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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/34 20200101AFI20230919BHJP
   D06F 33/37 20200101ALI20230919BHJP
【FI】
D06F33/34
D06F33/37
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019084282
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020178913
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間宮 春夫
(72)【発明者】
【氏名】萩生田 康一
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006283(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104060441(CN,A)
【文献】特開2014-212886(JP,A)
【文献】特開2014-210122(JP,A)
【文献】特開2016-123538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽と、
前記洗濯槽を回転させるモータと、
前記洗濯槽の排水を行うときに開かれる排水弁と、
前記洗濯槽に給水したり、前記洗濯槽の排水をしたり、前記モータの回転を制御して前記洗濯槽を回転させたりして標準コースまたは特別コースの洗濯運転を実行する実行手段とを含み、
前記実行手段は、前記標準コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために、前記洗濯槽に所定水位まで水を溜めた状態で洗濯物をすすぐ、溜めすすぎ工程を少なくとも実行し、
前記実行手段は、前記特別コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために、前記溜めすすぎ工程ではなく、前記洗濯槽に給水しながら前記排水弁を開いた状態で前記洗濯槽を回転させるシャワーすすぎ工程を複数回実行し、
前記特別コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために前記洗濯槽に給水される量である積算給水量は、前記標準コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために前記洗濯槽に給水される量である積算給水量よりも少なく、
前記実行手段は、前記特別コースの洗濯運転における複数回の前記シャワーすすぎ工程のそれぞれの直前において脱水工程を実行し、
前記実行手段は、前記標準コースの洗濯運転において前記溜めすすぎ工程よりも前のタイミングに前記脱水工程を実行し、
前記脱水工程において前記モータの回転数が所定値を上回ってから最大回転数に到達した後に低下を開始するまでの時間を洗濯運転全体で積算した値である積算時間について、前記特別コースでの積算時間は、前記標準コースでの積算時間以下である、洗濯機。
【請求項2】
前記特別コースの洗濯運転における複数回の前記シャワーすすぎ工程のそれぞれにおいて前記洗濯槽に給水される量である個別給水量は、1回目のシャワーすすぎ工程よりも2回目以降のシャワーすすぎ工程の方が少ない、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記脱水工程における前記モータの最大回転数は、1回目のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程よりも、2回目以降のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程の方が低い、請求項1または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯機の洗濯運転には、標準コースと節水コースとがある。標準コースでは、洗い工程と、脱水すすぎ工程と、溜めすすぎ工程と、最終脱水工程とが、この順番で実行される。脱水すすぎ工程は、洗濯物に水が染み込む程度に洗濯脱水槽に給水する給水工程と、給水工程の直後の脱水工程とを含む。脱水工程では、モータが、洗濯脱水槽を高速回転させる。溜めすすぎ工程では、洗濯脱水槽に所定水位まで水が溜まった状態で洗濯物がすすがれる。節水コースでは、洗い工程と、複数の脱水すすぎ工程とが、この順番で実行され、最後の脱水すすぎ工程における脱水工程が、最終脱水工程を兼ねる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の洗剤は、多機能化により、汚れを分解するという本来の洗浄機能に加えて、洗濯物に香り付けをする芳香機能や、洗濯物を抗菌する抗菌機能なども有する。特許文献1の洗濯機の洗濯運転では、標準コースおよび節水コースのいずれにおいてもすすぎ性能が重視されるので、多機能洗剤を用いても、多機能洗剤における芳香成分や抗菌成分などの付加成分がすすぎ落されてしまう。そのため、洗濯後の洗濯物では、付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続させることが困難である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯物において多機能洗剤により得られる効果を持続できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽を回転させるモータと、前記洗濯槽に給水したり、前記洗濯槽の排水をしたり、前記モータの回転を制御して前記洗濯槽を回転させたりして標準コースまたは特別コースの洗濯運転を実行する実行手段とを含み、前記実行手段は、前記標準コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために、前記洗濯槽に所定水位まで水を溜めた状態で洗濯物をすすぐ、溜めすすぎ工程を少なくとも実行し、前記実行手段は、前記特別コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために、前記溜めすすぎ工程ではなく、前記洗濯槽に給水しながら前記洗濯槽を回転させるシャワーすすぎ工程を複数回実行し、前記特別コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために前記洗濯槽に給水される量である積算給水量は、前記標準コースの洗濯運転において洗濯物をすすぐために前記洗濯槽に給水される量である積算給水量よりも少ない、洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、前記特別コースの洗濯運転における複数回の前記シャワーすすぎ工程のそれぞれにおいて前記洗濯槽に給水される量である個別給水量が、1回目のシャワーすすぎ工程よりも2回目以降のシャワーすすぎ工程の方が少ないことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記実行手段が、前記特別コースの洗濯運転における複数回の前記シャワーすすぎ工程のそれぞれの直前において脱水工程を実行し、前記脱水工程における前記モータの最大回転数が、1回目のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程よりも、2回目以降のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程の方が低いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記実行手段が、前記特別コースの洗濯運転における複数回の前記シャワーすすぎ工程のそれぞれの直前において脱水工程を実行し、前記実行手段が、前記標準コースの洗濯運転において前記溜めすすぎ工程よりも前のタイミングに前記脱水工程を実行し、前記脱水工程において前記モータの回転数が所定値を上回ってから最大回転数に到達した後に低下を開始するまでの時間を洗濯運転全体で積算した値である積算時間について、前記特別コースでの積算時間が、前記標準コースでの積算時間以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗濯機の洗濯運転には、標準コースと特別コースとがある。標準コースで洗濯物をすすぐ場合には、洗濯槽に所定水位まで水を溜めた状態で洗濯物をすすぐ溜めすすぎ工程が実行される。多機能洗剤を使用した場合には、溜めすすぎ工程では、洗濯槽に溜まった水によって多機能洗剤の付加成分が薄められるので、洗濯物において付加成分により得られる効果を持続させることが困難である。
一方、特別コースで洗濯物をすすぐ場合には、溜めすすぎ工程ではなく、洗濯槽に給水しながら洗濯槽を回転させるシャワーすすぎ工程が複数回実行される。シャワーすすぎ工程では、溜めすすぎ工程に比べて洗濯槽に水が溜まらないので、多機能洗剤の付加成分が薄められにくい。さらに、洗濯物のすすぎに関する積算給水量について、特別コースでの積算給水量は、標準コースでの積算給水量よりも少ないので、特別コースでは、標準コースに比べて、多機能洗剤の付加成分が一層薄められにくい。そのため、多機能洗剤を使用する場合には、特別コースの洗濯運転を実行することによって、洗濯物において多機能洗剤の付加成分により得られる効果を持続できる。
【0011】
また、本発明によれば、特別コースの洗濯運転における各シャワーすすぎ工程の個別給水量は、1回目のシャワーすすぎ工程よりも2回目以降のシャワーすすぎ工程の方が少ない。これにより、1回目のシャワーすすぎ工程では、多機能洗剤においてすすいで除去すべき成分つまり洗浄成分を除去することができ、2回目以降のシャワーすすぎ工程では、多機能洗剤の付加成分が必要以上に薄められることを抑制できる。これにより、洗濯物では、多機能洗剤の付加成分が残留しやすくなるので、多機能洗剤の付加成分により得られる効果を持続できる。
【0012】
また、本発明によれば、特別コースの洗濯運転における各シャワーすすぎ工程の直前の脱水工程において洗濯槽を回転させるモータの最大回転数は、1回目のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程よりも、2回目以降のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程の方が低い。これにより、最大回転数が2回目以降のシャワーすすぎ工程において低くならない場合に比べて、洗濯物では、多機能洗剤の付加成分が残留しやすくなるので、多機能洗剤の付加成分により得られる効果を持続できる。
【0013】
また、本発明によれば、脱水工程における所定時間を洗濯運転全体で積算した積算時間について、特別コースでの積算時間は、標準コースでの積算時間以下である。これにより、特別コースでは、洗濯物において、多機能洗剤の付加成分が残留しやすくなるので、多機能洗剤の付加成分により得られる効果を持続できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
図2図2は、洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、標準コースでの洗濯運転における制御動作を示すフローチャートである。
図4図4は、標準コースでの洗濯運転の一部を示すタイムチャートである。
図5図5は、特別コースでの洗濯運転における制御動作を示すフローチャートである。
図6図6は、特別コースでの洗濯運転の一部を示すタイムチャートである。
図7図7は、第1変形例に係る特別コースでの洗濯運転の一部を示すタイムチャートである。
図8図8は、第2変形例に係る特別コースでの洗濯運転の一部を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zと称し、図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yと称して、まず、洗濯機1の概要について説明する。上下方向Zのうち、上側を上側Z1と称し、下側を下側Z2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。
【0016】
洗濯機1には、乾燥機能を有する洗濯乾燥機も含まれるが、以下では、乾燥機能が省略されて洗濯運転だけを実行する洗濯機を例に取って洗濯機1について説明する。洗濯機1は、筐体2と、筐体2内に収容される外槽3と、外槽3内に収容される洗濯槽4と、洗濯槽4内に収容される回転翼5と、洗濯槽4や回転翼5を回転させる駆動力を発生する電動のモータ6と、モータ6が発生した駆動力の伝達先を切り替える伝達機構7とを含む。
【0017】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aは、例えば、後側Y2に向かうに従って上側Z1に延びるように、水平方向Hに対して傾斜して形成される。上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口8が形成される。上面2Aには、開口8を開閉する扉9が設けられる。上面2Aにおいて開口8よりも前側Y1の領域には、スイッチなどで構成された操作部10Aと、液晶パネルなどで構成された表示部10Bとが設けられる。使用者は、操作部10Aを操作することによって、洗濯条件を自由に選択したり、洗濯機1に対して運転開始や運転停止などを指示したりすることができる。表示部10Bには、洗濯運転に関する情報が目視可能に表示される。操作部10Aと表示部10Bとは、タッチパネルなどによって一体化されてもよい。
【0018】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに対して前側Y1に傾斜した傾斜方向Kに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁3Bと、円周壁3Aの上側Z1の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。傾斜方向Kは、上下方向Zだけでなく、水平方向Hに対しても傾斜する。環状壁3Cの内側から円周壁3Aの中空部分が上側Z1へ露出される。底壁3Bは、傾斜方向Kに直交し、水平方向Hに対して傾斜して延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通する貫通孔3Dが形成される。
【0019】
例えば、筐体2内における外槽3の上側Z1には、ボックス状の洗剤収容部12が配置される。洗剤収容部12の下部には、洗剤収容部12の内部に連通して外槽3内に上側Z1から臨む給水口12Aが形成される。洗剤収容部12の内部には、洗剤が収容される洗剤収容室12Bと、柔軟剤が収容される柔軟剤収容室12Cとが区画される。洗剤収容室12Bには、蛇口(図示せず)につながった給水路13が後側Y2から接続される。蛇口からの水は、給水路13を流れて洗剤収容室12Bを通り、破線矢印で示すように給水口12Aからシャワー状で流れ落ちて外槽3内に供給される。これにより、洗剤収容室12B内の洗剤が水に乗って外槽3内に供給される。洗剤収容室12B内に洗剤が存在しない場合は、水だけが外槽3内に供給される。給水路13の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される給水弁14が設けられる。
【0020】
柔軟剤収容室12Cには、給水路13において給水弁14よりも蛇口に近い上流側の部分から分岐した分岐路15が接続される。分岐路15の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される柔軟剤供給弁16が設けられる。給水弁14が閉じた状態で柔軟剤供給弁16が開くと、蛇口からの水は、給水路13から分岐路15に流れ込むことによって、柔軟剤収容室12Cを通り、給水口12Aからシャワー状で流れ落ちて外槽3内に供給される。これにより、柔軟剤収容室12C内の柔軟剤が水に乗って外槽3内に供給される。柔軟剤収容室12C内の水は、洗剤収容室12Bを経由せずに給水口12Aに直接到達してもよいし、洗剤収容室12Bを経由してから給水口12Aに到達してもよい。
【0021】
外槽3には、排水路18が下側Z2から接続され、外槽3内の水は、排水路18から機外に排出される。排水路18の途中には、排水を開始したり停止したりするために開閉される排水弁19が設けられる。排水弁19が閉じた状態で給水弁14が開くと、外槽3内に水が溜められる。
【0022】
洗濯槽4は、例えば金属製であり、傾斜方向Kに延びる中心軸線20を有し、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、傾斜方向Kに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞ぐ底壁4Bとを有する。
【0023】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aの内周面の上端部は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる出入口21である。出入口21は、外槽3の環状壁3Cの内側領域に対して下側Z2から対向し、筐体2の開口8に下側Z2から連通した状態にある。洗濯機1の使用者は、開放された開口8および出入口21を介して、洗濯槽4に対して洗濯物Qを出し入れする。
【0024】
洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で収容され、上下方向Zおよび水平方向Hに対して斜めに配置される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、中心軸線20まわりに回転可能である。洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、図示しない貫通孔が複数形成され、外槽3内の水は、当該貫通孔を介して、外槽3と洗濯槽4との間で行き来できる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは一致する。また、洗剤収容部12の給水口12Aから流れ出た水は、洗濯槽4の出入口21を通って、洗濯槽4内に上側Z1から直接供給される。
【0025】
洗濯槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて中心軸線20と一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通する貫通孔4Cが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Cを取り囲みつつ中心軸線20に沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸22が設けられる。支持軸22は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Dに挿通されて、支持軸22の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0026】
回転翼5は、いわゆるパルセータであり、中心軸線20を円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4Bに沿って洗濯槽4と同心状に配置される。回転翼5において洗濯槽4の出入口21を下側Z2から臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。回転翼5には、その円中心から中心軸線20に沿って下側Z2へ延びる回転軸23が設けられる。回転軸23は、支持軸22の中空部分に挿通されて、回転軸23の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0027】
本実施形態では、モータ6は、インバータモータによって実現される。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、中心軸線20を中心として回転する出力軸24を有する。伝達機構7は、支持軸22および回転軸23のそれぞれの下端部と、出力軸24の上端部との間に介在される。伝達機構7は、モータ6が出力軸24から出力する駆動力を、支持軸22および回転軸23の一方または両方に対して選択的に伝達する。伝達機構7として、公知のものが用いられる。
【0028】
モータ6からの駆動力が支持軸22に伝達されると、洗濯槽4が中心軸線20まわりに回転する。モータ6からの駆動力が回転軸23に伝達されると、回転翼5が中心軸線20まわりに回転する。洗濯槽4および回転翼5の回転方向は、洗濯槽4の周方向Xと一致する。モータ6の出力軸24の回転方向が変更できるので、洗濯槽4および回転翼5のそれぞれは、周方向Xにおける一方向だけでなく、当該一方向とは反対の他方向にも回転できる。
【0029】
図2は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。図2を参照して、洗濯機1は、実行手段としてのマイクロコンピュータ30を含む。マイクロコンピュータ30は、例えば、CPUやROMやRAMなどで構成され、筐体2内に配置される(図1参照)。
【0030】
洗濯機1は、水位センサ31と、回転センサ32と、ブザー33とをさらに含む。水位センサ31、回転センサ32およびブザー33ならびに前述した操作部10Aおよび表示部10Bのそれぞれは、マイクロコンピュータ30に対して電気的に接続される。モータ6、伝達機構7、給水弁14、柔軟剤供給弁16および排水弁19のそれぞれは、駆動回路34を介して、マイクロコンピュータ30に対して電気的に接続される。
【0031】
水位センサ31は、外槽3および洗濯槽4の水位を検知するセンサであり、水位センサ31の検知結果は、リアルタイムでマイクロコンピュータ30に入力される。
【0032】
回転センサ32は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6における出力軸24の回転数を読み取る装置であり、例えば、複数のホールIC(図示せず)で構成される。回転センサ32が読み取った回転数は、リアルタイムでマイクロコンピュータ30に入力される。マイクロコンピュータ30は、入力された回転数に基づいて、モータ6に印加される電圧のデューティ比を制御して、モータ6が所望の回転数で回転するようにモータ6の回転を制御する。この実施形態では、モータ6の回転数は、洗濯槽4の回転数と同じである。また、マイクロコンピュータ30は、モータ6の出力軸24の回転方向を切り換える。
【0033】
前述したように使用者が操作部10Aを操作して洗濯物Qの洗濯条件などについて選択すると、マイクロコンピュータ30は、その選択を受け付ける。マイクロコンピュータ30は、必要な情報を表示部10Bに使用者に対して目視可能に表示する。マイクロコンピュータ30は、所定の音をブザー33によって発生させることによって、洗濯運転の開始や終了などを使用者に知らせる。
【0034】
マイクロコンピュータ30は、伝達機構7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を支持軸22および回転軸23の一方または両方へと切り替える。マイクロコンピュータ30は、給水弁14、柔軟剤供給弁16および排水弁19の開閉を制御する。そのため、マイクロコンピュータ30は、給水弁14を開くことによって洗濯槽4に給水でき、柔軟剤供給弁16を開くことによって洗濯槽4に柔軟剤を供給でき、排水弁19を開くことによって洗濯槽4の排水を実行できる。
【0035】
洗濯機1において、マイクロコンピュータ30は、洗濯槽4に給水したり、洗濯槽4の排水をしたり、モータ6の回転を制御して洗濯槽4を回転させたりすることによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転には、標準コースと特別コースとがあり、使用者による操作部10Aの操作によって、標準コースおよび特別コースのどちらかのコースを選択できる。特別コースは、洗浄機能に加えて芳香機能や抗菌機能なども有する多機能洗剤を使うのに適したコースである。多機能洗剤は、粉末状または液体状であって洗濯運転の開始時に洗剤収容部12の洗剤収容室12Bにセットされてもよいし、ゼリー状の洗浄成分、芳香成分および抗菌成分をパックした例えばボール状であって、洗剤収容室12Bでなく洗濯槽4内に直接投入されてもよい。
【0036】
各コースの洗濯運転は、洗濯槽4内の洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程の後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、洗濯物Qを脱水する脱水工程とで構成される。脱水工程は、洗濯運転の最後に実行される最終脱水工程と、最終脱水工程よりも前に実行される1回または複数回の中間脱水工程とに区別される。なお、洗濯運転では、水道水だけが用いられてもよいし、必要に応じて風呂水も用いられてもよい。また、洗濯運転における柔軟剤の投入の有無は、使用者による操作部10Aの操作によって事前に選択できる。
【0037】
図3のフローチャートおよび図4のタイムチャートを参照して、標準コースの洗濯運転について説明する。図4のタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が、上から順に、モータ6の回転数(単位:rpm)、モータ6のON・OFF状態、給水弁14のON・OFF状態および排水弁19のON・OFF状態を示す。横軸および縦軸について説明は、後述する図6以降の各タイムチャートにも当てはまる。
【0038】
マイクロコンピュータ30は、洗濯運転の開始に応じて、洗濯槽4内の洗濯物Qの量を負荷量として検知する(ステップS1)。具体的には、マイクロコンピュータ30は、洗濯物Qを載せた回転翼5を回転させたときのモータ6の回転数のばらつきによって負荷量を検知する。マイクロコンピュータ30は、検知した負荷量に応じた洗濯運転の期間や洗剤の必要量などを表示部10Bに表示する。
【0039】
次に、マイクロコンピュータ30は、洗い工程を実行する(ステップS2)。洗い工程において、マイクロコンピュータ30は、排水弁19が閉じた状態で給水弁14を開いて洗濯槽4に給水する。負荷量に応じた所定水位まで洗濯槽4内に水が溜まると、マイクロコンピュータ30は、給水弁14を閉じて給水を停止し、モータ6を所定時間駆動させて洗濯槽4および回転翼5を回転させる。洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転する洗濯槽4および回転翼5の羽根5Aに撹拌され、洗濯槽4内に投入された洗剤によって汚れが分解されることによって、洗われる。その後、マイクロコンピュータ30は、モータ6の駆動を停止し、排水弁19を開く。これにより、洗濯槽4に溜まった水が外槽3の排水路18から機外に排出される。なお、洗い工程が終わった段階では、洗濯物Qには、洗剤が溶けた水が、洗剤水として染み込んだ状態にある。
【0040】
マイクロコンピュータ30は、洗い工程の直後に、1回目の脱水工程を実行する(ステップS3)。1回目の脱水工程を、第1脱水工程という。第1脱水工程において、マイクロコンピュータ30は、排水弁19を開いたままにしてモータ6を所定時間駆動させて、洗濯槽4および回転翼5を一体回転させる。
【0041】
脱水工程の詳細について説明すると、マイクロコンピュータ30は、0rpmから120rpmいう第1回転数までモータ6の回転数を加速させてから、低速の120rpmでモータ6を定常回転させる。第1回転数は、洗濯槽4の横共振が発生する回転数(例えば50rpm~60rpm)よりも高く、かつ、洗濯槽4の縦共振が発生する回転数(例えば200rpm~220rpm)よりも低い。120rpmでの定常回転の後、マイクロコンピュータ30は、モータ6の回転数を、120rpmから、240rpmという第2の回転数まで加速させてから、低速の240rpmでモータ6を定常回転させる。第2の回転数は、縦共振が発生する回転数よりも若干高い。その後、マイクロコンピュータ30は、モータ6の回転数を、240rpmから、最大回転数である800rpmまで加速させてから最大回転数で維持することにより、モータ6を高速で定常回転させる。
【0042】
このように、脱水工程では、モータ6を段階的に加速させるので、洗濯物Qから多量の水が一度に染み出すことによって排水路18の排水状態が悪くなったり、排水路18に泡が噛んだりする不具合を防止できる。そして、マイクロコンピュータ30は、脱水工程の最後に、モータ6の回転にブレーキをかけてモータ6の回転を停止させる。ここでのブレーキとして、マイクロコンピュータ30がデューティ比を制御してモータ6の回転を急停止させてもよいし、ブレーキ装置(図示せず)を別途設けてマイクロコンピュータ30がブレーキ装置を作動させることによってモータ6の回転を急停止させてもよい。
【0043】
マイクロコンピュータ30は、第1脱水工程の直後に、シャワーすすぎ工程を実行する(ステップS4)。シャワーすすぎ工程において、マイクロコンピュータ30は、モータ6をONにして駆動させることと、OFFにして停止させることとを交互に繰り返すことによって、洗濯槽4を極低速で一方向に間欠回転させる。詳しくは、モータ6の回転数は、0rpmから30rpmまでの上昇と、30rpmから0rpmまでの下降とを交互に繰り返すように変動する。
【0044】
ここでの30rpmは、一例であり、要は、シャワーすすぎ工程におけるモータ6の回転数は、洗濯槽4の共振が発生する最低回転数よりも低ければよい。この最低回転数は、洗濯槽4のサイズによって異なるが、この実施形態の場合、洗濯槽4の横共振が発生する回転数であって、前述した50rpm~60rpmである。そのため、シャワーすすぎ工程での洗濯槽4は、脱水工程よりも低速で回転する。なお、シャワーすすぎ工程では、洗濯槽4は回転されるものの、回転翼5は静止した状態にある。
【0045】
また、シャワーすすぎ工程において、マイクロコンピュータ30は、給水弁14をONにして開くことと、OFFにして閉じることとを交互に繰り返すことによって、洗濯槽4に間欠給水する。給水弁14のON・OFFのタイミングとモータ6のON・OFFのタイミングとは一致する。そのため、モータ6がONである期間に給水弁14もONになり、モータ6がOFFである期間に給水弁14もOFFになる。シャワーすすぎ工程では、洗濯槽4の間欠回転と間欠給水とが同じタイミングで実行されるので、洗濯槽4が極低速回転する間に、洗濯槽4内の洗濯物Qに給水路13から水が浴びせられる。このとき、給水路13からの水は、洗剤収容部12の給水口12Aから、前述したシャワー状で洗濯物Qに供給される。このようなシャワー状の水の供給は、「シャワー給水」とも呼ばれる。シャワーすすぎ工程では、洗濯物Qに水が染み込む程度に洗濯槽4に少量の給水が行われるとともに、排水弁19が第1脱水工程から引き続きONになって開いた状態にあるので、洗濯槽4内には、ほとんど水が溜まらない。第1脱水工程と、その直後のシャワーすすぎ工程とは、標準コースにおける1回目のすすぎ工程を構成する。1回目のすすぎ工程を、第1すすぎ工程という。なお、シャワーすすぎ工程では、モータ6のON・OFFを交互に繰り返すことによって洗濯槽4を間欠回転させるのに代えて、モータ6をONにしたままにして30rpmの低速で連続回転させることによって洗濯槽4を低速で連続回転させて、洗濯槽4の連続回転中に間欠給水してもよい。
【0046】
マイクロコンピュータ30は、第1すすぎ工程の直後に、ステップS3とほぼ同じ脱水工程を、第2脱水工程として実行する(ステップS5)。第2脱水工程により、洗濯槽4内の洗濯物Qが遠心脱水される。これにより、洗濯物Qに浸透した洗剤水を、直前の第1シャワーすすぎ工程で給水した水と共に飛ばして取り除くことができる。ステップS3の第1脱水工程と、ステップS5の第2脱水工程とでは、モータ6を0rpmから120rpm、240rpm、800rpmと段階的に加速させる点では同じである。しかし、1回の脱水工程においてモータ6の回転数が240rpmという所定値を上回ってから800rpmという最大回転数に到達した後に低下を開始するまでの時間Tが、第1脱水工程と第2脱水工程とで異なる。具体的には、第1脱水工程において該当する時間T1が、第2脱水工程において該当する時間T2よりも長い(図4参照)。例えば、時間T1が120秒であるのに対し、時間T2は60秒である。
【0047】
次に、マイクロコンピュータ30は、給水工程を実行する(ステップS6)。具体的には、マイクロコンピュータ30は、排水弁19が閉じた状態で給水弁14を開いて洗濯槽4に給水する。例えば洗濯物Qが水面よりも下側Z2に位置する所定水位まで洗濯槽4内に水が溜まると、マイクロコンピュータ30は、給水弁14を閉じて給水を停止することによって、給水工程を終了する。
【0048】
マイクロコンピュータ30は、給水工程の直後に、溜めすすぎ工程を実行する(ステップS7)。具体的には、マイクロコンピュータ30は、直前の給水工程によって洗濯槽4内に所定水位まで水が溜まった状態で、モータ6を所定時間駆動させて回転翼5を回転させる。このような溜めすすぎ工程において、洗濯槽4内の洗濯物Qは、水に浸った状態で、回転する回転翼5の羽根5Aに撹拌されることによって、すすがれる。溜めすすぎ工程における回転翼5は、前述した一方向または他方向のどちらか同じ方向に回転してもよいが、この実施形態では、モータ6の間欠駆動によって、回転翼5は、1秒~2秒の間隔で正転および逆転を交互に繰り返すように反転する。なお、溜めすすぎ工程中の洗濯槽4は、静止した状態にある。ステップS5の第2脱水工程と、ステップS6の給水工程と、ステップS7の溜めすすぎ工程とは、標準コースにおける2回目のすすぎ工程を構成する。2回目のすすぎ工程を、第2すすぎ工程という。
【0049】
柔軟剤の投入が事前に選択された場合には、マイクロコンピュータ30は、溜めすすぎ工程の直前に柔軟剤供給弁16を開いて洗濯槽4内に柔軟剤を投入する。この場合には、溜めすすぎ工程において、柔軟剤が洗濯物Qに浸透し、洗濯物Qには、柔軟性および香りを与えられる。
【0050】
マイクロコンピュータ30は、溜めすすぎ工程の最後にモータ6の駆動を停止することによって、第2すすぎ工程を終了する。溜めすすぎ工程が終わった段階では、洗濯物Qは完全にすすがれた状態にあり、洗濯物Qには洗剤成分がほとんど存在しない。
【0051】
次に、マイクロコンピュータ30は、最終脱水工程を実行する(ステップS8)。具体的には、マイクロコンピュータ30は、まず排水弁19を開く。これにより、洗濯槽4に溜まった水が外槽3の排水路18から機外に排出される。そして、マイクロコンピュータ30は、排水弁19を開いたままにして、モータ6を所定時間駆動させて、洗濯槽4および回転翼5を一体回転させる。最終脱水工程は、第1脱水工程や第2脱水工程とほぼ同じ内容であるが、最終脱水工程において800rpmの最大回転数でモータ6を定常回転させる時間は、第1脱水工程や第2脱水工程よりも長い。これにより、最終脱水工程では、洗濯槽4内の洗濯物Qには、遠心力が長時間作用するので、洗濯物Qが本格的に脱水される。脱水により洗濯物Qから染み出た水は、外槽3の排水路18から機外に排出される。最終脱水工程が終了することにより、標準コースの洗濯運転が終了する。
【0052】
以上のように、マイクロコンピュータ30は、標準コースの洗濯運転において洗濯物Qをすすぐために、溜めすすぎ工程を少なくとも実行する。また、マイクロコンピュータ30は、標準コースの洗濯運転において、溜めすすぎ工程よりも前のタイミングに脱水工程(ステップS3,S5)を実行する。
【0053】
図4のタイムチャートにおいて横軸よりも下方には、洗濯物Qの負荷量が多い場合および少ない場合のそれぞれにおいて、各すすぎ工程でマイクロコンピュータ30が洗濯槽4に給水する水の量である個別給水量が示される。一例として、洗濯物Qの負荷量が所定値以上である場合つまり高水位での個別給水量(単位:L)は、第1すすぎ工程の第1シャワーすすぎ工程では7Lであり、第2すすぎ工程の給水工程では48Lである。この場合、マイクロコンピュータ30が洗濯物Qをすすぐために1回の洗濯運転全体で洗濯槽4に給水する量である積算給水量は、55L(=7+48)である。また、洗濯物Qの負荷量が所定値よりも少ない場合つまり低水位での個別給水量は、第1すすぎ工程の第1シャワーすすぎ工程では5Lであり、第2すすぎ工程の給水工程では30Lであり、この場合の積算給水量は、35L(=5+30)である。
【0054】
次に、図5のフローチャートおよび図6のタイムチャートを参照して、特別コースの洗濯運転について説明する。マイクロコンピュータ30は、特別コースでの洗濯運転の開始に応じて、ステップS1と同様に洗濯物Qの負荷量を検知し(ステップS11)、その後、ステップS2と同様の洗い工程(ステップS12)を実行する。
【0055】
次に、マイクロコンピュータ30は、ステップS3と同様の第1脱水工程(ステップS13)を実行し、ステップS4と同様のシャワーすすぎ工程(ステップS14)を実行する。ステップS14のシャワーすすぎ工程つまり特別コースにおける1回目のシャワーすすぎ工程を、第1シャワーすすぎ工程という。ステップS13の第1脱水工程と、その直後のステップS14の第1シャワーすすぎ工程とは、特別コースにおける第1すすぎ工程を構成する。
【0056】
第1すすぎ工程に続いて、マイクロコンピュータ30は、ステップS13と同様の脱水工程(ステップS15)を実行し、ステップS14と同様のシャワーすすぎ工程(ステップS16)を実行する。ステップS15の脱水工程を、第2脱水工程といい、ステップS16のシャワーすすぎ工程つまり特別コースにおける2回目のシャワーすすぎ工程を、第2シャワーすすぎ工程という。ステップS15の第2脱水工程と、その直後のステップS16の第2シャワーすすぎ工程とは、特別コースにおける第2すすぎ工程を構成する。ステップS13の第1脱水工程と、ステップS15の第2脱水工程とは、モータ6を0rpmから120rpm、240rpm、800rpmと段階的に加速させる点で同じである。また、各脱水工程においてモータ6の回転数が240rpmの所定値を上回ってから800rpmの最大回転数に到達した後に低下を開始するまでの時間Tが、第1脱水工程と第2脱水工程とで同じである。具体的には、第1脱水工程において該当する時間T3と、第2脱水工程において該当する時間T4とは、ともに例えば60秒である(図6参照)。
【0057】
第2すすぎ工程に続いて、マイクロコンピュータ30は、ステップS15と同じ脱水工程(ステップS17)を実行し、ステップS14と同じシャワーすすぎ工程(ステップS18)を実行する。ステップS17の脱水工程を、第3脱水工程といい、ステップS18のシャワーすすぎ工程、つまり特別コースにおける3回目のシャワーすすぎ工程を、第3シャワーすすぎ工程という。ステップS17の第3脱水工程と、その直後のステップS18の第3シャワーすすぎ工程とは、特別コースにおける第3すすぎ工程を構成する。ステップS17の第3脱水工程と、ステップS15の第2脱水工程とでは、内容が同じである。そのため、前述した時間Tに関し、第2脱水工程において該当する時間T4と、第3脱水工程において該当する時間T5とは同じ長さであり、例えば60秒である(図6参照)。特別コースでも柔軟剤が投入できてもよく、その場合には、マイクロコンピュータ30は、例えば、第2シャワーすすぎ工程の直前に柔軟剤供給弁16を開いて洗濯槽4内に柔軟剤を投入する。
【0058】
第3すすぎ工程の次に、マイクロコンピュータ30は、ステップS8と同じ最終脱水工程を実行する(ステップS19)。最終脱水工程が終了することにより、特別コースの洗濯運転が終了する。
【0059】
以上のように、マイクロコンピュータ30は、特別コースの洗濯運転において洗濯物Qをすすぐために、標準コースの溜めすすぎ工程(ステップS7)でなく、シャワーすすぎ工程を複数回実行する(ステップS14,S16,S18)。
【0060】
図6のタイムチャートにおいて横軸よりも下方には、図4のタイムチャートの同様に、各すすぎ工程での個別給水量が示される。前述した高水位での個別給水量は、例えば、第1すすぎ工程の第1シャワーすすぎ工程では12Lであり、第2すすぎ工程の第2シャワーすすぎ工程では12Lであり、第3すすぎ工程の第3シャワーすすぎ工程では12Lである。つまり、各シャワーすすぎ工程における個別給水量は同じである。前述した低水位での個別給水量は、各シャワーすすぎ工程において同じであり、例えば8Lである。そして、高水位での積算給水量は、36L(=12+12+12)であり、低水位での積算給水量は、24L(=8+8+8)である。
【0061】
標準コースと特別コースとで高水位同士の積算給水量を比較すると、特別コースでの積算給水量である36Lは、標準コースでの積算給水量である55L(図4参照)よりも少ない。同様に、標準コースと特別コースとで低水位同士の積算給水量を比較すると、特別コースでの積算給水量である24Lは、標準コースでの積算給水量である35L(図4参照)よりも少ない。特別コースでの積算給水量は、標準コースでの積算給水量の60%~70%程度に設定される。
【0062】
多機能洗剤を使用した場合には、標準コースの溜めすすぎ工程では、洗濯槽4に溜まった水によって、多機能洗剤における洗浄成分以外の芳香成分や抗菌成分などの付加成分が薄められるので、洗濯物Qにおいて多機能洗剤の付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続させることが困難である。一方、特別コースで複数回実行されるシャワーすすぎ工程のそれぞれでは、溜めすすぎ工程に比べて水が溜まらないので、多機能洗剤の付加成分が薄められにくい。さらに、前述したように特別コースでの積算給水量が標準コースでの積算給水量よりも少ないので、特別コースでは、標準コースに比べて、付加成分が一層薄められにくい。そのため、多機能洗剤を使用する場合には、特別コースの洗濯運転を実行することによって、付加成分を洗濯物Qに効果的に染み込ませて長時間残留させることができるので、洗濯物Qにおいて付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続できる。このように、特別コースは、多機能洗剤に適した洗濯運転のコースである。
【0063】
前述した時間Tを1回の洗濯運転全体で積算した値を積算時間というと、標準コースでの積算時間は、前述した時間T1および時間T2を足し合わせることによって得られ(図4参照)、特別コースでの積算時間は、前述した時間T3、時間T4および時間T5を足し合わせることによって得られる(図6参照)。前述したように時間T1が120秒であって時間T2が60秒である場合には、標準コースでの積算時間は、180秒である。前述したように時間T3,T4,T5のそれぞれが60秒である場合には、特別コースでの積算時間は、180秒である。特別コースでの積算時間は、このように標準コースでの積算時間と同じである。または、特別コースでの積算時間は、標準コースでの積算時間よりも短く設定されてもよい。このように特別コースでの積算時間が標準コースでの積算時間以下であれば、特別コースでは、洗濯物Qにおいて、多機能洗剤の付加成分が標準コースよりも残留しやすくなるので、付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続できる。
【0064】
前述したように特別コースでの積算給水量が標準コースでの積算給水量よりも少ないことを前提として、特別コースでは、以下の第1変形例および第2変形例が挙げられる。図7は、第1変形例に係る特別コースでの洗濯運転におけるタイムチャートである。図8は、第2変形例に係る特別コースでの洗濯運転におけるタイムチャートである。以下では、図6のタイムチャートで説明した特別コースについてのメイン実施例と、第1変形例および第2変形例のそれぞれとの違いについて説明する。
【0065】
メイン実施例では、各シャワーすすぎ工程における個別給水量が同じである(図6参照)。これに対し、図7に示す第1変形例では、第1シャワーすすぎ工程における個別給水量よりも、第2シャワーすすぎ工程および第3シャワーすすぎ工程のそれぞれにおける個別給水量の方が少ない。具体的には、高水位での個別給水量は、第1シャワーすすぎ工程では16Lであり、第2シャワーすすぎ工程では12Lであり、第3シャワーすすぎ工程では8Lであって、順に少なくなる。また、低水位での個別給水量は、第1シャワーすすぎ工程では10Lであり、第2シャワーすすぎ工程では8Lであり、第3シャワーすすぎ工程では6Lであって、順に少なくなる。
【0066】
つまり、第1変形例では、個別給水量は、1回目のシャワーすすぎ工程よりも2回目以降のシャワーすすぎ工程の方が少なくなるように設定される。このような第1変形例でも、特別コースでの積算給水量を標準コースでの積算給水量よりも少なくすることができる。そして、第1変形例では、1回目のシャワーすすぎ工程では、多機能洗剤においてすすぎによって除去すべき成分つまり洗浄成分を除去することができ、2回目以降のシャワーすすぎ工程では、多機能洗剤の付加成分が必要以上に薄められることを抑制できる。これにより、洗濯物Qでは、多機能洗剤の付加成分が残留しやすくなるので、付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続できる。なお、図7のタイムチャートでは、3回目のシャワーすすぎ工程での個別給水量が、2回目のシャワーすすぎ工程での個別給水量よりも少ないが、これらの個別給水量が同じであってもよい。
【0067】
マイクロコンピュータ30は、特別コースの洗濯運転における複数回のシャワーすすぎ工程のそれぞれの直前に脱水工程を実行する。メイン実施例および第1変形例では、各脱水工程におけるモータ6の最大回転数が800rpmで同じである。これに対し、図8に示す第2変形例では、第1脱水工程におけるモータ6の最大回転数は、800rpmであるが、第2脱水工程におけるモータ6の最大回転数は、第1脱水工程よりも低い600rpmであり、第3脱水工程におけるモータ6の最大回転数は、第2脱水工程よりも低い400rpmである。
【0068】
つまり、第2変形例では、脱水工程におけるモータ6の最大回転数は、1回目のシャワーすすぎ工程の直前の第1脱水工程よりも、2回目以降のシャワーすすぎ工程の直前の脱水工程つまり第2脱水工程や第3脱水工程の方が低い。これにより、最大回転数が2回目以降のシャワーすすぎ工程で低くならない場合に比べて、洗濯物Qでは、多機能洗剤の付加成分が残留しやすくなるので、付加成分により得られる芳香効果や抗菌効果を持続できる。なお、図8のタイムチャートでは、第3脱水工程におけるモータ6の最大回転数は、第2脱水工程におけるモータ6の最大回転数よりも低いが、これらの最大回転数が同じであってもよい。
【0069】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、特別コースについて前述したメイン実施例、第1変形例および第2変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0071】
また、前述した実施形態において、特別コースではシャワーすすぎ工程が3回実行されるが、特別コースにおけるシャワーすすぎ工程脱水の回数は2回以上であれば任意に変更できる。一方、標準コースの洗濯運転では、シャワーすすぎ工程(ステップS4)が省略されてもよい。
【0072】
また、標準コースおよび特別コースのそれぞれにおいて、マイクロコンピュータ30は、第2脱水工程以降の各中間脱水工程のそれぞれにおける低速脱水時間を、第1脱水工程における低速脱水時間よりも短縮してもよい。前述した各タイムチャートでは、第2脱水工程以降の各中間脱水工程における0rpmから240rpmまでのモータ6の回転期間、つまり、低速脱水時間が、第1脱水工程の低速脱水時間よりも短縮される。
【0073】
一般的に、第1脱水工程で正常に脱水が起動した場合、第1脱水工程の直後のシャワーすすぎ工程において洗濯物Qが洗濯槽4内で均等に分散するので、その後の中間脱水工程の低速脱水時間では、第1脱水工程の低速脱水時間に比べて、洗濯槽4内における洗濯物Qの偏りが少ない。そのため、第2脱水工程以降の中間脱水工程では、第1脱水工程よりも脱水起動時の低速脱水時間を短縮しても、モータ6の回転数が円滑に上昇するので、効果的に洗濯物Qを脱水できるとともに、洗濯運転全体の時間短縮を図ることができる。
【0074】
また、洗濯機1では、外槽3および洗濯槽4の中心軸線20が傾斜方向Kに延びるように配置されるが、上下方向Zに延びるように垂直に配置されても構わない。
【符号の説明】
【0075】
1 洗濯機
4 洗濯槽
6 モータ
30 マイクロコンピュータ
Q 洗濯物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8