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  • 特許-脳波計測用ヘッドギア 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】脳波計測用ヘッドギア
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20230919BHJP
   A61B 5/369 20210101ALI20230919BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20230919BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/369
A61B5/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019170910
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021045424
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木元 省吾
(72)【発明者】
【氏名】奥井 敬造
(72)【発明者】
【氏名】森本 梓
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 康
(72)【発明者】
【氏名】横田 悠右
(72)【発明者】
【氏名】宮本 章尋
(72)【発明者】
【氏名】田中 真悟
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104337(JP,A)
【文献】特開2017-170134(JP,A)
【文献】特開2019-076712(JP,A)
【文献】特開2017-074369(JP,A)
【文献】特開2018-043061(JP,A)
【文献】国際公開第2019/002109(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/055156(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/134027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-0538、5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頭部に配置可能なバンドと、複数の櫛歯を含む電極が設けられた電極ユニットとを備え、
前記バンドは、
リング状のヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドに取り外し可能に固定され、前記頭部上に配置される装着用バンドと
を有し、
前記装着用バンドは、装着シートを有し、前記装着シートの前記頭部に対向可能な表面に、装着領域と、ねじれ防止領域とを有し、
前記ねじれ防止領域は、前記装着領域を挟んで両側に配置されており、前記装着領域よりも幅が広く、
前記装着領域に前記電極ユニットが設けられ、
前記ねじれ防止領域にパッドが設けられ
前記パッドは、前記ねじれ防止領域の表面に対向するパッド裏面と、前記パッド裏面に対し背中合わせのパッド表面とを有し、前記パッド表面が前記頭部に接するように構成されている
脳波計測用ヘッドギア。
【請求項2】
前記電極ユニットは、前記複数の櫛歯が、前記装着領域の表面から突出するように形成されている、請求項1に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項3】
前記ねじれ防止領域は、前記複数の櫛歯の長手方向に直交する方向の前記電極ユニットの両側に配置されている、請求項1又は2に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項4】
記装着領域の表面から前記パッド表面までの高さが前記装着領域の表面から前記複数の櫛歯の先端の高さより低い、請求項1~のいずれか1項に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項5】
前記装着用バンドは、前記頭部の左側の側頭部から右側の側頭部へ向かって配置可能に形成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項6】
各々が前記装着用バンドと同様に形成された複数の装着用バンドが設けられている、請求項に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項7】
前記装着用バンドは、各々が前記装着領域と同様に形成された複数の装着領域を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項8】
前記ヘッドバンドは、前記頭部の外後頭隆起の下側に配置可能に形成され、下方に突出するように湾曲した支持領域を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の脳波計測用ヘッドギア。
【請求項9】
前記電極ユニットは、
前記複数の櫛歯を有する電極と、
前記電極を保持するベースと
を備え、
前記ベースは、
前記装着用バンドの表面に固定可能な装着面を有する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記装着面と反対方向へ斜めに突出した保持部と、
前記保持部との間に前記電極を挟むクランプと
を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の脳波計測用ヘッドギア
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波計測用ヘッドギア及び電極ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
脳波は、従来より皿状の電極を導電性のペーストやジェル等を介して間接的に頭皮に接触させて測定される。この場合、測定後、頭髪に付着したペーストやジェル等を除去するために洗髪が必要であるなど、作業上の手間を伴う。
【0003】
ペーストやジェル等を用いないペーストレスのドライ電極として、剣山状の電極が知られている。金属製の電極は硬質なため、頭部の電極が接触する部分で痛みを伴う。
【0004】
これに対して、金属ばねを備えることにより伸縮性と可撓性を備え、従来の剣山状の電極に比べ痛みを低減させた電極が開示されている(例えば、特許文献1)。ところが、電極の先端は、頭髪を回避して頭皮に直接接触させるため、細くなっており、頭皮と点で接触する構造となる。したがってヘッドギアなどを用いて固定した際に頭部にかかる圧力により、痛みが生じ、30分程度の短時間での装着は問題ないが、30分以上の長時間の装着時には頭部の痛みを伴うという問題があった。
【0005】
ペーストやジェル等を用いないペーストレスのドライ電極で、頭皮と面で接触させることにより接触面積を大きくし頭皮への負担を大幅に減らした櫛歯形状の電極が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、上記のような皿状の電極を用いたヘッドギアとして、頭部全体を覆い全体の様々な場所からの脳波測定を可能とする、水泳帽の内側に多くの電極を配置したヘッドギアが使用されている(例えば、特許文献3、非特許文献1)。
【0007】
ヘッドギアとしては、様々な人の頭部の形状にフィットし、頭部の特定の部位に強い圧力がかからないような構造を用いて頭皮への負担を軽減させるヘッドギアが開示されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-240485号公報
【文献】特開2017-74369号公報
【文献】特開2002-177231号公報
【文献】特開2015-221144号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】g.tec社製 脳波キャップ式電極 waveguard Connect、[令和1年8月1日検索]、インターネット<URL:http://www.miyuki-net.co.jp/jp/products_expendables/Details/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献3のヘッドギアは、頭の形は人それぞれで異なることから、特に後頭部の形状にフィットせず、電極が浮いてしまう場合がある。
【0011】
特許文献4のヘッドギアは、電極の先端において頭皮と点接触する構造であるため、30分程度の短時間での装着は問題ないが、30分以上の長時間の装着時には頭部の痛みを生じさせるという問題があった。
【0012】
特許文献2の櫛歯状の電極は、頭皮への負担を大幅に減らすことができるものの、例えば、特許文献4のヘッドギアに適用したとしても、電極表面を安定して頭皮に接触させることが困難であるという問題があった。
【0013】
本発明は、櫛歯状の電極を安定的に頭皮に接触させることができる脳波計測用ヘッドギア及び電極ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る脳波計測用ヘッドギアは、被験者の頭部に配置可能なバンドと、複数の櫛歯を含む電極が設けられた電極ユニットとを備え、前記バンドは、リング状のヘッドバンドと、前記ヘッドバンドに取り外し可能に固定され、前記頭部上に配置される装着用バンドとを有し、前記装着用バンドは、前記頭部に対向可能な表面に、装着領域と、ねじれ防止領域とを有し、前記装着領域に前記電極ユニットが設けられ、前記ねじれ防止領域にパッドが設けられる。
【0015】
本発明に係る電極ユニットは、リング状のヘッドバンドと、被験者の頭部上に配置される装着用バンドとを有するバンドに装着可能な電極ユニットであって、前記装着用バンドの表面に固定可能な装着面と、前記装着面と反対向きに突出する複数の櫛歯と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パッドは頭部に接触し、頭皮と、ねじれ防止領域における装着用バンドの間の距離を一定に保持することによって装着領域のねじれが防止されるので、頭皮接触面はより安定的に頭皮に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の脳波計測用ヘッドギアの使用状態を示す斜視図である。
図2】本実施形態の脳波計測用ヘッドギアの使用状態を示す背面図である。
図3】本実施形態の装着用バンドを示す斜視図である。
図4A】本実施形態の装着用バンドを示す正面図である。
図4B】本実施形態の装着用バンドを示す平面図である。
図5】本実施形態の電極ユニットを示す縦断面図である。
図6】変形例に係る脳波計測用ヘッドギアの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.全体構成
図1に示すように脳波計測用ヘッドギア(以下、「ヘッドギア」という。)10Aは、バンド12Aと、電極ユニット14とを備える。バンド12Aは、ヘッドバンド16と、装着用バンド18とを有する。
【0019】
(ヘッドバンド)
ヘッドバンド16は、リング状であり、伸縮バンド20と、伸縮バンド20と連結された保持シート22とを有する。伸縮バンド20は、頭部1の額側に配置される。伸縮バンド20は、額の左右方向の長さを有する帯状のゴムで形成されており、両端にリング24が設けられている。
【0020】
保持シート22は、頭部1の両側の側頭部から後頭部側に配置される。保持シート22は、シート本体26と、クッション28と、第1面ファスナー30とを有する。シート本体26は、厚さ方向に弾性変形可能なプラスチック製の板状部材を帯状に切り出して形成される。シート本体26の両端に、リング24と連結可能な連結具25が設けられている。
【0021】
保持シート22は、図2に示すように、長手方向中央に支持領域32を有する。支持領域32において保持シート22は、下方に突出するように湾曲しており、頭部1の外後頭隆起3の下側に配置される。ヘッドバンド16は、支持領域32において、外後頭隆起を下側から支持する。
【0022】
クッション28は、図1に示すように、シート本体26の頭部1に接する内面に設けられている。クッション28は、支持領域32における、外後頭隆起に接する範囲に、設けられている。第1面ファスナー30は、シート本体26の、内面と背中合わせの外面に設けられている。第1面ファスナー30は、両側の側頭部から後頭部に至る範囲に設けられている。クッション28は、柔軟な材料、例えば、シリコーン・熱可塑性エラストマー・立体編物・立体織物・ゴム・発泡材などで形成することができる。
【0023】
(装着用バンド)
図1に示すように、装着用バンド18は、頭部1の左側の側頭部から頭頂部を通って右側の側頭部へ向かって配置される。装着用バンド18は、装着シート34と、一対の固定ベルト36とを有する。
【0024】
装着シート34は、厚さ方向に弾性変形可能なプラスチック製の板状部材を切り出して形成されている。図3に示すように、装着シート34は、幅が狭い領域と、当該領域の両側にそれぞれ幅が広い領域とを有するH形状の輪郭を備える。図4Aに示すように、頭部1に対向するシート表面39の、装着シート34の幅が狭い領域を装着領域35、装着シート34の幅が広い領域をねじれ防止領域37と呼ぶ。装着領域35は、装着シート34の中央に配置されている。装着領域35に電極ユニット14が設けられており、ねじれ防止領域37にパッド38が設けられている。図4Bに示すように、装着シート34は、シート表面39、及びシート表面39と背中合わせのシート裏面40に、それぞれ第1面ファスナー30が設けられている。
【0025】
一対の固定ベルト36は、長手方向に伸縮可能なベルトであって、頭部1に対向する表面に、第2面ファスナー42が設けられている。第2面ファスナー42は、第1面ファスナー30と相補的に形成されている。一対の固定ベルト36は、基端部分において、シート裏面40の第1面ファスナー30にそれぞれ接合され、装着シート34と一体化される。
【0026】
図3に示すように、シート表面39に、電極ユニット14と、複数のパッド38とが設けられている。パッド38は、櫛歯の長手方向に直交する方向の電極ユニット14の両側の位置(電極ユニット14を挟んで頭部1に対し左右方向の位置)に配置されている。パッド38は、直方体形状であって、頭部に向かって配置されるパッド表面において頭部1に接し、頭部1の形状に順応する柔らかい材料、例えば、ポリウレタンフォームで形成することができる。
【0027】
パッド38は、図4Bに示すように、ねじれ防止領域37のシート表面39に対向するパッド裏面に第2面ファスナー42が設けられている。パッド38の第2面ファスナー42が、シート表面39の第1面ファスナー30と接合することによって、パッド38が装着シート34と一体化される。パッド38の厚さ、すなわち、パッド表面と、前記パッド表面と背中合わせのパッド裏面の間の長さは、装着シート34のねじれ方向の変形を抑えて電極を安定的に頭皮へ接触させることができる範囲に制限される。
【0028】
(電極ユニット)
図3に示すように、電極ユニット14は、電極44とベース46とを有する。電極44は支持部45と、この支持部45に突設された複数の櫛歯47とを有する(図5)。電極44は、厚さ方向に緩やかに折れ曲がっており、複数の櫛歯47の外側が、頭皮に接触する頭皮接触面49となる。
【0029】
電極44は、柔軟性、導電性を有する。電極44は、熱可塑性エラストマーを母材とし、ナノ炭素材料を含む成形体である。熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが用いられる。頭皮接触面49は、ナノ炭素材料による導電パスが形成されている。本実施形態においてナノ炭素材料は、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)が用いられる。母材としての熱可塑性エラストマーの弾性を損なうことなく、頭皮接触面49に導電パスを形成するために、CNTは母材の3~30wt%の量で配合されることが好ましい。
【0030】
複数の櫛歯47の先端は、角部を有さない丸みを帯びた形状であることが好ましい。櫛歯47の数は限定されず、支持部や櫛歯47の大きさ等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
ベース46は、本体部48と、保持部50と、クランプ54とを有する。図5に示すように、本体部48は、板状であって、シート表面39に対向する側に装着面52を有する。装着面52には、第2面ファスナー42が設けられている。
【0032】
保持部50は、本体部48の4つの辺のうちの一つの辺を基点とし、装着面52と反対方向へ斜めに突出している。保持部50の先端の表面には、雌ねじが形成されている。クランプ54は、矩形の板であって、ねじが挿入される貫通穴を有する。貫通穴は、雌ねじに対応した位置に形成されている。
【0033】
電極44は、頭皮接触面49を装着面52と背中合わせになる向きにして、保持部50の先端表面に、支持部45を接触させる。支持部45の表面に皿電極58、皿電極58の表面にクランプ54を重ねる。貫通穴に挿入されたボルト56を雌ねじにねじ込むことによって、電極44及び皿電極58をクランプ54と保持部50先端の間に挟んで、電極44をベース46に一体化させる。皿電極58は、コード60の基端が接続されている。コード60は、先端にコネクタ(図示しない)を備える。コネクタが外部回路(図示しない)に接続されることによって、電極44が外部回路に電気的に接続される。
【0034】
電極ユニット14は、図4Bに示すように、装着面52の第2面ファスナー42を、シート表面39の第1面ファスナー30に接合することによって、装着シート34の装着領域35に一体化される。櫛歯47は、ベース46によって装着面52と反対向きに突出するように装着領域35に保持される。
【0035】
装着領域35の表面からパッド表面までの高さH1は、前記装着領域35の表面から前記電極44の櫛歯47の先端までの高さH2より低い。したがって、電極44の櫛歯47の先端は、頭皮接触面49を頭部に向けた状態で、パッド表面より頭部へ向かうように突出している。
【0036】
2.作用及び効果
上記ヘッドギア10Aの作用及び効果について説明する。最初にヘッドギア10Aの装着手順を説明する。まず、伸縮バンド20を伸ばし、被験者の頭部1に上方からヘッドバンド16を装着する。ヘッドバンド16は、頭部1を一周するように装着される。伸縮バンド20が額側に配置され、保持シート22が後頭部側に配置される。保持シート22の両端は両側の側頭部に配置され、支持領域32が外後頭隆起3の下側に配置される。外後頭隆起3の表面に、クッション28が接触している。
【0037】
次いで、装着用バンド18を頭部1の上方に配置し、電極ユニット14の櫛歯47を頭髪の流れと逆方向、すなわち櫛歯47の先端を頭部1の後方へ向けて、頭頂部における頭髪に差し込み、頭皮接触面49を頭頂部の頭皮に接触させる。その状態で、固定ベルト36を頭部表面に沿って這わせて、先端部分をヘッドバンド16に接合させる。このようにして、装着用バンド18は、頭部1の左側の側頭部から頭頂部を通って右側の側頭部へ向かって配置される(図1)。
【0038】
パッド38は、電極44の左右両側において、頭部1に接触し、頭部表面と、ねじれ防止領域37における装着用バンド18の間の距離を一定に保持する。パッド38によって装着領域35のねじれが防止されるので、頭皮接触面49はより安定的に頭皮に接触する。したがって、ヘッドギア10Aは、微弱な脳波をより安定的に検出することができる。
【0039】
固定ベルト36は、面ファスナーを介してヘッドバンド16に接合するので、ヘッドバンド16に対する装着ベルトの位置や姿勢を適宜変更することができる。したがって、ヘッドギア10Aは、被験者の頭部1の形状に合わせて、電極44をより安定的に固定することができる。
【0040】
頭皮接触面49は、複数のCNTによって導電パスが形成されている。これによって、導電性ペーストを用いなくても、電極44と被験者の頭部1との間の導通が確保されるので、電気信号をより正確に検出することができる。
【0041】
複数の櫛歯47を含む電極44は、弾性体からなり、柔軟性、導電性を有している。複数の櫛歯47は、頭皮接触面49で被験者の頭部1に接触するので、点接触する場合に比べ、被験者の負担を軽減することができる。
【0042】
3.変形例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、接合構造は、面ファスナーに限らず、スナップボタン又はクリップを用いてもよい。
【0043】
図6に示すように、ヘッドギア10Bは、バンド12Bと電極ユニット14とを備える。バンド12Bは、ヘッドバンド16と、各々が上記装着用バンド18と同様に形成された複数の装着用バンド18C、18F、18Rを備える。各装着用バンド18C、18F、18Rは、それぞれ電極ユニット14及びパッド38が設けられ、左側の側頭部から右側の側頭部へ向かって配置される。ヘッドギア10Bは、頭頂部に電極ユニット14を保持する装着用バンド18C、額側の中央部に電極ユニット14を保持する装着用バンド18F、後頭部側の中央部に電極ユニット14を保持する装着用バンド18Rを含む。ヘッドギア10Bは、頭頂部を中心に前後方向にずれた位置における脳波を同時に検出することができる。
【0044】
装着用バンド18は、頭部1の額側から頭頂部を通って後頭部側へ向かって配置されてもよい。この場合、伸縮バンド20の外面と、保持シート22の支持領域32の外面に第1面ファスナー30が設けられる。装着用バンド18の一対の固定ベルト36の先端は、それぞれ伸縮バンド20の外面と保持シート22の支持領域32の外面に設けられた第1面ファスナー30に接合される。電極ユニット14は、櫛歯47の長手方向を頭部1の前後方向に平行となるように配置される。パッド38は、電極ユニット14を挟んで頭部1に対し左右方向の位置に配置されてもよいし、複数の櫛歯47の長手方向に平行な方向の電極ユニット14の両側の位置(電極ユニット14を挟んで頭部1の前後の位置)に配置されてもよい。
【0045】
電極44は、ナノ炭素材料に変えて、金属フィラーを用いてもよい。またポリアミド系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマー、樹脂、ゴム、又は金属で形成してもよい。
【0046】
ポリアミド系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、およびポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)等が挙げられる。
【0047】
樹脂としては、例えばアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリロニトリルブタジエン(ABS)樹脂、エポキシ樹脂、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ヘキサフルオロプロピレン・エチレン共重合体(EFEP)、ポリビニリデンフルオロライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメリレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメリレンドデカミド(ナイロン612)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリウンデカンメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリデカメチレンデカンアミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカンアミド(ナイロン1012)アミド系エラストマー(TPA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、架橋ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合体(BVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリブテン(PB)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンコポリマ(COC)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリアリレート(PAR)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂(PF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチレン(PS)、ポリサルホン(PSU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0048】
ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ポリウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(VMQ、FVMQ)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、フッ素系ゴム(FKM、FEPM,FFKM)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ブタジエンゴム(BR)、およびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0049】
ナノ炭素材料としてのCNTは、チューブ状のものに限定されない。加熱などにより形状が変化したCNTを用いてもよい。CNT以外のナノ炭素材料、例えばグラフェンを用いることもできる。グラフェンは、CNTと同様に高い導電性を有するナノ炭素材料である。CNTをグラフェンに変更する以外は上述と同様の手法により、グラフェン混練原料を調製し、これを用いて電極を成形することができる。CNTとグラフェンとを組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
電極44の一部に金属板等の金属部材が含まれていてもよい。例えば、支持部45の表面に金属板を配置してもよい。支持部45の表面に金属板を設けることによって電気信号が伝達し易くなり、測定の精度をより高めることができる。
【0051】
パッド38は、複数の櫛歯47の長手方向に平行な方向の電極ユニット14の両側の位置(電極ユニット14を挟んで頭部1の前後の位置)に配置されてもよい。パッド38は、直方体形状である場合に限らず、所定の厚みを有する、立方体形状でもよい。パッド38は、4個である場合に限らず、1個、2個でもよい。
【0052】
装着シート34の輪郭は、円形状又は矩形状であってもよい。この場合、ねじれ防止領域はリング状に形成され、装着領域はねじれ防止領域に囲まれた中央部分に配置してもよい。パッド38は、ねじれ防止領域に合わせて、装着領域を囲むように、リング形状、C字形状、U字形状でもよい。パッド38は、ポリウレタンフォームに限らず、適切な軟質材料、例えば、シリコーン・熱可塑性エラストマー・立体編物・立体織物・ゴム・発泡材などで形成することができる。
【0053】
装着用バンド18は、電極ユニット14を一つ有する場合に限らず、2個、又は3個以上有する場合を含む。
【0054】
装着シート34と、一対の固定ベルト36は、接合構造を介して取り外し可能に一体化される場合に限らず、接着剤などによって取り外しできないように一体化されてもよい。
【0055】
電極ユニットは、電極とベースが一体に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 頭部
3 外後頭隆起
10A、10B ヘッドギア
12A、12B バンド
14 電極ユニット
16 ヘッドバンド
18、18C、18F、18R 装着用バンド
32 支持領域
35 装着領域
37 ねじれ防止領域
38 パッド
44 電極
46 ベース
47 櫛歯
48 本体部
50 保持部
52 装着面
54 クランプ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6