(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】エレベータの運転制御装置および運転制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230915BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B1/06 F
(21)【出願番号】P 2022527379
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021059
(87)【国際公開番号】W WO2021240708
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 勇来
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晶裕
(72)【発明者】
【氏名】関口 尚一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】石川 大介
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-127860(JP,A)
【文献】特開昭59-092878(JP,A)
【文献】特開2007-210695(JP,A)
【文献】特開平06-156914(JP,A)
【文献】特開平06-107389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運転制御装置において、
保守専用運転モードかどうかを判定する運転モード判定部と、
前記保守専用運転モードである場合に、乗りかごが行先階へ到着する前に走行する走行区間にある停止階に前記乗りかごを停止させる運転制御部と、
を備え
、
前記乗りかごが前記行先階へ走行するまでに停止可能な前記停止階があるかどうかを判定する停止階判定部と、
前記停止階がない場合に、かご呼びボタンの特殊操作に応じて前記乗りかごの呼びを登録する呼び受付部と、
を備えることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの運転制御装置において、
前記停止階は端階手前ゾーンの停止可能階であることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のエレベータの運転制御装置において
前記運転制御部は、前記乗りかごを前記停止階に停止させた後、所定の操作に応じて前記行先階への走行を再開させることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項4】
請求項
1に記載のエレベータの運転制御装置において、
前記運転制御部は、前記乗りかごを前記停止階に停止させた後、所定時間後に前記行先階への走行を再開させることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項5】
請求項
1に記載のエレベータの運転制御装置において、
前記運転制御部によって、前記乗りかごの走行が開始される場合に、前記乗りかごに設けられる報知手段を作動させる報知手段制御部を備えることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のエレベータの運転制御装置において、
前記報知手段は音発生装置であることを特徴とするエレベータの運転制御装置。
【請求項7】
エレベータの運転制御方法において、
乗りかごを保守専用運転モードで運転する場合、
かご呼びを受けると、
前記乗りかごが行先階へ走行する走行区間にある停止階に前記乗りかごを停止させ、
前記停止階がない場合に、かご呼びボタンの特殊操作に応じて前記乗りかごの呼びを登録することを特徴とするエレベータの運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守点検時におけるエレベータの運転を制御する運転制御装置および運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの保守点検作業においては、作業内容に応じて、通常運転速度よりも低速で運転される保守運転モードもしくは通常運転速度と同じ速度で運転される保守専用運転(以下、「専用運転」と記す)モードで、乗りかごが運転される。
【0003】
専用運転モードは、作業者が、乗りかご内に設けられる操作盤内に格納されている専用運転モード設定スイッチを操作すると設定される。専用運転モードが設定されると、乗りかごは、乗場呼びには応答せず、作業者が、操作盤に設けられる行先階ボタンを操作すると作成されるかご呼びに応じて、行先階ボタンの指定する階床へ向かって運転される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保守点検作業に端階における作業が含まれる場合、専用運転実行時には、端階塔内に出入りしないこと、運転開始時に端階における作業員がいないことを確認することなど、作業規則もしくは作業手順を決めて、これを遵守することにより、作業者の安全が確保されている。作業者の安全をさらに向上するには、エレベータとしての機能的手段を要するが、上記の従来技術によるエレベータはそのような機能を備えてはいない。
【0006】
そこで、本発明は、保守点検作業の安全性を向上することができるエレベータの運転制御装置および運転制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベータの運転制御装置は、保守専用運転モードかどうかを判定する運転モード判定部と、保守専用運転モードである場合に、乗りかごが行先階へ到着する前に走行する走行区間にある停止階に乗りかごを停止させる運転制御部と、を備え、乗りかごが行先階へ走行するまでに停止可能な停止階があるかどうかを判定する停止階判定部と、停止階がない場合に、かご呼びボタンの特殊操作に応じて乗りかごの呼びを登録する呼び受付部と、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明によるエレベータの運転制御方法は、乗りかごを保守専用運転モードで運転する場合、かご呼びを受けると、乗りかごが行先階へ走行する走行区間にある停止階に乗りかごを停止させ、停止階がない場合に、かご呼びボタンの特殊操作に応じて乗りかごの呼びを登録する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保守点検作業の安全性を向上することができ。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態であるエレベータ装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態における運転制御装置が専用運転モードにおいて実行する制御を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示す運転制御による乗りかごの動作の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であるエレベータ装置の全体構成を示す概略図である。
【0014】
図1のエレベータ装置では、昇降路(図示せず)内において、乗りかご1と釣り合い錘2とが、主ロープ3によって互いに接続される。つるべ式に吊られる。主ロープ3は、昇降路内あるいは機械室(図示せず)に配置される巻上機のシーブ4および転向プーリ5に巻き掛けられる。これにより、乗りかご1および釣り合い錘2が、主ロープ3によって昇降路内に吊られる。
【0015】
モータ6によってシーブ4が回転駆動されると、主ロープ3がシーブ4によって摩擦駆動される。これにより、乗りかご1および釣り合い錘2が、昇降路内において昇降移動する。
【0016】
モータ6は、モータ6に電力を与える電力変換装置を備えているモータ駆動装置10によって駆動される。モータ駆動装置10は、運転制御装置20からの指令信号に応じて、モータ6を駆動制御する。
【0017】
運転制御装置20は、次に説明するように、運転制御部21、制御用プログラム(23~25)を記憶する記憶装置22、運転モード判定部26、呼び受付部27、停止階判定部28、報知手段制御部29を備えている。なお、本実施形態において、運転制御装置20は、マイクロコンピュータなどのコンピュータシステムによって構成される。コンピュータシステムによって所定の制御用プログラムを実行することにより、運転モードに応じた指令信号を作成する。
【0018】
運転制御部21は、乗りかご1内に設けられる操作盤30のスイッチ操作に応じて、モータ駆動装置10への指令信号を作成する。操作盤30は、行先階を指定するかご呼びボタンスイッチや、保守作業時に保守技術者が操作する保守用スイッチを備える。なお、保守用スイッチは、操作盤30内に位置し、操作盤30における施錠可能なカバーを、保守技術者が携帯するキーによって解錠して開けると操作可能となる。したがって、保守用スイッチは、一般のエレベータ利用者が操作するものではなく、本実施形態では保守技術者専用である。
【0019】
操作盤30のスイッチ操作による操作信号は、操作盤30に接続される配線、この配線が接続されるかご上端末装置40およびかご上端末装置40に接続されるテールコード50を介して、運転制御装置20に送信される。運転制御装置20は、操作盤30から送信される操作信号に基づいて、運転制御部21を用いて、乗りかご1の運転を制御するための指令信号を作成する。
【0020】
操作盤30からの操作信号の内、かご呼びボタンスイッチの操作によって作成されるかご呼びは、呼び受付部27によって受け付けられる。呼び受付部27は、受け付けたかご呼びを登録する。運転制御部21は、登録されたかご呼びに応じて乗りかご1を運転する。なお、呼び受付部27は、後述する運転モード判定部26および停止階判定部28の判定結果に応じて、かご呼びを登録したり、登録しなかったりする。また、呼び受付部27は、かご呼びボタンスイッチの操作状態(通常操作、特殊操作(長押しなど))を判定し、判定結果に応じて、かご呼びを登録したり、登録しなかったりする。
【0021】
また、操作盤30からの操作信号の内、保守用スイッチの操作によって作成される信号に応じて、運転モード判定部26は、乗りかご1の運転動作モードが、通常運転モード(信号なしの場合)、保守運転モード、並びに専用運転モードのいずれであるかを判定する。運転モード判定部26によって判定された運転動作モードが運転制御部21に設定される。
【0022】
通常運転時において、運転制御部21には、乗りかご1の運転動作モードとして、通常運転モードが設定される。通常運転モードが設定されると、運転制御部21は、運転制御手段として、記憶装置22に格納される通常運転制御用プログラム23を選択する。そして、運転制御部21は、操作盤30に設けられるかご呼びボタンスイッチの操作並びに図示されない乗場呼びボタンスイッチの操作に応じて、通常運転制御手段を用いることにより、すなわち通常運転制御用プログラム23を実行することにより、乗りかご1を通常運転させるための運転指令信号を作成する。
【0023】
保守作業時において、操作盤30が備える保守用スイッチの内、保守運転切替スイッチが操作されると、運転制御部21には、乗りかご1の運転動作モードとして、保守運転モードが設定される。保守運転モードが設定されると、運転制御部21は、運転制御手段として、記憶装置22に格納される保守運転制御用プログラム24を選択する。そして、運転制御部21は、保守用スイッチの内、保守運転用スイッチの操作に応じて、保守運転制御手段を用いることにより、すなわち保守運転制御用プログラム24を実行することにより、乗りかご1を通常運転時の定格速度よりも低速度で上下方向に運転および停止させるための運転指令信号を作成する。
【0024】
保守作業時に、操作盤30が備える保守用スイッチの内、専用運転切替スイッチが操作されると、運転制御部21には、乗りかご1の運転動作モードとして、専用運転モードが設定される。専用運転モードが設定されると、運転制御装置20は、運転制御手段として、記憶装置22に格納される専用運転制御用プログラム25を選択する。そして、運転制御部21は、かご呼びボタンスイッチの操作に応じて、乗りかご1を通常運転時と同様の速度で運転させるための運転指令信号を作成する。なお、運転制御装置20は、専用運転モードの場合、乗場呼びボタンスイッチの操作は無効にする。すなわち、運転制御装置20は、かご呼びボタンスイッチおよび乗場呼びボタンスイッチの操作の内、かご呼びボタンスイッチの操作のみに応答する。すなわち、乗りかご1は、保守技術者がかご呼びボタンスイッチを操作して登録する行先階へ向かって運転される。
【0025】
報知手段制御部29は、運転制御部21からの指令に応じて、もしくは運転制御部21の動作状態に応じて、音発生装置などの報知手段を制御する。本実施形態では、報知手段は、乗りかご1に設けられ、乗りかご1が専用運転中であることを、昇降路内および乗りかご1内に報知する。
【0026】
図2は、本実施形態における運転制御装置が専用運転モードにおいて実行する制御を示すフローチャートである。
【0027】
処理を開始すると、ステップS1において、運転制御装置20は、呼び受付部27を用いて、操作盤30からの操作信号に基づいて、操作盤30におけるかご呼びボタンの内、端階ゾーン、例えば、下側端階ゾーンの階床(例えば、最下階)のかご呼びボタンが押されたかを判定する。運転制御装置20は、端階ゾーンの階床のかご呼びボタンが押されていないと判定すると(ステップS1のNO)、一連の処理を終了し、押されていると判定すると(ステップS1のYES)、次に、ステップS2を実行する。
【0028】
ステップS2において、運転制御装置20は、停止階判定部28を用いて、かご呼びボタンによって行先階に指定された端階ゾーンの階床までの乗りかご1の走行区間であって、乗りかご1が行先階に到着する前に走行する走行区間に、端階前ゾーンが含まれるかを判定する。運転制御装置20は、端階手前ゾーンが含まれると判定すると(ステップS2のYES)、次に、ステップS3を実行し、端階手前ゾーンが含まれないと判定すると(ステップS2のNO)、次に、ステップS6を実行する。
【0029】
ステップS3において、運転制御装置20は、停止階判定部28を用いて、乗りかご1の走行区間における端階手前ゾーンに停止階があるかを判定する。運転制御装置20は、停止階があると判定すると(ステップS3のYES)、次に、ステップS4を実行し、停止階がないと判定すると(ステップS3のNO)、次に、ステップS6を実行する。
【0030】
ステップS4において、運転制御装置20は、押されたかご呼びボタン、すなわち端階ゾーンの階床のかご呼びボタンに対応するかご呼びを呼び受付部27を用いて登録し、運転制御部21を用いて、かご呼びボタンによって指定された行先階に向かって乗りかご1を停止中の階床から出発させる。ステップS4を実行後、運転制御装置20は、次に、ステップS5を実行する。
【0031】
ステップS5において、運転制御装置20は、運転制御部21を用いて、乗りかご1を、端階手前ゾーンの停止階のうち、最も端階ゾーンに近い階床に着床させ、停止させる。端階手前ゾーンにおける停止階に停止後に、保守技術者の所定の操作(例えば、出発するまで閉ボタンを長押し)をすることで行先階へ走行する。なお、所定時間経過後に走行再開してもよい。
【0032】
ステップS5を実行後、運転制御装置20は、次に、ステップS8を実行する。
【0033】
ステップS8において、運転制御装置20は、報知手段制御部29を用いて乗りかご1に設けられるブザーを鳴動させながら、運転制御部21を用いて、かご呼びが登録された階床、すなわち端階ゾーンの階床に向かって乗りかご1を走行させる。そして、運転制御装置20は、運転制御部21を用いて、この階床に乗りかご1を着床させて停止させるとともに、報知手段制御部29を用いてブザーの鳴動を停止する。このようなブザー鳴動により、端階ゾーンに対して、乗りかご1の接近を確実に報知することができる。
【0034】
本実施形態において、ブザーは、乗りかご1のかご室外において乗りかご1上に、昇降路内に向けてブザー音を発するように設けられる。なお、ブザーは、乗りかご1上に限らず、乗りかご1において昇降路内にブザー音を響かせることができるような位置に設けることができる。ブザーとしては、電磁ブザーや電子ブザーなどが適用できる。
【0035】
なお、ブザーに限らず、電磁ベルや電子ベルなどの音発生装置を適用できる。音発生装置から発生する音が昇降路内に反響するため、乗りかご1の接近を確実に報知することができる。
【0036】
上述のように、ステップS2で、運転制御装置20が走行区間に端階手前ゾーンが含まれないと判定する場合(ステップS2のNO)、もしくは、ステップS3で、運転制御装置20が端階手前ゾーンに停止階がないと判定する場合(ステップS3のNO)、運転制御装置20は、次に、ステップS6を実行する。
【0037】
ステップS6において、運転制御装置20は、呼び受付部27を用いて、かご呼びボタンが長押しされたか、本実施形態では5秒以上押されたかを判定する。運転制御装置20は、長押しされたと判定しなかった場合(ステップS6のNO)、一連の処理を終了し、長押しされたと判定した場合、次に、ステップS7を実行する。
【0038】
ステップS7において、運転制御装置20は、ステップS4と同様に、呼び受付部27を用いて、押されたかご呼びボタン、すなわち端階ゾーンの階床のかご呼びボタンに対応するかご呼びを登録して、運転制御部21を用いて、かご呼びボタンによって指定された行先階に向かって乗りかご1を停止中の階床から出発させる。ステップS7を実行後、運転制御装置20は、次に、ステップS8を実行する。
【0039】
ステップS8において、運転制御装置20は、報知手段制御部29を用いて乗りかご1に設けられるブザーを鳴動させながら、運転制御部21を用いて、かご呼びが登録された階床、すなわち端階ゾーンの階床に向かって乗りかご1を走行させる。そして、運転制御装置20は、運転制御部21を用いて、この階床に乗りかご1を着床させて停止させるとともに、報知手段制御部29を用いてブザーの鳴動を停止する。このようなブザー鳴動により、端階ゾーンに対して、乗りかご1の接近を確実に報知することができる。
【0040】
上述のように、専用運転モードにおいて、運転制御装置20は、通常運転モードと同様にかご呼びに応答して、乗りかごを運転するが、通常運転とは乗りかご1の運転状態を異ならしめることにより、行先階への接近を報知する。本実施形態では、行先階である端階ゾーンの階床に到達する前に、一旦、乗りかご1の走行を停止させたり、ブザーを鳴動させながら乗りかご1を走行させたりする。
【0041】
さらに、本実施形態において、運転制御装置20は、乗りかご1の走行区間において、行先階が位置する端階ゾーンに隣接する端階手前ゾーンに停止階として登録されている階床の有無に応じて、乗りかご1の運転状態を異ならしめる。すなわち、上述のように、運転制御装置20は、停止階である階床があれば、その階床に乗りかご1を一旦停止し、停止階である階床がなければ、ブザーを鳴動させながら乗りかご1を走行させる。ここで、停止階は、通常運転において乗りかご1が、かご呼びもしくは乗場呼びに応答する階床である。これにより、停止階の有無に応じて、運転制御装置20は、乗りかご1の接近を報知するために適切な運転状態で乗りかご1を運転するので、確実に乗りかご1の接近を報知することができる。
【0042】
図3は、
図2に示す運転制御による乗りかごの動作の例(ケース1~ケース4)を示す。なお、いずれのケースにおいても、専用運転モードにおいて、ある階床に停止する乗りかご内で、保守技術者が、操作盤のかご呼びボタンを操作して、端階ゾーンにおける階床を行先階とするかご呼びを登録している。
【0043】
ケース1では、
図2のステップS2およびS3において、それぞれ、走行区間に端階手前ゾーン(例えば、最下階から高さ6mの範囲)有り、および端階手前ゾーン(例えば、端階ゾーンに隣接する高さ10mの範囲)に停止階有り、と判定されている。この場合、乗りかごは、端階手前ゾーンにおける停止階に一旦着床して停止する。なお、ケース1では、乗りかごは、端階ゾーンに最も近い停止階に停止する。これにより、端階ゾーンに対して、乗りかごの接近を確実に放置することができる。さらに、乗りかごは、端階手前ゾーンにおける停止階に停止後に、保守技術者の所定の操作(例えば、出発するまで閉ボタンを長押し)をすることで行先階へ走行する予め運転制御装置に設定されている所定時間停止した後、ブザーを鳴動させながら行先階まで走行する。なお、所定時間経過後に走行再開してもよい。
【0044】
ケース2では、ケース1と同様に、
図2のステップS2およびS3において、それぞれ、走行区間に端階手前ゾーン有り、および端階手前ゾーンに停止階有り、と判定されている。ケース2では、端階手前ゾーンにおける複数階床(
図3では二階床)に、停止階および不停止階が含まれる。なお、ケース2においても、乗りかごは、端階ゾーンに最も近い停止階に停止する。このため、ケース2では、端階手前ゾーンにおける二階床の内、停止階として登録されている上方の階床に一旦着床して所定時間停止する。端階手前ゾーンにおける停止階に停止後に、保守技術者の所定の操作(例えば、出発するまで閉ボタンを長押し)をすることで行先階へ走行する。なお、所定時間経過後に走行再開してもよい。乗りかごは、ブザーを鳴動させながら、端階手前ゾーンの不停止階を通過し、行先階まで走行する。
【0045】
ケース3では、保守技術者が乗り込む乗りかごが端階ゾーンに停止しているため、行先階(最下階)までの乗りかごの走行区間に端階手前ゾーンが含まれないので、ブザーを鳴動させながら行先階まで乗りかごを走行させるために、かご呼びボタンを長押しする。
【0046】
ケース3では、
図2のステップS2において、走行区間に端階手前ゾーンなし、と判定されている。さらに、かご呼びボタンが長押しされているので(
図2のステップS6のYES)、乗りかごは、ブザーを鳴動させながら、行先階(
図3中の最下階)まで走行する。なお、かご呼びボタンが長押しされなかった場合、前述のように、運転制御装置は一連の処理を終了するため(
図2のステップS6のNO)、かご呼びが登録されず、乗りかごは走行を開始しない。
【0047】
ケース4では、端階手前ゾーンに停止階がないため、ブザーを鳴動させながら行先階まで乗りかごを走行させるために、保守技術者は、かご呼びボタンを長押しする。ケース4では、
図2のステップS2およびS3において、それぞれ、走行区間に端階手前ゾーン有り、および端階手前ゾーンに停止階なし、と判定されている。このため、乗りかごは、ブザーを鳴動させながら、端階手前ゾーンを通過して、行先階(
図3中の最下階)まで走行する。なお、かご呼びボタンが長押しされなかった場合、ケース3と同様に、かご呼びが登録されず、乗りかごは走行を開始しない。
【0048】
図3の動作例が示すように、本実施形態では、専用運転モードにおいて、端階ゾーンにおける行先階までの乗りかごの走行区間に、停止階を有する端階手前ゾーンが含まれる場合、乗りかごは、この停止階に一旦着床して停止する。これにより、端階ゾーンに対して、乗りかごの接近を報知することができる。その後、乗りかごは、ブザーを鳴動させながら、行先階まで走行する。これにより、端階ゾーンに対して、乗りかごの接近を確実に報知することができる。また、このような動作により、乗りかごに乗る保守技術者による作業の安全性がさらに向上する。
【0049】
また、
図3の動作例が示すように、本実施形態では、専用運転モードにおいて、端階ゾーンにおける行先階までの乗りかごの走行区間に、停止階を有する端階手前ゾーンが含まれない場合、並びに、端階手前ゾーンに位置する階床が不停止階のみである場合、乗りかごは、ブザーを鳴動させながら、行先階まで、途中停止することなく、走行する。これにより、端階ゾーンに対して、乗りかごの接近を確実に報知することができる。
【0050】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0051】
例えば、専用運転は、上述のような下端階(例えば、最下階)への走行に限らず、上端階(例えば、最上階)への走行でもよい。
【0052】
乗りかごの接近を報知する手段は、ブザーに限らず、発光装置でもよい。また、運転制御装置が備える通信装置によって、保守技術者が携帯する保守用端末装置へ乗りかごの接近を報知する信号を送信してもよい。
【0053】
また、エレベータは、巻上機と運転制御装置が設けられる機械室を備えるエレベータでもよいし、巻上機と運転制御装置が昇降路内に設けられる、いわゆる機械室レスエレベータでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 乗りかご、2 釣り合い錘、3 主ロープ、4 シーブ、5 転向プーリ、6 モータ、10 モータ駆動装置、20 運転制御装置、21 運転制御部、22 記憶装置、23 通常運転制御用プログラム、24 保守運転制御用プログラム、25 専用運転制御用プログラム、26 運転モード判定部、27 呼び受付部、28 停止階判定部、30 操作盤、40 かご上端末装置、50 テールコード