IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キョクトーの特許一覧

特許7350261エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー
<>
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図1
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図2
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図3
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図4
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図5
  • 特許-エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】エアブローノズル及びエアブローノズル付きチップドレッサー
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20230919BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20230919BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
B23K11/30 350
B23B25/00 A
B23Q11/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020031723
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021133397
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】手澤 和宏
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/151623(WO,A1)
【文献】特開2001-287046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/30
B23B 25/00
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部を有し、当該中空部に連通する連通孔が形成された収容ケースと、
上記中空部に上記連通孔を介して着脱可能に、且つ、上記連通孔の孔中心に沿って延びる回転軸心周りに回転可能に配設され、上記連通孔に対応する湾曲凹部及び回転軸心に沿って貫通する貫通部を有する回転ホルダと、
上記貫通部の内側面に取り付けられた切削部材とを備え、
上記回転ホルダを回転させた状態でスポット溶接用電極チップを上記連通孔を介して湾曲凹部に挿入することにより、上記電極チップの先端部を上記切削部材で切削するよう構成されたチップドレッサーに取り付けられるエアブローノズルであって、
水平方向に延びる棒状をなし、一端がエア供給源に接続される一方、他端に上記エア供給源から供給される圧縮エアを吐出可能なエア吐出部が設けられたノズル本体と、
上記収容ケースの外面に固定され、かつ、上記ノズル本体が水平方向にスライド可能に嵌挿されるスライド孔を有し、上記ノズル本体を支持する支持体と
上記ノズル本体が他方側にスライドするよう当該ノズル本体を付勢する付勢部材と、を備え、
上記エア吐出部は、上記ノズル本体を一方側にスライドさせた際、上記連通孔に対応しない位置まで移動可能に構成され、
上記ノズル本体には、当該ノズル本体を他方側にスライドさせた際、上記エア吐出部を上記回転ホルダに接近した予め決められた所定位置に位置決めする位置決め部が設けられていることを特徴とするエアブローノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のエアブローノズルにおいて
記付勢部材は、上記ノズル本体に巻装され、一端が上記エア吐出部に接する一方、他端が上記支持体に接するコイルバネであることを特徴とするエアブローノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアブローノズルにおいて、
上記エア吐出部のエア吐出口は、下方に真っ直ぐに延びて上記エア吐出部下面に開口する穴形状か、或いは、上記ノズル本体の中心線に沿って延びて上記エア吐出部端面の下側と上記エア吐出部下面とに連続して開口するスリット形状をなしていることを特徴とするエアブローノズル。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載のエアブローノズルと、
上記連通孔が上記収容ケースの上面及び下面の互いに対向する位置に一対形成された上記収容ケースと、
該収容ケースの下側に配設され、切削動作時に上記貫通部に発生するとともに上記収容ケースの下側の上記連通孔を介して下方に落下する切粉を回収する切粉回収ユニットとを備え、
該切粉回収ユニットは、上記収容ケースの下側の上記連通孔の下方における切粉落下領域の一側方に設けられ、一端に上記切粉落下領域に対応する切粉回収口を有する一方、他端に上記切粉を回収可能な切粉回収器が接続された切粉案内体と、上記切粉落下領域の他側方に設けられ、上記切粉回収口へと圧縮エアを吐出するエア吐出ユニットとを備えていることを特徴とするチップドレッサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端部を切削するチップドレッサーに取り付けられたエアブローノズル及びそのエアブローノズルが取り付けられたチップドレッサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の生産ラインでは、車体の組み立てにスポット溶接が多用されている。該スポット溶接では、溶接作業を繰り返すと電極チップの先端に酸化皮膜が付着し、その状態のままで溶接を行うと溶接部の品質が低下するので、チップドレッサーにより定期的に電極チップの先端部を切削して酸化皮膜を取り除く必要がある。
【0003】
ところで、チップドレッサーで電極チップの先端部を切削する際に発生する切粉が電極チップを切削する切刃部に引っ掛かったままの状態になると、電極チップの切削作業の邪魔になってしまう。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1では、チップドレッサーにエアブローノズルが取り付けられている。該エアブローノズルは、チップドレッサーの収容ケースの外面に固定され、一端がエア供給源に接続される一方、他端にエア吐出部を有するノズル本体を備え、エア供給源から供給される圧縮エアをエア吐出部のエア吐出口からチップドレッサーにおける収容ケースの連通孔を介して収容ケース内部に配設された回転体の切刃部に向けて吐出して切刃部に付着する切粉を払い落とすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/151623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、チップドレッサーによる電極チップの切削作業を繰り返し行うと、回転体の切刃部が消耗するので、回転体を周期的に収容ケースの連通孔から収容ケースの外側に取り外して切刃部のメンテナンスを行う必要がある。そして、特許文献1の如きエアブローノズルが取り付けられたチップドレッサーの場合、エアブローノズルのノズル本体が収容ケースの連通孔近傍に位置しているので、メンテナンス作業を行い易くするために、一時的にノズル本体を収容ケースの連通孔から遠ざけておく必要がある。
【0007】
しかし、ノズル本体を収容ケースの連通孔から遠ざけてメンテナンス作業を行うと、作業者が再びノズル本体を収容ケースの連通孔近傍の位置に配置し直した際に、ノズル本体を遠ざける前の位置と同じ位置に配置されなくなってしまい、切削作業再開後においてエア吐出部から吐出する圧縮エアによって切刃部に付着する切粉を払い落とせなくなってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チップドレッサーのメンテナンスを周期的に行っても、メンテナンス後の切削作業時において切刃部に付着する切粉を確実に払い落とすことができるエアブローノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、メンテナンス作業時にノズル本体を収容ケースの連通孔近傍から遠ざけることができる一方、メンテナンス作業後においてノズル本体のエア吐出部を予め決められた所定位置まで再現性良く戻すことをできるように工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、内部に中空部を有し、当該中空部に連通する連通孔が形成された収容ケースと、上記中空部に上記連通孔を介して着脱可能に、且つ、上記連通孔の孔中心に沿って延びる回転軸心周りに回転可能に配設され、上記連通孔に対応する湾曲凹部及び回転軸心に沿って貫通する貫通部を有する回転ホルダと、上記貫通部の内側面に取り付けられた切削部材とを備え、上記回転ホルダを回転させた状態でスポット溶接用電極チップを上記連通孔を介して湾曲凹部に挿入することにより、上記電極チップの先端部を上記切削部材で切削するよう構成されたチップドレッサーに取り付けられるエアブローノズルを対象とし、次のような対策を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、水平方向に延びる棒状をなし、一端がエア供給源に接続される一方、他端に上記エア供給源から供給される圧縮エアを吐出可能なエア吐出部が設けられたノズル本体と、上記収容ケースの外面に固定され、かつ、上記ノズル本体が水平方向にスライド可能に嵌挿されるスライド孔を有し、上記ノズル本体を支持する支持体と、上記ノズル本体が他方側にスライドするよう当該ノズル本体を付勢する付勢部材と、を備え、上記エア吐出部は、上記ノズル本体を一方側にスライドさせた際、上記連通孔に対応しない位置まで移動可能に構成され、上記ノズル本体には、当該ノズル本体を他方側にスライドさせた際、上記エア吐出部を上記回転ホルダに接近した予め決められた所定位置に位置決めする位置決め部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
の発明では、第1の発明において、上記付勢部材は、上記ノズル本体に巻装され、一端が上記エア吐出部に接する一方、他端が上記支持体に接するコイルバネであることを特徴とする。
【0014】
の発明では、第1又は2の発明において、上記エア吐出部のエア吐出口は、下方に真っ直ぐに延びて上記エア吐出部下面に開口する穴形状か、或いは、上記ノズル本体の中心線に沿って延びて上記エア吐出部端面の下側と上記エア吐出部下面とに連続して開口するスリット形状をなしていることを特徴とする。
【0015】
の発明では、チップドレッサーが、第1から第のいずれか1つに記載のエアブローノズルと、上記連通孔が上記収容ケースの上面及び下面の互いに対向する位置に一対形成された上記収容ケースと、該収容ケースの下側に配設され、切削動作時に上記貫通部に発生するとともに上記収容ケースの下側の上記連通孔を介して下方に落下する切粉を回収する切粉回収ユニットとを備え、該切粉回収ユニットは、上記収容ケースの下側の上記連通孔の下方における切粉落下領域の一側方に設けられ、一端に上記切粉落下領域に対応する切粉回収口を有する一方、他端に上記切粉を回収可能な切粉回収器が接続された切粉案内体と、上記切粉落下領域の他側方に設けられ、上記切粉回収口へと圧縮エアを吐出するエア吐出ユニットとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、ノズル本体を一方側にスライドさせると、エア吐出部が収容ケースの連通孔に対応しない位置となるので、作業者は連通孔から回転ホルダを取り出して切削部材のメンテナンス作業を行うことができる。一方、作業者は、メンテナンス作業が終了した後、回転ホルダを連通孔から収容ケースの中空部に戻し、その後、ノズル本体を他方側にスライドさせると、エア吐出部が位置決め部によって予め決められた所定位置に戻るようになる。このように、メンテナンス作業を行った後に、回転ホルダに対するノズル本体のエア吐出部の位置がばらつかないようになるので、メンテナンス作業後の切削作業時において切刃部に付着する切粉を確実に払い落とすことができる。また、作業者は付勢部材の付勢力に抗してノズル本体を一方側にスライドさせた状態に維持すると、回転ホルダを連通孔から取り出して切削部材のメンテナンスを行うことができる一方、ノズル本体から手を離すと、付勢部材の付勢力によりノズル本体が自動的に他方側にスライドしてエア吐出部が予め決められた所定位置まで戻るようになる。したがって、作業者がメンテナンス作業後にノズル本体のエア吐出部を予め決められた所定位置に戻すのを忘れてしまい、切削作業後にエア吐出部から吐出される圧縮エアが回転ホルダに向けて吐出されなくなってしまうといったことを回避することができる。
【0018】
の発明では、エアブローノズルが、簡単な構造で、且つ、コンパクトな形状になるので、故障し難くなるとともに、エアブローノズル周りのスペースを有効利用することができる。
【0019】
の発明では、回転ホルダの上方から下方及び斜め下方の少なくとも一方に圧縮エアを吐出するようになるので、エア吐出部から吐出される圧縮エアが切削部材に当たりながら貫通孔をスムーズに通過するようになる。したがって、切削部材に付着する切粉を効率良く払い落すことができる。
【0020】
の発明では、エア吐出ユニットから吐出された圧縮エアの一部は収容ケースの下側の連通孔を介して収容ケースの内部に入り込むとともに回転ホルダの貫通部を上向きに通過しようとするが、エアブローノズルから吐出される圧縮エアによってエア吐出ユニットから吐出された圧縮エアにおける貫通部の上向きの通過が阻止されるようになる。したがって、切削動作時に貫通部において発生する切粉が落下せずにエア吐出ユニットから吐出された圧縮エアによって貫通部の上方に飛び出してしまうといったことを回避できるようになり、収容ケースの上側の連通孔からの切粉の装置周辺への飛散を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るエアブローノズルが取り付けられたチップドレッサーの斜視図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図1のIII矢視図である。
図4図1のIV-IV線における断面図である。
図5図4のV部拡大図である。
図6】回転ホルダをチップドレッサーから取り外すときの図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るチップドレッサー1を示す。このチップドレッサー1は、溶接ガンGのシャンクG1先端に嵌め込まれて対向する一対のスポット溶接用電極チップ10(図4参照)の湾曲する先端部10aを同時に切削するためのものであり、内部に中空部20を有する側面視で略L字状をなす本体ケース2(収容ケース)を有している。
【0024】
本体ケース2は、図示しない駆動モータを収容する有底円筒形状のモータ収容部2aと、該モータ収容部2aの上部から側方に略水平方向に延出し、且つ、平面視で略滴形状をなすホルダ収容部2bとを備え、該ホルダ収容部2bの基端側におけるモータ収容部2a側面には、本体ケース2に加わる衝撃を吸収する衝撃吸収機構部2cが取り付けられている。
【0025】
ホルダ収容部2bは、図4に示すように、厚みを有する板状をなし、その延出側中央には、上下に対向するとともに中空部20に連通する上側連通孔20a及び下側連通孔20bが形成されている。
【0026】
ホルダ収容部2b内部の上側連通孔20a及び下側連通孔20bの間には、図4に示すように、上下に貫通する取付用孔3aを有するリング状の出力歯車3が上下一対のベアリング7を介して上下方向に延びる回転軸心C1周りに回転可能にホルダ収容部2bに軸支され、モータ収容部2aに収容される駆動モータが図示しない歯車噛合機構を介して出力歯車3を回転駆動させるようになっている。
【0027】
取付用孔3aには、円盤状の回転ホルダ4が本体ケース2の上側連通孔20aを介して着脱可能に装着され、回転ホルダ4は、出力歯車3と共に回転軸心C1周りに回転するようになっている。
【0028】
回転ホルダ4は、平面視で略C字状をなし、回転軸心C1から径方向外側に向かうにつれて次第に回転軸心C1周りの周方向に拡がって外側方に開放するとともに上下にも開放する切欠部4a(貫通部)を有している。
【0029】
すなわち、切欠部4aは、回転軸心C1に沿って貫通している。
【0030】
また、回転ホルダ4の上端周縁には、その他の部分よりも外側方に拡がるフランジ部4bが形成されている。
【0031】
さらに、回転ホルダ4の上下面には、当該回転ホルダ4の中央部分に行くにつれて次第に縮径する一対の湾曲凹部4cが回転軸心C1方向に対称に形成され、各湾曲凹部4cは、上側連通孔20a及び下側連通孔20bにそれぞれ対応している。
【0032】
湾曲凹部4cの形状は、電極チップ10の先端部10aの湾曲形状に対応していて、電極チップ10の中心軸が回転軸心C1に一致した状態で電極チップ10の先端部10aが挿入されるようになっている。
【0033】
切欠部4aにおける回転軸心C1から外側方に延びる一方の内側面には、電極チップ10の先端部10aを切削するための切削カッター5(切削部材)が取り付けられている。
【0034】
該切削カッター5は、回転軸心C1と交差する方向に延びる切刃部5aが回転軸心C1に沿う方向に対称となるように一対形成され、その形状は、各湾曲凹部4cに対応するように緩やかに湾曲している。
【0035】
そして、回転ホルダ4を回転させた状態で互いに対向する一対の電極チップ10の一方を上側連通孔20aを介して上側の湾曲凹部4cに挿入し、且つ、他方を下側連通孔20bを介して下側の湾曲凹部4cに挿入することにより、各電極チップ10の先端部10aをそれぞれ切削カッター5の各切刃部5aで切削するようになっている。
【0036】
本体ケース2のホルダ収容部2b下部には、図3及び図4に示すように、切粉M1を吸引する切粉回収ユニット8が取付ブラケット9を介して取り付けられている。
【0037】
切粉回収ユニット8は、本体ケース2における下側連通孔20b下方の切粉落下領域R1の一側方に設けられた切粉案内体81と、切粉落下領域R1の他側方に設けられたエア吐出ユニット82と、切粉M1を回収可能な切粉回収器83とを備えている。
【0038】
切粉案内体81は、エア吐出ユニット82から水平方向に離れるにつれて次第に下方に位置するように緩やかに湾曲しながら延びる形状をなしていて、切粉M1を案内する切粉案内通路81aを内部に有している。
【0039】
切粉案内体81の一端には、切粉落下領域R1に対応するとともに切粉案内通路81aに連通する幅広の矩形状をなす切粉回収口81bが形成される一方、他端には上記切粉回収器83が接続されている。
【0040】
エア吐出ユニット82は、取付ブラケット9の下面に固定されたエアノズル82aと、該エアノズル82aに圧縮エアを供給するエアコンプレッサー82b(エア供給源)とを備えている。
【0041】
エアノズル82aは、切粉案内体81側に行くにつれて次第に上下の幅が狭くなる正面視で略三角形状のブロック体形状をなしている。
【0042】
エアノズル82aの切粉案内体81側には、切粉回収口81bに対向するエア吐出口82dが形成される一方、切粉案内体81の反対側には、エアコンプレッサー82bから延びる配管82cが接続されていて、エアコンプレッサー82bから供給される圧縮エアは、エア吐出口82dを介して切粉回収口81bに吐出されるようになっている。
【0043】
切粉回収器83は、図1に示すように、内部に切粉M1を貯留可能な略円筒状をなす貯留ボックス83aと、該貯留ボックス83aと切粉案内体81の下流側開口部分とを接続して切粉案内通路81aと貯留ボックス83a内部との間を連通させる接続管83bとを備え、接続管83bにおける貯留ボックス83a側の壁には、内部のエアを外部に排気するための排気孔83cが多数形成されている。
【0044】
取付ブラケット9は、略矩形板状をなし、下側連通孔20bに対応する開口部9aが形成されている。
【0045】
本体ケース2の上方には、図1に示すように、上側連通孔20aを介して回転ホルダ4に向けて圧縮エアを吐出するエアブローノズル6が接近配置されている。
【0046】
該エアブローノズル6は、図2に示すように、水平方向に延びる略丸棒状をなすノズル本体6aと、ホルダ収容部2b上面における切粉案内体81の上方の位置で、且つ、上側連通孔20a近傍に固定された直方体形状をなす支持ブロック6b(支持体)とを備え、ノズル本体6aは、その中心線が回転ホルダ3の回転軸心C1と直交する方向に延びる姿勢になっている。
【0047】
ノズル本体6aの一端には、図4乃至図6に示すように、外径がノズル本体6aの中途部の外径よりも大きい形状をなすナット6c(位置決め部)が取り付けられる一方、他端には、外径がノズル本体6aの中途部の外径よりも大きい形状のエア吐出部6dが設けられている。
【0048】
ノズル本体6aの内部には、一端に開口するとともにノズル本体6aの中心線上を延びるエア通路6eが形成され、当該エア通路6eの他端は、エア吐出部6dに位置している。
【0049】
エア吐出部6dのエア吐出口6fは、エア通路6eの他端に連続していて、エア吐出部6dの下半部分において当該エア吐出部6dの先端(他端)から所定の距離だけノズル本体6aの中心線に沿って延びるスリット形状をなし、エア吐出部6dの先端の下半部分とエア吐出部6dの先端側下面とに連続して開口している。
【0050】
そして、ノズル本体6aの一端には、L字配管6gを介して上記エアコンプレッサー82bが接続されていて、当該エアコンプレッサー82bから供給される圧縮エアをエア吐出部6dのエア吐出口6fから吐出可能になっている。
【0051】
支持ブロック6bの中央には、切粉案内体81及びエア吐出ユニット82の並設方向に貫通するスライド孔6hが形成され、該スライド孔6hには、ノズル本体6aの中途部がスライド可能に嵌挿している。
【0052】
すなわち、支持ブロック6bは、ノズル本体6aを水平方向にスライド可能に支持している。
【0053】
ノズル本体6aのエア吐出部6dは、図6に示すように、ノズル本体6aを一方側にスライドさせた際、上側連通孔20aに対応しない位置まで移動可能に構成されている。
【0054】
一方、ノズル本体6aに取り付けられたナット6cは、図5に示すように、ノズル本体6aを他方側にスライドさせた際、支持ブロック6bに接触してエア吐出部6dを回転ホルダ4に接近した予め決められた所定位置P1に位置決めするようになっている。
【0055】
ノズル本体6aの中途部には、コイルバネ6i(付勢部材)が巻装されている。該コイルバネ6iは、一端がエア吐出部6dに接する一方、他端が支持ブロック6bに接していて、ノズル本体6aが他方側にスライドするよう当該ノズル本体6aを付勢している。
【0056】
そして、図4に示すように、エアブローノズル6のエア吐出口6fから回転ホルダ4へと圧縮エアZ1を吐出し続けるとともに、エアノズル82aのエア吐出口82dから切粉回収口81bへと圧縮エアを吐出し続けた状態で電極チップ10の先端部10aを切削カッター5で切削すると、当該切削カッター5による各電極チップ10の切削動作時に回転ホルダ4の切欠部4aに発生し、且つ、エア吐出口6fから吐出する圧縮エアZ1により切欠部4aにおいて下方に押されて下側連通孔20bを介して下方に落下する切粉M1がエア吐出口82dから吐出される圧縮エアZ2により切粉回収口81bから切粉案内通路81aに押し込まれるとともに当該切粉案内通路81aに導かれて切粉回収器83に回収されるようになっている。
【0057】
次に、チップドレッサー1による電極チップ10の先端部10aの切削作業について詳述する。
【0058】
まず、図4に示すように、チップドレッサー1の図示しない駆動モータを回転駆動させて出力歯車3を回転させることにより回転ホルダ4を回転軸心C1周りに回転させる。
【0059】
また、エアコンプレッサー82bを用いてエアブローノズル6及びエアノズル82aに圧縮エアを供給することにより、エアブローノズル6及びエアノズル82aからそれぞれ圧縮エアZ1,Z2を吐出させる。
【0060】
次いで、ホルダ収容部2bの上側と下側とに上下に対向する一対の電極チップ10のそれぞれを移動させるとともに、各電極チップ10の中心軸を回転ホルダ4の回転軸心C1に一致させる。
【0061】
しかる後、両電極チップ10を互いに接近させる。すると、上側の電極チップ10は、ホルダ収容部2bにおける上側連通孔20aを介して回転ホルダ4における上側の湾曲凹部4cに挿入される一方、下側の電極チップ10は、ホルダ収容部2bにおける下側連通孔20bを介して回転ホルダ4における下側の湾曲凹部4cに挿入される。そして、各電極チップ10の先端部10aが回転ホルダ4に取り付けられた切削カッター5によって切削される。
【0062】
このとき、各電極チップ10の先端部10aから発生する切粉M1は、エアブローノズル6のエア吐出口6fから吐出する圧縮エアZ1が回転ホルダ4の切欠部4aを下方に通過することによって回転ホルダ4に引っ掛かった状態のままにならずに確実に下方に落下する。これにより、切粉M1は、下側連通孔20b下方の切粉落下領域R1に取付ブラケット9の開口部9aを介して落下する。
【0063】
切粉落下領域R1に落下してきた切粉M1は、エアノズル82aから切粉回収口81bに向かう圧縮エアZ2によって、切粉回収口81bに向かうように方向を変えて切粉回収口81bを介して切粉案内通路81aに入り込む。
【0064】
つまり、エアノズル82aから吐出される圧縮エアZ2は、切粉落下領域R1に落下してくる切粉M1を切粉回収口81bを介して切粉案内通路81aに押し込む。
【0065】
このとき、エアノズル82aの各エア吐出口82dから吐出される圧縮エアZ2の一部が下側連通孔20bを介して本体ケース2の内部に入り込むとともに回転ホルダ4の切欠部4aを上向きに通過しようとするが、エアブローノズル6のエア吐出口6fから吐出される圧縮エアZ1によってエアノズル82aから吐出された圧縮エアZ2における切欠部4aの上向きの通過が阻止されるようになる。したがって、切削動作時に切欠部4aにおいて発生する切粉M1が落下せずにエアノズル82aから吐出された圧縮エアZ2によって切欠部4aの上方に飛び出してしまうといったことを回避できるようになり、切欠部4aにおける上側開口部分からの切粉M1の装置周辺への飛散を確実に防ぐことができる。
【0066】
そして、切粉回収口81bから切粉案内通路81aに入り込んだ各切粉M1は、切粉案内通路81aに案内されながら切粉回収器83まで移動し、当該切粉回収器83に回収される。
【0067】
次に、本発明の実施形態に係るチップドレッサー1の切削カッター5のメンテナンス作業について説明する。
【0068】
チップドレッサー1による電極チップ10の切削作業が予め決められた所定回数だけ行われると、作業者は、チップドレッサー1の駆動モータを停止させる。
【0069】
次に、作業者は、コイルバネ6iの付勢力に抗してエアブローノズル6のノズル本体6aを一方側にスライドさせた状態に維持する。すると、図6の矢印X1に示すように、ノズル本体6aのエア吐出部6dが本体ケース2の上側連通孔20aに対応しない位置となるので、作業者は、上側連通孔20aから回転ホルダ4を取り出して切削カッター5のメンテナンス作業を行うことができる。
【0070】
作業者は、切削カッター5のメンテナンス作業が終わると、エアブローノズル6のノズル本体6aを一方側にスライドさせた状態において、回転ホルダ4を上側連通孔20aから本体ケース2の中空部20に戻し、その後、ノズル本体6aから手を離す。すると、図5の矢印X2に示すように、コイルバネ6iの付勢力によりノズル本体6aが他方側にスライドしてナット6cが支持ブロック6bに接触することによりエア吐出部6dが予め決められた所定位置P1まで自動で戻る。
【0071】
このように、メンテナンス作業後においてエア吐出部6dが毎回予め決められた所定位置P1まで戻るようになるので、回転ホルダ4に対するノズル本体6aのエア吐出部6dの位置がばらつかないようになり、メンテナンス後の切削作業時において切刃部5aに付着する切粉M1を確実に払い落とすことができる。
【0072】
また、メンテナンス後においてコイルバネ6iの付勢力によりノズル本体6aのエア吐出部6dが予め決められた所定位置P1まで自動で戻るので、作業者がメンテナンス作業後にノズル本体6aのエア吐出部6dを予め決められた所定位置P1に戻すのを忘れてしまい、切削作業後にエア吐出部6dから吐出される圧縮エアZ1が回転ホルダ4に向けて吐出されなくなってしまうといったことを回避することができる。
【0073】
以上より、本発明の実施形態によると、ノズル本体6aを支持ブロック6bに対してスライドさせることにより、メンテナンス作業が容易となるとともに、メンテナンス作業後においてエアブローノズル6から吐出される圧縮エアZ1を確実に回転ホルダに当てることができる。
【0074】
また、エアブローノズル6は、棒状のノズル本体6aを付勢するコイルバネ6iがノズル本体6aに巻装された状態になっているので、エアブローノズル6が、簡単な構造で、且つ、コンパクトな形状になる。したがって、故障し難くなるとともに、エアブローノズル6周りのスペースを有効利用することができる。
【0075】
さらに、回転ホルダ3の上方から下方及び斜め下方の少なくとも一方に圧縮エアを吐出するようになるので、エア吐出口6fから吐出される圧縮エアZ1が切削カッター5に当たりながら切欠部4aを上下にスムーズに通過するようになる。したがって、切削カッター5に付着する切粉M1を効率良く払い落すことができる。
【0076】
尚、本発明の実施形態では、エアブローノズル6のエア吐出口6fから吐出する圧縮エアZ1とエアノズル82aのエア吐出口82dから吐出する圧縮エアZ2とを同じエアコンプレッサー82bから供給しているが、別々の供給源から圧縮エアを供給するようにしてもよい。
【0077】
また、本発明の実施形態では、エアブローノズル6のエア吐出口6fの形状がスリット形状をなしているが、これに限らず、下方に真っ直ぐに延びる穴形状であってもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態では、ノズル本体6aを他方側にスライドさせる機構としてコイルバネ6iを用いているが、その他のバネやゴム材等の付勢部材であってもよく、また、ノズル本体6aを手動で一方側と他方側とにスライドさせる構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端部を切削するチップドレッサーに用いるエアブローノズル及びそれを装着したチップドレッサーに適している。
【符号の説明】
【0080】
1 チップドレッサー
2 本体ケース(収容ケース)
4 回転ホルダ
4a 切欠部(貫通部)
4c 湾曲凹部
5 切削カッター(切削部材)
6 エアブローノズル
6a ノズル本体
6b 支持ブロック(支持体)
6c ナット(位置決め部)
6d エア吐出部
6f エア吐出口
6h スライド孔
6i コイルバネ(付勢部材)
8 切粉回収ユニット
10 電極チップ
10a 先端部
20 中空部
20a 上側連通孔
20b 下側連通孔
81 切粉案内体
81b 切粉回収口
82 エア吐出ユニット
82b エアコンプレッサー(エア供給源)
82d エア吐出口
83 切粉回収器
C1 回転軸心
M1 切粉
R1 切粉落下領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6