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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】電流開閉装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20230919BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
H01H33/59 D
H01H9/54 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023125722
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594192062
【氏名又は名称】東邦電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520032099
【氏名又は名称】株式会社シグマエナジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114269
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貞喜
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆一
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-3293(JP,A)
【文献】特許第7323878(JP,B1)
【文献】特開2003-338239(JP,A)
【文献】特開昭57-111909(JP,A)
【文献】特開2015-225812(JP,A)
【文献】米国特許第4274122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/59
H01H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向直流電源又は交流電源と負荷との間に挿入されて使用される電流開閉装置であって、該電流開閉装置は、
1巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器と、該電磁接触器の金属接点(以下「接点」という。)と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、
前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、
ダイオードブリッジと、
定電圧ダイオードとを備え、
前記ダイオードブリッジの交流入力端子には、前記電磁接触器の駆動コイルに対して正又は負の電圧を供給して前記接点を閉極又は開極させるために設けられた外部の駆動電源が接続されるとともに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子は電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子間には過電圧保護のための前記定電圧ダイオードが接続されたことを特徴とする電流開閉装置。
【請求項2】
双方向直流電源又は交流電源と負荷との間に挿入されて使用される電流開閉装置であって、該電流開閉装置は、
2巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器と、該電磁接触器の接点と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、
前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、
2個の逆流防止用ダイオードと、
過電圧保護のための定電圧ダイオードとを備え、
前記電磁接触器の2つの駆動コイルのうちの前記接点を閉極させるための駆動コイルと前記駆動コイルのうちの前記接点を開極させるための駆動コイルにそれぞれ別個独立に電源を供給するために設けられた外部の駆動電源のプラス側が前記各ダイオードのアノードに接続され、かつ前記各ダイオードのカソードが電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記定電圧ダイオードのカソードが前記各ダイオードのカソードに接続され、前記定電圧ダイオードのアノードが前記駆動電源のアース側に接続されたことを特徴とする電流開閉装置。
【請求項3】
前記逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチを、第2のダイオードブリッジと一又は複数の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチで置き換えたものであって、
前記第2のダイオードブリッジの交流入力端子を前記接点に並列に接続するとともに、
前記半導体スイッチング素子を前記第2のダイオードブリッジの直流出力端子に並列接続したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電流開閉装置の前記電磁接触器の前記接点に並列に接続して使用されるハイブリッド化ユニットであって、該ハイブリッド化ユニットは、
前記接点と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、
前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、ダイオードブリッジと、定電圧ダイオードとを備え、
前記ダイオードブリッジの交流入力端子には、前記電磁接触器の駆動コイルに対して正又は負の電圧を供給して前記接点を閉極又は開極させるために設けられた外部の駆動電源が接続されるとともに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子は電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子間には過電圧保護のための前記定電圧ダイオードが接続されたことを特徴とするハイブリッド化ユニット。
【請求項5】
請求項2に記載の電流開閉装置の前記電磁接触器の前記接点に並列に接続して使用されるハイブリッド化ユニットであって、該ハイブリッド化ユニットは、
前記接点と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、
前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、2個の逆流防止用ダイオードと、過電圧保護のための定電圧ダイオードとを備え、
前記電磁接触器の2つの駆動コイルのうちの前記接点を閉極させるための駆動コイルと前記駆動コイルのうちの前記接点を開極させるための駆動コイルにそれぞれ別個独立に電源を供給するために設けられた外部の駆動電源のプラス側が前記各ダイオードのアノードに接続され、かつ前記各ダイオードのカソードが電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記定電圧ダイオードのカソードが前記各ダイオードのカソードに接続され、前記定電圧ダイオードのアノードが前記駆動電源のアース側に接続されたことを特徴とするハイブリッド化ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流又は双方向直流の電流開閉装置に関し、特に、金属接点のオン時又はオフ時の開始時のみ外部の駆動電源で接点駆動コイルを励磁して金属接点を駆動してオン状態又はオフ状態にして、その後、接点駆動コイルの励磁を停止してもその状態を維持する所謂機械ラッチ式の電磁接触器と、この金属接点と並列に接続された双方向半導体スイッチとを備えて、接点駆動コイルの駆動電源によって双方向半導体スイッチのゲートを絶縁駆動して金属接点のオン時のチャタリング、オフ時の接点電流をアークの発生なしに開閉することを可能にした電流開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁接触器(マグネットコンタクタ)は、プランジャ型リレー(電磁石とバネで機械式に保持する形と永久磁石を使って保持する形を含む。)と呼ばれる制御機器である。
なお、プランジャ形リレーには電磁開閉器(マグネットスイッチ)もあるが、電磁開閉器は、電磁接触器にサーマルリレーを付加したものであり、金属接点の動作に関しては電磁接触器と同じであるから、特に断らない限り、この明細書においては、電磁接触器には電磁開閉器も含まれるものとする。
【0003】
かかる電磁接触器は、次に述べる2つの問題点が指摘されている。直流の電圧・電流がある程度大きいと接点間のアークが持続して直流電流が遮断できない点と、交流でも金属接点のアークによる損耗と溶着の問題である。
金属接点のオン時にチャタリングが発生すると、大きな突入・始動電流を、数回~10回程度の高速で開閉を繰り返すため金属接点間に発生するアークにより金属接点が溶融・蒸発し、その後接点金属の溶着・消耗等が発生する。接点溶着を起こした場合は、接点は開極制御不能、電流継続になり、システムに甚大な被害を与えることになる。
【0004】
かかる電磁接触器を用いた電流開閉装置における金属接点のチャタリングによる溶着の問題と、交流又は直流の電流遮断時のアーク発生の問題を解決することを可能にする電流開閉装置が本発明者らによって提案(ただし未公開)されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2022-187004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電磁接触器には、金属接点のオン開始時又はオフの開始時に短時間(50ms程度)のみ電磁力を発生させて金属接点の閉から開へ、又は開から閉を行う機械ラッチ式の電磁接触器があり、一般の電磁接触器と異なり、オン状態でも接点駆動コイルに電流を連続的に流す必要が無く、コイルの電力消費による発熱が無いのが特徴である。
また、機械ラッチ式の電磁接触器には2種類あって、一方は、駆動コイルが1つのみで、可動鉄片がコイル電流の方向によって接点を閉状態又はコイル電流を逆方向にすると開状態になるが、駆動電流が停止しても接点はその状態を維持、すなわちラッチされるものである(1巻線ラッチング型)。
他方は、駆動コイルを2つ持っていて、接点を閉状態にするためのコイルと、接点を開状態にするためのコイルが別々に設けられており、個々にコイルに電流を流すことによって接点の開閉状態を変化させ、コイルへの電流を停止した後もその状態を維持することができるものである(2巻線ラッチング型)。
【0007】
かかる2種類の機械ラッチ式電磁接触器に共通する特徴は、金属接点のオン開始時又はオフの開始時に短時間(50ms程度)のみ駆動コイルに電流を流すという点である。
一方、上記特許文献1に記載の電磁接触器は、金属接点がオンしている間はコイルに電流を流し続ける必要があり、金属接点がオンの間はコイルを駆動する電源をオフすることができない。
また、駆動コイルを駆動する電源は半導体スイッチのゲートを駆動する電源としても使われているため、金属接点のオンの直後に駆動コイルの電源をオフするラッチ式電磁接触器を用いた電流開閉装置の半導体スイッチのゲート駆動制御回路は、上記特許文献1に記載のゲート駆動制御回路が使えないという問題がある。
さらには、1巻線ラッチング型の場合、接点を開極する場合は、コイル電流を逆方向にする必要があるため、やはり上記特許文献1に記載のゲート駆動制御回路が使えない。
【0008】
本発明は上述のような問題に鑑みなされたものであり、機械ラッチ式電磁接触器を用いた電流開閉装置における上記の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、双方向直流電源又は交流電源と負荷との間に挿入されて使用される電流開閉装置に関し、本発明の上記目的は、該電流開閉装置が、1巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器と、該電磁接触器の金属接点(以下「接点」という。)と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、ダイオードブリッジと、定電圧ダイオードとを備え、前記ダイオードブリッジの交流入力端子には、前記電磁接触器の駆動コイルに対して正又は負のパルス電圧を供給して前記接点を閉極又は開極させるために設けられた外部の駆動電源が接続されるとともに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子は電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記ダイオードブリッジの直流出力端子間には過電圧保護のための前記定電圧ダイオードが接続されたことを特徴とする電流開閉装置によって達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、該電流開閉装置が、2巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器と、該電磁接触器の接点と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子から成る双方向半導体スイッチと、前記各半導体スイッチング素子の制御端子にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路と、2個のダイオードと、過電圧保護のための定電圧ダイオードとを備え、前記電磁接触器の2つの駆動コイルのうちの前記接点を閉極させるための駆動コイルと前記駆動コイルのうちの前記接点を開極させるための駆動コイルにそれぞれ別個独立に電源を供給するために設けられた外部の駆動電源のプラス側が前記各ダイオードのアノードに接続され、かつ前記各ダイオードのカソードが電流制限抵抗を介して前記絶縁ゲート駆動回路の入力端子に接続され、さらに、前記定電圧ダイオードのカソードが前記各ダイオードのカソードに接続され、前記定電圧ダイオードのアノードが前記駆動電源のアース側に接続されたことを特徴とする電流開閉装置によっても達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電流開閉装置によれば、電流投入時は、金属接点の閉極よりも先に双方向半導体スイッチがオンするので、金属接点の閉極時に「バウンド」又は「擦れ(すれ)」が発生したとしても、電流は主に半導体スイッチの方に流れているので、大きなアークは発生せず、そのため金属接点の溶着もない。この結果、金属接点のチャタリングと溶着の問題は解消される。
【0012】
また、1巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器を用いた電流開閉装置の場合は、接点の開閉状態を切り換える場合に駆動コイルの電流方向を切り換えたとしても、ダイオードブリッジの働きにより、絶縁ゲート駆動回路の入力端子には常に同じ方向の電圧が入力されるため、絶縁ゲート駆動回路の出力によって双方向半導体スイッチのオン/オフを制御することができる。
またさらに、2巻線ラッチング形の機械ラッチ式電磁接触器を用いた電流開閉装置の場合は、接点の開閉状態を切り換える場合にそれぞれの駆動コイルの駆動電源を切り換えたとしても、各ダイオードを介して絶縁ゲート駆動回路の入力端子に電圧が入力されるため、絶縁ゲート駆動回路の出力によって双方向半導体スイッチのオン/オフを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電流開閉装置の第一実施形態の実施例を示すブロック図である。
図2】1巻線ラッチング形の電磁接触器の駆動電源の一例を示す図である。
図3】本発明に係る電流開閉装置の動作シーケンスを説明するための図である。
図4】本発明に係る電流開閉装置の第一実施形態の実施例の他の例を示すブロック図である。
図5】本発明に係る電流開閉装置の第二実施形態の実施例を示すブロック図である。
図6】2巻線ラッチング形の電磁接触器の駆動電源の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電流開閉装置の第一実施形態の実施例を示すブロック図である。本発明に係る電流開閉装置は、双方向直流電源又は交流電源(以下単に「電源」という。)1と負荷4との間に挿入されて使用されるものであり、駆動コイル3と、駆動コイル3への駆動電源(図1中の点線で囲んだ部分であって、外部に設けられており、本発明の構成要件ではない。)の投入により電磁石の力により開閉動作を行う接点2を備えた機械ラッチ式電磁接触器(1巻線ラッチング形)と、接点2と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子5から成る双方向半導体スイッチと、各半導体スイッチング素子5の制御端子(ゲート)にオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路7と、ダイオードブリッジ9と、定電圧ダイオード10とを備えている。
【0015】
また、絶縁ゲート駆動回路7の出力と半導体スイッチング素子5のゲートの間には発振防止用の抵抗6(例えば1kΩ)が挿入されている。
ダイオードブリッジ9の交流入力端子には、外部の駆動電源が接続される。また、ダイオードブリッジ9の直流出力端子は電流制限抵抗8(例えば400Ωで電流を約10mAに制限する。)を介して絶縁ゲート駆動回路7の入力端子に接続され、さらに、ダイオードブリッジ9の直流出力端子間には定電圧ダイオード10が接続されている。なお、電磁接触器の駆動コイル3への電流遮断はインダクタンスによる高電圧の逆起電力が生じるが、これにより絶縁ゲート駆動回路7への過大な電圧が印加されるのを防ぐために、定電圧ダイオード10(例えば6V用)を接続してこれを阻止する。
【0016】
半導体スイッチング素子5としては、MOSFETや逆導通型IGBTなど制御端子(ゲート)の制御でオン/オフする能力を持つ自己消弧形半導体素子が利用可能である。
また、絶縁ゲート駆動回路7としては、フォトボル出力フォトカプラ(以下「フォトボル」という。)が利用できる。フォトボルは、赤外LEDとフォトダイオードアレイを備え、入力側に約10mAの電流で内部の赤外LEDを発光させて、出力部のフォトダイオードアレイに絶縁された出力最大7V程度の開放電圧を発生させるもので、東芝デバイス&ストレージ株式会社製のTLP3906などがある。
【0017】
図2は、1巻線ラッチング形の電磁接触器の駆動電源の一例を示す図である。接点2を閉極させるとき(セット時)は、SW1を短時間(約20ms)オン(その後オフ)してセット電源(正電圧:一例として+5V)を駆動コイル3に印加する。その後SW1をオフしても接点2はラッチされ、閉極状態が維持される。
なお、SW1がオフされると(SW2もオフ)、絶縁ゲート駆動回路7の入力は0となるので絶縁ゲート駆動回路7の出力も0となり、半導体スイッチング素子5はオフとなるが、接点2がラッチされてオンを持続しているので問題はない。
一方、接点2を開極させるとき(リセット時)は、SW2を短時間(約20ms)オン(その後オフ)してリセット電源(負電圧:一例として-5V)を駆動コイル3に印加する。その後SW2をオフしても接点2はラッチされ、開極状態が維持される。
なお、SW2がオフされると(SW1もオフ)、絶縁ゲート駆動回路7の入力は0となるので絶縁ゲート駆動回路7の出力も0となり、半導体スイッチング素子5はオフとなるが、接点2はSW2のオンから約10ms後に開極し、その時点で半導体スイッチング素子5はまだオン状態であるから、接点2の開極時にアークは発生しない。
【0018】
なお、本発明に係る電流開閉装置から、電磁接触器(接点2と駆動コイル3を合わせたもの)を外した部分を、ここでは「ハイブリッド化ユニット」11と呼ぶこととする。すなわち、既存の電磁接触器に後付けでハイブリッド化ユニットを付加しても本発明に係る電流開閉装置を構成できるので、ハイブリッド化ユニットとしても発明の対象となり得るからである。
【0019】
図3は、本発明に係る電流開閉装置の動作シーケンスを説明するための図である。
セット電源がオンされると、ほぼ瞬間的(1ms以下)に半導体スイッチング素子(MOSFET)5がオンになり、双方向半導体スイッチに電流が流れる。同時に駆動コイル3にも駆動電流が流れるが、接点2が閉極するまでには約10msかかる。電磁駆動のプランジャが始動するには時間が必要で、約10ms要するからである。
接点2が閉極した時にはMOSFET5がオンしているので、接点2にアークは発生しない。
接点2が閉極すると、接点2に回路の主電流が流れるから、接点2よりも抵抗の大きい双方向半導体スイッチには電流は殆ど流れなくなる。接点2が閉極した後、約10ms後にセット電源がオフされると、MOSFET5のゲート電圧はゼロになり、MOSFET5はオフになるが、接点2はラッチされて閉状態を維持しているため、接点2に電流は流れ続ける。
【0020】
次に、リセット電源がオンされると、駆動コイル3に逆向きの駆動電流が流れ、接点2が開極しようとするが、接点2が開極するまでには約10msかかる。電磁駆動のプランジャが始動するには時間が必要で、約10ms要するからである。
また、リセット電源がオンされるとほぼ瞬間的に半導体スイッチング素子(MOSFET)5がオンになるが、この時、接点2は上述のとおり機械的な遅れによりまだ閉極状態にあるので、回路の主電流は接点2に流れ、接点2と半導体スイッチのオン抵抗の差により、双方向半導体スイッチには電流が殆ど流れない。
しかし、10ms後に接点2が開極した時にはMOSFET5がオンしているので、主電流は半導体スイッチに転流し、接点2にアークは発生しない。アークの発生には、ほぼ電流によらず最低でも10V程度のアーク電圧が必要だからである。接点2が開極した後、約10ms後にリセット電源がオフされると、MOSFET5のゲート電圧はゼロになり、MOSFET5はオフになり、主電流は遮断される。
すなわち、主電流が遮断されるタイミングは、リセット電源のオフのタイミングで、半導体スイッチのオフによってなされるのである。
この効果により、電磁駆動の接点スイッチの欠点であった投入/遮断のタイミングの遅れ及びジッターを並列接続の半導体スイッチによって制御することが可能となる。
【0021】
図4は、本発明に係る電流開閉装置の第一実施形態の実施例の他の例を示すブロック図である。
図1に示す逆直列接続した2個のMSFET5から成る双方向半導体スイッチを、第2のダイオードブリッジ12と一又は複数(図4では便宜上1個にしているが、2個以上でも構わない。)のMOSFET5から成る双方向半導体スイッチで置き換えたものであって、ダイオードブリッジ12の交流入力端子を接点2に並列に接続するとともに、MOSFET5を図のようにダイオードブリッジ12の直流出力端子に並列接続したものである。なお、MOSFET5を複数個並列にするのは、大電流を扱う場合に1個あたりの分担を減らして発熱を抑えるためであり、扱う電流量によっては1個でも構わないことは言うまでもない。
これは、駆動電源のオン時、絶縁ゲート駆動回路7からゲート電圧パルスで双方向半導体スイッチがオンされるが、その後、遅れて接点2がオンされると、接点2のオン電圧からの双方向半導体スイッチへの回り込み電流が発生することがある。このダイオードブリッジ12の順方向電圧は2Vから3V程度が有るため、この回り込み電流を完全に阻止することができる。
その他の点は図1の実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0022】
図5は、本発明に係る電流開閉装置の第二実施形態の実施例を示すブロック図である。
図1に示す第一実施形態の実施例と異なる点は、電磁接触器の駆動コイル3が、第一実施形態では1巻線ラッチング形であるのに対し、第二実施形態では2巻線ラッチング形である点である。2巻線ラッチング形の電磁接触器は、駆動コイル3がセット用コイル(閉極用コイル)3aとリセット用コイル(開極用コイル)3bとに分かれて別個に設けられており、駆動電源もセット用電源とリセット用電源が個別に設けられている。1巻線ラッチング形の場合もセット用電源とリセット用電源が個別に設けられているが、電流の向きが異なるだけであり、同じ駆動コイル3に対して供給される。
【0023】
これに対して、2巻線ラッチング形の場合は、駆動コイルはそれぞれ異なるが供給する電流の向き(電圧の極性)は同じである。
したがって、第一実施形態のように、絶縁ゲート駆動回路7への入力電圧の極性がセット時とリセット時では変化しないので、ダイオードブリッジ9は不要であり、代わりに2個の逆流防止用ダイオード9(セット用とリセット用)を備えている。
すなわち、セット電源又はリセット電源のプラス側が各ダイオードのアノードに接続され、かつ各ダイオードのカソードが電流制限抵抗8を介して絶縁ゲート駆動回路7の入力端子に接続され、さらに、定電圧ダイオード10のカソードが各ダイオード9のカソードに接続され、定電圧ダイオード10のアノードがセット電源又はリセット電源のアース側に接続されている。それ以外は第一実施形態と同じであるので、説明は省略する。
また、この第二実施形態に対しても、第一実施形態と同様の変形例(図4)が存在するが、図4の場合と同じ説明になるので、省略する。
【0024】
図6は、2巻線ラッチング形の電磁接触器の駆動電源の一例を示す図である。接点2を閉極させるとき(セット時)は、SW1を短時間(約20ms)オン(その後オフ)してセット電源(正電圧:一例として+5V)を駆動コイル3aに印加する。その後SW1をオフしても接点2はラッチされ、閉極状態が維持される。
なお、SW1がオフされると(SW2もオフ)、絶縁ゲート駆動回路7の入力は0となるので絶縁ゲート駆動回路7の出力も0となり、半導体スイッチング素子5はオフとなるが、接点2がラッチされてオンを持続しているので問題はない。
一方、接点2を開極させるとき(リセット時)は、SW2を短時間(約20ms)オン(その後オフ)してリセット電源(正電圧:一例として+5V)を駆動コイル3bに印加する。その後SW2をオフしても接点2はラッチされ、開極状態が維持される。
その他は1巻線ラッチング形の電磁接触器の駆動電源の場合と同じであるので、説明は省略する。
【0025】
以上で説明を終わるが、本発明における機械ラッチ式電磁接触器とは、リレー駆動コイルの電源オフ後においても接点が元の状態にロックされる電磁接触器全般を包含するものであり、一般にラッチングリレーと呼ばれているものも含むが、接点のロック方式(磁気ロック式/メカロック式)は問わない。
【符号の説明】
【0026】
1:電流双方向直流電源又は交流電源
2:(電磁接触器の)金属接点
3:(電磁接触器の)駆動コイル
4:負荷
5:半導体スイッチング素子(MOSFET)
6:ゲート抵抗
7:絶縁ゲート駆動回路(フォトボル)
8:電流制限抵抗
9:ダイオードブリッジ
10:定電圧ダイオード
11:ハイブリッド化ユニット
12:第2のダイオードブリッジ
















【要約】
【課題】機械ラッチ式電磁接触器を用いた電流開閉装置における溶着の問題を解決し、電流をアーク無しに遮断する。
【解決手段】
機械ラッチ式電磁接触器の金属接点と並列に接続される逆直列接続した2個の半導体スイッチング素子5から成る双方向半導体スイッチと、各半導体スイッチング素子5のゲートにオン又はオフのための制御電圧を出力する絶縁ゲート駆動回路7と、ダイオードブリッジ9と、定電圧ダイオード10とを備え、ダイオードブリッジ9の交流入力端子には、電磁接触器の駆動コイルの駆動電源が接続されるとともに、ダイオードブリッジ9の直流出力端子は電流制限抵抗8を介して絶縁ゲート駆動回路7の入力端子に接続され、さらに、ダイオードブリッジ9の直流出力端子間には過電圧保護のための定電圧ダイオード10が接続されたことを特徴とする。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6