(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-15
(45)【発行日】2023-09-26
(54)【発明の名称】吊支式スライド扉装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20230919BHJP
E05F 15/641 20150101ALI20230919BHJP
【FI】
E05D15/06 125C
E05D15/06 125A
E05F15/641
(21)【出願番号】P 2019145757
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000155333
【氏名又は名称】株式会社木村技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 朝映
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-016759(JP,U)
【文献】実公昭43-031321(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間を区画する壁部材と、
前記壁部材に開口された出入口と、
前記壁部材に設置されると共に前記出入口の上部に架け渡される案内レールと、
前記案内レールに沿ってスライド自在に該案内レールに吊支されると共に前記出入口を開閉する扉体と、を備え、
前記案内レールが、
平面視で円弧形状の部材であり、当該円弧形状の外縁を成す外周面の一部が前記壁部材に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面が前記所定空間の内側に向けて配置された取付板部と、
前記取付板部とは別の部材であって、第一端部が前記取付板部の前記内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に向けて配設された複数の支持部と、
前記取付板部の前記内周面に沿って列設された複数の前記支持部の前記第二端部に架設され、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成すレール部と、
を備え
、
前記支持部が、前記第一端部に係合凸部を備え、
前記取付板部が、前記内周面に係合凹部を備え、
前記係合凸部が前記係合凹部に係合して前記支持部が前記取付板部に固設された吊支式スライド扉装置。
【請求項2】
所定空間を区画する壁部材と、
前記壁部材に開口された出入口と、
前記壁部材に設置されると共に前記出入口の上部に架け渡される案内レールと、
前記案内レールに沿ってスライド自在に該案内レールに吊支されると共に前記出入口を開閉する扉体と、を備え、
前記案内レールが、
平面視で円弧形状の部材であり、当該円弧形状の外縁を成す外周面の一部が前記壁部材に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面が前記所定空間の内側に向けて配置された取付板部と、
前記取付板部とは別の部材であって、第一端部が前記取付板部の前記内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に向けて配設された複数の第一支持部と、
前記取付板部の前記内周面に沿って列設された複数の前記第一支持部の前記第二端部に架設され、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成す第一レール部と、
前記取付板部とは別の部材であって、第一端部が前記取付板部の前記内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に延設された複数の第二支持部と、
前記第一レール部に吊支されてスライド移動する前記扉体の移動軌跡に沿って列設された複数の前記
第二支持部の前記第二端部に架設され、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成す第二レール部と、
を備え
た吊支式スライド扉装置。
【請求項3】
前記扉体に圧接した駆動ローラと、
前記駆動ローラを回転させて前記扉体を駆動するモータと、
前記モータを保持する第一枠体と、
前記壁部材に対して固定され、前記駆動ローラの回転軸と平行に所定距離離間した軸を中心として前記第一枠体を回転可能に保持する第二枠体と、
前記第一枠体を回転させて、前記駆動ローラを前記扉体側へ付勢する付勢部と、
を備える請求項1
又は2に記載の吊支式スライド扉装置。
【請求項4】
所定空間を区画する壁部材と、
前記壁部材に開口された出入口と、
前記壁部材に設置されると共に前記出入口の上部に架け渡される案内レールと、
前記案内レールに沿ってスライド自在に該案内レールに吊支されると共に前記出入口を開閉する扉体と、を備える吊支式スライド扉装置の製造方法であって、
前記案内レールが、平面視で円弧形状の取付板部と、前記取付板部とは別の部材である複数の支持部と、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成すレール部とを有し、
前記取付板部における前記円弧形状の外縁を成す外周面の一部が前記壁部材に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面が前記所定空間の内側に向けて配置され、
前記複数の支持部が、前記取付板部の前記内周面に沿って配列された状態で第一端部が当該内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に向けて配置され、
前記レール部が、前記支持部の前記第二端部に架設され
、
前記支持部が、前記第一端部に係合凸部を備え、
前記取付板部が、前記内周面に係合凹部を備え、
前記係合凸部が前記係合凹部に嵌められた状態で前記係合凹部の周囲がかしめられることで、前記支持部が前記取付板部に固設される吊支式スライド扉装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊支式スライド扉装置、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定空間を区画する壁部材に開口された出入口を開閉する扉(ドア)として、吊支式スライド扉が公知である。吊支式スライド扉は、案内レールにスライド自在に吊支された扉体を案内レールに沿ってスライドさせることにより出入口を開閉する構造となっている。
【0003】
この種の吊支式スライド扉として、トイレブースの外側に向かって凸状に湾曲した円弧状の案内(ガイド)レールをトイレブースの出入口の上部に架設し、この案内レールの曲率とほぼ同一の曲率で湾曲させた円弧状のドアを、案内レール内を走行可能な走行手段を介して案内レールに移動可能に吊支し、ドアの移動により開口部を開閉するようにしたトイレのドア装置が公知である(例えば、特許文献1等を参照)。
【0004】
図32、
図33は、従来の吊支式スライド扉を説明する図である。
図32は、吊支式スライド扉を適用するトイレの平面図であり、
図33は、扉体を案内レールに吊支した吊支ユニット付近の断面図である。
【0005】
トイレ90は、ブース空間を規定する後壁910と、この後壁910に取り付けられる左右一対の側壁911,911によって外部から仕切られ、前方は大きく開放されて出入口912となっている。一対の側壁911,911は、横断面で略J字形状を呈し、トイレ90の奥側に位置する平板状の平板部911aと、手前側に位置する円弧曲面部911bとからなる。平板部911aの一端側が後壁910に連結され、平板部911aの他端側からトイレ90の手前側に向かって円弧状に湾曲する円弧曲面部911bが連設されている。また、一対の側壁911,911における平板部911a同士は、所定寸法だけ離れて対向配置されており、平板部911a同士の間隔によってトイレ90の横幅寸法が規定されている。
【0006】
また、トイレ90の外側に向かって凸に湾曲した円弧状の案内レール92がトイレ90の出入口912の上部に架設されており、この案内レール92の曲率とほぼ同一の曲率で湾曲させた半円弧状の扉体93が案内レール92に対してスライド自在に吊支されている。
【0007】
案内レール92は、トイレの外部側に面する正面壁92a、正面壁92aの上縁からトイレの内部側に立設する上縁壁92b、上縁壁92bと所定寸法だけ離れて対向配置されると共に正面壁92aからトイレの内部側に立設する支持壁92c等を有している。支持壁92cの上面には、対向する上縁壁92b側に向けて突出する第1レール部92dが案内レール92の長手方向に沿って形成されている。また、上縁壁92bの下面には、対向する支持壁92cに向けて突出する第2レール部92eが形成されている。案内レール92は、正面壁92aと支持壁92cと第1レール部92dによって第1ガイド溝921を形成し、正面壁92aと上縁壁92bと第2レール部92eによって第2ガイド溝922を形成している。
【0008】
吊支ローラ部材930は、扉体93の上縁部93a近傍に固定されたプレート部材931と、プレート部材931に回転自在に取り付けられた第1ローラ932および第2ローラ933とからなる。第1ローラ932は、第2ローラ933より下方に配置されており、第2ローラ933よりも大きい。吊支ローラ部材930の第1ローラ932は、案内レ
ール92の第1ガイド溝921内に配置され、第1ガイド溝921に沿って走行可能である。この第1ローラ932が第1ガイド溝921に沿って走行することで、吊支した扉体93を開閉させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-20602号公報
【文献】特開2000-282738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図32,
図33の案内レール92は、平面視において半円弧形状である。このように形成するには、例えば、直状の素材を半円弧状に湾曲させた後、
図33に示す断面形状となるように切削加工することが考えられる。しかしながら、
図32,
図33の案内レール92は、正面壁92aから円弧の内側へ向けて上縁壁92bや支持壁92c、第1レール部92d、第2レール部92eが立設された構造であり、湾曲させた状態のブランクを、このように複雑な構造に切削加工しなければならず、生産性が低下する原因となる。
【0011】
また、案内レール92を湾曲した状態で鋳造することも考えられるが、
図33のように入り組んだ形状であると、複雑な鋳型が必要であり、また、追加工も多く必要になるため、現実的ではない。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成の吊支式スライド扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明は、以下の手段を採用した。すなわち、本発明に係る吊支式スライド扉装置は、
所定空間を区画する壁部材と、
前記壁部材に開口された出入口と、
前記壁部材に設置されると共に前記出入口の上部に架け渡される案内レールと、
前記案内レールに沿ってスライド自在に該案内レールに吊支されると共に前記出入口を開閉する扉体と、を備え、
前記案内レールが、
平面視で円弧形状の部材であり、当該円弧形状の外縁を成す外周面の一部が前記壁部材に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面が前記所定空間の内側に向けて配置された取付板部と、
前記取付板部とは別の部材であって、第一端部が前記取付板部の前記内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に向けて配設された複数の支持部と、
前記取付板部の前記内周面に沿って列設された複数の前記支持部の前記第二端部に架設され、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成すレール部と、
を備える。
【0014】
前記吊支式スライド扉装置は、
前記支持部が、前記第一端部に係合凸部を備え、
前記取付板部が、前記内周面に係合凹部を備え、
前記係合凸部が前記係合凹部に係合して前記支持部が前記取付板部に固設されてもよい。
【0015】
前記吊支式スライド扉装置は、
前記レール部を第一レール部、前記支持部を第一支持部とし、
前記取付板部とは別の部材であって、第一端部が前記取付板部の前記内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に延設された複数の第二支持部と、
前記第一レール部に吊支されてスライド移動する前記扉体の移動軌跡に沿って列設された複数の前記支持部の前記第二端部に架設され、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成す第二レール部と、
を更に備えてもよい。
【0016】
前記吊支式スライド扉装置は、
前記扉体に圧接した駆動ローラと、
前記駆動ローラを回転させて前記扉体を駆動するモータと、
前記モータを保持する第一枠体と、
前記壁部材に対して固定され、前記駆動ローラの回転軸と平行に所定距離離間した軸を中心として前記第一枠体を回転可能に保持する第二枠体と、
前記第一枠体を回転させて、前記駆動ローラを前記扉体側へ付勢する付勢部と、
を備えてもよい。
【0017】
また、本発明に係る吊支式スライド扉装置の製造方法は、
所定空間を区画する壁部材と、
前記壁部材に開口された出入口と、
前記壁部材に設置されると共に前記出入口の上部に架け渡される案内レールと、
前記案内レールに沿ってスライド自在に該案内レールに吊支されると共に前記出入口を開閉する扉体と、を備える吊支式スライド扉装置の製造方法であって、
前記案内レールが、平面視で円弧形状の取付板部と、前記取付板部とは別の部材である複数の支持部と、平面視で前記取付板部と同心の円弧形状を成すレール部とを有し、
前記取付板部における前記円弧形状の外縁を成す外周面の一部が前記壁部材に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面が前記所定空間の内側に向けて配置され、
前記複数の支持部が、前記取付板部の前記内周面に沿って配列された状態で第一端部が当該内周面に固設され、第二端部が前記所定空間の内側に向けて配置され、
前記レール部が、前記支持部の前記第二端部に架設される。
【0018】
前記吊支式スライド扉装置の製造方法は、
前記支持部が、前記第一端部に係合凸部を備え、
前記取付板部が、前記内周面に係合凹部を備え、
前記係合凸部が前記係合凹部に嵌められた状態で前記係合凹部の周囲がかしめられることで、前記支持部が前記取付板部に固設されてもよい。
【0019】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成の吊支式スライド扉装置およびその製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態におけるトイレおよび吊支式スライド扉装置の上面図である。
【
図2】本実施形態におけるトイレおよび吊支式スライド扉装置の斜視図である。
【
図3】実施形態に係る扉受け部の詳細構造を示す図である。
【
図5】扉体が吊支されている状態の案内レールをトイレの内部側から眺めた図である。
【
図6】
図4の一部を拡大して案内レールの詳細構成を示す図である。
【
図10】支持部をトイレに配置された際に内側となる方向から眺めた図(正面図)である。
【
図19】支持部を取付板部に固設する工程を示す図である。
【
図20】レール部を複数の支持部に架設する工程を示す図である。
【
図21】変形例1の案内レールと吊支ローラとガイドローラの関係を示す断面図である。
【
図22】変形例2の案内レールと吊支ローラとガイドローラの関係を示す断面図である。
【
図23】変形例3の案内レールと吊支ローラの関係を示す断面図である。
【
図24】変形例4の案内レールと吊支ローラと駆動部との関係を示す上視図である。
【
図26】制御装置による駆動部の制御方法を示す図である。
【
図27】第二実施形態における案内レールの構成を示す上視図である。
【
図28】扉体が吊支されている状態の案内レールをトイレの内部側から眺めた図である。
【
図31】駆動ローラの高さ方向における変位について説明するための説明図である。
【
図32】従来の吊支式スライド扉を適用するトイレの平面図である。
【
図33】従来の吊支式スライド扉において扉体を案内レールに吊支した吊支ユニット付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、発明を実施するための実施形態について例示的に詳しく説明する。但し、本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、およびその相対配置等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の技術的範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0023】
〈第一実施形態〉
図1は、本実施形態におけるトイレTおよび吊支式スライド扉装置1の上面図である。
図2は、本実施形態におけるトイレTおよび吊支式スライド扉装置1の斜視図である。
図1および
図2においては、二つのトイレ(トイレブース)Tを図示しているが、その数は特に限定されない。即ち、トイレTは、単独で設けられても良いし、複数が連設されても良い。トイレTは、後壁10と、互いに対向して配置された一対の側壁11,11によって外部空間と区画されており、これによりトイレブースの内部空間(本発明における所定
空間に相当)が規定されている。各トイレTの内部には便器9が設置されている。
図1および
図2において図示されている二つのトイレTは同一の構造を有している。後壁10と、一対の側壁11,11は、本発明における壁部材に相当する。なお、
図2では後壁10の図示を省略している。
【0024】
本明細書において、後壁10側に位置する方をトイレTの「後方」として定義し、その反対側をトイレTの「前方」として定義する。トイレTの前方には、開口された出入口12が形成されており、トイレTは出入口12を開閉するための扉体3(スライド扉)が設けられている。一対の側壁11,11は同一部材、即ち互いに同一の形状および大きさを有する部材であり、平面視(横断面)が略J字形をなしている。以下、外部からトイレTの出入口12と正対した状態を基準に左右方向を定義する。そして、一対の側壁11,11のうち、外部からトイレTの出入口12と正対した状態で左側に位置する方を「左側壁」とも呼び、右側に位置する方を「右側壁」とも呼ぶ場合がある。なお、隣接したトイレTは、その仕切りとなる側壁11を共有する構成であってもよい。例えば、あるトイレTの「左側壁」が左側に隣接するトイレTの「右側壁」であってもよい。また、トイレTが背中合わせに隣接する場合、後壁10を共有してもよい。
【0025】
左右一対の側壁11,11はそれぞれ、トイレTの奥側に位置する平板状の平板部11aと、この平板部11aから手前側に向かって連設される円弧曲面部11bとを有する。平板部11aの後端が後壁10に連結され、平板部11aの前端から円弧曲面部11bが円弧上に湾曲して延設されている。左右一対の側壁11,11における平板部11a同士は、所定の寸法だけ離れて対向配置されており、平板部11a同士の間隔によってトイレTの横幅寸法が規定されている。
【0026】
図1に示すように、左右一対の側壁11,11は、各々の円弧曲面部11b同士が同じ方向に湾曲している。図示の例では、各々の円弧曲面部11bが、平板部11aから左方向に向かって湾曲しつつ延びている。そして、右側壁11における円弧曲面部11bの先端と、左側壁11における円弧曲面部11bとの間に挟まれた開口として出入口12が形成されている。
【0027】
〈吊支式スライド扉装置〉
次に、吊支式スライド扉装置1の詳細構造を説明する。吊支式スライド扉装置1は、出入口12を開閉するための扉体3と、この扉体3をスライド自在に吊支する案内レール2と、扉体3を駆動する駆動部4と、駆動部4の駆動を制御する制御装置5とを含んでいる。案内レール2は、トイレTの前方外側に向かって凸状に湾曲した円弧形状を有しており、出入口12の上部に架け渡されている。
【0028】
図1および
図2に示す符号13は、左側壁11の円弧曲面部11bに設けられている扉受け部である。扉受け部13は、トイレTの床面から左側壁11の上端縁まで垂直方向に延びて立設している。扉受け部13は、本発明における壁部材の一部に含まれる。以下、
図3を参照して、扉受け部13の詳細構造を説明する。
【0029】
図3は、実施形態に係る扉受け部13の詳細構造を示す図である。扉受け部13は、左側壁11に固定されるベース部131と、このベース部131に装着される緩衝凹部132とを有する。ベース部131は、トイレTの上下方向に延びる長尺部材である。ベース部131は中空構造となっており、その長手方向に沿って中空部133が形成されている。緩衝凹部132は横断面が略C字形を有しており、扉体3が閉じられた際の進行方向先端側に位置する左側縁部を受け入れ可能に窪んでいる。また、緩衝凹部132は、例えばゴム等の緩衝材によって形成されている。ここで、ベース部131の高さ方向における中央部近傍には、トイレTの利用者が扉体3の開閉を操作する操作部6が設置されている。
操作部6は、中空部133内に配設された電気配線を介して後述する制御部と接続されている。操作部6は、扉体3を後方へ移動させて出入口12を開く開ボタン61と、扉体3を後方から前方へ移動させて出入口12を閉じる閉ボタン62とを有している。
【0030】
図2を参照すると、案内レール2の一端には取付けブラケット29が取り付けられており、この取付けブラケット29を介して案内レール2の左端が左側壁11に固定されている。一方、案内レール2の他端側は、不図示のブラケットを介して右側壁11に固定されており、これによって、
図2に示すように案内レール2が水平な姿勢で出入口12の上部に架け渡されている。なお、取付けブラケット29の下方は開口しており、扉受け部13の上端部が取付けブラケット29内に挿入された状態となっている。扉体3は、案内レール2の曲率とほぼ同一の曲率で湾曲された半円弧形状を有し、複数の吊支ユニット30によって吊支されている。
【0031】
次に、案内レール2の構造について説明する。
図4は、案内レール2の構成を示す上視図である。
図5は、扉体3が吊支されている状態の案内レール2をトイレTの内部側から眺めた図である。
図6は、
図4の一部を拡大して案内レール2の詳細構成を示す図である。
図5に示すように、案内レール2は、扉体3を吊支するための吊支レール部(第一レール部)201と、扉体3を吊支するための吊支ユニット30が吊支レール部201から逸脱することを防止するためのガードレール部(第二レール部)202を備えている。吊支レール部201及びガードレール部202は、それぞれ、取付板部2aに取り付けられた複数の支持部2bやレール部2cから構成されている。また、案内レール2は、吊支ユニット30や、吊支レール部201、ガードレール部202等を覆うレールカバー28(
図4)を備えている。
【0032】
取付板部2aは、平面視で円弧形状の部材であり、当該円弧形状の外縁を成す外周面の一部が側壁11に沿って固定され、当該円弧形状の内縁を成す内周面がトイレTの内側に向けて配置されている。
【0033】
支持部2bは、取付板部2aとは別の部材であって、第一端部が取付板部2aの内周面に固設され、第一端部と反対側の第二端部がトイレTの内側に向けて配設されている。支持部2bは、取付板部2aの内周面に沿って、即ち扉体3の移動軌跡に沿って複数列設されている。
【0034】
レール部2cは、取付板部2aの内周面に沿って列設された複数の支持部2bの第二端部に架設され、平面視で取付板部2aと同心の円弧形状を成している。
【0035】
図7は、取付板部2aの上視図、
図8は、取付板部2aを弧の内側から見た図、
図9は、
図8に示すA-A矢視断面図である。取付板部2aは、アルミの板材を
図7に示すように、ほぼ半円弧状に湾曲させ、その断面が
図9に示すように切削加工されたものである。取付板部2aは、側壁11の円弧曲面部11bに沿うように曲げられ、その曲率は、トイレの幅等によって定められる。本実施形態では、曲率半径が583mmとなっている。また、高さが155mm、厚さ(最大突起部)が15.1mmとなっている。なお、これら値は一例であり、トイレTの仕様に応じて任意に設定できる。
【0036】
取付板部2aは、
図8、
図9に示すように、内周面側に支持部2bと係合する係合凹部2a1,2a2と、レールカバー28を取り付けるためのボルトを保持する取付溝2a3とを有している。
【0037】
係合凹部2a1の上下部分には、支持部2bを固設するための係合片2a4・2a5が設けられている。係合片2a4は、係合凹部2a1の上部内側部分を覆うように、
図7の
断面形状が斜め下に突出したフラップ状に形成されている。係合片2a5は、係合凹部2a1の下部内側にて、
図7の断面形状が上向きに突出した台形状に形成されている。
【0038】
また、係合凹部2a2の上下部分には、支持部2bを固設するための係合片2a6・2a7が設けられている。係合片2a6は、係合凹部2a2の上部内側にて、
図7の断面形状が下向きに突出した台形状に形成されている。係合片2a5は、係合凹部2a2の下部内側部分を覆うように、
図7の断面形状が斜め上に突出したフラップ状に形成されている。
【0039】
図10は、支持部2bをトイレTに配置された際に内側となる方向から眺めた図(正面図)、
図11は、
図10に示すB-B矢視断面図、
図12は、支持部2bの上視図、
図13は、支持部2bの下面図、
図14は、支持部2bの斜視図である。
【0040】
支持部2bは、取付板部2aに対して立設するように、トイレTの内側へ向けて水平に設けられる腕部2b1と、腕部2b1の外側端部(第一端部)にて上下に立設された係合凸部2b2,2b3と、レール部2cを保持するレール受部2b5を備えている。また、支持部2bは、腕部2b1の上面と係合凸部2b2の内側面とを斜めに接続し、腕部2b1を補強する筋交い部2b6や、腕部2b1の下面に下向きに垂設された板状の部材であって内側端辺がレール受部2b5の下部外側に接続され、レール受部2b5と腕部2b1を補強する支え板部2b7を備えている。
【0041】
レール受部2b5は、腕部2b1の内側端部(第二端部)に設けられ、当該腕部と接続する外壁2b51と、外壁2b51の下端と接続した底部2b53と、底部2b53の内側端辺に立設された内壁2b52とを有する。即ち、レール受部2b5は、
図11に示すように断面がU字状であり、レール部2cが嵌入されるレール受け溝2b54を有している。
【0042】
係合凸部2b2,2b3は、平面視において取付板部2aと同様の曲率を有する円弧状であり、本実施形態では、係合凸部2b2,2b3の外面が、取付板部2aの係合凹部2a1,2a2の内周面とほぼ同じ曲率半径(578mm)となっている。また、レール受部2b5の外壁2b51と、内壁2b52は、平面視において、レール部2cと同心の円弧形状であり、レール受け溝2b54がレール部2cとほぼ同じ曲率半径を有するように形成されている。
【0043】
図15は、レール部2cの上視図、
図16は、
図15に示すC-C矢視断面図である。レール部2cは、取付板部2aと同心の円弧形状であり、取付板部2aの内周面に列設された複数の支持部2bのレール受部2b5に架設される。レール部2cは、
図16に示すように板状の部材であり、一端がレール受部2b5のレール受け溝5b54に嵌め込まれ、他端がレール受け溝5b54から突出した状態で保持される。
【0044】
〈吊支構造〉
次に、案内レール2による扉体3の吊支構造を説明する。
図17は、
図4に示すD-D矢視断面図、
図18は、
図4に示すE-E矢視断面図である。案内レール2は、概ね
図17に示す断面構造が長手方向に沿って連続している。そして案内レール2は、長手方向に湾曲して延びているため、
図17,
図18において奥行方向に案内レール2の各部の側面が表れるはずであるが、簡単のため
図17,
図18では案内レール2等の奥行方向の記載を省略している。
【0045】
図17に示すように、扉体3の上縁部3a近傍には、吊支ユニット30が取り付けられている。吊支ユニット30は、扉体3の上縁部3a近傍にボルト状の取り付け金具311
で固定されたプレート部材31と、プレート部材31に回転自在に取り付けられた吊支ローラ33とを有している。吊支ローラ33は、
図17及び
図18に示すように、周面に回転軸側へ向けて凹の溝33aを有し、この溝33aにレール部2cの上面が嵌るように吊支レール部201上に載せられ、レール部2cに沿って走行可能に配置される。
【0046】
吊支ローラ33には、後述のように駆動部4が接続され、吊支ローラ33が回転駆動されることで、吊支ユニット30が吊支レール部201に沿って走行し、扉体3がスライドされる。
【0047】
また、
図18に示すように、扉体3における上縁部3aの前端付近及び後端付近には、上縁部3aから所定の高さを有するように突出して設けられたバンパー39を備えている。バンパー39は、ガードレール部202のレール部2cと対向し、レール部2cと所定の距離を有した状態で、レール部2cと近接して、配置されている。これにより、バンパー39は、扉体3の開閉時、通常であれば、レール部2cと接触せずに移動するが、扉体3に外力が加わる等して扉体3が上側に動いた場合、バンパー39がレール部2cに突き当たることで、扉体3の上への移動を制限し、扉体3が吊支レール部201から外れることを防止する。
【0048】
なお、
図17では、吊支ユニット30を一つのみ示したが、扉体3には複数の吊支ユニット30が設けられている。本実施形態では、
図4に示すように同じ構成の吊支ユニット30が扉体3の右側縁部の近傍と左側縁部の近傍とに配置され、この二つの吊支ユニット30によって扉体3が案内レール2に吊支されている。
【0049】
取付板部2aの取付溝2a3には、ナット2a31が挿入され、ボルト281によって案内レール2及び駆動部4を覆うレールカバー28が取付られる。
【0050】
〈駆動部〉
次に駆動部4の詳細について説明する。駆動部4は、モータ41、ギヤボックス44、枠体45を有している。モータ41及びギヤボックス44は、枠体45に保持され、ギヤボックス44がプレート部材31に取り付けられる。モータ41の回転軸には、ギヤボックス44が連結され、モータ41の駆動力がギヤボックス44に伝達され、ギヤボックス44の回転軸443を回転させる。回転軸443には吊支ローラ33が接続され、モータ41の駆動力が、ギヤボックス44を介して吊支ローラ33に伝達され、吊支ローラ33を回転させる。
【0051】
モータ41は、使用者による開ボタン61,閉ボタン62の操作に応じて正逆回転し、扉体3を開閉させる。
【0052】
〈製造方法〉
図19、
図20は、吊支式スライド扉装置1の製造方法を示す図であり、
図19は、支持部を取付板部2aに固設する工程を示す図、
図20は、レール部2cを複数の支持部2bに架設する工程を示す図である。
【0053】
図19の工程Aのように、取付板部2aは、外周面が側壁11の円弧曲面部11bに沿うように、円弧曲面部11bに固定される。
【0054】
工程Bでは、支持部(第一支持部)2bの係合凸部2b2が、係合片2a4が成す係合凹部2a1の上部空間に差し入れられ、この状態で支持部2bの係合凸部2b2が、係合片2a5を越えて係合凹部2a1に挿入される。
【0055】
工程Cでは、支持部2bの係合凸部2b2が、係合凹部2a1の下部内壁に突き当てられて、支持部2bの高さ方向の位置決めが成される。
【0056】
工程Dでは、係合凹部の周囲の部材、本例では係合片2a4をかしめて支持部2bの係合凸部2b2を圧着することで、支持部2bを取付板部2aに固設する。
【0057】
そして、
図20に示すように複数の支持部2bを取付板部2aの係合凹部2a1に沿って列設し、これら支持部2bの内側端部に設けられたレール受け溝2a54にレール部(第一レール部)2cが嵌入されることで、レール部2cが複数の支持部2bに架設される。
【0058】
このように案内レール2を複数の部材に分割して構成することで、各部材の構成を簡素化している。
【0059】
なお、
図19及ぶ
図20では、吊支レール部201について説明したが、本実施形態では、吊支レール部201とガードレール部202とは、上下対称に構成しているので、ガードレール部202についても上記の方法を上下対称に実行し、取付板部2aに対して支持部(第二支持部)2b及びレール部(第二レール部)2cを取り付けることで同様に製造できる。また、本実施形態では、係合片2a4をかしめて支持部2bを取付板部2aに固設したが、これに限らず、ネジ止めや、ロウ付け、溶接など、他の手法で支持部2bを取付板部2aに固設してもよい。
【0060】
〈実施形態の効果〉
上述のように、本実施形態の吊支式スライド扉装置1では、それぞれ別の部材である取付板部2a、支持部2b、レール部2cを組み立てることによって案内レール2を構成している。このため、案内レール2を構成する各部材の構造が簡素化され、製造が容易になるため、生産性が向上する。特に、支持部2bを取付板部2aやレール部2cと別の部材としたことで、円弧状に湾曲させる部材の厚さを大きくとる必要がなく、曲げ加工が容易になると共に、切削する部分が少なくなり、歩留まりの向上や加工時間の短縮化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態の吊支式スライド扉装置1では、支持部2bの係合凸部2b2,2b3を取付板部2aの係合凹部2a1に係合し、係合凹部2a1の周囲の部材(係合片2a4)をかしめて支持部2bを取付板部2aに固設している。これにより、複数の支持部2bを固設する際、ネジ等の締結具で個別に締結することに比べ、複数の支持部2bを一括して固設することができ、生産性を向上できる。特に、本実施形態では、係合凸部2b3を係合凹部2a1の下端或いは係合凹部2a2の上端に突き当てて、高さ方向の位置決めを行えるので、案内レール2を精度良く組み立てることができる。
【0062】
更に、本実施形態の吊支式スライド扉装置1では、吊支レール部201と上下対称にガードレール部202を備えている。これにより、扉体3が外力等の影響によって上下に振動した場合であっても、扉体3の少なくとも一部(本例ではバンパー39)がガードレール部202に突き当たることで、扉体3の上下動を規制する。従って、扉体3及び吊支ユニット30が吊支レール部201から外れることを防止できる。
【0063】
〈変形例1〉
前述の実施形態では、扉体3に設けたバンパー39がガードレール部202に突き当たることで、扉体3の逸脱を防止したが、本変形例では、ガードレール部202に沿って回転するガイドローラを備えた構成としている。なお、その他の構成は、前述の実施形態と同じである。
【0064】
図21は、変形例1の案内レール2と吊支ローラ34とガイドローラ35の関係を示す断面図である。
【0065】
図21に示すように、本変形例の吊支ユニット30Aは、扉体3の上縁部3a近傍にボルト状の取り付け金具311で固定されたプレート部材31と、プレート部材31に回転自在に取り付けられた吊支ローラ34と、プレート部材31に回転自在に取り付けられたガイドローラ35とを有している。吊支ユニット30Aの吊支ローラ33は、
図21に示すように、吊支レール部201のレール部2c上に載せられ、ガイドローラ35は、ガードレール部202のレール部2cに接するように配置される。ここで、吊支ローラ34は、周面の外側部分が拡径した拡径部341を有し、ガイドローラ35は、周面の内側部分が拡径した拡径部351を有している。この吊支ローラ33の拡径部331が、レール部2cの側面に当たることで、吊支ユニット30Aがレール部2cの内側に外れることが防止される。また、ガイドローラ35の拡径部351が、レール部2cの側面に当たることで、吊支ユニット30Aがレール部2cの外側に外れることが防止される。これらの構成により、吊支ユニット30Aは、扉体3を吊支し、レール部2cに沿って走行可能となっている。
【0066】
なお、
図21では、吊支ユニット30Aを一つのみ示したが、扉体3には複数の吊支ユニット30Aが設けられている。本実施形態では、
図4と同様に同じ構成の吊支ユニット30Aが扉体3の右側縁部の近傍と左側縁部の近傍とに配置され、この二つの吊支ユニット30Aによって扉体3が案内レール2に吊支されている。そして、駆動部4により、一方の吊支ユニット30Aの吊支ローラ34が回転駆動され、吊支ユニット30Aがレール部2cに沿って走行することで、案内レール2の長手方向に沿って扉体3がスライドされる。
【0067】
〈変形例2〉
本変形例は、ガードレール部202を省略し、取付板部2aの溝に沿って回転するガイドローラを備えた構成としている。なお、その他の構成は、前述の実施形態と同じである。
【0068】
図22は、変形例2の案内レール2と吊支ローラ34とガイドローラ36の関係を示す断面図である。
【0069】
図22に示すように、本変形例の吊支ユニット30Bは、扉体3の上縁部3a近傍にボルト状の取り付け金具311で固定されたプレート部材31と、プレート部材31に回転自在に取り付けられた吊支ローラ33と、プレート部材31及び扉体3に取り付けられたアーム部313と、アーム部313の外側端部に回転自在に設けられたガイドローラ36とを有している。吊支ユニット30Bの吊支ローラ33は、
図22に示すように、吊支レール部201のレール部2c上に載せられ、ガイドローラ36は、取付板部2aの内周面に設けられたガイド溝2a8の内壁2a81に接するように配置される。ガイド溝2a8は、取付板部2aの長手方向に沿って内周面に形成された溝である。ガイドローラ36がガイド溝2a8の内壁2a81に接した状態で、吊支ユニット30Bが走行することで、扉体3が外力等の影響によって上下に振動した場合であっても、ガイドローラ36がガイド溝2a8の上壁2a82に接して扉体3の動きを規制する。従って、扉体3及び吊支ユニット30Bが吊支レール部201から外れることを防止できる。
【0070】
〈変形例3〉
本変形例は、駆動部4を省略し、手動で扉体3を開閉する構成としている。なお、その他の構成は、前述の実施形態と同じである。
【0071】
図23は、変形例3の案内レール2と吊支ローラ33の関係を示す断面図である。
図23に示すように、吊支ローラ33は、駆動部によって駆動されるものではなく、扉体3の移動に従ってレール部2c上を走行する従動ローラである。このように本変形例の吊支式スライド扉装置1は、使用者が手動で扉体3を開閉する装置であってもよい。
【0072】
〈変形例4〉
本変形例は、複数の吊支ローラ33に、それぞれ駆動部4を接続して、複数の吊支ローラの少なくとも一部を駆動させる構成としている。なお、その他の構成は、前述の実施形態と同じである。
【0073】
図24は、変形例4の案内レール2と吊支ローラ33と駆動部4との関係を示す上視図である。
図24に示すように、本例では、扉体3が二つの吊支ユニット30によって吊支され、各吊支ユニット30の吊支ローラ33にそれぞれ駆動部4が接続されている。
【0074】
本変形例の吊支式スライド扉装置1は、制御装置を備え、使用者による操作部の操作に応じて複数の駆動部4の少なくとも一部を駆動させる。
【0075】
〈制御装置〉
図25は、制御装置5の構成例を示す図である。制御装置5は、例えば
図25に示すようなノイマン型のコンピュータである。制御装置5は、CPU51やメモリ52、入出力IF(Interface)53を有する。CPU51はプロセッサとも呼ばれる。CPU51は
、単一のプロセッサがマルチスレッド(マルチタスク)によって複数の機能部として機能してもよい。また、CPU51は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPU51がマルチコアを有する構成であってもよい。
【0076】
メモリ52は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、CPU51の作業領域,プログラムやデータの記憶領域,通信データのバッファ領域として使用される。主記憶装置は、例えば、Random Access Memory(RAM),或いはRAMとRead Only Memory(ROM)との組み合わせで形成される。主記憶装置は、CPU51がプログラムやデータをキャッシュしたり、作業領域を展開したりする記憶媒体である。主記憶装置は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶部は、CPU51により実行されるプログラムや、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)や
SSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメモリ、メモリカード等である。
【0077】
入出力IF53は、センサ531や操作部6等の入力手段から信号の入力を受けると共に、表示部453等の出力手段へ出力信号を出力するインターフェースである。センサ531は、例えば、扉体3の位置や走行速度、走行方向等の走行状態を電気信号として検出するエンコーダである。表示部453は、扉体3の外面や円弧曲面部11bの外面に設けられ、トイレTの状態を外部に対して表示する手段である。出力手段としては、表示部に限らず、スピーカや、照明、通信ユニット等を有してもよい。なお、上記の構成要素はそれぞれ複数設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0078】
制御装置5では、CPU51が、プログラムを実行することにより、駆動部4や表示部453等を制御する機能部として機能する。例えば、本実施形態の制御装置5は、複数の駆動部4のうち、少なくとも一つを駆動して扉体3を開閉させるように制御する駆動制御部として機能する。また、制御装置5は、操作部6の操作状況に基づき、操作部6の閉ボ
タン62が押され、扉体3が閉まってから開ボタン61が押されて扉体3が開くまでの間はトイレTが「使用中」と判定し、使用中であることを表示させるように表示部453を制御する。また、制御装置5は、操作部6の開ボタン61が押され、扉体3が開いてから閉ボタン62が押されるまでの間をトイレTが「空き」であると判定し、空きであることを表示させるように表示部453を制御する。即ち、制御装置5は、表示部453を制御する表示制御部として機能する。また、制御装置5は、センサ531の検出結果等に基づいて故障を検出する故障検出部として機能する。なお、上記各機能部の少なくとも一部の処理がDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって提供されてもよい。また、上記各機能部の少なくとも一部が、
FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用LSI(large scale integration)、その他のデジタル回路であってもよい。また、上記各機能部の少なくとも一部にアナログ回路を含む構成としてもよい。
【0079】
〈制御方法〉
制御装置5は、操作部6の開ボタン61,閉ボタン62が押された場合に、
図26の処理を実行する。なお、制御装置5は、開ボタン61,閉ボタン62が押された場合に限らず、人感センサによる検出信号を受信した場合など、所定のタイミングで
図26の処理を実行してもよい。
【0080】
ステップS10にて、制御装置5は、現時点で駆動制御を行う駆動装置(以下、現行の駆動装置とも称す)として設定されている駆動部4を示す情報をメモリから読み出し、現行の駆動部4を特定する。例えば、制御装置5は、吊支式スライド扉装置1が備える複数の駆動部4のそれぞれを識別する識別情報のリストをメモリに保持すると共に、このうち何れが現行の駆動部4であるかを示す情報(ポインタ)を保持し、この情報を読み出すことで原稿の駆動部4を特定する。
【0081】
ステップS20にて、制御装置5は、ステップS10で特定した現行の駆動部4が変更のタイミングに達したか否かを判定する。例えば、駆動時間や回転数等が所定値を超えた場合に所定のタイミングに達したと判定する。これにより現行の駆動装置を周期的に変更する。ステップS20で肯定判定であれば、制御装置5は、ステップS30へ移行し、現行の駆動部4を変更する。例えば、複数の駆動部4について駆動する順序を予め定めて前記リストを作成しておき、変更のタイミングになった場合、メモリに記憶している現行の駆動部を示す情報を次の駆動部4のものに変更する。なお、本実施形態では、二つの駆動部4を備えた構成のため、現行の駆動部4を交互に切り替える。
【0082】
一方、ステップS20で否定判定の場合、制御装置5は、ステップS40へ移行し、ステップS10、S30で特定した駆動部4を駆動制御する駆動部4として選択する。
【0083】
ステップS50にて、制御装置5は、ステップS40で選択した駆動部4の駆動制御を開始する。
【0084】
ステップS60にて、制御装置5は、センサ531によって扉体3の走行状態を検出する。ここで、走行状態とは、例えば移動距離や移動速度である。
【0085】
ステップS70にて、制御装置5は、ステップS60で検出した扉体3の走行状態に基づいて故障か否かを判定する。例えば、制御装置5は、ステップ60で単位時間あたりの移動距離を検出し、この値が、所定の閾値より低い場合に故障していると判定する。
【0086】
ステップS70で否定判定の場合、制御装置5は、
図26の処理を終了する。一方、ステップS70で肯定判定の場合、制御装置5は、ステップS80へ移行し、故障した駆動
部4の識別情報を前記リストから除外し、現行の駆動部4を示す情報を次の駆動部4のものに変更する。
【0087】
ステップS90にて、制御装置5は、駆動部4に故障が生じたことを示す情報を出力する。例えば、制御装置5は、表示部453にエラーメッセージを表示させることや、表示部453を特定の色で発光させること、表示部453を特定のパターンで点滅させること等を行う。また、制御装置5は、メンテナンスを担当する者の端末へメッセージを送信してもよい。
【0088】
上述のように、本変形例の吊支式スライド扉装置1は、複数の駆動部4のうち、少なくとも一つを制御して扉体3を開閉させるので、駆動ローラ42の摩耗やモータ41の破損等の故障が生じて扉体3へ駆動力を伝達できない駆動部4が生じた場合でも、他の駆動部4を駆動制御して、適切に扉体3を開閉させることができる。
【0089】
〈第二実施形態〉
前述の第一実施形態では、吊支ローラを回転駆動することで扉体3を開閉させたが、駆動部の構成はこれに限定されるものではなく、本実施形態では、扉体3の上縁部3aに圧接した駆動ローラ42を回転駆動することにより扉体3を開閉させる構成である。なお、その他の構成は、第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0090】
図27は、第二実施形態における案内レールの構成を示す上視図、
図28は、扉体3が吊支されている状態の案内レール2をトイレTの内部側から眺めた図である。なお、
図28は、駆動部近傍の領域、及びこの領域に吊支ユニット30が位置した状態を示している。
図29は、
図27に示すE-E矢視断面図である。
図30は、駆動部4Aの分解斜視図、
図31は、駆動ローラ32の高さ方向における変位について説明するための説明図である。
【0091】
〈駆動部〉
次に駆動部4Aの詳細について、
図27~
図31を参照して説明する。駆動部4Aは、モータ41、駆動ローラ42、枠体43、付勢部46を有している。モータ41は、制御装置5によって駆動が制御される電動機である。モータ41は、枠体43に保持され、枠体43を介して案内レール2の取付板部2aに取り付けられる。モータ41の回転軸には、駆動ローラ42が連結され、駆動ローラ42の周面が扉体3の上縁部3aに圧接されている。駆動部4Aが駆動ローラ42を回転させることで、扉体3の上縁部3aに駆動力を伝達し扉体3を駆動する。
【0092】
枠体43は、側壁(壁部)11に対して固定された第二枠体431と、モータ41を保持する第一枠体432と、摺動部433を有する。
【0093】
第二枠体431と、第一枠体432、摺動部433は、ほぼ円筒状の部材であり、第一
枠体432に摺動部433が外嵌され、この第一枠体432と摺動部433が第二枠体431の中空部に挿入される。これにより第一枠体432が摺動部433を介して第二枠体431に回転可能に保持される。
【0094】
第二枠体431は、側壁11に固定された取付板部2aにネジ441でネジ止めされることで、側壁11に対して固定される。なお、本実施形態では、第二枠体431が、案内レール2を介して側壁11に固定されたが、これに限らず第二枠体431がネジ等の取り付け部材で側壁11に対して直接固定されてもよい。
【0095】
図30に示すように、駆動ローラ42の回転中心420は、第
一枠体432の回転中心430と異なる位置にあるため、第
一枠体432を回転させると、駆動ローラ42の回転中心420が、第
一枠体432の回転中心430の周りを回るように円運動することになる。但し、第
二枠体431が取付板部2aに取り付けられた状態で、第
一枠体432を回転させた場合、駆動ローラ42が扉体3の上縁部3aに当接する。そして、付勢部46が、第
一枠体432を第
二枠体431に対して回転させるように付勢することで、駆動ローラ42を扉体3へ圧接させる。本実施形態の付勢部46は、ねじりバネであり、そのコイル部分を第
一枠体432に外嵌し、一端を第
二枠体431に固定して、他端を巻き込む方向に回転させた状態で第
一枠体432に固定している。このバネが戻る際の弾性力によって、第
一枠体432が
図31において半時計回りに回転し、駆動ローラ42を扉体3の上縁部3aに圧接させている。ここで扉体3が外力の影響等によって上側に跳ね上がった場合、駆動ローラ42が付勢部46の付勢力に抗して押し上げられ、第
一枠体432が時計回りに回転させられる。そして、扉体3への外力の働きがなくなり、扉体3が下降して元の位置に戻ると、第
一枠体432が付勢部46の付勢力によって反時計回りに回転させられ、駆動ローラ42が元の状態に戻る。これにより、扉体3のスライド時に、扉体3が外力等の影響によって上下動した場合であっても、駆動ローラ42が扉体3の上下動に追従でき、良好に扉体3を駆動できる。
【0096】
以上述べた実施形態は、本件の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 :吊支式スライド扉装置
2 :案内レール
3 :扉体
4,4A :駆動部
5 :制御装置
6 :操作部
9 :便器
10 :後壁
11 :側壁
12 :出入口