合で互いに結合されていない。
【0026】
一実施形態では、工程a)で提供される分散ポリマーはポリウレタンであり、有機溶媒はポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル、より好ましくはジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルである。
【0027】
別の実施形態では、工程a)で提供される分散ポリマーはポリアクリレートであり、有機溶媒はケトン又はエステル、例えばブチルアセテート又はメチルエチルケトンを含む。
【0028】
c)における効果的な乳化のために、分散ポリマー中のイオン性分散基の少なくとも一部がb)において中和される。好ましくは、イオン性分散基の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、さらにより好ましくは少なくとも90%、なおさらにより好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは100%がc)における乳化の前に中和される。乳化前の酸性イオン基の中和は当分野で周知であり、一般的な中和剤、例えば、ナトリウムヒドロキシド、アンモニア、アミン(例えばジエチルアミン若しくはトリエチルアミン)、アミノアルコール(例えばジメチルアミノエタノール若しくはジイソプロパノールアミン)、又はモルホリン若しくはN-アルキルモルホリンを使用して任意の適切な方法で行うことができる。
【0029】
c)では、難燃性ポリマーと分散ポリマーとの中和溶液を水中で乳化させて、難燃性ポリマーと分散ポリマーとを含む粒子を水相中に分散させる。このようにして得られる粒子は、固体粒子又は粘性液体の液滴である。乳化は、当分野で公知の任意の適切な技術によって行うことができる。典型的には、水は、相反転が生じるまで剪断条件下で難燃性ポリマーと分散ポリマーとの中和溶液に添加される。乳化は、任意の適切な温度で、好ましくは15~95℃、より好ましくは35~80℃の範囲の温度で行うことができる。
【0030】
本明細書を通して、分散粒子という用語は、周囲条件(293K、1バール(絶対))で所定の形状及び体積を有する分散固体粒子と液体の乳化液滴との両方に使用される。乳状液及び分散液という用語並びに分散した及び乳化したという用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0031】
c)で得られた粒子は小さく、典型的にはサブミクロン範囲である。好ましくは、分散粒子は、レーザ回折によって測定して、50~500nm、より好ましくは100~200nmの範囲の体積平均直径D[4:3]を有する。小粒径は、当業者に公知の他の方法、例えばナノミリング又はホットメルト押出によっても得ることができる。当業者は、所望の粒径に到達するために、適切なサイズの粉砕ビーズ又は押出ダイを選択することができる。
【0032】
場合により、さらなる有機溶媒をb)及び/又はc)に添加してもよい。
【0033】
c)で得られた分散液は、場合により、例えば減圧下での蒸発によって有機溶媒の少なくとも一部を除去した後、本発明による水性難燃性組成物であってもよい。一実施形態では、a)で提供される分散ポリマーはポリアクリレートであり、c)で得られる乳状液は、場合により、有機溶媒の少なくとも一部を除去した後、本発明による水性難燃性組成物である。
【0034】
別の実施形態では、a)で提供される分散ポリマーは、遊離イソシアネート基を含み、水性難燃性組成物を得る方法は、さらなる工程d)を含み、c)で得られた粒子中の分散ポリマーは、その遊離イソシアネート基の少なくとも一部をジアミン又はトリアミンと反応させることによって鎖が延長される。ポリマーの遊離イソシアネート基とジ-又はトリアミンのアミン基との間の反応は、尿素結合、及びイオン性分散基を有する高分子量のポリマーをもたらす。この実施形態では、a)で提供される分散ポリマーは、好ましくはポリウレタン又はポリウレタン-尿素ハイブリッドであり、より好ましくはポリウレタンである。工程d)で得られた鎖延長有機ポリマーは、好ましくはポリウレタン-尿素ハイブリッドである。
【0035】
遊離イソシアネート基を有するポリウレタン又はポリウレタン-尿素ハイブリッドの鎖延長によって得られるポリウレタン-尿素ハイブリッドが、本発明による難燃性組成物中のイオン性分散基を有する有機ポリマーとして使用するのに特に適していることが分かった。このような鎖延長ポリマーを含む難燃性組成物をコーティング組成物に使用すると、非常に良好な機械的特性及び耐薬品性を有するコーティング膜が得られることが分かった。
【0036】
本明細書における遊離イソシアネート基への言及は、非ブロック化イソシアネート官能性を有するイソシアネート基に対するものである。
【0037】
a)で提供される分散ポリマー中の遊離イソシアネート基の含有量は、ポリマーの固形分重量に基づいて、好ましくは2~12重量%、より好ましくは3~10重量%の範囲である。イソシアネート含有量は、DIN EN ISO 11909に従って、ポリマーを過剰のジブチルアミンと反応させ、ブロモフェノールブルーに対して塩酸で逆滴定することによって適切に測定することができる。
【0038】
好ましくは、未反応アミンの存在を回避するために、準化学量論量の反応性アミン基を使用して、遊離イソシアネート基を有する分散ポリマーをジアミン又はトリアミンと反応させる。好ましくは、ジ-又はトリアミンは、反応性アミン基の数が遊離イソシアネート基の50~90%、より好ましくは60~80%の範囲に相当するような量で添加される。したがって、工程d)で得られた鎖延長ポリマーは、いくつかの遊離イソシアネート基を、例えば最大3重量%、より好ましくは最大2.5重量%含み得る。そのような遊離イソシアネート基は、水と反応して追加の尿素基及び二酸化炭素を形成する。鎖延長イソシアネート官能性ポリマーに適したジアミン又はトリアミンは、当分野で周知である。ジアミンは、分散ポリマー中の遊離イソシアネート基と反応性である2つ又は3つの第一級及び/又は第二級アミン基を有し得る。好ましくは、ジアミン又はトリアミンは、脂肪族ジアミン又はトリアミン、より好ましくは2つの第一級アミン基を有する脂肪族ジアミン又はトリアミンである。ジアミンは、好ましくは最大16個の炭素原子、より好ましくは2~12個の範囲の炭素原子を有する。特に好ましいアミンは、エチレンジアミン、イソホロンジアミン及びジエチレントリアミンである。
【0039】
a)で提供される有機分散ポリマーは、好ましくは、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する1つ以上のモノマーとポリイソシアネートとの縮合重合によって得られるポリウレタン又はポリウレタン-尿素ハイブリッドであり、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する1つ以上のモノマーは、イオン性分散基を有するポリオール又はポリアミン、及びポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、好ましくはポリカーボネートジオールを含む。
【0040】
a)で提供され、乳化工程c)中に存在する分散ポリマーは、好ましくは500~6,000g/モル、より好ましくは1,000~4,000g/モルの範囲の数平均分子量を有する。分散ポリマーが工程d)で鎖延長されてイオン性分散基を有する最終の有機ポリマーを得る場合、最終の有機ポリマーは、好ましくは少なくとも10,000g/モル、より好ましくは20,000~10,000,000g/モルの範囲、さらにより好ましくは50,000~1,000,000g/モルの範囲の数平均分子量を有する。
【0041】
難燃性組成物の水相は、主液体として水を含み、好ましくは水相の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%が水である。水相は、最大95重量%、又はさらには最大100重量%の水を含み得る。難燃性組成物の調製に使用される有機溶媒の一部は、特にそのような有機溶媒が水と混和性の酸素化有機溶媒である場合、水相中に存在し得ることが理解されるであろう。
【0042】
有機溶媒の少なくとも一部は、工程c)又はd)の後に、例えば減圧下での蒸留によって除去することができる。
【0043】
分散粒子中の難燃性臭素化エポキシポリマー対有機ポリマーの重量比は、任意の適切な比であり得る。所望の比率は、難燃性組成物の最終用途に依存する。難燃性組成物が、難燃性要件を満たすために大量の難燃剤を必要とするコーティング組成物に適用される場合、より高い比率が望まれる。使用される有機ポリマーに応じて、臭素化エポキシポリマー対イオン性分散基を有する有機ポリマーの比が最大80:20で、サブミクロン分散粒子を得ることができることが分かった。
【0044】
好ましくは、分散粒子比における難燃性臭素化エポキシポリマー対有機ポリマーの重量比は、5:95~80:20、より好ましくは10:90~78:22の範囲である。
【0045】
水性難燃性組成物は、好ましくは10~60重量%、より好ましくは20~55重量%の範囲の任意の適切な固形分を有してもよい。本明細書における固形分への言及は、125℃の温度で、1.0gの初期サンプル質量、60分間の試験持続時間でISO 3251に従って測定した固形分に対するものである。
【0046】
本発明による水性難燃性組成物は、水性難燃性コーティング組成物に適切に使用することができる。難燃性組成物は、サブミクロンサイズの分散難燃性ポリマーが非常に良好な審美的特性、特に光沢を有するコーティングをもたらすので、装飾コーティング用のコーティング組成物に特に適している。
【0047】
したがって、本発明は、第2の態様において、水性難燃性組成物を含む水性難燃性コーティング組成物に関する。
【0048】
コーティング組成物は、難燃剤を必要とする任意の種類の水性コーティング組成物であり得る。
【0049】
イオン性分散基を有する有機ポリマーは、コーティング組成物中の膜形成バインダーポリマーとして機能し得る。好ましくは、コーティング組成物は、1つ以上のさらなる膜形成ポリマーを含む。本明細書におけるさらなる膜形成ポリマーへの言及は、難燃性組成物に含まれるイオン性分散基を有する有機ポリマーに加えて膜形成ポリマーに対するものである。本明細書における膜形成ポリマー(バインダーポリマー又は樹脂とも呼ばれる)への言及は、膜を形成する、すなわち表面に塗布され、次いで乾燥及び/又は硬化されたときにコーティング膜を形成するポリマーに対するものである。
【0050】
コーティング組成物は、水性コーティング組成物である。難燃性組成物の粒子及び任意のさらなる膜形成ポリマーは、水相に溶解又は分散され、好ましくは分散される。水相は、主液体として水を含み、好ましくは水相の50%超、より好ましくは70重量%超、さらにより好ましくは80重量%超が水である。水相は、最大95重量%、又はさらには最大100重量%の水を含み得る。
【0051】
適切なさらなる膜形成ポリマーの例としては、ポリアクリレート、アルキド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル及びそれらの2つ以上のハイブリッドが挙げられる。そのような膜形成ポリマーは当分野で周知である。
【0052】
コーティング組成物は、任意の適切な量、好ましくはコーティング組成物の総重量に基づいて10~80重量%、より好ましくは15~70重量%、さらにより好ましくは20~50重量%のポリマー固形分の範囲で1つ以上のさらなる膜形成ポリマーを含んでもよい。
【0053】
1つ以上のさらなる膜形成ポリマーが架橋官能性を有するポリマーを含む場合、コーティング組成物は架橋剤を含み得る。そのようなコーティング組成物は、すべての反応性成分が同じ成分中に存在し、貯蔵安定性である一成分系であり得る。あるいは、そのようなコーティング組成物は、架橋官能性を有するポリマーを含む第1の成分と、架橋剤を含む第2の成分とを含む2成分系であってもよい。
【0054】
1つ以上のさらなる膜形成ポリマーが、酸化乾燥ポリマー、例えばアルキド樹脂、脂肪酸変性ポリアクリレート又は他の不飽和膜形成ポリマーなどを含む場合、コーティング組成物は、好ましくは乾燥剤(drier)(乾燥剤(siccative))をさらに含む。
【0055】
難燃性組成物中のイオン性分散基を有する有機ポリマーは、好ましくは、コーティング組成物中のバインダーポリマーとして作用することができ、乾燥又は硬化したコーティングの一部となり、改善されたフィルム特性をもたらす膜形成ポリマーである。
【0056】
コーティング組成物は、1つ以上のさらなる難燃剤、例えばアンモニウムポリホスフェート(APP)、好ましくはカプセル化APP、シリコーン含有難燃剤、例えばポリオルガノシルセスキオキサン(一般化学式(RSiO3/2)nの化合物、式中RはH原子又はアルキル、アリール若しくはアルコキシルラジカルである)、アルミニウム三水和物又はマグネシウムヒドロキシドを含んでもよい。1つ以上のさらなる難燃剤がAPPを含む場合、APPは、好ましくは、例えばメラミン-ホルムアルデヒド(ClariantからExolit(登録商標)AP 462として市販されている)の層にカプセル化されたAPPである。コーティング組成物は、さらなる難燃剤として、すなわち、本発明の第1の態様による難燃性組成物に組み込まれた臭素化エポキシポリマーに加えて、追加の臭素化エポキシポリマーを含んでもよい。このような追加の臭素化エポキシポリマーは、典型的には、本発明の第1の態様による難燃性組成物中の臭素化エポキシポリマーよりも大きい粒径を有する。コーティングの光沢レベルを制御するために、追加の臭素化エポキシポリマーの量は、臭素化エポキシポリマーの総重量に基づいて、好ましくは50重量%未満、より好ましくは20重量%未満である。
【0057】
一実施形態では、コーティング組成物は、さらなる難燃剤としてAPP及びポリオルガノシルセスキオキサンを含む。
【0058】
コーティング組成物中の難燃性臭素化エポキシポリマーの量は、任意の適切な量であってもよい。難燃性ポリマーの所望量は、コーティング組成物の種類及びその用途に依存することが理解されるであろう。例えば、航空機内装部品用コーティング組成物において、難燃性臭素化エポキシポリマーの量は、典型的には、1~30重量%、好ましくは3~25重量%の範囲である。
【0059】
コーティング組成物は、コーティング組成物に一般的に使用されるさらなる成分、例えば着色及び効果顔料、体質顔料、凝集溶剤、並びに1つ以上の添加剤、例えば界面活性剤、消泡剤、レオロジー調整剤、増粘剤、レベリング剤及び殺生物剤を含み得る。
【0060】
コーティング組成物がさらなる難燃剤としてAPPを含む場合、コーティング組成物は、レオロジー調整剤としてミクロフィブリル化セルロースを含有することが好ましい。ミクロフィブリル化セルロースは、例えば、Exilva Forte 10として市販されている。ミクロフィブリル化セルロースは、コーティング組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%の範囲の量で存在する。
【0061】
コーティング組成物の固形分は、好ましくは10~85重量%、より好ましくは15~80重量%、さらにより好ましくは20~75重量%、なおさらにより好ましくは40~70重量%の範囲である。
【0062】
コーティング組成物は、好ましくは、一成分(1K)コーティング組成物として配合される。これは、コーティング組成物のすべての成分が製造後に同じ容器に貯蔵され、この状態で合理的な貯蔵寿命を有することを意味する。
【0063】
コーティング組成物は、単一のコーティングを基材に直接、又は多層系で、特にプライマーコートに塗布されるトップコートとして塗布するために使用することができる。本コーティング組成物の重要な利点は、規格試験FAR 25.853及びABD 0031で規定されるような高い性能を有しながら、薄層(<200μm)で塗布できることである。本発明によるコーティング組成物から得られるコーティングの厚さは、好ましくは200μm未満、より好ましくは20~100μmの範囲である。
【0064】
コーティング組成物は、低光沢又は半光沢などの任意の光沢グレードでさらに配合することができる。コーティング組成物は、クリアコートであってもよく、又は任意の色に着色されていてもよく、他の性能特性、例えば難燃性、耐熱性、耐水性などに影響を与えない。
【0065】
特に好ましい実施形態では、コーティング組成物中の1つ以上のさらなる膜形成ポリマーは、少なくとも45℃のガラス転移温度Tgを有する分散ポリアクリレートと、ポリカーボネートポリオールに基づく分散ポリウレタンとを含む。このコーティング組成物は、航空機の内部用途、より具体的には複合基材に特に適していることが分かっている。
【0066】
ポリアクリレートは、少なくとも45℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは55~90℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、ポリアクリレートの比較的高いTgは、得られるコーティングの良好な耐汚染性に寄与すると考えられる。
【0067】
本明細書におけるガラス転移温度Tgへの言及は、1℃の変調振幅、40秒の変調周期、及び5℃/分の基礎加熱範囲を使用する変調示差走査熱量測定(MDSC)によって測定されるガラス転移温度に対するものである。ヘリウムが50ml/分の流量でパージガスとして使用される。2回の実行が行われ、第2の実行は第1の実行の直後であり、ガラス転移温度Tgは第2の実行で測定された値である。
【0068】
ポリアクリレートは、好ましくは、少なくとも100,000g/モル、より好ましくは500,000~5,000,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnと重量平均Mw分子量との両方を有する。高分子量は、架橋剤を必要とせずに、コーティング組成物を一成分組成物として配合することを可能にする。
【0069】
ポリアクリレートは、好ましくは、いくらかの酸官能性を有し、すなわち、水への分散性を提供するために、アクリル酸又はメタクリル酸などの酸官能性コモノマーを含有するモノマー混合物から調製される。より好ましくは、ポリアクリレートは、1~20mg KOH/gポリマー、さらにより好ましくは1~10mg KOH/gポリマー、さらにより好ましくは1~7mg KOH/gポリマーの範囲の酸価を有する。
【0070】
ポリアクリレートは、好ましくは、5mg KOH/gポリマー未満のヒドロキシル価を有する。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートポリマーは、OH官能性を有さず、0mg KOH/gポリマーのヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル価は、ISO 4629-2に従って測定することができる。
【0071】
適切なポリアクリレートは、水中分散液として市販されている。そのような分散液(乳状液とも呼ばれる)の例としては、Allnex製のSetaqua(登録商標)6770、Setaqua(登録商標)6756、Setaqua(登録商標)6766、Covestro製のBayhydrol(登録商標)A2427、Gellner Industrial,LLC製のOttopol(登録商標)KX-99、BASF製のJoncryl(登録商標)540、Joncryl(登録商標)1532、Joncryl(登録商標)1982、Stahl製のPicassian(登録商標)AC-122、Picassian(登録商標)AC-126、Picassian(登録商標)AC-169、Picassian(登録商標)AC-176が挙げられる。
【0072】
ポリアクリレートは、好ましくは架橋官能性、より好ましくは自己架橋官能性を有する。自己架橋官能性を有する市販のポリアクリレート乳状液は、例えば、いずれもAllnex製のSetaqua(登録商標)6766、Setaqua(登録商標)6770、Stahl製のPicassian(登録商標)AC-122、Picassian(登録商標)AC-169である。
【0073】
ポリアクリレートは、好ましくは、コーティング組成物の総重量の5~50重量%、より好ましくは8~40重量%の範囲の量で存在する。ポリアクリレートは、好ましくは、1つ以上のさらなる膜形成ポリマーの総重量の30~85重量%、より好ましくは50~80重量%の量で存在する。
【0074】
ポリカーボネートジオールに基づくポリウレタンは、好ましくは、2,000~100,000g/モル、より好ましくは5,000~50,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有する。ポリウレタンは、好ましくは、5,000~100,000g/モル、より好ましくは10,000~50,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0075】
好ましくは、ポリウレタンは、水への分散性を助けるために酸官能性を含有する。ポリウレタンは、好ましくは、1~30mg KOH/gポリマー、より好ましくは1~25mg KOH/gポリマーの範囲の酸価を有する。
【0076】
ポリウレタンはヒドロキシル官能性を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリウレタンは、ヒドロキシル官能性が低く、0 mg KOH/gポリマーのヒドロキシル価を有する。他の実施形態では、ポリウレタンはヒドロキシル官能性を有し、好ましくは1~120mg KOH/gポリマー、より好ましくは1~100mg KOH/gポリマーの範囲の任意の適切なヒドロキシル価を有し得る。
【0077】
適切なポリウレタンは、水中分散液として市販されている。そのような分散液(乳状液とも呼ばれる)の例としては、いずれもStahl製のPicassian(登録商標)PU461、PU676、Relca PU 655、いずれもCovestro製のBayhydrol(登録商標)UH 2557、Bayhydrol(登録商標)UH 2593/1、Evonik製のSILIKOPUR(登録商標)8081、Hauthaway製のHauthane L-2897が挙げられる。
【0078】
ポリウレタンは、好ましくは、コーティング組成物の総重量の1~50重量%、より好ましくは3~40重量%の範囲の量でコーティング組成物中に存在する。ポリウレタンは、好ましくは、1つ以上のさらなる膜形成ポリマーの総重量の15~70重量%、より好ましくは20~50重量%の量で存在する。
【0079】
ポリアクリレート対ポリウレタンの重量比は、ポリマーの固形分重量に基づいて、好ましくは1:5~5:1の範囲、より好ましくは1:1~4:1の範囲である。
【0080】
最終的な態様において、本発明は、本発明によるコーティング組成物が堆積したコーティングでコーティングされた基材に関する。基材は、任意の適切な基材、例えば木材、ポリマー、複合材、金属又は鉱物基材などであってもよい。基材は、コーティング組成物がプライマー又は細孔充填剤として使用され得る裸の基材であってもよく、又はコーティング組成物がトップコートとして使用され得る既に下塗りされた基材であってもよい。
【0081】
コーティング組成物は、航空機、列車、又は他の車両の内部用途に通常使用される基材に適切に適用することができる。基材は、好ましくは、プラスチック、複合材、及び金属基材からなる群から選択される。特に好ましい基材は、プラスチック基材、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリフェニルスルホン(PPSU)基材など、並びに複合基材、例えばハニカム複合材及びラミネート(例えば、ポリビニルフッ化物ラミネート)など、並びに前処理された金属(例えば、クロメート処理アルミニウム)である。ハニカム複合材の一例は、その高い強度対重量比及び疲労破壊耐性のために航空機構造用パネルに広く使用されているDuPont製のNOMEX(登録商標)アラミド紙である。
【0082】
コーティング組成物は、航空機内部用途に特に有用である。
【0083】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【実施例】
【0084】
実施例1-水性難燃性組成物1(本発明)の調製
ポリカーボネートジオール(Eternacoll UM-90;OH価125mg KOH/g)、ジメチロールプロピオン酸及びポリ(エチレングリコール)600を、溶媒としてジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル中イソホロンジイソシアネート及び4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートと、1.0L二重壁反応器(窒素ブランケット下、200rpmで撹拌)中、100℃で4時間反応させることによって、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル中分散ポリウレタンを調製した。得られた分散ポリウレタンは、1,200g/モルの数平均分子量、7重量%の遊離イソシアネート含有量、1重量%のエチレンオキシド含有量及び29mg KOH/gポリマー(ISO 2114に従って測定)の酸価を有していた。
【0085】
このようにして調製したジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル中の分散ポリウレタンを40℃に冷却し、75/25の分散ポリウレタンに対する臭素化エポキシポリマーの固形分重量比が得られるように、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル中の臭素化エポキシポリマー(TexFRon 4002)の70重量%溶液と合わせた。ポリマーブレンドの固形分は、さらなるジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルを添加することによって69%に減少した。
【0086】
ポリウレタンのすべての酸性カルボキシル基をトリエチルアミンで中和した。次いで、600rpmで撹拌しながら水を添加することによって、中和溶液を40℃で15分間乳化させた。ポリウレタンを鎖延長するために、エチレンジアミンの33%(wt/wt)水溶液を60秒かけて滴下した。次いで、得られた乳状液を80μmナイロンフィルターで濾過した。このようにして得られた鎖延長ポリウレタン-尿素ハイブリッドは、2.4重量%の遊離イソシアネート含有量を有していた。
【0087】
得られた難燃性組成物は、50重量%の固形分、75:25の難燃性ポリマー対ポリウレタン-尿素ハイブリッドの重量比、及び128nmのレーザ回折によって測定した体積平均直径D[4:3]を有する分散粒子を含んでいた。
【0088】
実施例2-水性難燃性組成物2~5(本発明)の調製
難燃性ポリマー(FR)対分散ポリウレタンの重量比を変更したことを除いて、実施例1に記載したように水性難燃性組成物を調製した。得られた難燃性組成物中の粒子の体積平均直径D[4:3]を、実施例1に記載したように測定した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例3-ポリアクリレートを含む水性難燃性組成物6(本発明)の調製
窒素ブランケット下、145℃で1.0L丸底フラスコ中に保持された58グラムのメチルアミルケトンに、102グラムのイソボルニルメタクリレート(IBOMA)、67グラムの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、19グラムのネオノナン酸エテニルエステル(VEOVA 9)、5グラムのアクリル酸、5グラムのメタクリル酸、及び10グラムのtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(Trigonox 42S)をゆっくり添加した。添加は、連続撹拌下で90分間にわたって行った。添加が完了した後、反応混合物を125℃に冷却し、7グラムのメチルアミルケトンに溶解したさらなる1グラムのTrigonox 42Sを10分で添加し、反応を125℃で60分間続けた。
【0090】
このようにして、メチルアミルケトン中のペンダント分散基を有するポリアクリレートの溶液を得た。ポリアクリレートは、3,550g/モルの数平均分子量、ISO 2114に従って測定した33mg KOH/gポリマーの酸価を有していた。
【0091】
このようにして調製したメチルアミルケトン中のポリアクリレートを80℃に冷却し、12グラムのトリエチルアミンを添加し、得られた中和ポリアクリレート溶液を、ジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル中の臭素化エポキシポリマー(TexFRon 4002)の70重量%溶液33グラムとブレンドした。
【0092】
次いで、ポリマーブレンドを、600rpm、80℃で30分間撹拌しながら750グラムの水を添加することによって乳化させた。次いで、得られた乳状液を30℃に冷却し、80μmナイロンフィルターで濾過した。
【0093】
得られた難燃性組成物は、22重量%の固形分、10:90の難燃性ポリマー対ポリアクリレートの重量比、及び110nmのレーザ回折によって測定した体積平均直径D[4:3]を有する分散粒子を含んでいた。
【0094】
実施例4-水性難燃性組成物7及び8(本発明)の調製
難燃性ポリマー対ポリアクリレートの重量比を変更したことを除いて、実施例3に記載したように水性難燃性組成物を調製した。得られた難燃性組成物中の粒子の体積平均直径D[4:3]を、実施例3に記載したように測定した。結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
実施例5-FR組成物によるコーティング組成物(本発明)
実施例1に記載のように調製した37.4グラムの難燃性組成物1を100グラムの水性白色又は黒色トナー組成物と混合することによって、本発明によるコーティング組成物を調製した。使用した水性トナー組成物の成分を表2に示す。得られたコーティング組成物は、組成物5(白色)及び5(黒色)として示されている。
【0097】
実施例6-供給されたTexFRon 4002によるコーティング組成物(比較例)
比較例水性分散液であって、
-30.6重量%水性ポリアクリレート乳状液(Setaqua 6766;40%固形分)
-15.0重量%水性ポリウレタン分散液(Picassian PU 461;35%固形分)
-0.09重量%アンモニア
-4.3重量%溶媒(2.6重量%プロポキシ-プロパノール及び1.7重量%1-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロパン-2-オール)
-0.05重量%消泡剤
-50重量%の臭素化エポキシポリマー(TexFRon 4002)
を含む比較例水性分散液を、固体臭素化エポキシポリマーを溶解機ミキサー中で他の成分に添加し、2,000rpmで20分間混合することによって調製した。
【0098】
表2の白色又は黒色のトナー組成物100グラムに、臭素化エポキシポリマーを含む水性分散液37.4グラムを添加することによって、比較例コーティング組成物を調製した。得られたコーティング組成物は、組成物6(白色)及び6(黒色)として示されている。
【0099】
【0100】
実施例7-光沢
実施例5及び6で調製したコーティング組成物を、スクリューバードローダウンアプリケータ(screw-bar draw-down applicator)(S=0.5ミル)を使用して150μmの湿潤膜厚でLenata不透明度チャート上に手動で塗布し、23℃及び50%の相対湿度で乾燥させた。1日後、乾燥したコーティングを光沢について試験した。tri-gloss Byk Gardner光沢計を使用して、60°の角度での光沢を測定した。低光沢とは、60°の角度で8~12光沢単位を有すると定義され、半光沢とは、60°で12~30光沢単位の範囲を有すると定義される。
【0101】
【0102】
実施例8-噴霧コーティングの特性
実施例5(本発明)及び6(比較例)で調製したコーティング組成物に10重量部の水を添加することによって、噴霧用に希釈コーティング組成物を調製した。次いで、希釈組成物を、DeVilbiss GTi PROスプレーガンを使用して2バール及び16mmノズル幅でポリカーボネート基材(Lexan 9604シート)に噴霧した。コーティングを23℃及び50%の相対湿度で乾燥させた。
【0103】
1日後、tri-gloss Byk Gardner光沢計を使用して、60°の角度での光沢を測定した。
【0104】
2日間の乾燥後、乾燥したコーティングにマスタード及びコーヒーの染みを塗布し、水とTurco 5948-DPM航空機用洗浄剤(Henkel製)との20:1重量/重量比の混合物を用いて2時間後にコーティングを洗浄することによって、耐汚染性を測定した。染色を0~5の尺度で評価し、0は染色なしを示し、5は重度の染色を示した。
【0105】
基材への接着性を、1日の乾燥後(乾燥接着)並びに2日間の乾燥及び1日の水への浸漬後(湿潤接着)に測定した。接着性は、2mmの距離で6つのスクラッチチップを使用して、ISO 2409によるクロスハッチ試験で測定した。接着性は、0(接着性が良好)から5(接着性が非常に悪い)まで、以下のように分類した。
0 0%のコーティング領域が除去された
1 5%以下のコーティング領域が除去された
2 5~15%のコーティング領域が除去された
3 15~35%のコーティング領域が除去された
4 15~35%のコーティング領域が除去された
5 65%を超えるコーティング領域が除去された
【0106】
表4に、塗布したコーティングの乾燥膜厚(1日の乾燥後)、60°光沢、耐汚染性、並びに乾燥及び湿潤接着性を示す。
【0107】
【0108】
実施例9-熱放出速度
実施例8に記載のように調製したコーティング組成物を、実施例8に記載のように、航空宇宙内装で一般的に使用される樹脂含浸積層体(AIMS-04-08-000に記載のようなType 12積層体)及びアルミニウム基材(アルミニウム2024-T3、裸、0.5mm)上に高膜ビルド(film build)で噴霧塗布した。
【0109】
熱放出は、OSU燃焼装置を使用して試験した。ピーク放熱率(PHHR)及び総放熱量(THR)を表5に示す。
【0110】
【0111】
結果は、本発明によるコーティング組成物の熱放出が、さらなる膜形成ポリマーの固形分重量に基づいて同じ量の難燃剤を含む比較例コーティング組成物の熱放出に匹敵することを示している。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
水相中に分散された粒子を含む水性難燃性組成物であって、前記粒子が、
難燃性臭素化エポキシポリマー、及び
イオン性分散基を含む有機ポリマー
を含む、水性難燃性組成物。
項2.
前記臭素化エポキシポリマーがトリブロモフェノール末端封鎖臭素化エポキシポリマーである、項1に記載の水性難燃性組成物。
項3.
前記イオン性分散基を含む有機ポリマーが膜形成ポリマーである、項1又は2に記載の水性難燃性組成物。
項4.
前記イオン性分散基を含む有機ポリマーが、ポリアクリレート、ポリウレタン、又はポリウレタン-尿素ハイブリッドである、項1から3のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項5.
前記難燃性ポリマーと前記イオン性分散基を含む有機ポリマーとを含む前記粒子が、レーザ回折によって測定して、50~500nm、好ましくは100~200nmの範囲の体積平均直径D[4:3]を有する、項1から4のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項6.
前記粒子中の難燃性臭素化エポキシポリマーとイオン性分散基を含む有機ポリマーとの重量比が、10:90~80:20の範囲である、項1から5のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項7.
a)有機溶媒中に前記難燃性ポリマーとイオン性分散基を含む有機分散ポリマーとの溶液を提供する工程と、
b)前記イオン性分散基の少なくとも一部を中和して、前記難燃性ポリマーと前記分散ポリマーとの中和溶液を得る工程と、
c)工程b)で得られた前記中和溶液を水中で乳化して、水相中に分散した前記難燃性ポリマーと前記分散ポリマーとを含む粒子を得る工程と
を含む方法によって得られる、項1から6のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項8.
工程a)で提供される前記分散ポリマーが末端遊離イソシアネート基を含み、前記方法が、
d)前記末端遊離イソシアネート基の少なくとも一部をジアミン又はトリアミンと反応させることによって、工程c)で得られた前記粒子中の末端遊離イソシアネート基を含む前記分散ポリマーを鎖延長させる工程をさらに含む、
項7に記載の水性難燃性組成物。
項9.
前記有機分散ポリマーが、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する1つ以上のモノマーとポリイソシアネートとの縮合重合によって得られるポリウレタン又はポリウレタン-尿素ハイブリッドであり、少なくとも2つのイソシアネート反応性官能基を有する前記1つ以上のモノマーが、イオン性分散基を有するポリオール又はポリアミン、及びポリカーボネートジオール又はポリエステルジオール、好ましくはポリカーボネートジオールを含む、項7又は8に記載の水性難燃性組成物。
項10.
前記有機溶媒が、酸素化有機溶媒、好ましくはポリアルキレンオキシドジアルキルエーテル、より好ましくはジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルである、項7から9のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項11.
前記イオン性分散基が、カルボキシル基、スルホネート基又はホスホネート基、好ましくはカルボキシル基である、項1から10のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物。
項12.
項1から11のいずれか一項に記載の水性難燃性組成物を含む水性難燃性コーティング組成物。
項13.
1つ以上のさらなる膜形成ポリマーをさらに含む、項12に記載の水性難燃性コーティング組成物。
項14.
前記1つ以上のさらなる膜形成ポリマーが、
分散(メタ)アクリレートポリマーであって、前記(メタ)アクリレートポリマーのガラス転移温度が、1℃の変調振幅、40秒の変調周期、及び5℃/分の基礎加熱範囲を使用する変調示差走査熱量測定によって測定して、少なくとも45℃である、分散(メタ)アクリレートポリマー、及び
ポリカーボネートポリオールに基づく分散ポリウレタン
を含む、項13に記載の水性難燃性コーティング組成物。
項15.
項13又は14に記載の水性難燃性コーティング組成物が堆積したコーティングでコーティングされた基材。