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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】鮮度保持装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/12 20060101AFI20230919BHJP
   A23B 7/153 20060101ALI20230919BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230919BHJP
   A61L 9/18 20060101ALI20230919BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230919BHJP
   F25D 23/00 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
B65D88/12 W
A23B7/153
A61L9/00 C
A61L9/18
B01J35/02 J
F25D23/00 302M
F25D23/00 302Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017150847
(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2019026377
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】596025711
【氏名又は名称】株式会社近鉄エクスプレス
(73)【特許権者】
【識別番号】517273272
【氏名又は名称】株式会社ティオシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】野崎 真孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽一
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】武市 匡紘
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3077655(JP,U)
【文献】特開2007-14865(JP,A)
【文献】登録実用新案第3149053(JP,U)
【文献】特開2002-65152(JP,A)
【文献】実開平4-41894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/12
A23B 7/153
A61L 9/00
B01J 35/02
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部、側部、底部に沿って流れる空気の循環流が形成された収納容器に設けられ、収容物の鮮度を保持する鮮度保持装置であって、
冷却された空気を供給する蒸発器を具備する冷凍サイクルと、前記収納容器における空気の循環流に沿って前記収容空間の上方側における前記天井部と前記側部との角に設けられ正面視L字形の不織布の表面にコーティングされた光触媒表層と、該光触媒表層に光を照射する光源と、を備えることを特徴とする鮮度保持装置。
【請求項2】
前記光触媒表層は、前記収納容器の前記天井部および前記側部の長手方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鮮度保持装置。
【請求項3】
触媒表層は、さらに前記収納容器の前記底部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の鮮度保持装置。
【請求項4】
前記光源は、前記収納容器の前記天井部と前記側部により形成される角の近傍にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鮮度保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物、花卉類、その他の生鮮食品等の収容物を貯蔵または輸送するための収納容器において収容物の鮮度を保持するために設けられる鮮度保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青果物、花卉類、その他の生鮮食品等の収容物を貯蔵または輸送するための収納容器においては、冷凍機ユニット等の循環装置を用いて温度や湿度等を調整しながら内部の空気を循環させることが行われているが、青果物から発生するエチレンガスにより青果物や花卉類の成熟・成長が促進され、収容物の鮮度を低下させてしまう虞がある。
【0003】
そこで、特許文献1のように、コンテナ(収納容器)の底部前方側に設けられる吹出口から吹き出される空気を空気取入口から筐体内に取入れ、筐体内に設けられるエチレンガス除去部を通過させることにより、空気に含まれるエチレンガスの吸着または分解を行えるようにした鮮度保持装置が開示されており、これによれば、コンテナの内部における空気の循環流を利用してコンテナ内のエチレンガスを吸着または分解してエチレンガス濃度を低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-90088号公報(第12頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、コンテナの底部前方に設けられる吹出口の正面に鮮度保持装置の筐体が設けられているため、コンテナの内部における設計上の空気の循環流が阻害されてコンテナ内の空気の循環が不均一になることで収容物周辺に滞留したエチレンガスにさらされた一部の収容物の鮮度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、収納容器に収容される全ての収容物の鮮度を維持することができる鮮度保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の鮮度保持装置は、
天井部、側部、底部に沿って流れる空気の循環流が形成された収納容器に設けられ、収容物の鮮度を保持する鮮度保持装置であって、
前記収納容器における空気の循環流に沿って前記天井部、前記側部、前記底部の少なくともいずれかに設けられる光触媒表層と、該光触媒表層に光を照射する光源と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、光触媒表層は光源から照射される光によって励起され、収容物から発生するエチレンガスを吸着または分解することができるものであり、この光触媒表層が収納容器の内部における空気の循環流に沿って設けられていることから、収納容器の内部を空気と共に循環するエチレンガスを満遍なく吸着または分解することができるため、収納容器の内部におけるエチレンガス濃度を満遍なく低減させて収納容器に収容される全ての収容物の鮮度を維持することができる。
【0008】
前記光触媒表層は、前記収納容器の前記天井部、前記側部、前記底部の少なくともいずれかの長手方向に沿って設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、空気の循環流は収納容器の長手方向に沿って流れるため、収納容器の長手方向に沿って光触媒表層が設けられることにより、空気の循環流を利用して収納容器の内部の広範囲に亘ってエチレンガスを効率よく吸着または分解することができる。
【0009】
前記光触媒表層は、前記収納容器の前記天井部および前記底部に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、収納容器において、空気の循環流が安定して形成される天井部および底部に光触媒表層が設けられることにより、空気の循環流を利用して収納容器の内部のエチレンガスを確実に吸着または分解することができる。
【0010】
前記光触媒表層は、繊維集合体の基材にコーティングされて形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、繊維集合体を基材とすることにより、コーティングされる光触媒表層の表面積を大きくすることができるため、励起された光触媒表層にエチレンガスを吸着させやすくなり、光触媒表層によるエチレンガスの分解能力を高めながら、繊維集合体が通気性を有するため、収納容器の内部における空気の循環流を好適に保つことができる。
【0011】
前記光源は、前記収納容器の前記天井部と前記側部により形成される角の近傍に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、光源が収納容器の天井部と側部により形成される角の近傍に設けられることにより、光源が収納容器の内部における空気の循環流の邪魔になることなく、かつ収納容器に対する収容物の出し入れの邪魔になることなく光触媒表層に光を照射することができる。
【0012】
前記底部は、長手方向に延びる複数のレールを有し、該複数のレール間に前記光触媒表層および前記光源が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、収納容器の底部において長手方向に延びる複数のレール間に光触媒表層および光源が設けられることにより、レール上に載置される収容物から光触媒表層および光源を保護することができるとともに、収納容器の底部における空気の循環が収容物の配置に影響を受けず、レール間に設けられる光触媒表層によりエチレンガスを確実に吸着または分解することができる。
【0013】
前記複数のレール間に設けられる前記光触媒表層は、前記光源とユニット化されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のレール間に設けられる光触媒表層が光源とユニット化されることにより、レール間に対する光触媒表層と光源の設置・撤去を容易に行うことができるため、施工性およびメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における鮮度保持装置が設けられるコンテナを示す斜視図である。
図2】実施例1における鮮度保持装置の設置位置を示す一部断面斜視図である。
図3】実施例1における光触媒表層によりコーティングされた不織布の構造を示す拡大図である。
図4】実施例1における鮮度保持装置の設置位置を示す正面図である。
図5】実施例1におけるコンテナの収容空間における空気の循環流を示す側面視の断面図である。
図6】実施例1におけるコンテナの収容空間における空気の循環流を示す一部断面斜視図である。
図7】実施例2におけるコンテナの収容空間を開口側から見た状態を示す正面図である。
図8】実施例2におけるコンテナの構造を示す側面視の断面図である。
図9】実施例2におけるダクト空間への鮮度保持装置の設置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る鮮度保持装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
実施例1に係る鮮度保持装置につき、図1から図6を参照して説明する。以下、図1の紙面左下側を鮮度保持装置が設けられるコンテナの正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0017】
鮮度保持装置は、例えば青果物、花卉類、その他の生鮮食品等の収容物Cを貯蔵または輸送するためのコンテナ100(収納容器)に設けられる。尚、本実施例においては、収納容器としてユニットクーラ110(図2参照)が取付けられるコンテナ100を例に挙げて説明するが、鮮度保持装置が適用される収納容器は、エンドウォール型の冷凍コンテナや冷凍機ユニットを備える倉庫であってもよい。
【0018】
先ず、鮮度保持装置が設けられるコンテナ100について説明する。図1および図5に示されるように、コンテナ100は、前後方向に長尺を成す直方体に形成され、全面がアルミ合金製またはステンレス製の外板と内板との間に硬質ウレタン等の断熱材が充填されることにより構成されている。また、コンテナ100は、前面に開放する開口部101を備えており、該開口部101は扉102,102により開閉可能となっている。
【0019】
図4および図5に示されるように、前面の扉102,102、扉102,102と対向する後面の対向端部103、上方の天井部104、左右の側部105,105、下方の底部106によりコンテナ100の内部に略直方体の収容空間Sが形成されている。
【0020】
また、コンテナ100の底部106は、底面材106a(内板)と、該底面材106aの上面に設けられ前後方向(長手方向)に延び左右方向に離間して平行に配置されるアルミ合金製の複数のレール120,120,…とから構成されている。レール120は、下端を底面材106aに対して固定され上下方向に延びる基部120aと、該基部120aの上端部から左右方向に延出する板状部120bとから構成され、断面T字状を成している。尚、複数のレール120,120,…の板状部120b,120b,…の上面は、コンテナ100の収容空間Sにおける収容物Cの載置面を構成している。
【0021】
また、レール120の板状部120bの下方側には、コンテナ100の底部106の底面材106aと隣接するレール120とにより区画されて前後方向に延びる正面視矩形のダクト空間Dが形成されている。尚、レール120の基部120aには、左右方向に貫通する貫通孔120c(図5参照)が前後方向に所定間隔置きに形成されており、レール120の基部120aを挟んで左右のダクト空間D同士が連通している。
【0022】
次に、コンテナ100に設けられる鮮度保持装置1について詳しく説明する。図1および図2に示されるように、鮮度保持装置1は、コンテナ100の天井部104および側部105,105の前後方向に沿って貼り付けられる不織布20(繊維集合体)の表面に形成される光触媒表層2と、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角の近傍に設けられる複数の光源3,3,…とから構成されている。
【0023】
図3に示されるように、光触媒表層2は、不織布20を基材とし、その繊維の表面にコーティングされたティオスカイコート(商標登録)の層として形成されている。また、図2および図4に示されるように、表面に光触媒表層2が形成された不織布20は、コンテナ100の収容空間Sを構成する天井部104の天面材104a(内板)から側部105の側面材105a(内板)にかけて正面視L字状に貼り付けられることにより、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角を含む所定の範囲に設けられている。尚、光触媒表層2が表面に形成された不織布20は、天井部104の左右方向全幅に亘って設けられていてもよい。また、光触媒表層の基材は、繊維状のものに限らず、フィルムや板状のものであってもよい。
【0024】
不織布20の表面に形成された光触媒表層2は、酸化チタンを主成分とし、表面に紫外線UV(光)が照射されることにより励起され、該励起部分に収容物C(特に青果物)から発生するエチレンガスが吸着されることにより水と二酸化炭素に分解することができる。尚、光触媒表層2は、エチレンガスの他にも有機物や菌、ウィルス等を分解可能であり、コンテナ100の収容空間Sにおける高い消臭性、抗菌性を確保することもできる。
【0025】
図2および図4に示されるように、光源3は、紫外線UVを放射する蛍光管(いわゆるブラックライト)であり、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角の近傍において側部105の上方側から収容空間S側に延びる一対のブラケット31,31により両端を支持されており、複数の光源3,3,…が前後方向に所定間隔置きに設けられている。また、光源3の角から離れる方向の斜め下方側には、コンテナ100の天井部104および側部105に対向するように配置され、図示しないブラケットにより支持される反射板30が設けられている。尚、光源3は、ユニットクーラ110用の電源とは異なる電源(図示省略)から電力が供給されている。さらに尚、光源は、紫外線を照射可能なものであればLED光源、LD光源、OLED光源等であってもよく、その形状は管状に限らず、ライン状、シール状、テープ状等であってもよい。また、光源3の波長は紫外線に限られず光触媒表層2の反応波長に合わせればよい。
【0026】
図4の矢印に示されるように、コンテナ100の収容空間Sにおいて、反射板30により光源3から照射される紫外線UVが反射されることにより、表面に光触媒表層2が形成された不織布20が設けられるコンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角を含む所定の範囲が光源3による紫外線UVの照射範囲となるように設定されている。尚、光源3による紫外線UVの照明範囲は、例えば反射板30による紫外線UVの反射角度を調整することにより上述した不織布20が設けられる所定の範囲よりも広範囲に設定されてもよい。さらに尚、コンテナ100における光源3の数や設置位置は適宜調整されてよいが、光源3による紫外線UVの照射範囲が後述する空気の循環流に沿って設けられる光触媒表層2を少なくとも一部含むように設定されることが好ましく、例えば天井部104に設けられていてもよい。
【0027】
次に、コンテナ100の収容空間Sにおける空気の循環流について詳しく説明する。尚、本実施例における空気の循環流とは、ユニットクーラ110の運転によりコンテナ100の収容空間Sを循環する空気(冷気)の流れのことである。
【0028】
図5に示されるように、コンテナ100の天井部104には、後方側に天吊型のユニットクーラ110が取付けられている。ユニットクーラ110は、蒸発器112と、該蒸発器112の前方側に配置される送風ファン113と、蒸発器112および送風ファン113を収容する筐体114とから主に構成されている。蒸発器112は、コンテナ100の対向端部103に挿通される冷媒配管111により室外機ユニット(図示省略)と接続され、冷凍サイクルを構成している。
【0029】
図5および図6において矢印で示すように、コンテナ100の収容空間Sの空気は、送風ファン113の運転によりユニットクーラ110を構成する筐体114の後方側に形成される吸込口114bから吸い込まれ、蒸発器112を通過する際に熱交換が行われることにより冷却された後、筐体114の前方側に形成される吹出口114aから吹き出される。
【0030】
ユニットクーラ110から前方側に吹き出された空気は、コンテナ100の天井部104に沿って収容物Cの上方を移動した後、前方側において閉状態の扉102,102に沿って下方側に移動し、底部106に設けられるレール120の前端側から前述したダクト空間Dの内部に吸い込まれ、底部106に沿って後方側に移動する。
【0031】
底部106に沿ってダクト空間Dを後方側に移動した空気は、レール120の後端側から吹き出され、対向端部103に沿って上方側に移動し、ユニットクーラ110の後方側の吸込口114bから再び吸い込まれることにより、収容空間Sの長手方向に沿って略区形状の流れを形成するメインの空気の循環流が形成される。
【0032】
また、コンテナ100の底部106に沿ってダクト空間Dを移動する空気の一部は、レール120の基部120aに形成される貫通孔120cを通って左右方向に移動する。
【0033】
また、収容物Cの周囲における下方側の空気は、前後左右に配置される収容物Cの間を通って下方側に移動し、隣接するレール120の板状部120b間に形成され前後方向に延びる隙間G(図4参照)から吸い込まれ、コンテナ100の底部106に沿ってダクト空間Dを移動する空気の流れに合流し、収容物Cの周囲における上方側の空気は、前後左右に配置される収容物Cの間を通って上方側に移動し、上述したコンテナ100の天井部104に沿って収容物Cの上方を移動する空気の循環流に合流する。
【0034】
さらに、図6に示されるように、ユニットクーラ110から前方側に吹き出された空気の一部は、側部105に沿って収容物Cの側方を循環し、その一部が扉102,102(説明の都合上、図示を省略する)に沿って収容物Cの前面側に回り込み、前述した天井部104に沿って収容物Cの上方から扉102,102に沿って下方側に移動する空気の循環流に合流する。尚、図示しないが、側部105に沿って収容物Cの側方を循環する空気の一部は、前後に配置される収容物Cの間に移動し、上述した収容物Cの周囲における空気の流れと共に上方側または下方側に移動することにより、コンテナ100の底部106に沿ってダクト空間Dを移動する空気の流れまたは天井部104に沿って収容物Cの上方を移動する空気の循環流に合流する。
【0035】
このように、コンテナ100の収容空間Sの長手方向に沿って形成される空気の循環流により、収容物Cの周辺の空気が満遍なく循環されている。尚、コンテナ100には、図示しない換気口が設けられており、収容空間Sの空気を適宜給排気できるようになっている。
【0036】
これによれば、上述したように、コンテナ100の収容空間Sにおける空気の循環流に沿って天井部104および側部105,105に鮮度保持装置1を構成する不織布20が貼り付けられ、該不織布20の表面に形成される光触媒表層2に紫外線UVを照射する光源3が設けられることにより、光触媒表層2は光源3から照射される紫外線UVによって励起され、収容物Cから発生するエチレンガスを吸着または分解することができ、この光触媒表層2が収容空間Sにおける空気の循環流に沿って設けられていることから、収容空間Sを空気と共に循環するエチレンガスを満遍なく吸着または分解することができるため、収容空間Sにおけるエチレンガス濃度を満遍なく低減させて収容空間Sに収容される全ての収容物の鮮度を維持することができる。
【0037】
また、空気の循環流は収容空間Sの長手方向に沿って流れるため、光触媒表層2が表面に形成された不織布20がコンテナ100の天井部104および側部105,105の長手方向に沿って設けられることにより、空気の循環流を利用して収容空間Sの広範囲に亘ってエチレンガスを効率よく吸着または分解することができる。
【0038】
また、光触媒表層2は、繊維集合体である不織布20を基材とすることにより、コーティングされる光触媒表層2の表面積を大きくすることができるため、光源3から照射される紫外線UVによって励起された光触媒表層2にエチレンガスを吸着させやすくなり、光触媒表層2によるエチレンガスの分解能力を高めながら、不織布20が通気性を有するため、収容空間Sにおける空気の循環流を好適に保つことができる。さらに、平板状の基材にコーティングされるものと比べて表面積を大きくすることができるのみならず、光触媒表層2の剥がれを抑えることができ、光触媒表層2の分解能力が長期間維持されやすい。
【0039】
また、光触媒表層2が表面に形成された不織布20は、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角を含む所定の範囲に設けられることにより、コンテナ100の収容空間Sに収容される収容物Cの配置や数量に係らず、光源3による紫外線UVの照射を受けやすく、かつ収容空間Sにおいて空気の循環流が安定して形成される位置でエチレンガスの吸着および分解を行うことができるため、光触媒表層2により収容空間Sを空気と共に循環するエチレンガスを確実に吸着または分解することができる。
【0040】
また、光源3は、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角の近傍に設けられることにより、収容空間Sにおける空気の循環流の邪魔になることなく、かつコンテナ100に対する収容物Cの出し入れの邪魔になることなく不織布20の表面に形成される光触媒表層2に光を照射することができる。さらに、鮮度保持装置1を構成する光触媒表層2が表面に形成された不織布20および光源3は、コンテナ100の天井部104と側部105により収容空間Sの上方側に形成される角の近傍に設けられることにより、収容物Cの接触による破損を防ぐことができるとともに、収容空間Sにおける設計上の収容物Cの載置面および積荷上限を変更することなく収容物Cを収容することができる。
【0041】
また、本発明の鮮度保持装置1は、コンテナ100の収容空間Sにおける設計上の空気の循環流を利用して、光源3から紫外線UVを照射される光触媒表層2によりエチレンガスを分解するものであるため、コンテナ100に取付けられるユニットクーラ110等の冷凍機ユニットの循環装置の送風性能を高める等の変更の必要がない。さらに、コンテナ100の収容空間Sからエチレンガスを排気するための空気の給排気を行う必要がないため、収容空間Sにおける温度変化を抑えることができ、収容空間Sに収容される収容物Cの鮮度を維持しやすい。
【実施例2】
【0042】
次に、実施例2に係る鮮度保持装置につき、図7から図9を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図7および図8に示されるように、実施例2におけるコンテナ200(収納容器)においては、コンテナ200の底部106の底面材106aに設けられる複数のレール120,120,…の前後両端部に左右方向に延びる通気カバー230がそれぞれ取付けられている。通気カバー230は、樹脂製または金属製で網状に形成され、通気性が確保されている。
【0044】
図8および図9に示されるように、ダクト空間Dには、前後方向に亘って延びる鮮度保持装置201が設けられている。鮮度保持装置201は、ダクト空間Dに挿入されるホルダ204と、該ホルダ204の左側内面に取付けられる綿体220(繊維集合体)の表面に形成される光触媒表層202と、該光触媒表層202と対向してホルダ204の右側内面に取付けられる光源203とから構成されることにより、ユニット化されている。尚、綿体220は、金属繊維、樹脂繊維、植物繊維等を綿状にし、通気性を有するものが好ましい。
【0045】
図8および図9に示されるように、ホルダ204は、樹脂製または金属製で上方側に開放する断面略C字状に形成されており、ホルダ204の内部が隣接するレール120の板状部120b間に形成される隙間Gと連通している。尚、図9においては、一のホルダ204を一部引き出した状態を図示している。
【0046】
光触媒表層202は、ホルダ204の長手方向に亘って延びるアルミ合金製またはステンレス製の綿体220を基材とし、その繊維の表面にコーティングされたティオスカイコート(商標登録)の層として形成されている。尚、図示しないが光触媒表層202によりコーティングされた綿体220の構造は、図3に示される光触媒表層2によりコーティングされた不織布20の構造と略同一である。
【0047】
光源203は、ホルダ204の長手方向に亘って延び紫外線UVを放射するLEDシールであり、光源203による紫外線UVの照射範囲は、少なくともホルダ204に収容され光触媒表層202が形成される綿体220の長手方向に亘っており、ホルダ204の内部、言い換えればダクト空間D内に設定されている。
【0048】
これによれば、コンテナ200の底部106に形成されるダクト空間Dにホルダ204によりユニット化された光触媒表層202が表面に形成される綿体220および光源203が設けられることにより、レール120の板状部120bの上面に載置される収容物Cから光触媒表層202が表面に形成される綿体220および光源203を保護して破損を防ぐことができるとともに、コンテナ200の底部106における空気の循環が収容物Cの配置に影響を受けず、光触媒表層202によりエチレンガスを確実に吸着または分解することができる。
【0049】
また、図8に示されるように、収容物Cの周囲における下方側の空気は、前後左右に配置される収容物Cの間を通って下方側に移動し、隣接するレール120の板状部120b間に形成され前後方向に延びる隙間G(図9参照)から吸い込まれ、ダクト空間D(ホルダ204の内部)に沿って移動する空気の流れに合流する。
【0050】
このように、コンテナ200の天井部104および側部105,105に設けられる鮮度保持装置1(光触媒表層2が表面に形成された不織布20および光源3)により、天井部104および側部105,105に沿って移動する空気の循環流に対してエチレンガスの吸着または分解を行うとともに、コンテナ200の底部106に形成されるダクト空間Dに設けられる鮮度保持装置201(光触媒表層202が表面に形成される綿体220、光源203およびホルダ204)により、ダクト空間D(ホルダ204の内部)に沿って移動する空気の循環流に対してエチレンガスの吸着または分解を行うことができるため、収容空間Sにおける空気の循環流を利用してエチレンガスをより効率よく吸着または分解し、エチレンガス濃度を低減することができる。
【0051】
また、光触媒表層202は、繊維集合体である綿体220を基材とすることにより、コーティングされる光触媒表層202の表面積を大きくすることができ、光源203から照射される紫外線UVによって励起された光触媒表層202にエチレンガスを吸着させやすくなり、光触媒表層202によるエチレンガスの分解能力を高めながら、綿体220が通気性を有するため、ダクト空間D(ホルダ204の内部)を流れる空気の循環流に対して抵抗になり難く、収容空間Sにおける空気の循環流を好適に保つことができる。
【0052】
また、図9に示されるように、ダクト空間Dに設けられる鮮度保持装置201は、ホルダ204により光触媒表層202が表面に形成される綿体220と光源203とがユニット化されることにより、図9の白矢印に示すようにホルダ204を移動させてダクト空間Dに対する鮮度保持装置201の設置・撤去を容易に行うことができるため、施工性およびメンテナンス性を高めることができる。尚、鮮度保持装置201は、前後方向に複数に分割されるものであってもよい。
【0053】
また、複数のレール120,120,…の前後両端部に通気カバー230が取付けられることにより、通気カバー230を通してダクト空間D(ホルダ204の内部)を流れる空気の循環流を好適に保ちながら、レール120の前後両端部からの鮮度保持装置201の抜出しを防ぐことができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、鮮度保持装置1,201が設けられるコンテナ100,200は、ユニットクーラ110から天井部104に沿って空気が吹き出されることにより、収容空間Sの長手方向に沿って空気を循環させる循環方式(いわゆるトップフロー方式)について説明したが、これに限らず、コンテナ100,200の収容空間Sにおける空気の循環方式は、収容空間Sの空気をムラなく循環させることができるものであれば自由に構成されてよく、例えばコンテナ100,200の対向端部103の下端部に吹出口を設けて底部106に沿って空気が吹き出されることにより、収容空間Sの長手方向に沿って空気を循環させるボトムフロー方式としてもよい。さらに、クールテック・コンテナのように収容空間Sの短手方向に沿って空気を循環させるものであってもよい。
【0056】
また、前記実施例1では、コンテナ100の天井部104、側部105,105に対して鮮度保持装置1(光触媒表層2が表面に形成された不織布20および光源3)が設けられ、前記実施例2では、コンテナ200の天井部104、側部105,105に対して鮮度保持装置1(光触媒表層2が表面に形成された不織布20および光源3)が設けられ、底部106(ダクト空間D)に対して鮮度保持装置201(光触媒表層202が表面に形成される綿体220、光源203およびホルダ204)が設けられる態様について説明したが、鮮度保持装置は、コンテナの収容空間における空気の循環に沿って扉、対向端部、天井部、側部、底部の内いずれか1面に設けられるものであればよい。尚、鮮度保持装置が設けられる収納容器としては、底部に長手方向に延びる複数のレールを有さないコンテナや倉庫等であってもよい。
【0057】
また、光触媒表層2は、コンテナ100,200の天井部104の天面材104aまたは側部105,105の側面材105a,105aを基材としてもよい。さらに、光触媒表層202は、コンテナ200の底部106の底面材106aまたはレール120の基部120aおよび板状部120bの下面側を基材としてもよい。
【0058】
また、鮮度保持装置201は、ホルダ204を備えず、光触媒表層202が表面に形成される綿体220により光源203の周囲を覆うことにより一体にユニット化されてもよい。
【0059】
また、コンテナの収容空間には、青果物、花卉類、その他の生鮮食品等に限らず、光触媒表層による高い消臭性、抗菌性を利用して例えば医薬品、衣類、雑貨等が収容物として収容されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,201 鮮度保持装置
2,202 光触媒表層
3,203 光源
20 不織布(繊維集合体)
30 反射板
100,200 コンテナ(収納容器)
101 開口部
102 扉
103 対向端部
104 天井部
104a 天面材
105 側部
105a 側面材
106 底部
106a 底面材
110 ユニットクーラ
120 レール
120a 基部
120b 板状部
120c 貫通孔
204 ホルダ
220 綿体(繊維集合体)
230 通気カバー
C 収容物
D ダクト空間
G 隙間
S 収容空間
UV 紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9