(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ハーフブリッジパワーコンバータ、並びにハーフブリッジパワーコンバータ及びパワースイッチのスイッチング方法
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20230915BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20230915BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230915BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2022569690
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021005132
(87)【国際公開番号】W WO2021225018
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-07-14
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】ル・レスル、ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】モラン、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】モロヴ、ステファン
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-158407(JP,A)
【文献】特開2014-011817(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフブリッジパワーコンバータのスイッチング方法であって、前記ハーフブリッジパワーコンバータは、前記ハーフブリッジパワーコンバータの脚部に上部分岐パワースイッチ及び下部分岐パワースイッチを有する少なくとも一対のパワースイッチと、前記上部分岐パワースイッチ用の第1のゲート制御回路と、前記下部分岐パワースイッチ用の第2のゲート制御回路とを備え、前記スイッチング方法は、
前記一対のパワースイッチのスイッチング中に上部分岐における電流微分値と下部分岐における電流微分値とを検知して、前記上部分岐パワースイッチにおける電流の電流微分値に比例する第1の信号と、前記下部分岐パワースイッチにおける電流の電流微分値に比例する第2の信号とを提供することと、
前記第1の信号及び前記第2の信号を合算して、合算電流微分信号を提供することと、
前記合算電流微分信号を、前記第1のゲート制御回路のパワースイッチ指令信号と前記第2のゲート制御回路のパワースイッチ指令信号とに加算し、前記合算電流微分信号に、前記第1のゲート制御回路及び前記第2のゲート制御回路のゲート切換信号を変調させて、切換のデッドタイムを短縮するとともに前記一対のパワースイッチのそれぞれにおける電流オーバーシュートを制御することを考慮して、前記一対のパワースイッチのうちの低速の方のパワースイッチの切換を加速させながら、前記一対のパワースイッチのうちの高速の方のパワースイッチの切換を減速させることにより、両方のパワースイッチにおける電流変動が等化されるようにすることと、
を含むことを特徴とする、スイッチング方法。
【請求項2】
前記パワースイッチ指令信号に前記合算電流微分信号を加算する前に、前記合算電流微分信号を増幅することを含む、請求項1に記載のスイッチング方法。
【請求項3】
前記上部分岐において電流微分値を検知することは、別個の第1の上部センサ及び第2の上部センサによって行われ、前記下部分岐において電流微分値を検知することは、別個の第1の下部センサ及び第2の下部センサによって行われて、前記第1のゲート制御回路の前記パワースイッチ指令信号に加算すべき第1の合算電流微分信号と、前記第2のゲート制御回路の前記パワースイッチ指令信号に加算すべき第2の合算電流微分信号とが提供される、請求項1又は2に記載のハーフブリッジパワーコンバータの少なくとも一対のパワースイッチのスイッチング方法。
【請求項4】
前記第1の合算電流微分信号は、前記上部分岐パワースイッチの下端部の電圧を基準とし、前記第2の合算電流微分信号は、前記下部分岐パワースイッチの下端部の電圧を基準とするようにすることを含む、請求項3に記載のスイッチング方法。
【請求項5】
ハーフブリッジパワーコンバータであって、第1のゲート制御ドライバによって駆動される、前記ハーフブリッジパワーコンバータの上部分岐の上部パワースイッチと、第2のゲート制御ドライバによって駆動される、前記ハーフブリッジパワーコンバータの下部分岐の下部パワースイッチとを備え、前記第1のゲート制御ドライバ及び前記第2のゲート制御ドライバは、それぞれ、請求項1~4のいずれか一項に記載のスイッチング方法を実装する電子回路を備え、
前記電子回路は、前記上部パワースイッチ及び前記下部パワースイッチのそれぞれに対して、第1の電流微分信号を提供する、前記上部分岐の少なくとも第1の電流微分センサと、第2の電流微分信号を提供する、前記下部分岐の少なくとも第2の電流微分センサと、前記第1の電流微分信号及び前記第2の電流微分信号を加算及び増幅して、増幅され合算された微分信号を提供する変調及び調整回路と、前記増幅され合算された微分信号を前記第1のゲート制御ドライバ及び前記第2のゲート制御ドライバの指令信号に加算する加算器とを備える、ハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項6】
前記変調及び調整回路は、それらが作用する前記パワースイッチの下端部電圧を基準とする中間点を有する電源を通して電力が供給される、請求項5に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項7】
前記変調及び調整回路のそれぞれは、前記上部パワースイッチおよび前記下部パワースイッチのそれぞれの前記第1のゲート制御ドライバおよび前記第2のゲート制御ドライバのゲートバッファの前に且つプリドライバ回路部分の後に位置している、請求項5又は6に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項8】
前記第1の電流微分センサおよび前記第2の電流微分センサはロゴスキーコイルから作製されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項9】
前記ロゴスキーコイルは、前記パワースイッチのパワー導体の周囲に位置する環状のロゴスキーコイルである、請求項8に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項10】
前記ロゴスキーコイルは、それぞれ、多層PCBの複数の層にラインで通され、前記多層PCBは、前記多層PCBに垂直な方向にパワー導体を受ける中央アパーチャを有する、請求項9に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項11】
前記上部分岐パワースイッチのパワー導体の上に及び/又は前記下部分岐パワースイッチのパワー導体の上に、2つのロゴスキーコイルがインターリーブされている、請求項9又は10に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項12】
前記第1の電流微分センサおよび前記第2の電流微分センサは、多層PCBの複数の層のそれぞれに配線された直線状のロゴスキーコイルであり、平面コイルは、前記平面コイルに垂直な方向において前記多層PCBの上面から下面まで通されたパワー導体トラックによって包囲されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項13】
前記上部分岐パワースイッチのパワー導体及び/又は前記下部分岐パワースイッチのパワー導体の上に、2つの直線状のロゴスキーコイルがインターリーブされている、請求項12に記載のハーフブリッジパワーコンバータ。
【請求項14】
請求項5~13のいずれか一項に記載のハーフブリッジパワーコンバータを2つ以上備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮断から導通へ、及び導通から遮断へ相補的に駆動される2つのスイッチを備える少なくとも1つのハーフブリッジから構成された電力変換装置に関し、2つのスイッチの切換の間のデッドタイムをなくす改良された制御プロセス及びシステムを提案する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置において、スイッチの切換の間には、両方のスイッチがオフになるデッドタイムが設定される。こうしたデッドタイムがある主な理由は、伝播遅延、ターンオンとターンオフとの間の不整合、閾値電圧の温度ドリフト等を含む複数の要因に起因して制御電圧がオーバーラップし、デバイスを損傷する可能性があるシュートスルー電流をもたらすというリスクを回避することにある。これらを回避するとともに、デッドタイム中の電流連続性を保証するために、フリーホイーリングダイオード、MOSFETの場合はボディダイオード等のスイッチ素子の固有の逆方向能力、又は横型窒化ガリウム(GaN)デバイスの第3象限導通能力のいずれかが使用される。
【0003】
これらは必要なことではあるが、デッドタイム中の逆導通位相は、変換装置の動作におけるデメリットの原因となっている。部品数及び関連するコストを削減するために、一部のパワーモジュールでは、逆並列ダイオードが搭載されておらず、スイッチの逆方向能力に頼る。しかしながら、この真性ダイオードのスイッチング性能又は導通性能は、外付けダイオード、特にショットキーバリアダイオードの性能よりも劣る場合が多い。したがって、デッドタイム動作時間は、変換装置の損失に著しい影響を与える。更なる問題は、常にダイオードが導通しないようなデッドタイムを調整することができないということである。
【0004】
加えて、デッドタイムに関連する非直線性に起因して、制御ループに幾分かの歪みも引き起こされる。そこで、ルックアップテーブルを使用することにより、動作点に従ってデッドタイムを短縮するスマート制御方法を実施することができる。それにより、逆導通時間は可能な限り制限される。しかしながら、高速計算能力が必要となり、それは通常より高価である。しかも、デッドタイム時間が最適化されても、デッドタイムは依然として存在する。
【0005】
電力変換装置では、2つのスイッチの高速且つ精密な制御が必要である。炭化ケイ素(SiC)又はGaN等のワイドバンドギャップデバイス(WBG)の高速スイッチング能力に起因して、スイッチング周波数の上昇により、制御に対する制約が増大する。
【0006】
一般的に実装されているハーフブリッジ構成では、相互誘導及びシュートスルー電流を回避するデッドタイムが必要であり、それらは、適切に制御されない場合、著しい追加の損失又は更には半導体の破壊をもたらす可能性がある。
【0007】
デッドタイム/フリーホイーリング遷移中、半導体デバイスの1つは、逆導通モードで電流を搬送することができる。しかしながら、主に、ボディダイオードの不十分な特性、例えば、高い順方向電圧、逆回復電荷に起因して、逆導通モード中に高い損失が発生する可能性がある。
【0008】
損失問題を軽減するために、より優れた性能(より低い電圧降下及びゼロの回復電荷)を有する逆並列ダイオード(例えば、SiCショットキーバリアダイオード)を、デッドタイム中に動作するように追加することができる。しかしながら、これはコストのかかる解決法であり、一般に、システムが大型化し(1部品ではなく2部品)、相補的な配線に起因して浮遊インダクタンスが追加され、逆回復問題が緩和されたとしても、容量性電荷による追加の損失が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の本発明は、デッドタイムの持続時間を短縮し、追加の高速且つ高価なダイオードを使用しないようにすることを目的とし、シュートスルー電流の出現を費用効率の高い方法で妨げる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の目的は、調整された制御信号により、パワー半導体のデッドタイム及び逆導通の時間を、ハーフブリッジ切換セルの2つのスイッチがともに負荷の電流を導通している期間に置き換えることである。これを達成するために、遷移中のシュートスルー電流は、2つのスイッチデバイスのゲート電圧を並行して変調することによって制御される。この制御は、センサがこうしたデバイスにおける電流微分値を検知することに基づく。これらのセンサの出力の組合せが増幅されて、いかなるデバイスの逆導通もなしに、平滑な切換を可能にするゲート電圧が制御される。
【0011】
より正確には、本開示は、ハーフブリッジパワーコンバータのスイッチング方法であって、ハーフブリッジパワーコンバータは、コンバータの脚部に、上部分岐パワースイッチ及び下部分岐パワースイッチを提供する少なくとも一対のパワースイッチを備え、上部分岐パワースイッチ用の第1のゲート制御回路と下部分岐パワースイッチ用の第2のゲート制御回路とを備え、スイッチング方法は、
一対のパワースイッチのスイッチング中に上部分岐における電流微分値と下部分岐における電流微分値とを検知して、上部パワースイッチにおける電流の電流微分値に比例する第1の信号(dIu(t)/dt)と、下部パワースイッチにおける電流の電流微分値に比例する第2の信号(dIl(t)/dt)とを提供することと、
第1の信号及び第2の信号を合算して、合算電流微分信号(dI(t)/dt)を提供することと、
合算電流微分信号を、第1のゲート制御回路のパワースイッチ指令信号と第2のゲート制御回路のパワースイッチ指令信号とに加算し、合算微分信号に、第1のゲート制御回路及び第2のゲート制御回路のゲート切換信号を変調させて、一対のパワースイッチのうちの低速の方のスイッチの切換を加速させながら、一対のパワースイッチのうちの高速の方のパワースイッチの切換を減速させることにより、両方のパワースイッチにおける電流変動が等化されるようにすることと、
を含むことを特徴とする、スイッチング方法を提案する。
【0012】
この方法により、切換デッドタイムの短縮が可能になるとともに、こうした切換における電流オーバーシュートの制御が可能になる。
【0013】
実現形態において、
方法は、パワースイッチ指令信号に合算電流微分信号を加算する前に、合算電流微分信号を増幅することを含むことができる。
【0014】
上部分岐において電流微分値を検知することは、別個の第1の上部センサ及び第2の上部センサによって行うことができ、下部分岐において電流微分値を検知することは、別個の第1の下部センサ及び第2の下部センサによって行うことができ、第1のゲート制御回路のスイッチ指令信号に加算すべき第1の合算電流微分信号と、第2のゲート制御回路のスイッチ指令信号に加算すべき第2の合算電流微分信号とを提供する。
【0015】
これにより、分岐の指令回路のセンサを互いに隔離することができる。
【0016】
方法は、第1の合算電流微分信号は、上部分岐パワースイッチの下端部の電圧を基準とし、第2の合算電流微分信号は、下部分岐パワースイッチの下端部の電圧を基準とするようにすることを含むことができる。上部分岐のMOSFETスイッチのソース又はバイポーラスイッチのエミッタが、スイッチング状態に依存する可変電圧であるため、フローティング電源を有する上部分岐指令回路が必要である。
【0017】
本発明はまた、ハーフブリッジパワーコンバータであって、第1のゲート制御ドライバによって駆動される、コンバータの上部分岐の上部パワースイッチと、第2のゲート制御ドライバによって駆動される、コンバータの下部分岐の下部パワースイッチとを備え、第1のゲート制御ドライバ及び第2のゲート制御ドライバは、それぞれ、本開示のスイッチング方法を実装する電子回路を備え、電子回路は、上部スイッチ及び下部スイッチのそれぞれに対して、第1の電流微分信号を提供する、上部分岐の少なくとも第1の電流微分センサと、第2の電流微分信号を提供する、下部分岐の少なくとも第2の電流微分センサと、第1の電流微分信号及び第2の電流微分信号を加算及び増幅して、増幅され合算された微分信号を提供する変調及び調整回路と、微分信号を第1のゲート制御ドライバ及び第2のゲート制御ドライバの指令信号に加算する加算器とを備える、ハーフブリッジパワーコンバータに関する。
【0018】
こうした構成は、切換中にスイッチの閉ループ制御を提供し、この閉ループ制御は、切換外ではスイッチのオン又はオフ状態に影響を与えない。
【0019】
変調及び調整回路には、それらが作用するパワースイッチの下端部電圧を基準とする中間点を有する電源を通して電力を供給することができる。
【0020】
これにより、各回路に独立した電源が提供される。
【0021】
変調及び調整回路のそれぞれは、パワースイッチのそれぞれのゲート制御ドライバのゲートバッファの前に且つプリドライバ回路部分の後に位置している。
【0022】
電流微分センサはロゴスキーコイルから作製することができる。
【0023】
ロゴスキーコイルは、分岐導体から隔離され、検知された電流微分値の適切な信号を提供する。
【0024】
ロゴスキーコイルは、パワースイッチのパワー導体の周囲に位置する環状のロゴスキーコイルとしてもよい。
【0025】
ロゴスキーコイルは、それぞれ、多層PCBの複数の層にラインで通され、多層PCBは、PCBに垂直な方向にパワー導体を受ける中央アパーチャを有する。
【0026】
特定の実施の形態において、上部分岐パワースイッチのパワー導体の上に及び/又は下部分岐パワースイッチのパワー導体の上に、2つのロゴスキーコイルをインターリーブすることができる。
【0027】
これにより、上部分岐パワースイッチのパワー導体と下部分岐パワースイッチのパワー導体とに配置された2つのセンサの精度が向上する。
【0028】
特定の実施の形態において、前記電流微分センサは直線状のロゴスキーコイルとしてもよく、各ロゴスキーコイルは、多層PCBの複数の層に通されるとともに、平面コイルの周囲に、コイルに垂直な方向においてPCBの上側から下側まで通されたパワー導体トラックによって包囲される。
【0029】
こうした実施の形態は、配線を減らし、より小型の回路部を提供するのに有用である。
【0030】
上部分岐パワースイッチのパワー導体及び/又は下部分岐パワースイッチのパワー導体の上に、2つの直線状のロゴスキーコイルをインターリーブすることができる。
【0031】
本発明は、開示するようないくつかのハーフブリッジコンバータを有する変換装置にも適用される。
【0032】
本発明の例示的な実施形態の詳細な説明を、添付図面を参照して下記に論述する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本開示が適用するコンバータの概略図である。
【
図2】本開示のシステムを用いるゲート制御の概略図である。
【
図4】本開示の加算器及び増幅器回路の一例の図である。
【
図5A】適用可能なロゴスキーコイルの概略図である。
【
図5B】本開示のロゴスキーコイルの第1の実施形態の図である。
【
図6A】本開示のロゴスキーコイルの別の実施形態の概略図である。
【
図6B】
図6Aの二重直線状ロゴスキーコイルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明は、MOSFETを使用した場合に基づくが、電極の名称を変更するだけで任意のユニポーラ(JFET、IGFET、HEMT)又はバイポーラトランジスタ(BJT又はIGBT)に拡張することができる。
【0035】
図1は、コンデンサ3とともにDC電圧源2を有するハーフブリッジコンバータの脚部に2つのパワースイッチ10、11を備えたDC/DCコンバータ1の概略図である。そこでは、DC電源2のDC電圧の高電位V
DCラインと脚部全体の中間点との間の脚部の上部分岐4において、上部パワースイッチ10と並列に、誘電負荷20が接続されており、下部パワースイッチ11は、脚部全体の中間点とDC電源の低電位との間で脚部の下部分岐5に位置している。
【0036】
上部パワースイッチ10は、第1のゲート制御回路12によって駆動され、下部パワースイッチ11は、第2のゲート制御回路13によって駆動される。
【0037】
本開示によれば、上部分岐導体上に、同じ方向に向けられた2つの電流微分センサ141、142が配置され、下部分岐5導体上に、同じ方向に向けられた2つの電流微分センサ151、152が配置されている。
【0038】
本開示の原理は、以下に基づく。
切換中、上部分岐パワースイッチ及び下部分岐パワースイッチを流れる電流微分値dIu(t)/dt及びdIl(t)/dtを検知し、
上部分岐電流微分値と下部分岐電流微分値とを加算し、得られる脚部微分電流dI/dtを増幅し、
dI/dtセンサ信号に従ってパワーデバイスのゲート電圧を変調し、
切換を完了する。
【0039】
必要な場合は、電流微分センサからの信号のフィルタリングも行うことができる。
【0040】
このプロセスは、切換におけるゼロのデッドタイムを保証し、
スイッチングセルの各デバイスを流れる電流微分値を検知する手段、
センサからの電流微分信号を調整する手段、
これらの電流微分信号の和を用いてパワーデバイスのゲート電圧を変調する手段、
を使用する。
【0041】
図2は、本開示のゲート制御回路12、13を表す。上部分岐及び下部分岐のそれぞれは、それ自体のゲート制御回路を有する。これらのゲート制御回路のそれぞれには、上部分岐の1つの電流微分センサ141、142と、下部分岐の1つの電流微分センサ151、152とが接続されている。各ゲート制御回路は、上流電源V
DD1、V
EE1によって電力が供給されるコントローラ入力モジュールと、下流電源V
DD2x、V
EE2xによって電力が供給される出力モジュールとの間に絶縁バリアを備えるプリドライバ16を備える。下流電源は、電流微分センサ出力を受け取るシュートスルー回路STCとも称される変調及び調整回路18と、ゲート制御回路とにも電力を供給する。
【0042】
変調及び調整回路18は、上部分岐電流微分センサ及び下部分岐電流微分センサによって検知される電流微分を受け取り、出力信号18aを、ミキサー19においてプリドライバ16の出力信号16aと混合して、ゲート制御回路が接続されている分岐のパワースイッチのゲートに接続されたゲートバッファ17を通してバッファリングされた指令信号17aを提供する。
【0043】
異なる信号の性質に従って、スイッチングセルを定義する上部パワースイッチ及び下部パワースイッチに対して、調整及び変調機能は同一である。しかしながら、スイッチに指令するために必要な電位が異なるため(例えば、
図1において、上部MOSFETスイッチソースは、下部MOSFETスイッチソースよりも高い電位にある)、それぞれがその上部センサ141、142及び下部センサ151、152、プリドライバ16、変調及び調整回路18並びにゲートバッファ17を有する、2つのゲート制御回路12、13が必要となる。電流微分センサも同一であり、2つのパワーデバイスに対して同じ電流微分測定を確保するために、回路の同じ場所にセンサを挿入することができるように、設計に対して特別な注意が必要である。
【0044】
本発明の詳細な動作は、スイッチングセルにおいてMOSFETデバイス10、11が考慮され、符号は固有のボディダイオード及び出力コンデンサCOSSを含む、
図1に関して、以下の想定及び初期状態に従って行われる。
【0045】
負荷20は、スイッチングセルの中間点とDC電圧源2の高電位との間に接続され、負荷電流は正とみなされ、それは、電流が正のDCバスからスイッチングセルの中間ノードまで流れることを意味し、負荷電流は、遷移時間スケール中は一定とみなされ、上部スイッチQ1 10は「オン」とみなされ、それは、上部スイッチQ1 10が負荷電流を導通していることを意味し、下部スイッチQ2 11は「オフ」とみなされ、それは、下部スイッチQ2 11がDC電圧を遮断しており、そこに電流が流れていないことを意味する。
【0046】
以下の説明では、Q1導通/Q2遮断からQ1遮断/Q2導通への遷移を中心に述べるが、逆の遷移にも適用される。
【0047】
図1及びキルヒホッフの電流法則によれば、異なる電流の間の関係は(1)のようになる。
I
Q1+I
Load-I
Q2=0 (1)
【0048】
図3に従って、デッドタイムのない動作の詳細な説明を行う。0≦t<αTでは、上部スイッチQ1はオンであり、下部スイッチQ2はオフである。ゲート電圧は、それぞれ、ハイ(正)状態がV
GS1、ロー(負)状態がV
GS2である。負荷電流I
Loadは、Q1を通ってソース(S)からドレイン(D)まで流れており、これは、I
Q1=-I
Loadを意味する。t=αTでは、コントローラからの相補的な制御信号Sig
1及びSig
2が、いかなるデッドタイムもほとんどなく並列にQ1及びQ2に送られ、これにより、部品の公差の限界内で両方のスイッチを略同時に制御することが可能になる。2つのスイッチのゲート-ソース間電圧V
GS1、V
GS2は、伝播時間に起因するわずかな遅延で動きを開始する。スイッチを流れる電流は、相互誘導が開始するため、正の電流微分値で増大する。
図2に提示するように配置されたdI(t)/dtセンサは、負のカップリングで反応し、したがって、センサ出力電圧V
Sensor=V
Bx=V
Tx(V
Tx及びV
Bxは、それぞれ上部センサ及び下部センサの電圧である)は負である。上部センサ及び下部センサの出力電圧は、従来のプリドライバ16の並列に配置された変調及び増幅回路18(シュートスルー回路STC)によって合算され、増幅される。したがって、ゲートバッファ17の入力における信号は、
図2のプリドライバ出力16aとSTC出力18aとの組合せである。通常、相互誘導中に存在し、スイッチングセルの破壊をもたらす可能性がある、いかなるサージ電流も回避するために、2つのゲート-ソース間電圧は、電流微分値に従って独立して変調される。スイッチ電流I
Q1及びI
Q2は、定常状態に達する前は発振している。発振は、電流微分センサ及びSTC回路によっても管理される。実際には、発振は、提案する本発明によって低減する。これは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のゲート-エミッタ間電圧V
GEに準用される。
【0049】
t=αT+t1では、Q2の電流IQ2は負荷電流に略等しく、Q1の電流IQ1はゼロに略等しいため、切換は完了しているとみなすことができる。幾分かの発振が残っていても、電流微分値は、STC回路を完全にアクティベートするほど大きくはない。2つの電流が一定になるとすぐに、STC回路は、次の遷移命令までそれ以上動作しない。
【0050】
以下のステップは、ゼロデッドタイム制御システムの動作の要約である。
コントローラからゲート制御回路に、いかなるデッドタイムもなしに相補的な命令が送信され、
Q1が完全にオフではない間、Q2が導通を開始し、
上部デバイス及び下部デバイスに流れる電流が上昇し始め、
電流微分センサが、脚部電流の電流微分値を検知し、
各パワーデバイスに関連する2つの電流微分センサの出力電圧が合算され、
必要な場合は、コイルの出力電圧にフィルタリング段を適用することができ、
コイルからのdI(t)/dt信号の和が増幅され、
dI(t)/dtに従って各デバイスのゲート電圧が変調されて、Q1ターンオフを加速させQ2ターンオンを減速させるように遷移電流が制御される。
【0051】
切換が完了すると、Q1は「オフ」であり、Q2は「オン」であり、
この操作手順は、Q2がオフになりQ1がオンになる場合も同じである。
【0052】
図2に戻ると、ゲート制御12、13の回路は以下の通りである。
【0053】
プリドライバ16は、制御信号をコントローラからゲートノードに転送し、通常のコンバータと同様にコントローラ部分から「パワー回路」を隔離する。ドライバアーキテクチャによれば、プリドライバの電流能力に特に制約はない。プリドライバの機能は、本技術分野の任意の標準的な部品によって実現することができる。
【0054】
電流微分センサ141、142、151、152は、パワースイッチのドレイン-ソース電流の時間変化率に比例する信号を発生させる。パワーデバイスを流れる電流I
DSが最大値から最小値になっているとき、対応するセンサの出力信号は正である。逆に、パワーデバイスの電流I
DSが最小値から最大値になっているとき、こうしたセンサの出力信号は負である。この機能は、後述する
図5Aに提示するように、主導体を包囲する巻線コイルであるロゴスキーコイルを使用することによって行うことができる。
【0055】
図4に、
図2の変調及び増幅回路(STC回路)をより詳細に提示する。この回路は、2つの制御されたパワースイッチに対して複製され、微分センサTB
X及びTT
X(xは、スイッチQ1 10及びQ2 11に対してそれぞれ1又は2である(例えば、センサ141及び151、又はセンサ142及び152))からの信号を増幅する。好ましい実施態様では、STCは、2つのトランジスタ101及び102から構成され、各トランジスタのそれぞれのエミッタは、R-C回路(R3 103-C2 105及びR4 104-C3 106)を通して中間点に接続されている。R3 103及びR4 104は、トランジスタの熱ドリフトの場合に負帰還として使用される。C2 105及びC3 106により、増幅されたAC信号に対する非常に低いインピーダンス経路が保証される。ツェナーダイオード(DZ1)107、コンデンサC6 108並びに抵抗器R9 109及びR10 110は、R9及びR10に対する値が比較的高いように選択されているため、デカップリングされた電圧源として作用している。
【0056】
抵抗器R5 111、R8 112、R6 113及びR7 114から構成される抵抗ネットワークは、2つのトランジスタ101、102を分極させるように実装されており、これは、ベース-エミッタ間電圧(VBE)が0.6Vに近いことを意味する。この分極により、2つのトランジスタは、遮断状態と線形部分との限界にある。2つのトランジスタと受動部品とから構成されるこのアセンブリの全ては、AB級増幅器として作用し、ACカップリングコンデンサC4 115及びC5 116を通して接続された電流微分センサからの信号を増幅する。増幅器の出力とゲートバッファとの間に接続されたC1 117及びR2 118によって形成された最後のR-Cの組合せは、所望の利得を得るように調整することができる。
【0057】
ゲート制御回路及び増幅器回路の電源は、それらが作用するパワースイッチの下端電圧、すなわちMOSFETの場合はソース電圧を基準とする。ここで、これは、上部スイッチの場合は脚部の中間点、下部スイッチの場合は脚部の下部点に対応する。そして、各回路に、それ自体のVDD及びVEE、すなわち、xが上部スイッチ又は下部スイッチの基準に対応するVDD2x及びVEE2xが提供される。
【0058】
2つの分岐4、5と2つのスイッチとを含む1つの脚部を有するコンバータに対して開示した原理は、スイッチングセルのスイッチの総数が対である限り、制限のない数のスイッチに拡張することができる。
【0059】
電流微分センサに関して、あり得る実施態様は、
図5Aに概略的に示すようなロゴスキーコイル30である。こうしたコイルは、トロイダル巻線31と、巻線の内側の戻り導体32とを有する。コイルは、検知すべき導体40に垂直な平面に位置し、2つの出力端子A、Bを有する。
【0060】
同じ導体を包囲する2つの電流微分センサが同じ磁場Hを検知していることを保証するために、設計プロセス中に特別な注意が必須である。選択された解決法は、2つの巻線をインターリーブすることであり、これは、
図5Bに提示するように、多層PCBで作製されたインターリーブロゴスキーコイルとしてセンサを設計することにより、行うのが容易である。この構成は、外部センサとして使用することができる。
【0061】
PCBが4つの層を有するこうした実施態様では、第1のコイルのトロイダル巻線は、上方のレベルからビア37、38を通って下方のレベルライン39に進むライン33と、中間レベルを通る上記コイルの戻りライン35とを通して行ってもよく、上記第1のコイルは、入力/出力端子33a、35aを有する。第2のコイルは、入力/出力端子34a、36aと、第1のレベル及び第4のレベルにおいて第1のコイルの巻線とインターリーブされたトロイダル巻線34、39と、第2の中間レベルにおける戻りライン36とを有していてもよい。こうした設計は、製造が容易であり、小型であり、2つのインターリーブコイルの良好な整合を提供する。
【0062】
本コンバータとは異なる用途に使用してもよい具体的な実施形態において、
図6Aに提示するような逆方向又は直線状のロゴスキーコイルセンサが提供され、そこでは、コイルは、検知すべき導体の分岐の間にある。こうしたコイルは、多層PCBの内層に組み込むこともできる。コイルの巻回は、第1の層のトラック51、ビア53、54、並びに第2の層のトラック52で行われる。第1の層及び第2の層並びにビアは、PCBの内部トラック及びビアであり、逆方向のロゴスキーコイルは、コイルを包囲するとともに41cを通して接続された表面パワートラック41a、41bを流れる電流微分値を検知している。
【0063】
図6Bでは、二重コイルが設計され、入出力端子60a、60bと第2のトラック61、62とを有する第2のコイル6が、第1のコイルのトラックとインターリーブされ、第1のコイルのビアと平行なビア63、64を通して接続されている。これにより、コンバータPCB又は他の任意のデバイスPCBに直接組み込むことができるとともに、ケーブルの配線及び端子のはんだ付けが不要である、小型設計が可能になる。
【0064】
上述したように、コンバータは、各脚部にセンサがあり、各ゲート制御回路に加算及び増幅回路がある、3つの脚部を備えたインバータータイプであってもよいし、脚部ごとに複数の並列スイッチを有し、こうした並列スイッチに対するゲート制御回路に本発明の検知及び電流変調回路が備えられているコンバータであってもよいため、本発明は開示した実施形態に限定されない。