(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】部品搬送通路構造
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20230919BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B65G47/14 K
B23K11/14 315
(21)【出願番号】P 2018094117
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-79346(JP,A)
【文献】特開2014-233777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00-47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のフランジと軸部が一体化された軸状部品を、空気噴射によって搬送するものであり、
部品供給源から伸びている合成樹脂製の供給ホースに、フランジが通過する第1フランジ通過部と、軸部が通過する第1軸通過部が形成され、
供給ホースに接合されているとともに軸状部品を供給ロッドなどの目的箇所へ供給する金属製の導入管に、第1フランジ通過部に連通している導入管側の第2フランジ通過部と、第1軸通過部に連通している導入管側の第2軸通過部が形成され、
第2軸通過部は、第2フランジ通過部を導入管外に連通する態様で形成され、
軸部の長手方向で見た第2軸通過部の長さが、軸部の長さよりも短いことによって、軸部が第2軸通過部から突き出ており、
上記の第2軸通過部から突き出た軸部を導入管に取り付けた
断面コ字型
または断面円弧型のカバー部材で包囲して、第2フランジ通過部、第2軸通過部、カバー部材
内の各空間部で形成された通路空間が閉断面構造とされ
、カバー部材が断面コ字型または断面円弧型とされていることによって、前記通路空間の断面積が、供給ホースの第1フランジ通過部と第1軸通過部で形成される軸状部品の通路の断面積よりも大きくなるように構成したことを特徴とする部品搬送通路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フランジと軸部を有するプロジェクションボルトのような軸状部品を、空気噴射によって搬送する部品搬送通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平2-56305号公報に記載されている通路構造は、フランジ付き軸状部品を首吊り状態で搬送するもので、通路部材には、フランジが通過するフランジ通過部と、このフランジ通過部を外部に連通させた状態で形成された軸通過部が形成されている。そして、この通路部材は、軸状部品の供給箇所である供給ロッド先端部の近傍に開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通路部材内に搬送空気を噴射して軸状部品を搬送するものにおいては、供給ロッド先端部に向って開口する通路部材のフランジ通過部が、軸通過部を経て外部に連通しているので、搬送空気が軸通過部から漏出して軸状部品に対する空気搬送力が確保できない、という問題がある。また、供給ロッドに向かう通路部材は通常、金属製とされているので、通路部材を所要の形状に湾曲したり捩ったりすることが困難になる、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、目的箇所に向って開口する金属製通路部材の加工成型を行いやすくするとともに、搬送空気圧力を軸状部品に対して、確実に作用させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
円形のフランジと軸部が一体化された軸状部品を、空気噴射によって搬送するものであり、
部品供給源から伸びている合成樹脂製の供給ホースに、フランジが通過する第1フランジ通過部と、軸部が通過する第1軸通過部が形成され、
供給ホースに接合されているとともに軸状部品を供給ロッドなどの目的箇所へ供給する金属製の導入管に、第1フランジ通過部に連通している導入管側の第2フランジ通過部と、第1軸通過部に連通している導入管側の第2軸通過部が形成され、
第2軸通過部は、第2フランジ通過部を導入管外に連通する態様で形成され、
軸部の長手方向で見た第2軸通過部の長さが、軸部の長さよりも短いことによって、軸部が第2軸通過部から突き出ており、
上記の第2軸通過部から突き出た軸部を導入管に取り付けた断面コ字型または断面円弧型のカバー部材で包囲して、第2フランジ通過部、第2軸通過部、カバー部材内の各空間部で形成された通路空間が閉断面構造とされ、カバー部材が断面コ字型または断面円弧型とされていることによって、前記通路空間の断面積が、供給ホースの第1フランジ通過部と第1軸通
過部で形成される軸状部品の通路の断面積よりも大きくなるように構成したことを特徴とする部品搬送通路構造
である。
以 上
【発明の効果】
【0007】
金属製の導入管は、合成樹脂製とされた供給ホースに接合されているとともに、軸状部品を供給ロッドなどの目的箇所へ供給する。そして、供給ホース側の第1フランジ通過部に、導入管側の第2フランジ通過部が連通しており、また、供給ホース側の第1軸通過部に、導入管側の第2軸通過部が連通している。したがって、供給ホース内を移動してきた軸状部品は、連続性をもって滑らかに導入管へ移送され、軸状部品の円滑な移送が供給ホースから導入管にわたって確実になされ、良好な移送がえられる。
【0008】
導入管は、第2フランジ通過部と第2軸通過部からなる簡単な断面形状であるから、軸状部品供給の目的箇所に対する湾曲形状や捻り形状の加工成型が行いやすくなり、製作面において有利である。
【0009】
カバー部材を導入管に取り付けることにより、搬送空気が第2軸通過部から外部へ発散するのを防止し、導入管の部位における部品通路が閉断面構造となっている。第2軸通過部は、第2フランジ通過部を導入管外に連通する態様で形成されているので、第2フランジ通過部に入った搬送空気は第2軸通過部から漏出するが、カバー部材の取り付けによる閉断面構造により、部品通路外への搬送空気の漏出・発散が防止できる。このため、搬送空気の圧力を軸状部品のフランジや軸部に作用させることができ、軸状部品を確実に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】供給通路部材と可動電極の干渉状態を示す側面図である。
【
図3】供給通路部材と可動電極の干渉を避けた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の部品搬送通路構造を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0012】
【0013】
本実施例は、本願発明にかかる部品搬送通路構造が、軸状部品の供給装置に適用された場合である。
【0014】
最初に、軸状部品について説明する。
【0015】
軸状部品としては、六角形の頭部を有する一般的なボルトとか、円形のフランジを有するプロジェクションボルトなど、種々なものがある。ここでは後者のプロジェクションボルトを供給の対象としている。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
【0016】
各図、とくに
図1(C)および(F)に見やすく示すように、軸状部品1はプロジェクションボルトであり、円形のフランジ2の中心部に、雄ねじが形成された軸部3が一体的に設けられている。軸部3とは反対側のフランジ面が平坦な円形の表面4であり、裏面には、3個の溶着用突起5が120度間隔で設けられている。
【0017】
ボルト1は、磁性材料である鉄で作られている。フランジ2の外周部は、符号12で示されており、図示の場合は全周にわたって丸みのある形状になっている。プロジェクションボルト1の各部寸法は、フランジ2の直径と厚さがそれぞれ12mmと2.5mm、軸部の長さと直径がそれぞれ13mmと5mmである。なお、ボルトにも符号1が付されている。
【0018】
つぎに、軸状部品の供給装置全体を説明する。
【0019】
ここでの装置は、ボルト供給装置であり、符号100で示されている。図示の場合は、固定電極8の上に鋼板部品9が載置されたもので、鋼板部品9の下孔10と固定電極8の受入孔11に軸部3が挿入される。また、図示していないが、相手方部品に形成された開口に軸部3が挿入される場合もある。したがって、上記下孔10、受入孔11および相手方部品の開口などが、挿入孔となる。この挿入孔には、下孔10、受入孔11および相手方部品の開口などを総称して符号6が付されている。そして、挿入孔6は、鉛直方向に配置してあり、その軸線は挿入軸線O1-O1として記載してある。
【0020】
なお、固定電極8と同軸状態で対をなす進退式の可動電極7については、後述の干渉問題の箇所に記載する。
【0021】
斜め下方に向かって進退する供給ロッド13は、断面円形の外筒14内に収容され、外筒14は装置100の機枠のような静止部材15に固定してある。外筒14に結合したエアシリンダ16の進退出力で、供給ロッド13が進退する。この進退方向は、供給ロッド13が斜め下方へ進出し、復帰するような方向とされている。したがって、供給ロッド13の中心軸線が進退軸線O2-O2として記載してある。そして、この進退軸線O2-O2は、鉛直方向の挿入軸線O1-O1に対して傾斜した状態で交差している。この交差角度は、一定角度であり、供給ロッド13を回しても変化することはない。
【0022】
供給ロッド13の断面形状は、円形でも良いが、ここでは
図1(E)に示すように、左右に平坦面31、32が形成された小判型である。供給ロッド13が外筒14内で回らないようにするために、外筒14の内側に溶接した規制片33、34が平坦面31、32に密着している。
【0023】
ボルト1は、供給ロッド13の先端部に保持された状態で挿入孔6の近傍まで移送される。供給ロッド13にボルト1を保持する機構は、後述する。
【0024】
つぎに、ボルトの搬送構造を説明する。
【0025】
部品供給源としては、種々なものが採用できるが、ここではパーツフィーダ18である。パーツフィーダ18に貯留されているボルト1を、所定の姿勢で供給ロッド13の先端部近傍まで搬送する「部品搬送通路構造」が採用されている。円形のボウル19に送出振動を付与して、加速構造部20に送出し、ここで噴射管21から高速噴射空気がボルト1に吹き付けられて搬送される。加速構造部20には、ウレタン樹脂などで作られた合成樹脂製の供給ホース22が接続されている。
図1(D)に示すように、供給ホース22には、フランジ2が通過する第1フランジ通過部23と第1軸通過部24によって形成された断面T字型の通路空間、すなわち部品通路が形成されている。断面T字型の通過空間に吹き込まれた搬送空気は、通過空間が閉断面構造なので、外部へ漏出することはない。
【0026】
供給ホース22の長さは、3~4mに及ぶもので、湾曲や捩り形状とされている。外筒14に、ステンレス鋼製の導入管25が結合片26を介して溶接してあり、湾曲部27が形成されている。導入管25に形成した第2フランジ通過部28は、前記第1フランジ通過部23に連通している。軸部3が通過する第2軸通過部29は、外部に連通する開放溝のようになっていて、前記第1軸通過部24に連通している。このように導入管25は、第2フランジ通過部28の下側に、軸部3が通過する空隙、すなわち第2軸通過部29が設けられた形状である。この導入管25がボルト1の供給通路部材である。なお、上記結合片26に換えて、導入管25の先端部分を、直接外筒14の端部に溶接してもよい。
【0027】
この供給通路部材にも、符号25が付してある。ボルト1は、供給通路部材25の湾曲部27を通過すると、進退軸線O2-O2に対してほぼ直交する方向から供給ロッド13の進出空間30へ送り出される。
【0028】
四角い枠形状とされた
接手部材34Aが導入管25の端部に溶接され、供給ホース22の端部を
接手部材34Aに圧入すると、供給ホース22側の第1フランジ通過部23が導入管25側の第2フランジ通過部28に連通し、また、供給ホース側22の第1軸通過部24が導入管25側の第2軸通過部29に連通している。湾曲部27が設けてあるので、
図1(A)に示すように、外筒14と導入管25によって、U字型またはV字型が形成されている。
【0029】
ボルト1は、強力な空気噴射により高速で搬送されてくる。このような高速であると、供給ロッド13の先端部に保持することが困難になったり、供給ロッド13の先端部を損傷したりすることがある。このような問題を解消するために、ボルト1を一旦停止させる停止手段が採用されている。停止手段としては、磁石で吸引して停止させるもの、ストッパ部材を突き出して停止させるもの、など種々なものが採用できる。ここでは、後者のストッパ部材の方式である。
【0030】
導入管25の上面にエアシリンダ35が固定され、そのピストンロッド36が第2フランジ通過部28に突き出たり、後退したりする。突き出ているときに、高速でボルト1が搬送されてくると、ピストンロッド36で受け止められて、一旦停止となる。
【0031】
一旦停止となったボルト1は、噴射管21からの搬送空気で移送されるのであるが、ここでは軸部3が通過する第2軸通過部29から搬送空気が外部へ発散するので、フランジ2や軸部3に対する空気圧がえられないこととなる。そこで、カバー部材37を導入管25に取り付けて、導入管25の部位における部品通路を閉断面構造とし、搬送空気が部品通路外へ第2軸通過部29から発散しないようにしてある。導入管25の部位における部品通路が閉断面構造とされているとは、軸部3が第2軸通過部29から突き出ているので、この突き出た空間部分をカバー部材37で包囲しており、第2フランジ通過部28、第2軸通過部29、カバー部材37内の空間部で形成された通路空間が閉断面構造とされている、という意味である。そして、カバー部材37は導入管25と一体化された状態で接手部材34Aに隙間のない状態で差し込んであり、こうすることにより、供給ホース22の部品通路と金属製部位に形成された部品通路が連通して、部品搬送通路構造が形成される。
【0032】
カバー部材37の形状は、
図1(C)に示すように、断面コ字型であり、導入管25の湾曲部27に合致できる湾曲形状とされている。カバー部材37を導入管25に一体化する構造としては種々なものが採用できるが、ここでは、カバー部材37に溶接した板状の固定片38を、導入管25の側面に密着させ、固定ボルト17で固定片38を導入管25に結合してある。これ以外のカバー構造としては、断面円弧型のカバー部材を取り付けることも可能である。また、固定片38や固定ボルト17を介した結合構造に換えて、導入管25とカバー部材37を包囲する締め付けバンドを用いてもよい。カバー部材37は、導入管25の湾曲形状などに合致できるように、導入管25とは別に加工成型がなされ、導入管25に組み付けられている。
【0033】
このようなカバー部材37の取り付けによって、搬送空気が導入管25の部位における部品通路から外部へ発散することが防止され、搬送空気はフランジ2の外周部12や軸部3に当たるので、ピストンロッド36が後退すると、ボルト1は程良い速度で供給ロッド13へ供給される。
【0034】
つぎに、供給ロッドの先端部にボルトを保持する構造を説明する。
【0035】
供給ロッド13の先端部にフランジ2の受入凹部39が形成してある。
図2(B)は、受入凹部39を下から見上げた状態を示す図である。受入凹部39には、フランジ2の表面4が密着する保持面40と、フランジ2の外周部12に合致する円弧部41と、フランジ2が通過する入口通過部42が設けられているとともに、フランジ2の進入方向で見た
受入凹部39の深さ寸法L1が、フランジ2の直径寸法とほぼ同じか、またはそれ以上に設定されている。第2フランジ通過部28を通過してきたフランジ2は、入口通過部42を通って滑り込むようにして受入凹部39に進入し、フランジ2が円弧部41に合致したところで停止する。ほぼ部品軸線O3-O3方向で見た受入凹部39の深さ寸法Hは、フランジ2の厚さよりもわずかに大きく設定してある。
【0036】
図2は、進退軸線O2-O2を中心にして供給ロッド13が回動していない状態を示す。この状態では、フランジ2の進入方向線である部品進入線O4-O4は、受入凹部39の中心部を貫通しており、これにともなってボルト1が円弧軌跡を描きながら挿入孔6に差し込まれるときの中心点A1は、部品進入線O4-O4上に位置している。円弧部41は、部品進入線O4-O4の両側に90度ずつ伸びている。
【0037】
フランジ2の表面4を、保持面40に密着させるとともに、供給ロッド13が所定位置まで進出したときに保持面40に対する密着力を消滅させる構造が、吸引手段44として採用されている。吸引手段44は、空気吸引式や電磁石式など、種々なものが採用できるが、ここでは永久磁石式である、永久磁石にも符号44が記載してある。
【0038】
供給ロッド13は中空軸であり、その中に摺動自在な状態でインナ軸45が挿入してある。インナ軸45の先端部近傍に窪みを設けてそこに永久磁石44が埋め込んである。永久磁石44を保護するために、インナ軸45の端部にカバー板46が溶接などで固定してあり、このカバー板46の表面が前述の保持面40とされている。
【0039】
図1(A)や(F)は、インナ軸45が最も前進した位置に停止している状態であり、このときに受入凹部39がフランジ2の進入を待機している状態であり、フランジ2が第2フランジ通過部28から入口通過部42をへて受入凹部39内に進入し、円弧部41に合致して停止する。この停止した状態では、永久磁石44の吸引力でフランジ2の表面4は、保持面40に密着している。エアシリンダ16の動作で供給ロッド13が挿入孔6の近傍まで進出すると、永久磁石44の吸引力が消滅させられて、軸部3の下端部が円弧軌跡を描きながら、挿入孔6に入り込んでゆく。なお、フランジ2が受入凹部39内に進入するときの吸引補助として、永久磁石43が設置してある。これは、外筒14の端部に溶接した容器に収容され、進入しつつあるフランジ2を強く吸引して、円弧部41に確実に到達させるようになっている。
【0040】
供給ロッド13の先端部にボルト1の導入と保持をするために、上述の受入凹部39が形成されているが、このよう受入凹部39に換えて、供給ロッド13の先端に単なる平面を設け、ここに進入してきたフランジ2を受け止めるストッパ部材を形成することもできる。
【0041】
つぎに、磁石の進退構造について説明する。
【0042】
吸引手段の吸引力制御とは、ボルト1を供給ロッド先端部に保持しているか、または、この保持を解除するかの制御を意味している。したがって、前述のように空気吸引式や電磁石式などが採用できる。ここでの永久磁石方式は、永久磁石44をボルト1に最接近させて吸引するか、あるいは離隔させて吸引力を実質的に消滅させる、機械的な方式である。
【0043】
永久磁石44をフランジ2から離隔して、ボルト1に対する吸引力を実質的に消滅させる。そのための構造としては、永久磁石44に細い棒材を結合し、棒材を進退させて永久磁石44をフランジ2から遠ざけたり、インナ軸45の端部にエアシリンダを結合して、インナ軸45を進退させたりするものなどが採用できる。ここでは、後者のインナ軸進退型が採用されている。
【0044】
前述のように、供給ロッド13は、中空管状の中空軸13A内にインナ軸45が進退可能な状態で挿入してあり、インナ軸45に嵌合した規制ピン47が中空軸13Aに開けた長孔48を経て外筒14内に突き出ている。インナ軸45の上端部と中空軸13Aの内端面の間に圧縮コイルスプリング49が介装され、その張力はインナ軸45を押し出す方向に作用し、この張力でよって規制ピン47が長孔48の下端に当たっている。この状態で、インナ軸45が最先位置におかれ、前述の受入凹部39が形成されて、フランジ2の受入れが可能になっている。
【0045】
外筒14の外側面に、駆動手段であるエアシリンダ50が固定され、そのピストンロッド51に係合片52が結合してあり、外筒14に開けた長孔53を貫通して外筒14の内部に突出している。この係合片52と規制ピン47は、供給ロッド13が所定長さのストローク移動をしたら、規制ピン47が係合片52に対面できるように、両者の相対位置が設定されている。
【0046】
つぎに、ボルト軸部の保持について説明する。
【0047】
フランジ2が第2フランジ通過部28内を移動しながらボルト1が受入凹部39へ滑り込んで来るときに、ボルト1の保持安定性を確保して供給ロッド13の先端部にボルト1を確実に保持する必要がある。ボルト1は、噴射空気で移送されたり、永久磁石43で吸引されたりして、滑らかに受入凹部39内に進入し、フランジ2の外周部12が円弧部41に合致して停止する。このときには、慣性力で軸部3の下端部が
図1(A)において、時計方向に揺動する恐れがある。受入凹部39へのボルト1の進入速度が速すぎる場合には、ボルト1が受入凹部39から転落する、という問題がある。
【0048】
このような問題を解消するために、進退動作式の保持部材55が配置してある。保持部材55は、ほぼ直方体の細長い部材で形成され、軸部3が進入する保持溝56が形成されている。保持部材55は、例えば、ステンレス鋼で作られている。保持溝56は、第2軸通過部29に連通するように、導入管25側に開口しており、その反対側に軸部3を受け止める受け面57が形成されている。受け面57は、軸部3がぴったりと合致する断面円弧型とするのが望ましい。また、保持溝56の幅寸法は、軸部3の直径寸法よりもわずかに大きく設定してある。保持部材55は、供給ロッド13の進出空間30に配置されている。保持部材55が進出空間30に存在しているときには、保持部材55はボルト1を受け入れる機能を果たし、このときには供給ロッド13は進出できない。
【0049】
供給ロッド13が進出するときに、保持部材55を待避させる必要があるので、
図1(B)に示すように、保持部材55を2点鎖線図示の位置まで移動する。これは、導入管25または静止部材15に固定した進退駆動手段58によって動作する。ここでは進退駆動手段としてエアシリンダが採用され、そのピストンロッド59が保持部材55に結合してある。
図1(B)は、同図(A)の(B)方向から見た平面図である。
【0050】
保持部材55の停止位置は、保持部材55が供給ロッド13の進出空間30に停止している待機位置と、保持部材55の退避によって供給ロッド13の進出空間30が確保される退避位置の2位置とされている。すなわち、
図1(A)における実線図示の待機位置と、2点鎖線図示の退避位置である。
【0051】
ボルト1が搬送されてきて、フランジ2が受入凹部39の円弧部41で受け止められると、それとほぼ同時に保持溝56に進入した軸部3が受け面57で受け止められる。したがって、ボルト1に上述のような慣性的異常変位が発生することなく、確実に供給ロッド1の先端部に保持される。その後、エアシリンダ58の動作で保持部材55が2点鎖線図示の位置まで待避し、供給ロッド13が進出できるようになる。
【0052】
つぎに、供給ロッドや外筒の回動について説明する。
【0053】
図2は、ボルト供給装置100を真横から見た側面図であり、この状態では導入管25やカバー部材37などが可動電極7に干渉して、装置として成り立たない。そこで、外筒14を進退軸線O2-O2を中心にして回動して、上記干渉を回避している。そのために、静止部材15に、回転方向の位置調整が可能な状態で真っ直ぐな外筒14が取り付けられている。外筒14の回転方向の位置調整構造としては、V型ブロックで外筒14を挟み付けたり、弾性的に変位できる締め付け部材を用いたりすることができる。ここでは、後者の締め付け部材の形式である。
【0054】
静止部材15にステンレス鋼製の締め付け部材60が固定されている。この締め付け部材60に外筒14が貫通する締め付け孔61が形成してあり、締め付け孔61は割り溝62を経て外部に連通している。割り溝62の隙間を狭くするように作用する締め付けボルト63が、締め付け部材60にねじ込んである。
【0055】
締め付けボルト63を緩めて外筒14を回して位置調整をおこない、その後、締め付けボルト63を締め付けると、外筒14は強固に締め付け孔61内で締め付けられて、回転位置の調整が完了する。このような位置調整によって、
図2の干渉状態が回避されて、
図3に示す非干渉状態が成立する。
【0056】
つぎに、受入凹部の深さ寸法について説明する。
【0057】
外筒14が回されると、受入凹部39も一緒に回される。導入管25、カバー部材37などが、可動電極7のような近隣の部材に干渉するのを回避するために、外筒14を回して導入管25、カバー部材37なども一緒に回動させる。この回動角度θが30度である場合には、
図3(B)に示すように、ボルト1の円弧軌跡の中心点A1は、部品進入線O4-O4から30度変位した箇所に存在している。最下点である中心点A1の両側には円弧形状部が十分に存在しているので、すなわち部品進入線O4-O4方向で見た受入凹部39の深さ寸法L1が十分に長く設定してあるので、中心点A1を基点にした正確な円弧軌跡をボルト1に描かせて、ボルト1を挿入孔6に差し込むことができる。
【0058】
回動角度θを
図3(C)に示すように、例えば60度にして導入管25、カバー部材37などを大幅にずらす場合であって、しかも受入凹部39の深さ寸法が短い寸法L2である場合には、中心点A1の両側に形成される円弧形状部は、一方は十分な角度範囲となるが、他方の角度範囲は少なくなる。このため、中心点A1を最下点としたボルト1の円弧軌跡が正確に描かれない場合が発生する。つまり、中心点A1の片側のフランジ外周部12は、十分な角度範囲の円弧部41に合致しているが、中心点A1の他側のフランジ外周部12は、わずかな角度範囲の円弧部41にだけ合致した状態になる。したがって、フランジ2がわずかな角度範囲の円弧部41における保持性が不安定になって、軸部3の先端部が描く円弧軌跡に振れ変位が発生し、挿入孔6に滑らかに入らないことが生じる。
【0059】
このような異常現象は、受入凹部39の深さ寸法L2が過小であることに起因するので、フランジ2の進入方向(部品進入線O4-O4方向)で見た受入凹部39の深さ寸法L1が、フランジ2の直径寸法とほぼ同じか、または、それ以上に設定することが必要となる。このように設定することにより、回動角度θが大きくなっても安定した円弧軌跡を描いてボルト挿入がなされる。
【0060】
供給ロッド13の回動に際しては、進退軸線O2-O2とボルト1の部品軸線O3-O3に角度が付与されている場合には、供給ロッド回動に伴うボルト先端部のわずかな円弧変位が発生するが、これは挿入孔6の内径がやや大きく設定されているので、この円弧変位は吸収される。このような吸収余裕寸法がない場合には、進退軸線O2-O2の位置を微調整して、ボルト先端部と挿入孔6の相対位置を微調整する。なお、一般には、供給ロッド13の進退軸線O2-O2とボルト1の部品軸線O3-O3の交差角は、極めてすくなく、ほぼ直線に近い交差関係なので、上述の微調整を行う事例は少ない。
【0061】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、上記各種の永久磁石を電磁石に置き換えることも可能である。
【0062】
前記パーツフィーダはボウルを振動させる形式のものであるが、これを回転板に磁石で部品を吸着して送出管から送り出す形式のものを採用してもよい。上述のパーツフィーダ18は、ボウル19を振動させる形式であるが、これに換えて、起立した回転式円板に磁石を組み付け、この円板の回転によって吸着された部品を送出通路に導く形式のものとすることができる。
【0063】
各エアシリンダへの空気給排管の図示は、省略してある。
【0064】
上述の供給ロッドの進退動作や空気噴射などの動作は、一般的に採用されている制御手法で容易に行うことが可能である。制御装置またはシーケンス回路からの信号で動作する空気切換弁や、エアシリンダの所定位置で信号を発して前記制御装置に送信するセンサー等を組み合わせることによって、所定の動作を確保することができる。
【0065】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0066】
金属製の導入管25は、合成樹脂製とされた供給ホース22に接合されているとともに、ボルト1を供給ロッド13などの目的箇所へ供給する。そして、供給ホース22側の第1フランジ通過部23に、導入管25側の第2フランジ通過部28が連通しており、また、供給ホース22側の第1軸通過部24に、導入管25側の第2軸通過部29が連通している。したがって、供給ホース22内を移動してきたボルト1は、連続性をもって滑らかに導入管25へ移送され、ボルト1の円滑な移送が供給ホース22から導入管25にわたって確実になされ、良好な移送がえられる。
【0067】
導入管25は、第2フランジ通過部28と第2軸通過部29からなる簡単な断面形状であるから、ボルト供給の目的箇所に対する湾曲形状や捻り形状の加工成型が行いやすくなり、製作面において有利である。
【0068】
カバー部材37を導入管25に取り付けることにより、搬送空気が第2軸通過部29から外部へ発散するのを防止し、導入管25の部位における部品通路が閉断面構造となっている。第2軸通過部29は、第2フランジ通過部28を導入管25外に連通する態様で形成されているので、第2フランジ通過部28に入った搬送空気は第2軸通過部29から漏出するが、カバー部材37の取り付けによる閉断面構造により、搬送空気の漏出・発散が防止できる。このため、搬送空気の圧力をボルト1のフランジ2や軸部3に作用させることができ、ボルト1を確実に移送することができる。
【0069】
導入管25とカバー部材37を、別々に加工成型をしてから両者を一体化させるものであるから、導入管25とカバー部材37に求められる形状が簡単に加工成型でき、製作面において有利である。導入管25とカバー部材37を予め一体化してから、湾曲や捻りなどの加工成型をすることは、著しく困難であり、この点における問題が解消される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
上述のように、本発明の部品搬送通路構造によれば、目的箇所に向って開口する金属製通路部材の加工成型を行いやすくするとともに、搬送空気圧力を軸状部品に対して確実に作用させ、軸状部品の安定した搬送が実現する。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 プロジェクションボルト、軸状部品
2 フランジ
3 軸部
4 表面
6 挿入孔
7 可動電極
8 固定電極
10 下孔
11 受入孔
12 外周部
13 供給ロッド
13A 中空軸
14 外筒
22 供給ホース
23 第1フランジ通過部
24 第1軸通過部
25 導入管
28 第2フランジ通過部
29 第2軸通過部
30 進出空間
37 カバー部材
39 受入凹部
40 保持面
41 円弧部
42 入口通過部
44 吸引手段、永久磁石
45 インナ軸
55 保持部材
56 保持溝
57 受け面
58 進退駆動手段、エアシリンダ
60 締め付け部材
100 ボルト供給装置
O1-O1 挿入軸線
O2-O2 進退軸線
O3-O3 部品軸線
O4-O4 部品進入線
A1 中心点、最下点
L1 深さ寸法