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特許7350169発振器配置のための冷却を備えた超音波溶着装置
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  • 特許-発振器配置のための冷却を備えた超音波溶着装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】発振器配置のための冷却を備えた超音波溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20230915BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022525808
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019080544
(87)【国際公開番号】W WO2021089155
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】522080546
【氏名又は名称】シュンク ソノジステム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】ワゲンバッハ, ウドー
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-161767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0066863(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10151992(DE,A1)
【文献】特開2002-118152(JP,A)
【文献】特開昭57-063220(JP,A)
【文献】実開昭56-012587(JP,U)
【文献】特開2008-142738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動発生器(6)および前記超音波振動発生器に結合されたソノトロード(5)を備えた発振器組立品(4)と、
冷却器(15)と、を備え、
前記冷却器は少なくとも1つの冷却体(17)を含み、
前記冷却体の接触面(19)が前記発振器組立品の接触面(21)に当接する当接位置と前記冷却体の接触面が前記発振器組立品の接触面から離れた離間位置の間で可逆的に変位可能なように、前記冷却体は前記冷却器内に保持されており
前記冷却器は、前記少なくとも1つの冷却体を前記当接位置と前記離間位置の間で変位させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータ(33)を含み、
前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、前記発振器組立品に超音波振動が発生する溶着段階の間は前記少なくとも1つの冷却体を前記離間位置に変位させ、前記発振器組立品に超音波振動が発生しない休止段階の間は前記少なくとも1つの冷却体を前記当接位置に変位させるように構成される制御システム(35)をさらに備える、超音波溶着装置(1)用のソノトロード組立品(3)。
【請求項2】
前記冷却体の接触面は、少なくとも特定の領域において、前記発振器組立品の接触面の部分領域と形状が相補的な輪郭を有している、請求項1に記載のソノトロード組立品。
【請求項3】
前記冷却体は、前記発振器組立品に向けられた側に変形可能な要素(23)を有し、前記冷却体の接触面は、前記発振器組立品を向いた前記変形可能な要素の外面により形成され、かつ/あるいは前記発振器組立品は、前記冷却体に向いた側に前記変形可能な要素を有し、前記発振器組立品の接触面は、前記冷却体の方を向く前記変形可能な要素の外面によって形成され、前記変形可能な要素は、前記変形可能な要素の前記外面が前記発振器組立品または前記冷却体の対向する接触面に順応するように、前記当接位置で変形するように構成される、請求項1または2に記載のソノトロード組立品。
【請求項4】
前記冷却器は、複数の冷却流路(25)と冷却流体搬送器(27)を備える少なくとも1つの冷却体を含み、
前記冷却流体搬送器は、前記冷却体の前記複数の冷却流路を経由して冷却流体を搬送するように構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のソノトロード組立品。
【請求項5】
前記冷却体の前記複数の冷却流路は、前記冷却体を貫通して延び、すべての側面で囲まれた複数の貫通流路(29)により形成されている、請求項4に記載のソノトロード組立品。
【請求項6】
前記冷却流体搬送器は、前記冷却体の前記複数の冷却流路を経由して液体を搬送するように構成される、請求項4または5に記載のソノトロード組立品。
【請求項7】
前記冷却体に設けられた前記複数の冷却流路には、突出した冷却フィンが形成されている、請求項4に記載のソノトロード組立品。
【請求項8】
前記冷却流体搬送器は、前記冷却体の前記複数の冷却流路を経由して気体を搬送するように構成される、請求項7に記載のソノトロード組立品。
【請求項9】
前記冷却器は2つの冷却体(17a,17b)を含み、
前記冷却体は、前記2つの冷却体がそれぞれ1つの接触面を持つ相互に対向する接触面で前記発振器組立品に当接する当接位置と、前記2つの冷却体が前記発振器組立品の前記接触面に対してそれぞれ離れている離間位置の間で可逆的に変位可能なように前記冷却器に支持されている、請求項の1乃至8のいずれか一項に記載のソノトロード組立品。
【請求項10】
前記発振器組立品は、休止位置と溶着位置との間で第1の方向(37)に変位可能であり、
前記少なくとも1つの冷却体は、前記当接位置と前記離間位置との間で変位されるために、前記第1の方向に対して横断方向の第2の方向(39)に変位可能である、請求項の1乃至のいずれか一項に記載のソノトロード組立品。
【請求項11】
前記発振器組立品はソノトロード・ヘッド(41)を含み、前記ソノトロード・ヘッドは、溶着作業中に複数の接合相手部材(9)がアンビル(7)に押し付けられ、前記超音波振動が前記ソノトロード・ヘッドから前記複数の接合相手部材に伝達される押圧面(43)を有し、
前記少なくとも1つの冷却体は、その当接位置にあるとき、前記ソノトロード・ヘッドに横方向に当接している、請求項の1乃至10のいずれか一項に記載のソノトロード組立品。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のソノトロード組立品(3)、および
アンビル(7)を含む超音波溶着装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着装置に関するものである。特に、本発明は、超音波溶着装置用のソノトロード組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な技術用途において、2つの部品を機械的に確実にかつ/あるいは電気的に結合することが必要な場合がある。例えば、様々な目的で、ケーブルまたはそれらの素線を、接触部品または接続部品と結合するか、互いに機械的かつ電気的に結合することが必要となる場合がある。これは、例えば、ワイヤーハーネスまたはケーブル織機を製造するのに使用することができ、これを用いて、例えば、車両内の電気消費部材を、互いに、エネルギー源および/または制御システムに電気的に接続することができる。
【0003】
いわゆる超音波溶着は、導電性部品同士を物質的に結合させ、高い強度と良好な電気伝導性を持たせるために開発された。これは特殊な形態の摩擦溶着で、接合相手部材または溶着材料とも呼ばれる複数の接合対象部材を互いに表面接触させ、低圧かつ高周波の機械的振動のもとで互いに移動させるものである。この場合、振動は、超音波振動発生器とソノトロード(sonotrode:超音波を発生し、その振動エネルギーを媒体に伝える装置)とからなる発振器組立品の助けを借りて発生させることができ、この組立品では、通常20kHz~50kHzの周波数の超音波振動が発生し、ソノトロードにより複数の接合相手部材のうちの少なくとも1つに伝達される。その結果、塑性流動により、各接合相手部材の材料が必ずしも溶融することなく、接合相手部材同士が表面近くで浸透または噛み合わされる。そのため、超音波溶着は、各接合相手部材に及ぼす影響が少なく、迅速かつ経済的にこれらの部材を接合することができる。
【0004】
超音波溶着は、特に、例えば、ケーブルの素線またはそのような素線の個々のワイヤまたは導体などの金属接合相手部材の溶着に使用することもできる。接合相手部材として、1本以上の素線またはケーブルを接触部品または接続部品に溶着することもできる。超音波溶着は、シート同士または他の種類の接合相手部材との接合に使用することもできる。この目的のために、各接合相手部材を、一般に、超音波溶着装置の受入室に挿入し、次に、超音波振動するソノトロードとアンビルの間で一緒に溶着する。
【0005】
超音波溶着では、典型的には、特に超音波振動の導入と、その結果生じるソノトロードと各接合相手部材との摩擦により、溶着過程中にソノトロードが熱くなる。この場合、用途によっては、ソノトロードの部分的な領域が100℃をはるかに超える温度に達することもあり、局所的には300℃に達することもある。超音波溶着作業中の温度上昇は、各接合相手部材との間に生成される溶着品質に悪影響を及ぼす可能性がある。また、複数の溶着を行う場合、周囲の部品も加熱され、これも溶着品質を損なう可能性がある。
【0006】
そのため、超音波溶着中にソノトロードや発振器組立品の他の部品を冷却するのに、様々な手法が開発されてきた。例えば、従来は、ソノトロードの周囲に冷却用の気流を流して温度を下げていた。また、液冷によってソノトロードの少なくとも一部の領域を冷却する方法も開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特定の超音波溶着用途、特に嵩高い各接合相手部材を特に高エネルギーでおよび/もしくは特に長い時間かけて溶着する用途、ならびに/または多数の溶着を連続して行う用途に対する従来の手法は、効率が十分でなくかつ/あるいは技術的に困難であることが証明されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ソノトロード組立品やそれを備えた超音波溶着装置に対する要件は、発振器組立品の各領域を効率よく、かつ技術的に容易に冷却することにある。
【0009】
このような要件は、独立請求項の主題によって満たされる。有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明で定義される。
【0010】
本発明の第1の側面によれば、超音波溶着装置用の、発振器組立品と冷却器を含むソノトロード組立品が記載される。前記冷却器は、少なくとも1つの冷却体を備える。前記冷却体は、冷却体の接触面が前記発振器組立品の接触面に当接する当接位置と冷却体の接触面が前記発振器組立品の接触面から離れた離間位置の間で可逆的に変位可能であるように前記冷却器内に支持される。
【0011】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面の実施形態によるソノトロード組立品およびアンビルを含む超音波溶着装置が記述される。
【0012】
本発明の範囲を何ら限定することなく、本発明の実施形態に関連する着想および可能な構造は、特に、以下に説明する思考および知見に基づくものと考えることができる。
【0013】
以下では、発振器組立品とその冷却に用いられる冷却器の集合体に対して用語「ソノトロード組立品」を用いる。発振器組立品は、少なくとも1個の超音波振動発生器およびその超音波振動発生器に結合された1個のソノトロードを含む。この文脈では、超音波振動発生器は超音波振動を発生し、場合によってはそれを修正し、最終的にソノトロードに結合させる1つまたは2つ以上の構成要素の配置であるとみなされる。超音波振動発生器は、典型的には電気信号を超音波振動に変換する変換器と、多くの場合、接続されたソノトロードに伝達される前に超音波振動を修正するブースターを含む。
【0014】
冒頭で述べたように、超音波溶着装置の発振器組立品を、超音波溶着作業中の高温とその結果生じる各接合相手部材間の溶着部への悪影響を防ぐために冷却しなければならない。
【0015】
この目的で使用される従来の空冷システムでは、周囲空気または場合によっては特別に予冷された空気の流れをソノトロードに向け、空気がソノトロードの周囲を流れるようにし、それによってソノトロードから熱を放散させる。このような空冷は比較的容易に実施でき、ソノトロードの機能に大きな影響を及ぼすことはない。特に、ソノトロードの振動挙動に影響を及ぼさないのが一般的である。しかし、空気の熱容量は比較的小さいため、特にソノトロードに大量の熱が放出されるような用途では、空気循環による冷却だけでは十分でない場合がある。このため、2つの溶着作業の間にソノトロードを比較的長時間冷却する必要があり、連続して行われる溶着作業の運転時間が長くなる可能性がある。
【0016】
そこで、より効果的にソノトロードを冷却するための液冷システムの開発に対する取り組みが行われた。例えば、WO2017/001255A2には、冷却液体を通す流路をソノトロードに設けることが提案された。
【0017】
しかし、例えばソノトロードに直接複数の冷却流路を設け、そこに冷却液を流すことは技術的に困難な場合があることがわかった。特に、形成された複数の冷却流路とその中を流れる冷却液が、ソノトロードの振動挙動に大きな影響を及ぼす可能性があることが判明した。従って、例えば、ソノトロードの形状、そこに設けられた複数の冷却流路、循環させる冷却液、および/またはソノトロードと超音波振動発生器または冷却液供給装置との接続を設計する際に細心の注意を払う必要がある場合があり、そのように特別に設計したにもかかわらず、そのような統合的液体冷却を行わない従来のソノトロードに比べて、ソノトロードの振動挙動に悪影響を及ぼす可能性があった。
【0018】
したがって、発振器組立品を効率的に冷却するが、好ましくは、溶着過程中にそこに発生する超音波振動に影響を及ぼさないか、及ぼすとしても最小限にとどめる、ソノトロード組立品における冷却器を提供することが提案される。
【0019】
この目的のために、冷却器は、少なくとも1つの冷却体を有する。冷却体は、超音波溶着装置の操作中に発振器組立品よりも低い温度を有するという性質を持ち、この温度差によって発振器組立品から効率的に熱を放散することができるようにすることである。一方、冷却体は、必要に応じて、例えば、以下に詳述するように、流体冷却により積極的に冷却されてもよい。他方、冷却体は、少なくともある部分において、熱伝導率が高く、好ましくは熱容量も高い材料で構成されていることが望ましい。例えば、冷却体は、少なくともある部分において、金属、特に平均を超える熱伝導率および/または熱容量を有する金属で構成されてもよい。
【0020】
しかし、冷却体は、発振器組立品またはその構成部品の1つ以上(特にソノトロードなど)と機械的に連続、したがって熱伝導的に接触していないほうがよい。その代わりに、冷却器は、冷却体が当接位置と離れた位置の間で変位し得るように構成されるのが望ましい。当接位置では、冷却体の接触面は、2つの接触面間に機械的および熱伝導的な接触が確立されるように、発振器組立品の接触面に当接することが望ましい。一方、離れた位置では、発振器組立品と冷却体は、その接触面が接触しないように、互いに間隔をあけて配置されるのが望ましい。
【0021】
原則として、冷却器は1つの冷却体を持つだけでよい。しかし、発振器組立品またはその構成部品のひとつまたはいくつかに、それぞれ、例えば、対向する側面から接触し、かつ/あるいは発振器組立品の異なる部分領域に接触し得る複数の冷却体を設けるのが有利となる場合がある。
【0022】
冷却体は、直線的に変位しても、回転軸を中心に枢動しても、リンクに沿って変位しても、あるいはその他の方法で、当接位置と離間位置との間を変位してもよい。
【0023】
冷却体を変位可能に取り付けることにより、冷却体は、溶着作業中の超音波振動挙動に悪影響を及ぼすことなく、冷却態様で発振器組立品と有利に協働することができる。特に、冷却体は、発振器組立品に断続的、すなわち、発振器組立品が溶着に使用されずに振動させる必要がない段階の間、それを当接位置に変位させて熱伝導で発振器組立品から熱を除去するのに、発振器組立品に供給される。しかし、発振器組立品が各接合相手部材を溶着するために超音波振動する必要がある段階では、離間位置に冷却体を変位させて、発振器組立品に当接する冷却体の塊による振動挙動に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0024】
したがって、本明細書で提案する冷却器を使用すれば、発振器組立品の効率的な冷却ができ、その結果、発振器組立品自体の大幅な改造を必要とすることはない。特に、発振器組立品、特にそのソノトロードに、発振器組立品の振動挙動を変える可能性のある複数の冷却流路を設ける必要がない。その代わり、従来の発振器組立品を、ここで提案するソノトロード組立品と共に使用することができ、冷却の選択肢を確立するのにそれらを変更するための開発努力も必要ない。
【0025】
このように、提案されたソノトロード組立品は、ソノトロードが効率的に冷却されるが、超音波溶着作業中にその機能に悪影響を及ぼすことはない。このソノトロード組立品の冷却器は、技術的に比較的容易に実施することができる。
【0026】
一実施形態によれば、冷却体の接触面は、少なくとも特定の領域で、発振器組立品の接触面の部分領域と形状が相補的な輪郭を持っていてもよい。
【0027】
別の表現をすれば、冷却体の接触面は、少なくともある部分において発振器組立品の接触面に面接触されるように幾何学的に構成されてもよい。このように、冷却体の当接位置では、2つの接触面の間に面接触、結果として高熱伝導性接触が生じ、ここを経由して発振器組立品から大量の熱が放散される可能性がある。
【0028】
接触面の形状および必要に応じた冷却体全体の形状は、例えば、発振器組立品の特性に応じて、少なくとも1つの冷却体の助けを借りて発振器組立品から短時間に十分な熱を放散することができるように選択することができる。従って、発振器組立品が溶着に使用されず、その代わりに、発振器組立品を冷却するためにその当接位置にある冷却体が使用される冷却段階を短くすることができ、連続する超音波溶着作業間の運転時間が全体として短縮される。
【0029】
特定のソノトロード組立品の接触面をどのように選択すべきかは、
(i) 発振器組立品が操作する電力と発振器組立品の発熱量、
(ii) 発振器組立品および/または冷却体の材質、したがってこれら2つの構成要素の熱伝導率および熱容量、および
(iii) 例えば冷却体の能動的冷却によって発生する発振器組立品と冷却体の間の温度差、
などの様々な要因に依存する。
【0030】
例えば、熱が冷却体に放散されるソノトロードの接触面は、例えば、発振器組立品またはそのソノトロードの全表面の1%および99%、好ましくは10%および90%の間の割合を占めるとよい。この場合、発振器組立品またはそのソノトロードの接触面は、単一の冷却体の単一の接触面と接触させてもよいが、好ましくは、複数の冷却体の複数の接触面と接触させるとよい。一方、発振器組立品の接触面は、冷却体に十分に熱を伝達させる目的で小さくしすぎないことが望ましい。他方、発振器組立品の表面全体が接触面として通常は機能しない、というのは、例えば、この表面の部分領域は到達し難く、冷却体または本体はそれらの当接位置からそれらの離間位置に変位するために空間を必要とするので、機械的に敏感な領域および/または非接触の領域を残す必要があるからである。
【0031】
一実施形態によれば、発振器組立品の方を向いた側に、冷却体は変形可能な要素を持っていてもよい。冷却体の接触面は、発振器組立品の方を向いた変形可能な要素の外面により形成されてもよい。あるいはまたはさらに、発振器組立品は、冷却体の方を向いた側に変形可能な要素を持っていてもよく、発振器組立品の接触面は、冷却体の方を向いた変形可能な要素の外面により形成される。変形可能な要素は、それぞれの場合において、変形可能な要素の外面が発振器組立品または冷却体の対向する接触面に適合するように、当接位置で変形するように構成されてもよい。
【0032】
言い換えれば、冷却体および/または発振器組立品を、それぞれの接触面が硬い輪郭を持たず、比較的小さな力で変形しうるように構成するのが有利な場合がある。この目的のために、冷却体および/または発振器組立品に変形可能な要素を構成することができ、この変形可能な要素は、対向する発振器組立品または冷却体に向かって接触面を形成する。変形可能な要素は、冷却体または発振器組立品の基部で保持または支持されてもよい。この場合、変形可能な要素は、十分に高い熱伝導率を有し、接触面に吸収された熱を基部に伝達することができるように、基部と十分に接触していてもよい。
【0033】
このような変形可能な要素は、例えば、変形可能な層および/または変形可能な構造、特に変形可能な表面構造であってもよい。変形可能な層は、例えば、冷却体または発振器組立品の基部が構成する材料と比較して、特に固体金属と比較して、低い力で変形し得る材料からなる層であってよい。例えば、このような層は、弾性体材料で構成されてもよい。あるいはまたはさらに、例えばフィン、ピンプルなどの形態の変形可能な構造または表面構造を、固体構造と比較して低い力で変形させることができるように設けてもよい。例えば、更なる代替案として、変形可能な要素は、柔軟な殻に導入される液体または一種のゲルで構成されてもよい。変形可能な要素は、弾性変形および/または塑性変形可能であってよい。
【0034】
接触面を形成する変形可能な要素の変形性により、その当接位置で冷却体はその突出した位置で発振器組立品の接触面にできるだけ面として適合することができる。このようにして、冷却体と発振器組立品との間に、非常に良好な熱伝導性を有する接触が確立される。
【0035】
一実施形態によれば、冷却器は、複数の冷却流路を有する少なくとも1つの冷却体と、冷却流体搬送器とを含んでもよい。冷却流体搬送器は、冷却体の流路を経由して冷却流体を搬送するように構成されてもよい。
【0036】
別の表現をすれば、冷却器は、その冷却体が積極的に冷却されるように構成されてもよい。ここで提供される冷却流体搬送器は、冷却流体、すなわち冷却液体または冷却気体を、複数の冷却流路を経由して冷却体内に導いてもよい。この目的のため、冷却流体を、複数の冷却流路から導入される際に冷却体から熱を放出するように、予め冷却体の温度よりも低い温度にしておいていてもよい。
【0037】
冷却体を積極的に冷却できるという可能性は、最終的に間接的に冷却体を使用して発振器組立品を迅速かつ効率的に冷却できる可能性を生み出す。
【0038】
従来は冷却流体を発振器組立品の複数の冷却流路に直接流す方式だったのに対し、本実施形態では冷却流体を別体の冷却体に流し、発振器組立品に断続的に熱接触させるだけにしている。
【0039】
冷却体を経由して冷却液を流すことによる冷却の方が、発振器組立品に直接冷却液を流して冷却するよりも、技術的にはるかに容易な場合がある。特に、冷却体は、設計が比較的容易であり、一般に特別な機械的要件が課されない部品の場合がある。例えば、発振器組立品とは異なり、冷却体は、複数の冷却流路の形状により影響される特定の振動特性、特に超音波振動特性を持つ必要はない。
【0040】
また、2つの溶着作業の間で発振器組立品が超音波振動していないときにのみ冷却体を発振器組立品に押し付けるという手法により、超音波溶着装置の操作中に冷却体自体が超音波振動にさらされることがないようにすることができる。例えば、これにより、冷却体に設けられた複数の冷却流路の冷却流体搬送器への接続および/またはこのように形成された冷却回路の密閉を著しく簡略化することができる。
【0041】
詳細な実施形態によれば、冷却体上の複数の冷却流路は、冷却体を貫通して延び、四方を囲まれている複数の貫通流路により形成されてもよい。
【0042】
このように、複数の冷却流路は、例えば冷却流体搬送器に接続され、その間に流体密封閉鎖系を形成し得るそれらの対向する端部だけが開口していてもよい。従って、冷却流体搬送器は、冷却流体を複数の冷却流路に送り込むことができる。全体として、冷却流体が複数の冷却流路を流れるときに熱を吸収し、その後、冷却流体搬送器が再び複数の冷却流路を流れる前に熱を再び放出する冷却回路が形成されてもよい。例えば、複数の冷却流路は、貫通孔の形態の複数の貫通流路として冷却体内に延びていてもよい。
【0043】
この場合、一実施形態によれば、冷却流体搬送器は、冷却体の複数の冷却流路を経由して液体を搬送するように構成されていてもよい。
【0044】
別の表現をすれば、冷却流体は液体で、この液体は、冷却流体搬送器によって冷却体の複数の冷却流路に圧送されてもよい。液体としては、例えば、水、各種油、その他の液体冷却剤を用いることができる。
【0045】
一般に液体は気体よりも熱容量が大きく、かつ/または熱伝導率が高いため、多くの用途で、例えば空気よりも冷却に適している。
【0046】
また、上述した液冷用の複数の貫通流路を有する実施形態に代えて、あるいはその実施形態に加えて、冷却体に設けられた複数の冷却流路に、突出した冷却フィンを形成してもよい。
【0047】
冷却フィンは、例えば、冷却体の基部から突出していてもよい。冷却フィンは、基部と一体的に形成されていてもよいし、基部と良好に熱的に接触していてもよい。冷却フィンの間に複数の冷却流路が構成されてもよく、この複数の冷却流路は少なくとも片側が開口していてもよい。冷却流体搬送器は、冷却体全体が積極的に冷却されるように、一面で開口しているこれらの複数の冷却流路を通して冷却流体を流してもよい。
【0048】
一実施形態によれば、この場合、冷却流体搬送器は、冷却体の複数の冷却流路を経由して気体、特に空気を搬送するように構成されてもよい。
【0049】
気体は、複数の冷却流路を流れる際に冷却体からの熱を放散する冷却流体として機能することができる。気体は一般に液体よりも低い熱容量および/または低い熱伝導率を有するが、気体を用いた冷却は、用途によっては、特に高い冷却能力を必要としない用途では有利になる場合がある。例えば、冷却流体として気体を使用する場合、多くの場合、冷却回路を密閉回路として構成する必要はない。そのため、特殊なシールを設けなくてもよい場合が多い。また、冷却気体による冷却は、冷却液による冷却に比べ、技術的に実施や維持が容易であることが多い。例えば、通常、特別な冷却液槽を設ける必要はなく、多くの場合、液漏れの危険性も無視できる。
【0050】
例えば、ある種の送風機すなわちファンによって、気体の冷却流体、特に空気を、冷却フィンによって規定された複数の冷却流路に通すことができる。必要であれば、気体は、例えば圧縮空気として、圧力を高めた状態でそのような流路内に運ばれてもよく、それにより高い流速でより多くの熱が放散されることになる。
【0051】
一実施形態によれば、冷却器は、2つの冷却体から構成されてもよい。この場合、冷却体は、2つの冷却体がそれぞれ1つの接触面を有する互いに対向する接触面で発振器組立品と当接する当接位置と、それぞれの接触面を有する2つの冷却体がそれぞれ発振器組立品の接触面から離れた離間位置との間で可逆的に変位可能に冷却器に保持されてもよい。
【0052】
言い方を変えると、冷却器は、冷却体を1つだけでなく、少なくとも2つ備えてもよい。必要に応じて、2つの冷却体は、発振器組立品を冷却するのに、対向する側から発振器組立品のそれぞれ割り当てられた接触面に当ててもよい。この場合、各冷却体の接触面は、発振器組立品の表面の一部のみ、特に発振器組立品の表面の最大で半分、または発振器組立品の部分領域に機械的および熱的に接触してもよい。全体として、2つの冷却体は、発振器組立品の表面または発振器組立品の部分領域の大きな、好ましくは主たる部分に接触してよい。
【0053】
溶着作業中、2つの冷却体はそれぞれ離間位置に変位し、妨げられることなく振動できるように発振器組立品を解放することができる。例えば、この目的のために、2つの冷却体を反対方向に変位させてもよい。特に、2つの冷却体は、互いに直線的に離れるように移動してもよいし、互いに離れるように枢動させることによって強制的に離してもよい。
【0054】
一実施形態によれば、冷却器は、少なくとも1つの冷却体を当接位置と離間位置との間で変位させるように構成された少なくとも1つのアクチュエータを含んでもよい。
【0055】
アクチュエータは、様々な方法で構成され、冷却体に直接または間接的に結合させることができる。この場合、アクチュエータは、アクチュエータによって電気的、電磁気的、空気圧的、水力的、または別の方法で発生する力によって、冷却体の当接位置と離間位置との間を変位させることができる。例えば、アクチュエータは、電気サーボモータ、電磁アクチュエータ素子、空気圧、油圧等から構成されてもよい。この場合、アクチュエータを、1つ以上の冷却体を、離間位置と当接位置との間で、直線的に、枢動可能に、または別の方法で可逆的に変位させるように構成してもよい。アクチュエータの助けにより、冷却器は、このように、少なくとも1つの冷却体を発振器組立品に自動的に当てるか、または発振器組立品から遠ざけることができる。
【0056】
一実施形態によれば、ソノトロード組立品は、少なくとも1つのアクチュエータを制御し、発振器組立品において超音波振動が発生する溶着段階の間、少なくとも1つの冷却体を離間位置に変位させ、発振器組立品に超音波振動の発生しない休止段階に少なくとも1つの冷却体を当接位置へ変位させるよう構成されている制御システムをさらに備えてもよい。
【0057】
別の表現をすれば、制御システムは、超音波溶着作業を行うのに発振器組立品に現在超音波振動が発生しているか、または例えば2つの超音波溶着作業の間に冷却のために発振器組立品が現在超音波振動なしで受動的に休止しているかを検出することができる。発振器組立品の現在の検出状態に応じて、制御システムは、その少なくとも1つのアクチュエータの助けを借りて、少なくとも1つの冷却体をその当接位置に、またはその離間位置に移動するように、冷却器を制御することができる。休止段階では、冷却体は熱を放散するためにアクチュエータの助けを借りて発振器組立品の接触面に押し付けられる。次の溶着段階の開始直前に、制御システムはアクチュエータを制御して冷却体を接触面から離すことができる。このように、制御システムとアクチュエータを用いることで、冷却体を当てて発振器組立品を一時的に冷却する冷却過程を自動的に実行することができる。
【0058】
一実施形態によれば、発振器組立品は、休止位置と溶着位置の間で第1の方向に変位可能であってよい。少なくとも1つの冷却体は当接位置と離間位置との間で変位するために、第1の方向に対して横断方向の第2の方向に変位可能であってもよい。
【0059】
つまり、発振器組立品は、不動の固定部品としてではなく、休止位置と溶着位置の間で変位するように構成されていてもよい。溶着位置では、ソノトロード・ヘッドがアンビルに向かって変位することにより、これら2つの部品間の受入室が縮小され、受入室に収容された各接合相手部材がソノトロード・ヘッドとアンビルとの間で締め付けられる場合がある。この溶着位置で、次に発振器組立品を超音波振動させ、超音波溶着作業を行ってもよい。超音波溶着作業の後、発振器組立品は休止位置に移動し、受入室は再び拡大され、各接合相手部材を取り除き、必要に応じて次の溶着過程のために新な複数の接合相手部材を挿入することができる。このように構成された超音波溶着装置は、特に素線を接触要素に溶着する、あるいは金属板を互いに溶着するのに頻繁に使用される。
【0060】
このように変位可能に設計された発振器組立品において、ソノトロード組立品の冷却器は、その少なくとも1つの冷却体が発振器組立品の変位方向に対して横断方向に変位するように構成されてもよい。別の表現をすれば、発振器組立品の変位と冷却体の変位方向は、互いに横断方向、特に直角方向であってもよい。例えば、発振器組立品の変位方向は垂直に延びていてもよく、冷却体の変位方向は水平に延びていてもよい。冷却体の変位方向は、直線的でも、曲線的でもよい。例えば、冷却体は、軸を中心に回転または枢動してもよい。
【0061】
冷却体は、その当接位置では、休止位置にある発振器組立品を変位させることがもはや不可能となるような方法で接触し、その離間位置では、発振器組立品をその溶着位置まで移動させることができるような方法で解放することができる。冷却体は、その変位動において適切なガイドで誘導されてもよく、かつ/あるいは適切なアクチュエータの助けを借りて移動されてもよい。
【0062】
一実施形態によれば、ソノトロードはソノトロード・ヘッドを含み、ソノトロード・ヘッドは、溶着作業中に複数の接合相手部材をアンビルに押し付け、ソノトロード・ヘッドから各接合相手部材に超音波振動を伝達する押圧面を含んでもよい。この場合、少なくとも1つの冷却体は、その当接位置でソノトロード・ヘッドに横方向に当接するように構成され、かつ変位可能であってもよい。
【0063】
一般に、一方では、ソノトロード・ヘッドは、溶着作業中に最も大きな温度上昇にさらされるソノトロードの領域である。特に超音波溶着では、アンビルによって反対側を支持されている各接合相手部材に対して、ソノトロード・ヘッドがその押圧面で押圧される。その際、ソノトロード・ヘッドが著しく発熱することがあり、発振器組立品の中で最も冷却が必要な部位となっている。一方、ソノトロード・ヘッドは、通常、発振器組立品の中で、その形状の変化や質量が作用することによる接触に最も敏感に反応する部分である。
【0064】
そのため、従来の一体型液冷などでは、溶着作業中の振動挙動を妨げず、かつ溶着結果を損なわないように効率的に冷却することが困難であった。
【0065】
発振器組立品に一時的に押し付けられる変位可能な冷却体という本明細書に提案された手法は、原理的には発振器組立品のどの部位の冷却にも使用できるが、特に冷却が困難なソノトロード・ヘッドの冷却に適している。
【0066】
この場合、1つ以上の冷却体を、例えば、ソノトロード・ヘッドの1つ以上の対向する横表面に対して、かつ/あるいは、必要に応じてソノトロード・ヘッドの露出した前面に対して配置することができる。特定の用途では、1つ以上の冷却体を、ソノトロード・ヘッドの押圧面および/またはそれに対向するソノトロード・ヘッドの後面に対して直接当てることも考えられる。
【0067】
本明細書に記載されたソノトロード組立品またはそれを備えた超音波溶着装置の実施形態は、様々な利点を可能にする。例えば空冷を備えた従来のソノトロード組立品と比較して、必要に応じて積極的に冷却される本明細書で提案される冷却器の使用は、溶着工具、特にソノトロードが2つの超音波溶着作業の間に効率的に冷却されるので、連続する超音波溶着作業の運転時間の短縮を可能にする。さらに、発振器組立品の温度を空間的および/または時間的により均一にすることができる。ソノトロード、特にそのソノトロード・ヘッドにおける温度ピークが平滑化される可能性がある。全体として、工具の摩耗が低減され、かつ/あるいは、超音波溶着装置全体のエネルギー効率が改善される。
【0068】
なお、本発明の実施形態の可能な構造および利点は、本明細書において、一部は本発明に従って構成された超音波溶着装置およびそのソノトロード組立品を参照し、一部はこれを操作または使用する態様を参照して説明されている。当業者は、個々の実施形態について説明された構造を、類似の方法で他の実施形態に好適に移転し、本発明のさらなる実施形態に到達するために順応させ、かつ/あるいは交換し、相乗効果をもたらす可能性があることを認識している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明の有利な実施形態を、添付の図面を参照して以下にさらに説明するが、図面および説明はいずれも、本発明を何ら限定するものとして解釈されないものとする。
【0070】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波溶着装置の大幅に簡略化した図である。
図2】本発明の一実施形態に係る超音波溶着装置用ソノトロード組立品の側面図である。
図3図2のソノトロード組立品の図2に示す方向Aにおける透視部分図である。
図4図2のソノトロード組立品の冷却器の部品を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図は、単なる模式図であり、縮尺どおりではない。様々な図面における同一の参照数字は、同一の構造または同一の効果を有する構造を示す。
【0072】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波溶着装置1の構成を大幅に簡略化した図である。図2から図4は、超音波溶着装置1のソノトロード組立品3の側面図と、このソノトロード組立品3の部分領域、特にその冷却器15およびその発振器組立品4の透視図である。
【0073】
超音波溶着装置1は、発振器組立品4とアンビル7を備えたソノトロード組立品3を含む。発振器組立品4は、ソノトロード5、および変換器13およびブースター11を備えた超音波振動発生器6を含み、ソノトロード5は一端がブースター11を介して変換器13に結合され、後者を介して超音波振動される。ソノトロード5は、アンビル7を向いた押圧面43を有するソノトロード・ヘッド41を含む。押圧面43とアンビル7のソノトロード・ヘッド41を向いた面の間には、受入室8が配置されている。受入室8は、さらなる構成要素、例えば1つ以上の横摺動部(明確さの理由のために図示せず)で横方向に規定されてもよい。各接合相手部材9、例えば素線および素線に溶着される接触要素は、受入室8内に収容されてもよい。替わりの実施形態では、溶着されるシートおよび/または溶着されるケーブルの素線、または溶着によって圧縮される素線の個々のワイヤも、受入室に収容されることがある。ソノトロード組立品3全体は、発振器組立品4および特にそのソノトロード・ヘッド41がアンビル7に向かって移動し、受入室8のサイズを縮小し、したがって各接合相手部材9を一緒に押し付けるように、変位機構(明確さの理由のために図示せず)の助けを借りて第1の方向37に変位してもよい。
【0074】
超音波溶着作業中、発振器組立品4、特にそのソノトロード・ヘッド41は激しく加熱される。過度の加熱で各接合相手部材9の間の溶着結果を悪くしないように、ソノトロード組立品3は冷却器15を有する。
【0075】
図示の例では、冷却器15は、複数の冷却体17を備えている。この場合、ブースター11とソノトロード・ヘッド41との間に延びる領域で、ソノトロード5の近位端に第1の対の冷却体17’が配置されている。第2の対の冷却体17’’は、ソノトロード・ヘッド41の領域に設けられている(明瞭化のために図2には示されていない)。第3の対の冷却体17’’は、発振器組立品4の遠位端の近傍に配置される。あるいはまたはさらに、冷却体(図示せず)を、そのブースター11またはその変換器13のような発振器組立品4の他の構成要素を冷却するのに提供してもよい。
【0076】
記載の実施例では、これらの冷却体17は、液冷の助けを借りて積極的に冷却されることになっている。この目的のために、ソノトロード組立品3は、冷却流体搬送器27を有する。冷却流体搬送器27は、これらの冷却体17を通過する複数の貫通流路29の形態の複数の冷却流路25内に冷却液体を圧送する。液体冷却は、詳細には異なって構成されてもよく、図1および他の図では、複数の冷却流路25に関してのみ模式的に示されている。
【0077】
冷却器15のこれらの冷却体17は、個々の冷却体17が当接位置と離間位置との間で可逆的に変位し得るように支持されている。当接位置では、各冷却体17の接触面19が発振器組立品4の隣接する接触面21に当接するが、離間位置では、2つの接触面19,21が空隙を介して互いに間隔を空けて配置される。この場合、空隙の幅は、溶着作業中に発振器組立品が振動する半径方向の超音波振動振幅よりも著しく大きいことが好ましい。例えば、空隙は、1mm以上の幅を有していてもよい。
【0078】
この場合、冷却器15は、ソノトロード組立品3の残りの部分と共に、溶着のためにアンビル7に向かう方向37に移動されてもよく、休止段階の間は方向37とは逆に戻されるようにしてもよい。
【0079】
あるいは、離間位置にある冷却体17は、発振器組立品4がアンビル7に向かって第1の方向37、図示の例では垂直に変位し得る程度に、発振器組立品4から間隔をあけて配置されてもよい。
【0080】
冷却体17は、好ましくは、それらの離間位置とそれらの当接位置との間で、第1の方向37に対して横断方向、例えば直角に、すなわち図示の例では水平に延びる第2の方向39に変位させることができる。
【0081】
このため、ソノトロード組立品3またはその冷却器15は、1つ以上のアクチュエータ33を有する。この場合、アクチュエータ33は、1つ以上の冷却体17をそれらの当接位置とそれらの離間位置の間で可逆的に往復移動させることができる。アクチュエータ33は、制御システム35で制御されてもよい。
【0082】
この場合、制御システム35はアクチュエータ33を制御して、発振器組立品4が超音波振動する溶着段階の間は冷却体17を離間位置に変位させ、その後、発振器組立品4に超音波振動が発生せず、代わりに後者をできるだけ効率的に冷却しようとする休止段階の間は冷却体17を当接位置に変位させる。
【0083】
図3および図4は、ソノトロード5の円筒形領域を冷却する冷却器15の可能な実施形態を示す。この場合、冷却体17a’’および17b’’は、ソノトロード5の対向する両側面に配置される。冷却体17a’’’および17b’’’の各々は、この場合、金属材料からなる一種の殻として形成されており、この殻において、ソノトロード5の方を向いた接触面19は、ソノトロード5の接触面21と相補的に形成された輪郭を有している。この具体例では、2つの冷却体17の接触面19は、それぞれ円筒状に凹んでいる。
【0084】
冷却体17の各々には、冷却流体が循環し、したがって複数の冷却流路25として機能し得る複数の貫通流路29が設けられている。
【0085】
2つの冷却体17a’’および17b’’のそれぞれは、それぞれの枢軸51を中心に枢動するように取り付けられている。関連するアクチュエータ33は、各冷却体17a’’および17b’’が鉄板47に向かって、したがってその離間位置に向かって引っ張られ得る補助を有する電磁石45を有している。さらに、電磁石45が作動していないとき、冷却体17a’’および17b’’のそれぞれに1つのばね49が係合して、それを当接位置の方へ移動させる。
【0086】
冷却体の接触面19を形成してもよい任意の変形可能な要素23は、単に模式的に破線で、ソノトロード5に向けられた側の冷却体17a’’および17b’’の各々に設けられる。例えば、変形可能な要素23は、弾性体のような弾性材料の層でもよく、その材料は、好ましくは最良の熱伝導率を有する。この場合、変形可能な要素23は、好ましくは、広い面積にわたってソノトロード5の接触面21に順応するような方法で可撓性である。
【0087】
例示の実施形態で実施された液冷に加えて、あるいはそれに代えて、冷却器15において、冷却体17を冷却するのに空冷が使用されてもよい。この目的のために、冷却体17の各々に、例えば外側を向いた面、すなわち接触面19とは反対の面に、冷却フィン(明確さの理由のために図示せず)製の構造を設けてもよい。隣接する冷却フィンの間には、外部に開放された複数の冷却流路が形成されてもよく、その流路内に熱を放散する空気流が生成されてもよい。
【0088】
ここに提示されたソノトロード組立品3のために提案された冷却器15により、発振器組立品4を、連続する超音波溶着作業の間に迅速かつ効率的に冷却することができる。これにより、超音波溶着中の運転時間を短縮し、超音波溶着装置1の構成要素の摩耗を低減し、かつ/あるいは溶着製品の品質を向上させることができる。
【0089】
なお、「有する(having)」、「含む(comprising)」などの用語は、他の要素や工程を排除するものではなく、「1つ(one)」または「一(a)」などの用語は、複数を排除するものではない。さらに、上記の例示的な実施形態の1つを参照して説明された構造または工程は、上記の他の例示的な実施形態の他の構造または工程と組み合わせて使用することもできる。特許請求の範囲における参照数字は、限定とみなされない。
【符号の説明】
【0090】
1 超音波溶着装置
3 ソノトロード組立品
4 発振器組立品
5 ソノトロード
6 超音波振動発生器
7 アンビル
8 受入室
9 接合相手部材
11 ブースター
13 変換器
15 冷却器
17 冷却体
19 冷却体の接触面
21 ソノトロードの接触面
23 変形可能な要素
25 複数の冷却流路
27 冷却流体搬送器
29 複数の貫通流路
31 冷却フィン
33 アクチュエータ
35 制御システム
37 第1の方向=ソノトロードの移動方向
39 第2の方向=冷却体の移動方向
41 ソノトロード・ヘッド
43 押圧面
45 電磁石
47 鉄板
49 ばね
51 枢軸
図1
図2
図3
図4