(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】ガラスヤーンパッケージ
(51)【国際特許分類】
B65H 55/00 20060101AFI20230919BHJP
D02G 3/18 20060101ALI20230919BHJP
D02J 1/22 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B65H55/00
D02G3/18
D02J1/22 F
(21)【出願番号】P 2019165802
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤井 陸
(72)【発明者】
【氏名】関田知喜
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003081(JP,A)
【文献】特開2004-018207(JP,A)
【文献】特開昭63-282056(JP,A)
【文献】特表2015-523471(JP,A)
【文献】特開2006-219770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 55/00
D02G 3/18
D02J 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、
前記ガラスヤーンの番手が0.8~4.5texであり、
前記ガラスヤーンの撚り数が0.3~1.0回/25.4mmであり、
前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、
前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、
前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が
0.7~1.3である、ガラスヤーンパッケージ。
【請求項2】
前記巻取部の高さLfが50~120mmである、請求項1に記載のガラスヤーンパッケージ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のガラスヤーンパッケージを用い、糸速200m/min以下の速度で整経をおこなう工程を含む、ガラスクロスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスヤーンパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスヤーンパッケージとして、ボビンと、該ボビンに巻き取られたガラスヤーンとからなるヤーンパッケージにおいて、該ヤーンパッケージの下端から全高の30~70%が垂直の円筒状表面形状を有し、かつ残りの高さの表面が円錐台形状表面を有し、該円錐台形状の表面角度が、ボビンの垂直方向の巻き面に対して14°以下であることを特徴とするヤーンパッケージが知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、ECG75(フィラメント径9μm、番手75tex)のヤーンパッケージの形状の実施例として、巻き取り部分の下端からの全高L1が370mm、円錐台形状表面を有する部分の高さL3が180mm、ボビンの垂直方向の巻き面に対するヤーンパッケージの円錐台形状の表面角度αが13.5°であることが開示されている。特許文献1のヤーンパッケージによれば、高速解舒においても、巻き崩れが生じないヤーンパッケージを提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プリント配線板用ガラスクロスは薄型化が進み、それに伴い、原料繊維であるガラスヤーンも細径化(例えば3~4.6μm程度)及び低番手化(例えば1~4.5tex程度)する必要がある。そして、本発明者の検討によれば、特許文献1に開示されているヤーンパッケージ形状を、細径化及び低番手化したガラスヤーンに適用して薄型のガラスクロスを製造した場合、ヤーンパッケージ外層部分において、毛羽の発生が多くなり、また、ガラスクロスの経糸を準備する整経工程における糸切れが多くなる場合がある、ことを知得した。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができる、ガラスヤーンパッケージの提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討したところ、ガラスヤーンパッケージにおける外層部は、位置的に、ガラスヤーンパッケージ製造をおこなう撚糸工程の前工程である紡糸工程で得られるケークの内層部に相当する点、及び、整経工程においてガラスヤーンパッケージからガラスヤーンを引き出す際のバルーニング、に着目した。
【0007】
具体的に、ガラスヤーンの製造は、主に紡糸工程と撚糸工程に大別される。紡糸工程では、ガラス溶融炉から繊維化されたガラスストランドを筒状に巻き取りケークとする。そして、撚糸工程では、ストランドの形態を丸くして(集束させて)ガラスクロス製造工程での毛羽発生を低減すべく、ケーク外層側からガラスストランドを撚りをかけながら引き出し、ガラスヤーンパッケージとする。従って、ガラスヤーンパッケージにおける外層部は、位置的に、紡糸工程で得られるケークの内層部に相当する。ここで、紡糸工程においてケークを得る際、ガラス溶融炉のノズルから溶融ガラスを引き出し所定の繊維径にするために、ガラスストランドには張力をかける必要がある。そして、本発明者の検討によれば、細径化、低番手化する場合には、ストランドの番手あたりの張力が、例えば特許文献1に開示されているECG75のような比較的太い繊維径、大きい番手のものに比して、高くなる傾向があることを知得した。そして、細径化、低番手化したストランドを巻き取ったケークにおいて、巻き取ったガラスストランドによる、ストランドの番手あたりの締め付け力が特にケーク内層部で大きくなり、ケーク内層部にて巻き取ったストランドは該ストランドが押し潰されてストランドを構成するフィラメントがそれぞれ拡幅しストランドが扁平化しやすくなること、そして、ケーク内層部のストランドが位置することになるヤーンパッケージ外層部においても拡幅の程度がヤーンパッケージ内層部に比して大きくなり、これに起因してフィラメントの集束度合が比較的低くなり、ガラスクロス製造工程において毛羽の発生や糸切れが多くなる場合があることを知得した。
【0008】
また、本発明者は、細径化、細番手化したガラスヤーンは、整経工程においてガラスヤーンパッケージから引き出される際、低速で解舒されること、及びガラスヤーンが軽量であることから、バルーニングが起こりにくくなることを知得した。すなわち、バルーニングとは、解除された糸がパッケージ周方向に回転しながら遠心力によって外方に膨らむことをいう。ここで、円筒状ボビンに巻かれたガラスヤーンは、円筒形状の軸方向(径方向と垂直方向)に引き出され、例えば特許文献1に開示されているECG75のような比較的大きい番手のガラスヤーンを、毎分1200m程度の高速で解舒すれば、ガラスヤーンはバルーニングする。しかしながら、本発明者は、細径化、細番手化したガラスヤーンは、整経工程においてガラスヤーンパッケージから引き出される際、低速で解舒されること、及びガラスヤーンが軽量であることから、バルーニングが起こりにくくなり、これに起因して、引き出されたガラスヤーンがガラスヤーンパッケージ表面に接触しやすくなり、整経工程における解舒の際に、毛羽や糸切れがより発生しやすくなることを知得した。また、糸切れについて、ガラスヤーンパッケージにおける巻取り部の高さが大きいと、整経工程において、ガラスヤーンパッケージから解舒されたガラスヤーンの、整経工程のヤーンガイドまでの長さが大きくなり、また、前記バルーニングしづらいことも相俟って、加撚されたガラスヤーンがゆるんだときに、撚りのためにガラスヤーンがもつれる所謂スナールが発生し、これがガイドで引っかかって糸切れが発生しやすくなることも知得した。
【0009】
そこで、本発明者がさらに検討を重ねた結果、円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下である、ガラスヤーンパッケージとすることで、細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができることを見出した。
【0010】
具体的に、本発明者の検討によれば、前述した特許文献1の実施例の、円錐台形状の表面角度αが13.5°の場合では、ボビン外径D2が100mmだとすると、正接から計算されるヤーンパッケージの最大外径は約186mmとなり、当該最大外径と全高L1(370mm)との比(全高L1/最大外径)は約2.0となる。そして、このような従来のヤーンパッケージでは、整経工程のような低速の解舒において引き出されたガラスヤーンがガラスヤーンパッケージ表面に接触しやすくなり、整経工程における解舒の際に、毛羽や糸切れがより発生しやすくなるところ、本発明によれば、前述したLf/Dを1.5以下に設定しつつ、巻取部の高さLfを200mm以下とすることにより、整経工程のような低速の解舒において引き出されたガラスヤーンがガラスヤーンパッケージ表面に接触することを低減させ、かつ、スナール発生を低減させることができることを突き止めた。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下である、ガラスヤーンパッケージ。
項2.項1に記載のガラスヤーンパッケージを用い、糸速200m/min以下の速度で整経をおこなう工程を含む、ガラスクロスの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガラスヤーンパッケージによれば、円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下であることから、細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のガラスヤーンパッケージの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のガラスヤーンパッケージは、円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下である。
【0015】
図1は、本発明のガラスヤーンパッケージの一例を示す模式図である。
図1に例示するように、本発明のガラスヤーンパッケージ1は、円筒状ボビン2と、該ボビン2上にガラスヤーンが巻かれた巻取部3とを含み、巻取部3が円錐台形状の外形を形成するテーパー部31を備え、前記巻取部3の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下である。
【0016】
また、
図1に例示するように、本発明のガラスヤーンパッケージ1は、巻取部3が円柱形状の外形を形成するストレート部32を備えることもできる。また、ボビン2は、作業性を高めるつかみ部21、及びフランジ部22を備えることもできる。以下、本発明のガラスヤーンパッケージ1の各構成についてさらに詳細に説明する。
【0017】
<ガラスヤーン>
ガラスヤーンを構成するガラス繊維のガラス材料としては、特に制限されず、例えば公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料としては、例えば、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、低誘電率・低誘電正接ガラス(NE,Lガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられ、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。上記ガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであってもよいし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであってもよい。
【0018】
ガラスヤーンを構成するフィラメントの直径としては、3~4.6μmが挙げられ、3~4.1μmが好ましく挙げられる。また、ガラスヤーンを構成するフィラメントの本数としては、25~100本が好ましく、25~50本がより好ましい。また、ガラスヤーンの番手としては、0.8~4.5texが挙げられ、0.8~2.5texが好ましく挙げられ、0.8~2texがより好ましく挙げられる。ガラスヤーンの撚り数としては、特に制限されないが、例えば、0~1.5回/25.4mm、より好ましくは0.3~1.0回/25.4mmが挙げられる。撚りの方向としては、S方向、Z方向のいずれであってもよい。また、ガラスヤーンパッケージ1におけるガラスヤーンの巻き量としては、例えば、50~400kmが挙げられ、50~300kmが好ましく挙げられる。
【0019】
<ボビン2>
本発明のガラスヤーンパッケージ1は、ガラスヤーンが巻かれた円筒状ボビン2を含む。円筒状ボビン2の材質としては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。円筒状ボビン2の全高としては、ガラスヤーンを巻くことができれば特に制限されないが、例えば、250mm以下が挙げられ、150mm以下が好ましく挙げられる。また、円筒状ボビン2の、巻取部3と接触する部分の最大外径dとしては、50~80mmが挙げられ、60~70mmが好ましく挙げられる。
【0020】
<巻取部3>
本発明のガラスヤーンパッケージ1は、ボビン2上にガラスヤーンが巻かれた巻取部3と、を含み、巻取部3が円錐台形状の外形を形成するテーパー部31を備える。そして、巻取部3の高さLfは200mm以下であり、50~120mmが好ましく、70~100mmがより好ましい。
【0021】
本発明のガラスヤーンパッケージ1は、巻取部3の高さLfと巻取部3の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下である。細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を一層図りつつ、ガラスヤーンパッケージの外観不良、巻き崩れを一層低減させる観点から、0.7~1.3が好ましく、0.9~1.3がより好ましく、1.1~1.2が特に好ましい。
【0022】
また、本発明のガラスヤーンパッケージ1は、テーパー部31に加え、ストレート部32を備えることができる。この場合、テーパー部31の長さ(円錐台形状における高さ)は、20~80mmが挙げられ、20~50mmがより好ましく挙げられる。また、巻取部3の高さLfに対する上記テーパー部31の長さの割合(テーパー部31の長さ/巻取部3の高さLf)としては、0.3~0.5が好ましく挙げられる。また、巻取部3の高さLfと、巻取部3の最大外径Dから円筒状ボビン2の巻取部3と接触する部分の最大外径dを減じた差(D-d)と、の比(Lf/(D-d))としては、3~10が挙げられる。
【0023】
<ガラスヤーンパッケージの製造方法>
本発明のガラスヤーンパッケージ1の製造方法としては、特に制限されない。例えば、円筒状ボビン2、及びガラスストランドが巻き取られたケークを準備する工程、該ケークに巻き取られたガラスストランドを、リング撚糸機を用いて巻き返し撚糸をおこなってガラスヤーンとし、巻取部3が円錐台形状の外形を形成するテーパー部31を備え、巻取部の高さLfが200mm以下であり、巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下となるように前記ガラスヤーンを前記ボビン2に巻く工程、を含むものとすることができる。
【0024】
<ガラスクロスの製造方法>
本発明のガラスクロスの製造方法は、前述した本発明のガラスヤーンパッケージを用い、糸速200m/min以下の速度で整経をおこなう工程を含むことができる。
【0025】
<ガラスヤーンパッケージの用途>
本発明のガラスヤーンパッケージは、細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができることから、薄型のガラスクロス、例えば厚さが12μm以下のガラスクロスの、経糸として好適に用いることができる。また、緯糸として使用しても差し支えはない。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0027】
(実施例1)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が110mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0028】
2.撚糸工程
リング撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は100kmとした。
【0029】
(実施例2)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が110mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0030】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は200kmとした。
【0031】
(実施例3)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が110mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0032】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は200kmとした。
【0033】
(実施例4)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が80mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0034】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は200kmとした。
【0035】
(比較例1)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が225mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0036】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は100kmとした。
【0037】
(比較例2)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が225mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0038】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は200kmとした。
【0039】
(比較例3)
1.ケーク及び円筒状ボビンの準備
ケークとして、ガラス材料がEガラス、フィラメント径が3.6μm、フィラメント本数が40本であるガラスストランドを巻いたものを準備した。また、円筒状ボビンとして、ABS樹脂製で、
図1に示す形状で、全高が140mm、巻取部3と接触する部分の最大外径dが65mmであるボビンを準備した。
【0040】
2.撚糸工程
撚糸機に上記準備したケーク及び円筒状ボビンをセットし、得られるガラスヤーンパッケージの形状が表1に記載する形状となるように、ガラスヤーンパッケージ最外層部における撚り数がZ方向に0.5(回/25mm)となるようにケークから巻き返して撚糸をおこない、ガラスヤーンパッケージを得た。得られたガラスヤーンの番手は1.1texであった。また、ガラスヤーンの巻き量は200kmとした。
【0041】
<ガラスヤーンパッケージの外層部における毛羽発生の評価>
各ガラスヤーンパッケージを軸方向が水平方向に向くようにセットし、円筒状ボビンの先端部(
図1でいうつかみ部21の先端部)から250mmの位置にスネイルガイドをセットし、さらにスネイルガイドの先に長さ1.5mm以上の毛羽数をカウントするセンサーをセットし、ガラスヤーンをつかみ部21の先端部の方向へ糸速160m/minで500m解舒して、毛羽数を測定した。毛羽数が30個以下を合格とした。
【0042】
<スナール発生の評価(ガラスヤーンパッケージの外層部における、整経工程での糸切れ低減の評価)>
各ガラスヤーンパッケージを軸方向が水平方向に向くようにセットし、円筒状ボビンの先端部(
図1でいうつかみ部21の先端部)から250mmの位置にスネイルガイドをセットし、ガラスヤーンパッケージの最外層部分からガラスヤーンをつかみ部21の先端部の方向へ糸速160m/minで100m解舒することを10回おこない、スナールの発生頻度を観察した。なお、スナールとは、撚り戻しによる突起の発生であり、当該突起の長さが1cm以上のものをスナールとしてカウントした。スナールの発生頻度は、以下の基準で評価をおこない、○以上を合格とした。
◎・・・試行回数10回のうち、スナールの発生がない。
○・・・試行回数10回のうち、スナールの発生が1回。
×・・・試行回数10回のうち、スナールの発生が2回以上。
【0043】
各ガラスヤーンパッケージの形状等、及び評価結果について表1に示す。
【0044】
【0045】
実施例1~4のガラスヤーンパッケージは、円筒状ボビンと、該ボビン上にガラスヤーンが巻かれた巻取部と、を含むガラスヤーンパッケージであって、前記巻取部が円錐台形状の外形を形成するテーパー部を備え、前記巻取部の高さLfが200mm以下であり、前記巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.5以下であることから、細径化及び低番手化したガラスヤーンがボビンに巻かれたガラスヤーンパッケージを用いた薄型ガラスクロスの製造において、該ガラスヤーンパッケージの外層部における、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができるものであった。中でも、実施例1~3は、巻取部の高さLfと前記巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が0.9~1.3であったことから、実施例4に比して、外観不良、巻き崩れがより一層低減できるものであった。とりわけ、実施例2のガラスヤーンパッケージは、巻取部の高さLfと巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が1.1~1.2であったことから、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減をより一層図ることができるものであった。
【0046】
一方、比較例1及び2のガラスヤーンパッケージは、それぞれ巻取部の高さLfと巻取部の最大外径Dとの比(Lf/D)が3.01、及び2.83であり、1.5を越えるものであったことから、毛羽の発生低減及び整経工程での糸切れ低減を図ることができないものであった。また、比較例3は、上記比が1.58であり、1.5を越えるものであったことから、毛羽の発生低減を図ることができないものであった。