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特許7350175フローが最適化されたスリット及び一体化された応力除去機能を有するチューリップ型アーク接触子
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  • 特許-フローが最適化されたスリット及び一体化された応力除去機能を有するチューリップ型アーク接触子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】フローが最適化されたスリット及び一体化された応力除去機能を有するチューリップ型アーク接触子
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/38 20060101AFI20230915BHJP
   H01H 33/64 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H01H1/38
H01H33/64 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022529740
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020081518
(87)【国際公開番号】W WO2021099166
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】19210974.2
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルベル,ヤクプ
(72)【発明者】
【氏名】ズザーラント,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ドートル,マヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】フォス,ロベルト
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-243859(JP,A)
【文献】特開平10-012075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/38
H01H 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューリップ接触子であって、
第1の端(120)と第2の端(130)とを有する回転対称性の接触子本体(100)を備え、かつ、
前記接触子本体(100)は、前記接触子本体(100)内に配置されかつ前記接触子本体(100)の対称軸(140)に平行して延在する複数のスリット(110、210、220)を有し、
前記スリット(110、210、220)は、前記スリット(110、210、220)が圧縮された場合に、前記スリット(110、210、220)が略閉鎖し又は完全に閉鎖するように、前記スリット(110、210、220)の前記第1の端(120)と底(160)との間の長さl(150)を画定し、かつ、前記スリット(110、210、220)の前記長さl(150)は、前記接触子本体(100)の長さより短く、かつ、
前記スリット(110、210、220)は、前記スリット(110、210、220)の前記第1の端(120)において第1の幅(300)を、かつ前記スリット(110、210、220)の前記底(160)において第2の幅(310)を有し、前記第1の幅(300)は、前記第2の幅(310)より大きく、前記複数のスリット(110、210、220)のうちの1つ又はそれ以上の前記底(160)は、応力除去エレメント(400)内へ延び、前記応力除去エレメント(400)は、前記スリット(110、210、220)が閉鎖する場合に、前記接触子本体(100)の材料内の機械的応力を緩和するように構成され、かつ、前記応力除去エレメント(400)は、前記スリット(110、210)のフック形延設部(500)である、チューリップ接触子。
【請求項2】
前記スリット(110、210、220)は、前記スリット(110、210、220)の前記第1の端(120)から前記底(160)への方向で先細る、請求項1に記載のチューリップ接触子。
【請求項3】
前記スリット(110、210、220)は、前記第1の幅(300)と前記第2の幅(310)との間で湾曲的に先細る、請求項2に記載のチューリップ接触子。
【請求項4】
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びるV字形の形態(210)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる発散形状(220)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる凹形の形態(250)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる凸形の形態(240)を含み、又は、
前記スリットは、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる準直線形の形態(260)を含む、請求項1~3のいずれかに記載のチューリップ接触子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のチューリップ接触子を有する、中電圧又は高電圧用途用の電気スイッチングデバイス。
【請求項6】
前記電気スイッチングデバイスのエンクロージャ内部に誘電絶縁媒体、具体的には誘電絶縁ガス、が存在し、前記誘電絶縁媒体は、フルオロエーテル、又はフルオロアミン、又はフルオロケトン、又はこれらの混合物より成るグループから選択される有機フッ素化合物を含む、請求項5に記載の電気スイッチングデバイス。
【請求項7】
前記混合物は、背景ガスとの混合物を含む、請求項6に記載の電気スイッチングデバイス。
【請求項8】
チューリップ接触子を製造するための方法であって、
第1の端(120)と第2の端(130)とを有する回転対称性の接触子本体(100)を提供するステップと、
前記接触子本体(100)内へ複数のスリット(110、210、220)を挿入するステップとを含み、前記スリット(110、210、220)は、前記接触子本体(100)の対称軸(140)に平行して延び、
前記スリット(110、210、220)は、前記スリット(110、210、220)が圧縮された場合に、前記スリット(110、210、220)が略閉鎖し又は完全に閉鎖するように、前記スリット(110、210、220)の前記第1の端(120)と底(160)との間の長さl(150)を画定し、かつ、前記スリット(110、210、220)の前記長さl(150)は、前記接触子本体(100)の長さより短く、
前記スリット(110、210、220)は、前記スリット(110、210、220)の前記第1の端(120)において第1の幅(300)を、かつ前記スリット(110、210、220)の前記底(160)において第2の幅(310)を有し、前記第1の幅(300)は、前記第2の幅(310)より大きく、
前記複数のスリット(110、210、220)のうちの1つ又はそれ以上の前記底(160)がその内部へと延び、かつ前記スリット(110、210、220)が閉鎖する場合に、前記接触子本体(100)の材料内の機械的応力を緩和するように構成される応力除去エレメント(400)を挿入するステップであって、前記応力除去エレメント(400)は、前記スリット(110、210、220)のフック形延設部(500)である、ステップと、を含む方法。
【請求項9】
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びるV字形の形態(210)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる発散形状(220)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる凹形の形態(250)を含み、
前記スリット(110、210、220)は、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる凸形の形態(240)を含み、又は、
前記スリットは、前記チューリップ接触子の前記第1の端(120)から前記スリット(110、210、220)の前記底(160)まで延びる準直線形の形態(260)を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、電気スイッチングデバイスの分野、例えば、具体的には消弧能力を有する高電圧又は中電圧回路遮断器(HVCB、MVCB)用の負荷開閉器又は回路遮断器(CB)の分野、に関する。具体的には、本出願は、このような負荷開閉器及び回路遮断器に使用されるチューリップ型アーク接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
電気スイッチングデバイス、例えば、具体的には高電圧又は中電圧回路遮断器(HVCB、MVCB)用の負荷開閉器又は回路遮断器(CB)、は、負荷電流を切り換えるタスクに割り当てられるユニットの一体部分を構成し得、ここで、典型的な負荷電流は、二乗平均平方根の範囲が1kA~300kAである。負荷開閉器は、例えばプラグ接触子及びチューリップ型接触子である接触子の相対移動によって開放又は閉鎖される。電流遮断動作中に接触子が互いから離されると、「アーク接触子」と呼ばれることもある分離する接触子間に電弧が形成され得る。
【0003】
負荷開閉器又は回路遮断器(CB)では、概して、アーク接触子間のアークを消滅させるために、圧縮流体(例えば、ガス)が使用され得る。アーク接触子間の電流の流れを中断するために、アーク接触子間の媒体の導電率は、電流ゼロ(アーク消去)の後に電流が反対方向に流れることを停止できるほど十分に低減され得る。さらに、遮断器は、断続回路の総電圧を持続しなければならないことから(回復)、断続的な媒体は、絶縁破壊及び電弧の再点火を回避するに足る絶縁耐力を取り戻すように構成されてもよい。中断を確実に成功させるためには、アーク消去及び回復の両方が成功しなければならない。
【0004】
この圧縮流体/ガスは、幾つかの方法によって提供され得る。消弧能力を有する一部の負荷開閉器では、例えば、パッファ機構と呼ばれる機構が使用されてもよい。パッファ容積内では、例えばSF6のような消滅ガスが圧縮されて、アーク放電領域又はアーク消去領域へ放出される。
【0005】
開動作の間、ピストンは、変位ストロークを介して移動する。圧縮チャンバ内では、消滅ガスが圧縮され得、過圧が生じる場合がある。同時に、チューリップ接触子がプラグ接触子から引き離され、電弧が発生される。遮断中、アークは、接触子の周りのガス容積を加熱する。
【0006】
高温の絶縁ガスは、低温での同じ絶縁ガスより絶縁能力が低い。高温ガスは、アークが事前に首尾よく遮断されている場合でも(すなわち、先行する熱的遮断が成功している場合であっても)、誘電体リストライクの危険性を高める。したがって、十分な圧力の低温ガスがアーク放電領域へと方向づけられなければならない。
【0007】
アーク接触子間に発生されるアークは、絶縁材料の薄層を蒸発させ、これがアーク放電領域を包囲し得る。この蒸発プロセス、及び結果として生じるガス/蒸気は、アークを冷却し、アーク伝導率の低下を引き起こし、かつアーク消滅特性を向上させ得る。
【0008】
アークからの熱放射は、アーク放電領域を取り囲み得る、例えばノズルからのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)蒸気のアブレーションを引き起こし、これにより、高圧のアークゾーンから加熱容積への流れが生じ得る。これは、バックヒーティングとして知られ得る。大電流の場合、アークは、この時点で「アブレーション制御」されていると言われることがある。
【0009】
圧力は、加熱溶積内で増大し、かつ、電流ゼロ(CZ)に近づきアブレーションが低減されるにつれてアークゾーン内で減少し始める。加熱容積圧力がアークゾーン圧力流に等しくなった時点で、逆転が起こる。
【0010】
流れは、その後、加熱容積からアークゾーンへと方向づけられ得、アークは軸方向に吹き付けられ得る。アークは、CZにおいて消滅され得る。
【0011】
概して、チューリップ接触子は、典型的には電気的障害の発生時に短絡電流を遮断するために使用される中電圧及び/又は高電圧回路遮断器においてアーク接触子として使用される。チューリップ型接触子は、効果的には、少なくとも1kA~300kAの範囲で、短絡電流を伝達し、又は遮断し、又は形成するように構成される。
【0012】
典型的には、チューリップ接触子は、対応するプラグなどの相手側接触子との電気的接触を確立しかつ切断するための複数の接触子フィンガを備え得る。接触子フィンガ間の間隙は、「スリット」と考えられ得る。チューリップ接触子は、具体的にはアークの影響に対して耐熱性であり得る材料、例えばタングステン又はその合金、を備え得る。
【0013】
従来のチューリップ型アーク接触子は、プラグ接触子との機械的及び電気的接触に対応するためのスリットを有する。これらのスリットは、アークゾーンにおけるガス圧増成又はガス圧減少に寄与する。チューリップ接触子の接触子本体内のスリットは、相手側接触子(第2のアーク接触子;プラグ接触子)との電気的接触を確立しかつ切断するための複数の接触子フィンガを提供する。
【0014】
電気機械力に起因して、周知のチューリップ接触子のスリットは、部分的に閉鎖され、かつスリット間の間隙は、画定されていない。これは、遮断器の熱的遮断パフォーマンスにおける接触子フィンガの著しい散乱及びおそらくは非制御の動き(振動)、並びに望ましくない挙動に繋がる場合がある。
【0015】
高電力試験業務の間、接触子本体のチューリップスリットは、電磁圧力及び消滅ガス圧力に起因して圧搾される。これは、電流ピークで起こり得る。電流がその自然ゼロに近づくと(電流正弦波のゼロ交差)、これらの力は、より低くなる傾向がある。スリットは、材料の弾性(材料のばね力)に起因して再び開く。
【0016】
スリットの開閉、及び具体的にはスリットの不完全な閉鎖に起因する間隙は、アークゾーン内のガス圧に影響し、ひいては遮断器の遮断パフォーマンスに影響する。チューリップ内の流れエリア(スリットエリア)も、圧力増成に影響し得る。閉鎖されたスリットは、効果的には、圧力増成に寄与する。これは、試験によって証明されている。したがって、回路遮断器のより良好かつ安定的な遮断パフォーマンスのために、アークチューリップ接触子のスリットの開閉は、画定されて、変わらないことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本開示の目的は、圧力挙動を改善し得る、よって、より優れた消滅能力を有し得る、改善されたチューリップ接触子を提供することにある。さらに、チューリップ接触子の機械的安定性は、以下で説明する様々な対策によって向上され得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明は、独立請求項に記載の特徴によって規定される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載の特徴によって規定される。
【0019】
前述の、及び他の潜在的な課題に対処するために、本開示の実施形態は、下記を提案する。
【0020】
第1の態様では、電源スイッチ用のチューリップ接触子が開示される。本チューリップ接触子は、第1の端と第2の端とを有する回転対称性の接触子本体を備えてもよい。
【0021】
接触子本体は、複数のスリットを有してもよい。スリットは、回転対称性の接触子本体内に配置されてもよく、かつ、チューリップ接触子の対称性接触子本体の対称軸に略平行して延在してもよく、かつ、回転対称性の接触子本体内で「接触子フィンガ」を形成してもよい。
【0022】
さらに、これらのスリットは、スリットの第1の端とスリットの底との間の長さlを画定してもよい。スリットの長さlは、接触子本体の長さより短い。
【0023】
スリットは、スリットの第1の端において第1の幅を有し、かつスリットの底において第2の幅を有してもよく、第1の幅は、第2の幅より大きくてもよい。
【0024】
本開示の別の態様では、スイッチギヤ、例えば、中電圧又は高電圧用途用のガス絶縁スイッチギヤ、が開示される。このスイッチギヤは、開示される他の態様によるチューリップ接触子を備えている。
【0025】
具体的には、この目的は、
第1の端と第2の端とを有する回転対称性の接触子本体を備える、具体的には負荷遮断器のためのチューリップ接触子によって解決され、
接触子本体は、本体内に配置されかつ本体の対称軸に平行して延設される複数のスリットを有し、
スリットは、スリットの第1の端と底との間の長さlを画定し、スリットの長さlは、接触子本体の長さより短く、
スリットは、スリットの第1の端において第1の幅を有し、かつスリットの底において第2の幅を有し、第1の幅は、第2の幅より大きい。
【0026】
ある好ましい実装では、スリットが圧縮された場合、スリットは、略閉鎖しかつ/又は完全に閉鎖する。
【0027】
別の好ましい実装において、スリットは、スリットが圧縮された場合に、スリットが具体的にはスリットの全長lに沿って略閉鎖する、かつ/又は完全に閉鎖するように、V字形の形態を含む。
【0028】
さらに好ましい一実装において、複数のスリットのうちの1つ又はそれ以上の底は、応力除去エレメント内へ延び、応力除去エレメントは、スリットが閉鎖する場合に、本体の材料内の機械的応力を緩和するように構成される。
【0029】
別の好ましい実装において、応力除去エレメントは、穴の形態の開口である。
あるさらに好ましい実装において、応力除去エレメントは、スリットのフック形延設部である。
【0030】
ある好ましい実装において、スリットは、スリットの第1の端からスリットの底への方向で先細る。
【0031】
さらに好ましい一実装において、スリットは、第1の幅から第2の幅へと、少なくとも1つの不連続な段で狭くなる。
【0032】
ある好ましい実装において、スリットは、第1の幅と第2の幅との間で湾曲的に先細る。
【0033】
さらに好ましい一実装において、スリットは、段形状式に、少なくとも1つの段で狭くなる。
【0034】
ある好ましい実装において、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端からスリットの底まで延在するV字形の形態である。
【0035】
さらに好ましい一実装において、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端からスリットの底まで延在する発散形状である。
【0036】
別の好ましい実装において、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端からスリットの底まで延在する凹形の形態である。
【0037】
さらに好ましい一実装において、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端からスリットの底まで延在する凸形の形態である。
【0038】
別の好ましい実装において、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端からスリットの底まで延在する準直線形の形態である。
【0039】
前述の目的は、さらに、これまでに述べたようなチューリップ接触子を有する、中電圧又は高電圧用途用の電気スイッチングデバイスによって解決される。
【0040】
ある好ましい実装では、電気スイッチングデバイスのエンクロージャ内部に誘電絶縁媒体、具体的には誘電絶縁ガス、が存在し、誘電絶縁媒体は、フルオロエーテル、又はフルオロアミン、又はフルオロケトン、又はこれらの混合物より成るグループから選択される有機フッ素化合物を含む。
【0041】
別の好ましい実装において、混合物は、背景ガスとの混合物を含む。
前述の目的は、さらに、チューリップ接触子を製造するための方法によって解決され、本方法は、
第1の端と第2の端とを有する回転対称性の接触子本体を提供するステップと、
接触子本体内へ、複数のスリットを挿入するステップと、を含み、スリットは、本体の対称軸に平行して延設され、
スリットは、スリットの第1の端と底との間の長さlを画定し、スリットの長さlは、接触子本体の長さより短く、スリットは、スリットの第1の端において第1の幅を有し、かつスリットの底において第2の幅を有し、第1の幅は、第2の幅より大きい。
【0042】
ある好ましい実装では、スリットが圧縮された場合、スリットは、略閉鎖しかつ/又は完全に閉鎖する。
【0043】
別の好ましい実装において、スリットは、スリットが圧縮された場合に、スリットが具体的にはスリットの全長lに沿って略閉鎖する、かつ/又は完全に閉鎖するように、V字形の形態を含む。
【0044】
さらに好ましい一実装において、本方法は、複数のスリットのうちの1つ又はそれ以上の底がその内部へ延び、かつスリットが閉鎖する場合に、本体の材料内の機械的応力を緩和するように構成される応力除去エレメント、を挿入するステップを含む。
【0045】
またさらなる好ましい実装において、応力除去エレメントは、穴の形態の開口である。
別の好ましい実装において、応力除去エレメントは、スリットのフック形延設部である。
【0046】
本方法のさらなる実装及び利点は、これまでに述べたようなチューリップ接触子又はスイッチングデバイスから導出されることが可能である。
【0047】
本開示のさらなる詳細、態様及び実施形態は、特許請求の範囲、詳細な明細書本文及び添付の図面から明らかとなる。
【0048】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照して、本開示の実施形態を例示として提示し、かつそれらの利点を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】従来技術によるチューリップ接触子を示す。
図2】本出願の実施形態によるチューリップ接触子を示す。
図3】実施形態によるチューリップ接触子のスリットの形態を示す。
図4】応力除去エレメント付きのスリットを示す。
図5】本出願の実施形態による別のチューリップ接触子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明を実施するための形態
以下、例示的な実施形態を参照して、本開示の原理及び精神を説明する。これらの実施形態が全て、単に当業者が本開示をよりよく理解しかつさらには実施するために与えられるものであって、本開示の範囲を限定するためのものでないことは、理解されるべきである。例えば、ある実施形態の一部として例示又は記述される特徴は、さらに別の実施形態を産み出すために、別の実施形態と共に使用されてもよい。
【0051】
明確さの点から、本明細書では、実際の実装の全ての特徴が記載されるわけではない。当然ながら、このような実際の実施形態の開発においては、システム関連及び事業関連の制約の遵守などの、実装ごとに変わる開発者の特定の目標を達成するために、多くの実装固有の決定が下されるべきであることは、認識されるであろう。さらに、こうした開発努力は、複雑かつ時間を要するものでもあり得るが、それでもなお、本開示の利益を得る一般的な当業者が取り組む日常業務であることも認識されるであろう。
【0052】
次に、添付の図面を参照して、開示する主題について述べる。図面において、様々な構造、システム及びデバイスは、単に説明を目的とするものであり、よって、当業者に周知の詳細により説明を不明瞭にしないように、略示されている。それでもなお、添付の図面は、開示する主題の例示的な例を記述しかつ説明するために包含されている。本明細書で使用される語句及び言い回しは、関連当業者によるこれらの語句及び言い回しの理解と一致する意味を有するものとして理解されかつ解釈されるべきである。
【0053】
用語又は言い回しの特別な定義、すなわち、当業者が理解するところの通常及び通例の意味とは異なる定義が、本明細書における用語又は言い回しの一貫した使用によって含意される意図はない。ある用語又は言い回しが特別な意味、すなわち当業者により理解されるもの以外の意味、を有することが意図される限りにおいては、このような特別な定義が、本明細書において、当該用語又は言い回しの特別な定義を直接的かつ疑いの余地なく提供する定義様式で明示的に記載される。
【0054】
本出願の態様のうちの1つは、アーク放電ゾーン内のガス流を制御するために、接触子本体100内へ代替的かつ改良された形態のスリット110、210を導入することである。導入されるV字形のスリット、具体的には逆V字形状は、スリット110、210の全長に沿ってより良好な、具体的には完全な閉鎖を見込み得る。
【0055】
図1は、チューリップ接触子用の接触子本体100において一般的に使用されるスリット110の配置における、従来のスリット110の効果を示す。左図は、負荷が与えられていない場合に、先端120から底160までのスリットが長方形の形態を有することを示している。すなわち、接触子を介して存在する電流は、ゼロであり、よって電磁ピンチ力は、存在しない。接触子本体は、図から分かるように、消弧流体/ガスを含み得るように中空であってもよい。
【0056】
図1の右側は、「入り電流」及び「出電流」として示される矢印によって表された負荷下にある、チューリップ接触子の接触子本体100を示す。スリット110は、大電流により引き起こされる電磁力に起因して、チューリップの先端120で閉鎖され、その底160を基底とする細長い三角形を形成する。すなわち、スリット110は、スリットの底160に向かって開いたままである。ガス圧の増成は、ガスが、これらの部分的に開放されたスリット110を介して、具体的には底160に向かって広がる端部において接触子本体100を出ることから、困難となる。
【0057】
さらに、金属製接触子本体100の、具体的には底160のエリアにおける材料は、電流に起因する電磁的閉鎖力に対抗して作用する機械的曲げ力に曝される。これは、材料疲労の増大、及び接触子本体100からの接触子フィンガの折り取れに繋がり得、これにより、保全作業が増加することになり得る。
【0058】
したがって、本出願の第1の実施形態では、電源スイッチ用のチューリップ接触子100が開示される。本チューリップ接触子は、第1の端120と第2の端130とを有する回転対称性の接触子本体100を備えてもよい。チューリップ接触子本体100は、例えば、追加的にプラグ接触子を第2のアーク接触子として受け入れるように構成され得る導電性材料の中空本体である。チューリップ接触子100の中空本体は、アーク放電事象の間に消弧流体を受け入れかつ収容するように構成されてもよい。
【0059】
回転対称性の接触子本体100は、複数のスリット110、210、220を有してもよい。スリット110、210、220は、回転対称性の接触子本体100内に配置されてもよい。これらのスリットは、回転対称性の接触子本体100の対称軸140に対して略平行に延びてもよい。回転対称性の接触子本体内のスリット110、210、220は、使用される材料に起因して所定の弾性を有する「接触子フィンガ」を形成してもよい。
【0060】
スリット110、210、220は、回転対称性の接触子本体の第1の端120とスリット110、210、220の底160との間の長さl150を画定してもよい。スリット110、210、220の長さl150は、回転対称性の接触子本体100の長さより短くてもよい。これは、スリット110、210、220が、回転対称性の接触子本体が複数の単一部分に分離されないような長さを有し得ることを意味する。
【0061】
さらに、スリット110、210、220は、回転対称性の接触子本体100の第1の端120において第1の幅300を有し、かつスリット110、210、220の底160において第2の幅310を有してもよく、第1の幅300は、第2の幅310より大きい。
【0062】
図2は、改良されたスリット形状を有する、「負荷なし」状態における接触子本体100を示す(左図A)。新たに導入されたV字形のスリット210は、ここでは「開」状態にある。図の右側(右図B)において矢印「入り電流」、「出電流」で表される電流負荷の下では、接触子本体100を介する電流の流れに起因する電磁力がスリット210を閉鎖する。
【0063】
この時点で、接触子本体100は、図2の右側から分かるように、その軸140に沿って閉鎖された、少なくともほぼ閉鎖された、表面を有する。中空の接触子本体100内部の、例えば燃焼アークによるアブレーションプロセスによりノズル(不図示)から発生されるptfe蒸気である消滅ガスは、スリットを通って流れることができず、又は、少なくともその流れが大幅に減少する。(中空の)接触子本体100内の消滅ガスの圧力は、通常形状のスリット(図1参照)より高くまで増成する可能性がある。圧力が増大したより多量の消滅ガスは、アーク放電ゾーン(「出電流」方向に存在する)へと方向づけられることが可能である。
【0064】
アークに起因して、チューリップ接触子の周りには、かなりの圧力差が増成され得る。この時点で、チューリップのスロート部にはより低い圧力が、かつチューリップ本体100の周りにはより高い圧力が存在し得、これもまた、電磁力に加えて、スリットを閉鎖させる圧力を働かせる。この新しい形態のスリットは、従来のスリットと比較してスリット面積を40%超縮小し得、かつアークの消滅を効果的な方式で支援する。
【0065】
したがって、本開示の中心的考案は、スリットの全長に沿って略完全に閉鎖し得る、いわゆるV字形スリットを導入することにある。図4は、その効果を示す。電気機械力は、フィンガを互いに締め付け、これにより、スリットがその全長に沿って閉鎖する。従来のチューリップは、負荷下で、チューリップのスロート部方向へは閉鎖したままであって、端が開いているが、新規スリット(V字形)は、それらが完全に閉鎖したままであり得ることを確実にし得る。実際には、CZ(電流ゼロ)における圧力は、チューリップを介する流れ面積の変化に起因して略変わることはない。
【0066】
閉鎖された(又は、ほぼ閉鎖された)チューリップスリット110、210を介して流れる消滅ガスの存在は、大幅に低減され得る。チューリップ内の消滅ガスは、例えば、アーク放電ゾーンを取り囲むptfe材料(例えば、ptfe製のノズル)のアブレーション及び気化によって発生され得るptfe蒸気であってもよい。
【0067】
アブレーションプロセスによる、アーク放電ゾーンにおけるアークに起因する消滅ガス発生の物理的原理は、ここでは考慮されないものとする。また、発生されるガス(ptfe蒸気)の流れ効果の物理的背景についても、ここでは考慮されない。ptfe蒸気の言及は、ここでは、限定的なものとして考慮されない。アブレーションプロセスに適する、かつ消弧蒸気を発生することに適する他の材料も、可能である(例えば、POM)。
【0068】
本明細書において提示されるチューリップ接触子は、遮断器において、例えばCO2、SF6、他を含む全ての既知の消滅ガスと共に使用されることに適し、よって、アブレーションプロセスにより発生される消滅ガスに限定されないことは、留意される。
【0069】
チューリップスリットを介して消滅ガスの流れは発生せず、又は少なくとも大幅に減少するが、これは、例えばptfe蒸気の損失がないことを意味する。これにより、電流ゼロにおいて消弧しかつアークの新たな点火を防止するための吹込み圧力の大幅な増大がもたらされ得る。
【0070】
本出願の別の態様は、チューリップ接触子100の向上された機械的安定性を提供し得る。スリット110、210の端(底/基底)における接触子本体の材料内の応力を低減するためには、チューリップスリットの底160に開口の形態である応力除去エレメント400を設けること、又は、スリットをより長くすること、が役立ち得る。
【0071】
V字形のスリット110、210及び応力除去エレメント400という選択肢は、いずれも、チューリップのスロート部を介する消滅ガスの流れ面積を増加し、かつ接触子本体100の表面を覆う流れを減少させ得る。事例によっては、疲労破壊を回避するために、応力除去エレメント400の導入を余儀なくされる場合がある。
【0072】
したがって、1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子100のさらなる一実施形態によれば、複数のスリット110、210、220のうちの1つ又はそれ以上の底160は、応力除去エレメント400内へと延在し得ることが開示される。応力除去エレメント400は、スリット110、210、220が圧縮される場合に、接触子本体100の材料内の機械的応力を緩和するように構成されてもよい。スリット110、210の新規形状に加えて、これは、さらに増大されたスリット閉鎖能力をもたらし得る。
【0073】
チューリップの有限要素力学(FEM)解析は、材料内の応力を低減するための、接触子フィンガにおける応力除去エレメントの必要性を示している。機械的応力は、スリット110、210の底160に強く集中され得る。応力除去エレメントが導入された場合、最大応力は、大幅に低減され得、かつスリットの底160に、より長くは集中され得ない。底160における応力を低減することは、接触子本体100におけるスリット110、210の閉鎖特性を向上し得るだけではない。これは、また、接触子フィンガが機械的疲労に起因する破損を起こし得ないという理由で、負荷遮断器の保全をも改善し得る。したがって、提示しているソリューションは、経時的に保全費用を低減し得る。
【0074】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、応力除去エレメント400は、穴の形態の開口であってもよいことが開示される。図4は、その底160が穴400内へと連続的に延びる、V字形スリットを例示的に示す。
【0075】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、応力除去エレメント400は、穴ではなく、スリットのフック形延設部500であってもよいことが開示される。図5は、応力除去エレメントのこの実施形態を示す。フック形状の応力除去エレメントは、スリットの底160から直に続き、連続する経路を形成する。
【0076】
また、フック形の設計は、穴に比べると、基材を残すことにより、チューリップ内部のガス乱流をも低減し得る。この特徴は、V字形スリット、並びに本明細書に記載の他の実施形態における変形例と統合されることが可能である。
【0077】
穴の形態である応力除去エレメント400に比べると、フック形の応力除去エレメント500は、接触子本体内により多くの材料を残す。したがって、ガスが漏れ得る経路面積は、最小限に抑えられる。同時に、スリットが圧迫される際にスリットの底160付近の材料にかかる応力は、穴400の形態である応力除去エレメントが提供するものと同様に最小限に抑えられる。
【0078】
フック形応力除去エレメントの特徴の利点は、チューリップスリットの長さが、要求される、又は必要とされる最小長さに制限され得ることにある。これは、フック形応力除去エレメントが、スリット110、210を介する流れ面積をさらに最小化し得ることを意味する。
【0079】
スリットの底160は、理想的には、可能な限り狭いものであるべきである。極薄ツール、又は極薄カットを可能にするツールが使用され得、例えば、ワイヤ切断、微細切刃又は工業用レーザによって、接触子本体100内へ個々のスリットがカットされてもよい。
【0080】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリット110、210、220は、スリット110、210、220の第1の120端から底160への方向で先細になり得ることが開示される。言い換えれば、スリット110、210、220の幅は、チューリップ接触子の回転対称性の接触子本体先端120からスリット110、210、220の底160に向かって連続的に変化してもよい。
【0081】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリット110、210、220は、第1の幅300から第2の幅310へと、少なくとも1つの不連続な段320で狭くなってもよい。V字形スリットのこの変形例は、製造が容易であって、例えば、厚さが異なる2つののこ刃でスリットを切ることにより実現されることが可能である。1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子の実施形態によれば、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端120からスリットの底160まで延在するV字形の形態210であってもよい。図3における上側の図は、スリットの基本的考案、すなわちV字形の形態のスリットを示している。スリットは、第1の幅300からその底160まで連続的に先細る。V字形スリットは、スリットの底160においてその最小幅310を有する。
【0082】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリット110、210、220は、第1の幅120と第2の幅310との間で湾曲的に先細ってもよい。
【0083】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリット110、210、220は、段形状式に、少なくとも1つの段320で狭くなってもよい。言い換えれば、スリットは、例えばフライス盤を用いて、製造が容易である。
【0084】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端120からスリットの底160まで延在する発散形状220であってもよい。
【0085】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端120からスリットの底160まで延在する凹形の形態250であってもよい。
【0086】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端120からスリットの底(160)まで延在する凸形の形態240であってもよい。
【0087】
1つ又は複数の他の実施形態と組み合わされることが可能なチューリップ接触子のさらなる一実施形態によれば、スリットの形態は、チューリップ接触子の第1の端120からスリットの底160まで延在する準直線形の形態260である。
【0088】
スリットの異なる形態は全て、電流力によるスリットの完全な閉鎖に起因してチューリップ接触子本体におけるより良好な閉鎖を見込んでいる、という共通点を有し得る。これにより、圧力増成が増大され得、かつ熱的遮断パフォーマンスのばらつきを低減することができる。V字形スリットは、チューリップのアーク侵食能力をも拡張し得る。
【0089】
さらなる一実施形態によれば、他の実施形態によるチューリップ接触子を用いる中電圧又は高電圧用途用の電気スイッチングデバイスが開示される。
【0090】
中電圧又は高電圧用途用の電気スイッチングデバイスは、例えば、中電圧又は高電圧用途用のガス絶縁スイッチギヤであってもよい。
【0091】
さらなる一実施形態によれば、電気スイッチングデバイスのエンクロージャ内部に、誘電絶縁媒体、具体的には誘電絶縁ガス、が存在する。誘電絶縁媒体は、有機フッ素化合物を含んでもよい。有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、又はフルオロアミン、又はフルオロケトン、又はこれらの混合物より成るグループから選択されてもよい。
【0092】
封入式又は非封入式電気装置において使用される流体は、SFガスであっても、気体であれかつ/又は液体であれ他の任意の誘電絶縁媒体であってもよく、かつ具体的には、誘電絶縁ガスであっても、アーク消滅ガスであってもよい。このような誘電絶縁媒体は、例えば、有機フッ素化合物を含む媒体を包含することができ、このような有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン、フルオロオレフィン、フルオロニトリル、及びこれらの混合物及び/又は分解生成物より成るグループから選択される。本明細書において、「フルオロエーテル」、「オキシラン」、「フルオロアミン」、「フルオロケトン」、「フルオロオレフィン」及び「フルオロニトリル」という用語は、少なくとも部分的にフッ素化化合物を指す。
【0093】
具体的には、「フルオロエーテル」という用語は、フルオロポリエーテル(例えば、ガルデン)及びフルオロモノエーテルの双方、並びにヒドロフルオロエーテル及びペルフルオロエーテルの双方を包含し、「オキシラン」という用語は、ヒドロフルオロオキシラン及びペルフルオロオキシランの双方を包含し、「フルオロアミン」という用語は、ヒドロフルオロアミン及びペルフルオロアミンの双方を包含し、「フルオロケトン」という用語は、ヒドロフルオロケトン及びペルフルオロケトンの双方を包含し、「フルオロオレフィン」という用語は、ヒドロフルオロオレフィン及びペルフルオロオレフィンの双方を包含し、かつ「フルオロニトリル」という用語は、ヒドロフルオロニトリル及びペルフルオロニトリルの双方を包含する。これにより、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン及びフルオロニトリルは、完全にフッ素化される、すなわち全フッ素置換されることが好ましい可能性がある。
【0094】
実施形態において、誘電絶縁媒体、又はより具体的には誘電絶縁媒体又はガスに含まれる有機フッ素化合物は、フルオロエーテル、具体的には1つ又は複数のヒドロフルオロモノエーテル、フルオロケトン、具体的には1つ又は複数のペルフルオロケトン、フルオロオレフィン、具体的には1つ又は複数のヒドロフルオロオレフィン、フルオロニトリル、具体的には1つ又は複数のペルフルオロニトリル、及びこれらの混合物より成るグループから選択される。
【0095】
具体的には、本開示の文脈において使用される「フルオロケトン」という用語は、広義に解釈されてもよく、よって、フルオロモノケトン、及びフルオロジケトン又は一般にフルオロポリケトンの双方を包含してもよい。明示的には、分子の中に、側に炭素原子が存在する2つ以上のカルボニル基が存在し得る。また、この用語は、飽和化合物及び炭素原子間に二重及び/又は三重結合を含む不飽和化合物の双方をも包含し得る。フルオロケトンの少なくとも部分的にフッ素化されたアルキル鎖は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、かつ場合により、環を形成することができる。実施形態において、誘電絶縁媒体は、フルオロケトンである少なくとも1つの化合物を含んでもよく、これは、場合により、対応する数の炭素原子に取って代わる、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子のうちの少なくとも1つなどの、分子の炭素骨格に組み込まれるヘテロ原子も含んでもよい。効果的には、フルオロモノケトン、具体的にはペルフルオロケトンは、3~15個、又は4~12個の炭素原子、かつ特に5~9個の炭素原子を有することが可能である。最も効果的には、これは、正確に5個の炭素原子、及び/又は正確に6個の炭素原子、及び/又は正確に7個の炭素原子、及び/又は正確に8個の炭素原子を含んでもよい。
【0096】
実施形態において、誘電絶縁媒体は、少なくとも3個の炭素原子を含むヒドロフルオロモノエーテル、正確に3個又は正確に4個の炭素原子を含むヒドロフルオロモノエーテル、フッ素原子の数とフッ素原子及び水素原子の総数との比少なくとも5:8を有するヒドロフルオロモノエーテル、フッ素原子の数と炭素原子の数との比の範囲1.5:1~2:1を有するヒドロフルオロモノエーテル、ペンタフルオロ-エチル-メチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-トリフルオロメチルエーテル及びこれらの混合物より成るグループから選択される、ヒドロフルオロエーテルである少なくとも1つの化合物を含む。
【0097】
実施形態において、誘電絶縁媒体は、少なくとも3個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン(HFO)、正確に3個の炭素原子を含むヒドロフルオロオレフィン(HFO)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、トランス-1,2,3,3,3ペンタフルオロ-1-プロペン(HFO-1225ye(E-異性体))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン(HFO-1225ye(Z-異性体))及びこれらの混合物より成るグループから選択される、フルオロオレフィンである少なくとも1つの化合物を含む。
【0098】
実施形態において、有機フッ素化合物は、フルオロニトリル、具体的にはペルフルオロニトリル、である可能性もある。具体的には、有機フッ素化合物は、2個の炭素原子、及び/又は3個の炭素原子、及び/又は4個の炭素原子を含むフルオロニトリル、具体的にはペルフルオロニトリル、であることが可能である。
【0099】
より具体的には、フルオロニトリルは、ペルフルオロアルキルニトリル、具体的にはペルフルオロアセトニトリル、ペルフルオロプロピオニトリル(CCN)及び/又はペルフルオロブチロニトリル(CCN)、であることが可能である。最も具体的には、フルオロニトリルは、ペルフルオロイソブチロニトリル(化学式(CFCFCNによる)及び/又はペルフルオロ-2-メトキシプロパンニトリル(化学式CFCF(OCF)CNによる)であることが可能である。これらの中では、その低い毒性によってペルフルオロイソブチロニトリルが特に好ましい。
【0100】
他の実施形態と組み合わされ得るさらなる一実施形態によれば、別の実施形態によるガスの混合物は、背景ガスとの混合物を含んでもよい。
【0101】
背景ガス又はキャリアガスは、有機フッ素化合物(具体的には、フルオロエーテル、オキシラン、フルオロアミン、フルオロケトン、フルオロオレフィン及びフルオロニトリルとは異なる)とは異なっていてもよく、かつ実施形態において、空気、N、O、CO、希ガス、H、NO、NO、NO、フルオロカーボン、及び具体的には、CF、CFIなどのペルフルオロカーボン、SF及びこれらの混合物より成るグループから選択されることが可能である。
【0102】
さらなる一実施形態によれば、1つ又は複数の他の実施形態によるチューリップ接触子を有する自己ブラスト又はパッファ回路遮断器が開示される。
【0103】
要約すると、本出願は、遮断器アッセンブリのための新規かつ改良されたチューリップ接触子、具体的にはアークチューリップ接触子、を開示する。チューリップ接触子は、効果的には、回転対称性の本体を有する。チューリップアーク接触子の本体は、中空であって、中空容積を形成する。アーク消滅プロセスをサポートするために、チューリップ接触子の中空容積内の消滅ガスのガス圧力を可能な限り長期に渡って高レベルに維持することを見込んだ新規形態のスリットが導入される。
図1
図2
図3
図4
図5