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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】高周波電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/02 20060101AFI20230919BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20230919BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
H01F17/02
H01F27/28 152
H01F27/28 176
H01F27/08 153
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022074890
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2018006806の分割
【原出願日】2018-01-18
(65)【公開番号】P2022100392
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(73)【特許権者】
【識別番号】314000280
【氏名又は名称】株式会社アンド
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩延
(72)【発明者】
【氏名】中▲濱▼ 真之
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 満男
(72)【発明者】
【氏名】石飛 学
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-059365(JP,A)
【文献】特開2012-038935(JP,A)
【文献】特開2005-142459(JP,A)
【文献】特開2014-033037(JP,A)
【文献】特開2015-050451(JP,A)
【文献】特開2007-027345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/02
H01F 27/28
H01F 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源装置と、プラズマ処理装置と、高周波帯域で使用されるインダクタを含み、前記高周波電源装置と前記プラズマ処理装置との間に介装されるインピーダンス調整装置とを備える高周波電力供給システムであって、
前記インダクタは、
軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第一コイル部と、
軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第二コイル部と
を備え、
前記第一コイル部は、平角線を外側から内側に渦巻き状に巻回させることによって形成されており、且つ、最も外側に位置する平角線の端部が外側に突出して第一端子を形成しており、
前記第二コイル部は、平角線を内側から外側に渦巻き状に巻回させることによって形成されており、且つ、最も外側に位置する平角線の端部が外側に突出して第二端子を形成しており、
前記第一コイル部及び前記第二コイル部は、アルファ巻によって巻回されて、径方向の内側において連結されているとともに、軸方向に隙間を設けて並んで配置されており、
前記第一コイル部及び前記第二コイル部を含むインダクタは、径方向中央部を通り且つインダクタの軸に平行な面を切断面とした場合に、径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の断面形状が正方形状となるように平角線が巻回されており、
前記径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の径方向寸法/軸方向寸法で表されるアスペクト比が略1となるように、前記インダクタに含まれる各コイル部の軸方向の隙間の距離、または、前記インダクタに含まれる各コイル部の径方向における平角線の間の隙間の距離が調整され、
前記インダクタの軸方向に空気の流れを生じさせる空冷ファンを備え、
前記第一コイル部および前記第二コイル部の巻き数は同じであり、
前記第一コイル部における隣り合う二つの平角線の間の隙間と、前記第二コイル部における隣り合う二つの平角線の間の隙間とは、軸方向に連なる
高周波電力供給システム
【請求項2】
前記インダクタは、軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第三コイル部を更に備え、
前記第二コイル部と前記第三コイル部とは、平角線が巻回されている部分よりも外側において連結されており、
前記第一コイル部、前記第二コイル部及び前記第三コイル部は、軸方向に隙間を設けて並んで配置されており、
前記第一コイル部、前記第二コイル部及び前記第三コイル部を含むインダクタは、径方向中央部を通り且つインダクタの軸に平行な面を切断面とした場合に、径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の断面形状が正方形状となるように平角線が巻回されている
請求項1に記載の高周波電力供給システム
【請求項3】
前記インダクタに含まれる各コイル部の四隅は、円弧状に曲がっているか、または、直角である
請求項1又は2に記載の高周波電力供給システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、インダクタを含むインピーダンス調整装置を備える高周波電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線をフラットワイズ巻き構造にしたコイルを有するインダクタが提案されている。平角線は、密に巻くことにより丸線よりも高密度化できるので、コイルの自己インダクタンスを大きくできるという利点がある。
【0003】
このような構造のインダクタとして、コアに対して平角線をフラットワイズ巻き構造とした一層の環状コイルを有するインダクタが以前より提案されている(例えば特許文献1参照)。コアを用いることにより、平角線を用いる効果(丸線よりも高密度化)に加え、空心の場合に比べてコイルの自己インダクタンスを大きくできるという効果が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-69786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインダクタのように、コアに対して平角線を密にフラットワイズ巻き構造とした場合、空心の場合に比べてインダクタンスを大きくできる。しかしコイルの内側(コア側)の放熱性が低く、コイルの内側の温度が高くなり易い。その結果、コイルの内側付近の熱がコアに伝わり、コアの温度を高めることになる。
【0006】
更に、コアにおける鉄損は、コイルに流れる電流の周波数が高くなる程大きくなるので、高周波帯域では鉄損が大きくなり、鉄損に起因する発熱量も大きくなる。そのため、高周波帯域(例えば、数百kHz以上の無線周波数帯域)で使用する場合には、コアが熱暴走を起こす可能性がある。
【0007】
また高周波帯域で使用する場合には、コイル自体の発熱が大きくなり、場合によっては、コイル表面(平角線の表面)の絶縁被覆(例えば、エナメルメッキ等)が損傷してしまう。
【0008】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、平角線をフラットワイズ巻き構造としたインダクタの放熱性を向上させて、高周波帯域での使用環境に適用できるインダクタを含むインピーダンス調整装置を備える高周波電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態に係るインダクタは、高周波帯域で使用されるインダクタであって、軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第一コイル部と、軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第二コイル部とを備え、前記第一コイル部は、平角線を外側から内側に渦巻き状に巻回させることによって形成されており、且つ、最も外側に位置する平角線の端部が外側に突出して第一端子を形成しており、前記第二コイル部は、平角線を内側から外側に渦巻き状に巻回させることによって形成されており、且つ、最も外側に位置する平角線の端部が外側に突出して第二端子を形成しており、前記第一コイル部及び前記第二コイル部は、アルファ巻によって巻回されて、径方向の内側において連結されているとともに、軸方向に隙間を設けて並んで配置されており、前記第一コイル部及び前記第二コイル部を含むインダクタは、径方向中央部を通り且つインダクタの軸に平行な面を切断面とした場合に、径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の断面形状が正方形状となるように平角線が巻回されている。
【0010】
本開示の一実施形態に係るインダクタは、前記第一コイル部および前記第二コイル部の巻き数は同じであり、前記第一コイル部における隣り合う二つの平角線の間の隙間と、前記第二コイル部における隣り合う二つの平角線の間の隙間とは、軸方向に連なる。
【0011】
本開示の一実施形態に係るインダクタは、軸方向から視認した場合に、径方向中央部が空心で且つ外形が四角形状になるように、平角線を径方向に隙間を設けながら積層させてフラットワイズ巻きにした第三コイル部を更に備え、前記第二コイル部と前記第三コイル部とは、平角線が巻回されている部分よりも外側において連結されており、前記第一コイル部、前記第二コイル部及び前記第三コイル部は、軸方向に隙間を設けて並んで配置されており、前記第一コイル部、前記第二コイル部及び前記第三コイル部を含むインダクタは、径方向中央部を通り且つインダクタの軸に平行な面を切断面とした場合に、径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の断面形状が正方形状となるように平角線が巻回されている。
【0012】
本開示の一実施形態に係るインダクタは、前記径方向中央部よりも外側で平角線が積層されている部分の径方向寸法/軸方向寸法で表されるアスペクト比が略1となるように、前記インダクタに含まれる各コイル部の軸方向の隙間の距離、または、前記インダクタに含まれる各コイル部の径方向における平角線の間の隙間の距離が調整されている。
【0013】
本開示の一実施形態に係るインダクタは、前記インダクタに含まれる各コイル部の四隅は、円弧状に曲がっているか、または、直角である。
【0014】
本開示の一実施形態に係る装置は、上述のインダクタと、前記インダクタの軸方向に空気の流れを生じさせる空冷ファンとを備える。
【0015】
本開示の一実施形態に係るインピーダンス調整装置は、高周波電源装置と負荷との間に介装されるインピーダンス調整装置であって、上述のインダクタ又は装置を含むインピーダンス調整回路を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態に係るインダクタを含むインピーダンス調整装置を備える高周波電力供給システムにあっては、複数のコイル部の間に隙間を設けることによって、この隙間に空気が通流するので、放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】インダクタを略示する斜視図である。
図2】インダクタを略示する正面図である。
図3】インダクタを略示する平面図である。
図4】インダクタを略示する右側面図である。
図5】インダクタを略示する左側面図である。
図6】インダクタを略示する背面図である。
図7】インダクタを略示する底面図である。
図8図3に示すVIII-VIII線を切断線とした略示断面図である。
図9】インダクタにおける平角線が積層されている部分の断面形状のアスペクト比と、インダクタの合成インダクタンスとの関係を示すグラフである。
図10】インダクタを構成するコイル部を三つとした場合の略示断面図である。
図11】高周波電力供給システムの構成例を示す図である。
図12】インピーダンス調整装置内のインピーダンス調整回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施の形態に係るインダクタ1を図面に基づいて説明する。図1は、インダクタ1を略示する斜視図、図2は、インダクタ1を略示する正面図、図3は、インダクタ1を略示する平面図、図4は、インダクタ1を略示する右側面図、図5は、インダクタ1を略示する左側面図、図6は、インダクタ1を略示する背面図、図7は、インダクタ1を略示する底面図である。
【0019】
インダクタ1は軸方向に並設された第一コイル部10及び第二コイル部20を備える。第一コイル部10及び第二コイル部20はアルファ巻によって巻回され、連結されている。第一コイル部10及び第二コイル部20は、それぞれ平角線2をフラットワイズ巻きに巻回させて形成されており、軸方向から視認した場合、四角形状、例えば正方形状又は長方形状をなす。第一コイル部10及び第二コイル部20の四隅は円弧状に曲がっている。なお第一コイル部10及び第二コイル部20の四隅は直角でもよい。
【0020】
軸方向から視認した場合、第一コイル部10は四角形状をなす。平角線2を外側から内側に渦巻き状に巻回させることによって、第一コイル部10は形成されている。平角線2は径方向に積層されている。第一コイル部10の最も外側に位置する平角線2の端部が、平面視四角形状をなす第一コイル部10の辺に平行に外側に突出し、第一端子11を形成している。
【0021】
軸方向から視認した場合、第二コイル部20は四角形状をなす。平角線2を内側から外側に渦巻き状に巻回させることによって、第二コイル部20は形成されている。平角線2は径方向に積層されている。第二コイル部20の最も外側に位置する平角線2の端部が、平面視四角形状をなす第二コイル部20の辺に平行に外側に突出し、第二端子21を形成している。第二端子21は、第一端子11の反対側に配置されている。第一コイル部10及び第二コイル部20の巻き数は同じである。
【0022】
図8は、図3に示すVIII-VIII線を切断線とした略示断面図である。図1及び図8に示すように、第一コイル部10の最も内側に位置する平角線2と、第二コイル部20の最も内側に位置する平角線2とは、連結部3を介して連結されている。第一コイル部10及び第二コイル部20の径方向中央部には芯が配置されておらず、インダクタ1は空心である。第一コイル部10及び第二コイル部20は軸方向に隙間15を設けて並んでいる。隙間15の距離はd3である。
【0023】
図8に示すように、平角線2が積層されている部分におけるインダクタ1の径方向寸法をd1とし、軸方向寸法をd2とする。インダクタ1は、径方向寸法d1と、軸方向寸法d2とが等しくなるように、平角線2を巻回している。換言すれば、インダクタ1の軸に平行な面を切断面とした場合に、平角線2が積層されている部分の断面形状が正方形状となるように、平角線2は巻回されている。
【0024】
図8に示すように、第一コイル部10における隣り合う二つの平角線2の間の隙間12と、第二コイル部20における隣り合う二つの平角線2の間の隙間22とは、軸方向に連なっている。
【0025】
図9は、インダクタ1における平角線2が積層されている部分の断面形状のアスペクト比と、インダクタ1の合成インダクタンスとの関係を示すグラフである。図9において、横軸はアスペクト比を示し、縦軸は合成インダクタンスを示す。アスペクト比は、径方向寸法d1/軸方向寸法d2に対応する。図9に示すように、アスペクト比が1となる場合、即ち、平角線2が積層されている部分の断面形状が正方形になる場合、合成インダクタンスの値は最大となる。
【0026】
そのため、アスペクト比が1になるようにすれば、単位重量当たりのインダクタンスを最大限に大きくできるので、インダクタ1の小型化が可能である。そのため、上記のインダクタ1を備えたインピーダンス調整装置とすることで、インピーダンス調整装置の小型化に寄与することができる。
【0027】
このように平角線2が積層されている部分の断面形状を正方形(アスペクト比=1)にするのが好ましいが、現実問題として製造上の寸法誤差が生じる。そのため、所望するアスペクト比に対して許容誤差を設定し、アスペクト比が許容誤差内に収まるように構成するのが現実的である。
【0028】
また、図9から分かるように、アスペクト比を調整することによって、合成インダクタンスを調整することができる。そのため、所望の合成インダクタンスになるように、アスペクト比を調整することができる。この場合であっても、アスペクト比に対して許容誤差を設定するのが現実的である。
【0029】
これにより、インダクタ1を装置(機器)に組み込んで使用する場合に、より適切な制御が可能となる。なお、アスペクト比の調整は、例えば、第一コイル部10と第二コイル部20との間の隙間15の距離d3を調整することによって可能となる。または、第一コイル部10を構成する平角線2の間の隙間12の距離を調整してもよいし、第二コイル部20を構成する平角線2の間の隙間22の距離を調整してもよい。
【0030】
上記のような隙間12、15、22の距離の調整には、絶縁部材を挿入し、その絶縁部材の厚みを変えることで実現できる。また、隙間12、15、22の距離の調整を行わない場合においても、隙間を確実に確保する目的で、絶縁部材を挿入してもよい。
【0031】
次に、インダクタ1の製造方法について説明する。例えば、平角線2を外側から内側に渦巻き状に巻回させて第一コイル部10を形成した後、連結部3を形成して、軸方向に位置をずらし、平角線2を内側から外側に渦巻き状に巻回させることによって、第二コイル部20を形成する。平角線2はアルファ巻きによって巻回され、インダクタが製造される。その際、平角線2を積層させた部分の径方向寸法及び軸方向寸法が等しくなるように、インダクタ1をフラットワイズに巻きにする。なお第二コイル部20を形成した後に、第一コイル部10を形成してもよい。なお、平角線2の材質は、例えば銅であり、表面に絶縁被覆(エナメルメッキ等)が施されている。
【0032】
実施の形態に係るインダクタ及びインダクタの製造方法にあっては、第一コイル部10及び第二コイル部20を軸方向に並べることによって、従来のようなコイル部が一層の場合に比べて自己インダクタンスを大きくすることができる。またインダクタ1における平角線2を積層させた部分の径方向寸法及び軸方向寸法が等しくなるように、即ち、平角線2を積層させた部分を軸に平行な面で切断した場合における断面の形状が正方形になるように、平角線2を巻回するので、自己インダクタンスを更に大きくすることができる。
【0033】
またインダクタ1を平面視で四角形状に巻回しているので、巻線の占有率を確保しながら自己インダクタンスを稼ぐことができる
【0034】
またインダクタ1を空心にすることによって、鉄損を減らすことができ、またインダクタの特性を線形にすることができる。インダクタ1にコアを設けた場合、インダクタの特性にヒステリシスが表れ、インダクタの変動が大きくなり、高精度の制御を要求される装置(機器)には使用できない。
【0035】
また第一コイル部10を構成する平角線2の間の隙間12と、第二コイル部20を構成する平角線2の間の隙間22とが、軸方向に連なるので、風が第一コイル部10及び第二コイル部20を通流しやすくなり、強制空冷による冷却効果を向上させることができる。
【0036】
すなわち、上記のように、平角線2で巻線を構成するとともに、平角線2の間に隙間を設けることにより、風が第一コイル部10及び第二コイル部20を通流しやすくなって、巻線そのものがヒートシンクの役目を果たす。そのため、平角線2の間の隙間12の距離、平角線2の間の隙間22の距離を短くすることも可能となる。そのため、より巻線を密に巻くことが可能となるので、重量あたりの自己インダクタンスを増加させることができる。
【0037】
また、高周波帯域で大電流の場合であっても、十分な冷却効果を得ることができるので、破損を防止することができる。
【0038】
なお、上記の隙間12と隙間22とが軸方向に完全に連なっていることが望ましいが、現実には多少の寸法誤差が生じるので、図8に示すように、隙間12と隙間22とを軸方向に完全に連なる状態にすることは難しい。
【0039】
すなわち、隙間12と隙間22とが軸方向に完全に連なる状態になっていないことがあるが、このような場合であっても、第一コイル部10と第二コイル部20との間には隙間15があるので、この隙間15に風が通流し、第一コイル部10と第二コイル部20を冷却することができる。
【0040】
そのため、軸方向、即ち第一コイル部10から第二コイル部20に向かう方向、又は、第二コイル部20から第一コイル部10に向かう方向に空気の流れが生じるようにすれば、平角線2の多くの面積に接するように風が流れるので、空気によるインダクタ1の冷却効果を向上させることができる。
【0041】
なお、空気の流れを生じさせるには、例えば、空冷ファンを設けることで実現できる。もちろん、上記軸方向とは異なる方向に空気の流れを生じさせてもよい。例えば、上記軸方向と垂直な方向、すなわち、図8において、紙面の右から左に向かう方向、又は、紙面の左から右に向かう方向に空気の流れを生じさせてもよい。このようにした場合は、図8において、第一コイル部10の上方、第二コイル部20の下方及び第一コイル部10と第二コイル部20との間の隙間15に風が流れるので、空気によってインダクタ1を冷却することができる。
【0042】
なおインダクタ1を構成するコイル部は二つに限定されず、三つ以上のコイル部を軸方向に並べてもよい。例えば、図10に示すように、インダクタ1を構成するコイル部を第一コイル部10、第二コイル部20及び第三コイル部30の三つとしてもよい。第一コイル部10及び第二コイル部20は、軸方向に隙間15を設けて並んでいる。第二コイル部20及び第三コイル部30は、軸方向に隙間25を設けて並んでいる。隙間25の距離はd4である。
【0043】
このようなインダクタ1を構成するコイル部を三つ以上のコイル部とした場合であっても、上記の同様の概念が適用される。例えば、図10の例でもアスペクト比(径方向寸法d1/軸方向寸法d2)を1にするのが好ましいが、所望の合成インダクタンスになるように、アスペクト比を調整することができる。この場合であっても、アスペクト比に対して許容誤差を設定するのが現実的である。
【0044】
なお、アスペクト比の調整は、例えば、各コイル部間の隙間15、25の距離d3、d4を調整することによって、または、平角線2の間の隙間12、22、32の距離を調整することによって、可能である。
【0045】
なお、図10は、図8に示した方向とは異なる方向の略示断面図である。そのため、図8に示したような連結部3が図示されていないが、図8と同様に、第一コイル部10と第二コイル部20とを連結するための連結部を備えている。また、第二コイル部20と第三コイル部30とは、インダクタ1の外側にて連結されている。
【0046】
次に、上記の実施形態で説明したインダクタを機器(主には産業用機器)に組み込んだ一例として、高周波電力供給システムの一部であるインピーダンス調整装置300に組み込む場合について説明する。
【0047】
図11は、高周波電力供給システムの構成例を示す図である。この高周波電力供給システムは、半導体ウエハや液晶基板等の被加工物に、例えばプラズマエッチング、プラズマCVDといった加工処理を行うためのシステムであり、高周波電源装置100、伝送線路200、インピーダンス調整装置300(インピーダンス整合装置と言うこともある)、負荷接続部400及び負荷500(プラズマ処理装置)で構成されている。そして、高周波電源装置100は、伝送線路200、インピーダンス調整装置300及び負荷接続部400を介して負荷500に高周波電力を供給する。負荷500(プラズマ処理装置)では、被加工物が配置されるチャンバー(図略)内にプラズマ放電用ガスを導入するとともに、チャンバー内の電極(図略)に高周波電源装置100から高周波電力を供給して、プラズマ放電用ガスを放電させて非プラズマ状態からプラズマ状態にしている。そして、プラズマ状態になったガスを用いて被加工物を加工している。
【0048】
なお、高周波電源装置100は、負荷500に対して無線周波帯域の周波数(一般的には、数百KHzないし数十MHz程度の周波数である。例えば、400kHz、2MHz、13.56MHz、50MHz等の周波数であるが、更に高い周波数帯域(数100MHz等)も使用され得る。)を有する高周波電力(高周波電圧)を供給するための装置である。
【0049】
プラズマエッチング、プラズマCVD等の用途に用いられるプラズマ処理装置のような負荷500では、製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化していく。ひいては、負荷500のインピーダンス(負荷インピーダンス)が時々刻々と変化していく。このような負荷500に高周波電源装置100から効率よく電力を供給するためには、負荷インピーダンスの変化に伴い、高周波電源装置100の出力端から負荷500側を見たインピーダンスZL(以下、負荷側インピーダンスZL)を調整する必要がある。そのために、高周波電力供給システムでは、高周波電源装置100と負荷500(プラズマ処理装置5)との間に、インピーダンス調整装置300が介装される。
【0050】
インピーダンス調整装置300は、負荷500に高周波電力を供給する高周波電源装置100と前記負荷500との間に設けられ、内部に設けた可変電気特性素子(可変コンデンサや可変インダクタ)の電気特性(キャパシタンスやインダクタンス)を調整することにより、負荷側インピーダンスZLを調整するものである。このインピーダンス調整装置
300では、可変電気特性素子の電気特性を適切な値にすることによって、高周波電源装置100のインピーダンスと負荷500のインピーダンスとを整合させて、負荷500から高周波電源装置100に向かう反射波電力を可能な限り最小にして負荷への供給電力を最大にすることができる。
【0051】
図12は、インピーダンス調整装置300内のインピーダンス調整回路210の回路図である。インピーダンス調整回路210は、例えば、第1の可変コンデンサ211、第2の可変コンデンサ212及びインダクタ213によって構成されている。このインダクタ213として、上記の実施形態で説明したインダクタ1を適用することができる。なお、図12のインピーダンス調整回路210は、所謂「逆L型」と言われるタイプであるが、他のタイプ(例えば、「π型」等)のインピーダンス調整回路210のインダクタとして、上記の実施形態で説明したインダクタ1を適用することもできる。
【0052】
ところで、このようなインピーダンス調整装置300内のインピーダンス調整回路210では、高周波帯域の大電流がインダクタ213に流れる。そのため、放熱対策を施す必要がある。また、インピーダンス調整装置300の小型化の要求が強いため、構成部品の小型化が望まれる。
【0053】
上記で説明したように、本実施形態のインダクタ1は、単位重量当たりのインダクタンスを大きくできるのでインダクタ1の小型化が可能である。そのため、上記のインダクタ213を備えたインピーダンス調整装置300とすることで、インピーダンス調整装置300の小型化に寄与することができる。もちろん、インピーダンス調整装置300だけでなく、他の機器にも組み込むことができる。例えば、図11に示す高周波電源装置100にも適用することができる。特に有効なのは、高周波帯域の大電流がインダクタ1に流れる場合であるが、上記の説明で分かるように、高周波帯域で使用される機器、又は大電流がインダクタ1に流れる機器に適用すれば効果がある。
【0054】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 インダクタ
2 平角線
3 連結部
10 第一コイル部
12 隙間
15 隙間
20 第二コイル部
22 隙間
25 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12