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  • 特許-多缶設置ボイラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】多缶設置ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20230919BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
F22B35/00 E
F22B35/00 H
F22B37/42 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020044907
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148296
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 享一
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 優希
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205502(JP,A)
【文献】特開2004-317105(JP,A)
【文献】特開2002-213702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 - 37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に運転制御装置と蒸気圧力検出装置を持ったボイラを複数台設置している多缶設置ボイラであって、あるボイラの運転制御装置に台数制御装置を付加し、他のボイラは前記台数制御装置からの燃焼指令を受けることによって台数制御を行うようにした多缶設置ボイラであり、前記台数制御装置では、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置にて検出しているボイラの蒸気圧力値を取り込むことができるようにしておき、台数制御装置は、基本的には稼働優先順位が最上位のボイラでの蒸気圧力検出装置で検出している蒸気圧力値を使用して台数制御を行うものであるが、稼働優先順位が最上位以外のボイラでの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値の方が、稼働優先順位最上位ボイラでの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値よりも所定値以上高くなった場合、前記の蒸気圧力値が稼働優先順位上位のボイラより高くなっているボイラでの蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うものであることを特徴とする多缶設置ボイラ。
【請求項2】
請求項1に記載の多缶設置ボイラにおいて、稼働優先順位が最上位でないにもかかわらず稼働優先順位最上位ボイラの蒸気圧力値より高くなったボイラでの蒸気圧力値に基づいて台数制御を行っている時に、前記蒸気圧力が高くなったボイラの蒸気圧力値と稼働優先順位が最上位であるボイラでの蒸気圧力値との差が閾値より小さくなると、稼働優先順位が最上位のボイラでの蒸気圧力値に基づく台数制御に変更し、稼働優先順位が最上位であるボイラでの蒸気圧力値との差が閾値より小さくならないままで一定時間以上経過した場合には、何れかのボイラで異常が発生していると判断するものであることを特徴とする多缶設置ボイラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多缶設置ボイラにおいて、台数制御を行っている時の蒸気圧力値の参照先に拘わらず、燃焼量を増加させる場合は稼働優先順位が上位のボイラから燃焼量を増加し、燃焼量を減少させる場合は稼働優先順位が下位のボイラから燃焼量を減少させるものであることを特徴とする多缶設置ボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のボイラを並列に設置しておき、共通の蒸気ヘッダを通じて蒸気を供給するものであって、蒸気圧力値に基づいて各ボイラでの燃焼量を制御するようにした多缶設置ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2000-205502号公報の図4には、並列に設置した複数台のボイラと、ボイラ全体での燃焼必要量を算出する台数制御装置を設置しておき、ボイラ全体での負荷量を算出することで、運転を行うボイラの台数と燃焼量を決定し、台数制御装置から各ボイラへ燃焼指令を出力することで必要量分のボイラを燃焼させる台数制御を行うようにしている多缶設置ボイラが記載されている。この多缶設置ボイラでは、各ボイラで発生した蒸気は蒸気ヘッダで集合させた後に蒸気使用箇所へ送るようにしている。そして蒸気ヘッダにはヘッダ部蒸気圧力検出装置を設けておき、台数制御装置は蒸気ヘッダでの蒸気圧力を検出し、検出された蒸気圧力値が所定の値を維持するようにボイラの運転を制御する。
【0003】
台数制御装置では、設置している各ボイラに稼働優先順位を設定しておき、台数制御装置ではボイラ全体での燃焼量を決定すると、稼働優先順位の順にボイラに対して燃焼指令の出力を行う。ボイラの燃焼量は蒸気圧力が高くなるほど減少し、蒸気圧力が低くなると燃焼量を増加するようにしており、優先順位の高いボイラでは蒸気圧力が比較的高い状態でも燃焼を開始し、優先順位の低いボイラでは蒸気圧力が比較的低い値となってから燃焼を開始する。
【0004】
台数制御装置による台数制御は、各ボイラで共通の蒸気ヘッダ部での蒸気圧力に基づいて決定されるが、蒸気圧力検出装置は個々のボイラにも設置されている。ボイラ毎にボイラ運転制御装置と各自のボイラ内蒸気圧力を検出するボイラ蒸気圧力検出装置を設けておくことで個別での運転制御が行える。またボイラ内蒸気圧力がボイラに設定している燃焼停止圧力より高くなった場合には、台数制御装置から該当ボイラに対して燃焼指令が出力されていても燃焼を停止することもできるようにしている。
【0005】
そのため、蒸気圧力検出装置はボイラ台数+共通ヘッダ部用の台数が必要となる。ボイラの設置台数が大きな多缶設置システムでは、蒸気圧力検出装置の増加はあまり問題にならないが、設置台数2台で台数制御を行う場合には蒸気圧力検出装置は3台必要となると、蒸気圧力検出装置は1.5倍必要となり、更に台数制御用の制御装置も必要となるため、コスト的に負担が大きくなる。
【0006】
特開2000-205502号公報に記載の発明は、蒸気ヘッダの圧力検出装置を不要とすることで、コストダウンを図るようにしている。この発明では、ボイラ毎に燃焼量を変更する蒸気圧力の値をずらして設定しておき、各ボイラにおける個別蒸気圧力を用いて運転を行うようにしている場合、蒸気圧力値が低くなるほどボイラの燃焼台数が多くなり、蒸気圧力が高くなるほどボイラの燃焼台数が少なくなるため、台数制御に似た運転制御が行えるようになる。
【0007】
しかし、個別のボイラにおける蒸気圧力値は、共通蒸気ヘッダにおける蒸気圧力値とは異なる値となることで、運転状態にばらつきが発生することがある。各ボイラで発生した蒸気は、個別の蒸気配管を通じて共通の蒸気ヘッダに送っており、ボイラで燃焼を行って蒸気を供給している場合には、ボイラ内の蒸気圧力と共通蒸気ヘッダの蒸気圧力はほぼ相似する値となる。しかし、蒸気ヘッダの蒸気がボイラ内へ逆流しないようにしている場合、ボイラ内の圧力が蒸気ヘッダ内圧力より低い場合には、蒸気供給を行っていないボイラではボイラ内圧力と蒸気ヘッダ内圧力には差が発生する。そして蒸気ヘッダ内圧力とは異なるボイラ内蒸気圧力に基づいて台数制御を行うことになると、適切な運転制御を行うことができなくなる。
【0008】
そこで、台数制御装置は、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置にて検出しているボイラの蒸気圧力値を取り込むことができるようにしておき、台数制御装置では稼働優先順位が最も高いボイラの蒸気圧力検出装置で検出している蒸気圧力値を使用して台数制御を行うことを検討した。台数制御における優先順位1位のボイラの蒸気圧力を基に複数台のボイラの運転制御を行うものである場合、優先順位が1位のボイラは、蒸気圧力値が制御蒸気圧力範囲内にある場合に必ず燃焼を継続するボイラであるため、そのボイラの蒸気圧力を基に台数制御を行うことで、過不足無く蒸気供給を行うことが可能となる。そして台数制御の基になる蒸気圧力値は、基から付いているボイラの蒸気圧力検出装置を使用するため、共通の蒸気ヘッダに蒸気圧力検出装置を設置せずとも適切な台数制御を行うことができる。
【0009】
しかし、本来なら蒸気圧力が最も高くなるはずの優先順位が1位のボイラにおいて、初起動時の給水等によるタイムラグによって優先順位1位のボイラでの着火・燃焼移行が遅れ、優先順位2位以下のボイラの蒸気圧力が優先順位1位のボイラより先に上昇することがあった。このとき台数制御の基になる蒸気圧力は優先順位1位のボイラであるため、制御的にはより蒸気圧力を高めることが必要との判断が続くことで既に圧力が高くなっている優先順位2位以下のボイラで燃焼が継続し、蒸気圧力が高くなったボイラでは高高圧力スイッチ又は安全弁が作動する圧力まで上昇する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-205502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、並列設置した複数台のボイラの運転制御をボイラ自身の蒸気圧力値に基づいて行う多缶設置ボイラであって、稼働優先順位が最上位以外のボイラの蒸気圧力が稼働優先順位最上位ボイラの蒸気圧力より先に上昇した場合に、稼働優先順位最上位以外ボイラの蒸気圧力値上昇を緩やかにし、高高圧力スイッチ又は安全弁が作動するような事態となることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、個々に運転制御装置と蒸気圧力検出装置を持ったボイラを複数台設置している多缶設置ボイラであって、あるボイラの運転制御装置に台数制御装置を付加し、他のボイラは前記台数制御装置からの燃焼指令を受けることによって台数制御を行うようにした多缶設置ボイラであり、前記台数制御装置では、各ボイラに設置している蒸気圧力検出装置にて検出しているボイラの蒸気圧力値を取り込むことができるようにしておき、台数制御装置は、基本的には稼働優先順位が最上位のボイラでの蒸気圧力検出装置で検出している蒸気圧力値を使用して台数制御を行うものであるが、稼働優先順位が最上位以外のボイラでの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値の方が、稼働優先順位最上位ボイラでの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値よりも所定値以上高くなった場合、前記の蒸気圧力値が稼働優先順位上位のボイラより高くなっているボイラでの蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うものであることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記の多缶設置ボイラにおいて、稼働優先順位が最上位でないにもかかわらず稼働優先順位最上位ボイラの蒸気圧力値より高くなったボイラでの蒸気圧力値に基づいて台数制御を行っている時に、前記蒸気圧力が高くなったボイラの蒸気圧力値と稼働優先順位が最上位であるボイラでの蒸気圧力値との差が閾値より小さくなると、稼働優先順位が最上位のボイラでの蒸気圧力値に基づく台数制御に変更し、稼働優先順位が最上位であるボイラでの蒸気圧力値との差が閾値より小さくならないままで一定時間以上経過した場合には、何れかのボイラで異常が発生していると判断するものであることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、前記多缶設置ボイラにおいて、台数制御を行っている時の蒸気圧力値の参照先に拘わらず、燃焼量を増加させる場合は稼働優先順位が上位のボイラから燃焼量を増加し、燃焼量を減少させる場合は稼働優先順位が下位のボイラから燃焼量を減少させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明を実施することで、稼働優先順位が最上位以外のボイラの蒸気圧力が稼働優先順位最上位ボイラの蒸気圧力より先に上昇した場合でも、稼働優先順位が最上位以外ボイラの蒸気圧力値上昇を緩やかにし、高高圧力スイッチ又は安全弁が作動するような事態になること防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例における多缶設置ボイラのフロー図
図2】本発明の一実施例での台数制御説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における多缶設置ボイラのフロー図、図2は本発明の一実施例での台数制御説明図である。実施例では2台のボイラ1を設置しており、ボイラにはそれぞれ1号機および2号機と名付けている。各ボイラで発生した蒸気は、ボイラの上部に接続している蒸気配管6を通して蒸気ヘッダ2へ送るようにしており、蒸気配管6には主蒸気弁8を設置している。各ボイラで発生した蒸気は蒸気ヘッダ2に一旦集合させてから、蒸気使用箇所へ供給する。
【0017】
各ボイラには、ボイラで発生している蒸気の圧力を検出する蒸気圧力検出装置3と、各ボイラでの運転を制御する運転制御装置5を持っている。1号機の運転制御装置5には台数制御装置4を併設しているが、台数制御装置4は一方のボイラのみであり、他方のボイラには台数制御装置4は設置していない。しかし台数制御装置4は2号機の運転制御装置5と通信を行うようにしており、台数制御装置4と2号機の運転制御装置5の間はRS-485等の規格に基づいた通信装置7によって接続している。
【0018】
複雑な台数制御を行う場合、一般的には専用の台数制御装置を設置することが必要になるが、ボイラ設置台数が2台など小規模な多缶設置であって、実施する台数制御も単純なものである場合には、ボイラの運転制御装置に台数制御機能を付加することで、コストを抑えつつ台数制御を行うものとすることもできる。台数制御機能は運転制御装置に台数制御用のプログラムを設定することで行う。本実施例では、ボイラ1号機の運転制御装置5に併設した台数制御装置4によってボイラ1号機及びボイラ2号機の2台のボイラでの台数制御を行うようにしている。
【0019】
台数制御装置4は、ボイラ1号機自身への燃焼量指示を出力するとともに、ボイラ2号機に対しても燃焼量指示の出力を行う。実際の運転制御は各ボイラに設置している運転制御装置5が担当し、各運転制御装置は台数制御装置4からの燃焼量指示に基づいてボイラの運転を制御する。
【0020】
ボイラの台数制御は、供給している蒸気圧力値に基づいてボイラ全体で必要な燃焼量を決定し、各ボイラでの燃焼量を割り振る。設置しているボイラには稼働優先順位を設定しておき、稼働優先順位の高い側から燃焼量を割り振り、稼働優先順位の順に燃焼を行う。燃焼量を増加する場合は、稼働優先順位が上位のボイラから順に燃焼量を増加するようにしており、稼働優先順位が高いボイラでは、蒸気圧力が比較的高い状態で燃焼を開始するようにし、蒸気圧力値が低くなると稼働優先順位の低いボイラでも燃焼を行う。逆に燃焼量を減少していく場合は、稼働優先順位が下位のボイラから順に燃焼量を減少していく。
【0021】
台数制御装置4で台数制御を行う場合、ボイラ1号機の蒸気圧力検出装置3にて検出している蒸気圧力値、又はボイラ2号機の蒸気圧力検出装置3にて検出している蒸気圧力値に基づき、ボイラの燃焼量を決定する。その際に使用する蒸気圧力値は、基本的には稼働優先順位が最上位となっているボイラの蒸気圧力検出装置で検出した蒸気圧力値を使用して台数制御を行う。ボイラ1号機の稼働優先順位が上位にある場合、台数制御装置4ではボイラ1号機側の蒸気圧力検出装置3にて検出している蒸気圧力値に基づき、台数制御を行う。逆にボイラ2号機の稼働優先順位が上位にある場合、台数制御装置4は稼働優先順位が上位となっているボイラ2号機の蒸気圧力検出装置3にて検出している蒸気圧力値に基づき、台数制御を行う。
【0022】
台数制御装置4は、稼働優先順位が上位となっているボイラの運転制御装置5に対して蒸気圧力値を要求する信号を出力し、信号を受けたボイラでの運転制御装置は、自ボイラの蒸気圧力検出装置3にて検出している蒸気圧力値を台数制御装置4へ返信する。台数制御装置4では取り込んだ蒸気圧力値に基づいて必要な燃焼量を定め、各ボイラに燃焼量の指令を出力する。
【0023】
稼働優先順位が上位のボイラの蒸気圧力を使用するのは、ボイラでの蒸気圧力値と蒸気ヘッダ2から供給する蒸気圧力値にずれが発生するためである。燃焼を行って蒸気を発生しているボイラの場合、ボイラ内の圧力が高まると蒸気ヘッダ2内の圧力も高まり、ボイラ内の蒸気圧力値と蒸気ヘッダ2から供給する蒸気圧力値は近似する値となる。しかし蒸気を供給しているボイラと蒸気を供給していないボイラがあった場合、蒸気を供給していないボイラ内の蒸気圧力は蒸気ヘッダ2での蒸気圧力より低い値となる。この時、低い値となっている蒸気供給していない側の圧力検出装置にて検出される蒸気圧力に基づいて台数制御を行うと、実際に蒸気使用箇所へ供給している蒸気圧力値とはかけ離れた蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うことになり、適正な運転を行うことができないということになってしまう。稼働優先順位の高いボイラは蒸気圧力値の高い側のボイラとなり、ボイラ内圧力は蒸気ヘッダから供給している蒸気圧力値と近似する圧力にあると考えられる。蒸気圧力値が高くなる側のボイラで検出した蒸気圧力値に基づいて制御を行うことで、適切な適正な台数制御を行うことができる。
【0024】
ただし、必ずしも稼働優先順位が高いボイラの蒸気圧力値が稼働優先順位の低いボイラの蒸気圧力値より高くなるとは限らない。もしも蒸気圧力値が高い側の蒸気圧力に基づいて台数制御を行っていると考えていたものが、実際は蒸気圧力値が低い側の蒸気圧力に基づいて台数制御を行っていた場合には、ボイラに対して必要以上の燃焼量を要求することになる可能性があり、必要な範囲を超えて燃焼を行わせることになると想定以上に蒸気圧力が上昇し、高高圧スイッチや安全弁が作動することにもなる。
【0025】
そこで、基本的には稼働優先順位が最上位のボイラ側での蒸気圧力検出装置3で検出した蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うが、稼働優先順位が最上位以外のボイラにおいて検出された蒸気圧力値の方が稼働優先順位最上位ボイラにおいて検出された蒸気圧力値より「所定値以上」高くなった場合には、その稼働優先順位が下位のボイラの蒸気圧力を基に運転制御を行うことにする。その後、稼働優先順位が最上位ボイラの蒸気圧力が上昇し、蒸気圧力値が高くなっている稼働優先順位下位ボイラと稼働優先順位最上位ボイラでの蒸気圧力値の差が「閾値」より小さくなると、稼働優先順位最上位ボイラの蒸気圧力値を基に台数制御を行うようにする。また上記の場合に、稼働優先順位最上位ボイラで検出される蒸気圧力値が上昇せず、蒸気圧力値差が閾値以上のままで所定時間以上経過した場合、何れかのボイラでの蒸気圧力検出装置の故障、又は主蒸気弁の開度が不適切であると判断する。
【0026】
本発明の一実施例におけるタイムチャートを図2に基づいて説明する。実施例ではボイラ1号機の稼働優先順位が第1位、ボイラ2号機の稼働優先順位が第2位となっており、ボイラは運転を停止している状態から始まっている。各ボイラでは、高燃焼・中燃焼・低燃焼・停止の4位置での燃焼量の指示に基づき燃焼を行うようにしており、図2では高燃焼の燃焼指示は「H」、中燃焼の燃焼指示は「M」、低燃焼の燃焼指示は「L」、燃焼待機の燃焼指示は「-」で示すものとしている。
【0027】
運転スイッチがOFFとなっており、ボイラでの蒸気圧力値は0となっている状態から、時刻Aの時点で運転スイッチをONにすると、1号機と2号機の各ボイラへの燃焼量指示は燃焼待機の「-」から高燃焼の「H」となっている。燃焼量の増加は稼働優先順位の順に行うものであっても、時刻Aの時点では蒸気圧力値が大幅に足りない状態であるため、1号機と2号機のボイラに対して同時に燃焼量を増加する指令が出力されている。時刻Aで燃焼量の指示が高燃焼になっても、実際には運転準備の工程が必要であるため、蒸気圧力値はすぐには変化していない。ボイラでの運転準備の工程は、まずボイラ内の水位を確認し、ボイラ内に所定量の水が溜まっていなかった場合には給水を行う。ボイラ内の水量が十分であれば、燃焼開始のためのシーケンスに入るが、ボイラ内に水がなかった場合にはボイラ内に所定量の水が溜まるまでは次の工程に入れないため、燃焼の開始は遅れることになる。
【0028】
2台のボイラは同じタイミングで運転開始の指示が行われたとしても、ボイラ起動のタイミングは必ずしも同じにはならない。例えば優先順位1位であるボイラ1号機は全ブローを行った直後であってボイラ内に水がなく、優先順位2位のボイラはすぐに燃焼を開始することができるだけの水が貯められた状態であった場合、水位の低い1号機ではボイラ内に所定量の水を溜めるための時間が必要であって、その後でなければ燃焼を行えないのに対し、水位の高いボイラはすぐに燃焼を行うことができるため、優先順位1位の1号機よりも優先順位2位の2号機ボイラの方が先に燃焼を開始することになる。また、一方のボイラで給水ポンプの能力が低下していた場合や、一方のボイラで着火時に不着火が発生してリトライを行っていた場合などでも燃焼の開始は遅れることになる。
【0029】
そのため本実施例では、基本的には稼働優先順位の高いボイラ側での蒸気圧力検出装置3で検出した蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うが、稼働優先順位が下位のボイラにおいて検出された蒸気圧力値が稼働優先順位で1位のボイラにおいて検出された蒸気圧力値より所定値0.20MPa以上高くなった場合には、その稼働優先順位が下位のボイラの蒸気圧力を基に台数制御を行う。そして台数制御に蒸気圧力値を使用しなくなった稼働優先順位が1位のボイラで蒸気圧力が上昇し、蒸気圧力値の差が閾値0.05MPaより小さくなると、稼働優先順位1位のボイラの蒸気圧力値を基に台数制御を行うようにする。ただし上記の場合に、稼働優先順位1位のボイラで検出される蒸気圧力値が上昇せず、蒸気圧力値の差が閾値以上のままで一定時間以上経過した場合は、何れかのボイラでの蒸気圧力検出装置の故障、又は主蒸気弁の開度が不適切であると判断し、異常を報知する。
【0030】
この場合、時刻Aで2台のボイラに対して高燃焼の燃焼指令が出力されており、それぞれのボイラで準備工程を行った後に燃焼を開始する。しかし実際の燃焼は、優先順位が下位側の2号機の方が先に開始しており、蒸気圧力値は2号機の方が先に上昇している。時刻Bの段階で1号機の蒸気圧力値は0.28MPa、2号機の蒸気圧力値は0.45MPaとなっており、2号機の方が1号機より0.17MPa高くなっている。本実施例では、優先順位2位のボイラの蒸気圧力が優先順位1位のボイラの蒸気圧力より、所定値である0.20MPa以上高くなった場合、優先順位2位のボイラの蒸気圧力を基に運転制御を行う様にしているものであるため、時刻Bの時点ではまだ優先順位2位ボイラの蒸気圧力は所定値以上の差にはなっておらず、優先順位1位のボイラの蒸気圧力を基に台数制御を行っている。
【0031】
その後、時刻Cで1号機の蒸気圧力は0.30MPa、2号機の蒸気圧力は0.50MPaとなり、この時点で蒸気圧力の差が所定値の0.20MPaに達している。優先順位の低い2号機の方が優先順の高い1号機よりも0.20MPa以上高くなると、優先順位の低い2号機の蒸気圧力値を使用して台数制御を行う。この場合、所定値以上の差となった時刻Cからは2号機の蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うことになる。台数制御の設定では、蒸気圧力値が0.30MPaでは高燃焼2台の燃焼量とし、蒸気圧力値が0.50MPaでは高燃焼1台と中燃焼1台の燃焼量とするものであった場合、時刻Cの直前であって比較的低圧である1号機の蒸気圧力値に基づいた台数制御を行っている時には高燃焼2台となるが、時刻C以降では比較的高圧の2号機での蒸気圧力値に基づいた制御となり、台数制御の基となる蒸気圧力値が高くなったために燃焼量は高燃焼1台と中燃焼1台になる。蒸気圧力値の参照先が変わっても稼働優先順位が低いボイラから燃焼量を下げるので、時刻C以降では稼働優先順位が下位である2号機で燃焼量の引き下げが行われ、2号機の燃焼量は中燃焼に変更となる。
【0032】
その後は1号機と2号機の蒸気圧力値の差は縮まっており、時刻Dで1号機の蒸気圧力値は0.50MPa、2号機の蒸気圧力値は0.54MPaとなり、圧力差が閾値の0.05MPaより小さくなっている。そのため、時刻Dからは1号機の蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うものとなっている。
【0033】
また、燃焼開始時に遅れが発生した場合、それが一時的なものであれば運転を続けていると上記のように通常の運転状態に戻るが、蒸気圧力検出装置3に故障が発生していた場合や、主蒸気弁8の開度が不適切であった場合には、逆転した蒸気圧力値の差は閾値よりも大きな値のままとなる。この場合は、蒸気圧力値が逆転した状態での蒸気圧力差は閾値以上となっている時間が一定時間以上になると、何れかのボイラの蒸気圧力検出装置3の故障、又は主蒸気弁8の開度が不適切であると判断し、異常の報知を行う。
【0034】
本実施例では、稼働優先順位が最上位以外のボイラにおいて検出された蒸気圧力値の方が稼働優先順位最上位ボイラにおいて検出された蒸気圧力値より「所定値以上」高くなった場合には、その稼働優先順位が下位のボイラの蒸気圧力を基に運転制御を行うことにするとして、所定値は0.20MPaとしているが所定値は任意の値とすることができる。所定値が0であればその時点で最も高い蒸気圧力値に基づいて台数制御を行うことになる。
【0035】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 ボイラ
2 蒸気ヘッダ
3 蒸気圧力検出装置
4 台数制御装置
5 運転制御装置
6 蒸気配管
7 通信装置
8 主蒸気弁
図1
図2