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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】血小板産生促進剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230919BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230919BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20230919BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230919BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C12Q1/68
C12N5/078
C12N15/09 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017563889
(86)(22)【出願日】2017-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2017003169
(87)【国際公開番号】W WO2017131228
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2016016676
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、再生医療実用化研究事業「同種血小板輸血製剤の上市に向けた開発」委託研究開発、再生医療実現拠点ネットワークプログラム・再生医療の実現化ハイウェイ「iPS細胞技術を基盤とする血小板製剤の開発と臨床試験」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515062289
【氏名又は名称】株式会社メガカリオン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】江藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 英哉
(72)【発明者】
【氏名】太田 章
(72)【発明者】
【氏名】伊東 幸敬
(72)【発明者】
【氏名】間 靖子
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】牧野 晃久
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168255(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/078453(WO,A1)
【文献】特表2007-521820(JP,A)
【文献】Cell,2013年,Vol.154,p.1370-1379
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2015年,Vol.5,p.9592
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPlus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
REGISTRY/CAPlus(STN)
UniProt/GeneSeq
Genebank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板産生促進剤の候補をスクリーニングする方法であって、
候補物質と巨核球細胞又はその前駆細胞とを接触させる工程と、
成熟巨核球細胞におけるTUBB1の発現を、GATA1、FOG1及び/又はNFE2の発現と比較して有意に増大する候補物質を血小板産生促進剤の候補として選定する工程を含む、方法。
【請求項2】
TUBB1の発現量がTUBB1の遺伝子座に挿入されたレポーター遺伝子の発現量として決定される、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板産生促進剤の新規スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液関連疾患の治療や外科的な治療には血球系細胞が必要とされる。血球系細胞の中でも、血液凝固(止血)のために必須の細胞である血小板、血小板前駆体(proplatelet)、さらには血小板を産生する細胞である巨核球細胞は特にニーズの高い細胞である。とりわけ血小板は、白血病治療、骨髄移植、抗癌治療などにおける需要が多く、安定供給の必要性は高い。
【0003】
これまでにin vitroでの血小板産生方法として、各種幹細胞を分化させて巨核球細胞を得て、これを培養して血小板を放出させる方法が開発されている。近年、iPS細胞の樹立により、再生医療における細胞療法の重要なソースとして多能性幹細胞の有用性が一層注目を浴びるようになってきた。これまでに、例えば、Takayamaらが、ヒトES細胞から巨核球細胞及び血小板を分化誘導することに成功している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Takayama N. et al., Blood, 111, pp.5298-5306, 2008
【文献】Ng et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 2014, vol.111, no. 16, pp. 5884-5889
【文献】Nishimura et al. JCB, 2015, Vol. 209,pp. 327-328
【文献】Hirata et al., J Clin Invest., 123(9): pp. 3802-3814
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来より、血小板増殖因子としてトロンボポエチン(TPO)が知られている。そのため、本発明以前は血小板産生促進剤の候補物質として、TPOの受容体であるc-MPL依存性の薬物が広く検討されてきた。しかしながら、c-MPLリガンドであるヒト巨核球増殖分化因子(PEG-rHuMGDF)を投与された患者の体内では、中和抗体が出現し、血小板数が低下することがある。また、近年では、TPOは巨核球の増多や巨核球成熟に促進的に作用するものの、血小板放出に対する直接的な影響はないとの報告がなされている(非特許文献2及び3)。
【0006】
更に、巨核球に対する研究の多くはマウスで行われていたが、先天性無巨核球性血小板減少症(CAMT)のように、ヒトとマウスでは異なる挙動が示されることもある(非特許文献4)。ヒト細胞を用いる系が利用可能であったとしても、その細胞の種類によっては安定性、安全性及び倫理的の観点から問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
巨核球の成熟因子として、GATA1、FOG1、NFE2及びTUBB1が知られている。本発明者らは、これらのマーカー遺伝子のうち、TUBB1が血小板産生促進剤の探索における指標として優れていることを見出し、TUBB1の発現量に応じた蛍光を発するヒトiPS細胞由来のレポーター細胞株を作成して本願発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本願発明は以下の発明を包含する:
(1)血小板産生促進剤をスクリーニングする方法であって、
TUBB1の発現を有意に増大する候補物質を血小板産生促進剤として選定する工程を含む、方法。
(2)前記選定工程の前に、候補物質と巨核球細胞又はその前駆細胞とを接触させる工程を含む、(1)に記載の方法。
(3)TUBB1の発現量がTUBB1の遺伝子座に挿入されたレポーター遺伝子の発現量として決定される、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)TUBB1の遺伝子座にレポーター遺伝子が挿入されている、巨核球細胞又はその前駆細胞。
(5)前記巨核球細胞が不死化巨核球細胞である、(4)に記載の細胞。
(6)前記巨核球細胞が多能性幹細胞に由来する、(4)又は(5)に記載の細胞。
(7)前記多能性幹細胞がiPS細胞である、(6)に記載の細胞。
(8)前記細胞がヒト由来である、(5)~(7)のいずれかに記載の細胞。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスクリーニング方法や細胞株によれば、従来評価することが困難であった巨核球成熟や血小板産生に影響を与える薬剤や遺伝子(siRNA)を、網羅的に且つ簡便に評価することが可能になる。また、GATA1、FOG1、NFE2等の他の巨核球成熟因子の発現量について検討することなく、TUBB1のみに依拠しても効率よく血小板産生促進剤をスクリーニングすることができる点で本発明は従来技術より遥かに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、テンプレートベクターであるpBlueScriptII SK+ (TUBB1-VENUS)の構成図である。
図1B図1Bは、ガイドベクターであるpHL-H1-ccdB-mEF1a-RiHの構成図である。ガイドベクターに挿入されたターゲット配列とその近傍の配列を配列番号1として示す。
図2A図2Aは、レポーター不死化巨核球株(MKCL#12-23 cre2)におけるCD42bおよびCD41aの発現細胞分布をフローサイトメーターで測定した結果を示す。
図2B図2Bは、ドキシサイクリンを含まない分化培地で培養したことにより血小板産生が誘導された分画におけるCD42bおよびCD41aの発現細胞分布をフローサイトメーターで測定した結果を示す。
図3A図3Aは、VENUS high群、VENUS low群、SR1+rocki(Y-27632)群及びplain群について、qPCRにてTUBB1の発現量を測定した結果を示す。縦軸はmRNA発現量比であり、plain群の値を1とした。
図3B図3Bは、VENUS high群、VENUS low群、SR1+rocki(Y-27632)群及びplain群について、qPCRにてVENUSの発現量を測定した結果を示す。縦軸はVENUSのmRNA発現量比であり、plain群の値を1とした。
図4図4は、図3に記載のTUBB1の発現量とVENUSの発現量との相関を示す図である。
図5図5は、MKCL12-23 cre2に対し、SR1もしくはDMSO(ネガティブコントロール)の条件において、TUBB1、GATA1、FOG1及びNFE2の各遺伝子発現量の変化量を表す。
図6A図6Aは、所定の分化培地にSR1もしくはDMSO(ネガティブコントロール)を加えた培地中で培養した不死化巨核球株の上清を抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した結果を示す。縦軸はVENUSの蛍光強度、横軸は培養日数、NCはネガティブコントロールを意味する。
図6B図6Bは、図6Aの結果を単位体積あたりに含まれる血小板数を測定した実数を示す。縦軸は単位体積あたりに含まれる血小板数、横軸は培養日数、NCはネガティブコントロールを意味する。
図7図7は、図6Aにおける条件で抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した結果を示す。縦軸はCD42b-PEの蛍光強度、横軸は培養日数、NCはネガティブコントロールを意味する。SR+はSR1で処理した細胞群を、SR1-はDMSO処理群を表す。
図8図8は、5425種類の化合物をそれぞれ含む分化培地中で培養した不死化巨核球株におけるVENUSの蛍光強度をArray scan VTI (Thermo Scientific)にて測定し、活性(%)毎に分類した結果を示す。各活性は、陽性コントール(0.75 uM SR1群)での蛍光強度(100%とする)及び陰性コントロール(0.1% DMSO群)での蛍光強度(0%とする)により、各化合物における蛍光強度の値を補正した値をヒストグラム表示した。
図9図9は、2次スクリーニングで陽性と判断された薬剤28種の化合物のうち、SR1に匹敵する血小板産生能を示した化合物の蛍光強度(血小板数)を、陽性コントール(0.75 uM SR1群)での血小板数(100%とする)及び陰性コントロール(0.1% DMSO群)での血小板数(0%とする)により補正した図である。
図10図10は、フィーダー細胞を用いない条件下で、所定の濃度の SR1、C59又はTCS-359を含む培地中で培養したiPSから誘導した巨核球細胞(非不死化巨核球)における血小板産生量を比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(血小板産生促進剤のスクリーニング方法)
本発明の血小板産生促進剤のスクリーニング方法は、TUBB1の発現を有意に増大する候補物質を血小板産生促進剤として選定する工程を含む。本明細書で使用する場合、「血小板産生促進剤」とは、広く、血小板の産生を促進し、それにより単位時間当たりに産生される血小板量を増大する薬剤を意味する。このような薬剤の候補物質は、当業者にとって入手可能な既知の化合物ライブラリーから選択することができる。また、候補物質は、化合物又はその塩若しくは誘導体に限定されず、巨核球細胞又はその前駆細胞において、TUBB1発現の増大をもたらすものであれば、抗体及びその抗体断片、アンチセンスオリヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉(以下「RNAi」という。)をひき起す分子等であってもよい。
【0012】
微小管はα-チューブリンとβ-チューブリンのヘテロ二量体で構成されている。β-チューブリンは、ヒトの場合、7つのアイソタイプが存在する。TUBB1は、βチューブリンタンパク質ファミリーのメンバーのうち、I型アイソタイプであるβ1-チューブリンをコードする遺伝子である。TUBB1は、GATA1、FOG1、NFE2と同様に、巨核球・血小板に特異的に発現する遺伝子であるため、巨核球の成熟因子として知られている。本発明においては、TUBB1の発現を有意に増大する候補物質が血小板産生促進剤として評価される。他の巨核球成熟因子も指標として併用することも考えられるが、血小板産生促進剤をスクリーニングするための指標としてTUBB1のみを使用することにより、効率よく血小板産生促進剤をスクリーニングすることが可能になる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「発現の増大」又は「血小板産生促進」とは、コントロールと比較して5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は100%以上増大している状態を意味し、当業者により適宜判断される。ポジティブコントロールとの比較で顕著にTUBB1の発現を増大させる物質は血小板増多作用が高いものと評価され得る。ポジティブコントロールとしては、既知の血小板産生促進剤、例えばAhRアンタゴニスト、好ましくは、StemRegenin1(SR1)(Selleckchem)などを使用することができる。
【0014】
TUBB1の発現の変化は、候補物質と巨核球細胞又はその前駆細胞とを接触させることにより確認することができる。血小板産生促進剤と細胞との接触は培地中で行うことができる。TUBB1の発現量を決定する代わりに、TUBB1の遺伝子座に挿入されたレポーター遺伝子の発現量を評価してもよい。レポーター遺伝子として、VENUS等の蛍光タンパク質をコードする遺伝子を使用することができる。
【0015】
レポーター遺伝子の挿入は、ゲノム編集技術、例えばCRISPR/Cas9システム(Cong, L. et al., 2013, Science, 339, 819-823.)、TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)(Cermak T, et al., 2011, Nucleic Acids Res 39: e82)、ZFN(Zinc Finger Nuclease)(Kim, Y.-G., et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:1156-1160.)等の当業者にとって公知の技術を用いて行うことができる。
【0016】
血小板産生促進剤の選定工程は繰り返し行うことができる。例えば、スクリーニングにかけられる化合物等のライブラリーの数や、最終的に必要な候補物質の数に応じて、1次スクリーニングの後に2次スクリーニング又は更に追加のスクリーニングを行ってもよい。また、その際のカットオフ値は当業者であれば設定することができる。
【0017】
(レポーター細胞株)
本発明のレポーター細胞株は、TUBB1の遺伝子座にレポーター遺伝子が挿入された巨核球細胞又はその前駆細胞である。巨核球細胞は、ヒト由来の不死化巨核球細胞であることが好ましい。
【0018】
本明細書において「巨核球細胞」とは、生体内においては骨髄中に存在する最大の細胞であり、血小板を放出することを特徴とする。また、細胞表面マーカーCD41a、CD42a、及びCD42b陽性で特徴づけられ、他に、CD9、CD61、CD62p、CD42c、CD42d、CD49f、CD51、CD110、CD123、CD131、及びCD203cからなる群より選択されるマーカーをさらに発現していることもある。「巨核球細胞」は、多核化(多倍体化)すると、通常の細胞の16~32倍のゲノムを有するが、本明細書において、単に「巨核球細胞」という場合、上記の特徴を備えている限り、多核化した巨核球細胞と多核化前の巨核球細胞の双方を含む。「多核化前の巨核球細胞」は、「未熟な巨核球細胞」、又は「増殖期の巨核球細胞」とも同義である。
【0019】
不死化巨核球細胞は、公知の様々な方法で得ることができる。巨核球細胞の製造方法の非限定的な例として、国際公開第2011/034073号に記載された方法が挙げられる。同方法では、「巨核球細胞より未分化な細胞」において、癌遺伝子とポリコーム遺伝子を強制発現させることにより、無限に増殖する不死化巨核球細胞株を得ることができる。また、国際公開第2012/157586号に記載された方法に従って、「巨核球細胞より未分化な細胞」、すなわち巨核球前駆細胞(本件明細書においては単に「前駆細胞」ともいう)において、アポトーシス抑制遺伝子を強制発現させることによっても、不死化巨核球細胞を得ることができる。これらの不死化巨核球細胞は、遺伝子の強制発現を解除することにより、多核化が進み、血小板を放出するようになる。
【0020】
巨核球細胞を得るために、上記の文献に記載された方法を組み合わせてもよい。その場合、癌遺伝子、ポリコーム遺伝子、及びアポトーシス抑制遺伝子の強制発現は、同時に行ってもよく、順次行ってもよい。例えば、癌遺伝子とポリコーム遺伝子を強制発現させ、当該強制発現を抑制し、次にアポトーシス抑制遺伝子を強制発現させ、当該強制発現を抑制して、多核化巨核球細胞を得てもよい。また、癌遺伝子とポリコーム遺伝子とアポトーシス抑制遺伝子を同時に強制発現させ、当該強制発現を同時に抑制して、多核化巨核球細胞を得ることもできる。まず、癌遺伝子とポリコーム遺伝子を強制発現させ、続いてアポトーシス抑制遺伝子を強制発現させ、当該強制発現を同時に抑制して、多核化巨核球細胞を得ることもできる。
【0021】
本明細書において「巨核球細胞より未分化な細胞」又は「巨核球前駆細胞」とは、巨核球への分化能を有する細胞であって、造血幹細胞系から巨核球細胞に至る様々な分化段階の細胞を意味する。巨核球より未分化な細胞の非限定的な例としては、造血幹細胞、造血前駆細胞、CD34陽性細胞、巨核球・赤芽球系前駆細胞(MEP)が挙げられる。これらの細胞は、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血から単離して得ることもできるし、さらにより未分化な細胞であるES細胞、iPS細胞等の多能性幹細胞から分化誘導して得ることもできる。
【0022】
本明細書において「癌遺伝子」とは、生体内において細胞の癌化を誘導する遺伝子のことをいい、例えば、MYCファミリー遺伝子(例えば、c-MYC、N-MYC、L-MYC)、SRCファミリー遺伝子、RASファミリー遺伝子、RAFファミリー遺伝子、c-Kit、PDGFR、Ablなどのプロテインキナーゼファミリー遺伝子が挙げられる。
【0023】
本明細書において「ポリコーム遺伝子」とは、CDKN2a(INK4a/ARF)遺伝子を負に制御し、細胞老化を回避するために機能する遺伝子として知られている(小倉ら, 再生医療 vol.6, No.4, pp26-32;Jseus et al., Jseus et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology vol.7, pp667-677, 2006;Proc. Natl. Acad. Sci. USA vol.100, pp211-216, 2003)。ポリコーム遺伝子の非限定的な例として、BMI1、Mel18、Ring1a/b、Phc1/2/3、Cbx2/4/6/7/8、Ezh2、Eed、Suz12、HADC、Dnmt1/3a/3bが挙げられる。
【0024】
本明細書において「アポトーシス抑制遺伝子」とは、細胞のアポトーシスを抑制する機能を有する遺伝子をいい、例えば、BCL2遺伝子、BCL-xL遺伝子、Survivin遺伝子、MCL1遺伝子などが挙げられる。
【0025】
遺伝子の強制発現及び強制発現の解除は、国際公開第2011/034073号、国際公開第2012/157586号、国際公開第2014/123242又はNakamura S et al, Cell Stem Cell. 14, 535-548, 2014に記載された方法、その他の公知の方法又はそれに準ずる方法で行うことができる。
【0026】
本発明のいずれの態様においても、巨核球細胞の培養条件は、通常の条件とすることができる。例えば、温度は約35℃~約42℃、約36℃~約40℃、又は約37℃~約39℃とすることができ、5%CO2及び/又は20%O2としてもよい。静置培養であっても、振とう培養であってもよい。振とう培養の場合の振とう速度も特に限定されず、例えば、10rpm~200rpm、30rpm~150rpm等とすることができる。
【0027】
本発明に係る血小板の製造方法では、上述のように巨核球細胞を培養することにより、巨核球細胞が成熟し、その細胞質から血小板が産生される。ここで、巨核球細胞が成熟するとは、巨核球細胞が多核化し、血小板を放出できるようになることをいう。
【0028】
ここで血小板の機能は、公知の方法により測定し評価することができる。例えば、活性化した血小板膜上に存在する活性化マーカーIntegrin αIIBβ3(glycoprotein IIb/IIIa; CD41aとCD61の複合体)に特異的に結合する抗体であるPAC-1抗体を用いて、活性化した血小板量を測定することができる。また、同様に血小板の活性化マーカーであるCD62b(P-selectin)を抗体で検出して活性化した血小板量を測定してもよい。血小板量の測定は、例えば、フローサイトメトリーを用い、活性化非依存性の血小板マーカーCD61又はCD41に対する抗体でゲーティングを行い、その後、血小板に対するPAC-1抗体や抗CD62P抗体の結合を検出することにより行うことができる。これらの工程は、アデノシン二リン酸(ADP)存在下で行ってもよい。
【0029】
また、血小板の機能の評価は、ADP存在下でフィブリノーゲンと結合するか否かを見て行うこともできる。血小板がフィブリノーゲンの結合することにより、血栓形成の初期に必要なインテグリンの活性化が生じる。さらに、血小板の機能の評価は、国際公開第2011/034073号の図6に示されるように、in vivoでの血栓形成能を可視化して観察する方法で行うこともできる。
【0030】
巨核球細胞を培養する際の培地は特に限定されず、巨核球細胞から血小板が産生されるのに好適な公知の培地やそれに準ずる培地を適宜使用することができる。例えば、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えばIMDM培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)及びこれらの混合培地が挙げられる。
【0031】
培地には、血清又は血漿が含有されていてもよいし、あるいは無血清でもよい。必要に応じて、培地は、例えば、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、モノチオグリセロール(MTG)、脂質、アミノ酸(例えばL-グルタミン)、アスコルビン酸、ヘパリン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどの1つ以上の物質も含有し得る。サイトカインとは、血球系分化を促進するタンパク質であり、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、トロンボポエチン(TPO)、各種TPO様作用物質、Stem Cell Factor(SCF)、ITS(インスリン-トランスフェリン-セレナイト)サプリメント、ADAM阻害剤、などが例示される。本発明において好ましい培地は、血清、インスリン、トランスフェリン、セリン、チオールグリセロール、アスコルビン酸、TPOを含むIMDM培地である。さらにSCFを含んでいてもよく、さらにヘパリンを含んでいてもよい。TPOとSCFは併用することが好ましい。それぞれの濃度も特に限定されないが、例えば、TPOは、約10ng/mL~約200ng/mL、又は約50ng/mL~約100ng/mLとすることができ、SCFは、約10ng/mL~約200ng/mL、又は約50ng/mLとすることができ、ヘパリンは、約10U/mL~約100U/mL、又は約25U/mLとすることができる。ホルボールエステル(例えば、ホルボール-12-ミリスタート-13-アセタート;PMA)を加えてもよい。
【0032】
血清を用いる場合はヒト血清が望ましい。また、血清に代えて、ヒト血漿等を用いてもよい。本発明に係る方法によれば、これらの成分を用いても、血清を用いたときと同等の血小板が得られうる。
【0033】
遺伝子の強制発現及びその解除のためにTet-on(登録商標)又はTet-off(登録商標)システムのような薬剤応答性の遺伝子発現誘導システムを用いる場合、強制発現する工程においては、対応する薬剤、例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリンを培地に含有させ、これらを培地から除くことによって強制発現を抑制してもよい。
【0034】
本発明における巨核球細胞の培養工程は、フィーダー細胞なしで実施することができる。後述する実施例に示されるとおり、本発明に係る方法によれば、フィーダー細胞なしで培養しても、機能的な血小板を得ることができる。
【0035】
本明細書において、「フィーダー細胞」とは、増殖又は分化させようとしている細胞(目的細胞)の培養に必要な環境を整えるために、目的細胞と共培養される細胞をいう。フィーダー細胞は、目的細胞と識別できる細胞である限り、同種由来の細胞も異種由来の細胞も含む。フィーダー細胞は、抗生物質やガンマ線により増殖しないよう処理した細胞であっても、処理されていない細胞であってもよい。
【0036】
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
【実施例1】
【0037】
iPS細胞
不死化巨核球株(MKCL SeV2)は、Nakamura, et al. Cell Stem Cell,2014に記載の方法に従い、iPS細胞(SeV2: neonate human fibroblastへWO2010/134526の方法に従って、センダイウィルスベクターによりc-MYC, OCT3/4, SOX2およびKLF4を導入することによって作製した細胞)にBcl-xL、c?MycおよびBmi1を導入することで調製した。Okita K, et al, Stem Cells. 31(3):458-466, 2013に記載の方法に従って、不死化巨核球株(MKCL SeV2)からiPS細胞(MK iPS #12)を製造した。得られたiPS細胞(MK iPS #12)は、Nakagawa M, et al, Sci Rep. 8;4:3594, 2014に記載の方法に従って、StemFit(登録商標)AK03(Ajinomoto)及びlaminin 511(iMatrix 511(Nippi))を用いて培養した。
【0038】
相同組換え
培養したiPS細胞(MK iPS #12)をTrypLE(登録商標) Select にて剥離し、0.8 x106個の細胞を1.7μg template vector(図1A)、1.7μg guide vector(図1B)及び1.7μg cas9 vector(pHL-EF1a-SphcCas9-iC-A、京都大学iPS細胞研究所 堀田博士より受領)と混和した。Human Stem Cell Nucleofector(登録商標) Kit 2(Lonza)及びNucleofectorを用いてelectroporationにより細胞にベクターを導入した。electroporation後、StemFit(登録商標) AK03で懸濁、laminin 511をコーティングした10cm dishに播種し、37℃5%CO2 条件下で培養した。3日後、puromycineを1ng/mlとなるように培地に添加し培養を継続した。7日後、形成したコロニーをピックアップし、得られた各コロニーからQIAamp DNA Mini Kit (QIAGEN)を用いてDNAを抽出し、プライマー(TUBB1 insert check Fw及びRv、5-1 insert check Fw及び5-1.2 insert check Rv、ならびに3-1.2 insert check Fw及び3-2 insert check Rv、配列は表1に示す)を用いてGenotyping PCRにより相同組換えを確認した。ホモで相同組換えができたiPS細胞株を拡大培養し、MK iPS#12-23として樹立した。
【0039】
【表1】
【0040】
続いて、得られたMK iPS#12-23を5μg cre 発現ベクター(pCXW-Cre-Puro、京都大学iPS細胞研究所 堀田博士より受領)と混和し、Human Stem Cell Nucleofector(登録商標) Kit 2(Lonza)及びNucleofectorを用いてelectroporationにより細胞にベクターを導入した。electroporation後、StemFit(登録商標) AK03で懸濁、laminin 511をコーティングした10cm dishに播種し、37℃ 5%CO2 条件下で培養した。9日後、コロニーを複数個ピックアップし、2つに分け、一方にはpuromycineを1ng/mlとなるように培地に添加し培養し、もう一方は保管した。細胞が死滅した株を確認し、同じコロニー由来の保管した細胞において、プライマー(TUBB1 insert check Fw及びRv)を用いてGenotyping PCRによりpuromycine耐性カセットが除去されていることを確認した、当該iPS細胞株を拡大培養し、MK iPS#12-23 cre2として樹立した。
【0041】
不死化巨核球細胞株の誘導
iPS細胞(MK iPS #12-23 cre2)より、iPS-sacを介して造血前駆細胞(HPC)の誘導を行った。詳細には、iPS細胞をセルスクレーパーを用いて培養皿から細胞を剥離させ、1/20程度の細胞を、コロニーの塊として、マイトマイシンC(MMC)処理したC3H10T1/2(理研から入手可能)上へ播種した。なお、MMC処理したC3H10T1/2は、iPS細胞を播種する前日に8x105cells / dishで10cm dishへ播種して用意した。播種後、20 ng / ml VEGFを添加したEagel’s Basal Medium (EBM)中で5% O2、5% CO2、37℃環境下で培養を開始した(day0)。2回/1週間の頻度で同じ培地にて培地交換を行った。
【0042】
Day14にセルスクレーパーまたはピペット先端を用いて物理的に細胞を剥離し、40マイクロメートルのセルストレーナーを通して均一の大きさの細胞を回収した。
【0043】
Day14において、細胞を回収し、MMC処理したC3H10T1/2上に1x105 cells / well を6well dishに播種した。培地はSCF 50 ng / ml, TPO 50 ng / ml, ドキシサイクリン0.5 μg / mlを添加したEBMを用いた。Day17、ピペッティングにより細胞を回収し、MMC処理したC3H10T1/2上に1x106 cells / dish を10cm dishに播種した。Day23に細胞を回収し、1x106 cells / dish を10cm dishに播種し、レポーター不死化巨核球細胞株(MKCL#12-23 cre2)を作製した。
【0044】
血小板の産生
続いて、ドキシサイクリンを含まない分化培地中で巨核球細胞を培養し、血小板放出を誘導した。具体的には、上述の方法で得られたレポーター不死化巨核球株(MKCL#12-23 cre2)を0.75 μM StemRegenin1(SR1)(Selleckchem)、10 μM Y-27632(wako)、50 ng/ml TPO(R&D)及び50 ng/ml SCF(R&D)を添加した分化培地中で7日間培養した。培養細胞を懸濁後、培養上清より細胞を回収し、抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した。結果、7日間の培養によってCD41a及びCD42bの発現強度が増強(巨核球細胞株の成熟が誘導)され(図2A)、7日間の培養によって当該巨核球からCD41a及びCD42b陽性の血小板が産生されていることも確認した(図2B)。
【0045】
不死化巨核球株の評価
上述の方法で得られた不死化巨核球株を10T1/2R feeder cell上で50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中で4日間培養後、抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色し、FACSにてVENUSの発現量にて、VENUS high群とVENUS low群にソーティングした。
【0046】
コントロールとして、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中又は0.75 μM SR1、 10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中で4日間培養した細胞群を使用した(それぞれ、SR1+rocki群又はplain群と称す)。
【0047】
VENUS high(VENUSの蛍光強度が高い)群、VENUS low(VENUSの蛍光強度が低い)群、SR1+rocki(Y-27632)群及びplain群について、qPCRにてTUBB1及びVENUSの発現量を測定したところ、TUBB1の発現量とVENUSの発現量が比例することが確認された(図3及び4)。
【0048】
以上より、MK iPS#12-23 cre2由来の不死化巨核球株では、TUBB1の発現量がVENUSの発現量に代替されることが確認された。更に、TUBB1の発現量を他の巨核球成熟因子と比較したところ、TUBB1が血小板産生促進剤の探索における指標として特に優れていることが明らかとなった。具体的には、SR1もしくはDMSOの条件にてドキシサイクリンを除いた分化培地で4日間培養した後のGATA1, FOG1、NFE2およびVENUSの発現量を測定し比較した結果、いずれもTUBB1の発現量がもっとも感度が良かった。(図5)。
【0049】
続いて、不死化巨核球株を10T1/2R feeder cell上で50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中、又は0.75 μM SR1、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中で培養し、培養0日目、1日目、3日目、4日目、6日目及び7日目に細胞を懸濁し上清を採取し、抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した。その結果、SR1の添加によりVENUSの発現量が上がり、血小板の産生量が増えることが確認された(図6及び7)。
【0050】
SR1代替物のスクリーニング
1次スクリーニングとして、上述の方法で得られた不死化巨核球株を96well dish に播種し、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFに加え、京都大学iPS細胞研究所 太田先生提供の化合物ライブラリー(重複する化合物を含め、合計5425個の化合物)より各種化合物1uMを添加し培養した。0.75 μM SR1、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陽性コントロール)、又は0.1% DMSO、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陰性コントロール)として培養した。培養7日目に各化合物群におけるVENUSの蛍光強度をArray scan VTI (Thermo Scientific)にて測定し、陽性コントールでの蛍光強度(100%とする)及び陰性コントロールでの蛍光強度(0%とする)により、各化合物における蛍光強度の値を補正した(図8)。当該値が30%以上である薬剤を1次候補化合物として選出した。当該1次候補化合物には、67種類の化合物、例えばTCS-359(CAS_NO. 301305-73-7) (santacruz biotechnology)及びC59(CAS_NO. 1243243-89-1)が含まれていた。
【0051】
2次スクリーニングとして、上述の方法で得られた不死化巨核球株を96well dish に播種し、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFに加え、1次候補化合物をそれぞれ10, 3.3, 1.1, 0.4uM添加し培養した。0.75 μM SR1、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陽性コントロール)、又は0.1% DMSO、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陰性コントロール)として培養した。培養7日目に各化合物群におけるVENUSの蛍光強度をArray scan VTI (Thermo Scientific)にて測定し、陽性コントールでの蛍光強度(100%とする)及び陰性コントロールでの蛍光強度(0%とする)により、各化合物における蛍光強度の値を補正した。当該値が30%以上かつ、濃度依存性が認められる薬剤を2次候補化合物として選出した。当該2次候補化合物には、合計35種類の化合物、例えばTCS-359(CAS_NO. 301305-73-7) (santacruz biotechnology)及びC59(CAS_NO. 1243243-89-1)が含まれていた。
【0052】
続いて、2次候補化合物のうち、重複した化合物および商業的に利用不可能な化合物を除いた28化合物の血小板産生促進効果を確認した。それぞれ10, 3.3, 1.1, 0.4uMの各化合物、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中、又は0.75 μM SR1、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陽性コントロール)、又は0.1% DMSO、10 μM Y-27632、50 ng/ml TPO及び50 ng/ml SCFを添加した分化培地中(陰性コントロール)で前記不死化巨核球株を6 well dishにて培養し、培養7日目に細胞を懸濁して上清を採取し、抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した。各候補化合物を用いた場合の血小板数を、陽性コントールでの血小板数(100%とする)及び陰性コントロールでの血小板数(0%とする)で補正して、相対血小板数を算出した(図9)。
【0053】
以上の結果より、100%を超えるSR1よりも強力に血小板誘導を行うことができる可能性がある化合物が見出された。特に、C59は、強力な血小板誘導剤であることが示唆された。
【0054】
フィーダー細胞を用いない条件での血小板産生に与えるC59及びTCS-359の効果
iPS細胞(TkDA3-4)を培養後、セルスクレイパーにてコロニーを剥離し、20μg/ml VEGFを添加した10T1/2フィーダー細胞上に分化培地で培養した。Takayama N. et al., Blood, 111, pp.5298-5306, 2008。14日後、セルスクレイパーを用いて細胞を回収しフィーダーなしの条件で、25 U/mL heparin、10 μM Y-27632、100 ng/ml TPO、50 ng/ml SCFを添加した.さらに、当該培地へ、0.1% DMSO、0.75uM SR1、1uM C59(albiochem )又は3.3uM TCS-359(santacruz biotechnology)を添加し、10日間培養した。上述のとおり、フィーダー細胞を用いた条件でも行った。得られた細胞を懸濁し上清を採取し、抗CD41a抗体及び抗CD42b抗体で染色しFACSにて解析した(図10)。その結果、フィーダーを用いない条件においてC59及びTCS-359は、SR1と同等もしくはそれ以上の血小板産生能を有することが確認された。
このことから、C59及びTCS-359はMKCLに対してのみならず、iPS細胞から誘導した巨核球に対しても血小板産生能を上昇させることがわかった。この結果によって、C59及びTCS-359は巨核球の血小板産生能を上昇させることが示唆された。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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