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特許7350269光沢感と色移りの程度が改善された唇用化粧料組成物
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  • 特許-光沢感と色移りの程度が改善された唇用化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】光沢感と色移りの程度が改善された唇用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20230919BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230919BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230919BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/81
A61K8/891
A61Q1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021533656
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2019008823
(87)【国際公開番号】W WO2020122342
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0162299
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンハ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ナム-ソ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ソナ・ジョン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114774(JP,A)
【文献】特開2000-178126(JP,A)
【文献】特開2016-117701(JP,A)
【文献】特開2017-025030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0294817(US,A1)
【文献】特開2008-189663(JP,A)
【文献】特開2015-081256(JP,A)
【文献】特開2019-178112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性オイル、不揮発性オイル、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂を有効成分として含む、唇用化粧料組成物であって、
前記不揮発性オイルが、総組成物の重量対比0.1~10重量%であり、
前記ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーが、総組成物の重量対比1~12重量%であり、
前記VP/ヘキサデセンコポリマーが、総組成物の重量対比0.5~10重量%であり、
前記シルセスキオキサン樹脂が、総組成物の重量対比0.5~10重量%である、唇用化粧料組成物。
【請求項2】
前記唇用化粧料組成物は、光沢感が改善されたものである、請求項1に記載の唇用化粧料組成物。
【請求項3】
前記唇用化粧料組成物は、色移りの程度が改善されたものである、請求項1に記載の唇用化粧料組成物。
【請求項4】
前記シルセスキオキサン樹脂が、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の唇用化粧料組成物。
【請求項5】
前記組成物の粘度が、4000cps以上である、請求項1に記載の唇用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢感と色移りの程度が改善された唇用化粧料組成物に関するもので、より具体的には、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂を有効成分として含むことにより、唇からの色移り、すなわち転移(transfer)を抑えながら唇の光沢感を改善させた唇用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近リップメイクアップ市場でのリップフルイド剤形のトレンドは、光沢(glossy)があると同時に色の持続性を強調する製品が人気を得ている。従来のリップメイクアップの持続性を高めるためには、剤形のにじみや色移りを抑制するために、剤形内に多量の揮発性オイルと一緒に被膜剤、粉体を使用して揮発性オイルの蒸発後に粉体とフィルムが唇に付着されることによって色移りを抑制する効果を有する処方が大半である。
【0003】
しかし、持続性を高めるために使用される揮発性オイル及び被膜剤、粉体は、皮膚に塗布する時に乾燥感を誘発すると同時に、唇でマットな表現を引き起こす。この場合、ひどくは唇のしわと角質を目立って見えるようにして唇の状態がなめらかに見えない問題を起こし、唇がしっとりと見えない視覚的な乾燥感を誘発する。
【0004】
リップメイクアップ製品の色の持続性は維持しながら、光沢を与えるためには、不揮発性オイルを適用してツヤを与えることができるが、この場合、色移りとにじみを同時に誘発する欠点があり、不揮発性オイルの含量が制限される。
【0005】
また、揮発性オイルの増粘のために使用するワックスあるいは粉体形態の従来の増粘剤を一緒に使用する場合、光沢が消失してマットになり、乾燥した唇表現を誘発する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ワックスあるいは粉体形態の従来の増粘剤の代わりに非ワックス系あるいは非粉体系の増粘剤としてハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを用い、さらにVP/ヘキサデセンコポリマー及びシルセスキオキサン樹脂を配合する場合、光沢感と色移りの程度が改善されることを確認することにより、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、光沢感と色移りの程度が改善された唇用化粧料組成物を提供することにある。具体的には、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂を有効成分として含む、唇用化粧料組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る唇用化粧料組成物は、唇からの色移りを抑制するだけでなく、剤形の光沢を高めて、唇が荒くマットな化粧表現、視覚的な乾燥感、角質の浮上及びしわの浮上などを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例1と比較して実施例1の光沢の改善イメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これを具体的に説明すると、次の通りである。本発明で開示された各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用されうる。すなわち、本発明で開示された様々な要素の任意の組み合わせが本発明のカテゴリに属する。また、下記記述された具体的な叙述によって、本発明のカテゴリが制限されるとは見られない。
【0011】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明はハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂を有効成分として含む、唇用化粧料組成物を提供する。
【0012】
具体的には、リップメイクアップ製品の塗布後、唇からの色移り、すなわち転移(transfer)を抑えながら唇の光沢感を改善して、視覚的な乾燥感及び唇の角質及びしわの浮上を改善させる唇用化粧料組成物を提供することができる。
【0013】
より具体的には、本発明は揮発性オイルの条件内で、被膜剤としてシルセスキオキサン樹脂、光沢剤としてVP/ヘキサデセンコポリマー、非ワックス系あるいは非粉体系の増粘剤としてハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを配合して、唇からの色移りの程度が改善されながら、光沢感が改善された唇用化粧料組成物を提供することができる。
【0014】
光沢感の改善は、一般的な増粘システムであるワックスとジステアルジモニウムヘクトライトを含む唇用化粧料組成物に比べて改善されたものであってもよく、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂の3つの有効成分をいずれも含まない唇用化粧料組成物に比べて改善されたものであってもよい。
【0015】
色移りの程度の改善は、唇からの色移りあるいはにじみの程度が減少したことを意味してもよく、これは一般的な増粘システムであるワックスとジステアルジモニウムヘクトライトを含む唇用化粧料組成物に比べて改善されたものであってもよく、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びシルセスキオキサン樹脂の3つの有効成分をいずれも含まない唇用化粧料組成物に比べて改善されたものであってもよい。また、非揮発性オイルを一定量以上含んでいる唇用化粧料組成物に比べて改善されたものであってもよい。
【0016】
本発明の1つの有効成分であるハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーは、非ワックス系あるいは非粉体系の増粘剤としての役割をすることができる。
【0017】
一般的に、リップメイクアップ製品で持続性を高めるためには、揮発性オイルを主に使用しており、揮発性オイルの場合、皮膚塗布時に揮発性オイルが簡単に蒸発され、持続力を付与して被膜の特性を有するフィルムを残させる。このとき、前記揮発性オイルを増粘する機能を有する増粘剤を必要とするが、一般的に揮発性オイル、より詳細には、イソドデカンの粘度を上げうる役割をする増粘剤としては、ジステアルジモニウムヘクトライトと一緒にワックスを用いるのが一般的である。しかし、ジステアルジモニウムヘクトライトとワックスを用いた増粘システムでは、剤形の透明性を損なうと同時に唇が乾燥してマットな表現のみを可能にし、光沢感が表現されないという限界がある。そこで、本発明では、ジステアルジモニウムヘクトライトとワックスの代わりに利用できる増粘剤として、すなわち非ワックス系あるいは非粉体系増粘剤として、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを利用することができることを確認したことに一つの特徴がある。ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを使用して揮発性オイルを増粘する場合、透明に増粘させると同時に、唇の表現をマットでなく光沢感を与えることができる。
【0018】
そこで、本発明の唇用化粧料組成物は、ワックスを実質的に含まないことを特徴とする。前記のようにヘクトライトを使用する場合は、ワックスの使用が必要であるが、本発明に係る増粘剤を使用する場合は、ワックスの使用が必要としないようになる。
【0019】
このとき、前記揮発性オイルは、本発明の唇用化粧料組成物に含まれてもよい一成分として、これらに制限されないが、イソドデカン、イソヘキサデカン、シクロペンタシロキサン及び/またはジメチコンなどを含んでもよい。揮発性オイルの含量は、総重量対比40~90重量%であることが望ましい。
【0020】
前記ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーは、総組成物の重量対比1~12重量%であってもよく、具体的には、3~10重量%であってもよく、より具体的には、5~8重量%であってもよい。増粘剤の含量が1重量%未満であると製品内での増粘効果がなく、12重量%を超える場合、剤形内で粘度があまりにも高くなり、唇の表現が厚くなって使用感を損ない、色移りとべとつきを増加させうる。
【0021】
本発明の1つの有効成分であるVP/ヘキサデセンコポリマーは、光沢剤としての役割をすることができる。
【0022】
本発明の一実施例では、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーと一緒にVP/ヘキサデセンコポリマーが含まれる場合、光沢感がより優れたことを確認した(表4)。一方、前記VP/ヘキサデセンコポリマーを光沢剤として利用する場合は、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーの粘度形成の役割を妨害するため、下記で説明するシルセスキオキサン樹脂を一緒に適用しなければならない。
【0023】
前記VP/ヘキサデセンコポリマーは、総組成物の重量対比0.5~10重量%であってもよく、具体的には、1~8重量%であってもよく、より具体的には、2~6重量%であってもよい。光沢剤の含量が0.5重量%未満であると製品内での光沢効果が不備であり、10重量%を超える場合は剤形内のべとつきを強く誘発することがあり、使用感を損なうことがある。
【0024】
本発明の1つの有効成分であるシルセスキオキサン樹脂は、被膜剤としての役割をすることができる。
【0025】
前記シルセスキオキサン樹脂は、ポリフェニルシルセスキオキサン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサンからなる群から選択される1種以上であってもよく、より好ましくは、剤形の光沢を高めるために屈折率の高いフェニル基が付いたポリフェニルシルセスキオキサンが適合しうる。
【0026】
前記シルセスキオキサン樹脂は、総組成物の重量対比0.5~10重量%であってもよく、具体的には、1~8重量%であってもよく、より具体的には、2~6重量%であってもよい。被膜剤の含量が0.5重量%未満であれば増粘及び被膜効果が不備であり、10重量%を超える場合は剤形内のべとつきやはがれを強く誘発することがあり、使用感を損なうことがある。
【0027】
本発明では、前記説明したハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー及びシルセスキオキサン樹脂の3つの有効成分すべてを含むことにより、リップメイクアップ製品に適切な粘度はもちろん、色移りの改善及び光沢感の改善の両方を達成することができる。
【0028】
本発明の唇用化粧料組成物は、揮発性オイル及び/または非揮発性オイルをさらに含んでもよい。
【0029】
前記揮発性オイルは、前記で述べた通りであり、具体的には、イソドデカン、イソヘキサデカン、シクロペンタシロキサン、またはジメチコンであってもよく、より具体的には、イソドデカンであってもよい。揮発性オイルの含量は、総重量対比40~90重量%であることが望ましい。
【0030】
前記不揮発性オイルは、これに制限されないが、エステル系オイル、ハイドロカーボン系オイル、シリコーンオイルあるいはこれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0031】
不揮発性オイルは、唇に保湿感を与えると同時に光沢感を与えることができる。不揮発性オイルの含量は、総重量対比0.1~30重量%であることが望ましい。より好ましくは、0.1~10重量%であってもよい。不揮発性オイルの含量が0.1重量%未満であれば、不揮発性オイルを含む効果が現れず、10重量%を超えると唇での保湿感と光沢感は良いが、色移りやにじみが増加することがある。
【0032】
本発明に係る化粧料組成物において、べとつきを制御して使用感の調整のために粉体を含んでもよい。より詳細には、シリカシリレート、シリカジメチルシリレート、シリカ、/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、ナイロン-12、ポリメチルメタクリレート、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマーなどを含んでもよい。
【0033】
本発明において、色素を使用することにより鮮明な色を付与することができ、優れた発色力を有しうる。色素の含量は、化粧料組成物中の総重量対比0.1~30重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1~20重量%であってもよく、さらに好ましくは、1~15重量%であってもよい。色素の含量が0.1重量%未満は発色力が低下し、30重量%を超えると剤形安定性が低下することがあり、使用感が良くないことがある。
【0034】
本発明の唇用化粧料組成物は、色移りと光沢感を損なわない範囲内で、栄養成分、酸化防止剤、パールのような通常の唇用化粧料組成物に含有される成分を含んでもよい。
【0035】
以下、本発明の理解を助けるために実施例及び比較例を挙げて詳細に説明することにする。しかし、本発明に係る実施例はいくつかの他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が下記実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0036】
製造例:唇用化粧料剤形の製造
下記表1に示した成分と含量を使用して、次のような方法で実施例及び比較例の唇用化粧料剤形を製造した。
【0037】
具体的には、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーは、80~85℃で30分以上加温してイソドデカンに溶解した後にディスパーミキサーで分散した後、下記表1の組成で原料を混合しディスパーミキサーで80~85℃の条件で分散させることにより、実施例及び比較例の化粧料組成物を製造した。
【0038】
【表1】
【0039】
実験例1:唇用化粧料剤形の粘度及び剤形分離可否の比較
一般的に、唇に塗布した後に色移りのない唇用化粧料剤形の組成物は、増粘システムが粉体系増粘剤であるジステアルジモニウムヘクトライトとワックスで構成され、揮発性オイルの粘度を上げて安定性を維持させる役割をする(比較例1)。しかし、本発明ではジステアルジモニウムヘクトライトとワックスを含まなくても適当な粘度を形成させうる唇用化粧料の剤形を製造するために、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを利用した。
【0040】
剤形の分離可否は、RTの条件で1週目に経時的に確認した。剤形が分離されない適当な粘度は、Spindle Number 4、30rpm、室温条件で少なくとも4000cps以上であって、4000 cps以下の場合は剤形が分離されることがあるが、実施例1でハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを増粘剤として用いる場合、ジステアルジモニウムヘクトライトとワックスを含まなくても適当な粘度を形成させうることを確認した。
【0041】
しかし、比較例2は、実施例1と比較してハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを除いた場合であり、比較例3は、ポリフェニシルセスキオキサンとVP/ヘキサデセンコポリマー、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを除いた場合であって、この場合は、粘度が低く、かつ、安定性が良くなくて分離されることが確認できた。
【0042】
また、比較例5は、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを増粘剤として使用する場合であるが、この場合は、比較的に安定したことが確認できた。比較例4は、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーにVP/ヘキサデセンコポリマーを投入した場合であるが、この場合は、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーの粘度形成メカニズムを妨害して、粘度が低くなり、分離が起きるのが確認できた。
【0043】
【表2】
【0044】
総合すれば、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを適用する場合(実施例1)は、ジステアルジモニウムヘクトライトとワックスで構成された増粘システム(比較例1)及びハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを適用していない増粘システム(比較例2及び比較例3)よりも優れた粘度、すなわち安定した粘度を形成しうることが確認できる。また、比較例4との比較を通じて確認できるように、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーを増粘剤として適用する場合、VP/ヘキサデセンコポリマーを一緒に適用すると粘度の形成を妨害するため、ポリフェニルシルセスキオキサンと一緒に適用してこそ安定した粘度を形成することが分かった。つまり、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー、及びポリフェニシルセスキオキサンをともに含んでこそ安定した粘度が形成されることを確認した。
【0045】
実験例2:唇用化粧料剤形の色移り程度の比較
前記製造した唇用化粧料剤形について、唇に塗布した後、実施例と比較例の色移り及びにじみ特性の違いを数値で確認した。
【0046】
具体的には、色移りを測定する実験方法は、人造皮革に各組成物を塗布した後、SI 1107 80mm 4 side applicatorを利用して、60マイクロメートルの厚さで剤形を一定に平らにした後、15分間乾燥した。その後、白い紙を人工皮革の上に置いて4.5kg重量の重りで10秒間押し、色移りの程度を色差計で測定した。
【0047】
また、にじみを測定する実験方法は、人造皮革に各組成物を塗布した後、SI 1107 80mm 4 side applicatorを利用して、60マイクロメートルの厚さで剤形を一定に平らにした後、15分間乾燥した。その後、白い紙を人工皮革の上に置いて、1.5kg重量の重りで押す条件で白い紙を引っ張ってにじみ出る程度を色差計で測定した。
【0048】
使用した色差系の機種は、KONICA MINOLTA CHROMA METER CR-400である。BLANKとしてきれいな白い紙をランダムに3回測定して色移りまたはにじみの平均値を計算し(L1、a1、b1)、前記の条件で測定した紙をランダムに3回測定して色移りまたはにじみの平均値を計算した(L2、a2、b2)。測定値は、L(Lightness)、a(red- green chromaticity)、b(yellow blue chromaticity)で表記されており、下記の式のように△E値を計算して塗布直後の色と着色される色の差の程度を数値化した。
△E = {(L1-L2) +(a1-a2)+(b1-b2)1/2
【0049】
表3の数値で△Eが1以下である場合、色移りとにじみの程度が優秀であることを示す。
【0050】
【表3】
【0051】
その結果、実施例1の場合、比較例1の色移り及びにじみの程度レベルよりも優秀に維持されることを確認した。
【0052】
しかし、実施例1と比較してVP/ヘキサデセンコポリマー及びポリフェニシルセスキオキサンを除いた比較例5の場合は、実施例1及び比較例1よりも色移り及びにじみの程度が増加したことを確認した。
【0053】
また、実施例2の場合は、実施例1と比較して不揮発性オイルであるリンゴ酸ジイソステアリルが10重量%追加されたが、この場合は、色移り及びにじみが顕著に増加したことを確認した。これにより、色移り及びにじみの程度によい影響を与えるためには、不揮発性オイルの含量は一定のレベル以下に制限することが望ましいことを確認した。
【0054】
実験例3:唇用化粧料剤形の光沢度の比較
前記製造した唇用化粧料の剤形に対し、皮膚塗布後の光沢度を確認するために、gloss meterを測定した。測定機器は、MPA580のSkin Glossymeter GL 200 probeで測定した。測定方法は、剤形を皮膚に一定の大きさ(1cm×1cm)に塗布した後、15分間乾燥して光沢度を測定し、この方法で3回測定して、平均値で計算した。
【0055】
【表4】
【0056】
一般的に使用される増粘システムであるワックスとジステアルジモニウムヘクトライトを適用した比較例1は、光沢感のないマットな表現を現した。一方、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマー、VP/ヘキサデセンコポリマー及びポリフェニシルセスキオキサンの3つがすべて適用された場合である実施例1の場合は、非常に優れた光沢効果を現したことが確認できた。前記比較例1及び実施例1の光沢比較の写真を図1に示した。
【0057】
このとき、ハイドロジェネイテッドスチレン/イソプレンコポリマーのみを適用した比較例5の場合は、比較例1よりは光沢度が優れているが、3つすべてを適用した実施例1よりはやや光沢度が落ちることを確認した。
【0058】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。本発明の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1